(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に図面を参照しながら、本発明を実施するための形態を説明する。ただし、以下に示す形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明を以下に限定するものではない。また、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするために誇張していることがある。さらに、同一の名称、符号については、原則として同一もしくは同質の部材を示しており、重複した説明は適宜省略する。また、発光素子1000に用いられる各部材については少なくとも1つあればよく、複数個あってもよいものとする。
【0010】
図1〜
図12に、本実施形態に係る発光素子1000の製造方法を示す。
図13は、
図12の破線枠における拡大図である。
【0011】
この発光素子1000の製造方法は、成長基板10と、成長基板10上に設けられた半導体構造20と、を有し、成長基板10側を下側とし、半導体構造20側を上側とするウエハを準備する工程(
図1)と、ウエハの上側から底部を有する分離溝30を形成する工程(
図2)と、半導体構造20の上側にp電極41及びn電極42を形成する工程(
図3)と、分離溝30を含むウエハの上側に、原子層堆積法により誘電体多層膜52を形成する工程(
図4)と、ウエハの下側から分離溝30の底部に達するようにウエハの一部を除去することにより、ウエハを複数の発光素子1000に分離する工程(
図10)と、を含む。
【0012】
これにより、光出力が高い発光素子1000を量産性良く製造することができる。この点について、以下に詳細に説明する。
【0013】
従来、誘電体多層膜を形成するには典型的にはスパッタや蒸着等が用いられる。しかし、これらの方法は、反応成分(誘電体多層膜を構成する材料)の直進性が高いため、誘電体多層膜を構成する各層(以下「誘電体層」ともいう。)の膜厚が、誘電体層が形成される面によって異なるという問題があった。例えば、半導体構造20の上面に垂直な方向からスパッタにより誘電体層を形成する場合、半導体構造20の上面には所望の膜厚で誘電体層を形成することができるが、半導体構造20の側面には所望の膜厚よりも薄く誘電体層が形成される。つまり、誘電体層が形成される面によっては、当初予定していた膜厚で誘電体層を形成させることができず、その結果、誘電体多層膜として十分な反射率が得られないという問題があった。一方、本実施形態では、原子層堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition)を用いて誘電体層を形成するため、誘電体層が形成される面にかかわらず、比較的均一な膜厚で誘電体層を形成することができる。ALDは、スパッタ等と比較して、反応成分の直進性が低いため、分離溝30を含むウエハの上面全域に反応成分を同等に供給することができるためであると考えられる。
【0014】
さらに、本実施形態では、分離溝30を含むウエハの表面にALDにより誘電体多層膜52を形成した後で、ウエハの下側から分離溝30の底部に達するようにウエハの一部を除去することで、各発光素子1000を得ている。このようにすれば、発光素子1000における側面に誘電体多層膜52が形成されない領域を生じさせずに、側面の全域に誘電体多層膜52を形成することができる。
【0015】
以上の理由により、本実施形態にかかる発光素子1000の製造方法によると、光出力が高い発光素子を量産性良く製造することができる。
【0016】
以下、
図1〜
図12に基づいて、各工程について説明する。
【0017】
<ウエハ準備工程>
まず、
図1に示すように、成長基板10上に半導体構造20を形成したウエハを準備する。成長基板10は、窒化物半導体をエピタキシャル成長させることができる基板であればよく、基板の大きさや厚さは特に限定されない。この成長基板10としては、例えば、C面を主面とするサファイアのような絶縁性基板が挙げられる。
【0018】
本実施形態において、半導体構造20は、例えば、成長基板10側から順に、n型半導体23、活性層22、p型半導体21を有する構造とすることができる。半導体構造20は、例えば、複数のGaN系半導体(GaN、AlGaN、InGaNなど)を積層したものを用いることができる。
【0019】
<分離溝30形成工程>
次に、
図2に示すように、ウエハの上側から底部を有する分離溝30を形成する。分離溝30は行方向及び列方向にそれぞれ複数形成される。分離溝30は成長基板10に達する深さで形成することもできるが、本実施形態のように、成長基板10に達しない深さで形成することが好ましい。例えばエッチングにより分離溝30を形成する場合、成長基板10まで分離溝30を形成しようとすると、成長基板10と半導体構造20のエッチングレートの差によりその表面が一平面になりにくいが、半導体構造20で分離溝30を止めておけばその表面を一平面としやすくなる。また、成長基板10をレーザリフトオフする場合であっても、半導体構造20で分離溝30を止めておけば、分離溝30の底部よりも下方で隣接する半導体構造20同士が繋がったままの状態となる。これにより、成長基板10をレーザリフトオフする場合に、レーザ照射がウエハ全体に照射されず、レーザが照射されない領域が部分的に残った場合であっても、半導体構造20はその下部にて全体が繋がっているため、素子抜けを抑制することができる。
【0020】
分離溝30の深さ(半導体構造20の上面から分離溝30の底部までの距離)は、発光素子1000における所望の縦方向の長さよりも少し深めに形成する。例えば、3μm以上7μm以下、好ましくは5μm以上6μm以下とすることができる。
【0021】
分離溝30の形成方法としては、エッチング(ドライエッチング、ウェットエッチング)、スクライブ(カッタースクライブ、レーザスクライブなど)又はダイシング等を用いることができるが、製造性等を考慮してエッチングで形成することが好ましい。
【0022】
分離溝30は、上側から下側に向かって半導体構造20が広がるように傾斜して設けることができる。つまり、ウエハの上側から下側に向かうにつれて徐々に外側へ広がった形状である。そして、このように傾斜した半導体構造20に反射膜50を設けることで、光を上方に効率よく反射させることができる。なお、
図1〜
図8において、図の下方(ウエハの下側)が光取り出し側であり、図の上方(ウエハの上側)が実装側であるが、
図9〜
図12においては、便宜的に成長基板10が上になるように図示しているため、図の上方が光取り出し側となり、図の下方が実装側となる。
【0023】
半導体構造20の側面の傾斜角度は好ましくは91°以上135°以内、より好ましくは98°以上120°以内、さらに好ましくは102°以上108°以内とすることができる。これにより、光を上方へと反射させることができる。なお、ここでいう側面の傾斜角度とは、半導体構造20の上面と側面とが成す角度をさす。
【0024】
<電極形成工程>
次に、半導体構造20の上側に、p電極41及びn電極42を形成する。具体的には、p型半導体21の上面にp電極41を形成し、半導体構造20の上側から部分的にp型半導体21、活性層22、及びn型半導体23の一部を除去して露出したn型半導体23の上面にn電極42を形成する。
【0025】
p電極41は、透光膜とすることができる。例えば、酸化インジウムスズ、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ等を用いることができ、好ましくは酸化インジウムスズを使用することができる。これらの材料を用いることにより、電極による光の吸収を抑制し、かつ電流を広げることができる。
【0026】
p電極41の上面には部分的に金属よりなる中間電極43を形成することができる。p電極41とpパッド81とを直接接続すると電気抵抗が上がる場合であるが、こうすることでそれを回避することができる。中間電極43としては、Ti、Rh、Al、Cr、Ag等を用いることができる。
【0027】
n電極42は、p電極41と同一材料を用いることもできるし、異なる材料を用いることもできる。p電極41と異なる材料を用いる場合は、Ti、Rh、Al、Cr、Ag等の金属材料を用いることができる。
【0028】
<反射膜50形成工程>
次に、
図4に示すように、分離溝30を含むウエハの上側に反射膜50を形成する。つまり、反射膜50は、分離溝30の表面と分離溝30の表面から連続する半導体構造20の表面とに形成される。本実施形態では、反射膜50として、絶縁膜51、誘電体多層膜52、及び金属膜53を形成しているが、少なくとも誘電体多層膜52が形成されていればよい。反射膜50を形成することで、発光素子1000をフェイスダウン実装した際に、光出力を向上させることができる。
【0029】
まず、分離溝30を含むウエハの上側に絶縁膜51を形成する。絶縁膜51を形成することで、浅い角度で入射する光を全反射させて取り出すことができる。絶縁膜51は、比較的厚く、GaN系半導体よりも低屈折率の材料を用いることができる。絶縁膜51の材料としては、酸化ケイ素、酸化ニオブなどを用いることができる。また、絶縁膜51の膜厚は、200nm以上800nm以下、好ましくは250nm以上600nm以下とすることができる。一定以上の膜厚とすることで十分な反射を実現することができ、一定以下の膜厚とすることで絶縁膜51での光の吸収を抑制し誘電体多層膜52での反射の効果を最大限に引き出すことができる。
【0030】
絶縁膜51は、比較的短い時間で形成可能なスパッタを用いるのが好ましい。なお、絶縁膜51はスパッタ以外にも、CVD、蒸着、ALDにより形成してもよい。
【0031】
次に、分離溝30を含むウエハの上側にALDにより誘電体多層膜52を形成する。誘電体多層膜52は、ウエハの上側全域(分離溝30及び半導体構造20の上側)に形成される。本実施形態では、絶縁膜51の上側に誘電体多層膜52を形成する。誘電体多層膜52は誘電体層の膜厚によって反射率が決まるため膜厚の均一性が重要になるところ、ALDを用いることで、誘電体層が形成される面の向きにかかわらず、比較的均一な膜厚で誘電体多層膜52を形成することができる。また、p電極41やn電極42等の障害物近傍であっても、ALDによれば、スパッタや蒸着と比較して、均一な膜厚で良質な膜質の誘電体多層膜52を形成することができる。
【0032】
誘電体多層膜52は、いわゆるDBRであり、
図13に示すように、高屈折率材質層52aと低屈折率材質層52bとを組み合わせている。例えば、酸化チタン/酸化ケイ素を2ペア以上積層させることで得られる。誘電体多層膜52を構成する各層には、酸化チタン及び酸化ケイ素の他にも、例えば、酸化ニオブ、酸化アルミ、酸化ジルコニウム、窒化アルミ、窒化ケイ素などを用いることができる。これにより、主に垂直方向に入射する光を反射することができる。誘電体多層膜52を構成する各層の膜厚は、発光波長及び各層を構成する材料により異なるが、例えば、40nm以上200nm以下、好ましくは45nm以上100nm以下とすることができる。
【0033】
次に、誘電体多層膜52の上側に金属膜53を形成する。金属膜53は、例えば、Al、Ag、Rh、Tiから選択された少なくとも一種の金属を含む。金属膜53を設けることで、絶縁膜51及び誘電体多層膜52で反射できなかった光も反射させて取り出すことができ、光を損失なく反射させて取り出すことができる。このとき、金属膜53の下側に誘電体多層膜52が設けられていることにより、誘電体多層膜52である程度光を反射させることができるため、金属膜53における光の吸収を抑制することができる。金属膜53は、60nm以上300nm以下、好ましくは150nm以上200nm以下とすることができる。一定以上の膜厚にすることで十分な反射を実現することができ、一定以下の膜厚にすることで量産性を向上することができる。
【0034】
次に、
図5に示すように、ウエハを上側から視て、p電極41及びn電極42の上側に形成されている反射膜50をエッチング等により部分的に除去して第1開口部60aを設ける。第1開口部60aは、絶縁膜51の途中までの深さ(つまり、p電極41及びn電極42に達しない深さ)で形成されるのが好ましい。こうすることで、p電極41及びn電極42の近傍において、絶縁膜51等が予期しない範囲まで削られるのを抑制することができる。
【0035】
このとき、第1開口部60aはp電極41よりも小さい面積で形成されるのがよい。つまり、ウエハを上側から視て、誘電体多層膜52がp電極41に部分的に重なるように反射膜50を除去するのが好ましい。こうすることで、p電極41として透光性の電極を用いた場合に、p電極41から抜ける光を誘電体多層膜52で反射させて取り出すことができる。
【0036】
次に、
図6に示すように、半導体構造20を保護するための第1保護膜71を、金属膜53を覆うように形成し、p電極41及びn電極42がそれぞれ露出するように反射膜50及び第1保護膜71を部分的に除去して第2開口部60bを形成する。
【0037】
第1保護膜71としては、例えば、酸化ケイ素を用いることができる。これにより、発光素子1000の最表面に金属が露出しないため、電流リークなどがない信頼性の高い発光素子1000とすることができる。第1保護膜71は、50nm以上800nm以下、好ましくは150nm以上600nm以下とすることができる。一定以上の膜厚にすることによって金属膜53を確実に保護することができ、一定以下の膜厚にすることによって量産性を向上させることができる。
【0038】
第2開口部60bは第1開口部60aよりも外形が小さくなるように形成される。こうすることで、第2開口部60bにおいて金属膜53が第1保護膜71により被覆され、各パッドが金属膜53と接触しなくなるためリークを抑制することができる。なお、第1開口部60aを形成する工程は必須の構成ではなく、反射膜50が誘電体多層膜52のみから構成される場合は、第2開口部60bのみを形成してp電極41及びn電極42を露出させてもよい。
【0039】
次に、
図7に示すように、p電極41及びn電極42にそれぞれpパッド81とnパッド82とを電気的に接続して形成する。pパッド81及びnパッド82は鍍金などにより形成することができる。各パッドは、例えば、亜鉛、ニッケル、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、イリジウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、コバルト、鉄、マンガン、モリブデン、クロム、タングステン、ランタン、銅、銀、金、イットリウムよりなる群から選択された少なくとも一種の元素を含む金属または合金が好ましい。具体的には、半導体構造20側からチタン/ロジウム/金/チタンとできる。
【0040】
次に、
図8に示すように、ウエハの上側に支持基板110を貼り合わせる。支持基板110には、サファイア基板などを用いることができる。
【0041】
半導体構造20と支持基板110とは、接着樹脂90により貼り合わされている。接着樹脂90には、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂などを用いることができる。
【0042】
本実施形態において、支持基板110の表面(半導体構造20と貼り合わされる面)には、剥離層100として、光感光性樹脂層が形成されている。つまり、支持基板110と接着樹脂90の間に剥離層100が形成されている。後に、光を照射することにより、支持基板110から発光素子1000を分離するためである。
【0043】
次に、
図9に示すように、レーザリフトオフ(LLO:Laser Lift Off)法を用いて半導体構造20と成長基板10とを分離する。具体的には、照射するレーザのエネルギーを変えた2種類のレーザを下側から照射し、成長基板10と半導体構造20の界面近傍部を熱分解させる。本実施形態では、分離溝30が成長基板10に達していないので、LLO時にレーザの照射が十分でなく熱分解できていない領域が多少あっても、素子抜けが生じる可能性は低く、再現性よく成長基板10を除去することができる。また、必ずしも成長基板10と半導体構造20の界面の全域にレーザを照射する必要がないので、量産性も向上できる。なお、
図1〜
図8では成長基板10が下になるように図示しているが、
図9〜
図12では便宜的に成長基板10が上になるように図示している。
【0044】
<素子分離工程>
次に、
図10に示すように、ウエハの下側(
図10の上側)から分離溝30の底部に達するようにウエハの一部を除去して、ウエハを複数の発光素子1000に分離する。本実施形態では、半導体構造20と成長基板10とを分離した後に、半導体構造20の下側から分離溝30の底部に達するように半導体構造20の一部を除去している。半導体構造20の一部を除去する方法としては、機械研磨、化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)などを用いることができる。特に、CMPによれば、より平坦な面が得られると共に、素子にダメージを与えにくい。なお、分離溝30が成長基板10に達する深さで形成されている場合は、半導体構造20と成長基板10とを分離せず、機械研磨、化学機械研磨等により成長基板10の一部を除去することで発光素子1000を得ることができる。分離溝30の底部に達するようにウエハの一部を除去することにより、側面全域に誘電体多層膜52が形成された発光素子1000を得ることができる。
【0045】
次に、
図11に示すように、半導体構造20の露出した面(n型半導体23)に対して、ICP−RIE等のドライエッチング、または強アルカリ水溶液によるウェットエッチングを行い、n型半導体23の表面を粗面化処理する。この粗面化処理により、光取り出し効率が向上し、光出力が増大する。本実施形態では、粗面化処理の前に、ウエハの上側で露出した絶縁膜51、誘電体多層膜52、及び金属膜53の一部に第2保護膜72を設けている。これにより、粗面化処理を行う際に、誘電体多層膜52や金属膜53を保護することができる。なお、誘電体多層膜52や金属膜53を構成する材料が、エッチングの溶液に対して耐性を持つ場合は、第2保護膜72を設けずに粗面化処理を行ってもよい。
【0046】
次に、
図12に示すように、成長基板10が形成されていた側(支持基板110と反対の側)の全体を第3保護膜73で保護する。
【0047】
その後、分離溝30に充填された接着樹脂90を、発光面側から剥離層100に達するようにエッチングにより除去する。これにより、支持基板110除去工程において、剥離層100を除去するだけで、支持基板110から各素子を分離できる。
【0048】
図14に、
図12に示される状態を発光面側から視た図を示す。ここで、
図12は
図14のX−Xにおける断面図であり、
図1〜
図11も各工程におけるこれに相当する部分の断面図である。
図14に示すように、各発光素子1000には、発光面側から見て半導体構造20の周囲を囲むように反射膜50が設けられている。これにより、光の反射を効率よく行うことができる。なお、
図14においては、理解を容易にするために、第1保護膜71及び第2保護膜72を図示していない。
【0049】
さらに、
図12を実装面側から視た状態を
図15に示す。
図15に示すように、各発光素子1000には、半導体構造20の側面だけでなく、その上面であってn電極42の一部と中間電極43の一部を除く領域に、反射膜50が設けられている。これにより、光の反射を効率よく行うことができる。なお、
図15においては、理解を容易にするため、反射膜50そのものについては図示しておらず、反射膜50が形成される領域をハッチングで示している。
【0050】
次に、支持基板110から発光素子1000を分離する。具体的には、素子分離工程の後に、感光性樹脂に光を照射して、各素子から支持基板110を除去することができる。支持基板110を除去した後、発光素子1000上に残っている接着樹脂90をエッチングにより除去する。これにより、基板及び支持基板110のない発光素子1000が得られる。ただし、支持基板110を有した発光素子1000とすることも可能であることは言うまでもない。なお、本明細書における発光素子1000は発光ダイオード(LED:Light emitting diode)である。
【0051】
発光素子1000は、縦方向の最大長さH(
図12の上下方向の長さ)が横方向の最大長さW(
図12の左右方向の長さ)に対して0.1倍〜0.5倍、より好ましくは0.2倍〜0.4倍とすることができる。つまり、従来の発光素子に比べて、横方向の最大長さWに対して縦方向の最大長さHが占める割合を大きくすることができる。これにより、側面における光反射の影響が大きくなるため、光取り出し向上の効果がより顕著となる。
【0052】
<実施例1>
本実施例は、
図1〜
図13に示した発光素子1000に対応するものである。以下、
図1〜
図13を参照して実施例の発光素子について説明する。
【0053】
まず、サファイアからなる成長基板10上に、それぞれが窒化物半導体からなるn型半導体23、活性層22、p型半導体21を順に積層した半導体構造20を形成したウエハを準備した(
図1参照)。その後、ウエハの上側から成長基板10に達しない深さの底部を有する分離溝30を形成した(
図2参照)。このとき、分離溝30は、上側から下側に向かうにつれて徐々に外側へ挟まった形状(分離溝30の底部と半導体構造20の側とがなす傾斜角度が約105°)となるように形成した。さらに、ウエハの上側からn型半導体23が露出するように半導体構造20の一部を除去した(
図3参照)。
【0054】
次に、p型半導体21から上側に向かって順に、酸化インジウムスズからなるp電極41、p電極41に部分的に設けられたチタン/ロジウムからなる中間電極43を形成した(
図3参照)。また、n型半導体23の上側にチタン/ロジウムからなるn電極42を形成した(
図3参照)。
【0055】
その後、分離溝30を含むウエハの上側に、活性層からの光を反射する反射膜50を形成した(
図4参照)。具体的にはまず、酸化ケイ素よりなる絶縁膜51(設計膜厚300nm)をALDにより形成した。次に、絶縁膜51上に酸化チタン(設計膜厚49.5nm)及び酸化ケイ素(設計膜厚86.2nm)をALDにより3ペア積層して誘電体多層膜52を形成した。さらに、誘電体多層膜52上にチタンよりなる金属膜53(設計膜厚300nm)をスパッタ法により形成した。
【0056】
ここで、本明細書でいう設計膜厚について酸化ケイ素を例にとって説明する。ALDの場合は、まず、一平面を有する基台上に所定の回数だけ反応させることにより酸化ケイ素を形成する。次に、実際に行った反応回数と実際に得られた酸化ケイ素の膜厚との関係に基づいて、所望の膜厚の酸化ケイ素を得るためには何回の反応が必要かを決定する。そして、実際にその回数だけ反応させた場合は、その反応回数に対応する所望の膜厚の酸化ケイ素が得られるものと想定している。つまり、ALDの場合は、反応回数から想定される膜厚を設計膜厚と呼んでいる。一方、スパッタの場合は、まず、一平面を有する基台上に所定の時間だけ反応させることにより酸化ケイ素を形成する。次に、実際に行った反応時間と実際に得られた酸化ケイ素の膜厚との関係に基づいて、所望の膜厚の酸化ケイ素を得るためにはどのくらいの時間の反応が必要かを決定する。そして、実際にその時間だけ反応させた場合は、その反応時間に対応する所望の膜厚の酸化ケイ素が得られるものと想定している。つまり、スパッタの場合は、反応時間から想定される膜厚を設計膜厚と呼んでいる。また、ALDの場合もスパッタの場合も、本明細書でいう設計膜厚は一平面上に酸化ケイ素等を成長させたときの膜厚を想定しており、異なる角度を有する異なる面に同時に酸化ケイ素等を形成させたときの膜厚は想定していない。
【0057】
次に、p電極41及びn電極42の上側に形成されている反射膜50をエッチングにより部分的に除去して第1開口部60aを形成した(
図5参照)。次に、金属膜53を覆うように酸化ケイ素よりなる第1保護膜71をCVDにより形成した。そして、反射膜50及び第1保護膜71をp電極41及びn電極42がそれぞれ露出するように部分的に除去し、第1開口部60aよりも外形が小さい第2開口部60bを形成した(
図6参照)。次に、p電極41の上側にはチタン/ロジウム/金/チタンよりなるpパッド81を形成し、n電極42の上側にはチタン/ロジウム/金/チタンよりなるnパッド82を形成した(
図7参照)。その後、サファイアからなる支持基板110に剥離層100となる感光性樹脂層と接着樹脂90となるエポキシ樹脂を順に形成して、半導体構造20がエポキシ樹脂に埋没するようにウエハの上側と支持基板110とを貼り合わせた(
図8参照)。
【0058】
次に、LLO法を用いて半導体構造20と成長基板10とを分離した(
図9参照)。その後、CMPを用いて半導体構造20の下側から分離溝30の底部に達するまで半導体構造20の一部を除去した(
図10参照)。
【0059】
次に、半導体構造20の下側であって露出したn型半導体23にウェットエッチングによる粗面処理を施した(
図11参照)。次に、成長基板10が形成されていた側の全体(粗面処理を施したn型半導体23、半導体構造20の下側であって露出した反射膜50、及び第1保護膜71)に第3保護膜73を形成した。その後、分離溝30に充填された接着樹脂90を発光面側から剥離層100に達するようにエッチングにより除去した(
図12参照)。その後、剥離層100に光を照射して、各素子から支持基板110を除去した(
図12参照)。以上のようにしてピーク波長459nmの発光素子を作製した。
【0060】
<実施例2>
実施例2では、ピーク波長が522nmとなるように半導体構造20を構成した。また、誘電体多層膜を構成する酸化チタンの設計膜厚を58.5nmとし、酸化ケイ素の設計膜厚を98.2nmとして、3ペア形成した。なお、誘電体多層膜52の各層の膜厚は、発光素子のピーク波長を考慮して決定した。本実施例のそれ以外の構成については実施例1と実質的に同様である。
【0061】
<比較例1>
比較例1は、実施例1の誘電体多層膜をスパッタ法により形成した以外は実施例1と実質的に同様である。
【0062】
<比較例2>
比較例2は、実施例2の誘電体多層膜をスパッタ法により形成した以外は実施例2と実質的に同様である。
【0063】
<評価>
実施例1で得られた発光素子は比較例1に比較して輝度が約50%上昇し、実施例2で得られた発光素子は比較例2に比較して輝度が約30%上昇した。比較例1に対する実施例1の輝度の上昇率と、比較例2に対する実施例2の輝度の上昇率と、は異なるものの、いずれの実施例も比較例に比較して輝度を大幅に向上させることができた。これは、各比較例ではスパッタを用いたことにより発光素子の上方と側方で誘電体多層膜の膜厚が異なってしまうのに対して、各実施例ではALDを用いたことにより発光素子の上方と側方の両方に(つまり、ウエハの上側全域)にある程度高い精度で一定の膜厚の誘電体多層膜が形成できたためと考えられる。