(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、屈曲基材の曲率やデザインからの法線偏差を正確に測定可能な形状測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 第1面と第2面とを有する屈曲基材の形状を測定する形状測定装置であって、
前記屈曲基材の第2面を支持する基材支持部と、
前記屈曲基材の形状を測定する形状測定部と、
を備える形状測定装置。
(2) 前記基材支持部は、前記第2面を支持し、前記第2面と平行な曲面を有する、(1)に記載の形状測定装置。
(3) 前記基材支持部は、前記第2面とそれぞれ点接触する複数の支持片を有し、
前記複数の支持片の先端を結んだ仮想曲面が、前記第2面と平行である、(1)に記載の形状測定装置。
(4) 前記基材支持部は、前記第2面と平行な曲面と、前記複数の支持片と、を有し、
互いに同一形状の前記複数の支持片が前記曲面上に設けられることにより、前記複数の支持片の先端を結んだ仮想曲面が、前記第2面と平行である、(3)に記載の形状測定装置。
(5) 前記基材支持部は、前記第2面と平行ではない面と、前記複数の支持片と、を有し、
複数種類の前記複数の支持片が前記面に設けられることにより、前記複数の支持片の先端を結んだ仮想曲面が、前記第2面と平行である、(3)に記載の形状測定装置。
(6) 前記形状測定部は、前記屈曲基材の形状を測定する少なくとも一つの形状測定器と、前記少なくとも一つの形状測定器を支持する測定器支持部と、を有する(1)〜(5)の何れか一つに記載の形状測定装置。
(7) 前記測定器支持部は、前記基材支持部と別体である、(6)に記載の形状測定装置。
(8) 前記少なくとも一つの形状測定器は、前記複数の支持片の先端を結んだ仮想曲面に対して、面直方向に配置される、(6)又は(7)に記載の形状測定装置。
(9) 前記形状測定部は、複数の前記形状測定器を有し、
前記複数の形状測定器同士の対応する部位が、前記第1面と平行となる仮想曲面上に存在する、(6)〜(8)の何れか一つに記載の形状測定装置。
(10) 前記形状測定器は、前記測定器支持部に移動可能に支持される、(6)〜(9)の何れか一つに記載の形状測定装置。
(11) 前記形状測定器の移動軌跡によってなる仮想曲面は、前記第1面と平行である、(10)に記載の形状測定装置。
(12) 前記形状測定器が曲率測定器である、(6)〜(11)のいずれか一つに記載の形状測定装置。
(13) 前記基材支持部が、前記屈曲基材の寸法を測定する寸法測定装置の測定子と、当該測定子を前記屈曲基材の側面に当接させるための測定用溝と、を有する、(1)〜(12)の何れか一つに記載の形状測定装置。
(14) 前記屈曲基材がガラスである、(1)〜(13)の何れか一つに記載の形状測定装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、屈曲基材の曲率やデザインからの法線偏差を正確に測定可能な形状測定装置を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されることはない。また、本発明の範囲を逸脱することなく、以下の実施形態に種々の変形及び置換等を加えられる。
【0010】
(屈曲基材)
本実施形態の屈曲基材は、第1面と、第1面に対向する第2面と、を有する。当該屈曲基材は、三次元形状を有する基材であって、少なくとも一部に屈曲部を有する。「屈曲部」とは、第1面または第2面が曲面となるように屈曲し、その平均曲率がゼロではない部分を意味する。このような屈曲基材は全体として所定の曲率を有する曲面形状を構成する。屈曲基材の形態としては、板、フィルム等が挙げられる。
【0011】
屈曲基材の材料としては、ガラス、金属、樹脂、シリコン、木材、紙等が挙げられる。樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース等が挙げられる。中でも安全性や強度の観点からガラスが好ましい。さらにガラスを車載用基材として使用するには高い耐熱性、高い耐候性の観点からも好ましい。ガラスとしては無機ガラスとポリカーボネートやアクリル等の有機ガラスを使用できる。
【0012】
また、無機ガラス、有機ガラスや合成樹脂等は、同種・異種問わず重ねられた基材でも良く、その間に各種接着層が挿入されていてもよい。
【0013】
屈曲基材に使用する基材の厚さとして、0.5mm以上5mm以下が好ましい。これは下限値以上の厚さを備えた基材であれば高い強度を有し、良好な質感も有するため、高い強度と良好な質感とを兼ね備えた屈曲基材を得られる利点がある。さらに前記のような薄い基材である場合、撓みやすくなるため、本発明の形状測定装置を使用することで撓みを低減でき正確な測定を実施できる。下限値は0.7mm以上がより好ましく、1mm以上がさらに好ましい。上限値は3mm以下がより好ましい。
【0014】
屈曲基材の屈曲部の曲率半径は5000mm以下が好ましく、3000mm以下がより好ましく、1000mm以下がさらに好ましい。上限値ほどの大きな曲率半径の屈曲部を有する屈曲基材であっても、本発明に係る形状測定装置を使用することで微妙な変化も測定でき、正確に形状測定を実施できる。
屈曲基材の屈曲部の曲率半径は特に制限はないが、1mm以上が好ましく、5mm以上が好ましく、10mm以上が好ましい。下限値ほどの小さな曲率半径の屈曲部は幅が細くなり測定を実施することが困難であったが、本発明に係る形状測定装置を使用することで幅が狭くても微妙な変化を測定でき、正確に形状測定を実施できる。
【0015】
屈曲基材の厚さ方向断面視において、2つの端部を結ぶ線分と、これと平行となる直線のうち、屈曲基材の屈曲部に接する接線との距離を「曲げ深さh」と定義すると、曲げ深さhは5mm以上が好ましく、10mm以上がより好ましく、20mm以上がさらに好ましい。曲げ深さhが大きい屈曲基材であるほど、成形精度を確認することが難しいことが課題であった。本発明にかかる形状測定装置によれば、このような基材の成形精度も正確にかつ容易に測定できる。
【0016】
屈曲基材の第1面又は第2面に防眩層(AG層)、反射防止層(AR層)、耐指紋層(AFP層)などの表面処理などがなされていてもよい。また屈曲基材の第1面又は第2面に加飾や隠蔽のための印刷層や樹脂層が形成されていてもよい。
【0017】
屈曲基材は面取などの加工処理がなされていてもよく、研磨処理がなされていてもよく、強化処理がなされていてもよい。屈曲基材として無機ガラスを用いる場合、圧縮応力層を形成する強化処理方法としては、風冷強化法(物理強化法)および化学強化法が代表的なものとして知られている。風冷強化法(物理強化法)は、軟化点付近まで加熱した基材主面を風冷などにより急速に冷却する手法である。また、化学強化法は、ガラス転移点以下の温度で、硝酸カリウム溶融塩に基材を浸漬しイオン交換する。これにより、基材主面に存在するイオン半径が小さいアルカリ金属イオン(典型的にはLiイオン、Naイオン)を、イオン半径のより大きいアルカリイオン(典型的にはLiイオンに対してはNaイオンまたはKイオンであり、Naイオンに対してはKイオンである。)に交換する手法である。
上述のような比較的に薄い無機ガラスを強化処理する場合には、化学強化処理が適切である。
【0018】
上述した屈曲基材は、様々な用途に使用できるが、特に、自動車、電車、船舶、航空機等の輸送機に搭載され、好適に使用できる。また、インストルメントパネル、ヘッドアップディスプレイ(HUD)、ダッシュボード、センターコンソール、シフトノブ等の輸送機の内装部品に用いると、当該内装部品に高い意匠性や高級感等を付与でき、輸送機の内装デザインを向上させられる。また、高い寸法精度の屈曲基材が求められるディスプレイ用カバー部材に適している。なお、本実施形態において、第1面を上面、第2面を下面ともいう。
【0019】
例えば、
図1及び
図2には、屈曲部7と、下面3と上面5との間に挟まれて両者を接続する側面9と、を有する屈曲基材1が示されている。なお、図中のZ方向は、屈曲基材1の中央部における厚み方向と平行な方向であり、X及びY方向は、それぞれZ方向と垂直な方向である。
【0020】
図3も参照し、
図1の屈曲基材1は、全体がX方向両端側に向かうにしたがって下面3側(Z方向下側)に屈曲する屈曲部7から構成される。なお、当該屈曲基材1は、Y方向においてはZ方向に屈曲しない。ここで、下面3及び上面5は互いに平行である。したがって、当該屈曲基材1は全体として所定の曲率を有する曲面形状を構成する。
【0021】
図2の屈曲基材1は、
図1と同様な断面形状を有しているが、
図1では、屈曲部7が基材のX方向両端側のみに向かって延在しているのに対して、
図2では、屈曲部7が屈曲基材1の中心から周縁部に向かって(中心からX及びY方向に向かって)延在している点で構成が異なる。したがって、
図2の屈曲基材1は、下面3側に開口を有する有底形状とされる。なお、この屈曲基材1においても、下面3及び上面5は互いに平行である。
【0022】
なお、上述した
図1〜2においては、Z方向下側表面を下面3とし、Z方向上側表面を上面5として表したが、Z方向下側表面を上面5とし、Z方向上側表面を下面3としても良いことはいうまでもない。
【0023】
また、屈曲基材1は、下面3及び上面5が互いに平行である必要はなく、任意の形状の下面3及び上面5を適用してよい。例えば、
図4に示すように、屈曲基材1は、下面3が平面形状であり、上面5が曲面形状であってもよい。側面9は
図4(a)のように上面5と下面3を接続する部位として有していてもよく、
図4(b)のように側面9が無くてもよい。また、屈曲基材1は、下面3が曲面形状であり、上面5が平面形状であってもよい。
【0024】
上述したような屈曲基材1の曲率や寸法は、設計上の曲率や寸法と完全に一致することが理想的であるが、成形工程や化学強化工程の条件等により誤差が生じる可能性がある。そこで、屈曲基材1の実際の曲率や寸法が、設計上の曲率や寸法と比較して許容できる範囲内であるか、生産工程において全数検査することが望ましい。そこで、本発明者らは、以下に説明するような、簡易な構成で正確に屈曲基材1の形状を測定できる形状測定装置を発明した。
【0025】
(形状測定装置)
図5〜8に示すように、本実施形態の形状測定装置10は、XY方向に延びる平面状の基台11と、基台11の上面に配置され、屈曲基材1を支持する基材支持部12と、屈曲基材1の曲率を測定する曲率測定部20と、を備える。
【0026】
基材支持部12は、基台11の上面に固定された支持台13と、支持台13の上面13aに配置された複数の支持片14と、を有する。支持台13は例えば金属、カーボン、ガラス、セラミックスからなり、支持片14は例えば合成樹脂やゴム等からなる。
【0027】
支持台13は、X及びY方向と平行な平面(基台11と平行な平面)である下面と、屈曲基材1の下面3と平行な曲面である上面13aと、を有する。本実施形態では、全体がX方向両端側に向かうにしたがって下面3側に屈曲する屈曲部7から構成される屈曲基材1(
図1及び3参照)の形状を、形状測定装置10が測定する例を説明する。したがって、支持台13の上面13aは、屈曲基材1の形状と同様に、X方向においては両端側に向かうにしたがってZ方向下側に屈曲し、Y方向においてはZ方向に屈曲しない形状を有している。
【0028】
図7に示すように支持台13の上面13aには、X及びY方向において等間隔に複数の支持片固定溝13bが形成される。図示の例では、支持片固定溝13bは、X方向において等間隔に三個、Y方向において等間隔に四個、合計12個設けられている。また、支持片固定溝13bは、支持台13の上面13aに対して面直(上面13aの接線に対して垂直)となるように凹設されている。
【0029】
支持片14は、支持片固定溝13bと略等しい形状を有する基部14aと、基部14aの先端に形成された球状部14bと、を有する。そして、基部14aが支持片固定溝13bに挿入されて着脱自在に固定されることで、支持片14は支持台13の上面13aに設けられる。図示の例では、互いに同一形状の支持片14が、X方向において等間隔に三個、Y方向において等間隔に四個、合計12個設けられる。また、支持片14は、支持台13の上面13aに対して面直となるように配置される。したがって、複数の支持片14の球状部14bの先端(Z方向上方端)を結んだ仮想曲面Aは、支持台13の上面13a及び屈曲基材1の下面3と平行である。なお、本実施形態のように支持片14を支持台13に固定して一体とするのではなく、凸部として支持片14を支持台13に直接形成することで支持片14と支持台13とを一体構造としても構わない。また、支持片固定溝13b及び支持片14の個数や設けられる位置は特に限定されない。
【0030】
図5及び
図6に示すように支持台13の上面13aには、屈曲基材1を所望の位置に位置決めするためのストッパ16が設けられている。図示の例では、ストッパ16は、上面13aのX方向一端側に一個、Y方向一端側に二個設けられている。ここで、ストッパ16は、上面13aに形成されたストッパ固定溝13cに着脱自在に固定されている。したがって、ストッパ固定溝13cを様々な位置に設けておくことにより、屈曲基材1のX及びY方向の寸法に応じてストッパ16を装着するストッパ固定溝13cを選択し、適切に屈曲基材1の位置を決められる。
図6の例では、屈曲基材1のX及びY方向の寸法に合わせて、支持台13の上面13aのX方向一端側に設けられた二個のストッパ固定溝13cのうち、内側のストッパ固定溝13cにストッパ16が装着される。また、
図9の例では、
図6の屈曲基材よりもX及びY方向の寸法が大きいため、支持台13の上面13aのX方向一端側に設けられた二個のストッパ固定溝13cのうち、外側のストッパ固定溝13cにストッパ16が装着される。なお、ストッパ固定溝13cのうち使用しない箇所には、上面13aと面一となるような蓋をしてもよい。
【0031】
そして、
図7に示すように上記仮想曲面Aと屈曲基材1の下面3とが平行となるように、複数の支持片14の上部に屈曲基材1が配置される。したがって、屈曲基材1は、複数の支持片14の球状部14bの先端と点接触して支持される。また、屈曲基材1のX及びY方向側面は複数のストッパ16が当接して、当該屈曲基材1がX及びY方向に位置決めされる。
【0032】
このように、屈曲基材1の下面3が、当該屈曲基材1の下面3と平行な基材支持部12に支持されるので、屈曲基材1の形状変化を抑制でき、曲率測定部20による正確な形状測定が可能となる。
【0033】
また、基材支持部12は屈曲基材1の下面3とそれぞれ点接触する複数の支持片14を有し、複数の支持片14の上方端を結んだ仮想曲面Aが屈曲基材1の下面3と平行であるので、屈曲基材1と基材支持部12との接触面積が小さくなり、屈曲基材1に傷が発生することを抑制できる。さらに、支持片14が合成樹脂製である場合には、容易に交換可能であるので、適宜交換を行うことで測定精度を維持できる。また、支持片14がゴム製である場合には、測定中の振動等によって屈曲基材1がずれてしまうことを抑制できるので、測定精度を維持できる。
【0034】
また、
図7及び
図8に示すように、支持台13の上面13aには、屈曲基材1のX方向両側面9a及びY方向両側面9bと、Z方向で対向する位置に測定用溝13eが設けられる。測定用溝13eには、屈曲基材1のX及びY方向の寸法を測定する寸法測定装置の測定子(例えばノギスのジョウ)が挿入される。当該測定子は、屈曲基材1のX方向側面9a及びY方向側面9bに当接する。そして、一対のX方向側面9aに当接する測定子同士の距離に基づき屈曲基材1のX方向の寸法が測定され、一対のY方向側面9bに当接する測定子同士の距離に基づき屈曲基材1のY方向の寸法が測定される。
【0035】
図5及び
図6に示すように曲率測定部20は、屈曲基材1の曲率を測定する複数のダイヤルゲージ21(曲率測定器)と、複数のダイヤルゲージ21を支持する測定器支持部23と、を有する。本実施形態の測定器支持部23は、X方向において等間隔に配置された三個の門型のブラケット24を有する。なお、曲率測定器としては、ある基準からの距離や変位量を測定できればよい。具体的には、ダイヤルゲージやレーザー変位計を使用できるが、特に限定されない。この曲率測定器により被測定物を面内で複数測定し、その結果から被測定物の曲率やデザインからの法線偏差を見積もることができる。
【0036】
ブラケット24は、Y方向に離間して配置された一対の柱部24aと、一対の柱部24aをY方向に連結する梁部24bと、を有する。一対の柱部24aは、支持台13の上面13aに設けられたブラケット固定溝13dにそれぞれ着脱自在に固定される。ブラケット固定溝13dは、支持台13の上面13aに対して面直(上面13aの接線に対して垂直)となるように凹設されているので、ブラケット24も同様に、支持台13の上面13aに対して面直に配置される。なお、柱部24aは、必ずしも一対設ける必要はなく、例えば一つの柱部24aによって梁部24bを支持してもよい。この場合、柱部24aが回動可能な機構を有していてもよく、これにより梁部24bも回動可能となっていても良い。また、ブラケット固定溝13dは、支持台13の上面13aに対して、必ずしも面直に凹設されている必要はない。
【0037】
ブラケット24の梁部24bは、Y方向に等間隔で複数(本例では九個)のゲージ固定孔24cを有している。
図5において九個のうち四個のゲージ固定孔24cは、支持台13の上面13aの面直方向において、支持片14と対向する位置に形成される。すなわち、上記四個のゲージ固定孔24cを支持台13の上面13a側に延長した場合、その延長線上に支持片14が位置する。以後、支持片14と対向する位置に形成される四個のゲージ固定孔24cを第1ゲージ固定孔24hと呼び、それ以外の五個のゲージ固定孔24cを第2ゲージ固定孔24iと呼ぶことがある。本実施形態では、第1及び第2ゲージ固定孔24h、24iがY方向に交互に配置されている。
【0038】
また、上述したように、ブラケット24は、支持台13の上面13aに対して面直に配置される。したがって、
図7に示すようにゲージ固定孔24cに固定されるダイヤルゲージ21のステム21a及び当該ステム21aから延びるスピンドル21b及び測定子21cは、支持台13の上面13aに対して面直方向、すなわち屈曲基材1に対して面直方向に延びる。特に、第1ゲージ固定孔24hに固定されるダイヤルゲージ21のステム21a、スピンドル21b、及び測定子21cは、支持片14と対向する。このようにして、測定子21cを屈曲基材1の上面5に面直に当接させて、複数のダイヤルゲージ21の測定結果に基づいて、屈曲基材1の曲率や法線偏差が求められる。
【0039】
なお、第1ゲージ固定孔24hに固定されたダイヤルゲージ21において、測定子21cを支持片14に当接させて測定した結果は、屈曲基材1の曲率を求める際の基準(いわゆるゼロ点)として用いられる。そして、当該ゼロ点を基準として、第2ゲージ固定孔24iに固定されたダイヤルゲージ21で測定を行うことで、屈曲基材1の曲率が求められる。
【0040】
また、第2ゲージ固定孔24iに固定されたダイヤルゲージ21において、測定子21cを支持台13の上面13aに当接させて測定した結果を、屈曲基材1の曲率を求める際の基準(ゼロ点)として用いてもよい。そして、当該ゼロ点を基準として、第1ゲージ固定孔24hに固定されたダイヤルゲージ21で測定を行うことで、屈曲基材1の曲率が求められる。
【0041】
また、上述した方法の他、ダイヤルゲージ21を専用治具に固定して、ゼロ点を求めてもよい。すなわち、適切にゼロ点を求められるのであれば、任意の方法を採用して構わない。
【0042】
本実施形態では特に、ダイヤルゲージ21が屈曲基材1の上面5の測定点に対して面直方向に配置されることにより、測定子21cが当該測定点に面直に当接するので、測定精度を向上できる。
【0043】
また、複数のダイヤルゲージ21同士の対応する部位を結んだ仮想曲面B(
図7及び8では、ステム21aの上端同士を結んだ仮想曲面)が、支持台13の上面13a又は屈曲基材1と平行である。これにより屈曲基材1のように基材が湾曲している場合でも、法線方向の偏差を測定できる為、測定位置ズレ誤差に対して、誤差の小さな測定が可能となる。
【0044】
なお、ダイヤルゲージ21は、必ずしも複数個設けられる必要はなく、少なくとも一つ設けられればよい。例えば、ダイヤルゲージ21を一個のみ設ける場合には、屈曲基材1全体の曲率を測定できるように、ダイヤルゲージ21は測定器支持部23に移動可能に支持されてもよい。また、ダイヤルゲージ21を複数個設ける場合であっても、ダイヤルゲージ21は測定器支持部23(例えばブラケット24)に移動可能に支持されても構わない。このように、ダイヤルゲージ21が移動可能である場合、その移動軌跡によってなる仮想曲面は、上述した仮想曲面B(
図7及び8参照)と同様、屈曲基材1の上面5又は支持台13の上面13aと平行であることが好ましい。これにより、ダイヤルゲージ21を、屈曲基材1の上面5上を移動させることで連続測定ができるため、測定点が増えより精確な測定が可能となる。なお、ダイヤルゲージ21を屈曲基材1の上面5上でスライドさせると、当該上面5に擦り傷が発生する可能性がある。したがって、測定子21cの材質は、上面との摩擦が低減できるもの、例えばフッ素樹脂とすることが好ましい。
【0045】
なお、ブラケット24は、支持台13に一体に固定される必要はなく、床や天井等の構造物に固定し、支持台13と別体としても構わない。ブラケット24を支持台13と別体とした場合、自動測定化が可能となる。また、繰り返し測定にて、ブラケット24と測定器との接触部において、摩耗等によりガタが生じやすい部分について、容易に交換が可能である。また、ブラケット24の交換により、測定子の変更が容易になる。なお、ブラケット24の形状や個数は特に限定されない。
【0046】
また、基材支持部12は支持片14を有さなくてもよく、屈曲基材1の設計上の曲率と等しい曲率を有する支持台13の上面13aによって、屈曲基材1の下面3を支持しても構わない。この場合であっても、屈曲基材1は当該屈曲基材1の設計上の下面3の曲率と等しい曲率を有する基材支持部12に支持されるので、屈曲基材1の形状変化を抑制でき、曲率測定部20による正確な形状測定が可能である。
【0047】
また、本実施形態では、基材支持部12が、屈曲基材1の下面3と平行である支持台13の上面13aと複数の支持片14とを有し、互いに同一形状の複数の支持片14が支持台13の上面13aに設けられることにより、複数の支持片14の上方端を結んだ仮想曲面Aが屈曲基材1の下面3と平行である。これによれば、同一形状の複数の支持片14を支持台13の上面13aに固定するだけでよいので、非常に簡便である。しかしながら、複数の支持片14の上方端を結んだ仮想曲面Aが、屈曲基材1の下面3と平行である限り、支持台13や複数の支持片14の構成は限定されない。例えば、
図10に示すように、支持台13の上面13aを、屈曲基材1の下面3と平行ではない面(例えば平面)とし、長さの異なる複数種類の支持片14を支持台13の上面13aに設けることにより、複数の支持片14の先端を結んだ仮想曲面Aを、屈曲基材1の下面3と平行であるように設定しても構わない。これによれば、支持片14の長さを変更するだけで、異なる曲率や曲面形状を有する様々な屈曲基材1に対応できる。
【0048】
図11〜13に示すように、曲率測定部20は、屈曲基材1の曲率を測定する曲率測定器としてダイヤルゲージ21の代わりにレーザー変位計25を適用してもよい。この場合、複数のレーザー変位計25を支持する測定器支持部23は、
図5〜9に示した例と比較し、梁部24bの構成において異なる。なお、
図12の例では、屈曲基材1のX及びY方向の寸法に合わせて、支持台13の上面13aのX方向一端側に設けられた二個のストッパ固定溝13cのうち、内側のストッパ固定溝13cにストッパ16が装着される。また、
図13の例では、
図12の屈曲基材よりもX及びY方向の寸法が大きいため、支持台13の上面13aのX方向一端側に設けられた二個のストッパ固定溝13cのうち、外側のストッパ固定溝13cにストッパ16が装着される。
【0049】
梁部24bは、それぞれY方向に延び、柱部24aを挟むように互いにX方向に離間する一対の長辺部24dと、一対の長辺部24dのY方向両端部同士を連結し、その下方に柱部24aが固定される短辺部24eと、一対の長辺部24dのY方向中間部同士を連結する三個の連結部24fと、を有する。連結部24fのX方向両端には、レーザー変位計25の固定治具26を固定するための一対のピン24gが設けられている。
【0050】
一対のピン24gに固定治具26を固定した場合、固定治具26に連結されたレーザー変位計25は、梁部24bに対して面直にレーザーを発振するように構成されている(図中における破線の矢印を参照。)。ここで、ブラケット24は、支持台13の上面13aに対して面直に配置されるので、レーザー変位計25から発信されたレーザーは、支持台13の上面13aに対して面直方向、すなわち屈曲基材1に対して面直方向に進む。このようにして、レーザーを屈曲基材1の上面5に面直に照射させて、複数のレーザー変位計25の測定結果に基づいて、屈曲基材1の曲率が求められる。
【0051】
本実施形態では特に、レーザー変位計25が屈曲基材1の上面5の測定点に対して面直方向に配置されることにより、レーザーが当該測定点に面直に照射され、当該測定点に対して一定の角度で入射するので、測定精度を向上できる。
【0052】
なお、レーザーを屈曲基材1の上面5の測定点に対して面直方向に照射する場合、垂直に反射した反射光をレーザー変位計25で検知してもよく、散乱光を任意の角度θだけ傾いた位置に配置されたディテクタ(不図示)で検知してもよい。また、上記測定点に対して上面5の法線から−θ傾けた方向からレーザーを入射させ、+θ傾けた位置に配置されたディテクタで検知してもよい。また、上記測定点に対して上面5の法線−θ傾けた方向からレーザーを入射させ、面直方向に配置されたディテクタで検知してもよい。
【0053】
また、複数のレーザー変位計25同士の対応する部位同士を結んだ仮想曲面が、支持台13の上面13aと又は屈曲基材1と平行とされる。これにより法線方向の偏差を測定できるので、位置ズレによる誤差の影響を受けにくい。
【0054】
なお、レーザー変位計25は、必ずしも複数個設けられる必要はなく、少なくとも一つ設けられればよい。例えば、レーザー変位計25を一個のみ設ける場合には、屈曲基材1全体の曲率を測定できるように、レーザー変位計25は測定器支持部23に移動可能に支持されてもよい。また、レーザー変位計25を複数個設ける場合であっても、レーザー変位計25は測定器支持部23(例えばブラケット24)に移動可能に支持されても構わない。このように、レーザー変位計25が移動可能である場合、その移動軌跡によってなる仮想曲面は、屈曲基材1の上面5又は支持台13の上面13aと平行であることが好ましい。これによりレーザー変位計25を、屈曲基材1の上面5上を移動させることで連続測定できるため、測定点が増えより精確な測定が可能となる。しかも、レーザー変位計25を屈曲基材1の上面5に対して非接触で移動できるので、上面5に擦り傷等が生じない。
【0055】
上述したような方法で屈曲基材1の曲率を測定する場合、当該屈曲基材1が良品であるか不良品であるかの判断は、例えば、
図14に示すように、屈曲基材1が規格上限Smaxと規格下限Sminとの間にあるか否かに基づいて行う。ここで、規格上限Smaxは、屈曲基材1の設計上の曲率と等しい曲率を有する基準面Sbaseに対して所定の公差だけ面直方向上方に位置し、規格下限Sminは、基準面Sbaseに対して所定の公差だけ面直方向下方に位置する。また、基準面Sbase、規格上限Smax、及び規格下限Sminは、互いに平行である。
【0056】
図14には、基材支持部12が支持片14を有さず、屈曲基材1の設計上の下面3の曲率と等しい曲率を有する支持台13の上面13aによって、屈曲基材1の下面3を支持する構成が示されている。支持台13の上面13aは、基準面Sbaseと一致する。この場合、
図14に示される屈曲基材1は、基準面Sbaseと規格上限Smaxとの間に配置されるので、良品として判断される。
【0057】
しかしながら、
図15に示される屈曲基材1は、本来的には良品と判断されるべきものであるが、規格上限Smaxよりも上方に位置する部分が存在するので、不良品と判断される。これは、基準面Sbaseから規格下限Sminまでの範囲が支持台13内に存在することが原因である。
【0058】
そこで、
図16に示すように、支持台13の上面13aと規格下限Sminを一致させれば、
図15と同様の屈曲基材1についても、規格下限Sminから規格上限Smaxの間に位置するので、正確に良品と判断することが可能である。
【0059】
支持台13の上面13aは、規格下限Sminから規格上限Smaxの間であれば、その位置は特に限定されないが、屈曲基材1について良又は不良を正確に判断するためには、規格下限Sminに位置することが好ましい。
【0060】
このように、屈曲基材1の下面3が支持台13の上面13aによって支持される場合、屈曲基材1と支持台13との接触面積が大きくなり、両者に傷が発生する可能性がある。また、屈曲基材1の形状測定時に、機械振動等が支持台13から屈曲基材1に伝わり易い点や、測定環境による粉塵に影響されやすい点等も問題点として挙げられる。
【0061】
これらの問題点を解決するためには、
図17に示すように、屈曲基材1の下面3とそれぞれ点接触する複数の支持片14が、支持台13の上面13aに配置された構成を適用することが好ましい。これによれば、屈曲基材1と基材支持部12との接触面積が小さくなり、屈曲基材1に傷が発生することを抑制できる。さらに、また、支持片14をゴム等、摩擦係数の大きな材料から構成することで、測定中の振動等によって屈曲基材1がずれてしまうことを抑制できる。
【0062】
支持片14の先端は基準面Sbaseと一致する。この場合、
図14及び
図15の例と異なり、基準面Sbaseから規格下限Sminまでの範囲が支持台13内に存在しない。したがって、
図15と同様の屈曲基材1についても、規格下限Sminから規格上限Smaxの間に位置し、正確に良品と判断できる。
【0063】
支持片14の先端の位置は、規格下限Sminから規格上限Smaxの間であれば、特に限定されないが、屈曲基材1について良又は不良を正確に判断するためには、基準面Sbaseに位置することが好ましい。
【0064】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更、改良等できる。
【0065】
例えば、曲率測定器の種類は、ダイヤルゲージやレーザー変位計に限定されず、任意の変位計を適用できる。
また、形状測定だけでなく、基材の色味や光の透過率、反射率などの光学特性評価、表面の粗さやうねりを求める表面形状評価、水などの接触角測定などの対液体界面評価、鉛筆などの接触子を使用した表面強度評価などに使用できる。
【0066】
本発明の屈曲基材としては、曲面形状と平面形状の組み合わせであってもよい。この場合にも、基材支持部の曲面及び平面、又は、基材支持部の複数の支持片の先端を結んだ仮想曲面及び仮想平面が、第2面と平行、例えば、略同一形状であればよい。
【0067】
本出願は、2016年2月29日出願の日本特許出願2016−38024に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。