特許第6717300号(P6717300)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6717300撥水撥油剤組成物、その製造方法および物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6717300
(24)【登録日】2020年6月15日
(45)【発行日】2020年7月1日
(54)【発明の名称】撥水撥油剤組成物、その製造方法および物品
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/18 20060101AFI20200622BHJP
   C08F 220/20 20060101ALI20200622BHJP
   C08F 220/18 20060101ALI20200622BHJP
   C08F 220/28 20060101ALI20200622BHJP
   C08F 214/00 20060101ALI20200622BHJP
   D06M 15/277 20060101ALI20200622BHJP
【FI】
   C09K3/18 102
   C08F220/20
   C08F220/18
   C08F220/28
   C08F214/00
   D06M15/277
【請求項の数】14
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-520788(P2017-520788)
(86)(22)【出願日】2016年5月25日
(86)【国際出願番号】JP2016065501
(87)【国際公開番号】WO2016190366
(87)【国際公開日】20161201
【審査請求日】2019年2月4日
(31)【優先権主張番号】特願2015-106994(P2015-106994)
(32)【優先日】2015年5月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100106057
【弁理士】
【氏名又は名称】柳井 則子
(72)【発明者】
【氏名】善本 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】原 弘之
(72)【発明者】
【氏名】大森 勇一
(72)【発明者】
【氏名】増田 祥
【審査官】 井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−007044(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/030648(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/143299(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/145234(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/18
C08F220/22
D06M 15/27
D06M 15/295
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記単量体(a)に基づく単位と下記単量体(b)に基づく単位と下記単量体(c)に基づく単位とを有する共重合体および液状媒体を含み、
前記共重合体を構成する全ての単量体に基づく単位に対して、前記単量体(a)に基づく単位の含有割合が5〜40質量%であり、前記単量体(b)に基づく単位の含有割合が40〜94.9質量%であり、前記単量体(c)に基づく単位の含有割合が0.1〜20質量%である、撥水撥油剤組成物。
単量体(a):下式(1)で表される化合物。
(Z−Y)X ・・・(1)。
ただし、Zは、炭素数が1〜6のペルフルオロアルキル基、または下式(2−1)で表される基、または下式(2−2)で表される基であり、Yは、フッ素原子を有しない2価有機基または単結合であり、nは、1または2であり、Xは、nが1の場合は、下式(3−1)〜(3−5)で表される基のいずれかであり、nが2の場合は、下式(4−1)〜(4−4)で表される基のいずれかである。
2i+1O(CFXCFO)CFX− ・・・(2−1)、
2s+1(CHCF(CFCF−・・・(2−2)。
ただし、iは、1〜6の整数であり、jは、0〜10の整数であり、XおよびXは、それぞれフッ素原子またはトリフルオロメチル基であり、sは、1〜6の整数であり、tは1〜4の整数であり、uは1〜3の整数である。
−CR=CH ・・・(3−1)、
−C(O)OCR=CH ・・・(3−2)、
−OC(O)CR=CH ・・・(3−3)、
−OCH−φ−CR=CH ・・・(3−4)、
−OCH=CH ・・・(3−5)。
ただし、Rは、水素原子、メチル基またはハロゲン原子であり、φは、フェニレン基である。
−CH[−(CHCR=CH]− ・・・(4−1)、
−CH[−(CHC(O)OCR=CH]− ・・・(4−2)、
−CH[−(CHOC(O)CR=CH]− ・・・(4−3)、
−OC(O)CH=CHC(O)O− ・・・(4−4)。
ただし、Rは、水素原子、メチル基またはハロゲン原子であり、mは0〜4の整数である。
単量体(b):ポリフルオロアルキル基を有さず、炭素数が20以上のアルキル基を有する(メタ)アクリレート。
単量体(c):下式(5)で表される化合物。
CH=CRC(O)O−[(CO)(CO)]−H ・・・(5)。
ただし、Rは、水素原子またはメチル基であり、aは、3〜50であり、bは、1〜50であり、aとbとの比(a/b)は、1〜3である。また、(CO)単位と(CO)単位との結合順序は限定されない。
【請求項2】
前記共重合体は、ポリ(オキシアルキレン)鎖を構成する単位として(CO)単位のみを有する単量体、(CO)単位のみを有する単量体、ならびに(CO)単位および(CO)単位のみを有する単量体に基づく単位を有しない、請求項1に記載の撥水撥油剤組成物。
【請求項3】
前記共重合体が、下記単量体(d)に基づく単位をさらに有する、請求項1または2に記載の撥水撥油剤組成物。
単量体(d):ハロゲン化オレフィン。
【請求項4】
前記単量体(d)が塩化ビニルである、請求項3に記載の撥水撥油剤組成物。
【請求項5】
前記共重合体を構成する全ての単量体に基づく単位に対して、前記単量体(d)に基づく単位の割合が30質量%以下である、請求項3または4に記載の撥水撥油剤組成物。
【請求項6】
前記共重合体が、下記単量体(e)に基づく単位をさらに有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の撥水撥油剤組成物。
単量体(e):架橋しうる官能基を有する単量体。
【請求項7】
前記液状媒体が水性媒体である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の撥水撥油剤組成物。
【請求項8】
界面活性剤および重合開始剤の存在下、液状媒体中にて下記単量体(a)と下記単量体(b)と下記単量体(c)とを含む単量体成分を重合し、共重合体とする、撥水撥油剤組成物の製造方法であって、
前記単量体成分の全量に対して、前記単量体(a)の割合が5〜40質量%であり、前記単量体(b)の割合が40〜94.9質量%であり、前記単量体(c)の割合が0.1〜20質量%である、撥水撥油剤組成物の製造方法
単量体(a):下式(1)で表される化合物。
(Z−Y)X ・・・(1)。
ただし、Zは、炭素数が1〜6のペルフルオロアルキル基、または下式(2−1)で表される基、または下式(2−2)で表される基であり、Yは、フッ素原子を有しない2価有機基または単結合であり、nは、1または2であり、Xは、nが1の場合は、下式(3−1)〜(3−5)で表される基のいずれかであり、nが2の場合は、下式(4−1)〜(4−4)で表される基のいずれかである。
2i+1O(CFXCFO)CFX− ・・・(2−1)、
2s+1(CHCF(CFCF−・・・(2−2)。
ただし、iは、1〜6の整数であり、jは、0〜10の整数であり、XおよびXは、それぞれフッ素原子またはトリフルオロメチル基であり、sは、1〜6の整数であり、tは1〜4の整数であり、uは1〜3の整数である。
−CR=CH ・・・(3−1)、
−C(O)OCR=CH ・・・(3−2)、
−OC(O)CR=CH ・・・(3−3)、
−OCH−φ−CR=CH ・・・(3−4)、
−OCH=CH ・・・(3−5)。
ただし、Rは、水素原子、メチル基またはハロゲン原子であり、φは、フェニレン基である。
−CH[−(CHCR=CH]− ・・・(4−1)、
−CH[−(CHC(O)OCR=CH]− ・・・(4−2)、
−CH[−(CHOC(O)CR=CH]− ・・・(4−3)、
−OC(O)CH=CHC(O)O− ・・・(4−4)。
ただし、Rは、水素原子、メチル基またはハロゲン原子であり、mは0〜4の整数である。
単量体(b):ポリフルオロアルキル基を有さず、炭素数が20以上のアルキル基を有する(メタ)アクリレート。
単量体(c):下式(5)で表される化合物。
CH=CRC(O)O−[(CO)(CO)]−H ・・・(5)。
ただし、Rは、水素原子またはメチル基であり、aは、3〜50であり、bは、1〜50であり、aとbとの比(a/b)は、1〜3である。また、(CO)単位と(CO)単位との結合順序は限定されない。
【請求項9】
前記共重合体は、ポリ(オキシアルキレン)鎖を構成する単位として(CO)単位のみを有する単量体、(CO)単位のみを有する単量体、ならびに(CO)単位および(CO)単位のみを有する単量体に基づく単位を有しない、請求項8に記載の撥水撥油剤組成物の製造方法。
【請求項10】
前記単量体成分が下記単量体(d)をさらに含む、請求項8または9に記載の撥水撥油剤組成物の製造方法。
単量体(d):ハロゲン化オレフィン。
【請求項11】
前記単量体成分が下記単量体(e)をさらに含む、請求項8〜10のいずれか一項に記載の撥水撥油剤組成物の製造方法。
単量体(e):架橋しうる官能基を有する単量体。
【請求項12】
前記液状媒体が水性媒体である、請求項8〜11のいずれか一項に記載の撥水撥油剤組成物の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の撥水撥油剤組成物を用いて処理された、物品。
【請求項14】
前記物品が繊維製品である、請求項13に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撥水撥油剤組成物、その製造方法、および該撥水撥油剤組成物を用いて処理された物品に関する。
【背景技術】
【0002】
物品(繊維製品等)の表面に撥水撥油性を付与する方法としては、ポリフルオロアルキル基を有する単量体に基づく単位を有する共重合体を液状媒体に分散させた撥水撥油剤組成物を用いて物品を処理する方法が知られている。該撥水撥油剤組成物を用いて処理された物品には、繰り返し洗濯を行っても撥水性が大きく低下しないこと(洗濯耐久性)、激しい降雨の条件にさらされても撥水性が大きく低下しないこと(豪雨耐久性)が要求される。
【0003】
洗濯耐久性および豪雨耐久性に優れる撥水撥油剤組成物としては、たとえば、下記の撥水撥油剤組成物が提案されている。
(1)下記単量体1に基づく単位および下記単量体2に基づく単位を有する共重合体を含む撥水撥油剤組成物(特許文献1)。
単量体1:炭素数が1〜6のペルフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレート。
単量体2:炭素数が20〜30のアルキル基を有する(メタ)アクリレート。
【0004】
防汚性および洗濯耐久性に優れる撥水撥油剤組成物としては、たとえば、下記の防汚剤組成物が提案されている。
(2)下記単量体3に基づく単位、下記単量体4に基づく単位および下記単量体5に基づく単位を有する共重合体を含む防汚剤組成物(特許文献2)。
単量体3:炭素数が1〜6のペルフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレート。
単量体4:ポリ(オキシエチレン)鎖を有する(メタ)アクリレート。
単量体5:ポリ(オキシエチレン・オキシテトラメチレン)鎖を有する(メタ)アクリレート。
【0005】
(3)下記単量体6に基づく単位、下記単量体7に基づく単位および下記単量体8に基づく単位を有し、フッ素原子の割合が15質量%以上45質量%未満である共重合体と、
下記単量体6に基づく単位、下記単量体7に基づく単位および下記単量体8に基づく単位を有し、フッ素原子の割合が45質量%以上である共重合体と、
下記単量体6に基づく単位、下記単量体9に基づく単位および下記単量体10に基づく単位を有する共重合体とを含む防汚剤組成物(特許文献3)。
単量体6:炭素数が4〜6のポリフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレート。
単量体7:炭素数が12以上のアルキル基を有する(メタ)アクリレート。
単量体8:塩化ビニルまたは塩化ビニリデン。
単量体9:ポリ(オキシエチレン)鎖を有する(メタ)アクリレート。
単量体10:ポリ(オキシエチレン・オキシテトラメチレン)鎖を有する(メタ)アクリレート。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2008/136436号
【特許文献2】国際公開第2008/143299号
【特許文献3】特開2009−215370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、(1)の撥水撥油剤組成物を用いて処理された物品は、撥油性が不充分であった。
(2)の撥水撥油剤組成物を用いて処理された物品は、洗濯耐久性、風合いが不充分である。
(3)の撥水撥油剤組成物を用いて処理された物品は、洗濯耐久性、風合いが不充分である。
【0008】
本発明は、撥水性、撥油性、洗濯耐久性、豪雨耐久性および風合いのいずれもが良好である物品を得ることができる撥水撥油剤組成物、撥水撥油剤組成物の製造方法、および撥水性、撥油性、洗濯耐久性、豪雨耐久性および風合いのいずれもが良好である物品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記の態様を有する。
[1]下記単量体(a)に基づく単位と下記単量体(b)に基づく単位と下記単量体(c)に基づく単位とを有する共重合体および液状媒体を含む、撥水撥油剤組成物。
単量体(a):下式(1)で表される化合物。
(Z−Y)X ・・・(1)。
ただし、Zは、炭素数が1〜6のペルフルオロアルキル基、または下式(2−1)で表される基、または下式(2−2)で表される基であり、Yは、フッ素原子を有しない2価有機基または単結合であり、nは、1または2であり、Xは、nが1の場合は、下式(3−1)〜(3−5)で表される基のいずれかであり、nが2の場合は、下式(4−1)〜(4−4)で表される基のいずれかである。
2i+1O(CFXCFO)CFX− ・・・(2−1)、
2s+1(CHCF(CFCF−・・・(2−2)。
ただし、iは、1〜6の整数であり、jは、0〜10の整数であり、XおよびXは、それぞれフッ素原子またはトリフルオロメチル基であり、sは、1〜6の整数であり、tは1〜4の整数であり、uは1〜3の整数である。
−CR=CH ・・・(3−1)、
−C(O)OCR=CH ・・・(3−2)、
−OC(O)CR=CH ・・・(3−3)、
−OCH−φ−CR=CH ・・・(3−4)、
−OCH=CH ・・・(3−5)。
ただし、Rは、水素原子、メチル基またはハロゲン原子であり、φは、フェニレン基である。
−CH[−(CHCR=CH]− ・・・(4−1)、
−CH[−(CHC(O)OCR=CH]− ・・・(4−2)、
−CH[−(CHOC(O)CR=CH]− ・・・(4−3)、
−OC(O)CH=CHC(O)O− ・・・(4−4)。
ただし、Rは、水素原子、メチル基またはハロゲン原子であり、mは0〜4の整数である。
単量体(b):ポリフルオロアルキル基を有さず、炭素数が20以上のアルキル基を有する(メタ)アクリレート。
単量体(c):下式(5)で表される化合物。
CH=CRC(O)O−[(CO)(CO)]−H ・・・(5)。
ただし、Rは、水素原子またはメチル基であり、aは、3〜50であり、bは、1〜50であり、aとbとの比(a/b)は、1〜3である。また、(CO)単位と(CO)単位との結合順序は限定されない。
【0010】
[2]前記共重合体を構成する全ての単量体に基づく単位に対して、前記単量体(a)に基づく単位の含有割合が5〜40質量%であり、前記単量体(b)に基づく単位の含有割合が40〜94.9質量%であり、前記単量体(c)に基づく単位の含有割合が0.1〜20質量%である、[1]の撥水撥油剤組成物。
[3]前記共重合体が、下記単量体(d)に基づく単位をさらに有する、[1]または[2]の撥水撥油剤組成物。
単量体(d):ハロゲン化オレフィン。
[4]前記単量体(d)が塩化ビニルである、[3]の撥水撥油剤組成物。
[5]前記共重合体を構成する全ての単量体に基づく単位に対して、前記単量体(d)に基づく単位の割合が30質量%以下である、[3]または[4]の撥水撥油剤組成物。
[6]前記共重合体が、下記単量体(e)に基づく単位をさらに有する、[1]〜[5]のいずれかの撥水撥油剤組成物。
単量体(e):架橋しうる官能基を有する単量体。
[7]前記液状媒体が水性媒体である、[1]〜[6]のいずれかの撥水撥油剤組成物。
【0011】
[8]界面活性剤および重合開始剤の存在下、液状媒体中にて下記単量体(a)と下記単量体(b)と下記単量体(c)とを含む単量体成分を重合し、共重合体とする、撥水撥油剤組成物の製造方法。
単量体(a):下式(1)で表される化合物。
(Z−Y)X ・・・(1)。
ただし、Zは、炭素数が1〜6のペルフルオロアルキル基、または下式(2−1)で表される基、または下式(2−2)で表される基であり、Yは、フッ素原子を有しない2価有機基または単結合であり、nは、1または2であり、Xは、nが1の場合は、下式(3−1)〜(3−5)で表される基のいずれかであり、nが2の場合は、下式(4−1)〜(4−4)で表される基のいずれかである。
2i+1O(CFXCFO)CFX− ・・・(2−1)、
2s+1(CHCF(CFCF−・・・(2−2)。
ただし、iは、1〜6の整数であり、jは、0〜10の整数であり、XおよびXは、それぞれフッ素原子またはトリフルオロメチル基であり、sは、1〜6の整数であり、tは1〜4の整数であり、uは1〜3の整数である。
−CR=CH ・・・(3−1)、
−C(O)OCR=CH ・・・(3−2)、
−OC(O)CR=CH ・・・(3−3)、
−OCH−φ−CR=CH ・・・(3−4)、
−OCH=CH ・・・(3−5)。
ただし、Rは、水素原子、メチル基またはハロゲン原子であり、φは、フェニレン基である。
−CH[−(CHCR=CH]− ・・・(4−1)、
−CH[−(CHC(O)OCR=CH]− ・・・(4−2)、
−CH[−(CHOC(O)CR=CH]− ・・・(4−3)、
−OC(O)CH=CHC(O)O− ・・・(4−4)。
ただし、Rは、水素原子、メチル基またはハロゲン原子であり、mは0〜4の整数である。
単量体(b):ポリフルオロアルキル基を有さず、炭素数が20以上のアルキル基を有する(メタ)アクリレート。
単量体(c):下式(5)で表される化合物。
CH=CRC(O)O−[(CO)(CO)]−H ・・・(5)。
ただし、Rは、水素原子またはメチル基であり、aは、3〜50であり、bは、1〜50であり、aとbとの比(a/b)は、1〜3である。また、(CO)単位と(CO)単位との結合順序は限定されない。
【0012】
[9]前記単量体成分の全量に対して、前記単量体(a)の割合が5〜40質量%であり、前記単量体(b)の割合が40〜94.9質量%であり、前記単量体(c)の割合が0.1〜20質量%である、[8]の撥水撥油剤組成物の製造方法。
[10]前記単量体成分が下記単量体(d)をさらに含む、[8]または[9]の撥水撥油剤組成物の製造方法。
単量体(d):ハロゲン化オレフィン。
[11]前記単量体成分が下記単量体(e)をさらに含む、[8]〜[10]のいずれかの撥水撥油剤組成物の製造方法。
単量体(e):架橋しうる官能基を有する単量体。
[12]前記液状媒体が水性媒体である、[8]〜[11]のいずれかの撥水撥油剤組成物の製造方法。
【0013】
[13]前記[1]〜[7]のいずれかの撥水撥油剤組成物を用いて処理された、物品。
[14]前記物品が繊維製品である、[13]の物品。
【発明の効果】
【0014】
本発明の撥水撥油剤組成物によれば、撥水性、撥油性、洗濯耐久性、豪雨耐久性および風合いのいずれもが良好である物品を得ることができる。
本発明の撥水撥油剤組成物の製造方法によれば、撥水性、撥油性、洗濯耐久性、豪雨耐久性および風合いのいずれもが良好である物品を得ることができる撥水撥油剤組成物を製造できる。
本発明の物品は、撥水性、撥油性、洗濯耐久性、豪雨耐久性および風合いのいずれもが良好である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書においては、式(1)で表される化合物を化合物(1)と記す。他の式で表される化合物も同様に記す。
本明細書においては、式(2)で表される基を基(2)と記す。他の式で表される基も同様に記す。
本明細書における以下の用語の意味は、以下の通りである。
「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートの総称である。
「単量体」は、重合性不飽和基を有する化合物を意味する。
「ポリフルオロアルキル基」は、アルキル基の水素原子の一部またはすべてがフッ素原子に置換された基を意味する。以下、「ポリフルオロアルキル基」を「R基」とも記す。
「ペルフルオロアルキル基」は、アルキル基の水素原子のすべてがフッ素原子に置換された基を意味する。以下、「ペルフルオロアルキル基」を「R基」とも記す。
共重合体の「数平均分子量」および「質量平均分子量」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法によってポリスチレン換算で求めた値である。
単量体(c)の[(CO)(CO)]鎖の「a」および「b」は、それぞれオキシエチレン単位およびオキシテトラメチレン単位の平均単位数であり、核磁気共鳴分光法(NMR)により算出した値である。
単量体(c)の[(CO)(CO)]鎖の「数平均分子量」は、オキシエチレン単位の分子量に平均単位数を乗じた値と、オキシテトラメチレン単位の分子量に平均単位数を乗じた値とを合算した値である。
【0016】
<撥水撥油剤組成物>
本発明の撥水撥油剤組成物は、特定の共重合体と液状媒体を必須成分として含み、必要に応じて、界面活性剤、添加剤を含む。
【0017】
(共重合体)
共重合体は、単量体(a)に基づく単位と単量体(b)に基づく単位と単量体(c)に基づく単位とを有する。
共重合体は、単量体(d)に基づく単位および/または単量体(e)に基づく単位をさらに有することが好ましい。
共重合体は、必要に応じて、単量体(f)に基づく単位を有していてもよい。
【0018】
単量体(a):
単量体(a)は、化合物(1)である。
(Z−Y)X ・・・(1)。
【0019】
Zは、炭素数が1〜6のR基、下式(2−1)で表される基、または下式(2−2)で表される基である。
2i+1O(CFXCFO)CFX− ・・・(2−1)、
2s+1(CHCF(CFCF−・・・(2−2)。
ただし、iは、1〜6の整数であり、jは、0〜10の整数であり、XおよびXは、それぞれフッ素原子またはトリフルオロメチル基であり、sは、1〜6の整数であり、tは1〜4の整数であり、uは1〜3の整数である。
基の炭素数は、4〜6が好ましい。R基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、直鎖状が好ましい。
Zとしては、F(CF−、F(CF−、F(CF−、(CFCF(CF−等が挙げられる。
【0020】
Yは、フッ素原子を有しない2価有機基または単結合である。
2価有機基としては、アルキレン基が好ましい。アルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。アルキレン基は、−O−、−NH−、−CO−、−SO−、−S−、−CD=CD−(ただし、D、Dは、それぞれ水素原子またはメチル基である。)、−φ−OCO−等を有していてもよい。
Yとしては、−CH−、−CHCH−、−(CH−、−CHCHCH(CH)−、−CH=CH−CH−、−S−CHCH−、−SO−CHCH−、−CHCHCH−S−CHCH−、−CHCHCH−SO−CHCH−、−φ−OCO−CHCH−等が挙げられる。
【0021】
nは、1または2である。
Xは、nが1の場合は、基(3−1)〜基(3−5)のいずれかであり、nが2の場合は、基(4−1)〜基(4−4)のいずれかである。
【0022】
−CR=CH ・・・(3−1)、
−C(O)OCR=CH ・・・(3−2)、
−OC(O)CR=CH ・・・(3−3)、
−OCH−φ−CR=CH ・・・(3−4)、
−OCH=CH ・・・(3−5)。
ただし、Rは、水素原子、メチル基またはハロゲン原子であり、φは、フェニレン基である。Rとしては、水素原子、メチル基または塩素原子が好ましい。
【0023】
−CH[−(CHCR=CH]− ・・・(4−1)、
−CH[−(CHC(O)OCR=CH]− ・・・(4−2)、
−CH[−(CHOC(O)CR=CH]− ・・・(4−3)、
−OC(O)CH=CHC(O)O− ・・・(4−4)。
ただし、Rは、水素原子、メチル基またはハロゲン原子であり、mは0〜4の整数である。Rとしては、水素原子、メチル基または塩素原子が好ましい。
【0024】
化合物(1)としては、他の単量体との重合性、共重合体の皮膜の柔軟性、物品に対する共重合体の接着性、液状媒体に対する分散性または溶解性、乳化重合の容易性等の点から、炭素数が1〜6のR基を有するアクリレート、メタクリレートもしくはα位がハロゲン原子で置換されたアクリレート、または基(2−2)を有するアクリレートもしくはメタクリレートが好ましく、炭素数が4〜6のR基を有するアクリレート、メタクリレートもしくはα位がハロゲン原子で置換されたアクリレートがより好ましい。
化合物(1)としては、Zが炭素数4〜6のR基であり、Yが炭素数1〜4のアルキレン基であり、nが1であり、Xが基(3−3)であり、Rが水素原子、メチル基または塩素原子である化合物が特に好ましい。
化合物(1)の好ましい具体例としては、C13OCOC(CH)=CH、C13OCOCH=CH、C13OCOCCl=CH、COCOC(CH)=CH、COCOCH=CH、COCOCCl=CH、CCHCF4OCOCH=CH、CCHCF4OCOC(CH)=CH、C13OCOφOCOCH=CH、COCOφOCOCH=CHが挙げられる。
【0025】
単量体(b):
単量体(b)は、R基を有さず、炭素数が20以上のアルキル基を有する(メタ)アクリレートである。アルキル基の炭素数は、20〜30が好ましく、20〜24がより好ましい。
アルキル基の炭素数が前記下限値以上であれば、撥水撥油剤組成物を用いて処理された物品の洗濯耐久性および豪雨耐久性が良好となる。アルキル基の炭素数が前記上限値以下であれば、重合操作における取り扱いが容易であり、収率よく共重合体を得ることができる。
単量体(b)としては、ベヘニル(メタ)アクリレート、イコシル(メタ)アクリレートが好ましく、ベヘニルアクリレートが特に好ましい。
【0026】
単量体(c):
単量体(c)は、化合物(5)である。
CH=CRC(O)O−[(CO)(CO)]−H ・・・(5)。
【0027】
は、水素原子またはメチル基であり、撥水撥油剤組成物を用いて処理された物品の撥油性がさらに良好となる点から、メチル基が好ましい。
【0028】
aは、3〜50であり、3〜20がより好ましい。aが前記範囲の下限値以上であれば、撥水撥油剤組成物を用いて処理された物品の撥油性が良好となる。aが前記範囲の上限値以下であれば、撥水撥油剤組成物を用いて処理された物品の撥水性が良好となる。
bは、1〜50であり、2〜20がより好ましい。bが前記範囲の下限値以上であれば、撥水撥油剤組成物を用いて処理された物品の撥水性が良好となる。bが前記範囲の上限値以下であれば、撥水撥油剤組成物を用いて処理された物品の撥油性が良好となる。
aとbとの比(a/b)は、1〜3であり、1.5〜2.5がより好ましい。a/bが前記範囲の下限値以上であれば、撥水撥油剤組成物を用いて処理された物品の撥油性が良好となる。a/bが前記範囲の上限値以下であれば、撥水撥油剤組成物を用いて処理された物品の撥水性が良好となる。
【0029】
[(CO)(CO)]の数平均分子量は、200〜6000が好ましく、300〜2000がより好ましい。[(CO)(CO)]の数平均分子量が前記範囲の下限値以上であれば、撥水撥油剤組成物を用いて処理された物品の撥油性がさらに良好となる。[(CO)(CO)]の数平均分子量が前記範囲の上限値以下であれば、撥水撥油剤組成物を用いて処理された物品の撥水性がさらに良好となる。
【0030】
[(CO)(CO)]において、aモルの(CO)単位とbモルの(CO)単位との結合順序は限定されない。たとえば、(CO)単位と(CO)単位がランダムに配置されてもよく、(CO)単位と(CO)単位が交互に配置されてもよく、複数の(CO)単位からなるブロックと複数の(CO)単位からなるブロックが連結してもよい。撥水撥油剤組成物を用いて処理された物品の撥油性がさらに良好となる点から、(CO)単位と(CO)単位がランダムに配置されていることが好ましい。
(CO)単位および(CO)単位は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。本発明の効果を充分に発揮できる点からは、直鎖状が好ましい。
【0031】
共重合体が単量体(c)に基づく単位を有することにより、撥油性、洗濯耐久性および豪雨耐久性を充分に発揮できる。
これは、(CO)単位と(CO)単位を有する単量体が(CO)単位のみを有する単量体よりも単独重合体のガラス転移温度が低いため、結果的に(CO)単位と(CO)単位を有する単量体に由来する単位を有する共重合体のガラス転移温度が下がり、造膜性が向上し、基材への密着性が向上するためと考えられる。また、(CO)と(CO)を有する単量体は疎水性でありながら疎油性でもあるため、結果的に共重合体の撥水性および撥油性を阻害しないと考えられる。
【0032】
単量体(d):
単量体(d)は、ハロゲン化オレフィンである。
単量体(b)に基づく単位と単量体(d)に基づく単位とを組み合わせることによって、物品との密着性が向上するため、撥水撥油剤組成物を用いて処理された物品の洗濯耐久性および豪雨耐久性がさらに向上する。
【0033】
ハロゲン化オレフィンとしては、下式(6)で表される化合物が挙げられる。
C=CR ・・・(6)
、R、R、Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜3のペルフルオロアルキル基である。ただし、R、R、R、Rのうち少なくとも1つは、ハロゲン原子または炭素数1〜3のペルフルオロアルキル基である。ペルフルオロアルキル基とは、CF−、C−、C−である。
ハロゲン化オレフィンとしては、塩素化オレフィン、フッ素化オレフィンが好ましい。
【0034】
ハロゲン化オレフィンとしては、テトラフルオロエチレン、または下式(7)で表される化合物が好ましい。
HC=CR10 ・・・(7)
、R、R10は、それぞれ独立して、水素原子、塩素原子、フッ素原子、または炭素数1〜3のペルフルオロアルキル基である。ただし、R、R、R10のうち少なくとも1つは、塩素原子、フッ素原子、または炭素数1〜3のペルフルオロアルキル基である。
ハロゲン化オレフィンの具体例としては、塩化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(E体)、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(Z体)、トリフルオロエチレン、1,2−ジフルオロエチレン(E体)、1,2−ジフルオロエチレン(Z体)、1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(E体)、1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(Z体)等が挙げられる。なかでも、塩化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペンが好ましく、物品との密着性の点からは、塩化ビニル、塩化ビニリデン、2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペンがより好ましい。
【0035】
単量体(e):
単量体(e)は、架橋しうる官能基を有する単量体である(ただし、単量体(c)を除く)。
共重合体が単量体(e)に基づく単位を有することにより、撥水撥油剤組成物を用いて処理された物品の耐久性(洗濯耐久性および豪雨耐久性)がさらに向上する。
【0036】
架橋しうる官能基としては、共有結合、イオン結合または水素結合のうち少なくとも1つ以上の結合を有する官能基、または、該結合の相互作用により架橋構造を形成できる官能基が好ましい。
該官能基としては、イソシアネート基、ブロックドイソシアネート基、アルコキシシリル基、アミノ基、アルコキシメチルアミド基、シラノール基、アンモニウム基、アミド基、エポキシ基、水酸基、オキサゾリン基、カルボキシル基、アルケニル基、スルホン酸基等が好ましい。特に、エポキシ基、水酸基、ブロックドイソシアネート基、アルコキシシリル基、アミノ基、またはカルボキシル基が好ましい。
【0037】
単量体(e)としては、(メタ)アクリレート類、アクリルアミド類、ビニルエーテル類、またはビニルエステル類が好ましい。
単量体(e)としては、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートの3,5−ジメチルピラゾール付加体、3−イソシアナトプロピル(メタ)アクリレートの3,5−ジメチルピラゾール付加体、ダイアセトンアクリルアミド、グリシジルメタクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのポリカプロラクトンエステル、フェニルグリシジルエチルアクリレートトリレンジイソシアナート(AT−600、共栄社化学社製)または3−(メチルエチルケトオキシム)イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシル(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)シアナート(テックコートHE−6P、京絹化成社製)がより好ましい。
単量体(e)としては、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートの3,5−ジメチルピラゾール付加体、または3−イソシアナトプロピル(メタ)アクリレートの3,5−ジメチルピラゾール付加体、または3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0038】
単量体(f):
単量体(f)は、単量体(a)、単量体(b)、単量体(c)、単量体(d)および単量体(e)を除く単量体である。
【0039】
単量体(f)としては、下記の化合物が挙げられる。
メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルメタクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ブチルメタクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ブテン、イソプレン、ブタジエン、エチレン、プロピレン、ビニルエチレン、ペンテン、エチル−2−プロピレン、ブチルエチレン、シクロヘキシルプロピルエチレン、デシルエチレン、ドデシルエチレン、ヘキセン、イソヘキシルエチレン、ネオペンチルエチレン、(1,2−ジエトキシカルボニル)エチレン、(1,2−ジプロポキシカルボニル)エチレン、メトキシエチレン、エトキシエチレン、ブトキシエチレン、2−メトキシプロピレン、ペンチルオキシエチレン、シクロペンタノイルオキシエチレン、シクロペンチルアセトキシエチレン、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ヘキシルスチレン、オクチルスチレン、ノニルスチレン、クロロプレン。
【0040】
N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、ビニルアルキルエーテル、ビニルアルキルケトン、ブチルアクリレート、プロピルメタクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシルメタクリレート、シクロドデシルアクリレート、3−エトキシプロピルアクリレート、メトキシ−ブチルアクリレート、2−エチルブチルアクリレート、1,3−ジメチルブチルアクリレート、2−メチルペンチルアクリレート、アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート。
【0041】
クロトン酸アルキルエステル、マレイン酸アルキルエステル、フマル酸アルキルエステル、シトラコン酸アルキルエステル、メサコン酸アルキルエステル、トリアリルシアヌレート、酢酸アリル、N−ビニルカルバゾール、マレイミド、N−メチルマレイミド、側鎖にシリコーンを有する(メタ)アクリレート、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート、末端が炭素数1〜4のアルキル基であるポリオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレート、アルキレンジ(メタ)アクリレート等。
【0042】
共重合体は、撥水撥油性の点から、ポリ(オキシアルキレン)鎖を構成する単位として(CO)単位のみを有する単量体、(CO)単位のみを有する単量体、または(CO)単位および(CO)単位のみを有する単量体に基づく単位を有しないことが好ましい。
(CO)単位のみを有する単量体、(CO)単位のみを有する単量体、または(CO)単位および(CO)単位のみを有する単量体に基づく単位を有する場合には、共重合体の撥水撥油性を低下させない範囲で加えることが好ましい。共重合体を構成する全ての単量体に基づく単位に対して、0.1〜3質量%であることが好ましい。
【0043】
単量体(a)に基づく単位の割合は、撥水撥油剤組成物を用いて処理された物品の撥水撥油性および耐久性の点から、共重合体を構成する全ての単量体に基づく単位に対して、5〜40質量%が好ましく、10〜25質量%がより好ましい。
単量体(b)に基づく単位の割合は、撥水撥油剤組成物を用いて処理された物品の撥水撥油性および耐久性の点から、共重合体を構成する全ての単量体に基づく単位に対して、40〜94.9質量%が好ましく、40〜91.9質量%がより好ましく、40〜91.8質量%がさらに好ましく、40〜89.9質量%が特に好ましく、40〜84.9質量%が最も好ましい。
単量体(c)に基づく単位の割合は、撥水撥油剤組成物を用いて処理された物品の撥水撥油性および耐久性の点から、共重合体を構成する全ての単量体に基づく単位に対して、0.1〜20質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。
単量体(d)に基づく単位の割合は、撥水撥油剤組成物を用いて処理された物品の撥水撥油性および耐久性の点から、共重合体を構成する全ての単量体に基づく単位に対して、0〜30質量%が好ましく、3〜25質量%がより好ましい。
単量体(e)に基づく単位の割合は、撥水撥油剤組成物を用いて処理された物品の撥水撥油性および耐久性の点から、共重合体を構成する全ての単量体に基づく単位に対して、0〜20質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。
単量体(f)に基づく単位の割合は、撥水撥油剤組成物を用いて処理された物品の撥水撥油性および耐久性の点から、共重合体を構成する全ての単量体に基づく単位に対して、0〜35質量%が好ましく、0〜20質量%がより好ましい。
本発明における単量体に基づく単位の割合は、共重合体の製造時の単量体の仕込み量に基づいて算出する。
【0044】
共重合体の質量平均分子量(Mw)は、8000〜1000000が好ましく、10000〜800000がより好ましい。共重合体の質量平均分子量(Mw)が前記範囲内であれば、撥水性と撥油性をともに発現することができる。
共重合体の数平均分子量(Mn)は、3000〜800000が好ましく、5000〜600000がより好ましい。共重合体の数平均分子量(Mn)が前記範囲内であれば、撥水性と撥油性をともに発現することができる。
【0045】
(液状媒体)
液状媒体としては、水、アルコール、グリコール、グリコールエーテル、グリコールエステル、ハロゲン化合物、炭化水素、ケトン、エステル、エーテル、窒素化合物、硫黄化合物、無機溶剤、有機酸等が挙げられ、溶解性、取扱いの容易さの点から、水性媒体が好ましい。
水性媒体とは、水、水溶性有機溶媒およびそれらの混合媒体を意味する。水溶性有機溶媒としては、水溶性モノアルコール、水溶性グリコール、水溶性グリコールエーテルおよび水溶性グリコールエステルからなる群から選ばれた1種以上の水溶性有機溶媒が好ましい。
【0046】
液状媒体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。液状媒体を2種以上混合して用いる場合、水と水溶性有機溶媒とを混合して用いることが好ましい。水と水溶性有機溶媒とを混合した水性媒体を用いることにより、共重合体の溶解性、分散性の制御がしやすく、加工時における物品に対する浸透性、濡れ性、溶媒乾燥速度等の制御がしやすい。
本発明の撥水撥油剤組成物における水性媒体は、水単独または水と前記水溶性有機溶媒とを含む水性媒体を含む水性媒体であることが好ましい。本発明の撥水撥油剤組成物中の水溶性有機溶媒の量は、共重合体を20質量%含む組成物とした場合に、0〜40質量%であることが好ましく、1〜20質量%がより好ましい。
【0047】
(界面活性剤)
界面活性剤としては、炭化水素系界面活性剤またはフッ素系界面活性剤が挙げられ、それぞれ、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、または両性界面活性剤が挙げられる。
界面活性剤としては、添加剤との相溶性の点からは、ノニオン性界面活性剤と両性界面活性剤との併用が好ましく、共重合体の安定性の点からは、ノニオン性界面活性剤の単独使用、またはノニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤との併用が好ましい。
ノニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤との比(ノニオン性界面活性剤/カチオン性界面活性剤)は、97/3〜40/60(質量比)が好ましい。
【0048】
ノニオン性界面活性剤としては、国際公開第2010/047258号、国際公開第2010/123042号に記載された界面活性剤s〜sからなる群、および特許第5569614号公報に記載のアミドアミン界面活性剤から選ばれる1種以上が好ましい。
界面活性剤がカチオン性界面活性剤を含む場合、該カチオン性界面活性剤としては、国際公開第2010/047258号、国際公開第2010/123042号に記載された界面活性剤sが好ましい。
界面活性剤が両性界面活性剤を含む場合、該両性界面活性剤としては、国際公開第2010/047258号、国際公開第2010/123042号に記載された界面活性剤sが好ましい。
また、界面活性剤として、国際公開第2010/047258号、国際公開第2010/123042号に記載された界面活性剤s(高分子界面活性剤)を用いてもよい。
界面活性剤の好ましい態様は、国際公開第2010/047258号、国際公開第2010/123042号に記載された好ましい態様と同様である。
【0049】
ノニオン性界面活性剤の好ましい具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
1837O[CHCH(CH)O]−(CHCHO)30H、
1835O−(CHCHO)26H、
1835O−(CHCHO)30H、
1633O[CHCH(CH)O]−(CHCHO)20H、
1225O[CHCH(CH)O]−(CHCHO)15H、
(C17)(C13)CHO−(CHCHO)15H、
1021O[CHCH(CH)O]−(CHCHO)15H、
13CHCHO−(CHCHO)15H、
13CHCHO[CHCH(CH)O]−(CHCHO)15H、
CHCHO[CHCH(CH)O]−(CHCHO)15H。
HO−(CHCHO)15−(CO)35−(CHCHO)15H、
HO−(CHCHO)−(CO)35−(CHCHO)H、
HO−(CHCHO)−(CO)20−(CHCHO)H、
HO−(CHCHO)45−(CO)17−(CHCHO)45H、
HO−(CHCHO)34−(CHCHCHCHO)28−(CHCHO)34H。
CH(CH−CH[O(CHCHO)H]−(CHCH
ただし、m+nは9〜11の整数、sは3〜15の整数を表す。
【0050】
カチオン性界面活性剤の好ましい具体例としては、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルジメチルモノエチルアンモニウムエチル硫酸塩、ステアリルモノメチルジ(ポリエチレングリコール)アンモニウムクロライド、フルオロヘキシルトリメチルアンモニウムクロライド、ジ(牛脂アルキル)ジメチルアンモニウムクロライド、ジメチルモノココナッツアミン酢酸塩、特許第5569614号公報に記載のアミドアミン第4級アンモニウム塩等が挙げられる。
両性界面活性剤の好ましい具体例としては、ドデシルベタイン、ステアリルベタイン、ドデシルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ドデシルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等が挙げられる。
【0051】
界面活性剤の合計量は、共重合体100質量部に対して、1〜10質量部が好ましく、2〜8質量部がより好ましい。
【0052】
(添加剤)
添加剤としては、浸透剤、消泡剤(シリコーン系消泡剤等)、吸水剤、帯電防止剤、防皺剤、風合い調整剤、造膜助剤、水溶性高分子(ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等)、熱硬化剤(メチロールメラミン等のメラミン系硬化剤、ブロック化ポリイソシアネート等のイソシアネート系硬化剤等)、エポキシ硬化剤(イソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、1,6−ヘキサメチレンビス(N,N−ジメチルセミカルバジド)、1,1,1’,1’−テトラメチル−4,4’−(メチレン−ジ−パラ−フェニレン)ジセミカルバジド、スピログリコール等)、カルボジイミド基含有硬化剤、オキサゾリン基含有硬化剤、熱硬化触媒、架橋触媒、合成樹脂、繊維安定剤、トリエタノールアミン、酢酸、コロイダルシリカ等が挙げられる。
【0053】
(撥水撥油剤組成物の製造方法)
本発明の撥水撥油剤組成物の製造方法は、界面活性剤および重合開始剤の存在下、液状媒体中にて前記単量体(a)と前記単量体(b)と前記単量体(c)とを含む単量体成分を重合し、共重合体とする方法である。また、単量体成分としてさらに前記単量体(d)、前記単量体(e)および前記単量体(f)の1種以上を使用することができる。
本発明の撥水撥油剤組成物は、たとえば、下記(i)または(ii)の方法で製造できる。
(i)界面活性剤および重合開始剤の存在下、液状媒体中にて単量体(a)〜(c)、必要に応じて単量体(d)〜(f)を含む単量体成分を重合して共重合体の溶液、分散液またはエマルションを得た後、必要に応じて、液状媒体、界面活性剤、添加剤を加える方法。
(ii)界面活性剤および重合開始剤の存在下、液状媒体中にて単量体(a)〜(c)、必要に応じて単量体(d)〜(f)を含む単量体成分を重合して共重合体の溶液、分散液またはエマルションを得た後、共重合体を分離し、共重合体に液状媒体、界面活性剤、必要に応じて添加剤を加える方法。
重合法としては、分散重合法、乳化重合法、懸濁重合法等が挙げられる。
【0054】
撥水撥油剤組成物の製造方法としては、界面活性剤および重合開始剤の存在下、水性媒体中で単量体(a)〜(c)、必要に応じて単量体(d)〜(f)を含む単量体成分を乳化重合して共重合体のエマルションを得る方法が好ましい。
共重合体の収率が向上する点から、乳化重合の前に、単量体、界面活性剤および水性媒体からなる混合物を前乳化することが好ましい。たとえば、単量体、界面活性剤および水性媒体からなる混合物を、ホモミキサーまたは高圧乳化機で混合分散する。また、気体状単量体は前乳化して得られた乳化混合物に添加して乳化混合物中の単量体と共重合させることができる。
【0055】
重合開始剤としては、熱重合開始剤、光重合開始剤、放射線重合開始剤、ラジカル重合開始剤、イオン性重合開始剤等が挙げられ、水溶性または油溶性のラジカル重合開始剤が好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、アゾ系重合開始剤、過酸化物系重合開始剤、レドックス系開始剤等の汎用の開始剤が、重合温度に応じて用いられる。ラジカル重合開始剤としては、アゾ系化合物が特に好ましく、水性媒体中で重合を行う場合、アゾ系化合物の塩がより好ましい。重合温度は20〜150℃が好ましい。
【0056】
単量体の重合の際には、分子量調整剤を用いてもよい。分子量調節剤としては、芳香族系化合物、メルカプトアルコール類またはメルカプタン類が好ましく、アルキルメルカプタン類が特に好ましい。分子量調整剤としては、メルカプトエタノール、メルカプトグリセロール、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、ステアリルメルカプタン、α−メチルスチレンダイマ(CH=C(Ph)CHC(CHPh。ただし、Phはフェニル基である。)等が挙げられる。
【0057】
単量体(a)〜(f)の割合は、重合後に残存する単量体がほとんど検出されないことから、それぞれ上述した単量体(a)〜(f)に基づく単位の割合と同様であり、好ましい態様も同様である。
【0058】
本発明の撥水撥油剤組成物は、共重合体が液状媒体中に粒子として分散していることが好ましい。共重合体の平均粒子径は、10〜1000nmが好ましく、10〜500nmがより好ましく、50〜300nmが特に好ましい。平均粒子径が該範囲であれば、界面活性剤等を多量に用いる必要がなく、撥水撥油性が良好であり、染色された布帛類を処理した場合に色落ちが発生せず、液状媒体中で分散粒子が安定に存在できて沈降することがない。共重合体の平均粒子径は、動的光散乱装置、電子顕微鏡等により測定できる。
【0059】
本発明の撥水撥油剤組成物の固形分濃度は、撥水撥油剤組成物の製造直後は、25〜40質量%が好ましい。
本発明の撥水撥油剤組成物の固形分濃度は、物品の処理時は、0.2〜5質量%が好ましい。
撥水撥油剤組成物の固形分濃度は、加熱前の撥水撥油剤組成物の質量と、120℃の対流式乾燥機にて4時間乾燥した後の質量とから計算される。
【0060】
(作用機序)
以上説明した本発明の撥水撥油剤組成物にあっては、単量体(a)に基づく単位および単量体(b)に基づく単位に加え、単量体(c)に基づく単位をさらに有する共重合体を含むため、該撥水撥油剤組成物を用いて物品を処理することによって、撥水性、撥油性、洗濯耐久性、豪雨耐久性および風合いのいずれもが良好である物品を得ることができる。
また、本発明の撥水撥油剤組成物にあっては、共重合体が炭素数7以上のR基を有する単量体に基づく単位を有しないため、環境への影響が指摘されているペルフルオロオクタン酸(PFOA)やペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)およびその前駆体、類縁体の含有量(固形分濃度20%とした場合の含有量)を国際公開第2009/081822号に記載の方法によるLC−MS/MSの分析値として検出限界以下にすることができる。
【0061】
<物品>
本発明の物品は、本発明の撥水撥油剤組成物を用いて処理された物品である。
本発明の撥水撥油剤組成物で処理される物品としては、繊維(天然繊維、合成繊維、混紡繊維等)、繊維製品、不織布、樹脂製品、紙、皮革製品、木材、金属製品、石材、コンクリート製品、石膏製品、ガラス製品等が挙げられる。物品としては、特に繊維製品が好ましい。
処理方法としては、たとえば、公知の塗工方法によって物品に撥水撥油剤組成物を塗布または含浸した後、乾燥する方法が挙げられる。
【0062】
本発明の撥水撥油剤組成物を用いて物品を処理すると、皮膜が柔軟であるため繊維製品においてはその風合いが柔軟になり、高品位な撥水撥油性を物品に付与できる。また、皮膜の密着性に優れ、低温でのキュアリングでも撥水撥油性を付与できる。また、摩擦や洗濯による性能の低下が少なく、加工初期の性能を安定して維持できる。また、紙へ処理した場合は、低温の乾燥条件でも、優れたサイズ性、撥水性および耐油性を紙に付与できる。樹脂、ガラスまたは金属表面などに処理した場合には、物品への密着性が良好で造膜性に優れた撥水撥油性皮膜を形成できる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
例1〜4は実施例であり、例5〜13は比較例である。
【0064】
(撥油性)
試験布について、AATCC−TM118−1966の試験方法にしたがって撥油性を評価した。撥油性は、表1に示す等級で表した。等級に+(−)を記したものは、それぞれの性質がわずかに良い(悪い)ことを示す。
【0065】
【表1】
【0066】
(撥油性の摩擦耐久性)
摩擦試験機を用い、試験布の摩擦面を1000回摩擦し、温度25℃、湿度55%の部屋で一晩風乾させた後、試験布の摩擦面の前記撥油性を評価した。
【0067】
(撥水性)
試験布について、JIS L 1092のスプレー試験にしたがって撥水性を評価した。撥水性は、1〜5の5段階の等級で表した。点数が大きいほど撥水性が良好であることを示す。等級に+(−)を記したものは、当該等級の標準的なものと比べてそれぞれの性質がわずかに良い(悪い)ことを示す。
【0068】
(撥水性の洗濯耐久性)
試験布について、JIS L 0217の別表103の水洗い法にしたがって、洗濯を20回繰り返した。洗濯後、室温25℃、湿度55%の部屋で一晩風乾させた後、試験布の前記撥水性を評価した。
【0069】
(撥水性の摩擦耐久性)
摩擦試験機を用い、試験布の摩擦面を1000回摩擦し、温度25℃、湿度55%の部屋で一晩風乾させた後、試験布の摩擦面の前記撥水性を評価した。
【0070】
(豪雨耐久性)
試験布について、JIS L 1092(c)法に記載の方法(ブンデスマン試験)にしたがって、降雨量を100cc/分、降雨水温を20℃、降雨時間0分、5分または10分とする条件で降雨させ、撥水性を評価した。撥水性は、1〜5の5段階の等級で表した。点数が大きいほど撥水性が良好であることを示す。等級に+(−)を記したものは、それぞれの性質がわずかに良い(悪い)ことを示す。
【0071】
(風合い)
試験布を、室温20℃±2℃、湿度65%±2%の恒温恒湿室に1昼夜静置した後、官能評価で、柔軟性を下記基準にて判定した。
○:柔らかい。
△:ふつう。
×:硬い。
【0072】
(略号)
単量体(a):
C6FMA:C13OC(O)C(CH)=CH
【0073】
単量体(b):
BeA:ベヘニルアクリレート。
【0074】
単量体(c):
55PET800:CH=C(CH)C(O)O−[(CO)(CO)]−H(日油社製、ブレンマー(登録商標)55PET−800、a≒10、b≒5、[(CO)(CO)]の数平均分子量:約800)。
【0075】
単量体(d):
VCM:塩化ビニル。
【0076】
単量体(e):
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート、
HBA:4−ヒドロキシブチルアクリレート、
NMAM:N−メチロールアクリルアミド。
単量体(f):
StA:ステアリルアクリレート、
PP800:CH=C(CH)C(O)O−(CO)−H(日油社製、ブレンマー(登録商標)PP−800、c≒13、(CO)の数平均分子量:約754)、
PME550:CH=C(CH)C(O)O−(CO)−CH(日油社製、ブレンマー(登録商標)PME−550、d≒12、(CO)の数平均分子量:約528)。
【0077】
界面活性剤s
PEO−30:ポリオキシエチレンオレイルエーテル(花王社製、エマルゲン(登録商標)E430、エチレンオキシド約30モル付加物)の10質量%水溶液。
【0078】
界面活性剤s
P204:エチレンオキシドプロピレンオキシド重合物(日油社製、プロノン(登録商標)204、エチレンオキシドの割合は40質量%。)。
【0079】
界面活性剤s
TMAC:ステアリルトリメチルアンモニウムクロライドの63質量%イソプロピルアルコールおよび水の混合溶液。
【0080】
液状媒体:
DPM:ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、
水:イオン交換水。
【0081】
分子量調整剤:
DoSH:n−ドデシルメルカプタン。
【0082】
重合開始剤:
VA061A:2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン](和光純薬社製、VA061)の酢酸塩の10質量%水溶液。
【0083】
〔例1〕
ガラス製ビーカーに、C6FMAの5.60g、BeAの18.67g、55PET800の0.25g、PEO−30の7.78g、TMACの0.49g、P204の0.16g、DPMの18.67g、水の38.37g、DoSHの0.31gを入れ、60℃で30分間加温した後、ホモミキサー(日本精機製作所社製、バイオミキサー)を用いて混合して混合液を得た。
【0084】
得られた混合液を、60℃に保ちながら高圧乳化機(APVラニエ社製、ミニラボ)を用いて、40MPaで処理して乳化液を得た。得られた乳化液をステンレス製反応容器に入れ、40℃以下となるまで冷却した。VA061Aの3.11gを加えて、気相を窒素置換した後、VCMの6.60gを添加した。撹拌しながら60℃で15時間重合反応を行い、共重合体のエマルションを得た。各単量体に基づく単位の割合を表2に示す。
【0085】
共重合体のエマルションを蒸留水で希釈し、固形分濃度を1質量%に調整した後、メラミン系硬化剤(DIC社製、ベッカミン(登録商標)M3)および酸触媒(DIC社製、アクセラレーターACX)を、それぞれの濃度が0.3質量%となるように添加し、撥水撥油剤組成物を得た。
【0086】
撥水撥油剤組成物に、染色済みナイロンタフタまたは染色済みポリエステルウーリータフタを浸漬し、それぞれウェットピックアップが50質量%、30質量%となるように絞った。これを110℃で60秒間乾燥した後、170℃で60秒間乾燥したものを試験布とした。該試験布について、撥油性、撥油性の摩擦耐久性、撥水性、撥水性の洗濯耐久性、撥水性の摩擦耐久性、豪雨耐久性および風合いを評価した。結果を表2に示す。
【0087】
〔例2〜13〕
各単量体の仕込み量が、表2〜表4に示す各単量体に基づく単位の割合となるように変更した以外は、例1と同様にして共重合体のエマルションを得た。各単量体に基づく単位の割合を表2〜表4に示す。
該エマルションを用いた以外は、例1と同様にして撥水撥油剤組成物を得た。例13については、2種類のエマルションである例5と例12を表4に示すとおり1対1の割合にて混合して撥水撥油剤組成物を得た。
該撥水撥油剤組成物を用いた以外は、例1と同様にして試験布を得た。該試験布について、撥油性、撥油性の摩擦耐久性、撥水性、撥水性の洗濯耐久性、撥水性の摩擦耐久性、豪雨耐久性および風合いを評価した。結果を表2〜表4に示す。
【0088】
【表2】
【0089】
【表3】
【0090】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の撥水撥油剤組成物は、繊維製品(衣料物品(スポーツウェア、コート、ブルゾン、作業用衣料、ユニフォーム等)、かばん、産業資材等)、不織布、皮革製品、木材、石材、コンクリート系建築材料等に撥水撥油性を付与するための撥水撥油剤として有用である。また、有機溶媒液体またはその蒸気存在下で用いられる濾過材料用コーティング剤、表面保護剤、エレクトロニクス用コーティング剤、防汚コーティング剤として有用である。さらに、ポリプロピレン、ナイロン等と混合して成形、繊維化することにより撥水撥油性を付与する用途にも有用である。
なお、2015年5月27日に出願された日本特許出願2015−106994号の明細書、特許請求の範囲および要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。