(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記混合ユニットにおける円筒体の周速度は、前記搬送ユニットにより前記吸収性繊維の集合体、及び吸水性樹脂を前記混合ユニットへ搬送する搬送速度よりも大きい、請求項1から7のいずれかに記載の吸収体の製造装置。
前記チャンバー部の内部空間は、前記吸収性繊維及び前記吸水性樹脂を下方へと案内する少なくとも1つの案内部材を備えている、請求項1から8のいずれかに記載の吸収体の製造装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る吸収体の製造装置の一実施形態について説明する。この製造装置は、主として試験用の吸収体を製造するものである。本実施形態においては、吸収性繊維の集合体近傍に吸水性樹脂を散置した材料体を準備し、ここから、この製造装置において吸収性繊維と吸水性樹脂とが均一に混合された吸収体を製造する。したがって、本実施形態では、製造前においては、吸収性繊維の集合体に吸水性樹脂を単に散置しただけのものを材料体と称し、製造装置によって吸収性繊維と吸水性樹脂とを混合した結果得られたものを吸収体と称することとする。但し、上記「均一に混合された」との文言は、あくまで、吸収性繊維と吸水性樹脂とが充分に混合された状態を示す文言であり、必ずしも吸収体の全ての部位で、吸水性樹脂と吸収性繊維の存在割合が一定である必要は無い。例えば、吸収体の下方と上方とで吸水性樹脂と吸収性繊維の存在割合が異なる吸収体でもよい。以下では、まず、吸収体及び材料体を構成する材料について説明し、その後、吸収体の製造装置について説明する。
【0020】
<1.吸収体及び材料体>
上記のように、本実施形態に係る吸収体及び材料体は、吸収性繊維と、吸水性樹脂とを備えている。以下、これらについて詳述する。
【0021】
<1−1.吸収性繊維>
吸収性繊維は、例えば、細かく裁断・解砕された親水性繊維を用いることができる。親水性繊維としては、例えば、木材から得られる綿状パルプ、メカニカルパルプ、ケミカルパルプ、セミケミカルパルプ等のセルロース繊維;レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維;親水化処理されたポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン等の合成樹脂からなる繊維等が挙げられる。そして、吸収性繊維の集合体とは、多数の吸収性繊維を積層させたり、交絡させたりするなどして厚みのある形状、例えば、矩形状、円形状、多角形状としたものである。このような形状のものを1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
<1−2.吸水性樹脂>
吸水性樹脂としては、公知の吸水性樹脂を使用できる。吸水性樹脂の具体例としては、澱粉−アクリロニトリルグラフト共重合体の加水分解物、澱粉−アクリル酸グラフト重合体の中和物、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体のケン化物、アクリル酸部分中和物重合体の架橋物等の吸水性樹脂などが挙げられる。これらのうち、供給能力やコストなどの工業的な観点から、アクリル酸部分中和物重合体の架橋物が好ましい。吸水性樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
アクリル酸部分中和物重合体の架橋物を製造する方法としては、逆相懸濁重合法、及び水溶液重合法が挙げられる。また、アクリル酸部分中和物重合体の架橋物の中和度としては、吸水性樹脂の浸透圧を高め、吸水能力を高める観点から、50モル%以上が好ましく、70〜90モル%がより好ましい。
【0024】
また、使用される吸水性樹脂は、荷重下での吸収能力を高めるために表面近傍が架橋されているものが好ましい。
【0025】
上記吸水性樹脂は通常粉体状で市販されており、その形状は特に限定されず、例えば球状、不定形破砕状、顆粒状、鱗片状、短棒状およびこれらの凝集物等が挙げられる。
【0026】
吸水性樹脂の中位粒子径としては、吸収体の製造時の操作性の観点から200〜600μmが好ましく、250〜500μmがより好ましく、300〜450μmがさらに好ましい。なお、本発明において、吸水性樹脂の中位粒子径は、以下の測定方法により得られる値である。
【0027】
(中位粒子径の測定)
吸水性樹脂の粉末50gに、滑剤として、0.25gの非晶質シリカ(デグサジャパン(株)、Siperant 200)を混合する。次に、JIS標準篩を上から、目開き850μmの篩、目開き600μmの篩、目開き500μmの篩、目開き425μmの篩、目開き300μmの篩、目開き250μmの篩、目開き150μmの篩及び受け皿の順に組み合わせる。次に、組み合わせた最上の篩に、前記混合物を入れ、ロータップ式振とう器を用いて20分間振とうさせて分級する。分級後、各篩上に残った混合物の質量を全量に対する質量百分率として計算し、粒子径の大きい方から順に積算することにより、篩の目開きと篩上に残った混合物の質量百分率の積算値との関係を対数確率紙にプロットする。確率紙上のプロットを直線で結ぶことにより、積算質量百分率50質量%に相当する粒子径を中位粒子径とする。
【0028】
吸収体における吸水性樹脂の含有量としては、特に制限されないが、本発明にかかる吸収体が、おむつ等の吸収性物品に使用された際にも十分な液体吸収性能を得る観点から、吸収体の1平米あたり10〜1000g(即ち10〜1000g/m
2)が好ましく、20〜900g/m
2がより好ましく、30〜700g/m
2がさらに好ましい。吸収体としての液体吸収性能を十分に発揮させ、特に液体の逆戻りを抑制する観点から、当該含有量は10g/m
2以上が好ましく、液体の浸透性を改善する観点から、当該合計含有量は1000g/m
2以下が好ましい。
【0029】
本発明で作製できる吸収体における吸水性樹脂の配合割合は好ましくは5〜90質量%であり、より好ましくは10〜80質量%であり、さらに好ましくは15〜70質量%である。5質量%未満であると吸水性樹脂が少なすぎて評価方法として適切でない。一方、90質量%を超える場合、吸収性繊維が少なすぎることで吸収体から吸水性樹脂の脱離が起こりやすくなり好ましくない。
【0030】
<1−3.材料体の態様>
材料体は、種々の態様とすることができる。
(i) 吸収性繊維の集合体の上面に、吸水性樹脂を散置する。
(ii) 吸収性繊維の集合体の下面に、吸水性樹脂を散置する。
(iii) 吸収性繊維の集合体の上面に、吸水性樹脂を散置し、さらにその上に、吸収性繊維の集合体を配置する。
(iv) (iii)を複数積層する。つまり、吸収性繊維の集合体と、吸水性樹脂を交互に積層する。
(v) 吸収性繊維の集合体と吸水性樹脂との混合体を用いる。この混合体は、市販の吸収体を購入して得ること、市販の紙おむつから吸収体を取り出して得ることができる。あるいは、本発明の製造方法により吸収体を製造して得ることができる。
(vi) 後述する間隙に材料体を導入する方向(搬送方向)において、吸収性繊維の集合体の上流側(搬送方向の後ろ側)に吸水性樹脂を配置し、ベルトコンベアなどの搬送手段で間隙に向かって搬送する。
(vii)吸収性繊維の集合体の下流側(搬送方向の前側)に吸水性樹脂を配置し、ベルトコンベアなどの搬送手段で間隙に向かって搬送する。
【0031】
上記(i)〜(v)は吸収性繊維と吸水性樹脂とが接した状態であるため、後述する間隙に吸収性繊維と吸水性樹脂とが同時に導入されるが、(vi)及び(vii)は吸収性繊維と吸水性樹脂とが異なるタイミングで間隙に導入される。すなわち、吸水性樹脂が先に間隙に導入された後、吸水性樹脂が導入されるか、あるいは吸水性樹脂が先に間隙に導入された後、吸収性繊維が間隙に導入される。また、(vi)及び(vii)をそれぞれ繰り返したり、(i)〜(vii) を適宜組み合わせることもできる。
【0032】
また上記(vi)によれば吸収体の上方に吸水性樹脂を多く分散させることができ、(vii)によれば吸収体の下方に吸水性樹脂を多く分散させることが可能である。また上記(v)によれば既に作成された吸収体における吸収性繊維と吸水性樹脂との混合比や混合状態を変更すること可能である。
【0033】
<2.吸収体の製造装置>
続いて、吸収体の製造装置について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、この製造装置の概略構成を示す正面図、
図2は
図1の平面図である。以下では、便宜上、
図1及び
図2に示す向きを基準に説明を行うが、本発明に係る装置は、この向きによって限定されるものではない。
【0034】
図1及び
図2に示すように、この製造装置は、直方体状に形成された筐体1を備えており、この筐体1には、材料体100を搬送する搬送ユニット2、材料体100の吸収性繊維と吸水性樹脂とを混合する混合ユニット3、混合された吸収性繊維と吸水性樹脂が落下する内部空間40を有するチャンバー部4、落下した吸収性繊維と吸水性樹脂が積層される積層部5、及びチャンバー部4の内部空間40の空気を吸引する吸引ユニット6、が設けられている。以下、各パーツを詳細に説明する。
【0035】
まず、搬送ユニット2について説明する。搬送ユニット2は、筐体1の上面に設けられており、筐体1の上面の右側に配置されたベルトコンベアで構成されている。すなわち、搬送ユニット2は、筐体上面の右側に配置され、前後方向に延びる従動ローラ21と、筐体上面の中央付近で、前後方向に延びる駆動ローラ22と、これらのローラ21,22に掛け渡される搬送ベルト23と、を備え、駆動ローラは第1モータ(図示省略)によって回転駆動されるようになっている。この構成により、搬送ベルト23上に配置された材料体100が左側に向かって移動する(
図1の矢印A参照)。また、この搬送ユニット2には、後述するように、搬送ベルト23によって搬送される材料体100を、混合ユニット3に案内する案内部7が設けられている。なお、搬送ベルト23の速度は、例えば、0.1〜20.0mm/secとすることができる。
【0036】
次に、混合ユニット3について説明する。混合ユニット3は、筐体1の上端部の左側に配置されており、筐体1に回転可能に支持された円筒体31と、この円筒体31を駆動する第2モータ(駆動部)32と、円筒体31の外周面と間に材料体100が通過する間隙を形成するための間隙形成部33と、を備えている。円筒体31は、表面に凹凸が形成されるとともに、前後方向に延びる回転軸周りに回転するようになっている。そして、円筒体31の外周面と、上述した搬送ユニット2の左端部とが近接している。したがって、搬送ユニット2上を左側へ搬送された材料体100が、次に説明する案内部7によって、円筒体31の外周面に案内されるようになっている。
【0037】
案内部7は、材料体100を押圧する断面円形の棒状の押圧部材71を備えている。この押圧部材71は、搬送ユニット2の左端部の上方を通過するように、前後方向に延びるように配置されている。回転可能な押圧部材71の両端部には棒状の支持部材72がそれぞれ取り付けられている。各支持部材72は、押圧部材71と直行するように延び、搬送ベルト23を挟むように配置されている。そして、各支持部材72の先端部が筐体1の上面に対し、回転自在に取り付けられている。これにより、押圧部材71は、支持部材72の先端部を中心として揺動自在となっている(
図1の矢印B参照)。また、押圧部材71と搬送ベルト23のとの間には間隙が形成されており、この間隙を材料体100が通過するようになっている。この間隙は、材料体100の厚みにもよるが、材料体100の厚みよりも小さく、例えば、0〜50mm程度とすることができる。
【0038】
押圧部材71の両端部と、筐体1の上面との間には、バネ部材73がそれぞれ取り付けられており、これらバネ部材73によって、押圧部材71は、下向きに付勢されている。すなわち、押圧部材71と搬送ベルト23との間の間隙よりも大きい厚みの材料体100が通過する場合には、押圧部材71がバネ部材73に抗して上方に押上げられ、材料体100が通過する。但し、バネ部材73によって、押圧部材71ができるだけ押し上げられないようにすることで、混合ユニット3に導入される材料体100の厚みができるだけ小さくなるようにしている。
【0039】
さらに、後方に配置された支持部材72の先端部を前後方向に貫通するように支持軸74が挿通されており、この支持軸74の前端部には、搬送ベルト23によって回転されるローラ75が取付けられている。このローラ75は、搬送ベルト23との摩擦により、搬送ベルト23の移動に伴って、支持軸74とともに回転するようになっている。一方、支持軸74の後端部と、押圧部材71の軸方向の後端部との間には、ベルト76が掛け渡されており、支持軸74が回転すると、押圧部材71も回転するようになっている。したがって、押圧部材71は、搬送ベルト23の移動に同期して回転するようになっており、これにより、材料体100は、押圧部材71の回転により混合ユニット3側へ押し出される。
【0040】
混合ユニット3の説明を続ける。円筒体31の左側には上述した第2モータ32が配置されており、この第2モータ32の回転軸と、円筒体31の回転軸とには、ベルト35が掛け渡されており、ベルト伝動によって円筒体31は、左向きに回転される(
図1の矢印C参照)。円筒体31の回転速度は、例えば、1000〜5000r/minとすることができる。
【0041】
次に、間隙形成部33について説明する。間隙形成部33は、円筒体31の両側よりも外側に配置され、円筒体31よりもやや外径が大きい一対の円形状のフレーム331を備えている。そして、これらフレーム331の外周面に、円筒体31を覆うように、断面円弧状のカバー部材332と網目部材(板状材)333とが着脱自在に取り付けられている。カバー部材332は、押圧部材71付近から円筒体31の上方を通過し、円筒体31の左端部付近まで延びる断面円弧上の板材によって形成されている。また、網目部材333は、金属などで網目状に、多数の小孔が形成された薄板材であり、カバー部材332の左端部から円筒体31の下方を通過し、搬送ユニットの近傍まで延びるように、円弧状に形成されている。
【0042】
上記のように、フレーム331は、円筒体31の外径よりもやや大きいため、このフレーム331上に取付けられるカバー部材332及び網目部材333と円筒体31の外周面との間には間隙が形成され、この間隙を材料体100が通過する。但し、フレームを調整することで、カバー部材332と円筒体31との間隙よりも、網目部材333と円筒体31の間隙を小さくすることが好ましく、例えば、カバー部材332と円筒体31との間隙を2mm、網目部材333と円筒体31の間隙を1mmとすることができる。
【0043】
次に、チャンバー部4について説明する。チャンバー部4は、正面視台形状のフロントパネル41及びリアパネル(図示所略)と、これらフロントパネル41及びリアパネルの両側の傾斜辺を互いに連結する一対のサイドパネル43とで構成されており、これらによって囲まれる内部空間40を有している。この内部空間40は、上端及び下端が開放され、下方に行くにしたがって、左右方向に内部の幅が大きくなるように形成されている。内部空間40の上端開口は、円筒体31の直下に配置されており、網目部材333を介して、円筒体31の周囲の間隙と、内部空間40とが連通するようになっている。
【0044】
さらに、内部空間40には、複数のガイド部材が配置されている。ガイド部材は、種々の構成が可能であるが、本実施形態では、3つのガイド部材が設けられている。すなわち、内部空間40の上端付近で、左側に配置された板状の第1ガイド部材44と、この第1ガイド部材44のやや下側で、内部空間40の右側に配置された板状の第2ガイド部材45と、内部空間40の中央付近で、前後方向に延びる棒状の第3ガイド部材46と、が設けられている。これら3つのガイド部材44〜46は、いずれもフロントパネル41とリアパネル(図示省略)とを連結するように前後方向に延びている。
【0045】
第1ガイド部材44は、下方に向かうように延び、混合された吸収性繊維と吸水性樹脂が内部空間40の左側に偏らないように、右側へガイドするようになっている。第2ガイド部材45は、下側へ延び、第1ガイド部材44によって右側へガイドされた吸収性繊維と吸水性樹脂が内部空間40の右端部へ行きすぎないように、左側へガイドするようになっている。また、第3ガイド部材46は、落下する吸収性繊維と吸水性樹脂、特に、吸水性樹脂を内部空間40の左右へ均等に落下するようにガイドする。
【0046】
なお、チャンバー部4は、上下方向の長さが10cm〜100cm、横方向の最大長さが10cm〜100cmであることが好ましく、上下方向の長さが25cm〜75cm、横方向の最大が20cm〜80cmであることがさらに好ましい。横方向の最大長さとは、例えば、本実施形態ではあれば、
図1の正面視における下端部の左右方向の長さであるが、チャンバー部4のいずれかの横方向の最大長さがこの範囲であればよい。
【0047】
次に、積層部5について、
図3を参照しつつ説明する。積層部5は、チャンバー部4の下方に、その下端開口を塞ぐように配置されており、落下した吸収性繊維と吸水性樹脂が積層される部位である。具体的には、
図3に示すように、チャンバー部4の下端開口と同様の大きさに形成されている矩形状の支持枠51と、この支持枠51に嵌め込まれ、網目状の多数の小孔が形成された板状の空気流通部材52と、この空気流通部材52上に着脱自在に配置される枠部材53とを備えており、枠部材53によって囲まれる凹部531に、吸収性繊維と吸水性樹脂が積層される。すなわち、枠部材53の形状によって所望の吸収体が形成される。そして、この積層部5は、チャンバー部4の下方において、手前に引き出せるようになっている。すなわち、支持枠51の前部にハンドル54が取り付けられており、このハンドル54を引くことで、積層部5が筐体1から取り出せるようになっている。なお、積層部5の挿入方向の奥側と手前側とを反転できるようにハンドル54は着脱可能な構造が好ましい。
【0048】
そして、この積層部5の下方には、吸引ユニット6が配置されている。吸引ユニット6は、積層部5を下方から吸引する吸引口と公知の掃除機や減圧ポンプのような吸引装置などで構成され、チャンバー部4の内部空間40の空気を下方に吸引するようになっている。すなわち、内部空間40の空気は、積層部5の空気流通部材52を介して下方に吸引されるようになっている。その吸引により生じる負圧は、チャンバー部4内に差圧計を設置することでモニターすることができ、また、吸引ユニット6に圧調整用の弁を設置することで、一定の負圧条件で吸収体を作成できるようになる。
【0049】
作成する評価用吸収体の大きさに合わせて、上記搬送ユニット2、混合ユニット3、チャンバー部4、積層部5、吸引ユニット6の大きさが調整されており、平面方向には、吸収性繊維と吸水性樹脂が均一な分布をもつ吸収体が作成できるようになっている。作成できる吸収体の大きさは、積層部5の凹部531の大きさで決まることになり、その大きさは15cm×10cm〜80cm×30cmの範囲内であることが好ましく、20cm×10cm〜60cm×20cmの範囲内であることがより好ましい。15cm×10cm以下の吸収体では、評価用吸収体として小さすぎ、吸液できず漏れる量が増えすぎて評価に差異が生じにくくなるため、試験方法としての需要が無く、また、80cm×30cm以上になると、装置の仕組みとして吸収体短軸方向への均一散布が困難になってくることから、評価用吸収体として好ましくない。
【0050】
なお、上記空気流通部材52上には、ティッシュペーパーなどの通気性のあるシート部材を配置し、この上に吸収体を積層させることが好ましい。
【0051】
<3.製造装置の動作>
次に、上記のように、構成された製造装置の動作について説明する。まず、積層部5の空気流通部材52上に、通気性の高いシート部材(例えばティッシュや不織布)(図示省略)を配置する。これは、積層される吸収性繊維と吸水性樹脂が、空気流通部材52の細孔から抜け落ちるのを防止するためである。なお、吸引装置の電源を入れた際には上記シート部材がずれたりしないことを確認する。続いて、材料体100を準備する。材料体100の態様は、上述したように、種々のものがあるが、ここでは一例として
図1に示すように、搬送ユニット2の搬送ベルト23上に、略矩形状に形成された吸収性繊維の集合体101を配置し、その上に、ベルトの進行方向に対し左右均等に吸水性樹脂102を散置する。但し、吸収性繊維の集合体101は、上記のように略矩形状以外の種々の形状にすることができる。
【0052】
次に、第2モータ32及び吸引装置を駆動にした後、第1モータを駆動にする。これにより、搬送ベルト23上の材料体100は、左側に移動し、押圧部材71に押圧されつつ、混合ユニット3へ案内される。混合ユニット3の円筒体31は高速で回転しているため、混合ユニット3内に導入された材料体100は順に切り離されながら、間隙に入っていく。このとき、材料体100は、円筒体31の回転によって間隙を左回りに移動する。また、円筒体31の外周面に凹凸が形成されているため、材料体100はカバー部材332との間で擦られながら、解砕され吸収性繊維と吸水性樹脂とが混合されていく。そして、材料体100は、カバー部材332を通過した後、網目部材333と円筒体31との間でさらに擦られる。すなわち、円筒体31の凹凸と網目部材333の凹凸との間で材料体100が剪断を受けるため解砕され、吸収性繊維と吸水性樹脂とがさらに混合される。そして、円筒体31の下方まで達して、混合された吸収性繊維と吸水性樹脂とは、網目部材333の細孔から、吸引ユニット6による吸引も手伝って、下方へ落下する。なお、ここで落下しなかった吸収性繊維と吸水性樹脂は、さらに間隙内を移動しつつ、円筒体31によって擦られながら混合され、いずれ網目部材333から落下する。
【0053】
そして、網目部材333から落下した吸収性繊維と吸水性樹脂とは、チャンバー部4の内部空間40を落下しながら、積層部5の枠部材53によって形成された凹部531に積層されていく。吸収性繊維と吸水性樹脂が落下する過程では、上述した3つのガイド部材44〜46により、凹部531内に均一に積層されていく。
【0054】
こうして、凹部531に、吸収性繊維と吸水性樹脂とが混合されて、所定の目付けに積層された吸収体が形成される。その後、各モータ及び吸引装置をオフにした後、積層部5を手前に引き出せば、吸収体を装置から取り出すことができる。
【0055】
<4.特徴>
以上のように、本実施形態によれば、材料体100を少しずつ、高速で回転する円筒体31を有する混合ユニットに導入しているため、円筒体31の回転によって、材料体100が少しずつ切り離され、間隙に導入される。そして、間隙に導入された材料体100は、凹凸のある円筒体31とカバー部材332の間、及び円筒体31と網目部材333との間で擦られ、剪断力を受けながら混合される。その後、混合された吸収性繊維と吸水性樹脂とは落下し、凹部531内に均等に積層される。その結果、吸収性繊維と吸水性樹脂とが均一に混ざり、且つ、厚みが均等な吸収体を得ることができる。したがって、本実施形態に係る吸収体の製造装置は、小型の装置でありながら、商用の製造ラインと同様に、吸収性繊維と吸水性樹脂とが均一に混ぜ合わされた吸収体を製造することができる。すなわち、商用の製造ラインを用いることなく、これと同様の吸収体を簡易に製造できるため、本実施形態に係る吸収体を用いて、種々の吸水性能などの試験を行うことができる。
【0056】
また、材料体100は主として手動で作製されるが、その際、吸収性繊維及び吸水性樹脂の配合量は適宜変更することができ、このような変更があったとしても、上記装置では、均一に混合された吸収体を製造することができる。したがって、評価内容に応じて、吸収性繊維及び吸水性樹脂の配合量を簡単に変えることができるため、所望の配合の試験用の吸収体を簡単に製造することができる。
【0057】
<5.変形例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。なお、以下の変形例は、適宜組合せ可能である。
【0058】
<5−1>
網目部材333の,円筒体31の周方向の長さは、特には限定されず、少なくとも、チャンバー部4と間隙とを連通できるように、チャンバー部4の上部開口を覆うように配置されていればよい。但し、網目部材333が、チャンバー部4の上部開口よりも下流側に長く延びていれば、円筒体31との剪断効果が高まり、吸収性繊維と吸水性樹脂との混合をさらに促進することができる。
【0059】
また、上記実施形態では、網目部材333は、円筒体31との間で材料体100に剪断力を付与するとともに、間隙とチャンバー部4とを連通させる役割を有するが、これらを分けてもよい。すなわち、円筒体31との間で材料体100に剪断力を付与できるような凹凸が形成された部材(混合部)を配置するとともに、これとは別途、間隙とチャンバー部4とを連通させる部材(連通部)を配置することもできる。また、カバー部材332に凹凸を形成することもできる。
【0060】
また、上記実施形態では、材料体100が通過する間隙において、まず、カバー部材332と円筒体31の間を材料体100に通過させ、その後、網目部材333と円筒体31との間を材料体100に通過させ、網目部材333の下流側の貫通孔から、吸収性繊維と吸水性樹脂を落下させている。すなわち、一方面にのみ凹凸が形成された間隙に続いて、両面に凹凸が形成された間隙を通過させ、その後、吸収性繊維と吸水性樹脂を落下させている。このような間隙の構成は、特には限定されず、間隙全体に亘って、両面に凹凸が形成されていてもよい。また、先に、両面に凹凸が形成された箇所を通過させることや、両面に凹凸が形成された箇所と、一方面に凹凸が形成された箇所を混在させたりするなど、その位置を適宜変更することもできる。
【0061】
<5−2>
チャンバー部4の形状は、特には限定されないが、製造する吸収体10の形状が、チャンバー部4の上部開口よりも大きい場合には、上記のように下方にいくにしたがって裾広がりの形状であることが好ましい。また、チャンバー部4のガイド部材44〜46は、吸収性繊維と吸水性樹脂が均一に積層されるように、必要に応じて設ければよく、必ずしも必要ではない。また、ガイド部材の数、形状も適宜変更可能である。
【0062】
<5−3>
搬送ユニット2の構成は特には限定されず、上記のようなベルトコンベア以外でもよく、材料体100を混合ユニット3に案内できればよい。
【実施例】
【0063】
以下、本発明の実施例について説明する。但し、本発明は以下の実施例には限定されない。
【0064】
A.製造装置の仕様
まず、上記実施形態で示した製造装置を実施例として準備した。具体的な仕様は以下の通りである。
(1)搬送ユニット
(i) 搬送速度 1.6(mm/sec)
(2)円筒体
(i) サイズ φ70mm×200mm
(ii) 回転速度 2700回転/分
(iii) 凹凸の高さ 4mm
(3)間隙形成部
(i) カバー部材と円筒体との間隙 2mm
(ii) 網目部材と円筒体との間隙 1mm
(iii) 網目部材の位置 中心角約90度に亘る円筒体の下方
(4)チャンバー部
(i) 上端の開口幅 63mm
(ii) 下端の開口幅 380mm
(iii) 高さ 440mm
(5)積層部
(i) 枠部材の凹部の大きさ 幅120×長さ400mm
(6)吸引部
(i)100Vで稼動する掃除機を吸引装置とした
【0065】
B.吸収体の製造
まず、積層部に坪量16g/m
2のティッシュッペーパー(幅140×長さ420mm)を載置して吸収性繊維と吸水性樹脂が積層できるように準備した。ついで、10gの吸収性繊維を幅125×長さ450mmの形状に集合体として成形し、この上に、10gの吸水性樹脂を手動で均一に分散させ、材料体を形成した。吸収性繊維としてレオニア社製レイフロックを用い、吸水性樹脂として住友精化株式会社製 アクアキープSA55SXIIを用いた。次に、この材料体を上記製造装置の搬送ユニットに配置した上で、すべてのモータと吸引装置を駆動した。そして、すべての材料体が混合ユニットに導入された後、混合された吸収性繊維及び吸水性樹脂が積層部で積層されるのを待ち、
図4に示す吸収体を得た。
【0066】
C.吸収体の評価
(1)外観の評価
上記の吸収体の製造において、視認しやすいようにあらかじめ赤色に着色しておいた吸水性樹脂を用いた吸収体で、外観の評価を行なった。
図4に示すように、この吸収体では、吸収性繊維に吸水性樹脂が均一に混合されていることが分かる(図中の白が吸収性繊維を示し、灰色の部分が吸水性樹脂を示す)。すなわち、吸水性樹脂が、
図4(a)に示すように、面方向に均一に分布するとともに、
図4(b)に示すように、厚み方向においても、均一に分布している。
【0067】
(2)吸水試験を用いた吸収性繊維と吸水性樹脂の分布状態の評価
(2−1)以下の手順に従って、この吸収体の吸水試験を行った。
(i) 得られた吸収体を
図5に示すように、縦方向及び横方向にそれぞれ3等分し、9分割して吸収体片を作製し、それぞれの重量C(g)を測定した。
(ii) 各吸収体片をそれぞれ8Lのイオン交換水に浸漬させ、30分間放置した。(浸漬直後に10秒間攪拌して分散させた。)
(iii) イオン交換水に分散させた各吸収体片を、それぞれ予め秤量した標準篩(直径20cm,目開き75μm)で濾別し、この標準篩を30分間を斜めに傾けて、水切りを行った。
(iv) 標準篩ごと吸収体片の重量を測定し、吸水した吸収体片重量D(g)を求めた。
(v) 下記(2−2)(2−3)で示すように算出した吸水性樹脂のイオン交換水吸水能A(g/g)と吸収性繊維のイオン交換水吸水能B(g/g)を用い、次式によって各吸収体片中の吸水性樹脂の含量を計算する。
吸水性樹脂の重量=X(g)、吸収性繊維の重量=Y(g)とすると、以下の式(1)(2)が成り立つ。
X+Y=C (1)
AX+BY=D (2)
そして、これら式(1)(2)より、X,Yが以下のように、算出できる。
X=(D−BC)/(A−B)
Y=C−X
【0068】
(2−2) 吸水性樹脂のイオン交換水吸水能(g/g)
(i) 1000mlのイオン交換水をビーカーに入れる。
(ii) 吸水性樹脂0.5gをビーカー中のイオン交換水に加え、30分間静置した。
(iii) 吸水した吸水性樹脂を予め秤量した標準篩に移し、この標準篩を30分間斜めに傾け水切りを行った。
(iv) 標準篩上の吸水性樹脂の重量(m)を測定し、次式(3)より吸水性樹脂のイオン交換水吸水能A(g/g)を求めた。
A(g/g)=m(g)/0.5(g) (3)
【0069】
(2−3) 吸収性繊維のイオン交換水吸水能(g/g)
(i) 1000mlのイオン交換水をビーカーに入れる。
(ii) 吸収性繊維1.0gをビーカー中のイオン交換水に加える。
(iii) 30分間静置する。
(iv) 吸水した吸収性繊維を予め秤量した標準篩に移し、この標準篩を30分間斜めに傾け水切りを行った。
(v) 標準篩上の吸収性繊維の重量(m)を測定し、吸収性繊維のイオン交換水吸水能B(g/g)とした。
【0070】
(3)吸水性試験の結果
まず、実施例に係る製造装置により、2つの吸収体(サンプルNo.1,2)を製造し、それぞれについて吸収体総重量(g)を測量した。別途、吸収体の作成に用いた吸水性樹脂のイオン交換水吸水能A、及び吸収性繊維のイオン交換水吸水能B(g/g)を測定・算出した。結果は、以下に示すとおりである。
・吸水性樹脂のイオン交換水吸水能A=355.3(g/g)
・吸収性繊維のイオン交換水吸水能B=15.0(g/g)
・サンプルNo.1の吸収体総重量:19.85(g)
・サンプルNo.2の吸収体総重量:19.67(g)
【0071】
そして、これらA,B,と吸水試験前に測量したC、及び吸水試験により得られたDより、各サンプルにおける各吸収体片の吸収性繊維と吸水性樹脂の含有量を算出した。また、各サンプルごとに各吸収体片より求めた吸収性繊維量及び吸水性樹脂量の平均値を求め、その平均値に対する偏差も求めた。結果は、
図6に示すとおりである。同図によれば、いずれのサンプルも、9個の吸収体片において、吸収性繊維及び吸水性樹脂が概ね同じであることが分かる。したがって、本実施例に係る製造装置を用いると、面方向に概ね均一に吸収性繊維及び吸水性樹脂が分散した吸収体を製造できることが分かった。一般的には長軸方向の吸水性樹脂の分散性は均一になりづらい傾向があるが、本実施例に係る製造装置を用いると、上記の通り、両方向すなわち長軸方向と短軸方向との分散性を概ね同一にできることがわかった。
【0072】
また、本実施例に係る製造装置を用いると、10g程度の吸水性樹脂があれば吸収体を製造し、吸収体の状態で吸水性樹脂を評価することができる。つまり、実際のプラントで製造するような吸水性樹脂の量が無くとも、実験室で製造できる数十gオーダー、数百gオーダーの吸水性樹脂があれば、吸収体として評価を行うことが本実施例に係る製造装置を用いると可能となる。
【0073】
D.吸水性樹脂を使用した吸収体の評価試験
次に、上記実施例で作成した吸収体の評価試験を行った。具体的には、人工尿を用い、以下に示す評価試験を行った。
【0074】
(1)人工尿の調製
10L容の容器に適量の蒸留水を入れ、塩化ナトリウム60g、塩化カルシウム・二水和物1.8g、及び塩化マグネシウム・六水和物3.6gを添加し、溶解した。次いで、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル0.15gを添加し、さらに蒸留水を追加して、全体の質量を6000gとした。さらに、少量の青色1号で着色して、人工尿を調製した。
【0075】
(2)吸収体及び吸収性物品の作製
吸水性樹脂10gと吸収性繊維として解砕パルプ(レオニア社製,レイフロック)10gを用い、上述の実施例「吸収体の製造」に準じて、長さ40cm×幅12cmの大きさのシート状の吸収体を作製した。次に、得られた吸収体に霧吹きで約0.6gの水を全体に散布した。その後、この吸収体の上に、吸収体と同じ大きさで坪量16g/m
2のティッシュッペーパーを重ね、全体に196kPaの荷重を30秒間加えてプレスすることにより、評価用吸収体を作製した。さらに、この評価用吸収体の上面に、評価用吸収体と同じ大きさで、坪量22g/m
2のポリエチレン−ポリプロピレン製エアスルー型多孔質液体透過性シートを配置した。また、同じ大きさ、同じ坪量のポリエチレン製液体不透過性シートを評価用吸収体の下面に配置して評価用吸収体を挟みつけることにより、吸収性物品とした。
【0076】
(3)評価試験
次に、上記吸収性物品を用い、以下の評価試験を行った。
【0077】
(3−1)吸収性物品の浸透時間
水平の台上に吸収性物品を置き、その吸収性物品の中心部に、内径3cmの液投入用シリンダーを具備した測定器具を置いた。そして、50mLの人工尿をそのシリンダー内に一度に投入するとともに、ストップウォッチを用いて、人工尿がシリンダー内から完全に消失するまでの時間を測定し、1回目の浸透時間(秒)とした。次に、シリンダーを取り除き、吸収性物品をそのままの状態で保存し、1回目の人工尿投入開始から30分後及び60分後にも、1回目と同じ位置に測定器具を用いて同様の操作を行い、2回目及び3回目の浸透時間(秒)を測定した。そして、1回目〜3回目の合計時間を合計浸透時間とした。浸透時間が短いほど、吸収性物品として好ましいと言える。
【0078】
(3−2)逆戻り量
上述した浸透時間の測定における1回目の試験液投入開始から120分後、吸収性物品上の人工尿投入位置付近に、予め質量(Wd(g))を測定しておいた10cm四方の濾紙80枚程度を置き、その上に底面が10cm×10cmの質量5kgの重りを載せた。5分間の荷重後、濾紙の質量(We(g))を測定し、以下の式のとおり、増加した質量を逆戻り量(g)とした。なお、逆戻り量が小さいほど、吸収性物品として好ましいと言える。
逆戻り量(g)=We−Wd
【0079】
(3−3)拡散長
上述した逆戻り量の測定後5分以内に、人工尿が浸透した吸収性物品の長手方向の拡がり寸法(cm)を測定した。人工尿を投入した中心部から両長手方向に広がった液の両端は短手方向において拡散距離にバラツキが生じるため、長手方向に対し青い人工尿の広がった距離の最大長さを“拡散長”として測定し、小数点以下の数値は四捨五入した。
【0080】
吸水性樹脂として、吸水量55倍型の住友精化株式会社製 アクアキープSA55SXIIを用いた場合を実施例2,吸水量60倍型の住友精化株式会社製 アクアキープSA60SXIIを用いた場合を実施例3とした。結果は以下の通りである。
【表1】
これにより、吸水量60倍型を使用した方が、逆戻り量が低くなっており、吸水量55倍型を使用した方が浸透時間が早くなっていることがわかる。