(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記リング視野の曲率が、像平面内で前記走査方向に遅れる視野縁部での中央視野点と該視野縁部の周辺部での周辺視野点との間で該走査方向に測定した距離が該走査方向に対して垂直に測定した視野幅の5%超に対応するように寸法決めされることを特徴とする請求項12に記載の投影レンズ。
前記マスク保持デバイス(RST)は、前記物体平面(OS)に対して直交方向に延びるz方向に平行な前記マスクの制御式変位のためのz変位デバイスを有することを特徴とする請求項14に記載の投影露光装置。
前記z変位デバイスは、前記マスクの変位が事前定義可能な移動プロファイルに従って1つの方向に実行される走査作動の開始と終了の間の時間間隔内に実施されるように動的に設計されることを特徴とする請求項15に記載の投影露光装置。
パターンが投影レンズの物体平面の領域に配置され、かつ該物体平面に対して光学的に共役である該投影レンズの像平面内に投影レンズを用いて結像可能であるように、照明系と投影露光装置のアナモルフィック投影レンズとの間にマスクを与える段階、
前記パターンの照明領域を前記照明系によって与えられる照明放射線で照明する段階、及び
走査作動中に走査方向に前記マスクを移動する段階、
を含む感放射線基板をマスクのパターンの少なくとも1つの像で露光するための投影露光方法であって、
前記マスクを変位させる段階であって、該変位が前記物体平面に対して垂直な方向の移動成分を有するように該マスクを変位させる段階と、
前記マスクの前記変位によって引き起こされる非点波面収差部分を動的波面操作系を用いて補正する段階と、
を特徴とする方法。
【背景技術】
【0003】
近年、半導体構成要素及び他の微小構造化構成要素、例えば、マイクロリソグラフィのためのマスクを製造するためにマイクロリソグラフィ投影露光方法が使用されている。これらの方法は、結像される構造のパターン、例えば、半導体構成要素の層の線パターンを担持するマスク(レチクル)の使用を有する。パターンは、投影露光装置内で照明系と投影レンズの間の投影レンズの物体平面の領域に配置され、照明系によって供給される照明放射線で照明される。パターンによって変更された放射線は、投影レンズを投影放射線として通過し、投影レンズは、感放射線層で被覆され、物体平面に対して光学的に共役な投影レンズの像平面に位置する面を有する露光される基板上にこのパターンを結像する。
【0004】
更に細かい構造を生成することを可能にするために、近年では極紫外範囲(EUV)からの短い使用電磁放射線波長を用いて、特に、5nmと30nmの間の範囲の動作波長を用いて中程度の開口数で作動し、高い分解能機能を実質的に取得する光学系が開発されている。13.5nm前後の動作波長を使用するEUVリソグラフィの場合に、例えば、NA=0.3の像側開口数を前提とすると、理論的には、約0.15μm程度の典型的な焦点深度によって0.03μm程度の分解能を達成することができる。
【0005】
極紫外範囲からの放射線は、その短い波長が、長い波長で透過性を有する公知の光学材料によって吸収されるので、屈折光学要素を用いては集束又は案内することができない。従って、EUVリソグラフィに対してはミラー系が使用される。
【0006】
EUVマイクロリソグラフィの分野においても、更に細かい構造を生成することを可能にするために、更に高い像側開口数NAを有する投影系を開発することによって使用される系の分解能機能を更に高める手法が行われている。それによって与えられた結像スケールβに対する物体側開口数NA
Oも高まる。
【0007】
高開口EUV系では、大きい放射線入射角で狭帯域マスクの反射率性能が有意に低下するので、この狭帯域マスクが問題になる。従って、リソグラフィ光学系に対して通例の1:4(│β│=0.25)の縮小結像スケールの代わりにそれよりも高い縮小率を使用することが既に提案されている。一例として、1:4(│β│=0.25)の代わりの1:8(│β│=0.125)の結像スケールは、物体側開口数NA
Oを半減し、従って、マスクにおける照明放射線の入射角も半減する。しかし、この結像スケール(同じマスクサイズに対する)は、露光視野のサイズを縮小し、従って、スループットを低減する。
【0008】
物体側開口数が高まると、物体側主光線角度を増大させなければならず、それによってマスクの吸収体構造による遮蔽効果がもたらされ、層伝達率の問題が引き起こされる可能性があることも既に認識されている。特に、レチクルコーティングに起因して重大なアポディゼーション効果が発生する可能性がある(例えば、WO 2011/120821 A1を参照されたい)。
【0009】
WO 2012/034995 A2は、上述の理由から取りわけEUV投影レンズをアナモルフィック投影レンズとして設計することを提案している。アナモルフィック投影レンズは、第1の方向の第1の結像スケールが、第1の方向に対して垂直な第2の方向の第2の結像スケールから外れるという特徴を有する。この偏差は、製造公差によって引き起こされる可能性がある偏差から有意に逸脱する。
【0010】
アナモルフィック投影レンズは、例えば、第1の方向の大きい物体側開口数による像平面の完全照明をこの第1の方向に結像されるレチクルの広がりを増幅する必要なく、かつ投影露光装置のスループットを低減することなく可能にする。更に、両方の方向に均一な結像スケールを有する系と比較して、照明光の斜方入射によって引き起こされる結像品質の損失の低減を達成することができる。
【0011】
例えば、視野広がりが小さい走査方向に1:8結像スケール(│β│=0.125)が設定され、それに対して走査方向に対して垂直(走査直交方向)に通例の1:4結像スケール(│β│=0.25)が作用する場合に、マスクでは特に大きい角度は導入されないが、視野サイズは、双方向に│β│=0.25を有する従来の非アナモルフィック投影レンズと比較して単に半減し、四分はされない。更に、再び大きいレチクルを用いて全視野を達成するオプションが生じる。
【0012】
投影露光装置は、一般的に、系の結像特性を制御ユニットの制御信号に基づいて定められた方式で変更することを可能にする複数のマニピュレータを有する操作系を含む。この場合に、「マニピュレータ」という用語は、取りわけ、投影ビーム経路内の個々の光学要素又は光学要素群を変更するために、対応する制御信号に基づいてこれらの光学要素又は光学要素群に能動的に影響を及ぼすように設計された光学機械デバイスを表している。多くの場合に、例えば、マスク及び/又は基板を変位させる、傾斜させる、及び/又は変形するためのマニピュレータも設けられる。一般的に、マニピュレータは、計量的に検出された結像収差をターゲットを定めた方式で低減することができるように設定される。
【0013】
一部のEUV系では、物体平面に対して垂直な成分を有するレチクルの変位及び/又は傾斜は、結像収差を補正するための有効な操作可能性を構成する。反射レチクル及び/又は非テレセントリック系における斜方放射線入射では、そのようなレチクル変位を用いて構造の横オフセットを補正することができる。この場合に、有効原理は、非テレセントリック照明の場合に、レチクルのzデフォーカス、並びに対応する像のzデフォーカスが像の横シフトを常に追加的にもたらすという事実に基づいている。物体視野内の照明のテレセントリック性が、例えば、2次関数的に変化する場合に、z偏心の場合の横像シフトの2次変動も存在し、それは、例えば、レチクル又は基板上に存在する2次歪曲プロファイルを補正するために使用することができる。
【0014】
DE10 2004 014 766 A1(US 7,372,539 B2を参照)は、EUV投影露光装置の投影レンズ内の歪像を補正する目的のために、投影レンズの軸に対して垂直であり、走査方向に対して垂直であり、かつ各場合にレチクル又はウェーハ上に生成される光視野の中心を通るように位置する軸の周りにレチクルを小さい角度だけ傾斜させることを提案している。
【0015】
EP1 039 510 A1は、結像スケールの収差及び発生された像の位置を補正するために光軸の方向にレチクルを調節し、かつ傾斜させることを提案している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明が対処する問題は、アナモルフィック投影レンズの使用の利点を特定の欠点を同等程度まで受け入れる必要なく取得することを可能にする手段を指定する問題である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この問題を解決するために、本発明は、請求項1に記載の特徴を含む投影レンズ、請求項14に記載の特徴を含む投影露光装置、及び請求項17又は請求項19に記載の投影露光方法を提供する。
【0019】
有利な発展は、従属請求項に指定される。全ての請求項の文言は、引用によって本明細書の内容に組み込まれる。
【0020】
本発明者は、アナモルフィックレンズの場合に、走査方向とそれに対して垂直な方向とに同じ結像スケールを有する従来の系では発生しない少なくとも1つの特殊な特徴が発生することを認識している。アナモルフィックレンズに独特のタイプの波面収差が確認されている。主張する発明による系の場合に、このタイプの収差、すなわち、このタイプの系に独特のこの収差は、特定的に適応された手段によって対処され、少なくとも部分的に補正することができる。
【0021】
本発明者は、取りわけ、一般的な結像系におけるいわゆる長手方向スケール(又は深度スケール)が、結像スケールの二乗によって与えられるという考察を端緒とした。長手方向スケールは、像領域内で物体平面に対して垂直な方向成分を有する物体シフトの場合に、集束結像を達成するために再集束を実施しなければならない程度を示している。定義により、アナモルフィックレンズでは、結像スケールは向きによって変化する(第1の方向の結像スケールと第2の方向の結像スケールの間の偏差)。同じことが長手方向スケールでも発生する。しかし、その結果、物体平面に対して垂直な物体シフトの場合に走査方向に向きを有する構造がそれに対して垂直な向きを有する構造とは別様にデフォーカスを受ける。これらの異なる焦点位置は、最も低い次数、例えば、フリンジゼルニケ数5(Z5)によって表すことができる非点収差に過ぎない。非アナモフィックレンズでは、この非点収差寄与が正確にゼロであることを強調しておく必要がある。
【0022】
主張する発明は、取りわけ、この新たに発生する収差に対処するために、非アナモフィックレンズと比較して投影レンズの通常実施される補正シナリオを変更又は拡張することを可能にする。
【0023】
投影レンズは、投影レンズの物体平面から像平面に通過する投影放射線の波面に動的に影響を及ぼすための波面操作系を含む。投影ビーム経路に配置された波面操作系の構成要素の効果は、制御ユニットの制御信号に依存して可変的に設定することができ、それによって投影放射線の波面は、ターゲットを定めた方式で変更することができる。
【0024】
一部の実施形態において、波面操作系の光学効果は、走査作動中に比較的短い時間スケールで、すなわち、高い動力学を用いてターゲットを定めた方式で有意に変更することができる。走査作動は、マスク及び基板のそれぞれの走査方向の同期移動によって特徴付けられ、この場合に、この走査作動の開始時点と終了時点の間にマスクのパターン全体が基板上に転写されるようにマスクが走査される。
【0025】
例えば、走査作動の途中で、例えば、アナモフィック投影レンズの場合の特定の収差を補償するために、レチクル又はマスクが物体平面に対して垂直(z方向)に向く移動成分を用いて変位した場合に、これまでに公知の補正可能性を用いては補償することができないか又は不十分にしか補償することができなかった非点波面収差部分が生成されることになる。それとは対照的に、動的波面操作系は、走査作動中にz方向のレチクル変位によって引き起こされる非点波面収差部分を完全又は少なくとも部分的に補償することができる。一部の実施形態において、この補正は、走査作動にわたって可変的に可能であり、すなわち、リソグラフィ条件に対して現在のシステムにおける走査作動では1秒弱程度の短い時間スケールで可能である。非常に動的な波面操作系を使用することで、1回の走査作動の開始時点と終了時点の間に望ましい非点波面収差補正を生成するために投影レンズの結像特性を走査作動中に事前定義可能な時間プロファイルに従って変更することができる。
【0026】
一部の実施形態は、走査作動外の時間間隔内で、例えば、走査作動が始まる前に波面操作系の光学効果を変更する段階を含む。そのような変更は、例えば、投影系が、例えば、新しいマスクが設けられた後に初期調節される場合に有用である場合がある。これらの場合に、変更をゆっくりと、すなわち、より長い時間スケールでもたらすことができるので、波面操作系を非常に動的であるように構成する必要はない。しかし、この目的のために非常に動的な波面操作系を同じく使用することができる。
【0027】
一実施形態により、波面操作系は、投影ビーム経路に配置された変位可能ミラーと、ミラーの位置を基準位置に対して可逆に変更するための第1の起動デバイスとを有する(少なくとも1つの)第1のマニピュレータを有することを提供する。それによって波面操作に向けて少なくとも1つのミラーの剛体自由度を使用するマニピュレータの第1のタイプが与えられる。ミラーは、全体的に(すなわち、その場所又は位置に関して)変位し、その結果、ミラー面の面形状が変更されることはない。変位は、軸変位(物体平面に対して直交方向に向く投影レンズの基準軸と平行な変位)、横変位(基準軸に対して垂直な横方向の変位)、又はミラーの傾斜を含むことができる。変位が回転軸の周りのミラーの回転を含む又は回転だけであることも可能である。
【0028】
第1のタイプのマニピュレータの個々のマニピュレータは1つで十分とすることができるが、一部の実施形態では2又は3以上の第1のマニピュレータが設けられる。特に、第1のタイプのマニピュレータのうちのマニピュレータとしての投影レンズの全てのミラーは、その剛体自由度に関して制御される方式で移動可能とすることができる。2又は3以上の第1のマニピュレータが存在する場合に、ある第1のマニピュレータの剛体移動中にこのマニピュレータによって生成される望ましくない(寄生)収差を少なくとも1つの他の第1のマニピュレータの適切な剛体移動を用いて全体の効果として望ましい非点波面補正が十分に残り、一方、それと比較して寄生収差レベルが低いように部分的又は完全に補償することは、改善された方式で可能である。
【0029】
少なくとも1つの第1のマニピュレータは、ミラーの変位が開始位置から少なくとも1つの中間位置を経て開始位置に戻る制御可能な移動プロファイルに従って1つの方向に進行する走査作動の開始時点と終了時点の間の時間間隔に実施されるように動的に設計することができる。これらの移動は、非常に短い時間スケールの範囲で、例えば、10分の1秒又は10分の数秒の範囲で実施することができる。
【0030】
しかし、マニピュレータは、走査作動中に必ずしも再度開始位置に戻る必要はない。2回の連続走査作動にわたって反対方向に走査を行うことができる。この場合の状況は、2回目の走査作動において(復帰経路上で)初めてマニピュレータが再度開始位置に戻ることとすることができる。マニピュレータが開始位置に全く戻らない場合も可能である。
【0031】
これらの場合にも、光学効果の変更に関する移動は、非常に短い時間スケールの範囲、例えば、10分の1秒又は10分の数秒の範囲で実施することができる。
【0032】
ミラーのうちの1つ、複数、又は全てのものの高速剛体移動による波面操作は、投影レンズのタイプに依存するある一定の状況では比較的複雑な方式でしか実現可能とすることができない。従って、これに代えて又はこれに加えて、他のマニピュレータのタイプを設けることが有用である場合がある。
【0033】
一部の実施形態において、波面操作系は、投影ビーム経路に配置され、かつミラー面を有する変形可能ミラーと、ミラー面の面形状を基準面形状に対して可逆に非点収差的に変更するための起動デバイスとを有する第2のマニピュレータを有する。この目的のために、起動デバイスは、例えば、ミラー面の4つの四分円内で作用し、面形状の非点変化をもたらすために対で別様に駆動することができる直径方向に対向して配置されたアクチュエータ対又はアクチュエータ群を有することができる。
【0034】
リソグラフィに適する結像投影レンズは、物体平面と像平面の間にこれらの物体平面及び像平面に対するフーリエ変換面である少なくとも1つの瞳面を有する。現実的に取得可能な面変形の場合に十分に強い非点補正効果を顕在化させることができるためには、変形可能ミラーは、光学的に瞳面に近接して配置しなければならない。
【0035】
ビーム経路内の光学要素又は光学面の位置を定量化するために、例えば、部分口径比SARを使用することができる。
【0036】
明確な定義により、投影ビーム経路内の光学要素の光学面の部分口径比SARは、部分開口直径DSAと光学的自由直径DCAの間の比率としてSAR:=DSA/DCAに従って定義される。部分開口直径DSAは、与えられた視野点から射出したビームの光線で照明される光学要素の部分面の最大直径によって与えられる。光学的自由直径DCAは、物体視野から到着する全ての光線によって照明される光学要素の面の領域を取り囲む円である光学要素の基準軸の周りの最小円の直径である。
【0037】
従って、視野平面(例えば、物体平面又は像平面)内ではSAR=0が成り立つ。瞳面内では、SAR=1が成り立つ。従って、「近視野」面は、0に近い部分口径比を有し、それに対して「近瞳」面は、1に近い部分口径比を有する。
【0038】
好ましくは、非点収差的に変形可能なミラー面を有するミラーは、このミラー面において部分口径比SARが0.5と1の間、特に0.7と1の間の範囲にあるように配置される。
【0039】
走査作動中に結像関連の変更をもたらすために、第1のマニピュレータ及び/又は第2のマニピュレータは、ミラーの光学効果の変更に関する起動移動を1秒よりも短い短時間スケール、特に10分の1秒又は10分の数秒(例えば、10分の2、10分の3、10分の4、10分の5、10分の6、10分の7、10分の8、10分の9秒)の範囲で発生可能であるように好ましくは動的に設計される。従って、必要に応じて走査作動中に高い動力学を用いて使用されることもある高速マニピュレータが含まれる。
【0040】
第1のタイプのマニピュレータのうちのマニピュレータ(剛体自由度内の移動)及び第2のタイプのマニピュレータのうちのマニピュレータ(ミラー面変形)は、異なる実施形態において交替的に設けることができる。必要に応じて、同じ投影レンズ内の異なるマニピュレータのタイプの組合せも可能である。
【0041】
本明細書において特別な強調を与え、投影レンズのアナモルフィック設計の結果として発生する非点波面収差部分は、互いに垂直な方向の結像スケールの二乗の間の差に依存することを踏まえて、(絶対値に関して大きい方の)結像スケールと(絶対値に関して小さい方の)結像スケールの間のスケール比が大き過ぎない場合が有利であると考えられる。このスケール比は、例えば、1.1から2.5の範囲、特に1.5から2の範囲にあるとすることができる。その結果、補正される非点波面部分の程度を比較的小さい値に制限することができ、それによって補正される収差が小さく保たれる。投影レンズが、例えば、x方向に結像スケールβ
x=0.25を有し、y方向に結像スケールβ
y=0.125を有する場合に、2というスケール比がもたらされる。
【0042】
これに代えて又はこれに加えて、補正に必要とされるレチクルのz方向の進行を低減することを目的として、レチクルの場所で、すなわち、物体平面内で第2の方向に像偏位の2次視野プロファイル(x方向(Z2収差))を生成するために第2の方向にテレセントリック性の比較的大きい変化(テレセントリック性変化)を与えることができる。この進行が短くなる場合に、それによって引き起こされる望ましくない非点波面収差部分も小さく保つことができ、相応により容易に補正することができる。
【0043】
テレセントリック性変化は、前側焦点距離によって定義され、前側焦点距離が短いほど大きくなる。無限の前側焦点距離では、光学系は入力においてテレセントリックであり、従って、変化を持たない。一部の場合に、第2の方向の前側焦点距離が絶対値に関して3mよりも短く、好ましくは2mよりも短く、特に1mよりも短い場合であれば有利であると考えられる。第2の方向の前側焦点距離は、第1の方向の前側焦点距離に対応することができるが、そうである必要はない。従って、第2の方向の前側焦点距離は、第1の方向の前側焦点距離から外れることができる。
【0044】
投影レンズは、矩形の有効物体視野(矩形視野)を矩形の有効像視野に結像するように設計することができる。これに代えて、投影レンズは、走査方向に湾曲したリング視野、すなわち、円弧有効物体視野を結像するように設計することができる。この場合に、リング視野の曲率が像平面内で走査方向に遅れて続く視野縁部にある中央視野点と視野縁部の周辺部にある周辺視野点との間で走査方向に測定した距離が走査方向と垂直に測定した視野幅の5%超、好ましくは、15%超、特に25%超に対応するように寸法決めされる場合であれば有利であると考えられる。そのような有意に湾曲したリング視野は、例えば、2次Z3変化、すなわち、視野にわたる像偏位のy方向又は走査方向の2次変化を生成することが意図される補正シナリオが行われる場合に有用である場合がある。そのような補正は、例えば、レチクル加熱の場合の波面収差を補償するのに有用である場合がある。この関連において、より大きく湾曲したリング視野は、レチクルの小さい傾斜しか補正に必要とされないことに寄与する。その結果、選択される補正振幅に対する関連の非点収差も比較的小さく留まり、従って、波面操作系による必要な補正も中程度とすることができる。
【0045】
説明したタイプの非点波面収差部分を補償することにもなる波面操作系は、レチクル変位によって引き起こされる非点波面収差部分の補正とは独立してxy非点収差を補正するための高速補正可能性として使用することができる。そのような収差は、例えば、二重極照明と共に使用される系における加熱効果の結果として生じる可能性がある。
【0046】
本発明は、更に、本明細書で考察中のタイプの投影レンズを含む、すなわち、レチクル変位によって引き起こされる非点波面収差部分を走査作動の前及び/又は最中に補正するための動的波面操作系を含む投影露光装置に関する。
【0047】
一部の実施形態において、投影露光装置のマスク保持デバイスは、物体平面に対して直交方向に移動するz方向と平行なマスクの制御式変位のためのzシフトデバイスを含む。このzシフトデバイスは、様々な補正シナリオの状況で、z方向と平行な移動成分を用いてマスクを変位させるために使用することができ、それによって互いに垂直な方向に異なる結像スケールに起因してアナモルフィック投影レンズ内に非点波面収差部分が生成される。この非点波面収差部分は、説明する方式で波面操作系を使用することで補償することができる。x軸及び/又はy軸の周りのレチクルの傾斜も同じく可能で好適とすることができる。この目的のために、マスク保持デバイスは、傾斜デバイスを含むことができる。
【0048】
本発明は、更に、感放射線基板をマスクのパターンの少なくとも1つの像で露光するための投影露光方法に関する。この場合に、アナモルフィック投影レンズを使用することができる。
【0049】
一部の実施形態において、走査作動中のマスクの走査方向の移動時に、例えば、特定の収差を補償するために、物体平面に対して垂直な変位方向(z方向)のマスクの制御式変位を少なくとも各相で発生させることができる。物体平面から像平面に通過する投影放射線の波面の投影ビーム経路に配置された操作可能ミラーとその光学効果を可逆に変更するための起動デバイスとを有する少なくとも1つのマニピュレータの駆動による非点収差影響を用いて、z変位によって生成される非点収差は、部分的又は完全に補償することができる。
【0050】
波面操作系のマニピュレータの起動デバイスの駆動は、走査作動中にほぼ瞬間的な補正効果を達成するためのマスクの動的な変位及び/又は傾斜に依存して実施することができる。この駆動は、例えば、以前に計算された感受性を使用するフィードフォワードモデルに基づいて実施することができる。例えば、マスクのあらゆる関連の変位移動に関して以前に計算されたミラーの起動デバイスの対応する起動進行が格納された少なくとも1つの以前に計算されたルックアップテーブルに基づいて駆動を実施することができる。その結果、レチクルの位置変化に対する波面操作系の疑似瞬間的応答は、制御の中程度の計算パワーを用いてさえも達成可能である。
【0051】
本発明の更に別の利点及び態様は、特許請求の範囲及び図を参照して下記で説明する本発明の好ましい例示的実施形態の以下の説明から明らかである。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図1は、本発明の一実施形態によるEUVマイクロリソグラフィ投影露光装置WSCの光学構成要素を示している。EUVマイクロリソグラフィ投影露光装置は、投影レンズOの像平面ISの領域に配置された感放射線基板Wを投影レンズの物体平面OSの領域に配置された反射マスクMのパターンの少なくとも1つの像で露光するように機能する。本明細書ではマスクMをこれに代えてレチクルMとも呼称する。この例の場合に、基板は半導体材料からなるウェーハである。
【0054】
説明の理解を容易にするために、図に例示する構成要素のそれぞれの位置関係を表す直交xyz座標系を示している。投影露光装置WSCは、スキャナタイプのものである。
図1では、x軸は作図面と垂直にその中に入り込むように延びる。y軸は右に向いて延びる。z軸は下方に延びる。物体平面OS及び像平面ISは、両方共にxy平面と平行に延びる。投影露光装置の作動中に、マスクMと基板は、y方向(走査方向)の走査作動中に同期して又は同時に移動され、それによって走査される。
【0055】
装置は、1次放射線源RSの放射線を用いて作動される。照明系ILLは、1次放射線源の放射線を受光し、パターン上に向けられる照明放射線を成形するように機能する。投影レンズPOは、パターンを感光基板上に結像するように機能する。
【0056】
1次放射線源RSは、取りわけ、レーザプラズマ放射線源、ガス放電放射線源、又はシンクロトロン利用放射線源とすることができる。そのような放射線源は、EUV範囲にある特に5nmと15nmの間の波長を有する放射線RADを生成する。照明系及び投影レンズは、EUV放射線の波長領域で作動させることができるようにEUV放射線に対して反射性を有する構成要素を用いて構成される。
【0057】
放射線源RSから射出した放射線RADは、コレクターCOLを用いて集光され、照明系ILL内に案内される。照明系は、混合ユニットMIXと、テレスコープ光学ユニットTOと、視野形成ミラーFFMとを含む。照明系は放射線を成形し、それによって投影レンズPOの物体平面OS内又はその近くに置かれた照明視野を照明する。この場合に、照明視野の形態及びサイズは、物体平面OS内の有効使用物体視野OFの形態及びサイズを決定する。
【0058】
装置の作動中に、反射レチクルMは、物体平面OSの領域に配置される。
【0059】
混合ユニットMIXは、実質的に2つのファセットミラーFAC1、FAC2から構成される。第1のファセットミラーFAC1は、物体平面OSに対して光学的に共役な照明系の平面に配置される。従って、第1のファセットミラーFAC1を視野ファセットミラーとも呼称する。第2のファセットミラーFAC2は、投影レンズの瞳平面に対して光学的に共役な照明系の瞳平面に配置される。従って、第2のファセットミラーFAC2を瞳ファセットミラーとも呼称する。
【0060】
瞳ファセットミラーFAC2と、ビーム経路内で下流に配置され、かつテレスコープ光学ユニットTO及びかすめ入射で作動される視野形成ミラーFFMを備えた結像光学アセンブリとを用いて、第1のファセットミラーFAC1の個々の鏡面反射ファセット(個々のミラー)が物体視野に結像される。
【0061】
視野ファセットミラーFAC1における空間(局所)照明強度分布は、物体視野内の局所照明強度分布を決定する。瞳ファセットミラーFAC2における空間(局所)照明強度分布は、物体視野OF内の照明角度強度分布を決定する。
【0062】
有効物体視野OFは、
図2及び
図3の例示的実施形態では矩形視野であるが、他の変形では湾曲視野(リング視野RF、
図2の詳細を参照されたい)とすることができる。
【0063】
マスク上に配置されたパターンが本明細書ではレチクル平面とも呼称する投影レンズPOの物体平面OSに位置するようにマスクM(レチクル)を保持して操作するためのマスク保持デバイスRSTが配置される。マスクは、この平面内で投影レンズの基準軸AX(z方向)に対して垂直な走査方向(y方向)のスキャナ作動に向けて走査ドライブSCMを用いて移動可能である。
【0064】
マスク保持デバイスRSTは、z方向と平行な(走査方向及びx方向に対して垂直な)レチクルの制御式変位のためのz変位デバイスを含む。更に、マスク保持デバイスRSTは、物体平面と平行な位置からx方向と平行に延びる傾斜軸及び/又はy方向と平行に延びる傾斜角の周りにマスクを必要に応じて傾斜させるための傾斜デバイスを更に含むことができる。これらのデバイスは、走査中に特に事前定義可能な移動プロファイルに従って1つの方向に進行する走査作動の開始時点と終了時点の間の時間間隔内にマスクの変位を実施することができるように動的に使用可能である。
【0065】
露光される基板Wは、基準軸AXに対して垂直な走査方向(y方向)にマスクMと同期して基板を移動するためのスキャナドライブSCWを含む基板保持デバイスWSTによって保持される。投影レンズPOの設計に基づいて、マスク及び基板のこれらの移動は、互いに平行又は逆平行に実施することができる。
【0066】
基板保持デバイスWSTは、z方向と平行な(走査方向に対して垂直な)基板の制御式変位のためのz変位デバイスを含む。基板保持デバイスWSTは、像平面と平行な位置からx方向と平行に延びる傾斜軸及び/又はy方向と平行に延びる傾斜角の周りに
ウェーハ又は基板を必要に応じて傾斜させるための傾斜デバイスを更に含むことができる。これらのデバイスは、走査中に特に事前定義可能な移動プロファイルに従って1つの方向に進行する走査作動の開始時点と終了時点の間の時間間隔内に基板の変位を実施することができるように動的に使用可能である。
【0067】
「ウェーハ台」とも呼称する基板保持デバイスWST及び「レチクル台」とも呼称するマスク保持デバイスRSTは、この実施形態の場合は投影露光装置の中央制御ユニットCU内に組み込まれる走査制御ユニットを用いて制御されるスキャナデバイスの一部である。
【0068】
照明系ILLは、投影レンズPOの入射瞳の形状に適合され、特にこの入射瞳に厳密に対応する形状を有する射出瞳を有する。照明系ILLの射出瞳は、楕円方式で実施される。この楕円方式の実施は、特に楕円形に実施された瞳ファセットミラーFAC2を用いてもたらすことができる。それに対する代替として、瞳ファセットが楕円形に実施された包絡線を有するようにこれらのファセットを瞳ファセットミラーFAC2上に配置することができる。
【0069】
楕円瞳ファセットミラーFAC2の半軸は、2つの異なる半軸長を有することができ、この場合に、大きい方の半軸長は、第1の半軸長の例えば少なくとも1と2分の1倍、時には更に少なくとも2倍である。照明系ILLの射出瞳の半軸も、相応に、同じく好ましくは照明系の射出瞳と同じ半軸長比を有する異なる半軸長を有することができる。
【0070】
非アナモルフィック結像スケールを有する従来の回転対称系では、視野一定の最適照明を確実にするために、照明ビームの主光線が投影レンズの入射瞳内で交わらなければならない。VUV系(真空紫外範囲からの動作波長で作動する系)では、この入射瞳は、一般的に無限遠にあり、従って、これらの系はテレセントリックであり、すなわち、主光線はレチクル上に垂直に入射する。EUV系の場合に、照明ビーム経路と投影ビーム経路とを分離するために、反射レチクルは、斜方から照明しなければならない。従って、入射瞳をレチクルから有限距離に置かなければならない。この場合に、1mから3mの範囲の距離が有利であると考えられる。それによって第1近似では、x方向の線形テレセントリック性プロファイルに対応し、従って、レチクルのzシフト時に線形Z2を生成する線形プロファイルである主光線角の変化がレチクルにおいてもたらされる。
【0071】
投影レンズPOは、その物体平面OSに配置されたパターンのこの物体平面に対して光学的に共役であって平行に位置する像平面IS内への縮小結像に寄与する。この結像は、この例の場合は13.5nmである動作波長λ付近の極紫外範囲(EUV)からの電磁放射線を用いて実施される。この場合に、物体視野OFが像視野IFに結像される。
【0072】
アナモルフィック投影レンズが関わっている。アナモルフィック投影レンズはもはや回転対称ではなく、その代わりに自由曲面設計として設計される。従って、もはや単一入射瞳位置が存在する必要は全くなく、その代わりにx方向とy方向を互いから切り離すことができ、これらの方向は異なる平面に位置することができる。この場合に、この入射瞳を非点入射瞳と呼ぶ。従って、同じく照明系には、投影レンズの非点入射瞳に適合された非点結像、すなわち、非共心結像を含むことができる。
【0073】
図2と
図3は、アナモルフィック投影レンズPOの第1の実施形態の光学設計を異なる見方に示している。これらの図は、中心物体視野点及び物体視野OFの2つの反対周辺部をそれぞれ定める2つの物体視野点から進行する放射線の個々の光線のビーム経路を示している。
【0074】
図2及び
図3に記載の投影レンズPOは、物体視野OFから進行するビーム経路の方向にM1(最初のミラー)からM6(第6のミラー)によって順次番号を振った合計で6つのミラーを有する。
図2及び
図3は、投影レンズPOの設計中に計算されるミラーM1からM6の反射面を示している。これらの図から明らかなように、放射線を反射するために、図示の面の一セグメントのみが部分的に使用される。従って、ミラーM1からM6の実際の実施形態は、図に示すものよりも小さいとすることができ、特に図に示す計算上の反射面の一部分のみを備えることができる。
【0075】
第2のミラーM2と第3のミラーM3の間には、平面又は曲面とすることができる第1の瞳面PF1が置かれる。更に、第4のミラーM4と第5のミラーM5の間には中間像面IMFが置かれる。中間像面IMFは、平面又は曲面とすることができる。こうしてミラーM1からM4は、第1の(結像)部分レンズOBJ1を形成する。ミラーM5及びM6は、第2の結像部分レンズOBJ2を形成する。
【0076】
この投影レンズは、全てのミラーに共通の「従来の」光軸を持たない。物体平面及びそれと平行な像平面と垂直に基準軸AX(
図1を参照されたい)が延びる。この光学系は、
図3に示すyz平面に関して鏡面対称性を有する(
図3を参照されたい)。
【0077】
第1の部分レンズOBJ1はアナモルフィックレンズであり、すなわち、アナモルフィック結像を行う。第2の部分レンズOBJ2も同じくアナモルフィックレンズであり、すなわち、アナモルフィック結像を行う。しかし、第2の部分レンズOBJ2を非アナモルフィックなものとして具現化することができる。
【0078】
自由曲面を有するアナモルフィック系が関わっている。自由曲面を有するミラーの場合に、ミラー面はx方向とy方向で異なる曲率半径を有し、すなわち、非点収差的である。この場合に、全体的な効果は、系又は部分系がアナモルフィック結像を行うようなものである。投影レンズPOは、複数、例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つの非点結像ミラーを含むことができる。
【0079】
この場合に、投影レンズPOは、第1の方向に第1の結像スケールβ
1を有し、第2の方向にそれとは異なる第2の結像スケールβ
2を有する。第2の結像スケールは、例えば、第1の結像スケールの大きさの少なくとも1.5倍、特に第1の結像スケールの大きさの少なくとも2倍とすることができる。
【0080】
投影レンズPOは、走査方向(y方向)の結像スケールの絶対値がそれに対して垂直な結像スケールの絶対値よりも小さいように具現化される。従って、この系は、走査直交方向よりも走査方向に大きい縮小効果を有する。走査方向の結像スケールの絶対値は、それに対して垂直な結像スケールの大きさの例えば最大で4分の3、特に最大で3分の2、特に最大で2分の1とすることができる。
【0081】
投影レンズPOは、方向依存の物体側開口数(NA
O)を有し、すなわち、入射瞳が円形形状から偏位する。この場合に、特定の方向、すなわち、大きい結像スケールの方向の物体側開口数(NA
O)は、それに対して垂直な方向の結像スケールの大きさの例えば少なくとも1と2分の1倍である。
【0082】
第6のミラーM6は、放射線の通路のための貫通開口部OPを有する。ミラーM5とミラーM6の間には、更に別の瞳面PF2が置かれる。瞳面PF2は平面又は曲面とすることができる。
【0083】
ミラーM1からM6は、EUV放射線に対して反射性を有するものとして具現化される。これらのミラーは、特に入射EUV照明光に対する反射を最適化するために複数の反射層を担持する(多層ミラー)。反射は、ミラー面上への個々の光線の入射角が法線入射に近い程良好に最適化することができる。
【0084】
ミラーM1からM5は、閉塞方式で、すなわち、貫通開口部なく具現化される。ミラーM1、M4、及びM6は、凹反射面を有する。ミラーM2、M3、及びM5は、凸反射面を有する。
【0085】
投影レンズPOのミラーM1からM6又はその反射面は、回転対称関数によって表すことができない自由曲面として具現化される。そのような自由曲面は、回転対称基準面から生成することができる。マイクロリソグラフィのための投影露光装置の投影レンズのミラーの反射面のための自由曲面は、例えば、US 2007−0058269 A1から公知である。自由曲面は、数学的に次式によって表すことができる。
この場合に、次式が成り立つ。
【0086】
Zは、x
2+y
2=r
2である時の点x,yにおける自由曲面のサジタル高さである。パラメータcは、対応する非球面の頂点曲率に対応する定数である。kは、対応する非球面の円錐定数に対応する。C
jは、単項式x
m、y
nの係数である。c、k、及びC
jの値は、一般的に投影レンズPO内のミラーの望ましい光学特性に基づいて決定される。N
m+nradiusは、係数C
jに対する正規化係数である。単項式の次数m+nは、任意に変更することができる。高次の単項式は、より良好な像収差補正が行われる投影レンズの設計をもたらすが、計算することがより複雑である。m+nは、3と20超の間の値を取ることができる。
【0087】
この説明の最後に示す表は、投影レンズPOの光学設計データを表形式で要約しており、これらのデータは、光学設計プログラムCode V(登録商標)を用いて得られたものである。表1は、光学構成要素の光学面及び開口絞りに関するものであり、各場合に頂点曲率の逆数(半径)と、像平面ISから進行し、すなわち、光方向と逆方向のビーム経路内で隣接する要素のz距離に対応する距離値(厚み)とを指定している。
【0088】
表2は、ミラーM1からM6に関して上記に指定した自由曲面式の単項式x
mnの係数C
jを指定している。表3は、ミラー基準設計から始めてそれぞれのミラーを偏心(Y偏心)及び回転(X回転)させた絶対値をnmを単位として指定している。これらの偏心及び回転は、自由曲面設計法の場合の平行シフト及び傾斜に対応する。この場合に、シフトはy方向に行われ、傾斜はx軸の周りに行われる。この場合の回転角は、度を単位として指定したものである。
【0089】
第2のミラーM2は、X方向とY方向で異なる程度で湾曲される。この湾曲は、表1の2次係数X2及びY2が、明確に異なる桁数(約20倍の差)を有することで明らかである。この湾曲は、第1の部分レンズOBJ1が(及び同じく投影レンズ全体も)アナモルフィック結像を行うことに寄与する。
【0090】
投影レンズの上述の基本設計は、WO 2012/034995 A2における
図2及び
図3の投影レンズに対応する。この出願に記載されている他の投影レンズも同じく本発明の関連に使用することができる。この文献WO 2012/034995 A2の開示内容は、その全体が本明細書の内容に組み込まれている。
【0091】
この例示的実施形態における投影露光装置は、投影レンズの結像特性、適切な場合は他の構成要素の結像影響特性を制御ユニットCUの制御信号に基づいて定められた方式で変更することを可能にする多数のマニピュレータを有する操作系を含む。この場合に、「マニピュレータ」という用語は、制御器の対応する制御信号に基づいて自体の光学効果を変更するように設計されたデバイスを表している。一般的に、マニピュレータは、計量的に検出された結像収差をターゲットを定めた方式で低減することができるように設定される。
【0092】
投影露光装置の作動中に、例えば、レチクル台と基板台は、互いに正確と同期させる方式で移動しなければならない。この目的で、レチクル台及び基板台を優れたマニピュレータにする正確な移動性能及び動的制御性能が存在する。正確に同期させたプロファイルからのターゲットを定めた偏位によって収差を補正することができる。一例として、レチクルの移動速度と基板の移動速度との比が設計スケールから外れる場合に、例えば、マスク製造中に発生した場合があるか又は要素加熱の結果として生じる可能性があるスケール誤差を補償することができる。この補正は、走査処理にわたって可変的に可能であり、すなわち、数分の1秒というリソグラフィ条件に対して非常に短い時間スケールで可能である。
【0093】
特に、照明と投影レンズとの解きほぐしを目的としたリング視野及びEUVレチクル上への光の斜方入射の組合せで、レチクル台及び/又は基板台の傾斜は、Z2、Z3、及びZ4の2次視野プロファイルを設定することができる。この場合の略記号Z2、Z3等は、一般的に、結像に関する特定の収差を表すゼルニケ係数を表している。この場合に、Z2は、x方向の(走査方向に対して垂直な)像偏位を表し、Z3は、y方向(走査方向)の像偏位を表し、Z4は、デフォーカスを表している。
【0094】
上述のように、マスク保持デバイスRSTは、z方向と平行な(走査方向及びx方向に対して垂直な)レチクル又はマスクの制御式変位のためのz変位デバイスを更に含む。この変位は、例えば、ある一定の収差に対する視野プロファイルを設定するために、走査作動中に非常に動的に(例えば、数分の1秒から数秒までの時間スケールで)可能である。多くの場合に、そのような視野プロファイルは、例えば、視野内に直接引き起こされるレチクル加熱効果又は基板凹凸を許容可能な副次的効果しか伴わずに補正することが単独で可能になる近視野要素が欠如している場合に系内で対処することが困難であるそのような像収差を補正する。レチクル加熱効果又はウェーハ凹凸は走査中に変化する場合があり、従って、再調節を動的に実施しなければならない。
【0095】
対応するz変位デバイスが像側の基板保持デバイスWSTの場所に設けられる。
【0096】
アナモルフィック結像系に特定の問題を
図4及び
図5を参照して下記で説明する。この点に関して、
図4は、主平面H−H’によって特徴付けられ、物体側焦点距離Fと像側焦点距離F’とを有し、物体高さyを有する物体を像高さ−y’を有する像に結像する結像系の概略図を示している。この場合に、物体は、物体平面OSに置かれ、それに対して像は、物体平面に対して光学的に共役な像平面IS内にもたらされる。物体側距離及び像側距離は、略示する系の光軸と平行に延びるz方向に沿って測定される。結像系の結像スケールβは、物体高さyの絶対値に対する像高さy’の絶対値の比に対応し、β=y’/yに従う。縮小結像を有するので、│β│<0が成り立つ。この結像スケールは、作図面と一致する略示する系のyz平面に存在する。次いで、物体がz方向と平行にシフトされた場合に、像平面がz方向にどの程度シフトするか、又はz方向の物体シフトの場合に集束結像を再度取得するために像領域内で再集束を行うことがどの程度必要であるかに関して疑問がもたらされる。Δzが、z方向と平行な物体シフトの程度を示す場合に、必要とされる像平面変位Δz’が次式の条件に従って像領域内でもたらされる。
Δz’=β
2Δz
【0097】
本明細書では比率Δz’/Δzを長さスケール(又は深度スケール)と呼称する。この場合に、従来の光学系における長手方向スケールがβ
2、すなわち、結像スケールの二乗によって与えられる。
【0098】
投影レンズの像平面内への投影レンズの物体平面に配置されたパターンの結像に当て嵌めると、上述のことは、パターンを担持するレチクルのz方向の変位(位置変化)が、z方向と平行な像平面の変位をもたらし、この変位の程度が結像スケールに依存することを意味する。
【0099】
従って、アナモルフィック結像系は、方位依存の結像スケールを有することにおいて特徴付けられる。この場合に、x方向の結像スケールはβ
xによって与えられることになり、それに対して垂直なy方向の結像スケールはβ
yによって与えられることになる。
【0100】
この点に関して、
図5は、左手の部分に物体平面OS内のパターン又はレチクルの元の位置を実線で、レチクルの絶対値Δzのz方向変位の後にもたらされる新しい位置を破線で略示している。右手の部分図には、変位の前の像平面ISの元の位置を実線で示している。破線IS
yは、y方向に関する像平面の新しい位置を示している。この新しい位置は、元の位置に対して絶対値Δz
1だけシフトされたものである。別の破線IS
xは、像平面の元の位置から距離Δz
2の場所にある新しい像平面のx方向の位置を示している。レチクルがシフトされた時に、x方向の新しい像平面とy方向の新しい像平面とがもはや一致せず、その代わりにz方向に互いから離れた場所にあることが明らかである。更に、x方向の長手方向スケールがy方向の長手方向スケールと異なることが明らかであり、この場合に、次式が成り立つ。
Δz
1=β
y2*Δz
Δz
2=β
x2*Δz
【0101】
上述のことは、次式に従う非点結像収差ASTの特徴である。
【0102】
上式から、結像系の与えられた像側開口数NAに対して、非点収差を表すゼルニケ係数Z5は、次式に従って導出することができる。
【0103】
x方向とy方向に同じ結像スケールを有する従来の結像系では、レチクルのz方向のシフトの結果として生じる結像収差は、z方向と平行な露光される基板の長手方向スケールに則した対応する変位によって完全に補正することができる。しかし、アナモルフィック結像系の場合は互いに垂直な平面内又は方向の結像スケールが異なるので、そのような補正は可能ではない。本発明による投影レンズの例示的実施形態において、アナモルフィック結像にも関わらず、レチクルのz変位によって生成される非点収差部分を補正することを少なくとも部分的に可能にするための特定の手段が存在する。この目的のために、投影レンズPOには、走査作動中にレチクル変位によって引き起こされる非点波面収差部分を補正するための動的波面操作系が装備される。
【0104】
本発明による研究は、記述した併発する非点収差の一般的に望ましくない、従って、悪影響を投影レンズのミラーをその剛体自由度内で高速に(例えば、数分の1秒の時間スケールで)制御される方式で移動することによって補償することができることを示している。この目的のために、ミラーM1からM6の各々に割り当てられた起動デバイスDR1からDR6(双方向矢印で表示している)が設けられる。起動デバイスの各々は、駆動目的で投影露光装置の中央制御ユニットCUに接続される。起動デバイスの各々は、割り当てられたミラーを基本設計(例えば、表1及び表2)によって事前定義された当該ミラーの基準位置に対してそれぞれのミラー面をこの工程において変形させることなく移動することができる。変位は、例えば、基準軸(物体平面及び像平面に対して垂直な軸)と平行なシフト、基準軸に対して垂直なシフト、及び/又は傾斜(傾斜移動)を含むことができる。
【0105】
全てのミラーは、非回転対称反射自由曲面を有する。そのような形態において適切な場合に、回転軸の周りの制御式回転を波面の非点変化を生成するために使用することができる(WO 2012041459 A1を参照されたい)。従って、変位は、走査中に回転軸の周りのミラーのうちの少なくとも1つの回転を含むことができ、又は専らそのような回転によって生成することができる。
【0106】
剛体自由度内で起動−移動可能であるミラーは、それによって第1のタイプのマニピュレータのうちのマニピュレータの構成要素になり、これは、物体平面に対して垂直なレチクルの変位の結果として生じる可能性がある非点波面収差部分の部分的又は完全な補償を可能にする。
【0107】
更に、この第1のタイプのマニピュレータは、投影レンズのxy非点収差に対する高速補正可能性を与える。例えば、そのような非点収差は、例えば、密集した線を結像するために二重極照明が使用される場合の投影レンズ内の加熱効果の結果として生じる可能性がある。ミラーのうちの一部(1又は複数)は、瞳面の近くに置かれる場合があり、それによってこれらのミラーは、この非回転対称光分布を入射放射線エネルギの空間分布として感受し、非照明領域内よりも照明領域内で高い程度まで局所加熱され、相応に変形する。この変形は、光路長を精密に変化させる場合があり、それによってxyの向きに非点収差がもたらされる。この効果は、第1のタイプのマニピュレータのうちのマニピュレータによって部分的又は完全に補償することができる。
【0108】
高速剛体マニピュレータの効果は、定量的な例に基づいて説明することができる。一例では、EUV投影レンズ(この場合はそれ程詳細には例示していない)は、例えば、像平面内でx方向と平行に26mmの幅を有し、x方向と垂直に、すなわち、走査方向に1.2mmの高さを有することができる比較的有意に湾曲したリング視野RFを用いて作動される。リング視野は、像平面内で走査方向に遅れて続く(凹湾曲)視野縁部にある中央視野点FP1とこの視野縁部の周辺部にある周辺視野点との間で走査方向(y方向)に測定した距離が走査方向と垂直に測定した視野幅の25%超に対応するほど有意に湾曲したものとすることができる。
【0109】
この投影レンズは、x方向に結像スケールβ
x=0.25(第2の結像スケール)を有し、y方向に結像スケールβ
y=0.125(第1の結像スケール)を有することになる。3つの収差Z2、Z3、Z4に関して、各場合にx方向に異なる視野プロファイルに対する補正の可能性は、様々な補正シナリオに対してシミュレーションを用いて決定された。この場合に、略記号「Z2_0」は一定部分を表し、Z2_1は線形部分を表し、Z2_2は、走査方向に平均されたZ2収差のプロファイルの2次部分(x方向の歪曲)を表している。
【0110】
第1の補正シナリオでは、レチクルのzシフトは、ウェーハの最適化されたzシフトとx軸及びy軸の周りの傾斜だけによって補償される。表4は、対応する残存収差レベルを示している。レチクル及びウェーハの移動だけではZ2_1及びZ2_2を十分に補正することができないことが明らかである。これは、シミュレーションが基礎を置く投影レンズのアナモルフィック設計から実質的に起因する。
【0111】
他の点では等しい境界条件を用いて、第2の補正シナリオにおいて、レチクル及びウェーハのz変位に加えて全てのミラーの高速共同剛体移動も許した。表5は、対応する残存収差レベルを示している。重要なプロファイルZ2_1、Z2_2、及びZ3_2を十分に補正することができることが明らかである。
【0114】
物体平面に対して垂直なレチクル変位の結果として生じる非点波面収差部分を低減又は補償するための更に別の補正可能性は、瞳面に光学的に十分に近い場所に配置された1又は複数のミラーをマニピュレータとして用いてこれらのミラー面を非点収差的に変形することにある。それによって第2のタイプのマニピュレータを与えることができる。
【0115】
図3を参照して示した波面操作系の変形は、瞳面(第2の瞳面PF2)の比較的近くに配置された第6のミラーM6を対応する第2のタイプのマニピュレータのうちのマニピュレータとして使用する。このミラーは、投影ビーム経路に配置された可逆変形可能なミラー面MS6を有する。ミラー面MS6における部分口径比SARは、条件SAR>0.9を満たし、その結果、ミラー面は、最も近い瞳面に光学的に近い場所に位置することが明らかである。このミラーに割り当てられた起動デバイスDR6’は、基準面形状に対するミラー面の面形状の可逆非点変化を生成するように設計される。基準面形状は、投影レンズの光学基本設計(例えば、表1及び表2を参照されたい)からもたらされる面形状である。
図3の詳細図は、4つの四分円内に分配されたミラー面を非点収差的に変形するためのアクチュエータ(例えば、圧電アクチュエータ)ACTを有する第6のミラーM6の後面を示している。
【0116】
第1のタイプのマニピュレータのうちのマニピュレータ(剛体自由度における移動)と第2のタイプのマニピュレータのうちのマニピュレータ(ミラー面変形)とは、異なる実施形態において交替的に設けることができる。必要に応じて同じ投影レンズ内の異なるマニピュレータのタイプの組合せも可能である。
【0117】
第1及び/又は第2のタイプのマニピュレータを駆動するための様々な可能性が存在する。
【0118】
起動デバイスの駆動は、フィードフォワードモデルに基づいて実施することができる。この駆動変形では、走査作動中のレチクルの動的変位/傾斜は、この走査作動の前に事前に既知である。以前に計算され、テーブル化された感受性を用いて、レチクル移動によって引き起こされ、走査作動中に発生することになる望ましくない非点収差も同じく既知である。この場合に、「感受性」という用語は、マニピュレータにおいて定義された急勾配値変化と結像品質又はリソグラフィ収差に対して得られる効果との間の関係を表している。
【0119】
次いで、非点収差を動的に補正するために、制御ユニットCU内に組み込まれた最適化アルゴリズムは、予想非点収差に基づいて、対応する「動的補正レシピ」(すなわち、各マニピュレータに対する最適な進行又は起動距離、又は最適な軌道)を計算することができる。この補正レシピに基づいて、非点収差が結果として補正されるように走査作動中にミラーの起動デバイスが動的に駆動される。
【0120】
組み込み最適化アルゴリズムを用いたマニピュレータの最適軌道の計算に対する代替として、レチクルのあらゆる可能な移動に関して関連の最適なマニピュレータ進行を予め計算し、テーブル化された形態(ルックアップテーブル)で制御ユニットのメモリに存在させることができる。この場合に、マニピュレータ進行を各走査作動の前に定めるのではなく、その代わりに制御ユニットが、レチクルの瞬間位置に基づいて既存のテーブルを用いて走査作動中にマニピュレータの起動デバイスを駆動する。従って、この場合に、レチクルの移動は、それに結合されたマニピュレータの疑似瞬間移動をもたらす。
【0121】
上述の実施形態において、波面操作系の光学効果は、走査作動中に比較的短い時間スケールの動力学を用いて変更される。しかし、これは、波面の操作が有用であると考えられる唯一の状況ではない。例えば、一部の実施形態において、波面操作系の光学効果は、走査作動外の時間間隔中に変更される。具体的には、マスクを変位させる段階及び非点波面収差部分を補正する段階は、新しい走査作動セットが実施される前に設定相において実施することができる。例示的なシナリオを下記で説明する。
【0122】
第1のシナリオでは、投影対物系の初期調節が考慮される。初期調節中に、投影対物系は、物体平面と垂直に、すなわち、z方向にマスクを変位させることによって少なくとも部分的に補正することができる拡大率誤差を示す可能性がある。上述のように、アナモルフィック投影対物系が使用される場合は残存非点収差が生成される可能性がある。第1のシナリオでは、マスク変位によって生成される非点収差を少なくとも部分的に補償する対応する非点収差を生成するために、波面操作系の変形可能ミラーが使用されることになる。補正効果を達成するために、本質的に非点収差が不在の仮想マニピュレータと考えることができ、変形可能ミラーと変位可能マスクとを含む仮想マニピュレータを生成することができる。
【0123】
1つの段階は、マスク及び変形可能ミラーの感受性を評価ユニット内に読み取る段階を含む。本出願では、「感受性」という用語は、マニピュレータの設定値の定義された変化とこの設定値変化に関して得られる結像品質に対する効果との間の関係を表している。設定値変化は、例えば、アクチュエータの位置変化、すなわち、進行を含むことができる。次の段階において、マスク変位によいって生成される非点収差を補償するのに有効であることになる起動移動に関するプロファイルが計算される。これらの予備計算は、変形可能ミラーと変位可能マスクとを含む仮想マニピュレータを与えるのに利用される。
【0124】
新しい露光セットの準備において、新しいマスクを投影露光装置のマスク保持デバイス内に装着することができる。次いで、波面測定システムのような適切な手段によって収差測定が実施されることになる。更に、変位可能マスクと変形可能ミラーとを含む仮想マニピュレータに対するアクチュエータ移動(又は進行)の対応する感受性及び組合せを含む1又は2以上のマニピュレータが読み込まれることになる。その後に、マニピュレータを含む投影対物系の全体挙動を表すモデルがその後のルーチンで起動される。このモデルは、アクチュエータの進行を修正すること、及び対応する残存収差に対処することによって最適化することができる。その後の収差測定がある閾値よりも大きい収差を示す場合に、変更されたパラメータを有する新しい最適化ルーチンが開始されることになる。収差測定が、マニピュレータを修正することによって有意な改善を達成することができない時、及び/又は収差レベルが仕様範囲にあることを示す時のいずれかにおいて初期調節の終了時点に達する。別のシナリオでは、様々なパターン層が複数回の露光過程において互いに上下に重なってプリント(露光)されることになる。この目的のために、各々が異なる拡大率誤差を有することができる2つの異なるマスクタイプA及びBが使用される。拡大率誤差は、例えば、外部測定によって予め決定することができる。投影対物系が物体側で非テレセントリックである場合に、マスクのz方向変位は、拡大率マニピュレータ(拡大率誤差を補償するための)として使用することができる。アナモルフィック投影レンズ内で寄生非点収差を回避するために、変形可能ミラーのようなマニピュレータの対応する起動が実施されるべきである。
【0125】
上述の工程において、最初にマスクAを使用することができ、次いでマスク保持デバイスから装脱することができる。次の段階において、マスクBをマスク保持デバイス内に装着することができ、対応するマスクデータが制御ユニット内に読み込まれる。適切な時点で、変位可能マスクと変形可能ミラーとを含む仮想マニピュレータに対する設定値変化のそれぞれの感受性及び組合せを含むマニピュレータが評価ユニット内に読み込まれる。次いで、マニピュレータを含む投影対物系の全体挙動を表すモデルがその後のルーチンにおいて起動される。このモデルは、アクチュエータの進行を修正すること、及び対応する残存収差に対処することによって最適化することができる。
【0126】
マスクBが望ましい場所に位置決めされ、かつ変形可能ミラーが望ましい変形状態を有する状態で、新しい露光を開始することができる。
【0127】
マスクの場所及び変形可能ミラー(及び可能な他のマニピュレータ)の変形状態に加えられる調節は、走査作動中の操作の場合ほど高速である必要はない。しかし、走査作動が実施される時間間隔外に実施される操作に対して、非常に動的な波面操作系を使用することができる。