(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一方の測定対象部に設けられるとともに目盛が配列されたスケール基材を有するスケールと、他方の測定対象部に設けられるとともに前記スケールとの相対移動量を検出する検出器と、を備えたエンコーダの制御システムであって、
前記スケールと前記検出器とを相対移動させる駆動手段と、
前記駆動手段を制御する制御手段と、を備え、
前記スケールは、
前記目盛から前記検出器によって前記相対移動量が検出される測定エリアと、
導電性の除電部を有する除電エリアと、を備え、
前記検出器は、
前記他方の測定対象部を介して接地される接地部を備え、
前記制御手段は、
除電の要否を判定する除電判定部と、
前記除電判定部の判定にもとづき、除電が必要と判定した場合、前記駆動手段によって前記検出器を前記除電エリアに移動させ、前記接地部を前記除電部に接触させて除電する除電実行部と、を備えることを特徴とするエンコーダの制御システム。
一方の測定対象部に設けられるとともに目盛が配列されたスケール基材を有するスケールと、他方の測定対象部に設けられるとともに前記スケールとの相対移動量を検出する検出器と、を備えたエンコーダの制御システムの制御方法であって、
前記スケールと前記検出器とを相対移動させる駆動手段と、
前記駆動手段を制御する制御手段と、を備え、
前記スケールは、
前記目盛から前記検出器によって前記相対移動量が検出される測定エリアと、
導電性の除電部を有する除電エリアと、を備え、
前記検出器は、
前記他方の測定対象部を介して接地される接地部を備え、
前記制御手段は、
除電の要否を判定する除電判定工程と、
前記除電判定工程の判定にもとづき、除電が必要と判定した場合、前記駆動手段によって前記検出器を前記除電エリアに移動させ、前記接地部を前記除電部に接触させて除電する除電実行工程と、を備えることを特徴とするエンコーダの制御システムの制御方法。
【背景技術】
【0002】
従来、互いに相対移動する一対の測定対象部の相対移動量を検出するエンコーダ等の測定器が知られている。従来の測定器としては、目盛を有するスケールと、スケールに沿って移動する読取部を有する検出器と、を備え、読取部がスケールの目盛を読み取ることによって、スケールと検出器との相対移動量を検出するものが一般的に利用されている。
例えば、特許文献1に記載された位置測定装置(リニアエンコーダ)は、スケール基材を有する目盛板(スケール)と、走査装置(検出器)と、を備え、走査装置は、目盛板の表面に当接するようにして設けられたベアリング等からなる転がり部材を備えている。走査装置は、転がり部材を備えているのでスケールの長手方向に沿って滑らかに移動することができる。
【0003】
エンコーダは、検出器の読取部における目盛の読取方式として、電磁誘導式や、静電容量式や、光電式等を採用している。特許文献1に記載された位置測定装置(リニアエンコーダ)では、読取方式として光電式が採用され、特許文献2に記載されたリニアエンコーダでは、電磁誘導式が採用されている。
ここで、ガラス等で形成されるスケールのスケール基材は、転がり部材がその表面に当接して転動するのに伴って帯電することがある。スケール基材に帯電した電荷は、放電されることによって検出器の電気系統(電圧や周波数等)の乱れを引き起こしノイズの原因となる。また、スケール基材が帯電することでスケールや検出器等に埃が付着しやすくなり、検出不良等の原因となる。
【0004】
これらの不具合の原因となるスケール基材の帯電を防止するために、従来の位置測定装置(リニアエンコーダ)は、スケール基材を接地している。
スケール基材の接地方法として、例えば特許文献1では、目盛板(スケール)は、スケール基材の表面に導電部材を有し、この導電部材とハウジング(スケール枠)とを接続する導電性の接続部材を目盛板の一方側の端部に備えている。すなわち、目盛板は、接続部材を介してハウジングに導電接続されている。ハウジングは、一方の測定対象部を介して接地している。したがって、位置測定装置は、目盛板の導電部材から一方の測定対象部までを接続部材を介して導電接続することで、目盛板を接地している。また、特許文献2では、スケールは、目盛を形成するレジストとスケール基材との間に導電層(導電部材)を備えている。この導電層は、導電性の接地線と導電接続され、この接地線を介してスケール枠に導電接続されている。スケール枠は、一方の測定対象部を介して接地している。したがって、リニアエンコーダは、スケール基材の導電層から一方の測定対象部までを接地線を介して導電接続することで、スケール基材を接地している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このようなエンコーダにおいて、スケール基材を接地するためには接続部材や接地線を用いてスケール枠に導電接続するとともに、このスケール枠を一方の測定対象部を介して接地する必要があり、エンコーダの構成が複雑になるという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、スケール基材の帯電を除電して測定結果の信頼性の向上を図るとともにスケール基材を接地するための構成を簡素化することができるエンコーダの制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のエンコーダの制御システムは、一方の測定対象部に設けられるとともに目盛が配列されたスケール基材を有するスケールと、他方の測定対象部に設けられるとともに前記スケールとの相対移動量を検出する検出器と、を備えたエンコーダの制御システムであって、前記スケールと前記検出器とを相対移動させる駆動手段と、前記駆動手段を制御する制御手段と、を備え、前記スケールは、前記目盛から前記検出器によって前記相対移動量が検出される測定エリアと、導電性の除電部を有する除電エリアと、を備え、前記検出器は、前記他方の測定対象部を介して接地される接地部を備え、前記制御手段は、除電の要否を判定する除電判定部と、前記除電判定部の判定にもとづき、除電が必要と判定した場合、前記駆動手段によって前記検出器を前記除電エリアに移動させ、前記接地部を前記除電部に接触させて除電する除電実行部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、エンコーダの制御システムは、他方の測定対象部を介して接地される検出器の接地部と除電エリアの除電部とを接触させることで、スケール基材を接地することができる。したがって、スケール基材が帯電したとしても、接地部と除電部とを接触させて接地することができるのでスケール基材の帯電を抑制し、検出器による検出結果の信頼性の向上を図ることができる。
【0010】
また、接地部と除電部とを接触させるだけで接地することができるため、特許文献1のようにスケール基材を接地させるための接続部材等を必要としない。したがって、スケール基材を接地するための構成を簡素化することができるとともにコスト低減を図ることができる。
さらに、制御手段は、除電の要否を判定する除電判定部と、除電判定部の判定にもとづき接地部を除電部に接触させて除電する除電実行部と、を備えているため、除電が必要なタイミングで駆動手段を駆動制御し、検出器を除電エリアに移動させて除電することができる。したがって、エンコーダの制御システムは、スケール基材に帯電した電荷を効率的に除電することができる。
【0011】
ここで、除電部は、接地部等と接触することで摩耗することがある。そして、エンコーダは、除電部が摩耗して発生する摩耗粉等により、検出不良を引き起こすことがある。
これに対して、本発明では、除電判定部によって除電が必要と判断されるまでの間は、測定エリアにおいて測定を継続し、接地部と除電部とを接触させないので、除電部の摩耗による摩耗粉の発生を抑制することができる。すなわち、制御手段は、除電判定部によって除電が必要となるまでは検出器を除電エリアへ移動させず、測定エリア内で測定を継続するため、接地部と除電部との接触回数を低減させることができる。したがって、接地部と除電部との接触による摩耗粉の発生を低減させて検出不良を抑制し、測定精度の信頼性を保持することができる。
【0012】
この際、前記制御手段は、前記測定エリアにおける前記相対移動量の積算値をカウントする処理部と、前記処理部でカウントされた前記積算値から除電の要否を判定する前記除電判定部と、を備えることが好ましい。
【0013】
このような構成によれば、制御手段は、測定エリアにおける相対移動量の積算値をカウントする処理部と、処理部でカウントされた積算値から除電の要否を判定する除電判定部と、を備えているため、積算値に応じて除電が必要なタイミングで駆動手段を駆動制御し、検出器を除電エリアに移動させて除電することができる。したがって、エンコーダの制御システムは、スケール基材に帯電した電荷を効率的に除電することができる。
また、処理部は、スケールと検出器との相対移動量の積算値をカウントするため、除電の要否を判定するためのセンサー等を設ける必要がなく、コスト低減を図ることができる。
【0014】
本発明のエンコーダは、前記エンコーダの制御システムによって駆動制御されるエンコーダであって、前記スケールは、前記スケール基材の目盛の配列方向に沿って形成された導電性の導電部を備え、前記除電部は、前記スケール基材の目盛の配列方向と交差する方向に当該導電部から延びて形成される突出部であることを特徴とする。
【0015】
このような構成によれば、除電部は導電部の一部であり、除電部である突出部はスケール基材の目盛の配列方向と交差する方向に導電部から延びて形成されることで、接地部と接触させることができる。すなわち、接地部と接触させるための除電部を導電部から延びて形成される突出部とすることで、導電部と接地部とを接触させずに除電を実行することができる。したがって、導電部からは摩耗粉が発生しないため、検出器の検出不良を抑制し、測定精度の信頼性を保持することができる。
【0016】
また、従来のエンコーダのように、スケール基材を接地するための接続部材等を設ける必要がなく、測定対象部と導電接続された接地部と突出部とを接触させて接地することができるので、エンコーダの構成の簡素化を図ることができる。したがって、エンコーダは簡単な構成によりスケール基材を接地することができ、コスト削減を図ることができる。
【0017】
本発明のエンコーダは、前記エンコーダの制御システムによって駆動制御されるエンコーダであって、前記接地部は、前記スケール基材に沿って転動する転がり部材であることを特徴とする。
【0018】
このような構成によれば、特許文献1のように転がり部材は従来より設けられており、検出器の移動にともなってスケール基材の表面を目盛の配列方向に沿って移動する。そのため、転がり部材は、検出器を移動させるだけでスケール基材の目盛の配列方向と交差する方向に延びて形成された突出部(除電部)と接触させることができる。したがって、エンコーダは、従来より設けられている転がり部材を突出部と接触する接地部として用いることで、エンコーダの構成を簡素化することができるとともにコスト低減を図ることができる。
【0019】
本発明のエンコーダは、前記エンコーダの制御システムによって駆動制御されるエンコーダであって、前記測定エリアは、前記スケール基材に沿って一連に形成されることを特徴とする。
【0020】
このような構成によれば、測定エリアは、スケール基材に沿って一連に確保できるため、測定を円滑に実行することができるとともに、測定精度の向上を図ることができる。また、エンコーダは、除電エリアを通過することなく測定エリア内で測定ができるため、接地部との接触による除電部の摩耗を防ぐことができる。
【0021】
本発明のエンコーダの制御システムを制御する制御方法は、一方の測定対象部に設けられるとともに目盛が配列されたスケール基材を有するスケールと、他方の測定対象部に設けられるとともに前記スケールとの相対移動量を検出する検出器と、を備えたエンコーダの制御システムの制御方法であって、前記スケールと前記検出器とを相対移動させる駆動手段と、前記駆動手段を制御する制御手段と、を備え、前記スケールは、前記目盛から前記検出器によって前記相対移動量が検出される測定エリアと、導電性の除電部を有する除電エリアと、を備え、前記検出器は、前記他方の測定対象部を介して接地される接地部を備え、前記制御手段は、除電の要否を判定する除電判定工程と、前記除電判定工程の判定にもとづき、除電が必要と判定した場合、前記駆動手段によって前記検出器を前記除電エリアに移動させ、前記接地部を前記除電部に接触させて除電する除電実行工程と、を備えることを特徴とする。
【0022】
このような構成によれば、制御手段は、除電の要否を判定する除電判定工程と、除電判定工程の判定にもとづき接地部を除電部に接触させて除電する除電実行工程と、を備えることで、除電が必要な適切なタイミングで検出器を除電エリアに移動させて除電を実行することができる。また、エンコーダは、接地部と除電部との接触により除電部が摩耗することを抑制するとともに、測定精度の信頼性を保持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態のエンコーダの制御システムに係るエンコーダを示す正面図および断面図である。具体的には、
図1(A)はエンコーダ2の正面図であり、
図1(B)は
図1(A)のA−A断面におけるエンコーダ2の断面図である。
エンコーダの制御システム1におけるエンコーダ2は、
図1(B)に示すように、互いに相対移動する一対の測定対象部W1,W2間の移動距離を測定する測定器である。エンコーダ2は、例えば、電磁誘導式のリニアエンコーダである。
【0025】
エンコーダ2は、
図1(A)に示すように、エンコーダ本体3と、このエンコーダ本体3に移動自在に設けられる検出器4と、を備えている。このエンコーダ2は、一方の測定対象部W1にエンコーダ本体3が固定され、他方の測定対象部W2に検出器4が固定される。
エンコーダ本体3は、
図1(B)に示すように、長尺状のスケール枠5と、このスケール枠5に内蔵されるスケール6と、を有して構成されている。スケール枠5は、アルミ合金製の押し出し成形材で形成され、全体略矩形中空状に形成されている。
なお、以下の説明および各図面において、スケール枠5の長手方向であり検出器4の移動方向をX方向と記し、X方向に直交するスケール枠5の幅方向(奥行方向)をY方向と記し、X,Y方向に直交する上下方向をZ方向と記す場合がある。
【0026】
図2は、前記エンコーダにおけるスケールを示す正面図である。具体的には、スケール6を−Y方向側からみた図である。
スケール6は、
図2に示すように、ガラス等からなる長尺状のスケール基材7と、スケール基材7の長手方向(X方向)に沿って−Y方向側の一面に直線状に形成された導電性を有する導電部8と、導電部8上に形成されるとともに一定のピッチで配列されたコイルからなる目盛Cと、を有している。
導電部8は、クロム(Cr)等の導電体で形成され、スケール基材7の目盛Cの配列方向(X方向)と交差する方向(Z方向)に延びて形成される除電部としての突出部8Aを備えている。
【0027】
検出器4は、
図1(B)に示すように、スケール枠5の外部に設けられるとともに他方の測定対象部W2に固定される検出器本体9と、この検出器本体9からスケール枠5の内部に延びて設けられる検出部10と、を有している。なお、検出器4は、他方の測定対象部W2を介して接地している。
検出部10は、
図2に示すように、スケール6の導電部8上に設けられた目盛Cからスケール6と検出部10との相対移動量を読み取る読取部10Aと、検出部10に接続して設けられるとともにスケール基材7の表面に当接して転動するベアリング11と、を有している。
読取部10Aは、励磁コイルと検出コイルとを備えている。励磁コイルは、エンコーダ2が電流を流すと磁束が発生するとともに、対向する目盛Cに磁束を発生させる。目盛Cに生じた磁束は、さらに、対向する読取部10Aの検出コイルに磁束を発生させる。検出コイルは、目盛Cに発生する磁束の変位量を読み取り、スケール6と検出部10との相対移動量を検出している。
【0028】
ベアリング11は、スケール基材7の表面に当接するとともに、導電部8に沿って転動して突出部8Aと接触する転がり部材としてのベアリング11Aと、導電部8に沿って転動するとともにベアリング11Aと同じラインを転動するベアリング11Bと、ベアリング11A,11Bに対して導電部8を挟んで向かい側のラインを転動するベアリング11Cと、ベアリング11A,11B,11Cがズレないように支えるとともにスケール基材7の側面(−Z方向側)と当接して転動するベアリング11Dと、スケール基材7の側面(−Z方向側)と当接して転動するとともにベアリング11Dと同じラインを転動するベアリング11Eと、を有している。
ベアリング11Aは、他方の測定対象部W2を介して接地している検出器4(検出部10)の一部であり、接地部であるため、スケール基材7の表面に形成された突出部8Aと接触することで導電接続される。したがって、スケール基材7は、ベアリング11Aと突出部8Aとが接触している間だけ接地する。
【0029】
また、スケール6は、前述の構成の他、読取部10Aが目盛Cを読み取る測定エリア20と、除電部である突出部8Aと接地部であるベアリング11Aとが接触する除電エリア30と、を備えている。
除電部である突出部8Aは、除電エリア30内において接地部であるベアリング11Aと接触することができる大きさに形成されている。具体的には、ベアリング11Aと突出部8Aとが接触している間だけスケール基材7が接地されるため、スケール基材7を長く接地させたい場合は、X方向にベアリング11Aがある程度の距離を転動することができる長さの突出部8Aを設け、短時間だけ接地させたい場合は、X方向に短く突出部8Aを設けることができる。
【0030】
測定エリア20は、スケール基材7の長手方向(X方向)に沿って一連に形成されている。そのため、検出部10は、除電エリア30を通過することなく測定エリア20内において測定を実行できる。
除電エリア30は、
図2に示すように、スケール基材7の長手方向の一端側(+X方向側)の端部に形成されている。なお、除電エリア30は、スケール基材7の長手方向の一端側(+X方向側)の端部にのみ設けられていてもよいし、スケール基材7の長手方向の他端側(−X方向側)の端部にのみ設けられていてもよいし、スケール基材7の両端に設けられていてもよい。
【0031】
図3は、前記エンコーダを制御するエンコーダの制御システムを示すブロック図である。
エンコーダの制御システム1は、互いに相対移動するスケール6と検出部10との間の移動距離を測定するエンコーダ2と、一対の測定対象部W1,W2に固定されるスケール6と検出部10とを相対移動させるモータ等の駆動手段40と、駆動手段40を制御する制御手段50と、を備えている。
駆動手段40は、制御手段50の指令にもとづいて、検出器4が固定されている他方の測定対象部W2(
図1(B)参照)を駆動させて検出部10を移動させている。
【0032】
制御手段50は、測定エリア20における相対移動量の積算値をカウントする処理部51と、処理部51でカウントされた積算値から除電の要否を判定する除電判定部52と、除電判定部52の判定にもとづき、除電が必要と判定した場合、駆動手段40によって検出部10を除電エリア30に移動させ、ベアリング11Aを突出部8Aに接触させて除電する除電実行部53と、を備えている。
処理部51は、スケール6と検出部10との相対移動量にもとづき積算値をカウントする。ここで、処理部51がカウントする積算値は、測定開始時から検出部10がスケール6に対して移動した累計移動距離である。
除電判定部52は、積算値に対する所定の閾値を有し、積算値が所定の閾値を超えたときに除電が必要と判定する。
除電実行部53は、除電判定部52によって判定された判定結果にもとづき検出部10を除電エリア30に移動させて除電を実行する。
【0033】
図4は、前記エンコーダの制御システムにおける制御方法を示すフローチャートである。
図4に基づいてエンコーダの制御システム1の動作について説明する。
エンコーダの制御システム1は、
図4に示すように、先ず、エンコーダ2に測定を開始させる。次に、制御手段50の処理部51は、測定エリア20において読取部10Aが読み取ったスケール6と検出部10との相対移動量を取得する(ステップST01)。なお、処理部51が取得した相対移動量は、積算値として表示部等に表示される。
続いて、処理部51は、ステップST01で取得した相対移動量の積算値をカウントする処理工程を実行する(ステップST02)。処理部51は、エンコーダ2による測定が実行されている間は相対移動量を取得し積算値をカウントし続ける。
【0034】
続いて、除電判定部52は、処理工程(ステップST02)によって得られた相対移動量の積算値から除電の要否を判定する除電判定工程を実行する(ステップST03)。除電判定部52は、積算値が所定の閾値に達して除電が必要と判定した場合(ステップST04でYES)、駆動手段40に指令を出す。そして、駆動手段40は、他方の測定対象部W2を駆動させて検出部10を除電エリア30に移動させ、接地部であるベアリング11Aと除電部である突出部8Aとを接触させて接地させることで除電する除電実行工程を実行する(ステップST05)。
【0035】
エンコーダ2は、除電判定部52によって除電が必要と判定されていない場合(ステップST04でNO)、ステップST01に戻る。
駆動手段40によって除電実行工程(ステップST05)が実行された後、制御手段50は処理部51の積算値をリセットする(ステップST06)。そして、エンコーダ2は、ステップST01に戻って測定を続行する。
【0036】
このような本実施形態によれば、以下の作用・効果を奏することができる。
(1)エンコーダの制御システム1は、他方の測定対象部W2を介して接地される検出器4のベアリング11A(接地部)と除電エリア30の突出部8A(除電部)とを接触させることで、スケール基材7を接地することができる。したがって、スケール基材7が帯電したとしても、ベアリング11Aと突出部8Aとを接触させて接地することができるのでスケール基材7の帯電を抑制し、検出器4による検出結果の信頼性の向上を図ることができる。
【0037】
(2)エンコーダの制御システム1は、ベアリング11Aと突出部8Aとを接触させるだけで接地することができるため、特許文献1のスケール6ようにスケール基材7を接地させるための接続部材等を必要としない。したがって、スケール基材7を接地するための構成を簡素化することができるとともにコスト低減を図ることができる。
(3)制御手段50は、測定エリア20における相対移動量の積算値をカウントする処理部51と、処理部51でカウントされた積算値から除電の要否を判定する除電判定部52と、除電判定部52の判定にもとづきベアリング11Aを突出部8Aに接触させて除電する除電実行部53と、を備えているため、除電が必要なタイミングで駆動手段40を駆動制御し、検出器4を除電エリア30に移動させて除電することができる。したがって、エンコーダの制御システム1は、スケール基材7に帯電した電荷を効率的に除電することができる。
【0038】
(4)制御手段50は、除電判定部52によって除電が必要と判断されるまでの間は、測定エリア20において測定を継続し、ベアリング11Aと突出部8Aとを接触させないので、突出部8Aの摩耗による摩耗粉の発生を抑制することができる。したがって、ベアリング11Aと突出部8Aとの接触による摩耗粉の発生を低減させて検出不良を抑制し、測定精度の信頼性を保持することができる。
【0039】
(5)処理部51は、スケール6と検出器4との相対移動量の積算値をカウントするため、除電の要否を判定するためのセンサー等を設ける必要がなく、コスト低減を図ることができる。
(6)除電部は導電部8の一部であり、除電部である突出部8Aはスケール基材7の目盛Cの配列方向(X方向)と交差する方向(Z方向)に導電部8から延びて形成されることで、ベアリング11Aと接触させることができる。すなわち、ベアリング11Aと接触させるための除電部を導電部8から延びて形成される突出部8Aとすることで、導電部8とベアリング11Aとを接触させずに除電を実行することができる。したがって、導電部8からは摩耗粉が発生しないため、検出器4の検出不良を抑制し、測定精度の信頼性を保持することができる。
【0040】
(7)ベアリング11Aは、検出器4を移動させるだけでスケール基材7の目盛Cの配列方向(X方向)と交差する方向(X方向)に延びて形成された突出部8Aと接触させることができる。したがって、エンコーダ2は、従来より設けられているベアリング11Aを突出部8Aと接触する接地部として用いることで、エンコーダ2の構成を簡素化することができるとともにコスト低減を図ることができる。
【0041】
(8)測定エリア20は、スケール基材7に沿って一連に確保できるため、測定を円滑に実行することができるとともに、測定精度の向上を図ることができる。また、エンコーダ2は、除電エリア30を通過することなく測定エリア20内で測定ができるため、ベアリング11Aとの接触による突出部8Aの摩耗を防ぐことができる。
(9)制御手段50は、除電判定部52によって除電が必要となるまでは検出器4を除電エリア30へ移動させず、測定エリア20内で測定を継続するため、ベアリング11Aと突出部8Aとの接触回数を低減させることができる。したがって、ベアリング11Aと突出部8Aとの接触による摩耗粉の発生を低減させて検出不良を抑制し、測定精度の信頼性を保持することができる。
【0042】
(10)制御手段50は、除電の要否を判定する除電判定工程(ステップST03)と、除電判定工程(ステップST03)の判定にもとづきベアリング11Aを突出部8Aに接触させて除電する除電実行工程(ステップST05)と、を備えることで、除電が必要な適切なタイミングで検出器4を除電エリア30に移動させて除電を実行することができる。
【0043】
〔実施形態の変形〕
なお、本発明は、前記一実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、電磁誘導式のリニアエンコーダであるエンコーダ2に本発明を用いる場合を説明したが、エンコーダとしては、エンコーダ本体3に移動自在に設けられる検出器を備えたものであればよく、検出器の形式や検出方式等は特に限定されるものではない。
【0044】
また、エンコーダ2は、リニアエンコーダではなくロータリーエンコーダであってもよい。この場合、検出器はスケール基材の周方向に沿って移動し、除電部である突出部は、スケール基材の径方向に導電部から延びて形成される。そして、除電エリアは、スケール基材の周方向に沿って形成された測定エリアの一部に設けられる。
【0045】
前記実施形態では、エンコーダ本体3のスケール枠5が全体略矩形中空状に形成されていたが、スケール枠5の形状は矩形に限らず任意形状でよい。
前記実施形態では、接地部である転がり部材としてベアリング11Aを用いたが、検出器4を移動させることで除電部である突出部8Aと接触させることができればどのような構成であってもよい。また、突出部8Aは、スケール基材7の−Y方向側の一面に形成されていたが、スケール基材7の−Z方向側の側面に形成されていてもよく、接地部と接触させて接地することができれば、どのような構成であってもよい。また、除電部である突出部8Aは、導電部8から延びて形成されていたが、除電部は導電部8と導電接続していればよく、導電性の接地線等で接続されていてもよい。
【0046】
前記実施形態では、除電エリア30は、スケール基材7の長手方向の一端側(+X方向側)の端部に形成されていたが、測定エリア20の中間部に設けられていてもよい。また、除電エリア30は、測定エリア20よりも広範に設けられていてもよいし、除電エリア30と測定エリア20とが交互に設けられてもよい。
前記実施形態では、目盛Cは、測定エリア20および除電エリア30の両方に形成されていたが、除電エリア30には設けられていなくてもよい。
また、突出部8Aは、除電エリア30の一部分に一か所だけ形成されていたが、除電エリア30の全面に形成されていてもよいし、複数の突出部8Aが形成されていてもよい。すなわち、除電部である突出部8Aは、除電エリア30内に形成され、かつ、接地部と接触することができる位置に形成されていれば、どのように形成されていてもよい。また、除電部である突出部8Aは、ベアリング11Aと接触させていたが、ベアリング11B,11C,11D,11Eのどのベアリング11と接触させてもよい。
【0047】
前記実施形態では、処理部51は、測定開始時から検出部10がスケール6に対して移動した累計移動距離を積算値としてカウントしていたが、カウント開始時からの累計時間や電荷の帯電量等を積算値としてカウントしてもよい。
前記実施形態では、エンコーダの制御システム1は、制御手段50に除電判定部52を備え、積算値が所定の閾値を超えた場合に除電を実行したが、除電判定部52には、エンコーダ2に電源が投入されたときやエンコーダ2の使用が終了したとき等を判定させてもよい。