(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記移送部は、前記スラリーを汲み出すスラリーポンプと、前記希釈用液を汲み出す希釈用液ポンプと、前記スラリーポンプが汲み出した前記スラリー又は前記希釈用液ポンプが汲み出した前記希釈用液を移送する供給ポンプと、を含む、
請求項1又は2に記載の粒子測定装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態に係る粒子測定装置100について図面を参照して説明する。
図1は、粒子測定装置100の構成例を示す概略図であり、1つの粉体製造装置のスラリー槽38からスラリー21をサンプリングする際の形態を示す。なお、第一容器としてのスラリー槽38内にはスラリー21が攪拌により分散された状態で存在している。また、
図1中の実線矢印はポンプの回転方向を表す。
【0015】
インライン方式の粒子測定装置100は、主に、本体部1、演算部5、移送部7等で構成される。
図1の例では、本体部1は粉体製造装置と同じ部屋に設置され、演算部5はミスト、粉塵等の影響がない事務所等の別室6に設置されている。移送部7はスラリー槽38のすぐ近くに設置されている。
【0016】
測定対象の試料粒子は、例えば、比較的比重の大きい金属系粒子である。粒径は概ね0.1μm〜数百μmである。測定対象の試料粒子は、セラミック系素材を含む無機粉体であってもよい。以下では、金属系粒子を例に説明する。スラリー21は、分散質としてのこの金属系粒子に所定量の分散媒等を混合して得られる。試料粒子の測定項目については、特に制限はない。試料粒子の粒度分布、試料粒子の表面状態、試料粒子の構成元素(例えば、構成元素の比)等の試料粒子に関する物理量を測定できる。例えば、粒度分布であれば、レーザー散乱・回折測定器を使用した測定、CCDカメラ等で撮影した画像の解析による測定等が行われる。特に画像解析では、粒度分布ばかりでなく、粒子の外径、面積、輪郭上の突起の角度、重心、周長等を撮影した画像から測定することができる。そこで、以下では、画像解析を用いた粒度分布の測定を例に挙げて説明する。
【0017】
粒子測定装置100は、スラリー21から採取した試料粒子の粒度分布を自動的に測定する。
【0018】
本体部1は、主に、希釈部2、測定部3、排出部4等から構成される。希釈部2は、1又は複数の希釈用液ポンプ2aと1又は複数の希釈槽2bとを含み、スラリー21を約1/100〜1/40000に希釈して希釈液23を生成する。
【0019】
希釈用液ポンプ2aは、希釈用液槽39の希釈用液22を汲み出し、第二容器としての希釈槽2bと第三容器としての希釈用液槽39とを繋ぐ希釈管C1を通じて希釈用液22を希釈槽2bに移送する。
【0020】
希釈用液22は、スラリー21の分散媒と同じ液体を使用する。希釈用液22は純水等であってもよい。以下では、希釈用液22として純水を使用した例について説明する。
【0021】
測定部3は、希釈液中の粒子に関するデータを取得するデータ取得部であり、例えば、希釈液23中の試料粒子の粒度分布を測定するために必要なデータを取得する。
図1では、測定に要する時間が比較的短く、且つ、画像データから粒子形状等の解析が可能な画像解析方式を例に説明する。
【0022】
測定部3は、循環ポンプ3a、カメラ35、フローセル36、照明装置37から構成される。
【0023】
循環ポンプ3aは、希釈槽2bの希釈液23を汲み出し、希釈槽2bからフローセル36を経由して希釈槽2bに戻る循環管路C2で希釈液23を循環させる。
【0024】
カメラ35はフローセル36内を流れる流体に含まれる試料粒子を撮影した画像を出力する撮影装置であり、CCD、CMOS等の撮影素子で構成される。
図1の例では、カメラ35は、フローセル36に関して照明装置37の反対側に照明装置37に対向するように配置されている。また、カメラ35はレンズ35aを有する。レンズ35aは、例えば、テレセントリックレンズである。テレセントリックレンズは、カメラ35の光軸の方向における撮影対象の試料粒子とレンズ35aとの距離が変化しても撮影画像中の試料粒子の画像の大きさが変化しないという効果をもたらす。
【0025】
フローセル36は、試料粒子を含む流体が流れる光学セルである。
図1の例では、カメラ35に対向する面及び照明装置37に対向する面が光学的に透明となるように構成されている。
【0026】
照明装置37は、フローセル36を照射する装置である。
図1の例では、照明装置37は、フローセル36に関してカメラ35の反対側にカメラ35に対向するように配置されている。照明装置37としては、例えば、面発光タイプの発光ダイオードが採用される。
【0027】
また、照明装置37は、例えば、演算部5により発光タイミングが制御されてもよく、或いは、定常的に発光してもよい。
図1の例では、演算部5は、カメラ35の撮影タイミングに同期させて照明装置37をストロボ発光させる。カメラ35は、フローセル36を透過した光を受光することでフローセル36内の希釈液23中にある試料粒子の粒子画像を撮影できる。
【0028】
排出部4は、希釈槽2bから希釈液23を排出する排出ポンプ4aで構成される。排出ポンプ4aは、希釈槽2bの希釈液23を汲み出し、希釈槽2bから外部に延びる排出管C3を通じて希釈液23を外部に排出する。
【0029】
演算部5は、各種演算を実行する機能要素である。
図1の例では、演算部5は、CPU、揮発性記憶装置、不揮発性記憶装置、入出力インタフェース等を備えたコンピュータであり、本体部1、演算部5、移送部7等から隔離された別室6に設置されている。
【0030】
演算部5は、例えば、カメラ35が撮影した画像を処理して試料粒子の粒度分布の測定に必要なデータを算出して保存し、それらデータに基づいて試料粒子の粒度分布を算出して保存する。また、演算部5は、スピーカ、ディスプレイ等の出力装置を用い、算出した粒度分布等を出力する。
【0031】
移送部7は、各種流体を移送する機能要素である。
図1の例では、移送部7は、スラリーポンプ10、供給ポンプ11、希釈用液ポンプ12等を含む。供給ポンプ11及び希釈用液ポンプ12は、サンプリング用ポンプ部を構成する。
【0032】
スラリーポンプ10は、スラリー槽38内のスラリー21を汲み出し、スラリー槽38から外部に出た後にスラリー槽38に戻る循環管路C10でスラリー21を循環させる。
【0033】
図1の例では、スラリーポンプ10は、粒子測定装置100の稼働中に常時回転し、スラリー槽38内のスラリー21を循環管路C10内で循環させる。スラリー21に含まれる測定対象の試料粒子は比較的比重の大きい金属系粒子であり、ある程度の流速で循環させなければ簡単に沈殿してしまう。また、測定対象の試料粒子は、乾燥により部分的に固化してしまう場合がある。スラリーポンプ10は、このような測定対象の試料粒子の沈殿、固化等を防止するために継続的に回転する。
【0034】
供給ポンプ11は、スラリー槽38のスラリー21を汲み出し、スラリー槽38と希釈槽2bとを繋ぐ第一管としての管C11を通じてスラリー21を希釈槽2bに移送する。
図1の例では、管C11は、循環管路C10におけるスラリーポンプ10の下流側で循環管路C10に接続されている。そのため、供給ポンプ11は、粒度分布測定のためのサンプリング動作時に、循環管路C10内を循環しているスラリー21を管C11内に引き込み、引き込んだスラリー21を希釈槽2bに移送できる。
【0035】
循環管路C10と管C11は管接続部材31を用いて接続される。管接続部材31は、例えば、三方チーズであり、管C11が循環管路C10に接続される接続点を構成する。
【0036】
希釈用液ポンプ12は、希釈用液槽39の希釈用液22を汲み出し、希釈用液槽39と管C11とを繋ぐ第二管としての管C12を通じて希釈用液22を管C11内に移送する。
【0037】
管C11と管C12は管接続部材32を用いて接続される。管接続部材32は、例えば、三方チーズであり、管C12が管C11に接続される接続点を構成する。
【0038】
粒子測定装置100で使用されるポンプは全てチューブポンプであり、一定の回転速度で一定の吐出流量をもたらす。また、各ポンプの停止時には、各ポンプに装着された管(チューブ)をチューブポンプ内で完全に閉塞し、チューブ内の流体の流れを停止させる。
【0039】
次に、
図2〜
図5を参照し、粒子測定装置100の動作について説明する。
図2〜
図5は、
図1のスラリーポンプ10の周辺の拡大図である。
図2は希釈用液22で管C11の一部を洗浄するときの状態を示し、
図3は希釈用液22で管C11の残りの部分を洗浄するときの状態を示す。また、
図4はスラリー21をサンプリングするときの状態を示し、
図5は希釈用液22で管C11内のスラリー21を押して希釈槽2bに移送するときの状態を示す。なお、
図2〜
図5において、スラリー21はドットハッチングで表され、希釈用液22は斜線ハッチングで表される。また、スラリーポンプ10の中に描画された矢印はスラリーポンプ10の回転方向を表し、管及び管接続部材の中に描画された矢印は流体の流れ方向を表す。
[洗浄工程]
【0040】
粒子測定装置100は、スラリー21をサンプリングする前に管C11を洗浄する。洗浄の際は、供給ポンプ11を停止した状態で希釈用液ポンプ12を動作させる。希釈用液ポンプ12は、
図2に示すように、管C12を通じ、希釈用液槽39から管接続部材32に向けて希釈用液22を移送する。
【0041】
希釈用液22は、管接続部材32に達すると、管C11における管接続部材32と管接続部材31との間の管部分C11aを通り、更に、スラリーポンプ10の吐出側にある循環管路C10の管部分C10bを通ってスラリー槽38に至る。希釈用液22は、管C11の管部分C11bに流入することはない。供給ポンプ11が停止しているためである。
【0042】
この動作により、管部分C11aに残っているスラリー21は、希釈用液22により押し出されて管部分C10bに流入してスラリー槽38に戻る。管部分C11aに残っているスラリー21は、例えば、前回のサンプリング動作のときに管部分C11aに流入したものである。
【0043】
管C11の一端と管接続部材32との間の管部分C11aの長さ、すなわち管接続部材31と管接続部材32との間の距離D1はできるだけ短いほうがよい。管C11の洗浄に必要な希釈用液22の量、及び、サンプリング動作で消費されるスラリー21の量を少なくできるためである。距離D1は、例えば、0.05メートル以下であることが望ましい。なお、管部分C11aの長さが0.05メートルの場合、管部分C11a内のスラリー21の量は、例えば、0.63ミリリットルである。
【0044】
その後、所定時間(例えば0.5〜2秒)が経過した時点で、粒子測定装置100は、供給ポンプ11の吐出流量と希釈用液ポンプ12の吐出流量とが同じになるよう、供給ポンプ11及び希釈用液ポンプ12を同時に動作させる。例えば、供給ポンプ11の1回転当たりの吐出流量と希釈用液ポンプ12の1回転当たりの吐出流量とが同じであれば、供給ポンプ11と希釈用液ポンプ12を同じ回転数で動作させる。その結果、管C12内の希釈用液22は、
図3に示すように、管接続部材32のところで管部分C11bに流入して希釈槽2bに向かう。
【0045】
この間、スラリーポンプ10は動作しているが、希釈用液ポンプ12と供給ポンプ11とが同じ吐出流量で動作している場合、循環管路C10内を循環しているスラリー21は管C11内にはほとんど引き込まれない。供給ポンプ11によってもたらされる管C11内の希釈用液22の流量と、希釈用液ポンプ12によってもたらされる管C12内の希釈用液22の流量とがほぼ等しいためである。
【0046】
この動作は、例えば、管接続部材32のところで管C11内に流入した希釈用液22が希釈槽2bまで至るのに十分な量の希釈用液22が移送されるまで継続される。その結果、管C11内にスラリー21が残っていた場合であっても、そのスラリー21を確実に希釈槽2bに押し出すことができる。
【0047】
また、粒子測定装置100は、希釈用液ポンプ2aを動作させて希釈用液槽39から汲み出した希釈用液22を希釈槽2bに移送して希釈槽2bを洗浄してもよい。希釈用液ポンプ2aは、例えば、供給ポンプ11及び希釈用液ポンプ12の吐出流量の4倍の吐出流量で希釈用液22を希釈槽2bに移送する。
【0048】
管C11及び希釈槽2bの洗浄に用いられた希釈槽2b内の希釈用液22は、排出部4により粒子測定装置100の外部に排出される。この洗浄動作を複数回実施し、前回サンプリングしたスラリー21を本体部1の外部へ排出する。
【0049】
このように、粒子測定装置100は、希釈用液22が流れる経路を切り換えるためのバルブを設けることなく、複数のポンプの動作を制御することで、希釈用液22が流れる経路を切り替えることができる。
[サンプリング工程]
【0050】
次に、粒子測定装置100は、希釈用液ポンプ12を停止した状態で供給ポンプ11を動作させる。その結果、
図4に示すように、管C12内の希釈用液22の流れが停止し、循環管路C10内のスラリー21が管接続部材31のところで管C11内に引き込まれる。管C11内の希釈用液22の希釈槽2bへの移送が継続されるためである。そして、粒子測定装置100は、この動作状態を所定時間(例えば1〜6秒ほど)にわたって継続する。スラリー21が管接続部材32を越えて管部分C11b内に引き込まれるようにするためである。
【0051】
次に、粒子測定装置100は、希釈用液ポンプ12を動作させる。その結果、
図5に示すように、希釈用液ポンプ12によって管C12内を移送された希釈用液22は、管接続部材32のところで管部分C11b内に流入し、管部分C11b内に引き込まれたスラリー21を押しながら管部分C11b内を希釈槽2bに向かって流れる。管部分C11b内に引き込まれたスラリー21は、スラリーサンプルとして希釈用液22で希釈されながら希釈槽2bへ移送される。
【0052】
供給ポンプ11と希釈用液ポンプ12とがほぼ同じ吐出流量で動作している場合、循環管路C10内で循環しているスラリー21は、管C11内(特に管部分C11b内)にはほとんど引き込まれない。
【0053】
このように、粒子測定装置100は、供給ポンプ11を動作させながら希釈用液ポンプ12を停止した際に管部分C11b内に引き込まれたスラリー21のみをスラリーサンプルとして希釈用液22で押しながら希釈槽2bへ移送する。
【0054】
粒子測定装置100は、スラリーサンプルが希釈槽2bに入る直前まで排出ポンプ4aを動作させ、希釈槽2b内の希釈用液22の外部への排出を継続してもよい。管部分C11b内に引き込まれたスラリー21が希釈槽2bへ移送される際にそのスラリー21に先行する形で管部分C11b内に存在していた希釈用液22を外部に排出するためである。
【0055】
その後、粒子測定装置100は、スラリーサンプルが希釈槽2bに入る直前で排出ポンプ4aを停止し、スラリーサンプルを含む希釈液23が所望の量となるまで希釈液23を希釈槽2bに溜める。希釈用液ポンプ2aを用いて希釈用液22を希釈槽2bに移送してもよい。
【0056】
スラリーサンプルを含む希釈液23の量が所望の量に達した時点で、粒子測定装置100は、供給ポンプ11及び希釈用液ポンプ12を同時に停止し、希釈用液槽39から希釈槽2bへの希釈用液22の移送を停止する。希釈用液ポンプ2aを動作させている場合には希釈用液ポンプ2aも停止させる。
【0057】
スラリーサンプルの移送のための供給ポンプ11及び希釈用液ポンプ12の動作時間は、管C11の内径、長さ等から算出される。スラリーサンプルを含む希釈液23は、粒度分布測定に適したスラリー濃度となるまで希釈槽2bで希釈用液22によって希釈される。
[撮影・粒度分布測定工程]
【0058】
その後、粒子測定装置100は、循環ポンプ3aを動作させ、希釈槽2bで希釈されたスラリーサンプルを含む希釈液23を循環管路C2で循環させる。そして、フローセル36内を通過する希釈液23をカメラ35で撮影させる。カメラ35は、所定時間(例えば6分間)にわたって所定間隔(例えば1秒間当たり数回)で撮影を繰り返し、撮影した画像を演算部5へ送る。
【0059】
演算部5は、画像処理によって、撮影画像における各粒子の外径、面積、輪郭上の突起の角度、重心、周長等の粒子測定情報を取得して記録する。確度の高い粒度分布を得るため、望ましくは概ね4000個以上の粒子測定情報が取得される。この間、希釈液23は循環管路C2内を循環する。
[排出工程]
【0060】
撮影後、粒子測定装置100は、排出ポンプ4aを動作させ、希釈槽2bの希釈液23を外部に排出する。
[粒度分布結果の閲覧]
【0061】
上述の洗浄工程、サンプリング工程、撮影・粒度分布測定工程、及び排出工程は、順番に且つ繰り返し実行され、粒度分布測定結果は演算部5で保存される。
【0062】
パソコン等のユーザ端末は、LAN等のコンピュータネットワーク経由で演算部5と通信し、粒度分布測定結果を利用してグラフを描画したり、平均粒径等の集計値を算出したりすることができる。演算部5はウェブサーバ機能を有していてもよい。この場合、ユーザ端末は、ウェブブラウザで粒度分布測定結果を確認できる。また、演算部5は、所定時間(例えば数時間)にわたる平均粒径の推移等を自動的に更新して提示できるように構成されてもよい。
[複数の粉体製造装置からのサンプリング]
【0063】
次に、
図6を参照し、2つの粉体製造装置のそれぞれのスラリー槽38、38Sから順にスラリー21、21Sをサンプリングして試料粒子の粒度分布測定を行う粒子測定装置100Sについて説明する。
図6は、粒子測定装置100Sの構成例を示す概略図である。
【0064】
粒子測定装置100Sは、主に、移送部7Sを有する点で
図1の粒子測定装置100と相違するが、その他の点で共通する。そのため、以下では、共通部分の説明を省略し、相違部分を詳細に説明する。
【0065】
移送部7は、
図1の粒子測定装置100における移送部7と同様、スラリーポンプ10、供給ポンプ11、希釈用液ポンプ12等を含む。
【0066】
移送部7Sは、移送部7と同様、スラリーポンプ10S、供給ポンプ11S、希釈用液ポンプ12S等を含む。スラリーポンプ10S、供給ポンプ11S、及び希釈用液ポンプ12Sの構成は、移送部7及び
図1の移送部7の構成と同様である。
【0067】
粒子測定装置100Sは、スラリー槽38のスラリー21とスラリー槽38Sのスラリー21Sを順に希釈槽2bに移送して試料粒子の粒度分布を測定する。
図6の例では、粒子測定装置100Sの稼働中、スラリーポンプ10は継続的に動作する。循環管路C10内でのスラリー21の循環を維持するためである。同様に、スラリーポンプ10Sは継続的に動作する。循環管路C10S内でのスラリー21Sの循環を維持するためである。
【0068】
図1の粒子測定装置100の場合と同様、粒子測定装置100Sは、洗浄工程、サンプリング工程、撮影・粒度分布測定工程、及び排出工程を順番に且つ繰り返し実行する。例えば、粒子測定装置100Sは、サンプリング工程でスラリー槽38からスラリー21をサンプリングし、撮影・粒度分布測定工程、排出工程、及び洗浄工程を実行した後、次のサンプリング工程でスラリー槽38Sからスラリー21Sをサンプリングする。
【0069】
また、粒子測定装置100Sは、管C11と管C11Sの洗浄を同時に実行してもよい。この場合、粒子測定装置100Sは、洗浄工程に要する時間を全体として短縮できる。
【0070】
また、粒子測定装置100Sは、移送部7と移送部7Sとを切り替えて動作させることで、測定部3、排出部4、及び演算部5の一組を用いて2つのスラリー槽38、38Sのそれぞれのスラリー21、21Sより採取した試料粒子の粒度分布を測定できる。
【0071】
この構成により、粒子測定装置100Sは、流体が流れる経路を切り換えるためのバルブを設けることなく、スラリー槽38、38Sのそれぞれに対応する供給ポンプ11、11Sで管C11、C11S内にスラリーサンプルを引き込むことができる。また、希釈用液ポンプ12、12Sで汲み出した希釈用液22、22Sで管C11、C11S内のスラリーサンプルを希釈槽2bに向けて押し込むことができる。そのため、管C11、C11S内を洗浄しながらスラリーサンプルを希釈槽2bに移送できる。この機能は、スラリー21、21S内の重い粒子が管C11、C11S内に残留しにくくなるという効果、及び、管C11、C11Sの洗浄時間を短縮できるという効果を実現する。また、管C11、C11Sが長くてもサンプリング動作の際のスラリー21、21Sの消費量が増大することはない。スラリー21、21Sで管C11、C11S内のスラリーサンプルを希釈槽2bに向けて押し込む必要がないためである。さらに、粒子測定装置100Sは、希釈用液ポンプ2aで汲み出した希釈用液22を直接的に希釈槽2bに移送することでスラリーサンプルを含む希釈液23を効率的に希釈できる。
【0072】
その後、粒子測定装置100Sは、
図1の粒子測定装置100と同様、循環ポンプ3aを動作させ、希釈槽2bで希釈されたスラリーサンプルを含む希釈液23を循環管路C2で循環させる。カメラ35は、フローセル36内を通過する希釈液23を撮影した画像を演算部5へ送る。演算部5は、受信した画像を記録、解析し、試料粒子の粒度分布を測定する。
【0073】
このようにして、粒子測定装置100Sは、2つの粉体製造装置のスラリー槽38、38Sのそれぞれから少量のスラリーサンプルを取得して試料粒子の粒度分布を測定できる。なお、本発明の実施形態に係る別の粒子測定装置は、3つ以上のスラリー槽のそれぞれから少量のスラリーサンプルを取得して試料粒子の粒度分布を測定する構成であってもよい。この場合、その粒子測定装置は、スラリー槽の数と同じ数の移送部を備えていてもよい。この構成により、粒子測定装置100Sは、粉体製造装置一台当たりの粒度分布測定に関するコスト負担を小さくできる。
【0074】
また、粒子測定装置100Sは、本体部1を2つのスラリー槽38、38Sのほぼ中間に設置することで管C11及び管C11Sの合計長さを低減させることができる。スラリー槽が3つ以上の場合も同様である。
【0075】
以上、本発明を実施するための形態について詳述したが、本発明は上述のような特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0076】
例えば、上述の実施形態では、供給ポンプ11及び希釈用液ポンプ12は本体部1に設置されているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、供給ポンプ11及び希釈用液ポンプ12は、本体部1の外部に設置されてもよい。
【実施例1】
【0077】
次に
図1及び
図2を参照しながら実施例1について説明する。実施例1では、Ni粉体の製造工程の一工程に関するスラリー槽38よりスラリー21をサンプリングし、定期的に試料粒子の粒度分布を測定するインライン方式の粒子測定装置100について説明する。
【0078】
スラリー21はNi粒子を含むものとし、希釈用液22は純水とした。まず、スラリー槽38の近くにスラリーポンプ10を設置した。また、スラリー槽38から少し離れた位置に本体部1を設置した。本体部1には、希釈部2、測定部3、排出部4、供給ポンプ11、及び希釈用液ポンプ12を設けた。本体部1から10メートル以上離れた別室6である事務所内に演算部5を設置した。
【0079】
希釈用液ポンプ12の吸入側には希釈用液槽(純水槽)39を設置した。管C11の管部分C11aの長さD1は0.05メートルとした。なお、スラリーポンプ10、供給ポンプ11、及び希釈用液ポンプ12としてチューブポンプを使用した。
【0080】
次に、粒度分布測定に先立って洗浄工程を行った。最初にスラリーポンプ10を稼働させ、次に供給ポンプ11を停止した状態で希釈用液ポンプ12を2秒間動作させ、管部分C11aを洗浄した。その後、供給ポンプ11と希釈用液ポンプ12を同時に稼働させた。供給ポンプ11と希釈用液ポンプ12の吐出流量を同じとし、希釈用液22である純水を管C12、管C11を通じて希釈槽2bに移送しながら管C11を洗浄した。希釈槽2bに溜まった純水は、循環管路C2内を循環させた後、排出部4によって排出した。この洗浄動作を3回実施した。
【0081】
次に、希釈用液ポンプ12を停止させた状態で供給ポンプ11を稼働させた。これにより、スラリー槽38からのスラリー21がスラリーサンプルとして管C11内に引き込まれた。約5ミリリットルのスラリーサンプルが管部分C11b内に引き込まれるよう、この動作を約3秒間実施した。次に、希釈用液ポンプ12を稼働させ、純水が管部分C11b内のスラリーサンプルを押してそのスラリーサンプルを希釈槽2bに移送するようにした。そして、希釈槽2bのスラリーサンプルを約10000倍で希釈した。その後、この希釈されたスラリーサンプルである希釈液23を測定部3に移送して試料粒子の粒度分布を測定した。試料粒子の粒度分布の測定は画像解析方式で行われた。具体的には、希釈液23をフローセル36に移送し、フローセル36を通過させながらカメラ35で希釈液23内の粒子を撮影した。撮影した画像データは演算部5に向けて送信された。演算部5は、受信した画像データに基づいて試料粒子の粒度分布等を算出した。撮影済みの希釈液23は、排出部4を用いて外部に排出された。その後、次のスラリーサンプルの試料粒子の粒度分布を測定すべく、洗浄工程で始まる一連の工程を再開させた。
【実施例2】
【0082】
実施例2では、スラリー槽38を6つとし、移送部7を6つ用意して配置した。すなわち、スラリーポンプ10、供給ポンプ11、及び希釈用液ポンプ12をそれぞれ6つずつ用意して配置した。希釈部2、測定部3、排出部4、演算部5はそれぞれ1つの構成とした。そして、6つのスラリー槽38から約10分間隔で順番にスラリーサンプルを採取し、スラリーサンプルの試料粒子の粒度分布を自動的に測定した。すなわち、同じスラリー槽から約1時間毎にスラリーサンプルを採取し、スラリーサンプルの試料粒子の粒度分布を自動的に測定した。粒度分布測定は、実施例1と同じ手順で行った。
【0083】
実施例1及び実施例2では連続的に試料粒子の粒度分布を測定することができた。その間、管C11内でのスラリーの著しい堆積、閉塞等の問題は発生しなかった。また、以前に測定したスラリーサンプルが混入することもなく、粒子が管(チューブ)、管接続部材31、32等に残ることもなかった。その結果、1又は複数のスラリー槽のそれぞれから採取したスラリーサンプルの試料粒子の粒度分布を正確に且つ効率的に測定することができた。
【0084】
また、サンプリング工程では、スラリー21ではなく希釈用液22で管部分C11b内のスラリーサンプルを希釈槽2bに向けて押し込むため、管部分C11bが長くてもスラリー21の消費量が増大することはない。そのため、試料粒子の粒度分布の測定に必要なスラリーサンプルの量は、スラリー21で管部分C11b内のスラリーサンプルを希釈槽2bに向けて押し込む場合に比べ、概ね1/100以下(例えば管部分C11bの長さが5mの場合)に減少した。
【0085】
また、1又は複数のスラリー槽のそれぞれから採取したスラリーサンプルの試料粒子の粒度分布を短時間で把握することにより、スラリーの品質を頻繁に確認することができた。そのため、Ni粉体の品質向上に寄与することができた。また、試料粒子の粒度分布の測定に必要なスラリーの消費量が少ないためコストダウン効果も得られた。
【0086】
また、演算部5を粉体製造装置から離れた別室6内に設置することで特別な粉塵等の対策が省略可能となった。また、本体部1から演算部5を分離することで本体部1の小型化を実現できた。