(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記加算器が算出した前記第3制御指令を入力して前記操作部の動きに応じて前記第3制御指令を調整して第4制御指令として出力する可変ゲイン制御部を前記制御装置がさらに備え、
前記制御装置が、前記外乱検知部が検知した前記外乱と、前記第2解析モデルに対して前記第3制御指令に代えて前記第4制御指令を入力して前記第4制御指令に対する前記制御対象への前記操作部による作用を算出した結果とを、前記第1解析モデルに対して入力し、前記第1解析モデルを用いて前記制御対象の応答を求め、求めた前記応答に応じて前記制御器によって前記制御指令を決定し、
前記制御装置が、前記第3制御指令に代えて、前記可変ゲイン制御部が算出した前記第4制御指令を前記操作部へ入力する
請求項5に記載の制御システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されている制振装置は、建物の所定の階に設置されたm個のセンサを用いて建物の物理変位を検知し、検知した物理変位をモード変位に変換し、モード変位に応じてアクチュエータを制御する。この場合、センサの個数mは制御しようとする固有モードの次数の範囲によって最低数が決められる。すなわち、n次モードまでを対象範囲とする場合、n個以上のセンサが必要になる。建物等の制御対象に設置するセンサの数が多数になると、制御系が複雑化するという課題がある。
【0006】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであり、制御対象に設置するセンサの個数を少なくすることができる制御システム、制御方法および制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、制御対象と、入力された制御指令に基づき前記制御対象に対して作用する操作部と、前記制御対象に加わる外乱を検知する外乱検知部と、制御器を有し、前記制御対象を模擬する第1解析モデルと、前記操作部を模擬して前記制御指令に対する前記制御対象への前記操作部による作用を算出する第2解析モデルとを用いて、前記外乱検知部が検知した前記外乱と前記第2解析モデルを用いて算出した前記作用とを前記第1解析モデルに対して入力し、前記第1解析モデルを用いて前記制御対象の応答を求め、求めた前記応答に応じて前記制御器によって前記制御指令を決定する制御装置とを備え、前記制御装置が前記制御器によって決定した前記制御指令を前記操作部へ入力する制御システムである。
【0008】
本発明の一態様は、上記制御システムであって、前記制御対象に前記外乱が加えられた際に前記制御対象の応答を検知する応答検知部をさらに備えるとともに、前記外乱検知部が検知した前記外乱と前記応答検知部が検知した前記制御対象の応答とに基づいて前記制御対象の動特性を求め、求めた前記動特性に基づいて前記第1解析モデルのパラメータを更新する制御対象パラメータ推定部を前記制御装置がさらに備える。
【0009】
本発明の一態様は、上記制御システムであって、前記制御対象が構造物であり、前記操作部が前記構造物に設置された制震装置であり、前記外乱検知部が前記外乱として前記構造物に加わる地動加速度を検知する。
【0010】
本発明の一態様は、上記制御システムであって、前記制震装置が前記構造物に設置されたアクティブ・マスダンパである。
【0011】
本発明の一態様は、上記制御システムであって、前記構造物で検知された応答振動に応じて前記操作部に入力する第2制御指令を算出する第2制御器と、前記制御指令と前記第2制御指令とを加算して第3制御指令を算出する加算器とを前記制御装置がさらに備え、前記制御装置が、前記外乱検知部が検知した前記外乱と、前記第2解析モデルに対して前記制御指令に代えて前記第3制御指令を入力して前記第3制御指令に対する前記制御対象への前記操作部による作用を算出した結果を、前記第1解析モデルに対して入力し、前記第1解析モデルを用いて前記制御対象の応答を求め、求めた前記応答に応じて前記制御器によって前記制御指令を決定し、前記制御装置が、前記制御指令に代えて、前記加算器が算出した前記第3制御指令を前記操作部へ入力する。
【0012】
本発明の一態様は、上記制御システムであって、前記加算器が算出した前記第3制御指令を入力して前記操作部の動きに応じて前記第3制御指令を調整して第4制御指令として出力する可変ゲイン制御部を前記制御装置がさらに備え、前記制御装置が、前記外乱検知部が検知した前記外乱と、前記第2解析モデルに対して前記第3制御指令に代えて前記第4制御指令を入力して前記第4制御指令に対する前記制御対象への前記操作部による作用を算出した結果とを、前記第1解析モデルに対して入力し、前記第1解析モデルを用いて前記制御対象の応答を求め、求めた前記応答に応じて前記制御器によって前記制御指令を決定し、前記制御装置が、前記第3制御指令に代えて、前記可変ゲイン制御部が算出した前記第4制御指令を前記操作部へ入力する。
【0013】
本発明の一態様は、上記制御システムであって、前記第1解析モデルと前記第2解析モデルが統合された1つの解析モデルである。
【0014】
本発明の一態様は、制御対象と、入力された制御指令に基づき前記制御対象に対して作用する操作部と、前記制御対象に加わる外乱を検知する外乱検知部と、制御器を有し、前記制御対象を模擬する第1解析モデルと、前記操作部を模擬して前記制御指令に対する前記制御対象への前記操作部による作用を算出する第2解析モデルとを用いて、前記外乱検知部が検知した前記外乱と前記第2解析モデルを用いて算出した前記作用とを前記第1解析モデルに対して入力し、前記第1解析モデルを用いて前記制御対象の応答を求め、求めた前記応答に応じて前記制御器によって前記制御指令を決定する制御装置とを用いて、前記制御器が決定した前記制御指令を前記操作部へ入力する制御方法である。
【0015】
本発明の一態様は、制御器を有し、制御対象を模擬する第1解析モデルと、入力された制御指令に基づき前記制御対象に対して作用する操作部を模擬して前記制御指令に対する前記制御対象への前記操作部による作用を算出する第2解析モデルとを用いて、前記制御対象に加わる外乱を検知する外乱検知部が検知した前記外乱と前記第2解析モデルを用いて算出した前記作用とを前記第1解析モデルに対して入力し、前記第1解析モデルを用いて前記制御対象の応答を求め、求めた前記応答に応じて前記制御器によって前記制御指令を決定し、決定した前記制御指令を前記操作部へ出力する制御装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、第1解析モデルおよび第2解析モデルに対して外乱と制御指令が入力され、計算処理によって制御対象の応答が求められ、求められた応答に応じて制御指令が決定される。したがって、制御対象に対しては複数のセンサを設置しなくてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態について説明する。
【0019】
<第1実施形態>
図1は、本発明に係る制御システムの第1実施形態の構成例を示すブロック図である。
図1(a)に示す制御システム100は、建物1と、地動センサ4と、制御装置5とを備える。
【0020】
図1(a)は、建物1の構造を模式化して示す。
図1(a)に示された建物1は、地盤2上に建造されている4階建ての建造物であり、1階〜4階の柱11、13、15、17と、柱11と柱13との間の床(あるいは梁(はり))12と、柱13と柱15との間の床14と、柱15と柱17との間の床16と、屋根(屋上スラブ)18とから構成されている。また、建物1は、床12と床14との間にアクチュエータ31を備えるとともに、床14と床16との間にアクチュエータ32を備える。
【0021】
アクチュエータ31およびアクチュエータ32は、アクティブまたはセミアクティブの制震装置であり、制御装置5が出力した制御指令52に応じて動作して建物1の振動を制御する。ここで、アクティブな制震装置とは制御指令52に応じて建物1に対して振動を抑制するための所定の力を作用させる装置である。アクティブな制震装置は、例えば
図1(b)に示すように、上階と下階から支持するためのブラケット71および72を設け、その間に油圧シリンダーによるアクチュエータ73を設けることで構成される。
図1(b)に示すアクティブな制震装置は、制御指令に応じてアクチュエータ73を押引きさせ、建物の上階と下階にアクティブな力を作用させる。一方、セミアクティブな制震装置とは、アクティブな制震装置のように直接力を発生するものではなく、建物の剛性や減衰等の係数を制御指令に基づいて動的に変化させるものである。セミアクティブな制震装置は、例えば
図1(c)に示すように、
図1(b)と同様なブラケット71および72を設け、その間に可変減衰オイルダンパ74を設置することで構成される。可変減衰オイルダンパ74は建物の層間変形に応じてパッシブな減衰力を発生するが、制御指令に応じて減衰係数を変化させるため、セミアクティブな制御力(減衰力)を作用させる。
図1(a)に示す例では、アクチュエータ31は床12と床14に対して作用し、アクチュエータ32は床14と床16に対して作用する。ただし、アクチュエータ31およびアクチュエータ32は、2つに限らず、1つあるいは3以上であってもよく、また、設置位置に限定は無い。
【0022】
地動センサ4は、地盤2上に発生する地動加速度を検知する加速度センサであり、検知した地動加速度を表す信号41(以下、この信号を地動加速度41と称する)を制御装置5に対して出力する。ただし、地動センサ4は、加速度に加えて(あるいは代えて)地盤2の速度や変位を単位時間毎に検知した結果を出力するものであってもよい。
【0023】
制御装置5は、パーソナルコンピュータ、マイクロコンピュータ、マイクロプロセッサ等のコンピュータであり、内部にCPU(中央処理装置)、揮発性および不揮発性の記憶装置、入出力インターフェース等を備える。制御装置5は、CPUで所定のプログラムを実行することで、制御器51等として機能し、地動加速度41を入力し、アクチュエータ31および32を制御する制御指令52を算出して出力する。
【0024】
制御装置5は、制御器51によって制御指令52を算出する際に、建物1を模擬する建物解析モデル53と、アクチュエータ31および32を模擬するアクチュエータ解析モデル55とを使用する。アクチュエータ解析モデル55は、アクチュエータ31および32の動特性を模擬する数理モデルであり、微分方程式などから構成されていて、制御指令52の値を連続的に所定の周期で繰り返し入力し、数値積分によって、建物1に対して作用するアクチュエータ31および32の発生力56を逐次算出し出力する。なお、アクチュエータ解析モデル55または建物解析モデル53への入力とは、方程式の所定の変数に数値を設定することを意味し、アクチュエータ解析モデル55または建物解析モデル53からの出力とは、方程式の解を算出することを意味する。また、制御装置5は、アクチュエータ解析モデル55および建物解析モデル53の入力から出力までの時間と制御指令52を算出する時間を、サンプリング周期よりも短時間で計算することが可能である。すなわち、制御装置5は、アクチュエータ解析モデル55および建物解析モデル53を用いた計算処理と制御指令52の算出処理を実時間で行うことができる。
図1(a)において、アクチュエータ解析モデル55は作図上ひとつとなっているが、一般的にはアクチュエータと同数である。制御指令52についても同様に、アクチュエータと同数となる。
【0025】
建物解析モデル53は、建物1の動特性を模擬する数理モデルであり、運動方程式などの微分方程式から構成されていて、固有周波数、減衰比等の複数のパラメータが実験的にあるいは数値解析によって建物1に合わせて設定されている。建物解析モデル53は、例えば4質点モデルで構成することができ、床12、14および16と屋根18に対応する4個の質点532〜535を有して構成される。この場合、アクチュエータ解析モデル55を用いて算出されたアクチュエータ31および32の発生力56は、質点531〜534に対して入力される。また、4質点モデルの地盤531に対して地動加速度41が入力される。建物解析モデル53は、地動加速度41と発生力56の各値を連続的に所定の周期で繰り返し入力し、数値積分によって、建物1の応答(建物応答54)を逐次算出し出力する。建物応答54は、各質点532〜535の変位、速度、加速度等の値を表す。また、建物解析モデル53では、固有モードの次数に制限はなく、例えばコンピュータの能力等に応じて次数の範囲を適宜選択することができる。
【0026】
制御器51は、建物応答54に応じて、アクチュエータ31および32ならびにアクチュエータ解析モデル55に対して出力する制御指令52を決定する。制御指令52の決定の仕方には限定はなく、建物応答54が総じて動きを抑制するように、あるいは変位、速度、加速度等が最大の質点の動きを抑制するように制御指令52を決定することができる。
【0027】
以上の構成において制御システム100では、制御装置5が、制御指令52をアクチュエータ解析モデル55へ入力して発生力56を算出する。次に、制御装置5が、地動センサ4が出力した地動加速度41を取り込む。次に、制御装置5が、アクチュエータ解析モデル55を用いて算出した発生力56と取り込んだ地動加速度41とを建物解析モデル53へ入力して、建物応答54を算出する。次に、制御装置5が、建物解析モデル53を用いて算出した建物応答54を制御器51へ入力して制御指令52を決定する。制御器51が決定した制御指令52は、アクチュエータ解析モデル55へ入力されるとともにアクチュエータ31および32に入力される。アクチュエータ31および32は、制御指令52に基づいて、実際の建物1の応答低減を図る。以上の過程が繰り返し実行される。
【0028】
図1に示す制御システム100では、建物1にセンサを複数設置しなくてもよく、建物1の地盤2に設置した地動センサ4のみで建物1の制震制御を実行することができる。したがって制御系の構成をシンプルにすることができる。また、建物1に複数のセンサを設置しない場合でも多数次の固有モードを解析し制御することができる。また、実際の建物1の応答をフィードバックしてはいないフィードフォワード制御であるので制震効果の高い強い制御を適用した場合にも高次モードの発振現象(スピルオーバー)は発生しない。また、応答を検知するセンサの電気ノイズによる不安定現象も発生しない。
【0029】
<第2実施形態>
図2は、本発明に係る制御システムの第2実施形態の構成例を示すブロック図である。
図2に示す制御システム100aは、建物1と、地動センサ4と、制御装置5aと、建物応答センサ61(応答検知部)とを備える。
図2において
図1と同一の構成には同一の符号を用い、対応する構成には符号の数字に英字(「a」等)を付加して用いている。以下、すでに説明した他の実施形態が備える構成と同一または対応する構成については説明を適宜省略する。
【0030】
建物応答センサ61は、建物1に対して地震動等の外乱が加えられた際に建物1の応答を検知してその検知結果を示す建物応答62を出力するセンサである。建物応答センサ61は、例えば加速度センサである。建物応答センサ61は、例えば、建物1の頂部付近に設置されている。
【0031】
制御装置5aは、
図1に示す制御装置5と比べて次の点が異なる。すなわち、制御装置5aは、新たに建物パラメータ推定部57(制御対象パラメータ推定部)を備えている。建物パラメータ推定部57は、建物応答センサ61が出力した建物応答62を入力するとともに地動センサ4が出力した地動加速度41を入力し、それらに基づいて推定した建物1のパラメータ58を建物解析モデル53に対して出力する。建物パラメータ推定部57は、地動センサ4が出力した建物1に対する外乱である地動加速度41と、建物応答センサ61が検知した建物応答62とを同時に(または短時間の時間差を有して)入力し、それらに基づいて建物1の動特性を求め、求めた動特性に基づいて建物解析モデル53のパラメータを更新する。建物パラメータ推定部57は、地動加速度41を入力信号とし、建物応答62を出力信号として建物1の伝達関数を測定することで建物1の動特性を取得する。建物パラメータ推定部57は、例えば
図3に示すような入出力信号間のゲインと位相差の周波数特性をFFT(高速フーリエ変換)アルゴリズムを用いて測定する。
図3は、建物1の動特性の一例を示す図であり、例えば、ゲインにみられるピークの振動数が下から順に、1次、2次、3次モードの固有振動数である。また、山の高さが減衰比に関係する。建物パラメータ推定部57は、例えば、新たに取得した固有振動数が建物解析モデル53に設定されているパラメータから一定の範囲を超えて変化している場合に、パラメータの値を更新する。
【0032】
図2に示す制御システム100aでは、
図1に示す制御システム100が奏する効果に加え、建物1に例えば1個の建物応答センサ61を設置することで、定期的に(例えば一定規模の地震が発生する毎に)建物解析モデル53のパラメータをアップデートすることができる。
【0033】
<第3実施形態>
図4は、本発明に係る制御システムの第3実施形態の構成例を示すブロック図である。
図4に示す制御システム100bは、建物1aと、アクティブ・マスダンパ3と、地動センサ4と、制御装置5bとを備える。
図4に示す制御システム100bでは、建物1aの頂部近傍に
図1に示すアクチュエータ31および32に代えて、それらに対応する制震装置であるアクティブ・マスダンパ3が設置されている。
【0034】
アクティブ・マスダンパ3は、制御装置5bが出力した制御指令52aに応じて、例えば
図5に示すように錘33をモータ34および35とボールねじ36および37でX方向およびY方向に振動させることで建物1aの振動を抑える装置である。制御指令52aは、例えば2系統のモータの速度指令を系統毎に表す信号である。
図5の例ではXY二方向タイプとなっているが、一方向タイプの場合もある。また、アクティブ・マスダンパは複数台設置することもある。
【0035】
制御装置5bは、制御器(1)51aと、建物解析モデル53aと、アクティブ・マスダンパ解析モデル55aとを備える。制御器(1)51aは、
図1に示す制御器51と同一の構成であり、建物解析モデル53aが出力した建物応答54aに応じて制御指令52aを決定し、アクティブ・マスダンパ3とアクティブ・マスダンパ解析モデル55aとに出力する。本実施形態では、アクティブ・マスダンパ解析モデル55aと、建物解析モデル53aとが一体的に構成されている。建物解析モデル53aとアクティブ・マスダンパ解析モデル55aが、
図1に示す建物解析モデル53とアクチュエータ解析モデル55にそれぞれ対応する。制御指令52aと建物応答54aが、
図1に示す制御指令52と建物応答54に対応する。このように建物解析モデル53a(第1解析モデル)とアクティブ・マスダンパ解析モデル55a(第2解析モデル)とを統合させたひとつの解析モデルとすることも可能である。
【0036】
次に、
図6を参照して、
図4に示す制御システム100bの動作例について説明する。制御システム100bにおいて制御装置5bは、制御指令52aをアクティブ・マスダンパ解析モデル55aに入力してアクティブ・マスダンパ慣性力を算出する(ステップS1)。次に、制御装置5bは、地動加速度41を取り込む(ステップS2)。次に、制御装置5bは、建物解析モデル53aに地動加速度41とアクティブ・マスダンパの慣性力を入力し、建物応答54aを算出する(ステップS3)。次に、制御装置5bは、建物応答54aを制御器(1)51aに入力し、制御指令52aを算出する(ステップS4)。次に、制御装置5bは、実際のアクティブ・マスダンパ3に制御指令52aを入力し、実際の建物1aの応答をコントロールする(ステップS5)。以降、制御装置5bは、ステップS1〜S5を繰り返し実行する。
【0037】
本実施形態によれば、次のような効果が得られる。すなわち、従来は、建物に設置した振動センサからの情報を用いたフィードバック制御で制振を行う。制御対象モードとして高次モードまで適用とすると複数のセンサが必要になり、重ねて、制御器も複雑になるため、頂部の1個のセンサで1次モードの制御を行うことが一般的となっている。そのため、1次モードに制震効果の高い強い制御を加えた場合には高次モードでの発振現象(スピルオーバー)が懸念される。それに対して、本実施形態では、1階に設置した地動センサのみの簡素なシステムでありながら、高次モードの制御が可能であり、フィードフォワード制御であるのでスピルオーバー等の不安定現象は発生しない。
【0038】
すなわち、
図4に示す制御システム100bでは、建物1aにセンサを複数設置しなくてもよく、建物1aの地盤2に設置した地動センサ4のみで建物1aの制震制御を実行することができる。したがって制御系の構成をシンプルにすることができる。また、建物1aに複数のセンサを設置しない場合でも多次の固有モードを考慮した解析モデルを用いれば多次の固有モードを制御することができる。また、実際の建物1aの応答をフィードバックしていないので発振現象は発生しない。
【0039】
<第4実施形態>
図7は、本発明に係る制御システムの第4実施形態の構成例を示すブロック図である。
図7に示す制御システム100cは、建物1aと、アクティブ・マスダンパ3と、地動センサ4と、制御装置5cと、建物応答センサ61とを備える。
【0040】
制御装置5cは、
図4に示す制御装置5bと比べて次の点が異なる。すなわち、制御装置5cは、新たに制御器(2)501(第2制御器)と、加算器503とを備えている。制御器(2)501は、建物応答センサ61によって建物頂部付近で検知された建物応答62(応答振動)に応じて、制御器(1)51a(第1制御器)と同様にして、アクティブ・マスダンパ3に入力する第2制御指令502を算出する。加算器503は、制御指令52aと第2制御指令502とを加算して第3制御指令52bを算出する。
【0041】
また、制御装置5cは、アクティブ・マスダンパ解析モデル55aに対して制御指令52aに代えて第3制御指令52bを入力して第3制御指令52bに対する建物1aへのアクティブ・マスダンパ3による作用を算出した結果と、地動センサ4が検知した地動加速度41とを、建物解析モデル53aに対して入力し、建物解析モデル53aを用いて建物1aの応答を求め、求めた応答に応じて制御指令52aを決定する。そして、制御装置5cは、制御指令52aに代えて、加算器503が算出した第3制御指令52bをアクティブ・マスダンパ3に対して出力する。
【0042】
本実施形態によれば次の効果が得られる。すなわち、第3実施形態のように制御器(1)51aだけの制御では、風ゆれに対する制震制御ができない。これに対し、本実施形態のように、制御器(2)501を追加することで風ゆれに対する制震制御が可能となる。この場合、制御器(1)51aによる地震動に対する制御の効果は、制御器(2)501とお互いに干渉し多少効果が悪くなることが考えられるが、加算器503による加算後の信号(第3制御指令52b)を解析モデルに入力することで影響をなくすことができる。
【0043】
<第5実施形態>
図8は、本発明に係る制御システムの第5実施形態の構成例を示すブロック図である。
図8に示す制御システム100dは、建物1aと、アクティブ・マスダンパ3と、地動センサ4と、制御装置5dと、建物応答センサ61とを備える。
【0044】
制御装置5dは、
図7に示す制御装置5cと比べて次の点が異なる。すなわち、制御装置5dは、可変ゲイン制御部504を備えている。可変ゲイン制御部504は、加算器503が算出した第3制御指令52bを入力し、アクティブ・マスダンパ3の動きに応じて第3制御指令52bを調整して第4制御指令52cとして出力する。可変ゲイン制御部504による制御指令の調整は、例えば特許文献2に記載された公知のやり方を用いることができる。
【0045】
制御装置5dは、地動センサ4が検知した地動加速度41と、アクティブ・マスダンパ解析モデル55aに対して第3制御指令52bに代えて第4制御指令52cを入力して第4制御指令52cに対する建物1a象へのアクティブ・マスダンパ3による作用を算出した結果とを、建物解析モデル53aに対して入力する。そして、建物解析モデル53aを用いて建物応答54aを求め、求めた建物応答54aに応じて制御指令52aを決定する。また、制御装置5dは、第3制御指令52bに代えて、可変ゲイン制御部504が算出した第4制御指令52cをアクティブ・マスダンパ3へ入力する。
【0046】
本実施形態によれば、アクティブ・マスダンパ3の動きに応じて、制御の強さを調整することが可能となる。すなわち可変ゲイン制御を適用した信号を各解析モデルに入力することで、建物解析モデル53aによる建物応答54aを正確に得られる。
【0047】
<第6実施形態>
図9は、本発明に係る制御システムの第6実施形態の構成例を示すブロック図である。
図9に示す制御システム100eは、
図1に示す第1実施形態の制御システム100、
図4に示す第3実施形態の制御システム100b等の基本構成からなる実施形態である。
図9に示す制御システム100eは、制御対象1eと、操作部3eと、外乱検知部4eと、制御装置5eとを備える。
【0048】
制御対象1eは、制御の対象であり、
図1に示す第1実施形態の制御システム100では建物1、
図4に示す第3実施形態の制御システム100bでは建物1aである。ただし、制御対象1eは、建物に限らず他の構造物であったり、有体物に限らず無体物であったりしてもよい。
【0049】
操作部3eは、制御装置5eが出力した制御指令52eに応じて制御対象1eに対して作用する構成要素である。操作部3eは、
図1に示す第1実施形態の制御システム100ではアクチュエータ31および32、
図4に示す第3実施形態の制御システム100bではアクティブ・マスダンパ3である。他の例としては、例えば制御対象1eが温度制御系における炉であるとすれば燃料の調節弁であったり、例えば制御対象1eがサーボ機構における負荷軸であるとすればサーボ電動機であったりする。
【0050】
外乱検知部4eは、制御系の状態を乱そうとする外的要因である外乱を検知するセンサである。
図9に示す例では、外乱が制御対象1eに加えられているが、制御対象1e以外の要素に加えられてもよい。
図1に示す第1実施形態の制御システム100および
図4に示す第3実施形態の制御システム100bでは、外乱は地動加速度41であり、外乱検知部4eは地動センサ4である。また、外乱検知部4eの検知出力41eは地動加速度41である。なお、他の例としては、制御対象1eが温度制御系の炉である場合に外乱は炉外温度等であり、外乱検知部4eは炉外温度のセンサ等である。あるいは、制御対象1eがサーボ機構における負荷軸である場合に外乱は負荷変動や動力源の変動等であり、外乱検知部4eは負荷トルクセンサや動力源の電圧センサ等である。
【0051】
制御装置5eは、制御器51e(第1制御器)と、第1解析モデル53eと、第2解析モデル55eとを含む。第1解析モデル53eは制御対象1eの数理モデルであり、第2解析モデル55eは操作部3eの数理モデルである。第1解析モデル53eは、制御対象1eを模擬して、外乱検知部4eから検知出力41eを入力するとともに第2解析モデル55eから模擬作用56eを入力し、制御対象1eの応答を算出して、模擬応答54eとして出力する。第2解析モデル55eは、操作部3eを模擬して制御指令52eに対する制御対象1eへの操作部3eによる作用を算出して模擬作用56eとして、第1解析モデル53eに対して出力する。制御器51eは、第1解析モデル53eが出力した模擬応答54eに応じて制御指令52eを決定し、操作部3eと第2解析モデル55eへ出力する。すなわち、制御装置5eは、第1解析モデル53eと第2解析モデル55eとを用いて、外乱検知部4eが検知した外乱を表す検知出力41eと第2解析モデル55eを用いて算出した模擬作用56eとを第1解析モデル53eに対して入力し、第1解析モデル53eを用いて制御対象1eの模擬応答54eを求め、求めた模擬応答54eに応じて制御器51eによって制御指令52eを決定する。なお、模擬作用56eと模擬応答54eにおける「模擬」は、操作部3eによる制御対象1eへの実際の作用および制御対象1eの実際の応答と、各解析モデルで算出した値とを区別するために付加した文言である。
【0052】
なお、制御器51eは、
図1に示す第1実施形態の制御システム100では制御器51、
図4に示す第3実施形態の制御システム100bでは制御器(1)51aである。第1解析モデル53eは、
図1に示す建物解析モデル53であり、あるいは、
図4に示す建物解析モデル53aである。第2解析モデル55eは、
図1に示すアクチュエータ解析モデル55であり、あるいは、
図4に示すアクティブ・マスダンパ解析モデル55aである。
【0053】
本実施形態では、制御装置5eが制御器51eが出力した制御指令52eを第2解析モデル55eに入力して模擬作用56eを算出する。次に制御装置5eは、外乱検知部4eの検知出力41eと第2解析モデル55eが出力した模擬作用56eとを第1解析モデル53eに入力して模擬応答54eを算出する。次に、制御装置5eは、第1解析モデル53eが出力した模擬応答54eを制御器51eに入力し、制御器51eで制御指令52eを決定する。制御装置5eは、制御器51eが出力した制御指令52eを操作部3eに入力するとともに、第2解析モデル55eに入力する。以降、制御装置5eは、上記の動作を繰り返し実行する。
【0054】
本実施形態によれば、第1解析モデル53eおよび第2解析モデル55eに対して外乱を表す検知出力41eと制御指令52eを入力し、計算処理によって制御対象1eの模擬応答54eが求められ、求めた模擬応答54eに応じて制御指令52eが決定される。したがって、制御対象1eに対しては実際の応答を検知するための複数のセンサを設置しなくてもよい。
【0055】
なお、本発明の実施形態は上記のものに限定されない。例えば、第3実施形態〜第5実施形態に対して、第2実施形態の建物パラメータ推定部57を追加したり、アクチュエータ31および32の個数を増やしたり、減らしたり、あるいは、アクティブ・マスダンパ3を複数設けたり、振動方向をXYの2次元ではなく、XまたはYの1次元としたり、同一方向に動作する複数組のアクティブ・マスダンパ3を設けたりすることができる。