特許第6720087号(P6720087)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6720087銅合金スパッタリングターゲット及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6720087
(24)【登録日】2020年6月19日
(45)【発行日】2020年7月8日
(54)【発明の名称】銅合金スパッタリングターゲット及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20200629BHJP
   C22C 9/05 20060101ALI20200629BHJP
   C22C 9/01 20060101ALI20200629BHJP
   C22F 1/08 20060101ALI20200629BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20200629BHJP
【FI】
   C23C14/34 A
   C22C9/05
   C22C9/01
   C22F1/08 A
   !C22F1/00 613
   !C22F1/00 681
   !C22F1/00 683
   !C22F1/00 685Z
   !C22F1/00 686A
   !C22F1/00 691B
   !C22F1/00 694B
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-567959(P2016-567959)
(86)(22)【出願日】2016年5月16日
(86)【国際出願番号】JP2016064442
(87)【国際公開番号】WO2016186070
(87)【国際公開日】20161124
【審査請求日】2019年2月21日
(31)【優先権主張番号】特願2015-103701(P2015-103701)
(32)【優先日】2015年5月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093296
【弁理士】
【氏名又は名称】小越 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100173901
【弁理士】
【氏名又は名称】小越 一輝
(72)【発明者】
【氏名】守井 泰士
(72)【発明者】
【氏名】大月 富男
【審査官】 中田 光祐
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−051351(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/038642(WO,A1)
【文献】 特開平10−330923(JP,A)
【文献】 特開平10−060632(JP,A)
【文献】 特公昭50−015210(JP,B1)
【文献】 特開2015−045084(JP,A)
【文献】 特開2010−031378(JP,A)
【文献】 特開平06−306414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00−14/58
C22C 9/00−9/10
C22F 1/08
H01L 21/285
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子放射化分析による、酸素含有量が0.6wtppm以下、又は、酸素含有量が2wtppm以下、かつ、炭素含有量が0.6wtppm以下である銅合金スパッタリングターゲットの製造方法であって、銅原料を真空又は不活性ガス雰囲気中で溶解し、その後、溶解中の雰囲気に還元ガスを付加し、次いで、合金元素を溶湯に添加して合金化し、得られた合金インゴットをターゲット形状に加工することを特徴とする銅合金スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項2】
還元ガスが、水素又は一酸化炭素からなることを特徴とする請求項1記載の銅合金スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項3】
溶解工程は、プラズマアーク溶解法、電子ビーム溶解法、誘導溶解法により行うことを特徴とする請求項1又は2記載の銅合金スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項4】
それぞれの溶解処理は、異なる坩堝内で溶解を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の銅合金スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項5】
銅を水冷銅坩堝に導入し、アルゴン雰囲気中でプラズマアーク溶解法により溶解し、その後、溶解中の雰囲気に水素ガスを付加し、次いで、溶湯を次段の水冷銅坩堝に導入し、合金元素を添加した後、プラズマアーク溶解法により合金化し、得られたインゴットを鍛造、圧延、熱処理を経て、スパッタリングターゲット素材とし、このターゲット素材を機械加工して、ターゲット形状に加工することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の銅合金スパッタリングターゲットの製造方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅合金スパッタリングターゲット及びその製造方法に関し、特に、半導体集積回路における配線として用いられる銅合金からなる薄膜の形成に適したスパッタリングターゲット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体集積回路の配線材としてAl(比抵抗:3.1μΩ・cm程度)が使われてきたが、配線の微細化に伴い、より抵抗の低いCu(比抵抗:1.7μΩ・cm程度)が実用化されてきた。銅配線の形成プロセスとして、配線層又は配線溝に、TaやTaNなどの拡散バリア層を形成した後、銅を電気メッキすることが多い。この電気メッキを行うために下地層(シード層)として、銅または銅合金をスパッタ成膜することが一般に行われる。
【0003】
しかし、配線幅が0.130nm以下、例えば90nm、65nm、45nm、20nmのような微細配線では、シード層の厚さは、配線幅未満の極薄膜となり、このような極薄膜のシード層を形成する場合、スパッタリングの際に発生するパーティクルが原因となって、良好なシード層を形成できないという問題があった。このようなシード層の形成は重要であり、シード層中にパーティクルが存在すると、断線などの欠陥を形成してしまう。
【0004】
本出願人はこれまで、半導体集積回路の配線形成用として、高純度の銅又は銅合金スパッタリングターゲットに関する発明を提案している(特許文献1〜3参照)。これらは、ボイド、ヒロックス、断線などの欠陥の発生を防止でき、比抵抗が低く、耐EM性や耐酸化性を有することができるが、近年のさらなる超微細配線において、極微量に含まれる不純物に起因したパーティクル等が問題視されるようになった。なお、本願とは、直接の関連性はないが、特許文献4〜6には高純度銅の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2004/083482号
【特許文献2】国際公開第2008/041535号
【特許文献3】特願2013−045838
【特許文献4】特許第4680325号
【特許文献5】特開平8−92662号公報
【特許文献6】特開2000−17345号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、半導体集積回路の配線として用いられる銅合金からなる薄膜形成に好適な銅合金スパッタリングターゲットに関し、スパッタリングの際にパーティクルの発生の少ない銅合金スパッタリングターゲット及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究を行った結果、スパッタリングターゲットの素材としての銅合金インゴットの製造方法を工夫することにより、銅合金スパッタリングターゲットに含まれる酸素、炭素を低減することができ、スパッタリングの際に、この不純物に起因するパーティクルの発生を著しく抑制することができると知見を得た。上記課題を解決するために、本発明は、以下の発明を提供するものである。
1)荷電粒子放射化分析による、酸素含有量が0.6wtppm以下、又は、酸素含有量が2wtppm以下かつ炭素含有量が0.6wtppm以下であることを特徴とする銅合金スパッタリングターゲット。
2)合金元素が、酸素又は炭素との親和力がCuに比べて高い元素の一種以上であることを特徴とする上記1)記載の銅合金スパッタリングターゲット。
3)銅原料を真空又は不活性ガス雰囲気中で溶解し、その後、溶解中の雰囲気に還元ガスを付加し、次に、溶湯に合金元素を添加して合金化し、得られたインゴットをターゲット形状に加工することを特徴とする銅合金スパッタリングターゲットの製造方法。
4)還元ガスが、水素又は一酸化炭素からなることを特徴とする上記3)記載の銅合金スパッタリングターゲットの製造方法。
5)溶解工程は、プラズマアーク溶解法、電子ビーム溶解法、誘導溶解法等により行うことを特徴とする上記3)又は4)に記載の銅合金スパッタリングターゲットの製造方法。
6)それぞれの溶解処理は、異なる坩堝内で溶解を行うことを特徴とする上記3)〜5)のいずれか一に記載の銅合金スパッタリングターゲットの製造方法。
7)銅を水冷銅坩堝に導入し、アルゴン雰囲気中でプラズマアーク溶解法により溶解し、その後、溶解中の雰囲気に水素ガスを付加し、次に、溶湯を次段の水冷銅坩堝に導入し、合金元素を添加した後、プラズマアーク溶解法により合金化し、得られたインゴットを鍛造、圧延、熱処理を経て、スパッタリングターゲット素材とし、このターゲット素材を機械加工して、ターゲット形状に加工することを特徴とする上記3)〜6)のいずれか一に記載の銅合金スパッタリングターゲットの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、銅合金スパッタリングターゲットに含まれる不純物、特に、酸素、炭素を著しく低減することができ、スパッタリングの際のパーティクルの発生を抑制することができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の銅合金スパッタリングターゲットは、荷電粒子放射化分析による、酸素含有量が0.6wtppm以下、又は、酸素含有量が2wtppm以下、かつ、炭素含有量が0.6wtppm以下であることを特徴とする。従来、銅原料を溶融して金属やガス等の不純物を除去し、高純度銅の作製する技術が知られているが、高純度の銅合金を作製しようとする場合、銅に含まれる酸素や炭素が合金元素に移動して、残留することがあった。本発明は、製造方法を工夫することで、銅合金においても極めて効果的に酸素や炭素を低減できるものである。
【0010】
本発明で、荷電粒子放射化分析とは、化学分析の一方法であり、試料を重陽子、中性子、γ線などで照射して放射化させ、その放射性同位元素をトレースすることによって、試料中に含まれる各種の定性や定量を行うものである。本発明では、銅合金スパッタリングターゲット中に含まれる酸素や炭素を極めて低減することを可能とするものであり、これにより、スパッタリングの際のパーティクルの発生を効果的に抑制することが可能となる。なお、この分析方法による定量下限は、酸素:0.1wtppm、炭素:0.1wtppmである。
【0011】
本発明の銅合金は高純度であることはいうまでもないが、純度は99.999wt%(5N)以上であることが好ましい。純度は、グロー放電質量分析法(GDMS分析)を用いて、ターゲットに含有する銅及び合金元素を除く金属不純物の含有量を測定し、差数法(100wt%から金属不純物を引いた分を純度wt%とする)により求める。不純物は、Ag、Al、Ca、Cr、Fe、K、Na、Ni、P、S、Th、Uとする。
【0012】
本発明の銅合金スパッタリングターゲットを構成する合金元素としては、酸素又は炭素との親和力が銅に比べて高い元素のいずれか一種以上であることが好ましい。例えば、
Al、Mn、Co、Ni、Mg、Ti、Si、In、Sn、Ge、Bi、B、Cr、Nd、Zr、La、Er、Gd、Dy、Yb、Lu、Hf、Taが挙げられる。これらの合金元素は、半導体素子の配線の特性を改善することができる公知の材料であり、特性改善のために、複数の材料を組み合わせて添加することも可能である。これらの添加量は要求される特性によっても異なるが、例えば、Al:0.1〜15.0at%、Mn:0.1〜30.0at%、とするのが好ましい。
【0013】
次に、本発明の銅合金スパッタリングターゲットの製造方法について説明する。まず、原料となる銅及び合金材料(Al、Mn等)を用意する。これらの原料は、できるだけ高純度のものを使用するのが好ましく、銅は、純度6N以上、合金元素は純度4N以上のものを使用することが有効である。次に、これらの原料を所望の組成となるように秤量した後、銅原料のみを水冷銅坩堝(ハースを含む)に導入する。坩堝材として、アルミナ、マグネシア、黒鉛などの耐火物があるが、溶湯中に不純物として混入することがあるため、被溶解材と同質の銅を用いるのがよい。これにより、坩堝材が溶湯中に溶け出しても、不純物となることはない。
【0014】
次に、これを真空又は不活性ガス(Ar、Heなど)雰囲気中で銅を溶解する。このとき、不活性ガス雰囲気中で溶解することで、成分の揮発を抑えることができる。溶解は、プラズマアーク溶解法、電子ビーム溶解法、誘導溶解法等に用いることができる。その後、この溶解途中の雰囲気中に還元ガス(水素、一酸化炭素など)を付加する。これにより、銅に含まれる酸素を効果的に除去することができる。導入するガス量としては、プラズマ溶解法の場合、不活性ガス中に還元ガスを0.1〜20vol%付加するのが好ましい。電子ビーム溶解法の場合、真空中に流量400ml/min以上で還元ガスを付加することが好ましい。
【0015】
ここで、還元ガスの付加は、真空又は不活性ガス雰囲気中で溶解して、銅に含まれる酸素と炭素を一酸化炭素として十分に脱離させた後に行うことが好ましい。炭素を十分に除去した後、余分な酸素を還元ガスで、水蒸気(HO)や二酸化炭素(CO)として脱離させることができ、不純物として銅に含まれる炭素及び酸素を極めて効果的に低減することが可能となる。もちろん、銅を溶解する比較的初期の(炭素を十分に除去していない)段階で還元ガスを付加することを制限するものではない。
【0016】
次に、得られた銅の溶湯を次段の水冷銅坩堝(ハースを含む)に導入し、合金元素を添加し、その後、プラズマアーク溶解法、電子ビーム溶解法、誘導溶解法等に用いて、銅合金とする。特に重要なことは、酸素や炭素を除去した後の銅の溶湯に対して合金元素を添加し、溶解することである。脱ガスを行う前の銅に合金元素を添加して溶解すると、銅に含まれていた酸素や炭素が合金元素に取り込まれて、酸化物や炭化物を形成してしまい、溶解後もこれらの不純物が合金インゴット中に残留するためである。したがって、合金元素の添加のタイミングは非常に重要である。
【0017】
次に、銅合金の溶湯を水冷銅モールドに導入し、誘導溶解法等により溶解するとともに、モールドの底部から凝固したインゴットを引き抜く。その後、製造したインゴットの表面層を除去し、塑性加工、熱処理工程を経て、スパッタリングターゲット素材とする。さらに、このターゲット素材を機械加工により所定のターゲット形状に加工して、銅合金スパッタリングターゲットとすることができる。
【実施例】
【0018】
次に、実施例に基づいて本発明を説明する。以下に示す実施例は、理解を容易にするためのものであり、これらの実施例によって本発明を制限するものではない。すなわち、本発明の技術思想に基づく変形及び他の実施例は、当然本発明に含まれる。
【0019】
(実施例1)
純度6N以上のCuを用意し、これを水冷銅ハースに導入して、プラズマアーク溶解法にて、水素を4vol%導入したアルゴン雰囲気下、プラズマを照射して溶解した。その後、この溶湯を水冷銅ハースに導入し、純度4N以上のAlを1at%となるように添加し、プラズマアーク溶解法にて溶解した。次に、銅合金の溶湯を水冷銅モールドに出湯し、真空誘導溶解にて溶解するとともに、モールドの底部から凝固したインゴットを引き抜いた。
【0020】
次に、このインゴットを直径180mm×厚さ160mmとした後、700℃で熱間鍛造し、さらに冷間圧延で直径460mm×厚さ24.5mmまで圧延した。その後、400℃で熱処理した後、急冷して圧延板を作製した。これを機械加工により、直径440mm、厚さ16.5mmのスパッタリングターゲットを製造した。その後、これをバッキングプレートに拡散接合により接合した。
【0021】
切り出したインゴットの一部について不純物濃度を調べた。なお、金属成分についてはGDMS法を用い、ガス成分(酸素、炭素)については荷電粒子放射化分析を用いた。その結果、金属不純物の合計含有量は1wtppm以下であり、ガス成分は炭素が0.7wtppm、酸素が0.3wtppmと、特に酸素のガス成分の濃度を著しく低減することができた。
【0022】
ターゲットについて、100kWhまでスパッタリングを行い、投入電力:38kWにて12インチのシリコン基板上に5秒間成膜した。成膜した膜について、0.088μm以上のサイズのパーティクル数を計測したところ、8個と良好な結果であった。その後、200、 300、 500、 800kWhのLife位置についてもそれぞれ基板上のパーティクル数を計測したところ、Life全体を通して10個以下と良好な結果が得られた。
【0023】
(実施例2)
純度6N以上のCuを用意し、これを水冷銅ハースに導入して、プラズマアーク溶解法にて、アルゴン雰囲気下でプラズマを照射して溶解した。その後、溶解中の雰囲気に水素を4vol%付加して、さらに溶解を行った。その後、この溶湯を次段の水冷銅ハースに導入し、純度4N以上のAlを1at%となるように添加し、プラズマアーク溶解法にて溶解した。次に、これを水冷銅モールドに出湯し、真空誘導溶解にて溶解するともに、モールドの底部から凝固したインゴットを引き抜いた。
【0024】
次に、この合金インゴットを実施例1と同様の方法、条件によって、スパッタリングターゲットに加工し、その後、これをバッキングプレートに拡散接合により接合した。切り出したインゴットの一部について不純物濃度を調べた結果、金属不純物の合計含有量は1wtppm以下であり、ガス成分は炭素が0.2wtppm、酸素が0.3wtppmと、炭素・酸素両方のガス成分の濃度を著しく低減することができた。また、実施例1と同様に、スパッタリングを実施し、パーティクル数を計測したところ、Life全体を通して8個以下と良好な結果が得られた。
【0025】
(実施例3)
純度6N以上のCuを用意し、これを水冷銅ハースに導入して、真空に水素を流量400ml/min以上付加した雰囲気で、電子ビーム溶解法にて溶解した。その後、この溶湯を次段の水冷銅ハースに導入し、純度4N以上の高純度Alを1at%となるように添加し、電子溶解法にて溶解した。次に、これを水冷銅モールドに出湯し、真空誘導溶解にて、溶解するとともに、モールドの底部から凝固したインゴットを引き抜いた。
【0026】
次に、この合金インゴットを実施例1と同様の方法、条件によって、スパッタリングターゲットに加工し、その後、これをバッキングプレートに拡散接合により接合した。切り出したインゴットの一部について不純物濃度を調べた結果、金属不純物の合計含有量は1wtppm以下であり、ガス成分は炭素が0.6wtppm、酸素が0.8wtppmと、特に炭素のガス成分の濃度を著しく低減することができた。また、実施例1と同様に、スパッタリングを実施し、パーティクル数を計測したところ、Life全体を通して12個以下という結果が得られた。以上の結果を表1に示す。
【0027】
(実施例4)
純度6N以上のCuを用意し、これを水冷銅ハースに導入して、真空中、電子ビーム溶解法にて溶解した。その後、溶解中の雰囲気に水素を流量400ml/min以上付加して、さらに溶解を行った。その後、この溶湯を次段の水冷銅ハースに導入し、純度4N以上の高純度Alを1at%となるように添加し、電子溶解法にて溶解した。次に、これを水冷銅モールドに出湯し、真空誘導溶解にて、溶解するとともに、モールドの底部から凝固したインゴットを引き抜いた。
【0028】
次に、この合金インゴットを実施例1と同様の方法、条件によって、スパッタリングターゲットに加工し、その後、これをバッキングプレートに拡散接合により接合した。切り出したインゴットの一部について不純物濃度を調べた結果、金属不純物の合計含有量は1wtppm以下であり、ガス成分は炭素が0.2wtppm、酸素が0.9wtppmと、特に炭素のガス成分の濃度を著しく低減することができた。また、実施例1と同様に、スパッタリングを実施し、パーティクル数を計測したところ、Life全体を通して10個以下という結果が得られた。以上の結果を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
(実施例5−12)
表1に記載する通り、Alの添加量を2at%(実施例5−8)、4at%(実施例9−12)と変化させて、それぞれ実施例1と同様の方法を用いて、合金インゴット及びスパッタリングターゲットを作製した。その結果、いずれも、金属不純物の合計含有量は1wtppm以下、炭素が1wtppm以下、酸素が1wtppm以下と、ガス成分の濃度を著しく低減することができた。また、実施例1と同様に、スパッタリングを実施し、パーティクル数を計測したところ、Life全体を通して13個以下という良好な結果が得られた。
【0031】
(実施例13−24)
表1に記載する通り、添加元素をMnとし、Mnの添加量を1at%(実施例13−16)、2at%(実施例17−20)、4at%(実施例21−24)と変化させて、それぞれ実施例1と同様の方法を用いて、合金インゴット及びスパッタリングターゲットを作製した。その結果、いずれも、金属不純物の合計含有量は1wtppm以下、炭素が0.6wtppm以下、酸素が2wtppm以下と、ガス成分の濃度を著しく低減することができた。また、実施例1と同様に、スパッタリングを実施し、パーティクル数を計測したところ、Life全体を通して9個以下という良好な結果が得られた。
【0032】
(比較例1)
純度6N以上の高純度Cuを用意し、これを水冷銅ハースに導入して、プラズマアーク溶解法にて、アルゴン雰囲気下でプラズマを照射することにより溶解した。なお、還元ガスの付加は行わなかった。その後、この溶湯を次段の水冷銅ハースに導入し、純度4N以上の高純度Alを1at%となるように添加し、プラズマアーク溶解法にて溶解した。次に、この溶湯を水冷銅モールドに出湯し、真空誘導溶解にて溶解するとともに、モールドの底部から凝固したインゴットを引き抜いた。
【0033】
次に、このインゴットを実施例1と同様の方法、条件によって、スパッタリングターゲットに加工し、その後、これをバッキングプレートに拡散接合により接合した。切り出したインゴットの一部について不純物濃度を調べた結果、ガス成分は炭素が0.2wtppm、酸素が10wtppmと、酸素値について水素を導入したときに比べ、高い結果となった。また、実施例1と同様に、スパッタリングを実施し、パーティクル数を計測したところ、最大30個と時折多数のパーティクルが見られた。
【0034】
(比較例2)
純度6N以上のCu、純度5N以上のAl1at%を用意し、これを水冷銅ハースに導入して、Cu,Al同時にプラズマアーク溶解法にて、水素を4vol%導入したアルゴン雰囲気下でプラズマを照射することにより溶解した。その後、この溶湯を水冷銅モールドに出湯し、真空誘導溶解にて溶解するとともに、モールドの底部から凝固したインゴットを引き抜いた。
【0035】
次に、この合金インゴットを実施例1と同様の方法、条件によって、スパッタリングターゲットに加工し、その後、これをバッキングプレートに拡散接合により接合した。切り出したインゴットの一部について不純物濃度を調べた結果、ガス成分は炭素が0.9wtppm、酸素が0.8wtppmと、Alを後から添加した場合に比べ、微小に高い値であった。また、実施例1と同様に、スパッタリングを実施し、パーティクル数を計測したところ、最大20個と時折多数のパーティクルが見られた。
【0036】
(比較例3)
純度6N以上のCu、純度5N以上のAl1at%を用意し、これを水冷銅ハースに導入して、Cu,Al同時にプラズマアーク溶解法にて、アルゴン雰囲気下でプラズマを照射することにより溶解した。その後、溶解中の雰囲気に水素を4vol%付加して、さらに溶解を行った。次に、これを水冷銅モールドに出湯し、真空誘導溶解にて溶解するとともに、モールドの底部から凝固したインゴットを引き抜いた。
【0037】
次に、この合金インゴットを実施例1と同様の方法、条件によって、スパッタリングターゲットに加工し、その後、これをバッキングプレートに拡散接合により接合した。切り出したインゴットの一部について不純物濃度を調べた結果、ガス成分は炭素が0.9wtppm、酸素が1wtppmと、Alを後から添加した場合に比べ、微小に高い値であった。また、実施例1と同様に、スパッタリングを実施し、パーティクル数を計測したところ、最大19個と時折多数のパーティクルが見られた。
【0038】
(比較例4)
純度6N以上のCu、純度5N以上のAl1at%を用意し、これを水冷銅ハースに導入して、Cu、Al同時に真空に水素を流量400ml/min以上付加した雰囲気で、電子ビーム溶解法にて溶解した。次に、これを水冷銅モールドに出湯し、真空誘導溶解にて溶解するとともに、モールドの底部から凝固したインゴットを引き抜いた。
【0039】
次に、この合金インゴットを実施例1と同様の方法、条件によって、スパッタリングターゲットに加工し、その後、これをバッキングプレートに拡散接合により接合した。切り出したインゴットの一部について不純物濃度を調べた結果、ガス成分は炭素が1wtppm、酸素が3wtppmと、還元ガスを付加した場合に比べ、高い値であった。また、実施例1と同様に、スパッタリングを実施し、パーティクル数を計測したところ、最大23個と時折多数のパーティクルが見られた。
【0040】
(比較例5)
純度6N以上のCuを用意し、これを水冷銅ハースに導入して、真空中、電子ビーム溶解法にて溶解した。なお、還元ガスの付加は行わなかった。その後、この溶湯を次段の水冷銅ハースに導入し、純度4N以上の高純度Alを1at%となるように添加し、電子溶解法にて溶解した。次に、これを水冷銅モールドに出湯し、真空誘導溶解にて溶解するとともに、モールドの底部から凝固したインゴットを引き抜いた。
【0041】
次に、この合金インゴットを実施例1と同様の方法、条件によって、スパッタリングターゲットに加工し、その後、これをバッキングプレートに拡散接合により接合した。切り出したインゴットの一部について不純物濃度を調べた結果、ガス成分は炭素が0.2wtppm、酸素が4wtppmと、還元ガスを付加した場合に比べ、酸素値が高い値であった。また、実施例1と同様に、スパッタリングを実施し、パーティクル数を計測したところ、最大26個と時折多数のパーティクルが見られた。
【0042】
(比較例6−15)
表1に記載する通り、Alの添加量を2at%(比較例6−10)、4at%(比較例11−15)と変化させて、それぞれ比較例1と同様の方法を用いて、合金インゴット及びスパッタリングターゲットを作製した。その結果、酸素が1wtppm以上と、酸素の低減が十分でなかった。また、実施例1と同様に、スパッタリングを実施し、パーティクル数を計測したところ、Life全体を通して最大18個以上と増加していた。
【0043】
(比較例16−30)
表1に記載する通り、添加元素をMnとし、Mnの添加量を1at%(比較例16−20)、2at%(比較例21−25)、4at%(比較例26−30)と変化させて、それぞれ比較例1と同様の方法を用いて、合金インゴット及びスパッタリングターゲットを作製した。その結果、いずれも酸素が3wtppm以上と、酸素の低減が十分でなかった。また、実施例1と同様に、スパッタリングを実施し、パーティクル数を計測したところ、Life全体を通して最大14個以上と増加していた。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、酸素や炭素の極めて少ない銅合金スパッタリングターゲットを製造することができ、このようなターゲットをスパッタリングした場合、パーティクルの発生を著しく抑制することができる。本発明によって製造される銅合金スパッタリングターゲットは、特に半導体集積回路の配線膜形成に有用である。