(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
金属酸化物粒子と、単座配位子をもつ有機酸と、ノニオン性ポリマーと、水とを含有し、pHが3.0以上7.0以下である研磨剤であって、前記ノニオン性ポリマーは、ポリグリセリン、ポリオキシエチレンポリグリセリルエーテルおよびポリオキシプロピレンポリグリセリルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、
前記単座配位子をもつ有機酸が炭素数4以上で水酸基を有するモノカルボン酸であることを特徴とする研磨剤。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路の高集積化や高機能化に伴い、半導体素子の微細化および高密度化のための微細加工技術の開発が進められている。従来から、半導体集積回路装置(以下、半導体デバイスともいう。)の製造においては、層表面の凹凸(段差)がリソグラフィの焦点深度を越えて十分な解像度が得られなくなる、等の問題を防ぐため、化学的機械的研磨法(Chemical Mechanical Polishing:以下、CMPという。)を用いて、層間絶縁膜や埋め込み配線等を平坦化することが行われている。素子の高精細化や微細化の要求が厳しくなるにしたがって、CMPによる高平坦化の重要性はますます増大している。
【0003】
また近年、半導体デバイスの製造において、半導体素子のより高度な微細化を進めるために、素子分離幅の小さいシャロートレンチによる分離法(Shallow Trench Isolation:以下、STIという。)が導入されている。
【0004】
STIは、シリコン基板にトレンチ(溝)を形成し、トレンチ内に絶縁膜を埋め込むことで、電気的に絶縁された素子領域を形成する手法である。STIにおいては、まず、
図1(a)に示すように、シリコン基板1の素子領域を窒化ケイ素膜2等でマスクした後、シリコン基板1にトレンチ3を形成し、トレンチ3を埋めるように二酸化ケイ素膜4等の絶縁膜を堆積する。次いで、CMPによって、凹部であるトレンチ3内の二酸化ケイ素膜4を残しながら、凸部である窒化ケイ素膜2上の二酸化ケイ素膜4を研磨し除去することで、
図1(b)に示すように、トレンチ3内に二酸化ケイ素膜4が埋め込まれた素子分離構造が得られる。
【0005】
このようなSTIにおけるCMPでは、二酸化ケイ素膜と窒化ケイ素膜との選択比(二酸化ケイ素膜の研磨速度と窒化ケイ素膜の研磨速度との比を意味する。以下、単に選択比ともいう。)を高くすることで、窒化ケイ素膜が露出した時点で研磨の進行を停止させることができる。このように窒化ケイ素膜をストッパー膜として用いる研磨方法では、通常の研磨方法と比べて、より平滑な面を得ることができる。
【0006】
このように、近年のCMP技術では、コスト面から二酸化ケイ素膜に対する高い研磨速度が要求されるのみならず、前記した選択比の高さが重要となっている。
【0007】
そこで、このような要求特性に合わせて研磨剤の研磨特性を改善する方法が提案されている。特許文献1には、砥粒として酸化セリウム粒子等を含有し、多座配位子の有機酸、多価アルコール化合物、またはその誘導体を含有する、ハードディスク基板用、または半導体基板用の研磨剤が開示されている。
【0008】
しかしながら、特許文献1に示された研磨剤では、研磨速度はある程度高い値が確保されても、窒化ケイ素膜の研磨速度の抑制が十分でないため、二酸化ケイ素膜と窒素ケイ素膜との選択比は十分に高いとはいえなかった。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に合致する限り、他の実施の形態も本発明の範疇に属し得る。
【0021】
<研磨剤>
本発明の研磨剤は、金属酸化物粒子と、単座配位子をもつ有機酸と、ノニオン性ポリマーと、水とを含有し、pHが3.0以上7.0以下である研磨剤であって、ノニオン性ポリマーは、ポリグリセリン、ポリオキシエチレンポリグリセリルエーテルおよびポリオキシプロピレンポリグリセリルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする。以下、ポリグリセリン、ポリオキシエチレンポリグリセリルエーテルおよびポリオキシプロピレンポリグリセリルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むノニオン性ポリマーをノニオン性ポリマー(P)ともいう。
【0022】
本発明の研磨剤を、例えば、STIにおける酸化ケイ素膜(例えば、二酸化ケイ素膜)を含む被研磨面のCMPに使用した場合、酸化ケイ素膜に対して高い研磨速度を有するうえに、窒化ケイ素膜に対する研磨速度が十分に低く、酸化ケイ素膜と窒化ケイ素膜との高い選択比を達成することができる。そして、平坦性の高い研磨を実現することができる。
【0023】
本発明の研磨剤がこのように優れた研磨特性を発揮する機構については、明らかではないが、単座配位子をもつ有機酸と特定の分子構造を有するノニオン性ポリマー(P)の両方を含むことに起因するものと考えられる。すなわち、研磨剤に含有される、単座配位子をもつ有機酸が、上記特定の分子構造を有するノニオン性ポリマー(P)の存在下、pH3.0以上7.0以下の領域で、その分子の末端基を介して、金属酸化物粒子の表面および酸化ケイ素膜を含む被研磨面に静電的に吸着されることによるものと考えられる。そして、金属酸化物粒子表面と、酸化ケイ素膜を含む被研磨面の表面の状態が最適化される結果、金属酸化物粒子の分散性を損なうことなく、酸化ケイ素膜に対する高い研磨速度と、酸化ケイ素膜と窒化ケイ素膜との高い選択比の両方が得られるものと考えられる。
【0024】
以下、本発明の研磨剤に含有される各成分、およびpHについて説明する。
【0025】
(金属酸化物粒子)
本発明の研磨剤において含有される金属酸化物粒子は、研磨砥粒としての機能を有するものである。金属酸化物粒子としては、酸化セリウム、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム等の金属酸化物の粒子が挙げられる。金属酸化物粒子としては、酸化ケイ素膜に対する研磨速度の高さから、酸化セリウム粒子が好ましい。
【0026】
本発明の研磨剤において、金属酸化物粒子として酸化セリウム粒子を用いる場合、研磨剤に含有される酸化セリウム粒子は特に限定されないが、例えば、特開平11−12561号公報や特開2001−35818号公報に記載された方法で製造された酸化セリウム粒子が使用できる。すなわち、硝酸セリウム(IV)アンモニウム水溶液にアルカリを加えて水酸化セリウムゲルを作製し、これをろ過、洗浄、焼成して得られた酸化セリウム粒子、または高純度の炭酸セリウムを粉砕後焼成し、さらに粉砕、分級して得られた酸化セリウム粒子を使用できる。また、特表2010−505735号に記載されているように、液中でセリウム(III)塩を化学的に酸化して得られた酸化セリウム粒子も使用できる。
【0027】
金属酸化物粒子の平均粒子径は、10nm以上500nm以下が好ましく、30nm以上300nm以下がより好ましい。平均粒子径が500nmを超えると、被研磨面にスクラッチ等の研磨キズが発生するおそれがある。また、平均粒子径が10nm未満であると、研磨速度が低下するおそれがあるばかりでなく、単位体積あたりの表面積の割合が大きいため、表面状態の影響を受けやすく、pHや添加剤の濃度等の条件によっては金属酸化物粒子が凝集しやすくなる。
【0028】
酸化セリウム粒子のような金属酸化物粒子は、研磨剤中において一次粒子が凝集した凝集粒子(二次粒子)として存在しているので、金属酸化物粒子の好ましい粒径を、平均二次粒子径で表すものとする。すなわち、金属酸化物粒子は、平均二次粒子径が10nm以上500nm以下であるのが好ましく、30nm以上300nm以下がより好ましい。平均二次粒子径は、純水等の分散媒中に分散した分散液を用いて、レーザー回折・散乱式等の粒度分布計を使用して測定される。
【0029】
金属酸化物粒子の含有割合(濃度)は、研磨剤の全質量に対して0.01質量%以上10質量%以下が好ましい。金属酸化物粒子の含有割合が0.01質量%以上10質量%以下の場合には、酸化ケイ素膜に対して十分に高い研磨速度が得られる。また、研磨剤の粘度も高すぎることがなく、取扱いが良好である。金属酸化物粒子の含有割合(濃度)は、0.025質量%以上3.0質量%以下がより好ましく、0.025質量%以上1.0質量%以下が特に好ましい。
【0030】
金属酸化物粒子は、事前に媒体に分散した状態のもの(以下、金属酸化物粒子分散液という。)を使用してもよい。媒体としては、水が好ましく使用できる。
【0031】
(水)
本発明の研磨剤には、金属酸化物粒子を分散させる媒体として、かつ後述する単座配位子をもつ有機酸およびノニオン性ポリマー(P)を溶解させる媒体として、水が含有される。水の種類については特に限定されないものの、単座配位子をもつ有機酸およびノニオン性ポリマー(P)への影響、不純物の混入の防止、pH等への影響を考慮して、純水、超純水、イオン交換水等を用いることが好ましい。
【0032】
(単座配位子をもつ有機酸)
本発明の研磨剤に含有される単座配位子をもつ有機酸としては、モノカルボン酸が好ましい。モノカルボン酸としては、複素環を有するモノカルボン酸、炭素数4以上で水酸基を有するモノカルボン酸、アミノ基を有するモノカルボン酸から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。本発明の研磨剤に好ましく用いられるモノカルボン酸を以下に例示列挙するが、これらに限定されるものではない。
【0033】
複素環を有するモノカルボン酸としては、窒素原子を含有する複素環(含窒素複素環)を有するモノカルボン酸か、窒素以外のヘテロ原子を含有する複素環を有するモノカルボン酸が好ましく使用できる。窒素原子を含有する複素環(含窒素複素環)を有するモノカルボン酸としては、例えば、2−ピリジンカルボン酸、3−ピリジンカルボン酸、4−ピリジンカルボン酸、ピラジンカルボン酸、2−キノリンカルボン酸(キナルジン酸)、ピロリドンカルボン酸、DL−ピログルタミン酸、DL−ピペコリン酸等が挙げられる。
【0034】
窒素以外のヘテロ原子を含有する複素環を有するモノカルボン酸としては、酸素原子のみをヘテロ原子として含有する複素環を有するモノカルボン酸が挙げられ、具体的には、2−フランカルボン酸、3−フランカルボン酸、テトラヒドロフラン−2−カルボン酸等が挙げられる。
【0035】
炭素数4以上で水酸基を有するモノカルボン酸の炭素数は4〜10であることが好ましい。このようなモノカルボン酸として具体的には、サリチル酸、2−ヒドロキシイソ酪酸、グリセリン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、ヒドロキシピバル酸、リンゴ酸等が挙げられる。
【0036】
アミノ基を有するモノカルボン酸(アミノ酸等)としては、アラニン、グリシン、グリシルグリシン、アミノ酪酸、N−アセチルグリシン、N−(tert−ブトキシカルボニル)グリシン、プロリン、trans−4−ヒドロキシ−L−プロリン、フェニルアラニン、サルコシン、ヒダントイン酸、クレアチン、クレアチン水和物、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン等が挙げられる。
【0037】
これらの中でもさらに好ましいモノカルボン酸としては、テトラヒドロフラン−2−カルボン酸、2−フランカルボン酸、2−ピリジンカルボン酸、ピログルタミン酸、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン、N−アセチルグリシン、N−(tert−ブトキシカルボニル)グリシン、クレアチン水和物、2−ヒドロキシイソ酪酸、グリセリン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸が挙げられる。
【0038】
これらの中で特に好ましいモノカルボン酸は、テトラヒドロフラン−2−カルボン酸、ピログルタミン酸、N−アセチルグリシン、2−ヒドロキシイソ酪酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、および2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸である。
【0039】
上記モノカルボン酸のなかでも、所定のpHの範囲内で、金属酸化物粒子とノニオン性ポリマー(P)とともに用いた場合に、酸化ケイ素膜に対する十分に高い研磨速度を維持しながら、窒化ケイ素膜に対する研磨速度を低く抑え、酸化ケイ素と窒化ケイ素との高い選択比が得られる観点から、酸素原子のみをヘテロ原子として含有する複素環を有するモノカルボン酸が好ましく、テトラヒドロフラン−2−カルボン酸が特に好ましい。単座配位子をもつ有機酸は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
上記のモノカルボン酸に代表される単座配位子をもつ有機酸は、塩の形でも用いることができる。塩としては、アンモニウム塩、4級アンモニウム塩、カリウム塩のようなアルカリ金属塩、有機アミン塩等が挙げられる。
【0041】
単座配位子をもつ有機酸の含有割合(濃度)は、研磨剤の全質量に対して0.003質量%以上1.0質量%以下であることが好ましい。単座配位子をもつ有機酸の含有割合が上記範囲の場合には、酸化ケイ素膜の研磨速度の向上および選択比の向上の効果が十分に得られ、かつ研磨砥粒である金属酸化物粒子の分散安定性も良好である。単座配位子を備える有機酸の含有割合は、研磨剤の全質量に対して0.003質量%以上1.0質量%以下が好ましく、0.04質量%以上0.80質量%以下がより好ましい。
【0042】
(ノニオン性ポリマー(P))
本発明の研磨剤に含有されるノニオン性ポリマー(P)は、ポリグリセリン、ポリオキシエチレンポリグリセリルエーテルおよびポリオキシプロピレンポリグリセリルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。ノニオン性ポリマー(P)はこれらの1種のみからなってもよく、2種以上からなってもよい。
【0043】
ポリグリセリンはグリセリンの2個以上が重合したグリセリンの多量体である。ポリオキシエチレンポリグリセリルエーテルは、ポリグリセリンに酸化エチレンを付加重合して得られる化合物であり、ポリオキシプロピレンポリグリセリルエーテルは、ポリグリセリンに酸化プロピレンを付加重合して得られる化合物である。ポリオキシエチレンポリグリセリルエーテルおよびポリオキシプロピレンポリグリセリルエーテルの出発物質となるポリグリセリンの重合度は特に限定されないが2〜10が好ましく、2が特に好ましい。すなわち、ポリオキシエチレンポリグリセリルエーテルおよびポリオキシプロピレンポリグリセリルエーテルとしては、それぞれ、ポリオキシエチレンジグリセリルエーテルおよびポリオキシプロピレンジグリセリルエーテルが好ましい。
【0044】
ノニオン性ポリマー(P)の重量平均分子量は300〜10万が好ましく、300〜10000がより好ましい。重量平均分子量が300以上であると、単座配位子をもつ有機酸が金属酸化物粒子の表面および酸化ケイ素膜を含む被研磨面に吸着した状態を安定的に確保できる。重量平均分子量が10万以下であると取り扱い性の点で有利である。
【0045】
ノニオン性ポリマー(P)のうち、ポリグリセリンとしては、下記式(1)で表されるポリマー(以下、ポリマー(1)という。)が好ましい。ポリオキシエチレンポリグリセリルエーテルとしては、下記式(2)で表されるポリマー(以下、ポリマー(2)という。)が好ましい。ポリオキシプロピレンポリグリセリルエーテルとしては、下記式(3)で表されるポリマー(以下、ポリマー(3)という。)が好ましい。ノニオン性ポリマー(P)は、ポリマー(1)、ポリマー(2)およびポリマー(3)から選ばれる1種を含んでよく、2種以上を含んでもよい。
【0046】
【化1】
(ただし、式(1)において、n≧4であり、式(2)において、p1+q1+r1+s1≧4であり、式(3)においてp2+q2+r2+s2≧4である。)
【0047】
ポリマー(1)〜ポリマー(3)の好ましい態様を以下に例示するが、ノニオン性ポリマー(P)はこれらに限定されるものではない。
【0048】
ポリマー(1)はnで示される重合度が4以上のポリグリセリンである。ポリマー(1)としては、重量平均分子量が300以上のポリグリセリンが好ましい。重量平均分子量が300以上であると、単座配位子をもつ有機酸が金属酸化物粒子の表面および酸化ケイ素膜を含む被研磨面に吸着した状態を安定的に確保できる。ポリマー(1)の重量平均分子量の上限は、取り扱い性等の観点から10万程度が好ましい。ポリマー(1)の重量平均分子量はより好ましくは、300〜10000である。
【0049】
なお、式(1)におけるnは分子間の平均の値を示す。nは平均して4以上であり、nの上限は上記上限の重量平均分子量を与える数値である。なお、本明細書における重量平均分子量は、特に断りのない限りゲル浸透クロマトグラフ(GPC)により測定される重量平均分子量である。
【0050】
ポリマー(2)は、ジグリセリンに、酸化エチレンを付加重合して得られるポリオキシエチレンジグリセリルエーテルである。ポリマー(2)としては、重量平均分子量が300以上のものが好ましい。重量平均分子量が300以上であると、単座配位子をもつ有機酸が金属酸化物粒子の表面および酸化ケイ素膜を含む被研磨面に吸着した状態を安定的に確保できる。ポリマー(2)の重量平均分子量の上限は、取り扱い性等の観点から10万程度が好ましい。ポリマー(2)の重量平均分子量はより好ましくは、300〜10000である。
【0051】
式(2)において、4個のオキシエチレン鎖の繰り返し単位の合計であるp1+q1+r1+s1が4以上であり、該合計が4以上であればp1、q1、r1、s1の個々の数値は限定されない。ここで、p1+q1+r1+s1≧4であるとは、分子間の平均の値としてp1+q1+r1+s1が4以上であることを示す。また、p1+q1+r1+s1の上限は上記上限の重量平均分子量を与える数値である。
【0052】
ポリマー(3)は、ジグリセリンに、酸化プロピレンを付加重合して得られるポリオキシプロピレンジグリセリルエーテルである。ポリマー(3)としては、重量平均分子量が400以上のものが好ましい。重量平均分子量が400以上であると、単座配位子をもつ有機酸が金属酸化物粒子の表面および酸化ケイ素膜を含む被研磨面に吸着した状態を安定的に確保できる。ポリマー(3)の重量平均分子量の上限は、取り扱い性等の観点から10万程度が好ましい。ポリマー(3)の重量平均分子量はより好ましくは、400〜10000である。
【0053】
式(3)において、4個のオキシプロピレン鎖の繰り返し単位の合計であるp2+q2+r2+s2が4以上であり、該合計が4以上であればp2、q2、r2、s2の個々の数値は限定されない。ここで、p2+q2+r2+s2≧4であるとは、分子間の平均の値としてp2+q2+r2+s2が4以上であることを示す。また、p2+q2+r2+s2の上限は上記上限の重量平均分子量を与える数値である。
【0054】
ポリマー(1)〜ポリマー(3)の市販品としては、例えば、ポリマー(1)については、阪本薬品工業株式会社製のポリグリセリン#310、ポリグリセリン#500、ポリグリセリン#750等が挙げられる。ポリマー(2)については、「SC−Eシリーズ」(商品名、阪本薬品工業株式会社製)として、p1+q1+r1+s1が13〜40、重量平均分子量750〜2000のポリオキシエチレンジグリセリルエーテル等が挙げられる。ポリマー(3)については、「SC−Pシリーズ」(商品名、阪本薬品工業株式会社製))として、p2+q2+r2+s2が9〜24、重量平均分子量750〜1600のポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル等が挙げられる
【0055】
ノニオン性ポリマー(P)は、ポリグリセリン、ポリオキシエチレンポリグリセリルエーテルおよびポリオキシプロピレンポリグリセリルエーテルから選ばれる少なくとも1種のみ、特には、ポリマー(1)、ポリマー(2)およびポリマー(3)から選ばれる少なくとも1種のみからなってもよく、本発明の効果を損なわない範囲においてノニオン性ポリマー(P)以外のノニオン性ポリマーを含んでもよい。ノニオン性ポリマー(P)は、好ましくは、ポリグリセリン、ポリオキシエチレンポリグリセリルエーテルおよびポリオキシプロピレンポリグリセリルエーテルから選ばれる少なくとも1種のみ、特には、ポリマー(1)、ポリマー(2)およびポリマー(3)から選ばれる少なくとも1種のみで構成される。
【0056】
ノニオン性ポリマー(P)の含有割合(濃度)は、研磨剤の全質量に対して0.0002質量%以上2質量%以下が好ましい。ノニオン性ポリマー(P)の含有量が0.0002質量%以上2質量%以下の場合には、酸化ケイ素膜に対して十分に高い研磨速度が得られるとともに高い選択比が得られ、パターンでの平坦性も良好である。ノニオン性ポリマー(P)の含有割合は、研磨剤の全質量に対して0.0005質量%以上1質量%以下が好ましく、0.001質量%以上0.80質量%以下がより好ましい。
【0057】
(pH)
本発明の研磨剤のpHは、3.0以上7.0以下である。研磨剤のpHが3.0以上7.0以下の場合には、酸化ケイ素膜の研磨速度の向上の効果が十分に得られ、かつ研磨砥粒である金属酸化物粒子の分散安定性も良好である。研磨剤のpHは、3.0以上5.0以下がより好ましく、3.0以上4.5以下が特に好ましい。
【0058】
本発明の研磨剤には、pHを3.0以上7.0以下の所定の値にするために、pH調整剤として、種々の無機酸または無機酸塩もしくは塩基性化合物を含有してもよい。無機酸または無機酸塩としては、特に限定されるものではないが、例えば、硝酸、硫酸、塩酸、リン酸、およびそれらのアンモニウム塩もしくはカリウム塩等を用いることができる。塩基性化合物は水溶性であることが好ましいが、特に限定されない。塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(以下、TMAHという。)やテトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウムヒドロキシド、モノエタノールアミン、エチレンジアミン等の有機アミン等を用いることができる。
【0059】
本発明の研磨剤には、上記成分以外に、分散剤(または凝集防止剤)を含有させることができる。分散剤とは、酸化セリウム粒子等の金属酸化物粒子を純水等の分散媒中に安定的に分散させるために含有させるものである。分散剤としては、陰イオン性、陽イオン性、両性の界面活性剤や、陰イオン性、陽イオン性、両性の高分子化合物が挙げられ、これらの1種または2種以上を含有させることができる。また、本発明の研磨剤には、潤滑剤、粘性付与剤または粘度調節剤、防腐剤等を必要に応じて適宜含有させることができる。
【0060】
本発明の研磨剤は、保管や輸送の利便性のため、金属酸化物粒子の分散液(以下、分散液αともいう。)と、単座配位子をもつ有機酸とノニオン性ポリマー(P)を水に溶解させた水溶液(以下、水溶液βともいう。)の2液として、好ましくはいずれのpHも3.0以上7.0以下となるように、別々に準備し、使用時に混合してもよい。なお、この水溶液βが、以下に示す研磨用添加液である。
【0061】
<研磨用添加液>
本発明の研磨用添加液は、金属酸化物粒子の分散液(上記の分散液α)と混合して研磨剤を調製するための添加液であって、単座配位子をもつ有機酸と、ポリグリセリン、ポリオキシエチレンポリグリセリルエーテルおよびポリオキシプロピレンポリグリセリルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むノニオン性ポリマー(上記のノニオン性ポリマー(P))と、水を含有し、pHが3.0以上7.0以下であることを特徴とする。研磨剤の調製において、この研磨用添加液を用いることで、研磨剤の保管や輸送の利便性を向上させることができる。
【0062】
本発明の研磨用添加液において、含有される単座配位子をもつ有機酸、ノニオン性ポリマー(P)、水の各成分、および液のpHについては、前記研磨剤に含有される各成分および液のpHについて記載したものと同様である。
【0063】
本発明の研磨用添加液において、単座配位子をもつ有機酸の含有割合(濃度)は、特に限定されないが、添加液の取り扱いのし易さや、金属酸化物粒子の分散液との混合のし易さの観点から、添加液の全量に対して0.003質量%以上10質量%以下が好ましい。
【0064】
本発明の研磨用添加液において、ノニオン性ポリマー(P)の含有割合(濃度)は、特に限定されないが、添加液の取り扱いのし易さや、金属酸化物粒子の分散液との混合のし易さの観点から、添加液の全量に対して0.0002質量%以上10質量%以下が好ましい。
【0065】
本発明の研磨用添加液のpHはpHが3.0以上7.0以下である。研磨用添加液のpHが3.0以上7.0以下の場合には、金属酸化物粒子の分散液と混合することで、酸化ケイ素膜の研磨速度の向上、およびパターン基板の研磨における平坦性の向上等の効果が十分に得られ、かつ研磨砥粒である金属酸化物粒子の分散安定性も良好な研磨剤が得られる。研磨用添加液のpHは、3.0以上5.0以下がより好ましく、3.0以上4.5以下が特に好ましい。
【0066】
このような研磨用添加液と混合される金属酸化物粒子の分散液において、液中の金属酸化物粒子の含有割合(濃度)は、金属酸化物粒子の分散性および分散液の取り扱いのし易さ等の観点から、0.01質量%以上40質量%以下が好ましい。0.01質量%以上20質量%以下がより好ましく、0.01質量%以上10質量%以下が特に好ましい。
【0067】
本発明の研磨用添加液を、金属酸化物粒子の分散液と混合することで、酸化ケイ素膜に対する十分に高い平坦性を維持しながら、研磨速度が向上された、前記研磨剤を実現することができる。なお、研磨用添加液と金属酸化物粒子の分散液との混合においては、研磨用添加液を金属酸化物粒子の分散液に添加して混合してもよいし、研磨用添加液に金属酸化物粒子の分散液を添加して混合してもよい。
【0068】
研磨用添加液と金属酸化物粒子の分散液との混合比率は、特に限定されず、混合後の研磨剤において、単座配位子をもつ有機酸およびノニオン性ポリマー(P)の含有割合(濃度)が、研磨剤の全量に対して、それぞれ0.003質量%以上1.0質量%以下および0.0002質量%以上2質量%以下となる混合比率が好ましい。研磨用添加液および金属酸化物粒子の分散液の混合のし易さの観点からは、研磨用添加液:金属酸化物粒子の分散液=130:1〜1:130の質量比率で混合することが好ましい。
【0069】
なお、金属酸化物粒子の分散液(分散液α)と本発明の研磨用添加液(水溶液β)との2液に分け、これらを混合して研磨剤を調製する場合は、分散液αにおける金属酸化物粒子の含有割合(濃度)、および研磨用添加液(水溶液β)における単座配位子をもつ有機酸およびノニオン性ポリマー(P)の各濃度を、研磨剤として使用される際の2倍〜100倍の濃度に濃縮して調製し、濃縮された両液を混合した後、研磨剤としての使用時に希釈して所定の濃度にすることができる。より具体的には、例えば、分散液αにおける金属酸化物粒子の濃度と、研磨用添加液における単座配位子をもつ有機酸およびノニオン性ポリマー(P)の各濃度を、いずれも10倍にして調製した場合、分散液αを10質量部、研磨用添加液を10質量部、水を80質量部の割合で混合し、10倍に希釈して研磨剤とすることができる。
【0070】
<研磨剤の調製方法>
本発明の研磨剤を調製するには、純水やイオン交換水等の水に上記金属酸化物粒子を分散させた分散液に、単座配位子をもつ有機酸、およびノニオン性ポリマー(P)を加えて混合する方法が用いられる。なお、上記成分のみでpHが上記所定の範囲内となるように研磨剤が調製できればよいが、pHが上記所定の範囲内でない場合には、さらにpH調整剤を加えて、得られる研磨剤のpHが上記所定の範囲内となるように調製する。混合後、撹拌機等を用いて所定時間撹拌することで、均一な研磨剤が得られる。また、混合後、超音波分散機を用いて、より良好な分散状態を得ることもできる。
【0071】
本発明の研磨剤は、必ずしも予め構成する研磨成分をすべて混合したものとして、研磨の場に供給する必要はない。研磨の場に供給する際に、研磨成分が混合されて研磨剤の組成になってもよい。
【0072】
本発明の研磨剤は、保管や輸送の利便性のため、金属酸化物粒子の分散液(分散液α)と、上記の研磨用添加液(水溶液β)の2液として別々に準備し、使用時に混合してもよい。分散液αと水溶液βとの2液に分け、これらを混合して研磨剤を調製する場合は、上記のように、水溶液βにおける単座配位子をもつ有機酸およびノニオン性ポリマー(P)の濃度を、研磨剤使用時の例えば10倍程度に濃縮しておき、混合後所定の濃度になるように水で希釈してから使用してもよい
【0073】
<研磨方法>
本発明の実施形態の研磨方法は、上記の研磨剤を供給しながら研磨対象物の被研磨面と研磨パッドとを接触させ、両者の相対運動により研磨を行う方法である。ここで、研磨が行われる被研磨面は、例えば、半導体基板の二酸化ケイ素からなる面を含む表面である。半導体基板としては、上記のSTI用の基板が好ましい例として挙げられる。本発明の研磨方法は、半導体デバイスの製造において、多層配線間の層間絶縁膜の平坦化のための研磨にも有効である。
【0074】
STI用基板における二酸化ケイ素膜としては、テトラエトキシシラン(TEOS)を原料にしてプラズマCVD法で成膜された、いわゆるPE−TEOS膜が挙げられる。また、二酸化ケイ素膜として、高密度プラズマCVD法で成膜された、いわゆるHDP膜も挙げることができる。窒化ケイ素膜としては、シランまたはジクロロシランとアンモニアを原料として、低圧CVD法やプラズマCVD法で成膜したものが挙げられる。
【0075】
本発明の研磨剤を使用し上記の方法で研磨を行うことにより、高平坦化が実現できる。平坦性の評価は、例えば、STI用のパターンウェハを用いて行う。STI用のパターンの研磨は、窒化珪素膜が露出した時点で停止することが望ましく、パターンウェハの窒化珪素膜が削れないほど、平坦性には有利である。したがって、窒化珪素膜の膜厚の減少量を平坦性の指標とすることができる。窒化珪素膜の膜厚減少量が少ないほど、平坦性が良好であることを意味する。
【0076】
本発明の実施形態の研磨方法には、公知の研磨装置を使用できる。
図2は、本発明の研磨方法に使用可能な研磨装置の一例を示す図である。
この研磨装置20は、STI基板のような半導体基板21を保持する研磨ヘッド22と、研磨定盤23と、研磨定盤23の表面に貼り付けられた研磨パッド24と、研磨パッド24に研磨剤25を供給する研磨剤供給配管26とを備えている。研磨剤供給配管26から研磨剤25を供給しながら、研磨ヘッド22に保持された半導体基板21の被研磨面を研磨パッド24に接触させ、研磨ヘッド22と研磨定盤23とを相対的に回転運動させて研磨を行うように構成されている。なお、本発明の実施形態に使用される研磨装置はこのような構造のものに限定されない。
【0077】
研磨ヘッド22は、回転運動だけでなく直線運動をしてもよい。また、研磨定盤23および研磨パッド24は、半導体基板21と同程度またはそれ以下の大きさであってもよい。その場合は、研磨ヘッド22と研磨定盤23とを相対的に移動させることにより、半導体基板21の被研磨面の全面を研磨できるようにすることが好ましい。さらに、研磨定盤23および研磨パッド24は回転運動を行うものでなくてもよく、例えばベルト式で一方向に移動するものであってもよい。
【0078】
このような研磨装置20の研磨条件には特に制限はないが、研磨ヘッド22に荷重をかけて研磨パッド24に押し付けることでより研磨圧力を高め、研磨速度を向上させることができる。研磨圧力は0.5〜50kPa程度が好ましく、研磨速度における半導体基板21の被研磨面内の均一性、平坦性、スクラッチ等の研磨欠陥防止の観点から、3〜40kPa程度がより好ましい。研磨定盤23および研磨ヘッド22の回転数は、50〜500rpm程度が好ましいがこれに限定されない。また、研磨剤25の供給量については、研磨剤の組成や上記各研磨条件等により適宜調整される。
【0079】
研磨パッド24としては、不織布、発泡ポリウレタン、多孔質樹脂、非多孔質樹脂等からなるものを使用することができる。研磨パッド24への研磨剤25の供給を促進し、あるいは研磨パッド24に研磨剤25が一定量溜まるようにするために、研磨パッド24の表面に格子状、同心円状、らせん状等の溝加工を施してもよい。また、必要に応じて、パッドコンディショナーを研磨パッド24の表面に接触させて、研磨パッド24表面のコンディショニングを行いながら研磨してもよい。
【0080】
本発明の研磨方法によれば、半導体デバイスの製造における層間絶縁膜の平坦化やSTI用絶縁膜の平坦化等のCMP処理において、酸化ケイ素(例えば、二酸化ケイ素)からなる被研磨面を高い研磨速度で研磨することができるうえに、酸化ケイ素膜と窒化ケイ素膜との高い選択比を実現し、高い平坦性を達成することができる。
【実施例】
【0081】
以下、本発明を実施例および比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
例14は実施例、例16〜20は比較例
、例1〜13、15は参考例である。以下の例において、「%」は、特に断らない限り質量%を意味する。また、特性値は下記の方法により測定し評価した。
【0082】
[pH]
pHは、東亜ディーケーケー社製のpHメータHM−30Rを使用して測定した。
【0083】
[平均二次粒子径]
平均二次粒子径は、レーザー散乱・回折式の粒度分布測定装置(堀場製作所製、装置名:LA−920)を使用して測定した。
【0084】
[研磨特性]
研磨特性は、全自動CMP研磨装置(Applied Materials社製、装置名:Mirra)を用いて以下の研磨を行い評価した。研磨パッドは、2層パッド(Dow社製VP−3100)を使用し、研磨パッドのコンディショニングには、CVDダイヤモンドパッドコンディショナー(スリーエム社製、商品名:Trizact B5)を使用した。研磨条件は、研磨圧力を21kPa、研磨定盤の回転数を77rpm、研磨ヘッドの回転数を73rpmとした。また、研磨剤の供給速度は200ミリリットル/分とした。
【0085】
研磨速度の測定のために、研磨対象物(被研磨物)として、8インチシリコンウェハ上に、テトラエトキシシランを原料にプラズマCVDにより二酸化ケイ素膜が成膜された二酸化ケイ素膜付きブランケット基板と、8インチシリコンウェハ上に、CVDにより窒化ケイ素膜が成膜された窒化ケイ素膜付きブランケット基板をそれぞれ用いた。
【0086】
ブランケット基板上に成膜された二酸化ケイ素膜と窒化ケイ素膜の膜厚の測定には、KLA−Tencor社の膜厚計UV−1280SEを使用した。ブランケット基板の研磨前の膜厚と1分間研磨後の膜厚との差を求めることで、二酸化ケイ素膜と窒化ケイ素膜の研磨速度をそれぞれ算出した。基板の面内49点の研磨速度より得られた研磨速度の平均値(Å/分)を、研磨速度の評価指標とした。また、二酸化ケイ素膜の研磨速度と窒化ケイ素膜の研磨速度との比(二酸化ケイ素膜の研磨速度/窒化ケイ素膜の研磨速度)を、選択比として算出した。
【0087】
[例1]
平均二次粒子径120nmの酸化セリウム粒子を純水に分散させた酸化セリウム分散液(以下、酸化セリウム分散液aという。)を、研磨剤の全質量に対する酸化セリウム粒子の含有割合(濃度)が0.25%になるように純水に加えた後、さらに単座配位子をもつ有機酸であるテトラヒドロフラン−2−カルボン酸(以下、「THF−C」ともいう。)を含有割合(濃度)が0.10%になるように、ポリマー(2)であるポリオキシエチレンジグリセリルエーテル(商品名:SC−E750、阪本薬品工業株式会社製、式(2)におけるp1+q1+r1+s1≒13、重量平均分子量:750)(以下、ノニオン性ポリマーAという。表1において、「ポリオキシエチレンジグリセリルエーテル(Mw750)」と示す。Mwは重量平均分子量を意味する。)を含有割合(濃度)が0.010%になるように、それぞれ加えて撹拌し、さらにモノエタノールアミン(以下、MEAと示す。)を加えてpH3.5に調整して、研磨剤(1)を得た。
【0088】
[例2〜9]
例1と同じ酸化セリウム分散液aとテトラヒドロフラン−2−カルボン酸とノニオン性ポリマーAを、それぞれ表1に示す含有割合(濃度)になるように純水に加えて撹拌し、さらにMEAを加えて表1に示すpHに調整して、研磨剤(2)〜(9)を得た。
【0089】
[例10]
例1と同じ酸化セリウム分散液aとテトラヒドロフラン−2−カルボン酸とポリマー(1)であるポリグリセリン(商品名:ポリグリセリン#310、阪本薬品工業株式会社製、重量平均分子量:310)(以下、ノニオン性ポリマーBという。表1において、「ポリグリセリン(Mw310)」と示す。)を、それぞれ表1に示す含有割合(濃度)になるように純水に加えて撹拌し、さらにMEAを加えて表1に示すpHに調整して、研磨剤(10)を得た。
【0090】
[例11]
例1と同じ酸化セリウム分散液aとテトラヒドロフラン−2−カルボン酸とポリマー(3)であるポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル(商品名:SC−P400、阪本薬品工業株式会社製、式(3)におけるp2+q2+r2+s2≒4、重量平均分子量:400)(以下、ノニオン性ポリマーCという。表1において、「ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル(Mw400)」と示す。)を、それぞれ表1に示す含有割合(濃度)になるように純水に加えて撹拌し、さらにMEAを加えて表1に示すpHに調整して、研磨剤(11)を得た。
【0091】
[例12]
平均二次粒子径100nmの酸化セリウム粒子を純水に分散させた酸化セリウム分散液(以下、酸化セリウム分散液bという。)を、研磨剤の全質量に対する酸化セリウム粒子の含有割合(濃度)が0.25%になるように純水に加えた後、テトラヒドロフラン−2−カルボン酸とポリマー(2)であるポリオキシエチレンジグリセリルエーテル(商品名:SC−E1000、阪本薬品工業株式会社製、式(2)におけるp1+q1+r1+s1≒20、重量平均分子量:1000)(以下、ノニオン性ポリマーDという。表1において、「ポリオキシエチレンジグリセリルエーテル(Mw1000)」と示す。)をそれぞれ表1に示す含有割合(濃度)になるように純水に加えて撹拌し、さらにMEAを加えて表1に示すpHに調整して、研磨剤(12)を得た。
【0092】
[例13]
例1と同じ酸化セリウム分散液aと単座配位子をもつ有機酸であるN−アセチルグリシンとノニオン性ポリマーAを、それぞれ表1に示す含有割合(濃度)になるように純水に加えて撹拌し、さらにMEAを加えて表1に示すpHに調整して、研磨剤(13)を得た。
【0093】
[例14]
平均二次粒子径170nmの酸化セリウム粒子を純水に分散させた酸化セリウム分散液(以下、酸化セリウム分散液cという。)を、研磨剤の全質量に対する酸化セリウム粒子の含有割合(濃度)が0.25%になるように純水に加えた後、単座配位子をもつ有機酸である2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸とノニオン性ポリマーAをそれぞれ表1に示す含有割合(濃度)になるように純水に加えて撹拌し、さらにMEAを加えて表1に示すpHに調整して、研磨剤(14)を得た。
【0094】
[例15]
例14と同じ酸化セリウム分散液cと単座配位子をもつ有機酸であるDL−ピログルタミン酸とノニオン性ポリマーAを、それぞれ表1に示す含有割合(濃度)になるように純水に加えて撹拌し、さらにMEAを加えて表1に示すpHに調整して、研磨剤(15)を得た。
【0095】
[例16]
例1と同じ酸化セリウム分散液aとテトラヒドロフラン−2−カルボン酸とポリビニルアルコール(ノニオン性ポリマー(P)ではないノニオン性ポリマー)を、それぞれ表1に示す含有割合(濃度)になるように純水に加えて撹拌し、さらにMEAを加えて表1に示すpHに調整して、研磨剤(16)を得た。
【0096】
[例17]
例14と同じ酸化セリウム分散液cとDL−ピログルタミン酸を、それぞれ表1に示す含有割合(濃度)になるように純水に加えて撹拌し、さらにMEAを加えて表1に示すpHに調整して、研磨剤(17)を得た。
【0097】
[例18]
例1と同じ酸化セリウム分散液aとテトラヒドロフラン−2−カルボン酸を、表1に示す含有割合(濃度)になるように純水に加えて撹拌し、さらにMEAを加えて表1に示すpHに調整して、研磨剤(18)を得た。
【0098】
[例19]
例1と同じ酸化セリウム分散液aとテトラヒドロフラン−2−カルボン酸とノニオン性ポリマーAを、それぞれ表1に示す含有割合(濃度)になるように純水に加えて撹拌し、さらにMEAを加えて表1に示すpH(本発明の研磨剤の範囲外のpH)に調整して、研磨剤(19)を得た。
【0099】
[例20]
例1と同じ酸化セリウム分散液aと単座配位子をもつ有機酸ではない有機酸としてのポリアクリル酸とノニオン性ポリマーAを、それぞれ表1に示す含有割合(濃度)になるように純水に加えて撹拌し、さらに硝酸を加えて表1に示すpHに調整して、研磨剤(20)を得た。
【0100】
例1〜20で得られた研磨剤(1)〜(20)の研磨特性(二酸化ケイ素膜の研磨速度、窒化ケイ素膜の研磨速度、および選択比)を、それぞれ上記方法で測定した。測定結果を表1に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
表1から、以下のことがわかる。すなわち、金属酸化物粒子としての酸化セリウム粒子と、単座配位子をもつ有機酸と、ノニオン性ポリマー(P)と、水を含有し、pHが3.0以上7.0以下である、例1〜15の研磨剤(1)〜(15)を用いて研磨を行うことで、二酸化ケイ素膜に対する高い研磨速度が得られる。また、二酸化ケイ素膜と窒化ケイ素膜との選択比が極めて高くなることがわかる。
【0103】
それに対して、ノニオン性ポリマーとしてポリビニルアルコールを含有するがノニオン性ポリマー(P)を含有しない例16の研磨剤(16)、およびノニオン性ポリマーを全く含有しない例17の研磨剤(17)を用いた場合は、二酸化ケイ素膜の研磨速度が、例1〜15に比べて大幅に低くなることがわかる。また、ノニオン性ポリマーを全く含有せず、例17とは単座配位子をもつ有機酸の種類が異なる例18の研磨剤(18)、単座配位子をもつ有機酸ではない有機酸であるポリアクリル酸を含有する例20の研磨剤(20)を用いた場合は、二酸化ケイ素膜と窒化ケイ素膜との選択比が、例1〜15に比べて大幅に低くなることがわかる。また、pHを8.5に調整した例19の研磨剤(19)を用いた場合は、凝集したため研磨速度の評価ができなかった。