(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ガス供給機構は、前記複数の基板の配列の側方に配置され、流量制御され単一の管から供給されたガスを分配し、前記基板保持具に保持された全ての前記製品基板の端若しくはその上方の空間に向けて、複数の開口から前記ガスを吐出するノズルを備える請求項6に記載の基板処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図中に示すUPは、装置上下方向の上方を示す。
【0011】
〔第1実施形態〕
図1〜
図8を用いて、第1実施形態の基板処理装置及び半導体装置の製造方法について説明する。
【0012】
<基板処理装置の全体構成>
図1に示すように、基板処理装置1は、半導体集積回路の製造における熱処理工程を実施する縦型熱処理装置として構成され、炉体としての処理炉2を備えている。処理炉2は、後述する反応管4の筒部を加熱するために、上下方向に沿って配置されたメインヒータとしてのヒータ3を有する。ヒータ3は円筒形状であり、後述する反応管4の筒部(本実施形態では側部)の周囲に上下方向に沿って配置されている。ヒータ3は、上下方向に複数に分割された複数のヒータユニットで構成されている。本実施形態では、ヒータ3は、上方から下方に向かって順にアッパヒータ3Aと、センタアッパヒータ3Bと、センタヒータ3Cと、センタロアヒータ3Dと、ロアヒータ3Eと、を備えている。ヒータ3は、保持板としてのヒータベース(図示せず)に支持されることにより、基板処理装置1の設置床に対して垂直に据え付けられている。
【0013】
アッパヒータ3Aと、センタアッパヒータ3Bと、センタヒータ3Cと、センタロアヒータ3Dと、ロアヒータ3Eは、電力調整器70にそれぞれ電気的に接続されている。電力調整器70は、コントローラ29に電気的に接続されている。コントローラ29は、電力調整器70によって各ヒータへの通電量を制御する温度コントローラとしての機能を有する。コントローラ29によって、電力調整器70の通電量が制御されることで、アッパヒータ3Aと、センタアッパヒータ3Bと、センタヒータ3Cと、センタロアヒータ3Dと、ロアヒータ3Eの温度がそれぞれ制御されるようになっている。ヒータ3は、後述するようにガスを熱で活性化(励起)させる活性化機構(励起部)としても機能する。
【0014】
ヒータ3の内側に、反応容器(処理容器)を構成する反応管4が配設されている。反応管4は、例えば石英(SiO
2)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料からなり、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管4は、下端のフランジ部4Cにおいて互いに結合した外管4Aと内管4Bとを有する2重管構造とされている。言い換えると、外管4Aと内管4Bは、それぞれ円筒状に形成されており、外管4Aの内部に内管4Bが配置されている。外管4Aには、上端が閉じられた天井部72が設けられている。また、内管4Bには、上端が閉じられた天井74が設けられており、内管4Bの下端は開口している。天井74は、内面が平坦な形状とされている。外管4Aは、内管4Bの上方及び側方を取り囲むように配置されている。
【0015】
外管4Aの下部には、フランジ部4Cが設けられている。フランジ部4Cは、外管4Aよりも大きな外径を有し、外側へ突出している。反応管4の下端寄りには、外管4A内と連通する排気ポート4Dが設けられる。これらを含む反応管4全体は単一の材料で一体に形成される。外管4Aは、内側を真空にしたときの圧力差に耐えうるように、比較的肉厚に構成されている。
【0016】
処理炉2は、ヒータ3の上部側に、外管4Aの天井部72の斜め上方側及び上方側を覆うように配置された側部断熱体76及び上部断熱体78を有している。一例として、円筒状の側部断熱体76がヒータ3の上部に設けられており、上部断熱体78が側部断熱体76に架け渡された状態で側部断熱体76に固定されている。これにより、処理炉2は、反応管4の上方及び側方を取り囲む構成とされている。
【0017】
外管4Aの天井部72の上方側であって、上部断熱体78の下壁部には、反応管4の外管4Aの天井部72及び内管4Bの天井74を加熱する天井ヒータ80が設けられている。本実施形態では、天井ヒータ80は、外管4Aの外側に設けられている。天井ヒータ80は、電力調整器70に電気的に接続されている。コントローラ29は、電力調整器70によって天井ヒータ80への通電量を制御する。これにより、天井ヒータ80の温度は、アッパヒータ3Aと、センタアッパヒータ3Bと、センタヒータ3Cと、センタロアヒータ3Dと、ロアヒータ3Eの温度とは独立して制御されるようになっている。
【0018】
マニホールド5は、円筒又は円錐台形状で金属製又は石英製であり、反応管4の下端を支えるように設けられている。マニホールド5の内径は、反応管4の内径(フランジ部4Cの内径)よりも大きく形成されている。これにより、反応管4の下端(フランジ部4C)と後述するシールキャップ19との間に後述する円環状の空間を形成される。この空間もしくはその周辺の部材を炉口部と総称する。
【0019】
内管4Bは、排気ポート4Dよりも反応管の奥側で、その側面において内側と外側を連通させる主排気口4Eを有し、また、主排気口4Eと反対の位置において供給スリット4Fを有する。主排気口4E及び供給スリット4Fは、円周方向に伸びたスリット状の開口であり、各ウエハ7に対応するように垂直方向に複数等間隔に並んで設けられている。主排気口4E及び供給スリット4Fは、基板としてのウエハ7が配置されている領域を実質的に臨むように開口していれば、単一の縦長の開口としてもよいし、任意の形状や配置の複数の開口としてもよい。例えば、ある開口の面を、その面に垂直方向に或いは期待されるガスの流れの方向に押し出して得られる立体と、ウエハ又はウエハ上の空間とが交差するとき、その開口はウエハ又はウエハ上の空間に臨んでいるといえる。開口とウエハ又はウエハ上の空間との間に、障害物は設けないように構成されうる。主排気口4Eや供給スリット4Fは更に、最下段のウエハ7の下方の空間(下端空間)に対応するスリット状開口を有しうる。
【0020】
内管4Bは更に、排気ポート4Dよりも反応管4の奥側で且つ主排気口4Eよりも開口側の位置に、処理室6と排気空間S(以降、外管4Aと内管4Bの間の空間を排気空間Sという)とを連通させる複数の副排気口4Gが設けられる。また、フランジ部4Cにも、処理室6と排気空間S下端とを連通させる複数の底排気口4H、4J(
図5参照)が形成されている。また、フランジ部4Cには、ノズル導入孔4K(
図5参照)が形成されている。言い換えれば、排気空間Sの下端は、フランジ部4Cによって底排気口4H、4J等を除き閉塞されている。副排気口4G、及び底排気口4H、4Jは、主に後述の軸パージガスを排気するように機能する。
【0021】
外管4Aと内管4Bの間の排気空間Sには、供給スリット4Fの位置に対応させて、原料ガス等の処理ガスを供給する1本以上のノズル8が設けられている。ノズル8には、処理ガス(原料ガス)を供給するガス供給管9がマニホールド5を貫通してそれぞれ接続されている。
【0022】
それぞれのガス供給管9の流路上には、上流方向から順に、流量制御器であるマスフローコントローラ(MFC)10および開閉弁であるバルブ11が設けられている。バルブ11よりも下流側では、不活性ガスを供給するガス供給管12がガス供給管9に接続されている。ガス供給管12には、上流方向から順に、MFC13およびバルブ14が設けられている。主に、ガス供給管9、MFC10、バルブ11により、処理ガス供給系が構成される。
【0023】
ノズル8は、ガス供給空間S1内に、反応管4の下部から立ち上がるように設けられている。ノズル8の側面や上端には、ガスを供給する1ないし複数のノズル孔8Hが設けられている。複数のノズル孔8Hは、供給スリット4Fのそれぞれの開口に対応させて、反応管4の中心を向くように開口させることで、内管4Bを通り抜けてウエハ7に向けてガスを噴射(吐出)することができる。ガス供給機構は、ノズル8、ノズル室42(後述)および供給スリット4Fを含む概念であり、処理ガス供給系を含みうる。ガス供給機構は、ボート21上のウエハ7の側方直近からその表側面に対して別個に処理ガスを供給し、各供給量は、ノズル8や供給スリット4Fの開口の量によって調整されうる。
【0024】
排気ポート4Dには、処理室6内の雰囲気を排気する排気管15が接続されている。排気管15には、処理室6内の圧力を検出する圧力検出器(圧力計)としての圧力センサ16および圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ17を介して、真空排気装置としての真空ポンプ18が接続されている。APCバルブ17は、真空ポンプ18を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室6内の真空排気および真空排気停止を行うことができる。更に、APCバルブ17は、真空ポンプ18を作動させた状態で、圧力センサ16により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室6内の圧力を調整することができるように構成される。主に、排気管15、APCバルブ17、圧力センサ16により、排気系が構成される。真空ポンプ18を排気系に含めて考えてもよい。
【0025】
マニホールド5の下方には、マニホールド5の下端の開口90を気密に閉塞可能な蓋としてのシールキャップ19が設けられている。すなわち、シールキャップ19は、反応管4の外管4Aを塞ぐ蓋としての機能を有する。シールキャップ19は、例えばステンレスやニッケル基合金等の金属からなり、円板状に形成されている。シールキャップ19の上面には、マニホールド5の下端と当接するシール部材としてのOリング19Aが設けられている。
【0026】
また、シールキャップ19の上面には、マニホールド5の下端内周より内側の部分に対し、シールキャップ19を保護するカバープレート20が設置されている。カバープレート20は、例えば、石英、サファイヤ、またはSiC等の耐熱耐蝕性材料からなり、円板状に形成されている。カバープレート20は、機械的強度が要求されないため、薄い肉厚で形成されうる。カバープレート20は、シールキャップ19と独立して用意される部品に限らず、シールキャップ19の内面にコーティングされた或いは内面が改質された、窒化物等の薄膜或いは層であってもよい。カバープレート20はまた、円周の縁からマニホールド5の内面に沿って立ち上がる壁を有しても良い。
【0027】
反応管4の内管4Bの内部には、基板保持具としてのボート21が収容されている。ボート21は、直立した複数の支柱21Aと、複数の支柱21Aの上端を互いに固定する円板状のボート天板21Bと、複数の支柱21Aの下端部を互いに固定する円環状の底板86(
図2参照)と、を備え、それらは例えば石英やSiC等の耐熱性材料で形成されている。本実施形態の底板86は、円環状に形成されるが、円板状でもよい。
【0028】
ボート21は、例えば25〜200枚のウエハ7を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に支持する。そこではウエハ7は、一定の間隔を空けて配列させる。本実施形態では、ボート21に保持された全てのウエハ7は、集積回路パターンが形成された複数のプロダクトウエハ(製品基板)とされている。言い換えると、ボート21は、ウエハ7を保持可能な全ての位置に、パターンが形成された複数のプロダクトウエハが載置されて使用される。この文脈において、プロダクトウエハは、それと同等の表面積を有するモニターウエハやフィルダミーウエハを含みうる。ウエハ7を保持可能な位置の数は、FOUP(Front Opening Unified Pod)等のウエハ容器の収容可能数(例えば25枚)の整数倍にモニターウエハの数(例えば3枚)を加算した数とすると、ウエハ容器からボート21への移載を含む基板処理の効率を最大化することができる。プロダクトウエハは、例えば、パターンが無い基板(ダミーウエハ)に対して表側に50倍超の所定の比表面積のパターンを有する。
【0029】
反応管4の内管4Bは、ボート21を安全に搬入出可能な最小限の内径を有することが望ましい。本実施形態では、例えば、ボート天板21Bの直径は、内管4Bの内径の90%以上98%以下に設定されるか、又は、ボート21に保持されたウエハ7間のピッチは、例えば、6mm以上16mm以下に設定されている。ここで、ボート天板21Bの直径は、内管4Bの内径の90%以上98%以下が好ましく、92%以上97%以下がより好ましく、94%以上96%以下がさらに好ましい。ボート天板21Bの直径が、内管4Bの内径の90%未満であると、ボート天板21Bの縁と内管4Bとの隙間において、拡散によるガス移動(特にボート天板21B上からウエハ7側へ後述する余剰SiCl
2が流入すること)が容易となり、ガス余りの影響が周囲に波及しやすくなる。ボート天板21Bの直径が、内管4Bの内径の98%を超えるとボートと内管の接触に関する所定の安全率を確保できない。ボート天板21Bの直径を、内管4Bの内径の92%以上にすると拡散をより抑制でき、94%以上にするとさらに抑制できる。ボート天板21Bの直径を、内管4Bの内径の97%以下にすると安全率をより高められ、96%以下にするとさらに高められる。また、ウエハ7間のピッチは、6mm以上16mm以下が好ましく、7mm以上14mm以下がより好ましく、8mm以上12mm以下がさらに好ましい。ウエハ7間のピッチが、6mm未満であると、隣り合うウエハ7の間をガスがスムーズに流れにくくなり面内均一性が悪化しうる。また、ウエハ7間のピッチが18mmを超えると、面内均一性の向上は僅かである一方で生産性が低下する。ピッチは、7mm以上であると面内均一性がより良くなり、8mm以上であると更に良くなる。またピッチは、14mm以下とすると生産性を高められ、12mm以下とすると更に高められる。
【0030】
さらに、本実施形態では、ボート天板21Bによって他と仕切られた、天井74とボート天板21Bとで挟まれた上端空間の容積は、例えば、ボート21に保持された互いに隣接する(隣り合う)ウエハ7に挟まれた空間の容積の、1倍以上3倍以下となるように設定されている。ここで、天井74とボート天板21Bとで挟まれた上端空間の容積は、互いに隣接するウエハ7に挟まれた空間の容積の1倍以上3倍以下が好ましく、1倍以上2.5倍以下がより好ましく、1倍以上2倍以下がさらに好ましい。すなわち、天井74とボート天板21Bとで挟まれた上端空間の容積は小さいほど好ましい。ただし、ガスが主排気口4Eにスムーズに流れることが求められる。天井74とボート天板21Bとで挟まれた上端空間の容積が、ボート21に保持された互いに隣接するウエハ7に挟まれた空間の容積の3倍以下とされることで、ガス余りの絶対量が少なくなる。また、天井74とボート天板21Bとで挟まれた上端空間の容積が、ボート21に保持された互いに隣接するウエハ7に挟まれた空間の容積の1倍以上とされることで、ガスが主排気口4Eにスムーズに流れる。
【0031】
主排気口4Eは、ボート21に保持された前記プロダクトウエハの端若しくはその上方の空間(つまり、互いに隣接するウエハ7に挟まれた空間や、最上段のウエハ7とボート天板21Bとの間の空間)を臨むように開口し、反応管内の雰囲気を排気する。この結果、反応管4内で、ガス供給機構(供給スリット4F)から主排気口4Eへと、前記プロダクトウエハに平行に流れるガスの流れ(クロスフロー)が形成される。このとき、上下方向の物質移動は、主にウェハ7と内管4Bの間のギャップにおける拡散が支配的となるように抑制されている。
【0032】
ボート21の下部には後述する断熱アセンブリ(断熱構造体)22が配設されている。断熱アセンブリ22は、上下方向の熱の伝導或いは伝達が小さくなるような構造を有し、通常、内部に空洞を有する。断熱アセンブリ22の長さ(高さ)は、ウエハの直径よりも大きくなりうる。内部は軸パージガスによってパージされうる。反応管4において、ボート21が配置されている上部分をウエハ7の処理領域A、断熱アセンブリ22が配置されている下部分を断熱領域Bと呼ぶ。
【0033】
シールキャップ19の処理室6と反対側には、ボート21を回転させる回転機構23が設置されている。回転機構23には、軸パージガスのガス供給管24が接続されている。ガス供給管24には、上流方向から順に、MFC25およびバルブ26が設けられている。このパージガスの1つの目的は、回転機構23の内部(例えば軸受け)を、処理室6内で用いられる腐食性ガスなどから守ることである。パージガスは、回転機構23から回転軸66に沿って供給され、断熱アセンブリ22内に導かれる。
【0034】
ボートエレベータ27は、反応管4の外部下方に垂直に備えられ、シールキャップ19を昇降させる昇降機構(搬送機構)として動作する。これにより、シールキャップ19に支えられたボート21およびウエハ7が、処理室6内外に搬入出される。なお、シールキャップ19が最下位置に降りている間、シールキャップ19の代わりに反応管4の下端開口を塞ぐシャッタ(不図示)が設けられうる。
【0035】
外管4Aの側部の外壁若しくは内管4Bの内側には、反応管4の内部の温度を検出する処理空間温度センサとしての温度センサ(温度検出器)28が設置されている。温度センサ28は、例えば、上下に並んで配列された複数の熱電対によって構成される。図示を省略するが、温度センサ28は、コントローラ29に電気的に接続されている。温度センサ28により検出された温度情報に基づき、コントローラ29は、電力調整器70によってアッパヒータ3Aと、センタアッパヒータ3Bと、センタヒータ3Cと、センタロアヒータ3Dと、ロアヒータ3Eへの通電量をそれぞれ調整することで、処理室6内の温度が所望の温度分布となる。
【0036】
また、外管4Aの天井部72の外壁には、反応管4内の上部の温度を検出する上端空間温度センサとしての温度センサ(温度検出器)82が設置されている。温度センサ82は、例えば、水平方向に並んで配列された複数の熱電対によって構成される。図示を省略するが、温度センサ82は、コントローラ29に電気的に接続されている。温度センサ82により検出された温度情報に基づき、コントローラ29は、電力調整器70によって天井ヒータ80への通電量を調整することで、処理室6内の上部の温度が所望の温度分布となる。
【0037】
コントローラ29は、基板処理装置1全体を制御するコンピュータであり、MFC10, 13、バルブ11,14、圧力センサ16、APCバルブ17、真空ポンプ18、回転機構23、ボートエレベータ27等と電気的に接続され、それらから信号を受け取ったり、それらを制御したりする。
【0038】
図2に、断熱アセンブリ22及び回転機構23の断面図が示される。
図2に示すように、回転機構23は、上端が開口し下端が閉塞した略円筒形状に形成されたケーシング(ボディ)23Aを備えており、ケーシング23Aはシールキャップ19の下面にボルトで固定される。ケーシング23Aの内部では、内側から順に、円筒形状の内軸23Bと、内軸23Bの直径よりも大きな直径の円筒形状に形成された外軸23Cが、同軸に設けられる。そして、外軸23Cは、内軸23Bとの間に介設された上下で一対の内側ベアリング23D、23Eと、ケーシング23Aとの間に介設された上下で一対の外側ベアリング23F、23Gとによって回転自在に支承されている。一方、内軸23Bは、ケーシング23Aと固定され、回転不能になっている。
【0039】
内側ベアリング23Dおよび外側ベアリング23Fの上、つまり処理室6側には、真空と大気圧の空気とを隔てる磁性流体シール23H、23Iが設置されている。外軸23Cは、電動モータ(不図示)等によって駆動される、ウオームホイール或いはプーリ23Kが装着される。
【0040】
内軸23Bの内側には、処理室6内にてウエハ7を下方から加熱する補助加熱機構としてのサブヒータ支柱33が、垂直に挿通されている。サブヒータ支柱33は、石英製のパイプであり、その上端においてキャップヒータ34を同心に保持する。サブヒータ支柱33は、内軸23Bの上端位置において耐熱樹脂で形成された支持部23Nによって支持される。更に下方において、サブヒータ支柱33は、真空用継手23Pによって内軸23Bとの間が密封される。
【0041】
キャップヒータ34は、電力調整器70に電気的に接続されている(
図1参照)。コントローラ29は、電力調整器70によってキャップヒータ34への通電量を制御する(
図1参照)。これにより、キャップヒータ34の温度は、アッパヒータ3Aと、センタアッパヒータ3Bと、センタヒータ3Cと、センタロアヒータ3Dと、ロアヒータ3Eと、天井ヒータ80の温度とは独立して制御されるようになっている。
【0042】
フランジ状に形成された外軸23Cの上面には、下端にフランジを有する円筒形状の回転軸36が固定されている。回転軸36の空洞を、サブヒータ支柱33が貫いている。回転軸36の上端部には、サブヒータ支柱33を貫通させる貫通穴が中心に形成された円板形状の回転台37が、カバープレート20と所定の間隔h1を空けて固定されている。
【0043】
回転台37の上面には、断熱体40を保持する断熱体保持具38と、円筒部39が同心に載置され、ネジ等によって固定されている。円筒部39は、上端部を塞ぐ円板状の上面としての天板39Aを備えている。天板39Aは、ボート21の下方側に配置されており、処理領域Aの底を構成している(
図1参照)。また、ボート21の下端部を固定する円環状の底板86は、天板39Aの周囲で天板39Aに嵌合されている。断熱アセンブリ22は、回転台37、断熱体保持具38、円筒部39および断熱体40により構成されており、回転台37は底板(受け台)を構成する。回転台37には、直径(幅)h2の排気孔37Aが、縁寄りに回転対称に複数形成されている。
【0044】
本実施形態では、ボート21に保持可能な最も下の位置に保持されたウエハ7と底板86又は断熱体40の上面の天板39Aとで挟まれた下端空間の容積は、例えば、ボート21に保持された互いに隣接するウエハ7に挟まれた空間の容積の、0.5倍以上1.5倍以下となるように設定されている。ここで、下端空間の容積は、互いに隣接するウエハ7に挟まれた空間の容積の0.5倍以上1.5倍以下が好ましく、0.6倍以上1.3倍以下の間がより好ましく、0.7倍以上1.0倍以下がさらに好ましい。下端空間の容積が、互いに隣接するウエハ7に挟まれた空間の容積の1.5倍を超えると、ガス余りの絶対量が多くなって周囲に漏れたときの影響も大きくなり、0.5倍を下回ると、ガスの置換性が悪化する。下端空間の容積が、互いに隣接するウエハ7に挟まれた空間の容積の0.6倍以上とされることでガスが対向する主排気口4Eに向かって水平にスムーズに流れ、0.7倍以上とすると更にスムーズに流れる。また、下端空間の容積が、互いに隣接するウエハ7に挟まれた空間の容積の1.3倍以下とすることでガス余りを抑えられ、1倍以下とすると更にガス余りを抑えられる。
【0045】
キャップヒータ34には、キャップヒータ34の温度若しくは最下段のウエハ7の温度を検出する下端空間温度センサとしての温度センサ84が設置されている。温度センサ84は、例えば、キャップヒータ34と同じ高さに、水平方向に並んで配列された複数の熱電対によって構成される。図示を省略するが、温度センサ84は、コントローラ29(
図1参照)に電気的に接続されている。温度センサ84により検出された温度情報に基づき、コントローラ29は、電力調整器70(
図1参照)によってキャップヒータ34への通電量を調整することで、処理室6内の下部の温度が所望の温度分布となる。
【0046】
コントローラ29は、上端空間の温度センサ82と処理空間の温度センサ28と下端空間の温度センサ84の検出温度に基づいて、全ての位置に保持された複数のウエハ7の温度が等しくなるように、電力調整器70によってアッパヒータ3Aと、センタアッパヒータ3Bと、センタヒータ3Cと、センタロアヒータ3Dと、ロアヒータ3Eと、天井ヒータ80と、キャップヒータ34へ与える電力(すなわち、通電量)を調整する。つまり、処理領域A全体を均熱化することができる。
【0047】
断熱体保持具38は、中心にサブヒータ支柱33を貫通させる空洞を有する円筒形状に構成される。断熱体保持具38の下端には、回転台37よりも小さな外径の外向きフランジ形状の足38Cを有する。一方、断熱体保持具38の上端は、そこからサブヒータ支柱33が突き出させるように開口し、パージガスの供給口38Bを構成している。
【0048】
断熱体保持具38とサブヒータ支柱33との間に、断熱アセンブリ22内の上部に軸パージガスを供給する、円環状の断面を有する流路が形成される。供給口38Bから供給されたパージガスは、断熱体保持具38と円筒部39の内壁との間の空間を下向きに流れて、排気孔37Aから円筒部39外へ排気される。排気孔37Aを出た軸パージガスは、回転台37とカバープレート20の間の隙間を半径方向に流れて炉口部に放出され、そこで炉口部をパージする。
【0049】
断熱体保持具38の柱には、断熱体40として複数の反射板40Aと断熱板40Bが、同軸に設置されている。
【0050】
円筒部39は、内管4Bとの間隙h6が所定の値となるような外径を有する。間隙h6は、処理ガスや軸パージガスの通り抜けを抑制するために、狭く設定することが望ましく、例えば、7.5mm〜15mmとするのが好ましい。
【0051】
図3に、水平に切断された反応管4の斜視図が示される。なお、
図3では、フランジ部4Cは省略されている。
図3に示すように、内管4Bには、処理室6内に処理ガスを供給するための供給スリット4Fが縦方向にウエハ7(
図1参照)と同数、横方向に3個、格子状に並んで形成されている。供給スリット4Fの横方向の並びの間や両端の位置において、外管4Aと内管4Bの間の排気空間Sを区画するように縦方向に伸びた仕切り板41が、それぞれ設けられる。複数の仕切り板41によって、主たる排気空間Sから分離された区画は、ノズル室(ノズルバッファ)42を形成する。結果的に排気空間Sは、断面においてC字型に形成されることになる。ノズル室42と内管4B内を直接つなぐ開口は、供給スリット4Fだけである。なおノズル室42の上端は、内管4Bの上端と略同じ高さで塞がれうる。
【0052】
仕切り板41は、内管4Bとは連結されるものの、外管4Aと内管4Bの温度差に起因する応力を避けるために外管4Aとは連結させず、わずかな隙間を有するように構成することができる。ノズル室42は、排気空間Sから完全に隔離される必要はなく、特に上端や下端において排気空間Sと通じた開口もしくは隙間を有しうる。ノズル室42は、その外周側が外管4Aによって区画されるものに限らず、外管4Aの内面に沿った仕切り版を別途設けても良い。
【0053】
内管4Bには、断熱アセンブリ22の側面に向かって開口する位置に、3個の副排気口4Gが設けられている。副排気口4Gの1つは、排気ポート4Dと同じ向きに設けられ、その開口の少なくとも1部が、排気ポート4Dの管と重なるような高さに配置されている。また、残りの2つの副排気口4Gは、ノズル室42の両側部付近に配置されている。或いは、3個の副排気口4Gが、内管4Bの円周上で180度間隔となるような位置に配置されうる。
【0054】
図4に示すように、3つのノズル室42には、ノズル8a〜8cがそれぞれ設置されている。ノズル8a〜8dの側面には、反応管4の中心方向を向いて開口したノズル孔8Hがそれぞれ設けられている。ノズル孔8Hから噴出されたガスは、供給スリット4Fから内管4B内に流れるように意図されているが、一部のガスは直接流入しない。仕切り板41により、各ノズル8a〜8cはそれぞれ独立した空間内に設置されるため、各ノズル8a〜8cから供給される処理ガスがノズル室42内で混ざり合うことを抑制することができる。またノズル室42に滞留するガスは、ノズル室42の上端や下端から排気空間Sへ排出されうる。このような構成により、ノズル室42内で処理ガスが混ざり合って薄膜が形成されたり、副生成物が生成されたりすることを抑制することができる。なお
図4においてのみ、ノズル室42の隣の排気空間Sには、反応管の軸方向(上下方向)に沿って任意で設置されうるパージノズル8dが設けられている。以降、パージノズル8dは存在しないものとして説明する。
【0055】
図5に、反応管4の底面図が示される。
図5に示すように、フランジ部4Cには、排気空間S(
図4参照)とフランジ下方とを接続する開口として、底排気口4H、4J及びノズル導入孔4Kが設けられている。底排気口4Hは、排気ポート4Dに最も近い場所に設けられた長穴であり、底排気口4Jは、C字型の排気空間Sに沿って6箇所に設けられた小穴である。ノズル導入孔4Kは、その開口からノズル8a〜8c(
図4参照)が挿入される。底排気口4Jは、後述するように開口が大きすぎると、そこを通過する軸パージガスの流速が低下し、排気空間Sから原料ガス等が拡散によって炉口部に侵入してしまう。そのため、中央部の径を小さくした(くびれさせた)穴として形成する場合がある。
【0056】
図6に示すように、コントローラ29は、MFC10、13、25、バルブ11、14、26、圧力センサ16、APCバルブ17、真空ポンプ18、回転機構23、ボートエレベータ27等の各構成と電気的に接続され、それらを自動制御する。また、コントローラ29は、ヒータ3(アッパヒータ3A、センタアッパヒータ3B、センタヒータ3C、センタロアヒータ3D、ロアヒータ3E)、天井ヒータ80、キャップヒータ34、温度センサ28、温度センサ82、温度センサ84等の各構成と電気的に接続され、それらを自動制御する。図示を省略するが、コントローラ29は、電力調整器70を介してヒータ3(アッパヒータ3A、センタアッパヒータ3B、センタヒータ3C、センタロアヒータ3D、ロアヒータ3E)、天井ヒータ80、キャップヒータ34とそれぞれ電気的に接続されている。
【0057】
コントローラ29は、CPU(Central Processing Unit)212、RAM(Random Ac cess Memory)214、記憶装置216、I/Oポート218を備えたコンピュータとして構成される。RAM214、記憶装置216、I/Oポート218は、内部バス220を介して、CPU212とデータ交換可能なように構成される。I/Oポート218は、上述の各構成に接続されている。コントローラ29には、例えばタッチパネル等との入出力装置222が接続されている。
【0058】
記憶装置216は、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置216内には、基板処理装置1の動作を制御する制御プログラムや、処理条件に応じて基板処理装置1の各構成に成膜処理等を実行させるためのプログラム(プロセスレシピやクリーニングレシピ等のレシピ)が読み出し可能に格納されている。RAM214は、CPU212によって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0059】
CPU212は、記憶装置216から制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置222からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置216からレシピを読み出し、レシピに沿うように各構成を制御する。
【0060】
コントローラ29は、外部記憶装置(例えば、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ、CDやDVD等の光ディスク、HDD)224に持続的に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置216や外部記憶装置224は、コンピュータ読み取り可能な有体の媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置224を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0061】
<半導体装置の製造方法>
次に、上記の基板処理装置1を用い、半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、ウエハ7上に膜を形成する処理(以下、成膜処理ともいう)のシーケンス例について説明する。
【0062】
ここでは、ノズル8を2本以上設け、例えば、ノズル8aから第1の処理ガス(原料ガス)としてヘキサクロロジシラン(Si
2Cl
6、すなわち略称はHCDS)ガスを、ノズル8bから第2の処理ガス(原料ガス)としてアンモニア(NH
3)ガスをそれぞれ供給し、ウエハ7上にシリコン窒化(SiN)膜を形成する例について説明する。第2の処理ガス(原料ガス)は、反応ガスという場合もある。なお、以下の説明において、基板処理装置1の各構成の動作はコントローラ29により制御される。
【0063】
本実施形態における成膜処理では、処理室6内のウエハ7に対してHCDSガスを供給する工程と、処理室6内からHCDSガス(残留ガス)を除去する工程と、処理室6内のウエハ7に対してNH
3ガスを供給する工程と、処理室6内からNH
3ガス(残留ガス)を除去する工程と、を所定回数(1回以上)繰り返すことで、ウエハ7上にSiN膜を形成する。本明細書では、この成膜シーケンスを、便宜上、以下のように表記する。
【0065】
本実施形態では、結晶中にSiを提供するSiCl
2(活性種)が表面に吸着(化学吸着)することで、成膜が進行する。HCDSからSiCl
2が生じる化学反応には以下の(1)、(2)を含むさまざまなルートがあり、経験的に少なからず(2)のルートが存在すると考えられる。
(1)Si
2Cl
6の解離吸着。
(2)気相中で所定の平衡条件 Si
2Cl
6 ⇔ SiCl
2+SiCl
4へ向かって分解したSiCl
2が吸着。
【0066】
いずれにしても、SiCl
2の前駆体の濃度(分圧)が、SiCl
2の大量消費に伴ってウエハ7の表面付近で低下する。
【0067】
(ウエハチャージおよびボートロード)
ボート21には、ウエハ7を保持可能な全ての位置に、パターンが形成された複数のプロダクトウエハが保持されている。複数枚のウエハ7がボート21に装填(ウエハチャージ)されると、ボート21は、ボートエレベータ27によって処理室6内に搬入(ボートロード)される。このとき、シールキャップ19は、Oリング19Aを介してマニホールド5の下端を気密に閉塞(シール)した状態となる。ウエハチャージする前のスタンバイの状態から、バルブ26を開き、円筒部39内へ少量のパージガスが供給されうる。
【0068】
(圧力調整)
処理室6内、すなわち、ウエハ7が存在する空間が所定の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ18によって真空排気(減圧排気)される。この際、処理室6内の圧力は、圧力センサ52で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ17が、フィードバック制御される。円筒部39内へのパージガス供給及び真空ポンプ18の作動は、少なくともウエハ7に対する処理が終了するまでの間は維持する。
【0069】
(昇温)
処理室6内から酸素等が十分排気された後、処理室6内の昇温が開始される。処理室6が成膜に好適な所定の温度分布となるように、温度センサ28が検出した温度情報に基づきヒータ3(アッパヒータ3A、センタアッパヒータ3B、センタヒータ3C、センタロアヒータ3D、ロアヒータ3E)への通電量がフィードバック制御される。また、温度センサ82が検出した温度情報に基づき天井ヒータ80への通電量がフィードバック制御される。さらに、温度センサ84が検出した温度情報に基づきキャップヒータ34への通電量がフィードバック制御される。ヒータ3(アッパヒータ3A、センタアッパヒータ3B、センタヒータ3C、センタロアヒータ3D、ロアヒータ3E)、天井ヒータ80及びキャップヒータ34による処理室6内の加熱は、少なくともウエハ7に対する処理(成膜)が終了するまでの間は継続して行われる。キャップヒータ34への通電期間は、ヒータ3による加熱期間と一致させる必要はない。成膜が開始される直前において、キャップヒータ34の温度は、成膜温度と同温度に到達し、マニホールド5の内面温度は180℃以上(例えば260℃)に到達していることが望ましい。
【0070】
また、回転機構23によるボート21およびウエハ7の回転を開始する。回転機構23により、回転軸66、回転台37、円筒部39を介してボート21が回転されることで、キャップヒータ34は回転させずにウエハ7を回転させる。これにより加熱のむらが低減される。回転機構23によるボート21およびウエハ7の回転は、少なくとも、ウエハ7に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。
【0071】
(成膜)
処理室6内の温度が予め設定された処理温度に安定すると、ステップ1〜4を繰り返し実行する。なお、ステップ1を開始する前に、バルブ26を開き、パージガス(N
2)の供給を増加させてもよい。
【0072】
[ステップ1:原料ガス供給工程]
ステップ1では、処理室6内のウエハ7に対し、HCDSガスを供給する。バルブ11を開くと同時にバルブ14を開き、ガス供給管9内へHCDSガスを、ガス供給管12内へN
2ガスを流す。HCDSガスおよびN
2ガスは、それぞれMFC10、13により流量調整され、ノズル室42を介して処理室6内へ供給され、排気管15から排気される。ウエハ7に対してHCDSガスを供給することにより、ウエハ7の最表面上に、第1の層として、例えば、1原子層未満から数原子層の厚さのシリコン(Si)含有膜が形成される。
【0073】
[ステップ2:原料ガス排気工程]
第1の層が形成された後、バルブ11を閉じ、HCDSガスの供給を停止する。このとき、APCバルブ17は開いたままとして、真空ポンプ18により処理室6内を真空排気し、処理室6内に残留する未反応もしくは第1の層の形成に寄与した後のHCDSガスを処理室6内から排出する。また、バルブ14やバルブ26を開いたままとして、供給されたN2ガスは、ガス供給管9や反応管4内、炉口部をパージする。
【0074】
[ステップ3:反応ガス供給工程]
ステップ3では、処理室6内のウエハ7に対してNH
3ガスを供給する。バルブ11、14の開閉制御を、ステップ1におけるバルブ11、14の開閉制御と同様の手順で行う。NH
3ガスおよびN
2ガスは、それぞれMFC10、13により流量調整され、ノズル室42を介して処理室6内へ供給され、排気管15から排気される。ウエハ7に対して供給されたNH
3ガスは、ステップ1でウエハ7上に形成された第1の層、すなわちSi含有層の少なくとも一部と反応する。これにより第1の層は窒化され、SiおよびNを含む第2の層、すなわち、シリコン窒化層(SiN層)へと変化(改質)される。
【0075】
[ステップ4:反応ガス排気工程]
第2の層が形成された後、バルブ11を閉じ、NH
3ガスの供給を停止する。そして、ステップ1と同様の処理手順により、処理室6内に残留する未反応もしくは第2の層の形成に寄与した後のNH3ガスや反応副生成物を処理室6内から排出する。
【0076】
以上の4つのステップを非同時に、すなわち、オーバーラップさせることなく行うサイクルを所定回数(n回)行うことにより、ウエハ7上に、所定組成および所定膜厚のSiN膜を形成することができる。
【0077】
上述のシーケンスの処理条件としては、例えば、
処理温度(ウエハ温度):250〜700℃、
処理圧力(処理室内圧力):1〜4000Pa、
HCDSガス供給流量:1〜2000sccm、
NH
3ガス供給流量:100〜10000sccm、
N
2ガス供給流量(ノズル):100〜10000sccm、
N
2ガス供給流量(回転軸):100〜500sccm、
が例示される。それぞれの処理条件を、それぞれの範囲内のある値に設定することで、成膜処理を適正に進行させることが可能となる。
【0078】
HCDS等の熱分解性ガスは、石英よりも金属の表面において副生成物の膜を形成しやすい場合がある。HCDS(及びアンモニア)に晒された表面は、特に260℃以下のときにSiO、SiONなどが付着しやすい。
【0079】
(パージおよび大気圧復帰)
成膜処理が完了した後、バルブ14を開き、ガス供給管12からN
2ガスを処理室6内へ供給し、排気管15から排気する。これにより、処理室6内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、残留する原料や副生成物が処理室6内から除去(パージ)される。その後、APCバルブ17が閉じられ、処理室6内の圧力が常圧になるまでN
2ガスが充填される(大気圧復帰)。
【0080】
(ボートアンロードおよびウエハディスチャージ)
ボートエレベータ27によりシールキャップ19が下降され、マニホールド5の下端が開口される。そして、処理済のウエハ7が、ボート21に支持された状態で、マニホールド5の下端から反応管4の外部に搬出される(ボートアンロード)。処理済のウエハ7は、ボート21より取出される。
【0081】
上述の成膜処理を行うと、加熱されていた反応管4内の部材の表面、例えば、外管4Aの内壁、ノズル8aの表面、内管4Bの表面、ボート21の表面等に、窒素を含むSiN膜等が堆積し、薄膜を形成しうる。そこで、これらの堆積物の量、すなわち、累積膜厚が、堆積物に剥離や落下が生じる前の所定の量(厚さ)に達したところで、クリーニング処理が行われる。クリーニング処理は、反応管4内へフッ素系ガスとして例えばF
2ガスを供給することで行われる。
【0082】
<作用及び効果>
上記の基板処理装置1では、アッパヒータ3A、センタアッパヒータ3B、センタヒータ3C、センタロアヒータ3D、ロアヒータ3E、キャップヒータ34、及び天井ヒータ80の温度をそれぞれ制御することで、処理室6の上下方向の温度をほぼ均一に制御することができる。このため、ボート21におけるウエハ7を保持可能な全ての位置にプロダクトウエハを保持し、ダミーウエハを無くすことができる。
【0083】
また、ボート21におけるウエハ7を保持可能な全ての位置にプロダクトウエハが保持された状態で、ガス供給管9から気相中で分解する原料ガスを供給したときに、分解により生成した生成ガスの1種(例えば、SiCl
2)の分圧が、ボート21に保持されるウエハ7の全ての位置においてほぼ均一になる。これにより、ボート21の上下方向に複数配列されたプロダクトウエハに形成される膜の膜厚が、プロダクトウエハ間で不均一となるのを抑制することができる。
【0084】
また、基板処理装置1では、例えば、プロダクトウエハの上端側と下端側に配置されるダミーウエハを無くすことによって、プロダクトウエハの枚数が増やすことができ、生産性を向上させることができる。あるいはプロダクトウエハ枚数を増やす代わりに、ダミーウエハをなくした分だけ、プロダクトウエハのピッチを拡げることもできる。
【0085】
また、基板処理装置1では、例えば、ボート天板21Bの直径は、内管4Bの内径の90%以上98%以下に設定されるか、又は、ボート21に保持されたウエハ7間のピッチは、例えば、6mm以上16mm以下となるように設定されている。ボート天板21Bの直径が、内管4Bの内径の90%以上とされることで、拡散によるガス移動(特にボート天板21B上からウエハ7側へ余剰SiCl
2が流入すること)を抑制することができる。また、ボート天板21Bの直径が、内管4Bの内径の98%以下とされることで、ボート21を内管4Bから安全に搬入出させることができる。
【0086】
また、天井74とボート天板21Bとで挟まれた上端空間の容積は、例えば、ボート21に保持された互いに隣接する(隣り合う)ウエハ7に挟まれた空間の容積の、1倍以上3倍以下となるように設定されている。天井74とボート天板21Bとで挟まれた上端空間の容積が、ボート21に保持された互いに隣接するウエハ7に挟まれた空間の容積の3倍以下とされることで、ガス余りの絶対量が少なくなる。また、天井74とボート天板21Bとで挟まれた上端空間の容積が、ボート21に保持された互いに隣接するウエハ7に挟まれた空間の容積の1倍以上とされることで、ガスが主排気口4Eにスムーズに流れる。
【0087】
また、基板処理装置1では、ボート21に保持可能な最も下の位置に保持されたウエハ7と底板86又は断熱体40の上面の天板39Aとで挟まれた下端空間の容積は、例えば、ボート21に保持された互いに隣接するウエハ7に挟まれた空間の容積の、0.5倍以上1.5倍以下となるように設定されている。ウエハ7と底板86又は天板39Aとで挟まれた下端空間の容積が、互いに隣接するウエハ7に挟まれた空間の容積の1.5倍以下とされることで、ガス余りの絶対量が少なくなる。また、ウエハ7と底板86又は天板39Aとで挟まれた下端空間の容積が、互いに隣接するウエハ7に挟まれた空間の容積の1倍以上とされることで、ガスが主排気口4Eにスムーズに流れる。
【0088】
図7には、第1実施形態の基板処理装置1として、ボート21の保持位置の全てにパターンウエハ(プロダクトウエハ)を保持したときの、保持位置に対するラジカル分布の解析結果が示されている。また、
図10には、比較例の基板処理装置として、ボート21の保持位置のパターンウエハの上端側と下端側にダミーウエハを保持したときの、保持位置に対するラジカル分布の解析結果が示されている(
図7参照)。ここで、ラジカルは、HCDSが反応するときに生成する不対電子をもつ原子又は分子をいう。
【0089】
図10に示すように、比較例の基板処理装置では、パターンウエハ(プロダクトウエハ)の上端側と下端側に、製品として使用しないダミーウエハを数枚保持している。比較例の基板処理装置では、反応菅の周囲に上下方向に沿って配置されたヒータを備えるものの第1実施形態のような温度センサ82、84を備えておらず、キャップヒータや天井ヒータを独立に温度制御して均熱領域を拡大するようには構成されていない。ここで、パターンウエハは、パターンが形成されていることでパターンが無い場合と比べて表面積が大きくなり、表面積に比例してラジカルの消費が激しい。ダミーウエハは、パターンが形成されておらず(パターンウエハに比べて表面積が小さく)、ラジカルの消費がほとんどない。比較例の基板処理装置において、パターンウエハの上端側と下端側にダミーウエハを配置するのは、それらに挟まれたパターンウエハを、規則的に無限の長さに配列されたパターンウエハの一部と看做せるようにする(その部分には端部効果は及ばず、温度やガス濃度は均一化されている)ためである。
【0090】
図10に示すように、比較例の基板処理装置では、パターンウエハの上端部と下端部においてラジカル分布の均一性が悪化していることが分かる。この原因は、ラジカルの消費がほとんどないダミーウエハと、ラジカルの消費が激しいパターンウエハ(表面積に比例する)の差によってローディングエフェクトが発生するためである。すなわちパターンウエハ上は表面積が大きくラジカルの消費が激しいために気相中のラジカル濃度は低くなる一方で、ダミーウエハ上では消費が少ないため気相中のラジカル濃度は高い。このように極端な濃度差がついているパターンウエハとダミーウエハが隣り合う領域では、気相中の濃度拡散が発生しラジカル濃度差を緩和する方向に働く。そのためパターンウエハの上端部と下端部では必然的に濃度が高く(膜厚が厚く)なり、膜厚の均一性を悪化させてしまう。
【0091】
これに対し、第1実施形態の基板処理装置1では、ボート21のウエハ7の保持位置の全てにパターンウエハ(プロダクトウエハ)が保持されている。また、基板処理装置1では、アッパヒータ3A、センタアッパヒータ3B、センタヒータ3C、センタロアヒータ3D、ロアヒータ3E、キャップヒータ34、及び天井ヒータ80の温度をそれぞれ制御することで、パターンウエハの上端部と下端部の領域の温度をほぼ均一に制御することができるため、ダミーウエハをなくすことが可能である。
【0092】
図7に示されるように、ボート21のウエハ7の保持位置の全てにパターンウエハ(プロダクトウエハ)を保持したときは、全体的にラジカル分布の均一性が改善していることが分かる(
図7中の破線のグラフ参照)。これは、ボート21のウエハ7の保持位置の全てにパターンウエハを保持しているため、比較例のようにダミーウエハとパターンウエハの消費差がないためである。
【0093】
ただし、
図7では、まだパターンウエハ(プロダクトウエハ)の上端部と下端部とで濃度高の領域が少し見られる。これは、パターンウエハ領域の外、すなわちボート天板21Bと反応管4の内管4Bの間の空間の影響によるものと考えられる。この部分は内管4Bを構成する石英で囲まれており、積極的なガスの流れはないものの拡散によってラジカルがウエハ7付近へ拡散する。そして石英表面のラジカルの消費がベアウエハ(表面にシリコン平坦面のみが露出しているもの)と同等だとすれば、この空間の濃度はパターンウエハ上と比較するとやはり濃く、ここで濃度差が生じる。
【0094】
図8には、ボート21のウエハ7の保持位置の全てにパターンウエハ(プロダクトウエハ)を保持したときの、ボート21の上下方向のウエハ7の保持位置に対するラジカル分布の解析結果が示されている。この例では、下端空間を臨むスリット開口を有する主排気口4Eが用いられた。
図8に示すように、下端空間付近でのラジカル濃度は安定しているものの、ボート21の上端部側にラジカル濃度が僅かに高い空間があることが分かる。これを改善するための第2実施形態、第3実施形態の基板処理装置を以下に示す。
【0095】
〔第2実施形態〕
図9を用いて、第2実施形態の基板処理装置100について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0096】
図9に示されるように、基板処理装置100には、ボート天板21Bと内管4Bの天井74との間の上端空間にパージガス(不活性ガス)を供給するパージガス供給機構としての供給装置101が設けられている。供給装置101は、パージガスを供給する供給管102と、供給管102の先端に設けられると共にボート天板21Bと内管4Bの天井74との間の上端空間にパージガスを導入するノズル104と、を備えている。ノズル104は、内管4Bの上端側部に設けられている。供給管102には、MFC106とバルブ108とが設けられている。パージガスとしては、例えば、N
2が用いられている。
【0097】
基板処理装置100では、上端空間に供給されるパージガスによって、滞留する1種の生成ガス(例えば、SiCl
2)を希釈し、その分圧を低下させる。この結果、ボート21の上下方向におけるラジカル濃度がほぼ均一となる。これにより、ボート21にウエハ7を保持可能な全ての位置にプロダクトウエハを保持したときに、ウエハ7に形成される膜の膜厚が、ウエハ7間で不均一となるのをより効果的に抑制することができる。基板処理装置100の主排気口4Eは、上端空間に対応するスリット状開口を追加的に有しうる。この追加のスリット状開口は、上端空間のパージガスや生成ガスを局所的に排気し、希釈を局在化させる。
【0098】
なお、供給装置101は、パージガスとしてH
2を添加したN
2ガスを使用してもよい。水素はSiCl
2と結合してこれを消費するので、平衡条件をSiCl
2濃度を下げる方向に移動させることが期待できる。或いは基板処理装置100は、供給装置101に代えて、不活性ガスを供給するガス供給管12からマニホールド5を介して、ボート天板21Bと内管4Bの天井74との間の上端空間に不活性ガスを供給する供給管及びノズルを設ける構成でもよい。
【0099】
〔第3実施形態〕
次に、第3実施形態の基板処理装置について説明する。なお、前述した第1及び第2実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0100】
図示を省略するが、第3実施形態の基板処理装置では、ボート天板21Bと内管4Bの天井74との間の上端空間に、パターンが形成されたプロダクトウエハと同等に、1種の生成ガス(例えば、SiCl
2)を吸着しかつ消費してその分圧を低下させる多孔質又は焼結体で構成された固形物を配置する。固形物は、例えば、プロダクトウエハのパターンのスケールより大きいスケールで加工された凹凸表面を有する板材が用いられ、この加工及び素材自体の細孔(マイクロポア)によって、大きな吸着可能表面積を有する。細孔では、クヌーセン拡散や毛管凝縮等のガス分子量に依存する特異な現象が起こるため、少なくとも一部の細孔の内径は、ウエハのパターンにあわせて例えば10〜100nmに選ぶことができる。更には穴の径の分布が、数10nmから数100nmに亘って一定となるようにすると、堆積による細孔の閉塞があっても、固形物を比較的長期間交換せずに使用することができる。第3実施形態では、例えば、凹凸表面を有する複数の板材を、均熱領域である上端空間に、例えば天井74の内側面に沿って並べて配置する。配置間隔は狭くてよく、例えば2〜3mmに選ぶことができる。
【0101】
固形物の実質的な表面積は、例えば、プロダクトウエハの表側の表面積の0.1倍以上1.0倍以下とされている。固形物の実質的な表面積は、プロダクトウエハの表側の表面積の0.1倍以上1.0倍以下が好ましく、0.2倍以上0.7倍以下がより好ましく、0.3倍以上0.6倍以下がさらに好ましい。ボート天板21Bと内管4Bの天井74との間の上端空間には、積極的に原料ガスを供給しておらず、ボート天板21Bと内管4Bの内面との隙間から流入するだけであるので、固形物の実質的な表面積は、プロダクトウエハの表側の表面積の1.0倍以下でよい。固形物の実質的な表面積が、プロダクトウエハの表側の表面積の0.1倍以上とされることで、上端空間で生成ガス(例えば、SiCl
2)をより効果的に吸着しかつ消費することができる。
【0102】
これにより、内管4Bの天井74の内側の空間とプロダクトウエハ上との1種の生成ガス(例えば、SiCl
2)の濃度差を低減することができる。このため、ボート21にウエハ7を保持可能な全ての位置にプロダクトウエハが保持をしたときに、ウエハ7に形成される膜の膜厚が、ウエハ7間で不均一となるのをより効果的に抑制することができる。
【0103】
なお、ボート天板21Bと対向する内管4Bの天井74の内側面に固形物を備えた構成に代えて、内管4Bの天井74の内側の表面(石英表面)に、凹凸(細孔)状の加工を施してもよい。
【0104】
なお、本開示を特定の実施形態について詳細に説明したが、本開示はかかる実施形態に限定されるものではなく、本開示の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、ノズル8は、着脱可能となるように反応管4と分離して設けられるものに限らず、内管4Bに連結し内管4Bに直接開口するものも含みうる。第1の原料ガスとしてはHCDSのように水素を含まないシリコンハライドの他、水素を含むシリコンハライドや有機シリコンが利用可能である。