【実施例】
【0018】
次に、実施例に基づいて本発明を説明する。以下に示す実施例は、理解を容易にするためのものであり、これらの実施例によって本発明を制限するものではない。すなわち、本発明の技術思想に基づく変形及び他の実施例は、当然本発明に含まれる。
【0019】
(実施例1)
純度6N以上のCuを用意し、これを水冷銅ハースに導入して、プラズマアーク溶解法にて、水素を4vol%導入したアルゴン雰囲気下、プラズマを照射して溶解した。その後、この溶湯を水冷銅ハースに導入し、純度4N以上のAlを1at%となるように添加し、プラズマアーク溶解法にて溶解した。次に、銅合金の溶湯を水冷銅モールドに出湯し、真空誘導溶解にて溶解するとともに、モールドの底部から凝固したインゴットを引き抜いた。
【0020】
次に、このインゴットを直径180mm×厚さ160mmとした後、700℃で熱間鍛造し、さらに冷間圧延で直径460mm×厚さ24.5mmまで圧延した。その後、400℃で熱処理した後、急冷して圧延板を作製した。これを機械加工により、直径440mm、厚さ16.5mmのスパッタリングターゲットを製造した。その後、これをバッキングプレートに拡散接合により接合した。
【0021】
切り出したインゴットの一部について不純物濃度を調べた。なお、金属成分についてはGDMS法を用い、ガス成分(酸素、炭素)については荷電粒子放射化分析を用いた。その結果、金属不純物の合計含有量は1wtppm以下であり、ガス成分は炭素が0.7wtppm、酸素が0.3wtppmと、特に酸素のガス成分の濃度を著しく低減することができた。
【0022】
ターゲットについて、100kWhまでスパッタリングを行い、投入電力:38kWにて12インチのシリコン基板上に5秒間成膜した。成膜した膜について、0.088μm以上のサイズのパーティクル数を計測したところ、8個と良好な結果であった。その後、200、 300、 500、 800kWhのLife位置についてもそれぞれ基板上のパーティクル数を計測したところ、Life全体を通して10個以下と良好な結果が得られた。
【0023】
(実施例2)
純度6N以上のCuを用意し、これを水冷銅ハースに導入して、プラズマアーク溶解法にて、アルゴン雰囲気下でプラズマを照射して溶解した。その後、溶解中の雰囲気に水素を4vol%付加して、さらに溶解を行った。その後、この溶湯を次段の水冷銅ハースに導入し、純度4N以上のAlを1at%となるように添加し、プラズマアーク溶解法にて溶解した。次に、これを水冷銅モールドに出湯し、真空誘導溶解にて溶解するともに、モールドの底部から凝固したインゴットを引き抜いた。
【0024】
次に、この合金インゴットを実施例1と同様の方法、条件によって、スパッタリングターゲットに加工し、その後、これをバッキングプレートに拡散接合により接合した。切り出したインゴットの一部について不純物濃度を調べた結果、金属不純物の合計含有量は1wtppm以下であり、ガス成分は炭素が0.2wtppm、酸素が0.3wtppmと、炭素・酸素両方のガス成分の濃度を著しく低減することができた。また、実施例1と同様に、スパッタリングを実施し、パーティクル数を計測したところ、Life全体を通して8個以下と良好な結果が得られた。
【0025】
(実施例3)
純度6N以上のCuを用意し、これを水冷銅ハースに導入して、真空に水素を流量400ml/min以上付加した雰囲気で、電子ビーム溶解法にて溶解した。その後、この溶湯を次段の水冷銅ハースに導入し、純度4N以上の高純度Alを1at%となるように添加し、電子溶解法にて溶解した。次に、これを水冷銅モールドに出湯し、真空誘導溶解にて、溶解するとともに、モールドの底部から凝固したインゴットを引き抜いた。
【0026】
次に、この合金インゴットを実施例1と同様の方法、条件によって、スパッタリングターゲットに加工し、その後、これをバッキングプレートに拡散接合により接合した。切り出したインゴットの一部について不純物濃度を調べた結果、金属不純物の合計含有量は1wtppm以下であり、ガス成分は炭素が0.6wtppm、酸素が0.8wtppmと、特に炭素のガス成分の濃度を著しく低減することができた。また、実施例1と同様に、スパッタリングを実施し、パーティクル数を計測したところ、Life全体を通して12個以下という結果が得られた。以上の結果を表1に示す。
【0027】
(実施例4)
純度6N以上のCuを用意し、これを水冷銅ハースに導入して、真空中、電子ビーム溶解法にて溶解した。その後、溶解中の雰囲気に水素を流量400ml/min以上付加して、さらに溶解を行った。その後、この溶湯を次段の水冷銅ハースに導入し、純度4N以上の高純度Alを1at%となるように添加し、電子溶解法にて溶解した。次に、これを水冷銅モールドに出湯し、真空誘導溶解にて、溶解するとともに、モールドの底部から凝固したインゴットを引き抜いた。
【0028】
次に、この合金インゴットを実施例1と同様の方法、条件によって、スパッタリングターゲットに加工し、その後、これをバッキングプレートに拡散接合により接合した。切り出したインゴットの一部について不純物濃度を調べた結果、金属不純物の合計含有量は1wtppm以下であり、ガス成分は炭素が0.2wtppm、酸素が0.9wtppmと、特に炭素のガス成分の濃度を著しく低減することができた。また、実施例1と同様に、スパッタリングを実施し、パーティクル数を計測したところ、Life全体を通して10個以下という結果が得られた。以上の結果を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
(実施例5−12)
表1に記載する通り、Alの添加量を2at%(実施例5−8)、4at%(実施例9−12)と変化させて、それぞれ実施例1と同様の方法を用いて、合金インゴット及びスパッタリングターゲットを作製した。その結果、いずれも、金属不純物の合計含有量は1wtppm以下、炭素が1wtppm以下、酸素が1wtppm以下と、ガス成分の濃度を著しく低減することができた。また、実施例1と同様に、スパッタリングを実施し、パーティクル数を計測したところ、Life全体を通して13個以下という良好な結果が得られた。
【0031】
(実施例13−24)
表1に記載する通り、添加元素をMnとし、Mnの添加量を1at%(実施例13−16)、2at%(実施例17−20)、4at%(実施例21−24)と変化させて、それぞれ実施例1と同様の方法を用いて、合金インゴット及びスパッタリングターゲットを作製した。その結果、いずれも、金属不純物の合計含有量は1wtppm以下、炭素が0.6wtppm以下、酸素が2wtppm以下と、ガス成分の濃度を著しく低減することができた。また、実施例1と同様に、スパッタリングを実施し、パーティクル数を計測したところ、Life全体を通して9個以下という良好な結果が得られた。
【0032】
(比較例1)
純度6N以上の高純度Cuを用意し、これを水冷銅ハースに導入して、プラズマアーク溶解法にて、アルゴン雰囲気下でプラズマを照射することにより溶解した。なお、還元ガスの付加は行わなかった。その後、この溶湯を次段の水冷銅ハースに導入し、純度4N以上の高純度Alを1at%となるように添加し、プラズマアーク溶解法にて溶解した。次に、この溶湯を水冷銅モールドに出湯し、真空誘導溶解にて溶解するとともに、モールドの底部から凝固したインゴットを引き抜いた。
【0033】
次に、このインゴットを実施例1と同様の方法、条件によって、スパッタリングターゲットに加工し、その後、これをバッキングプレートに拡散接合により接合した。切り出したインゴットの一部について不純物濃度を調べた結果、ガス成分は炭素が0.2wtppm、酸素が10wtppmと、酸素値について水素を導入したときに比べ、高い結果となった。また、実施例1と同様に、スパッタリングを実施し、パーティクル数を計測したところ、最大30個と時折多数のパーティクルが見られた。
【0034】
(比較例2)
純度6N以上のCu、純度5N以上のAl1at%を用意し、これを水冷銅ハースに導入して、Cu,Al同時にプラズマアーク溶解法にて、水素を4vol%導入したアルゴン雰囲気下でプラズマを照射することにより溶解した。その後、この溶湯を水冷銅モールドに出湯し、真空誘導溶解にて溶解するとともに、モールドの底部から凝固したインゴットを引き抜いた。
【0035】
次に、この合金インゴットを実施例1と同様の方法、条件によって、スパッタリングターゲットに加工し、その後、これをバッキングプレートに拡散接合により接合した。切り出したインゴットの一部について不純物濃度を調べた結果、ガス成分は炭素が0.9wtppm、酸素が0.8wtppmと、Alを後から添加した場合に比べ、微小に高い値であった。また、実施例1と同様に、スパッタリングを実施し、パーティクル数を計測したところ、最大20個と時折多数のパーティクルが見られた。
【0036】
(比較例3)
純度6N以上のCu、純度5N以上のAl1at%を用意し、これを水冷銅ハースに導入して、Cu,Al同時にプラズマアーク溶解法にて、アルゴン雰囲気下でプラズマを照射することにより溶解した。その後、溶解中の雰囲気に水素を4vol%付加して、さらに溶解を行った。次に、これを水冷銅モールドに出湯し、真空誘導溶解にて溶解するとともに、モールドの底部から凝固したインゴットを引き抜いた。
【0037】
次に、この合金インゴットを実施例1と同様の方法、条件によって、スパッタリングターゲットに加工し、その後、これをバッキングプレートに拡散接合により接合した。切り出したインゴットの一部について不純物濃度を調べた結果、ガス成分は炭素が0.9wtppm、酸素が1wtppmと、Alを後から添加した場合に比べ、微小に高い値であった。また、実施例1と同様に、スパッタリングを実施し、パーティクル数を計測したところ、最大19個と時折多数のパーティクルが見られた。
【0038】
(比較例4)
純度6N以上のCu、純度5N以上のAl1at%を用意し、これを水冷銅ハースに導入して、Cu、Al同時に真空に水素を流量400ml/min以上付加した雰囲気で、電子ビーム溶解法にて溶解した。次に、これを水冷銅モールドに出湯し、真空誘導溶解にて溶解するとともに、モールドの底部から凝固したインゴットを引き抜いた。
【0039】
次に、この合金インゴットを実施例1と同様の方法、条件によって、スパッタリングターゲットに加工し、その後、これをバッキングプレートに拡散接合により接合した。切り出したインゴットの一部について不純物濃度を調べた結果、ガス成分は炭素が1wtppm、酸素が3wtppmと、還元ガスを付加した場合に比べ、高い値であった。また、実施例1と同様に、スパッタリングを実施し、パーティクル数を計測したところ、最大23個と時折多数のパーティクルが見られた。
【0040】
(比較例5)
純度6N以上のCuを用意し、これを水冷銅ハースに導入して、真空中、電子ビーム溶解法にて溶解した。なお、還元ガスの付加は行わなかった。その後、この溶湯を次段の水冷銅ハースに導入し、純度4N以上の高純度Alを1at%となるように添加し、電子溶解法にて溶解した。次に、これを水冷銅モールドに出湯し、真空誘導溶解にて溶解するとともに、モールドの底部から凝固したインゴットを引き抜いた。
【0041】
次に、この合金インゴットを実施例1と同様の方法、条件によって、スパッタリングターゲットに加工し、その後、これをバッキングプレートに拡散接合により接合した。切り出したインゴットの一部について不純物濃度を調べた結果、ガス成分は炭素が0.2wtppm、酸素が4wtppmと、還元ガスを付加した場合に比べ、酸素値が高い値であった。また、実施例1と同様に、スパッタリングを実施し、パーティクル数を計測したところ、最大26個と時折多数のパーティクルが見られた。
【0042】
(比較例6−15)
表1に記載する通り、Alの添加量を2at%(比較例6−10)、4at%(比較例11−15)と変化させて、それぞれ比較例1と同様の方法を用いて、合金インゴット及びスパッタリングターゲットを作製した。その結果、酸素が1wtppm以上と、酸素の低減が十分でなかった。また、実施例1と同様に、スパッタリングを実施し、パーティクル数を計測したところ、Life全体を通して最大18個以上と増加していた。
【0043】
(比較例16−30)
表1に記載する通り、添加元素をMnとし、Mnの添加量を1at%(比較例16−20)、2at%(比較例21−25)、4at%(比較例26−30)と変化させて、それぞれ比較例1と同様の方法を用いて、合金インゴット及びスパッタリングターゲットを作製した。その結果、いずれも酸素が3wtppm以上と、酸素の低減が十分でなかった。また、実施例1と同様に、スパッタリングを実施し、パーティクル数を計測したところ、Life全体を通して最大14個以上と増加していた。