(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(a)塩化ビニル樹脂が、70質量%以上100質量%以下の(a1)塩化ビニル樹脂粒子、及び0質量%以上30質量%以下の(a2)塩化ビニル樹脂微粒子のみからなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の塩化ビニル樹脂組成物。
請求項1〜8のいずれか1項に記載の塩化ビニル樹脂組成物、または、請求項14に記載の製造方法に従って製造した塩化ビニル樹脂組成物を粉体成形することを特徴とする、塩化ビニル樹脂成形体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(塩化ビニル樹脂組成物)
本発明の塩化ビニル樹脂組成物は(a)塩化ビニル樹脂と、(b)可塑剤と、(c)分子量が900以上4000以下のポリオール系化合物とを含み、任意に添加剤を更に含有する。
【0021】
<(a)塩化ビニル樹脂>
ここで本発明において、(a)塩化ビニル樹脂としては、樹脂粒子である(a1)塩化ビニル樹脂粒子と、樹脂微粒子である(a2)塩化ビニル樹脂微粒子とが挙げられる。
(a1)塩化ビニル樹脂粒子および(a2)塩化ビニル樹脂微粒子を構成する塩化ビニル樹脂は、塩化ビニルの単独重合体の他、塩化ビニル単位を好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上含有する共重合体を含む。塩化ビニル共重合体の共単量体の具体例は、エチレン、プロピレンなどのオレフィン類;塩化アリル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、三フッ化塩化エチレンなどのハロゲン化オレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル類;イソブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アリル−3−クロロ−2−オキシプロピルエーテル、アリルグリシジルエーテルなどのアリルエーテル類;アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジエチル、無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸、そのエステルまたはその酸無水物類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル類;アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライドなどのアクリルアミド類;アリルアミン安息香酸塩、ジアリルジメチルアンモニウムクロライドなどのアリルアミンおよびその誘導体類;などである。以上に例示される単量体は、塩化ビニルと共重合可能な単量体(共単量体)の一部に過ぎず、共単量体としては、近畿化学協会ビニル部会編「ポリ塩化ビニル」日刊工業新聞社(1988年)第75〜104頁に例示されている各種単量体が使用され得る。これらの単量体の1種又は2種以上が使用され得る。上記(a1)塩化ビニル樹脂粒子および(a2)塩化ビニル樹脂微粒子を構成する塩化ビニル樹脂には、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、塩素化ポリエチレンなどの樹脂に、(1)塩化ビニルまたは(2)塩化ビニルと前記共単量体とがグラフト重合された樹脂も含まれる。
ここで、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味する。
【0022】
上記(a1)塩化ビニル樹脂粒子および(a2)塩化ビニル樹脂微粒子を構成する塩化ビニル樹脂は、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法、塊状重合法など、従来から知られているいずれの製造法によっても製造され得る。
【0023】
なお、塩化ビニル樹脂組成物において、(a1)塩化ビニル樹脂粒子は、マトリックス樹脂として機能する。また、(a2)塩化ビニル樹脂微粒子は、マトリックス樹脂として機能しつつ、後述するダスティング剤(粉体流動性改良剤)として機能する。
【0024】
[(a1)塩化ビニル樹脂粒子]
ここで、(a1)塩化ビニル樹脂粒子の平均粒子径は、好ましくは50μm以上500μm以下、より好ましくは50μm以上250μm以下、更に好ましくは100μm以上200μm以下である。(a1)塩化ビニル樹脂粒子の平均粒子径が上記範囲であると、塩化ビニル樹脂組成物の粉体流動性が良好であり、かつ、上記塩化ビニル樹脂組成物を粉体成形してなる塩化ビニル樹脂成形体の、発泡ポリウレタン成形体への接着性が向上する。
なお、「平均粒子径」は、JIS Z8825に準拠し、例えばレーザー回折法により測定される体積平均粒子径を指す。
【0025】
上記(a1)塩化ビニル樹脂粒子を構成する塩化ビニル樹脂の平均重合度は、好ましくは800以上5000以下であり、より好ましくは800以上3000以下である。上記(a1)塩化ビニル樹脂粒子を構成する塩化ビニル樹脂の平均重合度が上記範囲であると、塩化ビニル樹脂組成物を粉体成形してなる塩化ビニル樹脂成形体に、発泡ポリウレタン成形体への高い接着性を付与できる。
なお、「平均重合度」は、JIS K 6720−2に準拠して測定される。
【0026】
また、(a1)塩化ビニル樹脂粒子を構成する塩化ビニル樹脂としては、懸濁重合法により製造された塩化ビニル樹脂を用いることが好ましい。
【0027】
[(a2)塩化ビニル樹脂微粒子]
本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、上記(a)塩化ビニル樹脂として、(a2)塩化ビニル樹脂微粒子を使用することもできる。上記(a2)塩化ビニル樹脂微粒子は、マトリックス樹脂として機能しつつ、塩化ビニル樹脂組成物の粉体流動性を向上させるダスティング剤として機能する。
【0028】
ここで、上記(a2)塩化ビニル樹脂微粒子の好ましい平均粒子径は0.1μm以上10μm以下である。(a2)塩化ビニル樹脂微粒子の平均粒子径が上記範囲であると、塩化ビニル樹脂組成物の粉体流動性が向上するからである。
なお、「平均粒子径」は、JIS Z8825に準拠し、例えば、レーザー回折法により測定される体積平均粒子径を指す。
【0029】
上記(a2)塩化ビニル樹脂微粒子を構成する塩化ビニル樹脂の好ましい平均重合度は、好ましくは500以上5000以下であり、より好ましくは600以上3000以下であり、更に好ましくは700以上2500以下である。上記(a2)塩化ビニル樹脂微粒子を構成する塩化ビニル樹脂の平均重合度が上記範囲であると、塩化ビニル樹脂組成物の粉体流動性が良好であり、かつ、上記塩化ビニル樹脂組成物を粉体成形してなる塩化ビニル樹脂成形体の、発泡ポリウレタン成形体への接着性が向上する。
【0030】
また、(a2)塩化ビニル樹脂微粒子を構成する塩化ビニル樹脂としては、乳化重合法により製造された塩化ビニル樹脂を用いることが好ましい。
【0031】
[(a)塩化ビニル樹脂中における(a1)塩化ビニル樹脂粒子及び(a2)塩化ビニル樹脂微粒子の配合割合]
ここで(a)塩化ビニル樹脂は、好適には、少なくとも(a1)塩化ビニル樹脂粒子を含み、任意に、(a2)塩化ビニル樹脂微粒子を含む。例えば、(a)塩化ビニル樹脂100質量%が、70質量%以上100質量%以下の(a1)塩化ビニル樹脂粒子、及び0質量%以上30質量%以下の(a2)塩化ビニル樹脂微粒子のみからなることが好ましい。このような組成の(a)塩化ビニル樹脂を使用すれば、塩化ビニル樹脂組成物を粉体成形してなる塩化ビニル樹脂成形体の、発泡ポリウレタン成形体への接着性が向上する。
そして(a)塩化ビニル樹脂100質量%は、70質量%以上99質量%以下の(a1)塩化ビニル樹脂粒子、及び1質量%以上30質量%以下の(a2)塩化ビニル樹脂微粒子のみからなることがより好ましく、75質量%以上95質量%以下の(a1)塩化ビニル樹脂粒子、及び5質量%以上25質量%以下の(a2)塩化ビニル樹脂微粒子のみからなることが更に好ましく、80質量%以上92質量%以下の(a1)塩化ビニル樹脂粒子、及び8質量%以上20質量%以下の(a2)塩化ビニル樹脂微粒子のみからなることが特に好ましい。上記(a1)塩化ビニル樹脂粒子及び(a2)塩化ビニル樹脂微粒子の配合割合が上記範囲であると、塩化ビニル樹脂組成物の粉体流動性が良好であり、かつ、上記塩化ビニル樹脂組成物を粉体成形してなる塩化ビニル樹脂成形体の、発泡ポリウレタン成形体への接着性が向上する。
【0032】
<可塑剤>
本発明の塩化ビニル樹脂組成物が含有する(b)可塑剤は、好ましくは、トリメリット酸エステル可塑剤である。トリメリット酸エステル可塑剤は、トリメリット酸と一価アルコールとのエステル化合物である。
【0033】
上記一価アルコールの具体例としては、特に限定されることなく、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−エチルヘキサノール、1−ノナノール、1−デカノール、1−ウンデカノール、1−ドデカノール等が挙げられる。
【0034】
中でも、(b)可塑剤として好ましいトリメリット酸エステル可塑剤は、上述した一価アルコールによりトリメリット酸のカルボキシ基を実質的に全てエステル化したトリエステル化物である。トリエステル化物におけるアルコール残基部分は、同一のアルコール由来であってもよく、それぞれ異なるアルコール由来のものであってもよい。
上記トリメリット酸エステル可塑剤は、単一の化合物からなるものであってもよいし、異なる化合物の混合物であってもよい。
【0035】
好適なトリメリット酸エステル可塑剤の具体例は、トリメリット酸トリ−n−ヘキシル、トリメリット酸トリ−n−ヘプチル、トリメリット酸トリ−n−オクチル、トリメリット酸トリ−(2−エチルヘキシル)、トリメリット酸トリ−n−ノニル、トリメリット酸トリ−n−デシル、トリメリット酸トリイソデシル、トリメリット酸トリ−n−ウンデシル、トリメリット酸トリ−n−ドデシル、トリメリット酸トリ−n−アルキルエステル(炭素数が異なるアルキル基〔但し、炭素数は6〜12である。〕を分子内に2種以上有するエステル)、トリメリット酸トリアルキルエステル(炭素数が異なるアルキル基〔但し、炭素数は8〜10である。〕を分子内に2種以上有するエステル)、及びこれらの混合物等である。
より好ましいトリメリット酸エステル可塑剤の具体例は、トリメリット酸トリ−n−オクチル、トリメリット酸トリ−(2−エチルヘキシル)、トリメリット酸トリ−n−ノニル、トリメリット酸トリ−n−デシル、トリメリット酸トリ−n−アルキルエステル(炭素数が異なるアルキル基〔但し、炭素数は8〜10である。〕を分子内に2種以上有するエステル)、及びこれらの混合物等である。
【0036】
本発明の塩化ビニル樹脂組成物が含有する(b)可塑剤として用い得るトリメリット酸エステル可塑剤以外の可塑剤としては、例えば、以下の一次可塑剤及び二次可塑剤などが挙げられる。
【0037】
いわゆる一次可塑剤としては、
ピロメリット酸テトラ−n−ヘキシル、ピロメリット酸テトラ−n−ヘプチル、ピロメリット酸テトラ−n−オクチル、ピロメリット酸テトラ−(2−エチルヘキシル)、ピロメリット酸テトラ−n−ノニル、ピロメリット酸テトラ−n−デシル、ピロメリット酸テトライソデシル、ピロメリット酸テトラ−n−ウンデシル、ピロメリット酸テトラ−n−ドデシル、ピロメリット酸テトラ−n−アルキルエステル(炭素数が異なるアルキル基〔但し、炭素数は6〜12である。〕を分子内に2種以上有するエステル)等のピロメリット酸エステル可塑剤;
ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−(2−エチルヘキシル)フタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジフェニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジトリデシルフタレート、ジウンデシルフタレート、ジベンジルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジノニルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート等のフタル酸誘導体;
ジメチルイソフタレート、ジ−(2−エチルヘキシル)イソフタレート、ジイソオクチルイソフタレート等のイソフタル酸誘導体;
ジ−(2−エチルヘキシル)テトラヒドロフタレート、ジ−n−オクチルテトラヒドロフタレート、ジイソデシルテトラヒドロフタレート等のテトラヒドロフタル酸誘導体;
ジ−n−ブチルアジペート、ジ(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソデシルアジペート、ジイソノニルアジペート等のアジピン酸誘導体;
ジ−(2−エチルヘキシル)アゼレート、ジイソオクチルアゼレート、ジ−n−ヘキシルアゼレート等のアゼライン酸誘導体;
ジ−n−ブチルセバケート、ジ−(2−エチルヘキシル)セバケート、ジイソデシルセバケート、ジ−(2−ブチルオクチル)セバケート等のセバシン酸誘導体;
ジ−n−ブチルマレエート、ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、ジ−(2−エチルヘキシル)マレエート等のマレイン酸誘導体;
ジ−n−ブチルフマレート、ジ−(2−エチルヘキシル)フマレート等のフマル酸誘導体;
トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ−(2−エチルヘキシル)シトレート等のクエン酸誘導体;
モノメチルイタコネート、モノブチルイタコネート、ジメチルイタコネート、ジエチルイタコネート、ジブチルイタコネート、ジ−(2−エチルヘキシル)イタコネート等のイタコン酸誘導体;
ブチルオレエート、グリセリルモノオレエート、ジエチレングリコールモノオレエート等のオレイン酸誘導体;
メチルアセチルリシノレート、ブチルアセチルリシノレート、グリセリルモノリシノレート、ジエチレングリコールモノリシノレート等のリシノール酸誘導体;
n−ブチルステアレート、ジエチレングリコールジステアレート等のステアリン酸誘導体;
ジエチレングリコールモノラウレート、ジエチレングリコールジペラルゴネート、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル等のその他の脂肪酸誘導体;
トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ−(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(クロロエチル)ホスフェート等のリン酸誘導体;
ジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ−(2−エチルブチレート)、トリエチレングリコールジ−(2−エチルヘキソエート)、ジブチルメチレンビスチオグリコレート等のグリコール誘導体;
グリセロールモノアセテート、グリセロールトリアセテート、グリセロールトリブチレート等のグリセリン誘導体;
エポキシヘキサヒドロフタル酸ジイソデシル、エポキシトリグリセライド、エポキシ化オレイン酸オクチル、エポキシ化オレイン酸デシル等のエポキシ誘導体;
アジピン酸系ポリエステル、セバシン酸系ポリエステル、フタル酸系ポリエステル等のポリエステル系可塑剤
等が挙げられる。
【0038】
また、いわゆる二次可塑剤としては、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等のエポキシ化植物油;塩素化パラフィン、トリエチレングリコールジカプリレート等のグリコールの脂肪酸エステル、ブチルエポキシステアレート、フェニルオレエート、ジヒドロアビエチン酸メチル等が挙げられる。
【0039】
そして、上記トリメリット酸エステル可塑剤以外の可塑剤の中でも、エポキシ化植物油が好ましい。
なお、本発明の塩化ビニル樹脂組成物では、1種又は2種以上の、上記トリメリット酸エステル可塑剤以外の可塑剤を使用しうる。また、二次可塑剤を用いる場合、当該二次可塑剤と等質量以上の一次可塑剤を併用することが好ましい。
【0040】
そして、上記(b)可塑剤の合計含有量は、上記(a)塩化ビニル樹脂100質量部に対して、好ましくは30質量部以上190質量部以下であり、より好ましくは60質量部以上170質量部以下であり、更に好ましくは90質量部以上160質量部以下である。上記(b)可塑剤の含有量が上記範囲であると、塩化ビニル樹脂組成物を粉体成形してなる塩化ビニル樹脂成形体に、発泡ポリウレタン成形体への高い接着性を付与できる。
【0041】
<(c)分子量が900以上4000以下のポリオール系化合物>
本発明の塩化ビニル樹脂組成物が含有する(c)分子量が900以上4000以下のポリオール系化合物は、分子量が900以上4000以下であれば特定のポリオール系化合物に限定されない。そして本発明においてポリオール系化合物としては、例えば、アルキレングリコール系ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトン系ポリエステルポリオール等のポリエステルポリオール;ポリエーテルポリオ―ルが挙げられる。
【0042】
[ポリエステルポリオール]
アルキレングリコール系ポリエステルポリオールとしては、アルキレングリコールと脂肪族二塩基酸との縮合体が挙げられる。そしてアルキレングリコール系ポリエステルポリオールは、例えば、アルキレングリコールと脂肪族二塩基としてのアジピン酸との縮合体であるポリエステルポリオールであり、エチレンアジペートエステルポリオール、ブチレンアジペートエステルポリオール、ヘキシレンアジペートエステルポリオール、エチレンプロピレンアジペートエステルポリオール、エチレンブチレンアジペートエステルポリオール、及びエチレンネオペンチレンアジペートエステルポリオール等が挙げられる。
【0043】
ポリカプロラクトン系ポリエステルポリオールとしては、カプロラクトンを開環重合して得られるポリカプロラクトンをポリオールに結合して得られるポリエステルポリオールが挙げられる。そしてポリカプロラクトン系ポリエステルポリオールの具体例として、以下の式(1)、式(2)で示される化合物が挙げられる。
【0046】
式(1)及び(2)中、a、b、cは、それぞれ独立して、好ましくは3以上8以下の整数であり、より好ましくは4以上7以下の整数であり、更に好ましくは5以上6以下の整数であり、特に好ましくは5である。l、m、nはそれぞれ独立して同一の又は異なる整数である。そして、l、m、nの各々の範囲は、式(1)、式(2)で示されるポリカプロラクトン系ポリエステルポリオールの分子量が900以上4000以下となる範囲であれば特に限定されない。なおl、m、nの各々の範囲は、好ましくは、当該分子量が900以上3000以下となる範囲であり、より好ましくは当該分子量が900以上2000以下となる範囲である。例えばl、m、nは、それぞれ独立して1以上80以下の整数である。Rはトリオール又はジオール由来の構造であり、特定の構造に限定されない。例えばRは、C、O、H、及びNからなる群から選択される2種以上の原子で構成される有機基である。
なお、式(1)及び(2)で示されるポリカプロラクトン系ポリエステルポリオールは市販されている。式(1)のポリカプロラクトン系ポリエステルポリオール(ポリエステルトリオール)の市販品としては、プラクセル(登録商標)312、プラクセル320(何れも(株)ダイセル製)が挙げられ、式(2)のポリカプロラクトン系ポリエステルポリオール(ポリエステルジオール)の市販品としては、プラクセル210((株)ダイセル製)が挙げられる。
【0047】
[ポリエーテルポリオール]
ポリエーテルポリオールとしては、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリ(オキシプロピレン)グリコール等が挙げられる。
【0048】
これらのポリオール系化合物は、1種単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。そして、これらの中でも、ポリオール系化合物としては、ポリエステルポリオールが好ましく、ポリカプロラクトン系ポリエステルポリオールがより好ましい。
【0049】
ここで、上記(c)ポリオール系化合物の分子量は900以上4000以下であり、好ましくは900以上3000以下であり、より好ましくは900以上2000以下である。上記(c)ポリオール系化合物の分子量が上記範囲であると、塩化ビニル樹脂組成物を粉体成形してなる塩化ビニル樹脂成形体に、発泡ポリウレタン成形体への高い接着性を付与できる。
【0050】
また上記(c)分子量が900以上4000以下のポリオール系化合物の含有量は、上記(a)塩化ビニル樹脂100質量部に対して好ましくは0.1質量部以上30質量部以下であり、より好ましくは0.1質量部以上20質量部以下であり、更に好ましくは0.2質量部以上10質量部以下である。上記(c)分子量が900以上4000以下のポリオール系化合物の含有量が上記範囲であると、塩化ビニル樹脂組成物を粉体成形してなる塩化ビニル樹脂成形体に、発泡ポリウレタン成形体への高い接着性を付与できる。
【0051】
<添加剤>
[過塩素酸処理ハイドロタルサイト]
本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、過塩素酸処理ハイドロタルサイトを含有していてもよい。過塩素酸処理ハイドロタルサイトは、例えば、ハイドロタルサイトを過塩素酸の希薄水溶液中に加えて撹拌し、その後必要に応じて、ろ過、脱水または乾燥することによって、ハイドロタルサイト中の炭酸アニオン(CO
32−)の少なくとも一部を過塩素酸アニオン(ClO
4−)で置換して(炭酸アニオン1モルにつき過塩素酸アニオン2モルが置換する)、容易に製造することができる。上記ハイドロタルサイトと上記過塩素酸とのモル比は任意に設定できるが、一般には、ハイドロタルサイト1モルに対し、過塩素酸0.1〜2モルとする。
【0052】
未処理(未置換)のハイドロタルサイト中の炭酸アニオンの過塩素酸アニオンへの置換率は、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは85モル%以上である。また、未処理(未置換)のハイドロタルサイト中の炭酸アニオンの過塩素酸アニオンへの置換率は、好ましくは95モル%以下である。未処理(未置換)のハイドロタルサイト中の炭酸アニオンの過塩素酸アニオンへの置換率が上記の範囲内にあることにより、塩化ビニル樹脂組成物を粉体成形してなる塩化ビニル樹脂成形体に、良好な低温での柔軟性を付与できる。
【0053】
ハイドロタルサイトは、一般式:[Mg
1−xAl
x(OH)
2]
x+[(CO
3)
x/2・mH
2O]
x−で表される不定比化合物で、プラスに荷電した基本層[Mg
1−xAl
x(OH)
2]
x+と、マイナスに荷電した中間層[(CO
3)
x/2・mH
2O]
x−とからなる層状の結晶構造を有する無機物質である。ここで、上記一般式中、xは0より大きく0.33以下の範囲の数である。天然のハイドロタルサイトは、Mg
6Al
2(OH)
16CO
3・4H
2Oである。合成されたハイドロタルサイトとしては、Mg
4.5Al
2(OH)
13CO
3・3.5H
2Oが市販されている。合成ハイドロタルサイトの合成方法は、例えば特公昭61−174270号公報に記載されている。
【0054】
過塩素酸処理ハイドロタルサイトの、上記(a)塩化ビニル樹脂100質量部に対する好ましい含有量は0.5質量部以上7質量部以下であり、より好ましい含有量は1質量部以上6質量部以下であり、更に好ましい含有量は1.5質量部以上5.5質量部以下である。過塩素酸処理ハイドロタルサイトの含有量が上記範囲であると、塩化ビニル樹脂組成物を粉体成形してなる塩化ビニル樹脂成形体に、良好な低温での柔軟性を付与できる。
【0055】
[ゼオライト]
本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、ゼオライトを安定剤として含有し得る。ゼオライトは、一般式:M
x/n・[(AlO
2)
x・(SiO
2)
y]・zH
2O(一般式中、Mは原子価nの金属イオン、x+yは単位格子当たりの四面体数、zは水のモル数である)で表される化合物である。当該一般式中のMの種類としてはNa、Li、Ca、Mg、Znなどの一価又は二価の金属及びこれらの混合型が挙げられる。
【0056】
ゼオライトの含有量は特定の範囲に限定されない。ゼオライトの好ましい含有量は、(a)塩化ビニル樹脂100質量部に対して0.1質量部以上5質量部以下である。
【0057】
[脂肪酸金属塩]
本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、脂肪酸金属塩を含有していてもよい。好ましい脂肪酸金属塩は、一価脂肪酸金属塩であり、より好ましい脂肪酸金属塩は、炭素数12〜24の一価脂肪酸金属塩であり、更に好ましい脂肪酸金属塩は、炭素数15〜21の一価脂肪酸金属塩である。脂肪酸金属塩の具体例は、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ストロンチウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウム、ラウリン酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸バリウム、2−エチルヘキサン酸亜鉛、リシノール酸バリウム、リシノール酸亜鉛等である。脂肪酸金属塩を構成する金属としては、多価陽イオンを生成しうる金属が好ましく、2価陽イオンを生成しうる金属がより好ましく、周期表第3周期〜第6周期の、2価陽イオンを生成しうる金属が更に好ましく、周期表第4周期の、2価陽イオンを生成しうる金属が特に好ましい。最も好ましい脂肪酸金属塩はステアリン酸亜鉛である。
【0058】
上記脂肪酸金属塩の、上記(a)塩化ビニル樹脂100質量部に対する好ましい含有量は0.05質量部以上5質量部以下であり、より好ましくは0.1質量部以上1質量部以下であり、更に好ましくは0.1質量部以上0.5質量部以下である。脂肪酸金属塩の含有量が上記範囲であると、塩化ビニル樹脂組成物の加熱成形後の色差の値を小さくできる。
【0059】
[その他のダスティング剤]
本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、上記(a2)塩化ビニル樹脂微粒子以外のダスティング剤(以下、「その他のダスティング剤」ということがある。)を含有し得る。その他のダスティング剤としては、炭酸カルシウム、タルク、酸化アルミニウム等の無機微粒子;ポリアクリロニトリル樹脂微粒子、ポリ(メタ)アクリレート樹脂微粒子、ポリスチレン樹脂微粒子、ポリエチレン樹脂微粒子、ポリプロピレン樹脂微粒子、ポリエステル樹脂微粒子、ポリアミド樹脂微粒子等の有機微粒子が挙げられる。中でも、平均粒子径が10nm以上100nm以下の無機微粒子が好ましい。
【0060】
その他のダスティング剤の含有量は特定の範囲に限定されない。その他のダスティング剤の含有量は、(a)塩化ビニル樹脂100質量部に対して、好ましくは20質量部以下であり、更に好ましくは10質量部以下である。
【0061】
[その他の添加剤]
本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、着色剤、耐衝撃性改良剤、過塩素酸処理ハイドロタルサイト以外の過塩素酸化合物(過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム等)、酸化防止剤、防カビ剤、難燃剤、帯電防止剤、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、発泡剤、β−ジケトン類、滑剤等の、その他の添加剤を含有し得る。
【0062】
着色剤の具体例は、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ポリアゾ縮合顔料、イソインドリノン系顔料、銅フタロシアニン系顔料、チタンホワイト、カーボンブラックである。本発明の塩化ビニル樹脂組成物では、1種又は2種以上の顔料が使用される。キナクリドン系顔料は、p−フェニレンジアントラニル酸類が濃硫酸で処理されて得られ、黄みの赤から赤みの紫の色相を示す。キナクリドン系顔料の具体例は、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ、キナクリドンバイオレットである。
ペリレン系顔料は、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸無水物と芳香族第一級アミンの縮合反応により得られ、赤から赤紫、茶色の色相を示す。ペリレン系顔料の具体例は、ペリレンレッド、ペリレンオレンジ、ペリレンマルーン、ペリレンバーミリオン、ペリレンボルドーである。
ポリアゾ縮合顔料は、アゾ色素が溶剤中で縮合されて高分子量化されて得られ、黄、赤系顔料の色相を示す。ポリアゾ縮合顔料の具体例は、ポリアゾレッド、ポリアゾイエロー、クロモフタルオレンジ、クロモフタルレッド、クロモフタルスカーレットである。
イソインドリノン系顔料は、4,5,6,7−テトラクロロイソインドリノンと芳香族第一級ジアミンの縮合反応により得られ、緑みの黄色から、赤、褐色の色相を示す。イソインドリノン系顔料の具体例は、イソインドリノンイエローである。
銅フタロシアニン系顔料は、フタロシアニン類に銅を配位した顔料で、黄みの緑から鮮やかな青の色相を示す。銅フタロシアニン系顔料の具体例は、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルーである。
チタンホワイトは、二酸化チタンからなる白色顔料で、隠蔽力が大きく、アナタース型とルチル型がある。
カーボンブラックは、炭素を主成分とし、酸素、水素、窒素を含む黒色顔料である。カーボンブラックの具体例は、サーマルブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、ボーンブラックである。
【0063】
耐衝撃性改良剤の具体例は、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体、塩素化ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、クロロスルホン化ポリエチレン等である。本発明の塩化ビニル樹脂組成物では、1種又は2種以上の耐衝撃性改良剤を使用できる。なお、耐衝撃性改良剤は、塩化ビニル樹脂組成物中で微細な弾性粒子の不均一相となって分散する。当該弾性粒子にグラフト重合した鎖及び極性基が(a1)塩化ビニル樹脂粒子と相溶し、塩化ビニル樹脂組成物を粉体成形してなる塩化ビニル樹脂成形体の耐衝撃性が向上する。
【0064】
酸化防止剤の具体例は、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等である。
防カビ剤の具体例は、脂肪族エステル系防カビ剤、炭化水素系防カビ剤、有機窒素系防カビ剤、有機窒素硫黄系防カビ剤等である。
【0065】
難燃剤の具体例は、塩素化パラフィン等のハロゲン系難燃剤;リン酸エステル等のリン系難燃剤;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の無機水酸化物;等である。
【0066】
帯電防止剤の具体例は、脂肪酸塩類、高級アルコール硫酸エステル類、スルホン酸塩類等のアニオン系帯電防止剤;脂肪族アミン塩類、第四級アンモニウム塩類のカチオン系帯電防止剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル類等のノニオン系帯電防止剤等である。
【0067】
充填剤の具体例は、シリカ、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、クレー等である。
【0068】
光安定剤の具体例は、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ニッケルキレート系等の紫外線吸収剤、ヒンダートアミン系光安定剤等である。
【0069】
発泡剤の具体例は、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、N,N′−ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物、p−トルエンスルホニルヒドラジド、p,p−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)等のスルホニルヒドラジド化合物等の有機発泡剤;フロンガス、炭酸ガス、水、ペンタン等の揮発性炭化水素化合物;これらを内包したマイクロカプセル等のガス系の発泡剤等である。
【0070】
β−ジケトン類は、本発明の塩化ビニル樹脂組成物を粉体成形して得られる塩化ビニル樹脂成形体の初期色調の変動をより効果的に抑えるために用いられる。β−ジケトン類の具体例は、ジベンゾイルメタン、ステアロイルベンゾイルメタン、パルミトイルベンゾイルメタン等である。これらのβ−ジケトン類は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、β−ジケトン類の含有量は特定の範囲に限定されない。β−ジケトン類の好ましい含有量は、(a)塩化ビニル樹脂100質量部に対して0.1質量部以上5質量部以下である。
【0071】
滑剤の具体例は、12−ヒドロキシステアリン酸オリゴマーなどである。
【0072】
(塩化ビニル樹脂組成物の製造方法)
本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、上述した成分を混合して製造することができる。即ち、本発明の塩化ビニル樹脂組成物の製造方法は、少なくとも、上記(a)塩化ビニル樹脂、(b)可塑剤、及び(c)分子量が900以上4000以下のポリオール系化合物(ポリエステルポリオールおよび/またはポリエーテルポリオール)を混合することを含む。そして、本発明の塩化ビニル樹脂組成物の製造方法では、上記成分に加え任意に添加剤が混合されてもよい。
ここで、上記(a)塩化ビニル樹脂、上記(b)可塑剤、上記(c)分子量が900以上4000以下のポリオール系化合物、及び必要に応じて添加される添加剤の混合方法は限定されない。好ましい混合方法は、可塑剤及びダスティング剤(上記(a2)塩化ビニル樹脂微粒子と、必要に応じて添加されるその他のダスティング剤とを含む)を除く成分をドライブレンドにより混合し、その後、可塑剤、ダスティング剤を順次、混合する方法である。ドライブレンドには、ヘンシェルミキサーの使用が好ましい。また、ドライブレンド時の温度は、好ましくは50℃以上100℃以下、より好ましくは70℃以上80℃以下である。
【0073】
(塩化ビニル樹脂成形体)
本発明の塩化ビニル樹脂成形体は、上述した本発明の塩化ビニル樹脂組成物を粉体成形、好ましくはパウダースラッシュ成形して得る。
そして、本発明の塩化ビニル樹脂成形体は、自動車内装材、例えばインスツルメントパネル、ドアトリム等の表皮として好適に用いられる。
【0074】
(塩化ビニル樹脂成形体の製造方法)
本発明の塩化ビニル樹脂成形体は、上述した塩化ビニル樹脂組成物を用いて製造することができる。即ち、本発明の塩化ビニル樹脂成形体の製造方法は、少なくとも、上述したいずれかの塩化ビニル樹脂組成物、または、上述した製造方法に従って製造した塩化ビニル樹脂組成物を粉体成形、好ましくはパウダースラッシュ成形することを特徴とする。
【0075】
ここで、パウダースラッシュ成形時の金型温度は、好ましくは200℃以上300℃以下、より好ましくは220℃以上280℃以下である。
【0076】
本発明の塩化ビニル樹脂成形体を製造する際には、上記温度範囲の金型に本発明の塩化ビニル樹脂組成物を振りかけて5秒以上30秒以下の間放置し、その後、余剰の塩化ビニル樹脂組成物を振り落とし、さらに30秒以上3分以下の間放置した後、金型を10℃以上60℃以下に冷却し、得られた本発明の塩化ビニル樹脂成形体を金型から脱型する。
【0077】
(積層体)
本発明の積層体は、本発明の塩化ビニル樹脂成形体と発泡ポリウレタン成形体とを積層して得ることができる。積層方法は、塩化ビニル樹脂成形体と、発泡ポリウレタン成形体とを別途製造した後に、熱融着あるいは熱接着又は公知の接着剤などを用いることにより貼り合わせる方法;塩化ビニル樹脂成形体上で、発泡ポリウレタン成形体の原料となるイソシアネート類とポリオール類などとを反応させて重合を行うと共に、公知の方法によりポリウレタンの発泡を行い、塩化ビニル樹脂成形体上に発泡ポリウレタン成形体を直接形成する方法等が挙げられる。後者の方が、工程が簡素であり、かつ、種々の形状の積層体を得る場合においても、塩化ビニル樹脂成形体と発泡ポリウレタン成形体との接着を確実に行うことができるのでより好適である。
【0078】
そして、本発明の積層体は、自動車内装材、例えばインスツルメントパネル、ドアトリム等として好適に用いられる。
【実施例】
【0079】
以下、実施例により本発明が詳細に説明されるが、本発明はこれらの実施例に限定されない。なお、各種物性の測定方法、接着性の評価方法は次の通りである。
【0080】
<(a1)塩化ビニル樹脂粒子及び(a2)塩化ビニル樹脂微粒子の平均粒子径>
実施例及び比較例において、塩化ビニル樹脂組成物に用いられる(a1)塩化ビニル樹脂粒子及び(a2)塩化ビニル樹脂微粒子の平均粒子径(体積平均粒子径)は、塩化ビニル樹脂粒子及び塩化ビニル樹脂微粒子を、それぞれ水槽内に分散させ、以下に示す装置を用いて、光の回折・散乱強度分布を測定・解析し、粒子径及び体積基準の粒子径分布を測定することにより、算出した。
・装置:レーザー回折式粒度分布測定機(島津製作所製、型番「SALD−2300」)
・測定方式:レーザー回折及び散乱
・測定範囲:0.017μm〜2500μm
・光源:半導体レーザー(波長680nm、出力3mW)
【0081】
<(a1)塩化ビニル樹脂粒子及び(a2)塩化ビニル樹脂微粒子の平均重合度>
実施例及び比較例において、塩化ビニル樹脂組成物に用いられる(a1)塩化ビニル樹脂粒子及び(a2)塩化ビニル樹脂微粒子の平均重合度は、JIS K6720−2に準拠し、塩化ビニル樹脂粒子及び塩化ビニル樹脂微粒子のそれぞれを、シクロヘキサノンに溶解させて粘度を測定することにより、算出した。
【0082】
<塩化ビニル樹脂成形体のポリウレタン接着性>
実施例および比較例で得られた積層体において、塩化ビニル樹脂成形シートからなる表皮を発泡ポリウレタン成形体から剥離した。その後、剥離表面(塩化ビニル樹脂成形シート裏面及び発泡ポリウレタン成形体表面)の状態を目視で観察し、塩化ビニル樹脂成形体(シート)のポリウレタン接着性を以下の3段階の基準で判定した。
A:凝集破壊が剥離表面の90%以上の面積で起きている。
B:凝集破壊が剥離表面の60%以上90%未満の面積で起きている。
C:凝集破壊が剥離表面の60%未満の面積で起きている。
なお「凝集破壊」とは、発泡ポリウレタン成形体が塩化ビニル樹脂成形シートの剥離時に材料破壊され、発泡ポリウレタン成形体の一部が塩化ビニル樹脂成形シート側に残存する現象である。
【0083】
(実施例1〜3及び比較例1〜2)
表1に示す配合成分のうち可塑剤(トリメリット酸エステル可塑剤、及びエポキシ化大豆油)とダスティング剤である塩化ビニル樹脂微粒子を除く成分をヘンシェルミキサーに入れて混合した。そして、混合物の温度が80℃に上昇した時点で上記可塑剤を添加し、ドライアップ(可塑剤が塩化ビニル樹脂粒子に吸収されて、上記混合物がさらさらになった状態をいう。)させた。その後、ドライアップさせた混合物が70℃以下に冷却された時点でダスティング剤である塩化ビニル樹脂微粒子を添加し、塩化ビニル樹脂組成物を製造した。
次に、得られた塩化ビニル樹脂組成物を250℃に加熱したシボ付き金型に振りかけ、塩化ビニル樹脂成形シートの厚みが1mmになるよう調整した時間(具体的には12〜14秒間)放置して溶融させた後、余剰の塩化ビニル樹脂組成物を振り落とした。その後、200℃に設定したオーブンに静置し、静置後60秒経過した時点で金型を冷却水により冷却し、金型温度が40℃まで冷却された時点で145mm×175mm×1mmの塩化ビニル樹脂成形シートを金型から脱型した。
得られた塩化ビニル樹脂成形シートを100mm×100mmに切り取り、切り取られた塩化ビニル樹脂成形シート2枚を、200mm×300mm×10mmの金型中に重ならないように敷き、シボ付き面を下にして置いた。
別途、プロピレングリコールのプロピレンオキサイド・エチレンオキサイド(PO・EO)ブロック付加物(水酸基価28、末端EO単位の含有量=10%、内部EO単位の含有量4%)50質量部、グリセリンのPO・EOブロック付加物(水酸基価21、末端EO単位の含有量=14%)50質量部、水2.5質量部、トリエチレンジアミンのエチレングリコ−ル溶液(東ソー(株)製、商品名:「TEDA−L33」)0.2質量部、トリエタノールアミン1.2質量部、トリエチルアミン0.5質量部及び整泡剤(信越化学工業(株)製、商品名:「F−122」)0.5質量部からなるポリオール混合物と、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(ポリメリックMDI))とを、インデックスが98になる比率で混合して混合液を調製した。そして、調製した混合液を、上述の通り金型中に敷かれた塩化ビニル樹脂成形シート2枚の上にそれぞれ注いだ。その後、348mm×255mm×10mmのアルミ板で金型に蓋をすることで金型を密閉した。密閉してから5分後、1mm厚の塩化ビニル樹脂成形シートからなる表皮に発泡ポリウレタン成形体が裏打ちされた積層体を金型から取り出した直後、上記に示す方法で塩化ビニル樹脂成形体のポリウレタン接着性を測定した。結果を表1に示す。
【0084】
【表1】
【0085】
1)新第一塩ビ(株)製、ZEST 1000Z(懸濁重合で得られた塩化ビニル樹脂粒子、平均重合度1000、平均粒子径145μm)
2)花王(株)製、トリメックスN−08
3)(株)ADEKA製、アデカサイザーO−130S
4)協和化学工業(株)製、アルカマイザー5
5)水澤化学工業(株)製、MIZUKALIZER DS
6)昭和電工(株)製、カレンズ DK−1
7)堺化学工業(株)製、SAKAI SZ2000
8)(株)ADEKA製、アデカスタブ LS−12
9)(株)ダイセル製、プラクセル 210
10)(株)ダイセル製、プラクセル 312
11)(株)ダイセル製、プラクセル 320
12)(株)ダイセル製、プラクセル 308
13)新第一塩ビ(株)製、ZEST PQLTX(乳化重合で得られた塩化ビニル樹脂微粒子、平均重合度800、平均粒子径2μm)
14)大日精化工業(株)製、DA PX−1720ブラック(A)
【0086】
なお、上記実施例および比較例で使用したポリエステルポリオール(ポリエステルジオールおよびポリエステルトリオール)の分子量は、(株)ダイセルがカタログで開示する値である。そしてポリエステルポリオール等のポリオール系化合物の分子量は、JIS K1557に準拠して測定される水酸基価に基づき、数平均分子量として算出することができる。
【0087】
表1より、実施例1〜3の塩化ビニル樹脂組成物から得られた塩化ビニル樹脂成形体は、発泡ポリウレタン成形体への接着性に優れていることがわかる。一方、ポリエステルポリオールを含まない比較例1の塩化ビニル樹脂組成物から得られた塩化ビニル樹脂成形体の発泡ポリウレタン成形体、また分子量が900に満たないポリエステルポリオールを含む比較例2の塩化ビニル樹脂組成物から得られた塩化ビニル樹脂成形体は、いずれも発泡ポリウレタン成形体への接着性が低いことがわかる。