特許第6711669号(P6711669)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6711669
(24)【登録日】2020年6月1日
(45)【発行日】2020年6月17日
(54)【発明の名称】飼料原料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23K 10/30 20160101AFI20200608BHJP
   A23K 50/10 20160101ALI20200608BHJP
   A23K 20/147 20160101ALI20200608BHJP
【FI】
   A23K10/30
   A23K50/10
   A23K20/147
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-74821(P2016-74821)
(22)【出願日】2016年4月4日
(65)【公開番号】特開2016-198090(P2016-198090A)
(43)【公開日】2016年12月1日
【審査請求日】2019年3月4日
(31)【優先権主張番号】特願2015-82121(P2015-82121)
(32)【優先日】2015年4月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J−オイルミルズ
(72)【発明者】
【氏名】椹木 庸介
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 三四郎
(72)【発明者】
【氏名】片岡 久
(72)【発明者】
【氏名】中島 庸一
(72)【発明者】
【氏名】荻根 孝範
(72)【発明者】
【氏名】乗久 雅貴
【審査官】 大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−065173(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第104171293(CN,A)
【文献】 特開平05−130838(JP,A)
【文献】 特開昭58−031942(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/157112(WO,A1)
【文献】 特開2003−235469(JP,A)
【文献】 特開2006−014687(JP,A)
【文献】 特開2011−244741(JP,A)
【文献】 特開2011−083281(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0212219(US,A1)
【文献】 特開2008−178328(JP,A)
【文献】 特開2004−321170(JP,A)
【文献】 特開平11−243872(JP,A)
【文献】 特表平10−506781(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23K 10/30
A23K 50/10
A23K 20/147
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飼料原料の製造方法であって、
原料として脱脂菜種および脱脂大豆を配合する工程、および、
配合した前記原料を加熱する工程
を含
前記飼料原料が反芻動物用の飼料の原料であり、
前記加熱工程の加熱が、100〜160℃のクッカー、オーブン、又は、キルンによる、3〜5時間の加熱であり、
前記加熱する工程前に、配合した前記原料100質量部に対し、水を1〜20質量部添加する、
前記製造方法。
【請求項2】
前記脱脂菜種が前記原料の15〜80質量%である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記脱脂菜種1質量部に対し、前記脱脂大豆の配合が0.5〜2質量部である請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記飼料原料の酸性デタージェント不溶性蛋白質含量が4.5〜18乾燥質量%である
、請求項1乃至のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記飼料原料の中性デタージェント不溶性蛋白質含量が15〜40乾燥質量%である、請求項1乃至のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記飼料原料のリジン含量が1.3〜2.8乾燥質量%である、請求項1乃至のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
反芻動物用飼料の製造方法であって、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の製造方法で得られた飼料原料を1〜100質量%配合する工程を含む、前記製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飼料原料の製造方法に関し、より詳細には、ルーメンバイパス率が高く、消化性の良い飼料原料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脱脂大豆は、蛋白質含量が高く、家畜飼料用原料として汎用されている。昨今の飼料用原料及び飼料の価格高騰のため、飼料用原料としての脱脂大豆をより一層効率的に使用することが求められている。
【0003】
脱脂大豆の飼料効率を改善する一方法として、ルーメンバイパス率を適正化することが挙げられる。牛、羊等の反芻動物は、4つの胃を持ち、そして、ルーメンと呼ばれる第1胃は、中性を示し、飼料用添加物を含む飼料組成物や牧草を消化させるためにある。ルーメン内微生物は自身が持つ酵素により、飼料中の炭水化物や繊維からは揮発性脂肪酸(VFA)を生成し、タンパク質からは菌体蛋白質を再合成する。消化物はポンプの機能を有する第2胃、及びフィルターの役割を有する第3胃を経て、胃液の分泌による消化機能を有している第4胃に送られる。胃に続く腸は、通常の哺乳類と同様に、消化された蛋白質等の吸収及び排泄を行なう。
【0004】
反芻動物は、飼料をルーメン発酵させて得られる菌体蛋白質を腸で栄養分として吸収する。消化性の良い蛋白質を含む飼料を多給すると、アンモニア態窒素が増え、尿素として尿へ排出されるため、腸で吸収される蛋白質が減る。その結果、飼料効率が低下する。したがって、反芻動物に栄養分を効率的に与えるためには、ルーメン発酵で得られる栄養分と共に、ルーメンをバイパスする栄養分を含む飼料を与える必要がある。
【0005】
ルーメン微生物によって利用され難い蛋白質のひとつとして、酸性デタージェント不溶性蛋白質(ADICP)が知られている。ADICPが高いほど、ルーメンバイパス率(栄養分の小腸への到達率)が向上し、ルーメン微生物ではなく直接牛自体の栄養分となる。
【0006】
特許文献1には、飼料用大豆のルーメンバイパス率を高める方法として、脱脂大豆粉等の飼料蛋白質を還元性炭水化物と共に加熱処理することが記載されている。大豆蛋白質と還元糖との縮合生成物は、ルーメン内での分解性が減るが、ルーメン以降の消化管の中での消化性が顕著に減少しないとされる。
【0007】
一方、脱脂菜種は蛋白質含量が低いため、飼料原料として有効に活用されておらず、特許文献2のように篩分けて、蛋白質含量を向上することにより、飼料原料として有効活用する製造方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭63−267239号公報
【特許文献2】特開2008−178328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、大豆を加工し、ルーメンバイパス率を高める試みはなされていたが、ADICP含量の向上の点で改善の余地があった。また、脱脂菜種は飼料原料として有効活用されていなかった。そこで、本発明の目的は、脱脂菜種を有効活用し、ADICP含量の向上した飼料原料の製造方法を提供することにある。また、さらに、脱脂菜種を含むにもかかわらず、ペプシン消化率および/またはトリプシン消化率の高い飼料原料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、原料として脱脂菜種および脱脂大豆を配合する工程、および、配合した前記原料を加熱する工程を含む、飼料原料の製造方法により、ADICP含量の向上した飼料原料が得られることを見出し、また、さらに、脱脂菜種を含むにもかかわらず、ペプシン消化率および/またはトリプシン消化率の高い飼料原料がえられることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明は、飼料原料の製造方法であって、原料として脱脂菜種および脱脂大豆を配合する工程、および、配合した前記原料を加熱する工程を含む、前記製造方法である。
【0012】
さらに、前記脱脂菜種が前記原料の15〜80質量%であることがこのましい。
【0013】
さらに、前記脱脂菜種1質量部に対し、前記脱脂大豆の配合が0.5〜2質量部であることが好ましい。
【0014】
さらに、配合した前記原料100質量部に対し、水を1〜20質量部添加することが好ましい。
【0015】
さらに、前記水の添加が、加熱する前記工程前および/または加熱する前記工程中であることが好ましい。
【0016】
さらに、加熱する前記工程の加熱が、80〜160℃、1分〜12時間であることが好ましい。
【0017】
さらに、前記飼料原料の酸性デタージェント不溶性蛋白質含量が4.5〜18乾燥質量%であることが好ましい。
【0018】
さらに、前記飼料原料の中性デタージェント不溶性蛋白質含量が15〜40乾燥質量%であることが好ましい。
【0019】
前記飼料原料のリジン含量が1.3〜2.8乾燥質量%であることが好ましい。
【0020】
また、本発明は、飼料の製造方法であって、原料として脱脂菜種および脱脂大豆を配合する工程、および、配合した前記原料を加熱する工程を含む、製造方法で得られた飼料原料を1〜100質量%配合する工程を含む、前記製造方法である。
【0021】
前記飼料が反芻動物用であることが好ましい。
【0022】
また、本発明は、原料として脱脂菜種および脱脂大豆を配合し、配合した前記原料を加熱する工程を含む、製造方法で得られた飼料原料において、前記脱脂菜種1質量部に対し、前記脱脂大豆の配合が0.5〜2質量部とすることを特徴とする、前記飼料原料のペプシン消化率および/またはトリプシン消化率を向上させる方法である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、脱脂菜種を有効活用し、ADICP含量の向上した飼料原料の製造方法を提供することができる。また、さらに、脱脂菜種を含むにもかかわらず、ペプシン消化率および/またはトリプシン消化率の高い飼料原料の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の実施の形態をより詳細に説明する。
【0025】
本発明の飼料原料の製造方法では、原料として脱脂菜種および脱脂大豆を配合する。脱脂菜種および脱脂大豆は、特に限定されず、通常、食用油脂等の製造で得られるものを使用することができる。前記脱脂菜種および前記脱脂大豆の油脂含量は、4質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましい。
【0026】
原料として配合される脱脂菜種は15〜80質量%が好ましく、20〜70質量%がより好ましく、35〜65質量%がさらに好ましい。
【0027】
また、脱脂菜種1質量部に対し、脱脂大豆の配合は、0.5〜2質量部であることが好ましく、0.6〜1.8質量部であることがより好ましい。所定の配合割合とすることで、NDICP含量を高くすることができる。
【0028】
また、原料として配合される脱脂菜種と脱脂大豆の合計量は、80〜100質量%が好ましく、90〜100質量%がより好ましい。
【0029】
さらに、本発明では、前記原料に、水を添加してもよい。水は前記原料100質量部に対し、1〜20質量部が好ましく、3〜18質量部がより好ましく、5〜15質量部がさらに好ましい。所定量の水を添加することで、効率よく製造することができる。また、前記水の添加は加熱前もしくは加熱中のどちらでもよく、加熱中の場合には水蒸気の形で水を添加してもよい。
【0030】
配合した原料を加熱する工程の加熱の温度は、通常、80〜160℃であり、好ましくは90〜150℃であり、より好ましくは100〜140℃である。また、加圧せず、常圧で処理することが好ましい。
【0031】
前記加熱の時間は、上記加熱温度にもよるが、通常、1分〜12時間であり、好ましくは1分〜8時間であり、より好ましくは1〜5時間である。
【0032】
加熱に使用する機器は特に制限されない。加熱機器の例には、クッカー、オーブン、キルン等が挙げられ、好ましくはクッカーまたはオーブンである。また、加熱中に水もしくは水蒸気を注入できる機器が好ましい。
【0033】
本発明の製造方法で得られた飼料原料は、ルーメンバイパス率の指標となる酸性デタージェント不溶性蛋白質(ADICP)が4.5〜18乾燥質量%であることが好ましく、5.5〜16乾燥質量%であることがより好ましく、7.5〜12.5乾燥質量%であることがさらに好ましい。これにより、飼料原料の栄養分が、ルーメンをバイパスし、反芻動物自体の栄養分として消費されることとなる。なお、乾燥質量%とは、飼料原料等の乾燥質量に対する含有質量%のことである。
【0034】
ADICPはルーメンバイパス性の蛋白質であり、脱脂菜種では3乾燥質量%程度、脱脂大豆は1乾燥質量%程度である。ADICPは高すぎると苦味を感じるため、ルーメンバイパス性と風味のバランスから、18乾燥質量%以下が好ましく、15乾燥質量%以下がより好ましい。
【0035】
また、本発明の製造方法により得られた飼料原料の中性デタージェント不溶性蛋白質(NDICP)含量は、好ましくは15〜40乾燥質量%、より好ましくは16〜35乾燥質量%、さらに好ましくは18〜30乾燥質量%である。
【0036】
家畜動物にとってリジンおよびメチオニンは体内で合成することができない必須アミノ酸である。そのため、家畜動物は飼料からリジンおよびメチオニンを摂取することを必要とする。本発明の製造方法により得られた飼料原料のリジン含量は好ましくは1.3〜2.8乾燥質量%であり、より好ましくは1.4〜2.7乾燥質量%であり、さらに好ましくは1.6〜2.6乾燥質量%であり、特に好ましくは1.9〜2.6乾燥質量%である。
【0037】
また、リジンおよびメチオニンの比率(リジン含量/メチオニン含量)は、1.9〜4.0が好ましく、2.1〜3.9がより好ましく、2.4〜3.8がさらに好ましい。所定の比率とすることで、家畜動物が必須アミノ酸を適切に摂取できるようになる。
【0038】
また、本発明の製造方法では、加熱によるリジン残存率(%)が高く、例えば、60〜90%である。リジン残存率を高め、リジンおよびメチオニンの比率を適切にするために、脱脂菜種1質量部に対し、脱脂大豆0.8〜1.3質量部を含むことが好ましい。
【0039】
本発明の製造方法で得られた飼料原料は、予め脱脂菜種と脱脂大豆を配合したのち、加熱する必要がある。そうすることで、脱脂菜種と脱脂大豆を別々に加熱し、その後配合した場合よりも、特に、ペプシン消化率および/又はトリプシン消化率が向上する。ペプシン消化率やトリプシン消化率の向上は、動物の飼料原料の有効利用に寄与する。
【0040】
ペプシン消化率は、好ましくは78%以上95%以下であり、より好ましくは79%以上93%以下であり、さらに好ましくは84%以上92%以下である。また、ペプシン消化率の向上とルーメンバイパス性の点で、加熱処理は、ADICP含量が5〜18乾燥質量%となるようにすることが好ましく、8.8〜17乾燥質量%となるようにすることがより好ましく、9.0〜16乾燥質量%となるようにすることがさらに好ましい。
【0041】
トリプシン消化率は、好ましくは65%以上95%以下であり、より好ましくは75%以上93%以下であり、さらに好ましくは80%以上93%以下である。また、トリプシン消化率とその向上の点から、加熱処理は、ADICP含量が6.0〜18乾燥質量%となるようにすることが好ましく、6.0〜16乾燥質量%となるようにすることがより好ましく、6.3〜13乾燥質量%となるようにすることがさらに好ましい。
【0042】
本発明は、また、前記製造方法により得られた飼料原料を配合した飼料の製造方法を提供する。前記飼料原料は、飼料中に1〜100質量%含有し、好ましくは1〜30質量%である。前記飼料を反芻動物に給与することにより、前記飼料原料中の栄養分をルーメンバイパスさせ、飼料の利用効率を改善する。その結果、従来よりも少ない量の飼料で、畜産産物を生産することが可能となる。
【0043】
また、本発明の製造方法により得られた飼料原料は、そのまま動物に与えてもよい。さらに、当業分野で公知の飼料原料へ本発明の飼料原料を配合した飼料を動物に与えてもよい。そのような公知の飼料原料としては、米、玄米、ライ麦、小麦、大麦、トウモロコシ、マイロ等の穀類;ふすま、脱脂米ぬか等のそうこう類;コーングルテンミール、コーンジャームミール、コーングルテンフィード、コーンスチープリカー等の製造粕類;大豆油粕、菜種油粕、あまに油粕、ヤシ油粕等の植物性油粕類;大豆油脂、粉末精製牛脂、動物性油脂等の油脂類;硫酸マグネシウム、硫酸鉄、硫酸銅、硫酸亜鉛、ヨウ化カリウム、硫酸コバルト、炭酸カルシウム、リン酸三カルシウム、塩化ナトリウム、リン酸カルシウム、塩化コリン等の無機塩類;リジン、メチオニン等のアミノ酸類;ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンD3、ビタミンE、パントテン酸カルシウム、ニコチン酸アミド、葉酸等のビタミン類;魚粉、脱脂粉乳、乾燥ホエー等の動物質飼料;生草;乾草等が挙げられる。
【0044】
また、本発明の飼料の製造方法は、さらに、成型する工程を含んでもよいが、前記飼料の形状は特に問わない。また、配合する前記飼料原料は前記飼料の形状により適宜加工をしてもよい。前記飼料原料以外の前記飼料の原料の形状の例には、粉、顆粒、ペレット、ブリケット、及びペーストが挙げられる。
【0045】
前記飼料を与える動物は特に問わないが、ルーメンを有する反芻動物が好ましい。反芻動物の具体例としては、牛、羊、山羊等が挙げられる。
【実施例】
【0046】
以下に、本発明の実施例を示すことにより、本発明をより具体的に説明する。しかし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0047】
実施に際しては、以下のものを使用した。
【0048】
脱脂菜種(株式会社J−オイルミルズ社製)
NDICP(乾燥質量%) 6.8、ADICP(乾燥質量%) 3.3
脱脂大豆(株式会社J−オイルミルズ社製)
NDICP(乾燥質量%) 4.5、ADICP(乾燥質量%) 1.5
【0049】
また、実施に際し、以下の方法で測定をおこなった。
【0050】
酸性デタージェント不溶性蛋白質(ADICP)含量の測定
全窒素・全炭素測定装置(製品名スミグラフ 型番NC−22F、株式会社住化分析センター社製)を用いて測定をおこなった。

ADICPの測定方法の概要は、以下の通りである。
(1)飼料分析法・解説(2009年版 日本科学飼料協会発行)を参考として、試料に対して酸性デタージェント処理を行った。
(2)酸性デタージェント処理後の残渣に対して、タンパク質含量の測定を行った。
(3)酸性デタージェント処理後の残渣に含まれるタンパク質の質量を酸性デタージェント処理前の質量で除して、ADICP含量(乾燥質量%)を算出した。
【0051】
中性デタージェント不溶性蛋白質(NDICP)含量の測定
全窒素・全炭素分析装置(製品名スミグラフ 型番NC−22F、株式会社住化分析センター社製)を用いて測定をおこなった。

NDICPの測定方法の概要は、以下の通りである。
(1)飼料分析法・解説(2009年版 日本科学飼料協会発行)を参考として、試料に対して中性デタージェント処理を行った。尚、中性デタージェント処理の際にα−アミラーゼを添加し、亜硫酸ナトリウムを添加しなかった。
(2)中性デタージェント処理後の残渣に対して、タンパク質含量の測定を行った。
(3)中性デタージェント処理後の残渣に含まれるタンパク質の質量を中性デタージェント処理前の質量で除して、NDICP含量(乾燥質量%)を算出した。
【0052】
リジン含量の測定
リジン含量は、一般的に用いられる塩酸分解法とアミノ酸自動分析法(標識:ニンヒドリン)で測定した。
【0053】
メチオニン含量の測定
メチオニン含量は、一般的に用いられる過ギ酸酸化法とアミノ酸自動分析法(標識:ニンヒドリン)で測定した。
【0054】
〔調製例1〕
以下の手順で、飼料原料を得た。
(1)500mL容量のビーカーに脱脂菜種25g、脱脂大豆25gを入れた(実施に必要な数を作成した)。
(2)よく混合した後、水を5g添加し、さらに混合した。
(3)食品用ラップフィルムで蓋をし、オーブン(製品名WINDY OVEN 型番WFO−601SD、東京理化機械製)(130℃)に入れた。
(4)1時間ごとに撹拌し、2〜6時間加熱をした。
(5)加熱終了後、室温で空冷した。
【0055】
上記で得られた飼料原料の分析をおこない、その分析結果を表1に示す。
【0056】
ペプシン消化率の測定は、以下のようにおこなった。
(1)飼料分析法・解説(2009年度版 日本科学飼料協会発行)を参考として、試料に対してペプシン処理をおこない、ろ過した。
(2)ペプシン処理後の残渣に対して、タンパク質含量の測定をおこなった。
(3)この残渣に含まれるタンパク質の質量をペプシン処理前のタンパク質の質量から引き、ペプシン処理前のタンパク質の質量で除して、ペプシン消化率(%)を算出した。
【0057】
トリプシン消化率の測定は、以下のようにおこなった。
(1)試薬の調製
0.2%トリプシン入りトリス緩衝液:トリス(ヒドロキシメチルアミノメタン)6.05gと塩化カルシウム二水和物2.94gを900mLの水で溶かし、pHを8.2に調整後、1Lにメスアップした。そこに2gのトリプシンを溶かした。
(2)試料0.5gを100mL容量三角フラスコに正確に0.5g量り取った。
(3)これにあらかじめ37℃に加温した0.2%トリプシン入りトリス緩衝液75mLを加えて密栓し、37℃で16時間振り混ぜながら消化処理をおこなった。
(4)消化処理した後、ろ紙でろ過し、ろ紙上の残渣に対して、タンパク質含量の測定をおこなった。
(5)この残渣に含まれるタンパク質の質量をトリプシン処理前のタンパク質の質量から引き、トリプシン処理前のタンパク質の質量で除して、トリプシン消化率(%)を算出した。
【0058】
【表1】
【0059】
表1で示したように、脱脂菜種と脱脂大豆を1:1で配合した原料を加熱処理することでADICP含量が6.6〜17.8乾燥質量%の飼料原料を調製することができた。また、3〜5時間の加熱でNDICP含量が24乾燥質量%以上となり、より好ましいルーメンバイパス性を有する飼料原料が得られた。
また、加熱時間が6時間である実施例1−5では、やや苦い風味があり、適度な加熱処理が風味のよい飼料原料の調製に必要であることがわかった。
【0060】
〔調製例2〕
実施例1−2で用いた脱脂菜種と脱脂大豆の配合を表2に記載の量としたこと以外は実施例1−2と同様におこなった。得られた飼料原料の分析をおこない、その分析結果を表2に示す。
【0061】
【表2】
【0062】
表2で示したように、脱脂菜種と脱脂大豆を1:4〜4:1で混合した後、加熱処理をすると、ADICP含量が4.9〜11.9乾燥質量%の飼料原料を調製することができた。また、NDICP含量は21.8〜25.4乾燥質量%であり、特に、脱脂菜種と脱脂大豆を2:3〜3:2に配合することでNDICP含量の高い飼料原料を得ることができた。
【0063】
〔調製例3〕
実施例1−2で用いた脱脂菜種と脱脂大豆の配合を表3に記載の量としたこと以外は実施例1−2と同様におこなった(実施例3−1、比較例3−1〜2)。また、比較例3−1と比較例3−2を等量混合した比較例3−3を調製した。得られた飼料原料の分析をおこない、その分析結果を表3に示す。
【0064】
【表3】
【0065】
表3で示したように、脱脂大豆単独では、ADICP含量が2.7乾燥質量%と低く、また、脱脂菜種単独では、脱脂菜種と脱脂大豆との混合に比較して、リジン含量やペプシン消化率、トリプシン消化率が低く、飼料原料として十分ではなかった。一方、脱脂菜種と脱脂大豆を1:1で混合した後、加熱処理をすると、トリプシン消化率は85.4%であり、加熱後混合した場合の82.0%に比べ、大きくトリプシン消化率が向上し、飼料原料として非常に有効であることが判った。
【0066】
〔調製例4〕
実施例1−4で用いた脱脂菜種と脱脂大豆の配合を表4に記載の量としたこと以外は実施例1−4と同様におこなった(実施例4−1、比較例4−1〜2)。また、比較例4−1と比較例4−2を等量混合した比較例4−3を調製した。得られた飼料原料の分析をおこない、その分析結果を表4に示す。
【0067】
【表4】
【0068】
表4で示したように、脱脂大豆単独では、ADICP含量が6.2乾燥質量%と低く、また、脱脂菜種単独では、リジン含量やペプシン消化率、トリプシン消化率が低く、飼料原料として十分ではなかった。一方、脱脂菜種と脱脂大豆を1:1で混合した後、加熱処理をすると、ADICP含量は15.8乾燥質量%であり、加熱後混合した場合の14.7乾燥質量%に比べ、効率よくADICP含量を高めることができた。
また、さらに、ペプシン消化率及びトリプシン消化率は84.5%及び67.8%であり、加熱後混合した場合の78.3%及び50.3%に比べ、大きくペプシン消化率及びトリプシン消化率が向上し、飼料原料として非常に有効であることが判った。
【0069】
〔実施例5〕
実施例1−2の飼料原料を用いて、以下の配合で飼料を作成した。
トウモロコシ 19.8質量%、
実施例1−2の飼料原料 10.0質量%、
フスマ 6.75質量%、
コーングルテンミール 6.75質量%、
アルファルファミール 5.4質量%、
マイロ 4.5質量%、
炭酸カルシウム 0.765質量%、
リン酸二石灰 0.585質量%、
食塩 0.27質量%、
ビタミンADE 0.09質量%、
微量ミネラル 0.09質量%、
チモシー乾草 45.0質量%