特許第6713863号(P6713863)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6713863
(24)【登録日】2020年6月8日
(45)【発行日】2020年6月24日
(54)【発明の名称】基板ホルダ及びこれを用いためっき装置
(51)【国際特許分類】
   C25D 17/06 20060101AFI20200615BHJP
【FI】
   C25D17/06 C
【請求項の数】12
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-138431(P2016-138431)
(22)【出願日】2016年7月13日
(65)【公開番号】特開2018-9215(P2018-9215A)
(43)【公開日】2018年1月18日
【審査請求日】2019年3月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】宮本 松太郎
【審査官】 萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−040404(JP,A)
【文献】 特表2012−508814(JP,A)
【文献】 特開平11−204460(JP,A)
【文献】 特開2005−213610(JP,A)
【文献】 特開2002−038297(JP,A)
【文献】 特開2004−052059(JP,A)
【文献】 特開2004−076022(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0107836(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 17/00−21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と接触するように構成される第1面を有する第1保持部材と、
前記第1保持部材と共に前記基板を挟み込んで保持する第2保持部材と、を有し、
前記第1保持部材は、前記第1面に接触した前記基板を前記第1面の所定の位置に位置決めする位置決め部材を有し、
前記位置決め部材は、剛体で形成され、前記基板の周縁部と接触し、前記第1面の所定の位置に前記基板を位置決めする第1位置と、前記基板の周縁部より外側に位置し、前記基板と接触しない第2位置との間を移動するように構成され、
前記第2保持部材は、前記第1保持部材と前記第2保持部材とで前記基板を保持したときに、前記第1面の径方向において内側に位置する内周面が、前記第1面の径方向における前記位置決め部材の外側と接触して前記位置決め部材を前記第1位置に位置させるように構成された、剛体で形成された駆動部材を有する、基板ホルダ。
【請求項2】
基板と接触するように構成される第1面を有する第1保持部材と、
前記第1保持部材と共に前記基板を挟み込んで保持する第2保持部材と、を有し、
前記第2保持部材は、前記第1面に接触した前記基板を前記第1面の所定の位置に位置決めする位置決め部材を有し、
前記位置決め部材は、剛体で形成され、前記基板の周縁部と接触し、前記第1面の所定の位置に前記基板を位置決めする第1位置と、前記基板の周縁部より外側に位置し、前記基板と接触しない第2位置との間を移動するように構成され、
前記第1保持部材は、前記第1保持部材と前記第2保持部材とで前記基板を保持したときに、前記第1面の径方向において外側に位置する側面が、前記第1面の径方向において内側に位置する前記位置決め部材の部分と接触して前記位置決め部材を前記第1位置に位置させるように構成された、剛体で形成された駆動部材を有する、基板ホルダ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された基板ホルダにおいて、
前記位置決め部材又は/及び前記駆動部材は、芳香族ポリエーテルケトンから形成され
る、基板ホルダ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載された基板ホルダにおいて、
前記駆動部材は、合成樹脂から形成される、基板ホルダ。
【請求項5】
請求項1からのいずれか一項に記載された基板ホルダにおいて、
前記第1保持部材又は前記第2保持部材と前記位置決め部材との間に配置され、前記位置決め部材を前記第2位置に付勢する付勢部材を有する、基板ホルダ。
【請求項6】
基板と接触するように構成される第1面を有する第1保持部材と、
前記第1保持部材と共に前記基板を挟み込んで保持する第2保持部材と、を有し、
前記第1保持部材は、前記第1面に接触した前記基板を前記第1面の所定の位置に位置決めする位置決め部材を有し、
前記位置決め部材は、前記基板の周縁部と接触し、前記第1面の所定の位置に前記基板を位置決めする第1位置と、前記基板の周縁部より外側に位置し、前記基板と接触しない第2位置との間を移動するように構成され、
前記第2保持部材は、前記第1保持部材と前記第2保持部材とで前記基板を保持したときに、前記位置決め部材を前記第1位置に位置させるように構成された駆動部材を有し、
前記位置決め部材を回動自在に支持するピンを有し、
前記位置決め部材は、前記ピンを中心に回動することで、前記第1位置と前記第2位置との間を移動する、基板ホルダ。
【請求項7】
基板と接触するように構成される第1面を有する第1保持部材と、
前記第1保持部材と共に前記基板を挟み込んで保持する第2保持部材と、を有し、
前記第2保持部材は、前記第1面に接触した前記基板を前記第1面の所定の位置に位置決めする位置決め部材を有し、
前記位置決め部材は、前記基板の周縁部と接触し、前記第1面の所定の位置に前記基板を位置決めする第1位置と、前記基板の周縁部より外側に位置し、前記基板と接触しない第2位置との間を移動するように構成され、
前記第1保持部材は、前記第1保持部材と前記第2保持部材とで前記基板を保持したときに、前記位置決め部材を前記第1位置に位置させるように構成された駆動部材を有し、
前記位置決め部材を回動自在に支持するピンを有し、
前記位置決め部材は、前記ピンを中心に回動することで、前記第1位置と前記第2位置との間を移動する、基板ホルダ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載された基板ホルダにおいて、
前記位置決め部材は、先端部を有し、
前記先端部は、第1先端部と第2先端部とに分岐し、
前記第1先端部は、前記第1保持部材と前記第2保持部材とで前記基板を保持した状態で、前記基板の径方向内側に位置し、
前記第2先端部は、前記第1保持部材と前記第2保持部材とで前記基板を保持した状態で、前記基板の径方向外側に位置し、
前記第1先端部は、前記基板と接触するように構成され、
前記第2先端部は、前記駆動部材と接触するように構成される、基板ホルダ。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載された基板ホルダにおいて、
前記第1保持部材は、前記基板を前記第1面上の所定の位置にガイドするガイド部材を有する、基板ホルダ。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載された基板ホルダにおいて、
前記第1保持部材または前記第2保持部材は、前記第2保持部材と前記基板との間をシールする基板シール部材と、前記第2保持部材と前記第1保持部材との間をシールするホルダシール部材とを有する、基板ホルダ。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載された基板ホルダにおいて、
前記基板に給電する給電部を有し、
前記給電部は、前記基板の周方向の95%以上の長さにわたって前記基板と接触するように構成される、基板ホルダ。
【請求項12】
請求項1から11に記載された基板ホルダを使用して基板にめっき処理を行う、めっき装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板ホルダ及びこれを用いためっき装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、TAB(Tape Automated Bonding)やフリップチップの製造においては、導線が形成された半導体チップの表面の所定箇所に金、銅、はんだ、若しくはニッケル、又はこれらを多層に積層した金属からなる突起状接続電極(バンプ)を形成することが広く行われている。このバンプを介して、半導体チップを、パッケージの電極やTAB電極と電気的に接続している。このバンプの形成方法としては、電解めっき法、蒸着法、印刷法、ボールバンプ法といった種々の手法がある。近年では、半導体チップのI/O数の増加、細ピッチ化に伴い、微細化が可能で性能が比較的安定している電解めっき法が多く用いられるようになってきている。
【0003】
電解めっき法は、カップ式とディップ式に大別される。カップ式では、半導体ウェハ等の基板の被めっき面を下向き(フェイスダウン)にして水平に置き、めっき液を下から噴き上げて、基板にめっきが行われる。ディップ式では、めっき槽の中に基板を垂直に立て、めっき液をめっき槽の下から注入しオーバーフローさせることで、基板にめっきが行われる。ディップ式を採用した電解めっき法は、めっきの品質に悪影響を与える泡の抜けが良く、フットプリントが小さいという利点を有している。このため、めっき穴の寸法が比較的大きく、めっきに長い時間を要するバンプめっきに適していると考えられる。
【0004】
従来のディップ式を採用した電解めっき装置においては、半導体ウェハ等の基板を着脱自在に保持する基板ホルダが使用される。この基板ホルダは、基板の端面と裏面をシールして、基板の表面(被めっき面)を露出させる。この基板ホルダを基板と共にめっき液中に浸漬させることで、基板の表面にめっきが行われる。
【0005】
基板ホルダは、基板表面に電流を流すために、基板表面に接触する電気接点を有する。例えば、一対の保持部材で基板を着脱自在に保持するようにした基板ホルダにおいては、一方の保持部材に電気接点が設けられる。他方の保持部材の支持面に基板を載置した状態で、これらの保持部材で基板を保持することで、電気接点が基板表面に接触する。
【0006】
このような基板ホルダでは、上記電気接点が板ばね状に形成され、これらの保持部材で基板を保持するときに、一方の保持部材に設けられた電気接点により支持面上の基板を支持面の中央にセンタリングすることが行われている(特許文献1参照)。即ち、電気接点を基板の縁部に接触させ、電気接点の弾性力を利用して、基板を中心方向に付勢している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4162440号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような電気接点は、板バネの弾性力により基板を中心方向に付勢しているので、各電気接点の弾性力が不均一である場合は、基板のセンタリング(位置決め)を正確に行うことが困難な場合がある。また、板バネの弾性力による基板のセンタリング(位置決め)には、次のような課題がある。すなわち、板バネの弾性力は、板バネ可動部の無負荷時の
位置、負荷時の位置、及び寸法によって決定される一方で、板バネの特性上、これらの設定を管理することは難しく、弾性力を正確に微調整することが難しい場合がある。基板のセンタリング(位置決め)能力を高く設定するためには剛性の高い板バネが好ましい。しかしながら、板バネの剛性が高い場合、板バネが基板に加える負荷が高くなり、最悪の場合、基板を損傷させてしまう虞がある。これとは逆に、剛性の低い板バネを使用すれば、基板が損傷することを抑制できる。しかしながら、剛性の低い板バネは、基板のセンタリング(位置決め)の能力が低いという問題がある。したがって、基板を損傷させることなく、基板のセンタリング(位置決め)を適切に行うことが課題となっていた。
【0009】
また、特許文献1においては、基板ホルダが複数回にわたって基板の脱着を行うことにより電気接点に金属疲労が生じた場合には、基板のセンタリングを正確に行うことができなくなる虞もある。さらに、特許文献1の基板ホルダには、複数の電気接点が設けられる。これらの電気接点は消耗品であり、複数の電気接点の一部のみが交換されることがある。このようにして古い電気接点と新しい電気接点とが基板ホルダに取り付けられた場合、電気接点毎に弾性力が異なる虞があり、その結果、基板のセンタリングを正確に行うことができなくなる虞がある。
【0010】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、板バネを使用しない、新たな位置決め構造を有する基板ホルダ、及びこれを使用しためっき装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一形態によれば、基板ホルダが提供される。この基板ホルダは、基板と接触するように構成される第1面を有する第1保持部材と、前記第1保持部材と共に前記基板を挟み込んで保持する第2保持部材と、を有する。前記第1保持部材は、前記第1面に接触した前記基板を前記第1面の所定の位置に位置決めする位置決め部材を有する。前記位置決め部材は、前記基板の周縁部と接触し、前記第1面の所定の位置に前記基板を位置決めする第1位置と、前記基板の周縁部より外側に位置し、前記基板と接触しない第2位置との間を移動するように構成さる。前記第2保持部材は、前記第1保持部材と前記第2保持部材とで前記基板を保持したときに、前記位置決め部材を前記第1位置に位置させるように構成された駆動部材を有する。
【0012】
この一形態によれば、位置決め部材が第1位置と第2位置との間を移動し、第1保持部材と第2保持部材とで基板を保持したときに、駆動部材が位置決め部材を第1位置に動かすことができる。これにより、位置決め部材に弾性力を有する板バネを使用しなくとも、駆動部材により位置決め部材を第1位置に移動させて、基板を位置決めすることができる。即ち、基板を第1位置に正確に位置決めし、いわゆる定位置において基板を保持することができる。また、位置決め部材に板バネを使用する必要が無いので、位置決め部材を樹脂や金属等の剛体で形成することができる。このため、板バネの弾性力が不均一となることに起因して、十分な基板の位置決め精度が確保できないといった課題も解消される。従来のように板バネ構造で基板を位置決めする場合、基板を十分に付勢するための弾性力を確保するために、板バネ構造にある程度の幅を持たせる必要があった。しかしながら、この一形態によれば、位置決め部材に板バネを使用する必要が無いので、位置決め部材を剛体で形成することができ、その結果、位置決め部材の幅(基板周方向の幅)を従来に比べて小さくすることができる。ひいては、位置決め部材の幅を小さくすることができるので、その分給電部の幅を大きくすることができ、基板のほぼ全周に亘って給電部を配置することができる。その結果、基板に均一に電流を流すことができ、基板に形成されるめっき膜の面内均一性を向上させることができる。
【0013】
本発明の一形態によれば、基板ホルダが提供される。この基板ホルダは、基板と接触す
るように構成される第1面を有する第1保持部材と、前記第1保持部材と共に前記基板を挟み込んで保持する第2保持部材と、を有する。前記第2保持部材は、前記第1面に接触した前記基板を前記第1面の所定の位置に位置決めする位置決め部材を有する。前記位置決め部材は、前記基板の周縁部と接触し、前記第1面の所定の位置に前記基板を位置決めする第1位置と、前記基板の周縁部より外側に位置し、前記基板と接触しない第2位置との間を移動するように構成される。前記第1保持部材は、前記第1保持部材と前記第2保持部材とで前記基板を保持したときに、前記位置決め部材を前記第1位置に位置させるように構成された駆動部材を有する。
【0014】
この一形態によれば、位置決め部材が第1位置と第2位置との間を移動し、第1保持部材と第2保持部材とで基板を保持したときに、駆動部材が位置決め部材を第1位置に動かすことができる。これにより、位置決め部材に弾性力を有する板バネを使用しなくとも、駆動部材により位置決め部材を第1位置に移動させて、基板を位置決めすることができる。即ち、基板を第1位置に正確に位置決めし、いわゆる定位置において基板を保持することができる。また、位置決め部材に板バネを使用する必要が無いので、位置決め部材を樹脂や金属等の剛体で形成することができる。このため、板バネの弾性力が不均一となることに起因して、十分な基板の位置決め精度が確保できないといった課題も解消される。従来のように板バネ構造で基板を位置決めする場合、基板を十分に付勢するための弾性力を確保するために、板バネ構造にある程度の幅を持たせる必要があった。しかしながら、この一形態によれば、位置決め部材に板バネを使用する必要が無いので、位置決め部材を剛体で形成することができ、その結果、位置決め部材の幅(基板周方向の幅)を従来に比べて小さくすることができる。ひいては、位置決め部材の幅を小さくすることができるので、その分給電部の幅を大きくすることができ、基板のほぼ全周に亘って給電部を配置することができる。その結果、基板に均一に電流を流すことができ、基板に形成されるめっき膜の面内均一性を向上させることができる。
【0015】
本発明の一形態において、前記位置決め部材又は/及び前記駆動部材は、剛体で形成される。
【0016】
この一形態によれば、位置決め部材又は/及び前記駆動部材が、剛体で形成される。従来のように板バネ構造で基板を位置決めする場合、基板を十分に付勢するための弾性力を確保するために、板バネ構造にある程度の幅を持たせる必要があった。しかしながら、位置決め部材が剛体で形成される場合には、位置決め部材の幅(基板周方向の幅)を従来に比べて小さくすることができる。ひいては、位置決め部材の幅を小さくすることができるので、その分給電部の幅を大きくすることができ、基板のほぼ全周に亘って給電部を配置することができる。その結果、基板に均一に電流を流すことができ、基板に形成されるめっき膜の面内均一性を向上させることができる。
【0017】
本発明の一形態において、前記位置決め部材又は/及び前記駆動部材は、芳香族ポリエーテルケトンから形成される。
【0018】
この一形態によれば、位置決め部材又は/及び駆動部材が、芳香族ポリエーテルケトンから形成される。芳香族ポリエーテルケトンは、例えば、PEK(ポリエーテルケトン)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PEKK(ポリエーテルケトンケトン)、及びPEEKK(ポリエーテルエーテルケトンケトン)、並びにこれらの複合材等を含む。芳香族ポリエーテルケトン、特にPEEKは、良好な加工性と剛性を有する樹脂(剛体)である。したがって、位置決め部材又は/及び駆動部材が芳香族ポリエーテルケトン、特にPEEKで形成されることにより、位置決め部材又は/及び駆動部材を比較的容易に加工することができる。また、芳香族ポリエーテルケトン、特にPEEKは、良好な耐疲労性、耐摩耗性、耐薬品性を有するので、基板ホルダで繰り返し基板を脱着しても位置決
め部材又は/及び駆動部材が破損し難く、且つめっき液に影響を受けにくい。
【0019】
本発明の一形態において、前記駆動部材は、合成樹脂から形成される。
【0020】
この一形態によれば、駆動部材が合成樹脂から形成される。合成樹脂には、例えばPVC(ポリ塩化ビニル)や芳香族ポリエーテルケトン等を含み得る。芳香族ポリエーテルケトンは、例えば、PEK(ポリエーテルケトン)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PEKK(ポリエーテルケトンケトン)、及びPEEKK(ポリエーテルエーテルケトンケトン)、並びにこれらの複合材等を含む。芳香族ポリエーテルケトン、特にPEEKは、良好な加工性と剛性を有する樹脂(剛体)である。したがって、駆動部材が芳香族ポリエーテルケトン、特にPEEKで形成されることにより、駆動部材を比較的容易に加工することができる。また、芳香族ポリエーテルケトン、特にPEEKは、良好な耐疲労性、耐摩耗性、耐薬品性を有するので、基板ホルダで繰り返し基板を脱着しても駆動部材が破損し難く、且つめっき液に影響を受けにくい。
【0021】
本発明の一形態において、基板ホルダは、前記第1保持部材又は前記第2保持部材と前記位置決め部材との間に配置され、前記位置決め部材を前記第2位置に付勢する付勢部材を有する。
【0022】
この一形態によれば、位置決め部材は、駆動部材によって第1位置に動かされていない間は、付勢部材により第2位置に付勢される。これにより、第1保持部材と第2保持部材とで基板を保持していないときは、自動的に位置決め部材が第2位置に位置するので、基板を基板ホルダに容易に脱着することができる。
【0023】
本発明の一形態において、基板ホルダは、前記位置決め部材を回動自在に支持するピンを有し、前記位置決め部材は、前記ピンを中心に回動することで、前記第1位置と前記第2位置との間を移動する。
【0024】
この一形態によれば、位置決め部材がピンによって回動自在に支持されるので、たとえば位置決め部材が第1位置と第2位置との間を水平方向又は鉛直方向に移動する場合に比べて、位置決め部材の移動スペースや設置スペースを小さくすることができる。ひいては、基板ホルダのサイズの大型化を抑制することができる。
【0025】
本発明の一形態において、前記位置決め部材は、先端部を有し、前記先端部は、第1先端部と第2先端部とに分岐し、前記第1先端部は、前記第1保持部材と前記第2保持部材とで前記基板を保持した状態で、前記基板の径方向内側に位置し、前記第2先端部は、前記第1保持部材と前記第2保持部材とで前記基板を保持した状態で、前記基板の径方向外側に位置し、前記第1先端部は、前記基板と接触するように構成され、前記第2先端部は、前記駆動部材と接触するように構成される。
【0026】
この一形態によれば、位置決め部材が第1先端部と第2先端部を有し、第1先端部と第2先端部とが分岐している。言い換えれば、第1先端部と第2先端部との間にスペースが生じ得る。基板を位置決めするとき、駆動部材が第2先端部と接触して位置決め部材を第1位置に動かし、これに対応して第1位置に移動した位置決め部材の第1先端部が基板と接触する。このとき、第1先端部と第2先端部との間にスペースが存在することにより、第1先端部が多少の弾性を有して基板に接触することができる。そうすると、サイズが数mm異なる基板であっても、第1先端部がその数mmの寸法差を吸収して、位置決め部材により異なるサイズの基板を位置決めすることができる。なお、第1先端部と第2先端部の間のスペースは、空隙であってもよいし、任意の弾性体が埋め込まれていてもよい。
【0027】
本発明の一形態において、前記第1保持部材は、前記基板を前記第1面上の所定の位置にガイドするガイド部材を有する。
【0028】
この一形態によれば、基板を支持面に配置するときに、所定の領域に容易に配置することができる。
【0029】
本発明の一形態において、前記第1保持部材または前記第2保持部材は、前記第2保持部材と前記基板との間をシールする基板シール部材と、前記第2保持部材と前記第1保持部材との間をシールするホルダシール部材とを有する。
【0030】
本発明の一形態において、前記基板に給電する給電部を有し、前記給電部は、前記基板の周方向の95%以上の長さにわたって前記基板と接触するように構成される。
【0031】
この一形態によれば、基板のほぼ全周に亘って給電部が基板と接触するので、基板表面に流れる電流の均一性を向上させることができる。
【0032】
本発明の一形態によれば、上記基板ホルダを使用して基板にめっき処理を行うめっき装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】第1実施形態に係る基板ホルダを使用してめっき処理を行うめっき装置の全体配置図である。
図2】第1実施形態に係る基板ホルダの分解斜視図である。
図3】基板ホルダの第1保持部材の部分平面図である。
図4】基板を保持した状態の基板ホルダの厚さ方向の切断面における部分拡大断面図である。
図5】ベースガイド機構を示す拡大断面図である。
図6図3に示したガイド部材の概略斜視図である。
図7図3に示した位置決め部材の斜視図である。
図8】可動ベースに取り付けられた状態の位置決め部材の斜視図である。
図9】位置決め部材の縦断面を示す斜視図である。
図10】位置決め部材が第1位置にある状態を示す、基板を保持した状態の基板ホルダの厚さ方向の切断面における部分拡大断面図である。
図11A】基板の位置決めを行うステップを示す概略図である。
図11B】基板の位置決めを行うステップを示す概略図である。
図11C】基板の位置決めを行うステップを示す概略図である。
図12】位置決め部材の変形例を示す、基板を保持した状態の基板ホルダの厚さ方向の切断面における部分拡大断面図である。
図13】第2実施形態に係る基板ホルダの第1保持部材の部分斜視図である。
図14】第2実施形態に係る基板ホルダの位置決め部材の斜視図である。
図15】第2保持部材を第1保持部材に取り付ける前の第2実施形態に係る基板ホルダを示す概略断面図である。
図16】第2保持部材を第1保持部材に取り付けたときの第2実施形態に係る基板
図17】第1保持部材を第2保持部材に取り付ける前の第3実施形態に係る基板ホルダを示す概略断面図である。
図18】第1保持部材を第2保持部材に取り付けたときの第3実施形態に係る基板ホルダを示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
<第1実施形態>
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下で説明する図面において、同一の又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。図1は、第1実施形態に係る基板ホルダを使用してめっき処理を行うめっき装置の全体配置図である。図1に示すように、このめっき装置は、2台のカセットテーブル102と、基板のオリフラ(オリエンテーションフラット)やノッチなどの位置を所定の方向に合わせるアライナ104と、めっき処理後の基板を高速回転させて乾燥させるスピンリンスドライヤ106とを有する。カセットテーブル102は、半導体ウェハ等の基板を収納したカセット100を搭載する。スピンリンスドライヤ106の近くには、基板ホルダ30を載置して基板の着脱を行う基板着脱部120が設けられている。これらのユニット100,104,106,120の中央には、これらのユニット間で基板を搬送する搬送用ロボットからなる基板搬送装置122が配置されている。
【0035】
基板着脱部120は、レール150に沿って横方向にスライド自在な平板状の載置プレート152を備えている。2個の基板ホルダ30は、この載置プレート152に水平状態で並列に載置され、一方の基板ホルダ30と基板搬送装置122との間で基板の受渡しが行われた後、載置プレート152が横方向にスライドされ、他方の基板ホルダ30と基板搬送装置122との間で基板の受渡しが行われる。
【0036】
めっき装置は、さらに、ストッカ124と、プリウェット槽126と、プリソーク槽128と、第1洗浄槽130aと、ブロー槽132と、第2洗浄槽130bと、めっき槽110と、を有する。ストッカ124では、基板ホルダ30の保管及び一時仮置きが行われる。プリウェット槽126では、基板が純水に浸漬される。プリソーク槽128では、基板の表面に形成したシード層等の導電層の表面の酸化膜がエッチング除去される。第1洗浄槽130aでは、プリソーク後の基板が基板ホルダ30と共に洗浄液(純水等)で洗浄される。ブロー槽132では、洗浄後の基板の液切りが行われる。第2洗浄槽130bでは、めっき後の基板が基板ホルダ30と共に洗浄液で洗浄される。基板着脱部120、ストッカ124、プリウェット槽126、プリソーク槽128、第1洗浄槽130a、ブロー槽132、第2洗浄槽130b、及びめっき槽110は、この順に配置されている。
【0037】
このめっき槽110は、例えば、オーバーフロー槽136の内部に複数のめっきセル114を収納して構成されている。各めっきセル114は、内部に1つの基板を収納し、内部に保持しためっき液中に基板を浸漬させて基板表面に銅めっき等のめっきを施すように構成される。
【0038】
めっき装置は、これらの各機器の側方に位置して、これらの各機器の間で基板ホルダ30を基板とともに搬送する、例えばリニアモータ方式を採用した基板ホルダ搬送装置140を有する。この基板ホルダ搬送装置140は、第1トランスポータ142と、第2トランスポータ144を有している。第1トランスポータ142は、基板着脱部120、ストッカ124、プリウェット槽126、プリソーク槽128、第1洗浄槽130a、及びブロー槽132との間で基板を搬送するように構成される。第2トランスポータ144は、第1洗浄槽130a、第2洗浄槽130b、ブロー槽132、及びめっき槽110との間で基板を搬送するように構成される。めっき装置は、第2トランスポータ144を備えることなく、第1トランスポータ142のみを備えるようにしてもよい。
【0039】
オーバーフロー槽136の両側には、各めっきセル114の内部に位置してめっきセル114内のめっき液を攪拌する掻き混ぜ棒としてのパドルを駆動する、パドル駆動部160及びパドル従動部162が配置されている。
【0040】
このめっき装置による一連のめっき処理の一例を説明する。まず、カセットテーブル102に搭載したカセット100から、基板搬送装置122で基板を1つ取出し、アライナ
104に基板を搬送する。アライナ104は、オリフラやノッチなどの位置を所定の方向に合わせる。このアライナ104で方向を合わせた基板を基板搬送装置122で基板着脱部120まで搬送する。
【0041】
基板着脱部120においては、ストッカ124内に収容されていた基板ホルダ30を基板ホルダ搬送装置140の第1トランスポータ142で2基同時に把持して、基板着脱部120まで搬送する。そして、2基の基板ホルダ30を基板着脱部120の載置プレート152の上に同時に水平に載置する。この状態で、それぞれの基板ホルダ30に基板搬送装置122が基板を搬送し、搬送した基板を基板ホルダ30で保持する。
【0042】
次に、基板を保持した基板ホルダ30を基板ホルダ搬送装置140の第1トランスポータ142で2基同時に把持し、プリウェット槽126に収納する。次に、プリウェット槽126で処理された基板を保持した基板ホルダ30を、第1トランスポータ142でプリソーク槽128に搬送し、プリソーク槽128で基板上の酸化膜をエッチングする。続いて、この基板を保持した基板ホルダ30を、第1洗浄槽130aに搬送し、この第1洗浄槽130aに収納された純水で基板の表面を水洗する。
【0043】
水洗が終了した基板を保持した基板ホルダ30は、第2トランスポータ144により、第1洗浄槽130aからめっき槽110に搬送され、めっき液を満たしためっきセル114に収納される。第2トランスポータ144は、上記の手順を順次繰り返し行って、基板を保持した基板ホルダ30を順次めっき槽110の各々のめっきセル114に収納する。
【0044】
各々のめっきセル114では、めっきセル114内のアノード(図示せず)と基板Wfとの間にめっき電圧を印加し、同時にパドル駆動部160及びパドル従動部162によりパドルを基板の表面と平行に往復移動させることで、基板の表面にめっきを行う。
【0045】
めっきが終了した後、めっき後の基板を保持した基板ホルダ30を第2トランスポータ144で2基同時に把持し、第2洗浄槽130bまで搬送し、第2洗浄槽130bに収容された純水に浸漬させて基板の表面を純水洗浄する。次に、基板ホルダ30を、第2トランスポータ144によってブロー槽132に搬送し、エアーの吹き付け等によって基板ホルダ30に付着した水滴を除去する。その後、基板ホルダ30を、第1トランスポータ142によって基板着脱部120に搬送する。
【0046】
基板着脱部120では、基板搬送装置122によって基板ホルダ30から処理後の基板が取り出され、スピンリンスドライヤ106に搬送される。スピンリンスドライヤ106は、高速回転によってめっき処理後の基板を高速回転させて乾燥させる。乾燥した基板は、基板搬送装置122によりカセット100に戻される。
【0047】
次に、図1に示した基板ホルダ30の詳細について説明する。図2は、第1実施形態に係る基板ホルダ30の分解斜視図である。図2に示すように、基板ホルダ30は、例えば塩化ビニル製で矩形平板状の第1保持部材31と、この第1保持部材31に対して着脱自在に構成される第2保持部材32とを有している。この基板ホルダ30は、第1保持部材31と第2保持部材32とでウェハ等の基板を挟み込むことで、基板を保持する。基板ホルダ30の第1保持部材31の略中央部には、基板を支持するための支持面33(第1面の一例に相当する)が設けられる。また、第1保持部材31の支持面33の外側には、支持面33の周囲に沿って、内方に突出する突出部を有する逆L字状のクランパ34が等間隔に複数設けられている。
【0048】
基板ホルダ30の第1保持部材31の端部には、基板ホルダ30を搬送したり吊下げ支持したりする際の支持部となる一対のハンド35が連結されている。図1に示したストッ
カ124内において、ストッカ124の周壁上面にハンド35を引っ掛けることで、基板ホルダ30が垂直に吊下げ支持される。また、この吊下げ支持された基板ホルダ30のハンド35を第1トランスポータ142又は第2トランスポータ144で把持して基板ホルダ30が搬送される。
【0049】
また、ハンド35の一つには、外部電源と電気的に接続される外部接点部38が設けられている。この外部接点部38は、複数の導線を介して支持面33の外周に設けられた複数の中継接点60(図3図4等参照)と電気的に接続されている。
【0050】
第2保持部材32は、リング状のシールホルダ36を備えている。第2保持部材32のシールホルダ36には、シールホルダ36を第1保持部材31に押し付けて固定するための押えリング37が回転自在に装着されている。押えリング37は、その外周部において外方に突出する複数の突条部37aを有している。突条部37aの上面とクランパ34の内方突出部の下面は、回転方向に沿って互いに逆方向に傾斜するテーパ面を有する。
【0051】
基板を保持するときは、まず、第2保持部材32を第1保持部材31から取り外した状態で第1保持部材31の支持面33に基板を載置し、第2保持部材32を第1保持部材31に取り付ける。続いて、押えリング37を時計回りに回転させて、押えリング37の突条部37aをクランパ34の内方突出部の内部(下側)に滑り込ませる。これにより、押えリング37とクランパ34にそれぞれ設けられたテーパ面を介して、第1保持部材31と第2保持部材32とが互いに締付けられてロックされ、基板が保持される。基板の保持を解除するときは、第1保持部材31と第2保持部材32とがロックされた状態において、押えリング37を反時計回りに回転させる。これにより、押えリング37の突条部37aが逆L字状のクランパ34から外されて、基板の保持が解除される。
【0052】
図3は、基板ホルダ30の第1保持部材31の部分平面図である。図示のように、基板ホルダ30の第1保持部材31は、支持ベース43と、支持ベース43から分離した略円板状の可動ベース44とを有する。支持面33は、可動ベース44に設けられる。また、第1保持部材31は、支持面33の周囲に沿うように、支持面33の全周にわたって支持ベース43に配置される中継接点60を有する。上述したように、中継接点60は、図2に示した外部接点部38と電気的に接続される。また、第1保持部材31は、支持面33に配置された基板を位置決めするための複数の位置決め部材70を有する。図示の例では、4つの位置決め部材70が、可動ベース44の外周部近傍に設けられる。さらに、第1保持部材31は、基板を支持面33上の所定の位置にガイドするための複数のガイド部材85を有する。
【0053】
図4は、基板を保持した状態の基板ホルダ30の厚さ方向の切断面における部分拡大断面図である。図示のように、第2保持部材32のシールホルダ36の第1保持部材31と対向する面には、基板シール部材39と、ホルダシール部材40が設けられる。基板シール部材39は、基板ホルダ30で基板Wfを保持したとき、基板Wfの外周部に接触して基板Wf表面とシールホルダ36との間をシールするように構成される。基板シール部材39は、本実施形態のように第2保持部材32と脱着自在に設けられてもよい。また、基板シール部材39として、基板Wfと接触して基板Wfの周縁部をシールする機能を有する突起部(又は、弾性体からなる構成部)を、第2保持部材32と一体不可分に構成してもよい。ホルダシール部材40は、基板シール部材39よりも径方向外側に設けられ、第1保持部材31の支持ベース43と接触するように構成される。これにより、ホルダシール部材40は、シールホルダ36と支持ベース43との間をシールすることができる。基板シール部材39及びホルダシール部材40は、シールホルダ36と、シールホルダ36にボルト等の締結具を介して取付けられる固定リング41との間に挟持されてシールホルダ36に取付けられている。なお、図示の実施形態では、基板シール部材39とホルダシ
ール部材40は第2保持部材32に設けられているが、これに代えて、これらのシール部材を第1保持部材31に設けてもよい。
【0054】
第2保持部材32のシールホルダ36の外周部には段部が設けられ、この段部に、押えリング37がスペーサ42を介して回転自在に装着されている。押えリング37は、酸に対して耐食性に優れ、十分な剛性を有する金属(例えばチタン)から構成される。スペーサ42は、押えリング37がスムーズに回転できるように、摩擦係数の低い材料、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)で構成されている。
【0055】
図3に示したように、第1保持部材31は、支持ベース43と、可動ベース44とを有する。支持ベース43は、略平板状で、基板ホルダ30で基板Wfを保持したときにホルダシール部材40と接触する。可動ベース44に設けられる支持面33は、基板ホルダ30で基板Wfを保持したときに、基板Wfの外周部を支持する。支持ベース43は、可動ベース44と対向する面に、突起45と、円筒状の圧縮ばね46とを有する。図4では、1つの突起45及び1つの圧縮ばね46が示されるが、突起45及び圧縮ばね46は、支持面33の周方向に沿って複数配置される。圧縮ばね46は、突起45の周囲を囲繞するように配置され、可動ベース44を支持ベース43から離れる方向に付勢する。可動ベース44の支持ベース43に対向する面には、圧縮ばね46の一部が挿入される凹部42aが設けられる。
【0056】
可動ベース44は、圧縮ばね46の付勢力に対抗して、支持ベース43に近接する方向に移動自在に支持ベース43に取付けられている。これにより、厚みの異なる基板Wfを基板ホルダ30で保持したときに、基板Wfの厚みに応じて、可動ベース44が圧縮ばね46の付勢力(ばね力)に対抗して支持ベース43に近接する方向に移動する。したがって、基板ホルダ30は、厚みの異なる基板Wfを保持した場合でも、基板シール部材39とホルダシール部材40が、それぞれ基板Wfと支持ベース43に適切に接触することができる。
【0057】
具体的には、第2保持部材32を第1保持部材31にロックして基板Wfを基板ホルダ30で保持したとき、基板シール部材39が基板ホルダ30で保持した基板Wfの外周部に沿った位置に接触し、ホルダシール部材40が第1保持部材31の支持ベース43の表面に接触する。このとき、可動ベース44が基板Wfの厚みに対応して、支持ベース43に対して移動する。即ち、基板Wfが厚いほど、可動ベース44の支持ベース43に対する移動量が大きくなる。
【0058】
したがって、この基板ホルダ30では、基板Wfが厚くなるほど、基板Wfの厚みの増加分にほぼ対応した量だけ圧縮ばね46の歪み(縮み)量が増加し、その分、可動ベース44の支持ベース43に対する移動量が大きくなる。このように、基板Wfの厚みに応じて可動ベース44の移動量が変化するので、基板シール部材39の圧縮寸法を一定範囲に保った状態で、厚みの異なる基板Wfを基板ホルダ30で保持することができる。
【0059】
図5は、ベースガイド機構を示す拡大断面図である。基板ホルダ30は、可動ベース44が支持ベース43に対してスムーズに移動することができるように、ベースガイド機構53を有する。ベースガイド機構53は、支持ベース43に固定したボルト等から構成されるガイドシャフト54と、可動ベース44に固定した、フランジ55aを有する略円筒状のシャフト受け55とを有する。ガイドシャフト54はシャフト受け55の内部を挿通する。これにより、可動ベース44は、ガイドシャフト54の外周面に沿って支持ベース43に対して移動可能に構成される。ガイドシャフト54は、例えばステンレス製であり、シャフト受け55は、例えば潤滑性のよい樹脂製である。可動ベース44が支持ベース43に対して横方向に動かないようにするため、ガイドシャフト54の外径とシャフト受
け55の内径との差は、0.05mm〜0.16mmに設定され得る。
【0060】
図示の例では、ガイドシャフト54を構成するボルトの頭部をストッパ54aとして使用し、圧縮ばね46(図4参照)のばね力によって、シャフト受け55のフランジ55aをストッパ54aに当接させる。これにより、可動ベース44が支持ベース43から脱離することを防止している。また、図示の例では、可動ベース44の表面に凹部44cを設け、この凹部44c内にガイドシャフト54のストッパ54aが露出するようにしている。これにより、ガイドシャフト54を構成するボルトを介して、可動ベース44の支持ベース43への取付け、取外しを容易に行うことができる。
【0061】
説明を図4に戻す。図4に示すように、第1保持部材31の支持ベース43には、平板形状の中継接点60が設けられる。図4には1つの中継接点60が示されているが、図3に示したように、中継接点60は、支持面33の周囲に沿うように、支持ベース43に複数配置される。中継接点60は、図2に示した外部接点部38と、図示しない導線により電気的に接続される。中継接点60は、その一端側がねじ等の任意の固定手段により支持ベース43に固定される。また、中継接点60の他端側が自由端になるように、支持ベース43に段部48が形成される。
【0062】
第2保持部材32の固定リング41の内周面には、基板ホルダ30で基板Wfを保持したとき、支持面33に支持された基板Wfの外周部と接触して基板Wfに給電する複数の給電接点50(給電部の一例に相当する)が取付けられている。図4には一つの給電接点50が示されるが、複数の給電接点50が、固定リング41のほぼ全周に亘って取り付けられている。なお、給電接点50は、第2保持部材32と別の部材として第2保持部材32に取り付けられていてもよいし、第2保持部材32と一体に形成されていてもよい。
【0063】
給電接点50は、基板Wfと接触する複数の第1端部51と、中継接点60と接触する複数の第2端部52とを有する。給電接点50は、好ましくは、ステンレス鋼等のばね材から形成される。第1端部51は、約90°の角度で折れ曲がり、前側(支持面33の中央側)に板ばね状に突出して構成される。第1端部51は、図4に示すように、基板ホルダ30で基板Wfを保持したときに、基板Wfの外周部に弾性接触するように構成される。具体的には、第1端部51は、基板ホルダ30で基板Wfを保持したときに、撓みながら基板Wfの外周部に接触する。これにより、給電接点50の第1端部51は、基板Wfの外周部に第1端部51の弾性に起因する力を加えることができ、基板Wfと確実に接触することができる。また、第1端部51は、基板Wfの周方向の95%以上にわたって基板Wfと接触する。
【0064】
図4に示すように、給電接点50の第2端部52は、基板ホルダ30の厚さ方向の切断面において略C形の断面を有する。具体的には、第2端部52は、第1端部51の折れ曲がる方向(前側)とは逆側に湾曲して、略C形の断面を形成している。これにより、給電接点50の第2端部52は、第1保持部材31と第2保持部材32とで基板Wfを保持したときに中継接点60に対して弾性接触するように構成される。より具体的には、給電接点50の第2端部52は、第1保持部材31と第2保持部材32とで基板Wfを保持したときに、中継接点60を第1保持部材31に向けて付勢するように、中継接点60と弾性接触する。これにより、給電接点50の第2端部52は、中継接点60に第2端部52の弾性に起因する力を加えることができ、中継接点60と確実に接触することができる。これに加えて、給電接点50が中継接点60に対して弾性接触するように構成されるので、第1実施形態のように、中継接点60を平板形状に形成することができる。したがって、中継接点60を、ステンレス鋼等のバネ材で形成する必要がなく、基板ホルダ30のコストを低減することができる。
【0065】
なお、第2端部52が図4に示すように略C形の断面を有するように形成されているが、第1保持部材31と第2保持部材32とで基板Wfを保持したときに第2端部52が中継接点60に対して弾性接触することができれば、第2端部52の形状はこれには限られない。例えば、第2端部52が中継接点60に接触したときに撓むように、第2端部52が板バネ状、コイルバネ状、又は皿バネ状に形成されてもよい。
【0066】
図4に示すように、第2端部52の中継接点60と接触する部分が曲面状に形成される。このように、第2端部52は、第1保持部材31と第2保持部材32とで基板Wfを保持したときに中継接点60と曲面で接触することが好ましい。給電接点50の第2端部52は、中継接点60と弾性接触するとき、弾性力に対する中継接点60からの反力により、第2端部52と中継接点60との接触部がずれる可能性がある。第1実施形態のように、給電接点50の第2端部52が中継接点60と曲面で接触すれば、第2端部52と中継接点60との接触部がずれた場合でも、第2端部52と中継接点60との間の摩擦を緩和することができる。ひいては、中継接点60の表面に導電性を向上させるための金めっき等が被覆されている場合には、中継接点60の表面の金めっき等が剥離することを抑制することができる。
【0067】
また、図4に示すように、給電接点50の第2端部52は、その上側及び後側が、固定リング41及びシールホルダ36により取り囲まれている。言い換えれば、第2保持部材32の固定リング41及びシールホルダ36は、第2端部52の中継接点60との接触部以外の領域の少なくとも一部を取り囲む壁面部を構成する。上述したように、給電接点50の第2端部52は、中継接点60と弾性接触するとき、弾性力に対する中継接点60からの反力により、第2端部52が中継接点60に対してずれる可能性がある。第1実施形態によれば、第2端部52が中継接点60に対してずれたとき、第2端部52が上記壁面部に接触することになる。したがって、第2端部52が中継接点60に弾性接触したときの第2端部52の中継接点60に対するずれの変位量を、壁面部と第2端部52との隙間の間隔内に抑えることができる。言い換えれば、第2端部52が第1端部51に対してずれることを抑制することができる。
【0068】
図6は、図3に示したガイド部材85の概略斜視図である。ガイド部材85は、第1保持部材31の可動ベース44に設けられる。また、ガイド部材85は、支持面33の外側に位置する板状部86を有する。板状部86は、その先端が支持面33よりもわずかに上方に位置し、支持面33側にテーパ面87を有する。支持面33に配置される基板Wfは、板状部86のテーパ面87によって、支持面33の所定の位置にガイドされる。
【0069】
図7は、図3に示した位置決め部材70の斜視図である。図8は、可動ベース44に取り付けられた状態の位置決め部材70の斜視図である。図9は、位置決め部材70の縦断面を示す斜視図である。図7から図9に示すように、位置決め部材70は、断面が略L字型の部材であり、支持面33と略平行に延在するアーム部76と、アーム部76から略直交するように支持面33の上まで延在する先端部75と、を有する。先端部75は、第1先端部75aと第2先端部75bに分岐する。言い換えれば、第1先端部75aと第2先端部75bとの間にスペースが存在する。このスペースは、図7から図9に示すように空隙であってもよいし、任意の弾性体で埋められてもよい。
【0070】
第1先端部75aは、第1保持部材31と第2保持部材32とで基板Wfを保持した状態で、基板Wfの径方向内側に位置する。言い換えれば、第1先端部75aは、支持面33の径方向内側に位置する。第2先端部75bは、第1保持部材31と第2保持部材32とで基板Wfを保持した状態で、第1先端部75aよりも基板Wfの径方向外側に位置する。言い換えれば、第2先端部75bは、第1先端部75aよりも支持面33の径方向内側に位置する。第2先端部75bの径方向外側には、第2先端部75bが先端側に向かっ
て幅が小さくなるようにテーパ面75cが形成される。後述するように、第1先端部75aは、基板Wfと接触する面を有し、第2先端部75bは、固定リング41と接触する面を有する。
【0071】
位置決め部材70は、任意の材料から形成することができる。しかしながら、基板Wfの位置決めの精度を向上させる観点から、位置決め部材70は、剛体で形成することが好ましい。また、位置決め部材70の加工性、耐疲労性、耐摩耗性、及び耐薬品性の観点から、位置決め部材70は、PEK、PEEK、PEKK、及びPEEKK、並びにこれらの複合材等の芳香族ポリエーテルケトンから形成されることがより好ましい。芳香族ポリエーテルケトン、特にPEEKは、良好な加工性及び剛性を有する樹脂(剛体)である。したがって、位置決め部材70が芳香族ポリエーテルケトン、特にPEEKで形成されることにより、位置決め部材70を比較的容易に加工することができる。また、芳香族ポリエーテルケトン、特にPEEKは、良好な耐疲労性、耐摩耗性、耐薬品性を有するので、基板ホルダ30で繰り返し基板Wfを脱着しても位置決め部材70が破損し難く、且つめっき液に影響を受けにくい。
【0072】
基板ホルダ30は、位置決め部材70を支持するための支持部材72を有する。支持部材72は、結合部72aと、結合部72aから端部に向かって分岐する分岐部72bとを有する。結合部72aは、ボルト等の固定手段74によって、可動ベース44に固定される。分岐部72bは、位置決め部材70を挟み込むように構成される。位置決め部材70は、分岐部72bを貫通するピン77によって回動自在に支持される。これにより、位置決め部材70は、支持部材72の分岐部72bによって回動自在に支持される。
【0073】
また、基板ホルダ30は、位置決め部材70のアーム部76と接触して、位置決め部材70の回動範囲を制限するストッパ73を有する。ストッパ73は、固定手段74によって支持部材72に固定される。図9に示すように、位置決め部材70のアーム部76と可動ベース44との間には、アーム部76を支持面33側に付勢するオーリング78(付勢部材の一例に相当する)が設けられる。
【0074】
図7から図9に示す位置決め部材70は、基板Wfの周縁部と接触して基板Wfを支持面33の所定の位置に位置決めする第1位置と、基板Wfの周縁部より外側に位置し、基板Wfと接触しない第2位置との間を移動可能に構成される。具体的には、位置決め部材70は、オーリング78によってアーム部76が支持面33に向かって付勢されることで、ピン77を中心に回動して、先端部75が支持面33の中央側から離れる方向に移動する。これにより、支持面33に基板Wfが配置された状態で、先端部75が基板に接触しない第2位置に位置決め部材70が移動する。なお、基板Wfの周縁部とは、基板Wfのベベル部をいう。言い換えれば、基板Wfの周縁部とは、基板Wfの最外周端を含み、角取り処理等がなされて基板Wfの被処理面に対して傾斜した一定範囲の領域をいう。
【0075】
図10は、位置決め部材70が第1位置にある状態を示す、基板Wfを保持した状態の基板ホルダ30の厚さ方向の切断面における部分拡大断面図である。図10に示すように、固定リング41は、その内周面にテーパ面41aを有する。位置決め部材70が第2位置、即ち基板Wfと接触していない位置にあるときに第1保持部材31と第2保持部材32とで基板Wfを保持すると、固定リング41のテーパ面41aが、第2先端部75bのテーパ面75cと接触して、第2先端部75bを、支持面33の径方向内側(中央部側)に押し込む。これにより、第1先端部75aが支持面33の径方向内側(中央部側)に移動し、基板Wfを所定位置に位置決めすることができる。即ち、この固定リング41は、第1保持部材31と第2保持部材32とで基板Wfを保持したときに、位置決め部材70を第1位置に移動させる駆動部材として機能する。固定リング41は、剛体で形成され得る。一実施例では、固定リング41は、PVCや芳香族ポリエーテルケトン等の合成樹脂
から形成され得る。芳香族ポリエーテルケトンは、PEK、PEEK、PEKK、及びPEEKK、並びにこれらの複合材等の芳香族ポリエーテルケトンを含み得る。
【0076】
図11Aから図11Cは、基板Wfの位置決めを行うステップを示す概略図である。なお、図11Aから図11Cにおいて、基板ホルダ30の構造は簡略化して示されている。また、オーリング78が、弾性を有する一般的な部材であるバネに簡略化して示されている。図11Aに示すように、支持面33に基板Wfが配置された状態で、第2保持部材32を第1保持部材31に取り付ける。このとき、図11Bに示すように、固定リング41の内周面が、位置決め部材70の先端部75の外側と接触して、先端部75を支持面33の中央部側に押し込む。その結果、図11Cに示すように、先端部75の内側が基板Wfの側部に接触して基板Wfを支持面33の所定位置、例えば中央部に位置決めすることができる。
【0077】
以上で説明したように、基板ホルダ30によれば、位置決め部材70が第1位置と第2位置との間を移動し、第1保持部材31と第2保持部材32とで基板Wfを保持したときに、固定リング41が位置決め部材70を第1位置に動かすことができる。これにより、位置決め部材70に弾性力を有する板バネを使用しなくとも、固定リング41により位置決め部材70を第1位置に移動させて、基板Wfを位置決めすることができる。したがって、位置決め部材70に板バネを使用する必要が無いので、位置決め部材70を樹脂や金属等の剛体で形成することができる。従来のように板バネ構造で基板Wfを位置決めする場合、基板Wfを十分に付勢するための弾性力を確保するために、板バネ構造にある程度の幅を持たせる必要があった。しかしながら、第1実施形態によれば、位置決め部材70に板バネを使用する必要がないので、位置決め部材70を剛体で形成することができ、その結果、位置決め部材70の幅(基板Wf周方向の幅)を従来に比べて小さくすることができる。ひいては、位置決め部材70の幅を小さくすることができるので、給電接点50の幅を大きくすることができ、基板Wfのほぼ全周に亘って給電接点50を配置することができる。その結果、基板Wfに均一に電流を流すことができ、基板Wfに形成されるめっき膜の面内均一性を向上させることができる。
【0078】
また、第1実施形態の基板ホルダ30において、位置決め部材70は、固定リング41によって第1位置に動かされていない間は、オーリング78により第2位置に付勢される。これにより、第1保持部材31と第2保持部材32とで基板Wfを保持していないときは、自動的に位置決め部材70が第2位置に位置するので、基板Wfを基板ホルダ30に容易に脱着することができる。
【0079】
また、第1実施形態では、位置決め部材70がピン77によって回動自在に支持されるので、たとえば位置決め部材70が第1位置と第2位置との間を水平方向又は鉛直方向に移動する場合に比べて、位置決め部材70の移動スペースと設置スペースを小さくすることができる。その結果、基板ホルダ30のサイズの大型化を抑制することができる。
【0080】
また、第1実施形態では、位置決め部材70が第1先端部75aと第2先端部75bを有し、第1先端部75aと第2先端部75bとが分岐している。言い換えれば、第1先端部75aと第2先端部75bとの間にスペースが存在する。基板Wfを位置決めするとき、固定リング41が第2先端部75bと接触して位置決め部材70を第1位置に動かし、これにより第1先端部75aが基板Wfの周縁部と接触する。このとき、第1先端部75aと第2先端部75bとの間にスペースが存在することにより、第1先端部75aが多少の弾性を有して基板Wfに接触することができる。そうすると、サイズが数mm異なる基板Wfであっても、第1先端部75aがその数mmの寸法差を吸収して、異なるサイズの基板Wfを位置決め部材70により位置決めすることができる。
【0081】
図12は、位置決め部材70の変形例を示す、基板を保持した状態の基板ホルダ30の厚さ方向の切断面における部分拡大断面図である。図12に示す位置決め部材70は、ピン77が挿入される長穴79を有する。長穴79は、その長手方向が先端部75の延びる方向に一致するように形成される。これにより、位置決め部材70は、ピン77によって回動自在に支持され、且つ長穴79の長手方向に沿って摺動することができる。また、この位置決め部材70は、基板Wfを支持面33に押さえるためのフック部75dを第1先端部75aに有する。フック部75dは、第1先端部75aの端部から支持面33の径方向内側に向かって突出するように設けられる。
【0082】
位置決め部材70は、オーリング78によってアーム部76が支持面33側に付勢される。このとき、ピン77は、長穴79の下方(第1保持部材31側)に位置する。即ち、位置決め部材70が基板Wfと接触していない第2位置にあるとき、オーリング78の付勢力によって、ピン77は長穴79の下方に位置する。このため、図12に示す位置決め部材70の先端部75は、位置決め部材70が第2位置にあるとき、図7から図10に示した位置決め部材70の先端部75よりも、支持面33の上方(支持ベース43とは逆側)に突出する長さが長くなる。基板Wfを支持面33に配置して、第2保持部材32を第1保持部材31に取り付けると、固定リング41のテーパ面41aが位置決め部材70の第2先端部75bと接触する。このとき、まず、テーパ面41aは、第2先端部75bを支持面33の径方向内側(中央部側)に押し込む。これにより、第1先端部75aが支持面33の径方向内側(中央部側)に移動し、基板Wfを所定位置に位置決めすることができる。続いて、テーパ面41aは、第2先端部75bを支持ベース43に向かって押し込む。このとき、ピン77が長穴79を摺動し、第1先端部75aのフック部75dを基板Wfの縁に引っ掛けて、基板Wfを支持面33に押さえつける。これにより、基板Wfを基板ホルダ30から取り出すときに、基板Wfに貼り付いた基板シール部材39を、基板Wfから剥離することができる。
【0083】
図12に示す位置決め部材70の変形例によれば、基板Wfの位置決めを行った後に、フック部75dによって基板Wfを支持面33に押さえつけることができるので、基板Wfを基板ホルダから取り出すときに、基板Wfが貼り付いた基板シール部材39を、基板Wfから剥離することができる。また、基板ホルダ30で保持する基板Wfには様々な前処理が行われているので、基板Wfに歪みが生じることがある。歪んだ基板Wfは、その縁部の高さが周方向で異なるので、支持面33に歪んだ基板Wfを配置したときに、その縁部に第1先端部75aが届かない虞がある。第1先端部75aを縁部に確実に接触させて、基板Wfを位置決めするためには、第1先端部75aの長さを長くすればよい。しかしながら、第1先端部75aの長さは、第1保持部材31と第2保持部材32で囲まれるスペースによって制約を受けるので、無限に長くすることはできない。図12に示す位置決め部材70の変形例によれば、位置決め部材70は、ピン77が長穴79の下方に位置するようにオーリング78によって支持面33側に付勢される。このため、位置決め部材70の先端部75を長くしなくとも、支持面33の上方(支持ベース43とは逆側)に突出する部分の長さを長くすることができる。したがって、保持される基板Wfに多少の歪みがあっても、第1先端部75aが歪んだ基板Wfの縁に接触し易くなり、基板Wfを位置決めし易くすることができる。さらに、このような歪んだ基板Wfであっても、フック部75dによって支持面33に押さえつけたり、基板Wfを基板ホルダから取り出すときに、基板Wfが貼り付いた基板シール部材39を、基板Wfから剥離したりすることができる。したがって、基板Wfの歪みを少なくとも部分的に解消することができるとともに、基板Wfに貼り付いた基板シール部材39を剥離する作用を有することもできる。また、位置決め部材70は、長穴79に沿って支持ベース43に向かって押し込められるので、第1保持部材31と第2保持部材32で囲まれるスペースに容易に収納することができる。
【0084】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る基板ホルダについて説明する。第2実施形態に係る基板ホルダは、第1実施形態において説明しためっき装置で使用され得る。以下、第2実施形態に係る基板ホルダについて、第1実施形態に係る基板ホルダ30と異なる部分を主に説明する。
【0085】
図13は、第2実施形態に係る基板ホルダの第1保持部材31の部分斜視図である。第2実施形態に係る基板ホルダ30の第1保持部材31は、可動ベース44の側面に突起部90を有する。図13には1つの突起部90が示されているが、複数の突起部90が、可動ベース44の側面に周方向に沿って等間隔に設けられる。突起部90は、支持面33側にテーパ面91を有する。テーパ面91は、支持面33側から支持ベース43側に向かって突起部90の突出量が増加するように形成される。突起部90は、第1保持部材31と第2保持部材32とで基板Wfを保持したときに、位置決め部材70が基板Wfと接触して基板Wfを位置決めする第1位置に、位置決め部材70を移動させる駆動部材として機能する。突起部90は、剛体で形成され得る。一実施例では、突起部90は、PVCや芳香族ポリエーテルケトン等の合成樹脂から形成され得る。芳香族ポリエーテルケトンは、PEK、PEEK、PEKK、及びPEEKK、並びにこれらの複合材等の芳香族ポリエーテルケトンを含み得る。
【0086】
図14は、第2実施形態に係る基板ホルダ30の位置決め部材70の斜視図である。第2実施形態に係る基板ホルダ30の第2保持部材32は、位置決め部材70を有する。第1保持部材31の固定リング41には、ねじ等の固定手段によって支持部材72が固定されている。位置決め部材70は、ピン77を介して支持部材72に接続される。位置決め部材70は、ピン77によって回動自在に支持される。位置決め部材70は全体として略板状の部材であり、その一端に第1先端部75aと第2先端部75bを含む先端部75が形成され、他端に図13に示した突起部90と接触するように構成される接触部80が形成される。接触部80と固定リング41との間には、弾性体の一例としてのバネ78´が設けられる。バネ78´は、接触部80を固定リング41の内周面から離れる方向に付勢する。これにより、先端部75は、固定リング41の内周面に近づく方向に付勢される。
【0087】
図15は、第2保持部材32を第1保持部材31に取り付ける前の第2実施形態に係る基板ホルダ30を示す概略断面図である。図16は、第2保持部材32を第1保持部材31に取り付けたときの第2実施形態に係る基板ホルダ30を示す概略断面図である。なお、図15及び図16において、基板ホルダ30の構造は簡略化して示されている。図15に示すように、第2保持部材32を第1保持部材31に取り付ける前は、位置決め部材70は、基板Wfと接触しない第2位置にある。具体的には、図15に示すように、バネ78´により、接触部80が支持面33の径方向内側に向かって付勢される。一方、位置決め部材70の先端部75は、支持面33の径方向外側に向かって付勢される。
【0088】
図16に示すように、第2保持部材32を第1保持部材31に取り付けようとするとき、位置決め部材70の接触部80は、突起部90によって支持面33の径方向外側に向かって押され、その結果、位置決め部材70が回動し、位置決め部材70の先端部75が支持面33の径方向内側に向かって移動する。これにより、位置決め部材70の先端部75は、基板Wfの側部に接触して、基板Wfを支持面33の所定位置、例えば中央部に位置決めすることができる。また、基板Wfを支持面33の所定位置に位置決めすると同時又はこれより後に、固定リング41の基板シール部材39´が基板Wfの外周部に接触して基板Wf表面とシールホルダ36との間をシールする。
【0089】
第2実施形態に係る基板ホルダ30は、第1実施形態に係る基板ホルダ30と同様の利点を有する。これに加えて、第2実施形態に係る基板ホルダ30は、位置決め部材70が
第2保持部材32に設けられることにより、以下の利点を有する。第2実施形態に係る基板ホルダ30では、位置決め部材70が給電接点50を有する第2保持部材32に設けられるので、位置決め部材70と給電接点50との位置関係が、第2保持部材32を介して固定される。したがって、位置決め部材70が基板Wfを位置決めすることによって、給電接点50に対する基板Wfの位置が直接的に決定されることになる。即ち、位置決め部材70によって、給電接点50と基板Wfとの位置関係を決定することができるので、基板Wfの中心から給電接点50までの距離を一定にすることができる。これにより、複数の給電接点50から基板Wfに流れる電流が均一になり、基板Wfに形成されるめっき膜の膜厚の面内均一性を向上させることができる。
【0090】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係る基板ホルダについて説明する。第3実施形態に係る基板ホルダは、いわゆる噴流式又はカップ式の基板ホルダである。即ち、第3実施形態に係る基板ホルダは、基板の被めっき面を下向き(フェイスダウン)にして略水平に保持する。この基板ホルダで保持する基板にめっきをするときは、基板を略水平の状態でめっき液に浸漬したり、めっき液を下から噴き上げたりする。第3実施形態に係る基板ホルダは、噴流式又はカップ式の基板ホルダでめっきを行う公知のめっき装置で使用され得る。
【0091】
第3実施形態に係る基板ホルダの保持機構は、第2実施形態に係る基板ホルダの保持機構とほぼ同一である。一方で、第3実施形態に係る基板ホルダは、第2実施形態と比べて、基板の保持手順が異なる。以下、第3実施形態に係る基板ホルダについて、第2実施形態に係る基板ホルダ30と異なる部分を主に説明する。
【0092】
図17は、第1保持部材31を第2保持部材32に取り付ける前の第3実施形態に係る基板ホルダ30を示す概略断面図である。図18は、第1保持部材31を第2保持部材32に取り付けたときの第3実施形態に係る基板ホルダ30を示す概略断面図である。なお、図17及び図18において、基板ホルダ30の構造は簡略化して示されている。図17に示すように、第3実施形態に係る基板ホルダ30では、まず、基板Wfが第2保持部材32の基板シール部材39´上に配置される。このとき、基板Wfの被めっき面は、図中下方を向く。
【0093】
図17に示すように、第1保持部材31を第2保持部材32に取り付ける前は、位置決め部材70は、基板Wfと接触しない第2位置にある。具体的には、図17に示すように、バネ78´により、接触部80が支持面33の径方向内側に向かって付勢される。一方、位置決め部材70の先端部75は、支持面33の径方向外側に向かって付勢される。
【0094】
続いて、図18に示すように、第2保持部材32を第1保持部材31に取り付けようとするとき、位置決め部材70の接触部80は、突起部90によって支持面33の径方向外側に向かって押され、その結果、位置決め部材70が回動し、位置決め部材70の先端部75が支持面33の径方向内側に向かって移動する。これにより、位置決め部材70の先端部75は、基板Wfの側部に接触して、基板Wfを支持面33の所定位置、例えば中央部に位置決めすることができる。言い換えれば、基板Wfが、環状の基板シール部材39´の所定位置、例えば中央部に位置決めされる。また、基板Wfを支持面33の所定位置に位置決めすると同時又はこれより後に、第1保持部材31の支持面33が基板Wfを基板シール部材39に押し付ける。これにより、固定リング41の基板シール部材39´が基板Wfの外周部に押圧され、基板Wf表面とシールホルダ36との間をシールする。
【0095】
第3実施形態に係る基板ホルダ30は、第2実施形態に係る基板ホルダ30と同様の利点を有する。即ち、第3実施形態に係る基板ホルダ30では、位置決め部材70が給電接点50を有する第2保持部材32に設けられるので、位置決め部材70と給電接点50と
の位置関係が、第2保持部材32を介して固定される。したがって、位置決め部材70が基板Wfを位置決めすることによって、給電接点50に対する基板Wfの位置が直接的に決定されることになる。即ち、位置決め部材70によって、給電接点50と基板Wfとの位置関係を決定することができるので、基板Wfの中心から給電接点50までの距離を一定にすることができる。これにより、複数の給電接点50から基板Wfに流れる電流が均一になり、基板Wfに形成されるめっき膜の膜厚の面内均一性を向上させることができる。
【0096】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上述した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。例えば、上述した発明の実施形態は、カップ式の電解めっき装置にも適用できることはもちろんである。また、基板を無電解めっき液に浸漬させてめっき処理を行うような無電解めっき装置にも適用できる。例えば、「基板ホルダ」又は「ウェハホルダ」という概念は、一般に、基板と係合して基板の移動及び位置決めを可能とする、部品の様々な組合せ及び部分的組合せにまで及ぶものである。その例としては、例えば、圧縮可能なリップシールを有したカップと、基板と係合するようにされたコーンとを有し、コーン及び基板からの垂直方向の力によりリップシールを圧縮して、このリップシールが液密封止を形成するように構成された、基板保持部材をこの概念に含めることができる。また、複数の基板を背中合わせで基板ホルダに保持するように構成した基板保持部材も、本発明の実施形態の概念に含めることができる。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲及び明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、又は省略が可能である。
【符号の説明】
【0097】
30…基板ホルダ
31…第1保持部材
32…第2保持部材
33…支持面
41…固定リング
50…給電接点
70…位置決め部材
75…先端部
75a…第1先端部
75b…第2先端部
75c…テーパ面
75d…フック部
77…ピン
78…オーリング
78´…バネ
80…接触部
85…ガイド部材
86…板状部
87…テーパ面
90…突起部
91…テーパ面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18