【実施例】
【0060】
以下、実施例などにより本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されない。
【0061】
(原料)
アミン:N−メチルブチルアミン、N−メチルシクロヘキシルアミン、ジエチルアミン、ジメチルアミン、シクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン(全て東京化成工業株式会社製)
水:蒸留水(和光純薬工業株式会社製)
有機溶媒:2−プロパノール、t-ブチルアルコール、フェノール、トルエン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、メタノール(全て東京化成工業株式会社製)
【0062】
[実施例1][(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z1)の製造]
ポータブルリアクター(耐圧硝子工業株式会社製:TVS−N2)に、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z0)としてポリメタクリル酸メチルブロック−ポリアクリル酸n−ブチルブロック共重合体(クラリティ(登録商標)LA2140、株式会社クラレ製、メタクリル酸メチル単位28.5モル%)12.5g、2−プロパノール18.75g、トルエン18.75g、水0.53g、N−メチルブチルアミン1.03g((メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z0)中のメタクリル酸メチル単位100モルに対して40モルとなる量)を導入し、内部を窒素置換した。
ポータブルリアクター内の温度を220℃に維持し、5時間撹拌したのち、25℃まで冷却し、1.3Pa、100℃にて溶媒を除去し(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z)(以下、「(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z1)」と称する)を得た。
【0063】
[実施例2][(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z2)の製造]
混合温度を180℃にした以外は実施例1と同様の方法で(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z)(以下、「(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z2)」と称する)を得た。
【0064】
[実施例3][(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z3)の製造]
混合温度を240℃にした以外は実施例1と同様の方法で(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z)(以下、「(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z3)」と称する)を得た。
【0065】
[実施例4][(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z4)の製造]
撹拌時間を1時間にした以外は実施例1と同様の方法で(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z)(以下、「(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z4)」と称する)を得た。
【0066】
[実施例5][(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z5)の製造]
撹拌時間を6時間にした以外は実施例1と同様の方法で(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z)(以下、「(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z5)」と称する)を得た。
【0067】
[実施例6][(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z6)の製造]
(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z0)10g、2−プロパノール20g、トルエン20g、水0.43g、N−メチルブチルアミン0.83g((メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z0)中のメタクリル酸メチル単位100モルに対して40モルとなる量)を導入した以外は実施例1と同様の方法で(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z)(以下、「(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z6)」と称する)を得た。
【0068】
[実施例7][(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z7)の製造]
N−メチルブチルアミンの添加量を0.26g((メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z0)中のメタクリル酸メチル単位100モルに対して10モルとなる量)とした以外は実施例1と同様の方法で(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z)(以下、「(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z7)」と称する)を得た。
【0069】
[実施例8][(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z8)の製造]
N−メチルブチルアミンに代えてジエチルアミン0.87g((メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z0)中のメタクリル酸メチル単位100モルに対して40モルとなる量)を導入した以外は実施例1と同様の方法で(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z)(以下、「(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z8)」と称する)を得た。
【0070】
[実施例9][(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z9)の製造]
N−メチルブチルアミンに代えてN−メチルシクロヘキシルアミン1.34g((メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z0)中のメタクリル酸メチル単位100モルに対して40モルとなる量)を導入した以外は実施例1と同様の方法で(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z)(以下、「(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z9)」と称する)を得た。
【0071】
[実施例10][(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z10)の製造]
N−メチルブチルアミンに代えてジメチルアミン0.53g((メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z0)中のメタクリル酸メチル単位100モルに対して40モルとなる量)を導入した以外は実施例1と同様の方法で(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z)(以下、「(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z10)」と称する)を得た。
【0072】
[実施例11][(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z11)の製造]
2−プロパノールに代えてフェノール18.75gを用いた以外は実施例7と同様の方法で(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z)(以下、「(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z11)」と称する)を得た。
【0073】
[実施例12][(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z12)の製造]
2−プロパノールに代えてt-ブチルアルコール18.75gを用い、N−メチルブチルアミンの添加量を0.52g((メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z0)中のメタクリル酸メチル単位100モルに対して20モルとなる量)とした以外は実施例1と同様の方法で(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z)(以下、「(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z12)」と称する)を得た。
【0074】
[実施例13][(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z13)の製造]
トルエンに代えてジエチレングリコールジメチルエーテル18.75gを用いた以外は実施例1と同様の方法で(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z)(以下、「(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z13)」と称する)を得た。
【0075】
[実施例14][(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z14)の製造]
トルエンを使用せず、2−プロパノール37.5gを用いた以外は実施例7と同様の方法で(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z)(以下、「(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z14)」と称する)を得た。
【0076】
[実施例15][(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z15)の製造]
2−プロパノールを使用せず、トルエン40gを用い、N−メチルブチルアミンの添加量を0.21g((メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z0)中のメタクリル酸メチル単位100モルに対して10モルとなる量)とした以外は実施例6と同様の方法で(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z)(以下、「(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z15)」と称する)を得た。
【0077】
[実施例16][(メタ)アクリル系重合体(X1)の製造]
(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z0)に代えて、(メタ)アクリル系重合体(X0)としてメタクリル酸メチルとアクリル酸メチルのランダム共重合体(メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル=97.5/2.5(質量比)、メルトフローレート:2、市販品)を12.5g用い、N−メチルブチルアミンの添加量を1.03g((メタ)アクリル系重合体(X0)中の(メタ)アクリル酸メチル単位100モルに対して9.5モルとなる量)とした以外は実施例1と同様の方法で(メタ)アクリル系重合体(X)(以下、「(メタ)アクリル系重合体(X1)」と称する)を得た。
【0078】
[実施例17][(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z16)の製造]
2−プロパノールに代えてメタノール18.75gを用いた以外は実施例1と同様の方法で(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z)(以下「(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z16)」と称する)を得た。
【0079】
[比較例1][(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z17)の製造]
N−メチルブチルアミンに代えてシクロヘキシルアミン1.18g((メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z0)中のメタクリル酸メチル単位100モルに対して40モルとなる量)を用いた以外は実施例1と同様の方法で(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z)(以下「(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z17)」と称する)を得た。
【0080】
[比較例2][(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z18)の製造]
水を添加しない以外は実施例1と同様の方法で(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z)(以下「(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z18)」と称する)を得た。
【0081】
[比較例3][(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z19)の製造]
N−メチルブチルアミンに代えてN,N−ジメチルシクロヘキシルアミン1.51g((メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z0)中のメタクリル酸メチル単位100モルに対して40モルとなる量)を用いた以外は実施例1と同様の方法で(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z)(以下「(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z19)」と称する)を得た。
【0082】
(カルボキシ基含有量の定量)
上記の実施例および比較例で得られた(メタ)アクリル系重合体1.0gをテトラヒドロフラン49gに溶解させて溶液を調製した。この溶液に0.01M水酸化カリウムエタノール溶液を0.1mL/minで滴下して電位差滴定を行い、このとき添加した0.01M水酸化カリウムエタノール溶液の体積V〔mL〕から、下記式によって、(メタ)アクリル酸単位由来のカルボキシ基の含有量[α1]〔mmol/g〕を算出した。結果を表1に示す。
[α1]〔mmol/g〕=(0.01×V)/1.0
【0083】
(酸無水物構造およびアミド構造の確認)
上記の実施例および比較例で得られた(メタ)アクリル系重合体について以下の条件でIRスペクトルを測定し、酸無水物構造に由来する吸収(1800cm
−1、1760cm
−1)およびアミド構造に由来する吸収(1640cm
−1)の有無によって確認した。
測定器:Bio−Rad社製 赤外分光光度計 「FTS 3000MX」
測定法:ATR法
測定温度:25℃
【0084】
(酸無水物構造の含有量の定量)
上記の実施例および比較例で得られた(メタ)アクリル系重合体を粉砕し、80℃の熱水に72時間浸漬することで酸無水物構造をカルボキシ基に変換し、上記の方法(IR測定)によって酸無水物構造が残存しないことを確認した。固体を濾過にて取り出し、乾燥した後、上記カルボキシ基の含有量[α1]と同様に算出したカルボキシ基の含有量[α2]から、下記式によって、酸無水物構造の含有量[β]〔mmol/g〕を決定した。結果を表1に示す。
[β]〔mmol/g〕=([α2]−[α1])/2
その結果、比較例1で得られた(メタ)アクリル系重合体はアミド構造を有し、比較例2で得られた(メタ)アクリル系重合体は酸無水物構造を有することが確認された。
【0085】
(反応後のポリマー中のメタクリル酸メチル単位およびアクリル酸n-ブチル単位の定量)
上記の実施例および比較例で得られた(メタ)アクリル系重合体について下記の条件にて
1H−NMR分析を行った。例えば、上記実施例および比較例のように、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z0)としてポリメタクリル酸メチルブロック−ポリアクリル酸n−ブチルブロック共重合体を用いた場合、反応後に得られた(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z)の
1H−NMRスペクトルにおいて、(メタ)アクリル酸メチル単位中の酸素原子に隣接するメチル基のプロトン(以下、「プロトンγ」と称する。)に相当するシグナルが3.65ppm、アクリル酸n-ブチル単位中の酸素原子に直結する炭素原子上のプロトン(以下、「プロトンδ」と称する。)に相当するシグナルが4.1ppm、アクリル酸n-ブチル単位中のカルボニル炭素に隣接する炭素原子上のプロトンに相当するシグナルが2.35ppmに観測される。アクリル酸n-ブチル単位中のカルボニル炭素に隣接する炭素原子上のプロトンに相当するシグナルの積分値を100とした場合の、プロトンγに相当するシグナルの積分値を[γ]、プロトンδに相当するシグナルの積分値を[δ]とし、表1に示した。
本発明の製造方法により、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)に由来する重合体ブロックにカルボキシ基が選択的に導入された(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z)を製造することが可能であり、これによって用途に応じた複雑なポリマー設計が可能となる。(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z)の中でいずれの重合体ブロックにカルボキシ基が導入されているかは、上記
1H−NMR分析により判定できる。実施例および比較例で用いた(メタ)アクリル系ブロック共重合体(Z0)の場合、理論上、メタクリル酸メチル単位が全てメタクリル酸単位となる場合[γ]=0となり、メチル基が反応の前後で変化しない場合[γ]=119.5となる。また、アクリル酸n−ブチル単位中のブチル基が反応の前後で変化しない場合には[δ]=200となる。
ただし、メタノールが反応系中に存在する場合、アクリル酸n−ブチル単位の一部又は全部がメタノールとのエステル交換によりアクリル酸メチル単位に変化することがあり、この場合には[δ]は200未満となる。また
1H−NMRスペクトルにおいてプロトンγ由来のシグナルとアクリル酸メチル単位中の酸素原子に隣接するメチル基のプロトン由来のシグナルを区別できないため、[γ]は119.5を超える可能性がある。例えばアクリル酸n-ブチル単位が全てメタノールとエステル交換した場合であって、重合体中の(メタ)アクリル酸メチル単位が全く(メタ)アクリル酸単位とならない場合には、[γ]=419.5、[δ]=0となる。
測定器:日本電子株式会社製 核磁気共鳴装置 「JNM−LA−400」
測定温度:25℃
測定溶媒:重水素化クロロホルム(試料が重水素化クロロホルムに溶解しない場合は、重水素化メタノールを使用した。)
【0086】
(外観)
上記の実施例および比較例で得られた(メタ)アクリル系重合体をテトラヒドロフランに溶解させて固形分濃度10質量%の溶液を調製し、該溶液を用いてキャスト法により厚さ約1mmのフィルムを作製した。得られたフィルムの色、透明性を目視で確認した。結果を表1に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
表1からわかるように、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位を含む重合体、第二級アミン、水および有機溶媒を混合する混合工程を含む実施例1〜17で得られた(メタ)アクリル系重合体は、カルボキシ基を有する。一方で、水を混合する工程を含まない比較例2で得られた(メタ)アクリル系重合体は酸無水物構造を有し、また、第二級アミンに代えて第一級アミンを使用した比較例1で得られた(メタ)アクリル系重合体はアミド構造を有することが、IRスペクトルの測定により確認された。このように酸無水物構造やアミド構造を有する場合、カルボキシ基の含有量が制限される。また、第二級アミンに代えて第三級アミンを使用した比較例3で得られた(メタ)アクリル系重合体は、第二級アミンを使用した場合と比較して、カルボキシ基の含有量が少ない。なお、実施例17では[γ]が119.5を上回り、[δ]が200を有意に下回っている。これはメタノールとのエステル交換反応により一部のアクリル酸n−ブチル単位がアクリル酸メチル単位に変化したためと考えられる。同様の傾向は、炭素数3未満の低級アルコールを使用した場合においてもみられた。