(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記中間膜は前記1対のガラス板の対向面に接するようにスキン層を有し、前記1対のガラス板にそれぞれ最も近い1対のコア層間の厚みが0.45mm以上である請求項1記載の合わせガラス。
前記中間膜は前記1対のガラス板の対向面に接するようにスキン層を有し、前記1対のガラス板にそれぞれ最も近い1対のコア層間に配置される層全体の面密度が0.5kg/m2以上である請求項1または2記載の合わせガラス。
自動車用合わせガラスであって、車外側のガラス板の厚みが1.6〜2.5mmであり、車内側のガラス板の厚みが0.5〜1.6mmである請求項1〜4のいずれか1項に記載の合わせガラス。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、これらの実施形態を、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく、変更または変形することができる。
【0010】
本発明の合わせガラスは、互いに対向する1対のガラス板と、前記1対のガラス板間に挟持される、以下の構成の中間膜を備え、前記中間膜と前記1対のガラス板の合計質量に対する前記中間膜の質量の割合が14質量%以上である。
上記中間膜は、ガラス転移点が15℃以上のスキン層とガラス転移点が15℃未満のコア層が交互に積層された構成であり、前記コア層を2層以上有する。
【0011】
ここで、本明細書におけるガラス転移点とは、サンプルを厚みd=0.6mm、直径12mmの円盤状に成形し、動的粘弾性測定装置を用いて1Hz、振り角gamma0.015%、測定治具:パラレルプレート(直径12mm)、昇温速度:3℃/分、測定温度範囲:-40℃〜80℃の条件でtanδ(損失弾性率/貯蔵弾性率)の温度依存性を測定した際のtanδのピーク温度のことをいう。なお、動的粘弾性測定装置としては、例えば、アントンパール社製、回転式レオメーターMCR301が挙げられる。
【0012】
本発明の合わせガラスは、1対のガラス板間に挟持される中間膜が、少なくとも2層のコア層(ガラス転移点が15℃未満)間にガラス転移点が15℃以上のスキン層を有する構成であり、かつ中間膜と1対のガラス板の合計質量に対する中間膜の質量の割合を上記範囲とすることで、音の振動エネルギーに起因して1対のガラス板間の中間膜における複数個所に大きなせん断変形エネルギーが発生し、これが熱エネルギーとして放出されることで遮音性能を発揮することができる。
【0013】
本発明の合わせガラスにおいて、中間膜と1対のガラス板の合計質量に対する中間膜の質量の割合(以下、単に「中間膜質量%」ともいう。)は、遮音性および軽量化の観点から15質量%以上がより好ましく、17質量%以上がさらに好ましい。また、所期の強度を保つ観点からは、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。
【0014】
本発明の合わせガラスは、面密度が13.5kg/m
2以下であることが好ましく、12kg/m
2以下がより好ましく、11kg/m
2以下がさらに好ましい。合わせガラスの面密度が上記範囲であれば、合わせガラスの軽量化を達成できる。本発明の合わせガラスの面密度は、所期の強度を保つ観点からは8kg/m
2以上であることが好ましく、9kg/m
2以上がより好ましい。
【0015】
なお、合わせガラスの中間膜質量%および面密度は、1枚の合わせガラス全体として測定される値である。
【0016】
以下、本発明の合わせガラスの実施の形態について、中間膜として5層の積層膜、または7層の積層膜を用いた場合を例に、図面を参照しながら説明する。
図1Aは、中間膜として5層の積層膜を用いた本発明の合わせガラスの実施形態の一例における正面図であり、
図1Bは、
図1Aに示す合わせガラスのX−X線における断面図である。
図2は中間膜として7層の積層膜を用いた本発明の合わせガラスの実施形態の一例における断面図である。
【0017】
図1に示す合わせガラス10Aは、互いに対向する1対のガラス板1A、1Bと、1対のガラス板1A、1Bに挟持されるように配置される中間膜2Aを有する。中間膜2Aは、ガラス板1A側からガラス板1B側に向かってスキン層41、コア層31、スキン層42、コア層32、スキン層43の順に5層が積層された構成である。合わせガラス10Aは、1対のガラス板1A、1Bおよび、中間膜を構成する2層のコア層31、32および3層のスキン層41、42、43は略同形、同寸の主面を有する。
【0018】
ここで、本明細書において、「略同形、同寸」とは、人の見た目において同じ形状、同じ寸法を有することをいい、例えば、2者が「略同形、同寸」であるとは、一方の外周形状が切欠き等の凹凸を有さず、他方が一部に微細な切欠き等を有する外周形状である場合もその範疇に含む。他の場合においても、「略」は上記と同様の意味を示す。
以下、合わせガラス10Aを構成する各要素について説明する。
【0019】
[ガラス板]
合わせガラス10Aにおける1対のガラス板1A、1Bの板厚は、用いるガラス板の材質や組み合わせる中間膜にもよるが、中間膜質量%が所定の範囲になる厚さであれば特に制限されない。ガラス板1A、1Bの板厚は、合わせガラス10Aの用途により適宜選択できるが、一般的には0.1〜10mmとすることができる。なお、合わせガラス10Aの面密度を上記好ましい範囲にするには、ガラス板1A、1Bの板厚は、0.3〜2.5mmが好ましい。
【0020】
1対のガラス板1A、1Bの板厚は、互いに同じであってもよく、異なってもよい。ガラス板1A、1Bにおいて板厚が異なる場合には、合わせガラス10Aが窓等に設置される際に内側に位置するガラス板、例えば、自動車の窓ガラスであれば車内側、建築物の窓ガラスであれば屋内側に位置するガラス板の板厚が外側に位置するガラス板の板厚より小さいことが好ましい。
【0021】
例えば、合わせガラス10Aにおいて、使用に際して内側に位置するガラス板が、ガラス板1Aである場合、ガラス板1Aの板厚は、0.5mm〜1.6mmが好ましく、0.7mm〜1.5mmがより好ましい。また、ガラス板1Aの板厚は、ガラス板1Bの板厚より小さいことが好ましい。ガラス板1Aの板厚とガラス板1Bの板厚の差は0.3〜1.5mmが好ましく、0.5〜1.3mmがより好ましい。またこの場合、ガラス板1Bが外側に位置するガラス板であり、板厚は1.6mm〜2.5mmが好ましく、1.7mm〜2.1mmがより好ましい。
【0022】
合わせガラスの使用に際して外側に位置するガラス板が内側に位置するガラス板より大きい板厚を有すると、耐飛び石衝撃性の点で好ましい。特に、外側の板厚みが1.3mm以上であることが好ましい。
【0023】
合わせガラス10Aに用いるガラス板1A、1Bの材質としては、透明な無機ガラスや有機ガラス(樹脂)が挙げられる。無機ガラスとしては通常のソーダライムガラス(ソーダライムシリケートガラスともいう)、アルミノシリケートガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等が特に制限なく用いられる。これらのうちでもソーダライムガラスが特に好ましい。成形法についても特に限定されないが、例えば、フロート法等により成形されたフロート板ガラスであってもよい。また、ガラス板1A、1Bが風冷強化や化学強化といった強化処理がなされていてもよい。
【0024】
有機ガラス(樹脂)としては、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ハロゲン化ビスフェノールAとエチレングリコールとの重縮合物、アクリルウレタン樹脂、ハロゲン化アリール基含有アクリル樹脂等が挙げられる。これらのなかでも芳香族系ポリカーボネート樹脂等のポリカーボネート樹脂やポリメチルメタクリレート系アクリル樹脂等のアクリル樹脂が好ましく、ポリカーボネート樹脂がより好ましい。さらに、ポリカーボネート樹脂のなかでも特にビスフェノールA系ポリカーボネート樹脂が好ましい。なお、ガラス板は、上記のような樹脂を2種以上含んで構成されてもよい。
【0025】
また、ガラス板1A、1Bは、上記無機ガラスや有機ガラス(樹脂)に赤外線吸収剤や紫外線吸収剤等を含有させて、赤外線吸収性や紫外線吸収性を付与したガラス板であってもよい。このようなガラス板として、グリーンガラス板、紫外線吸収(UV)グリーンガラス板等を使用することができる。なお、UVグリーンガラス板とは、SiO
2を68質量%以上74質量%以下、Fe
2O
3を0.3質量%以上1.0質量%以下、かつFeOを0.05質量%以上0.5質量%以下含有するものであって、波長350nmの紫外線透過率が1.5%以下、かつ550nm以上1700nm以下の領域に透過率の極小値を有する紫外線吸収グリーンガラスを指す。
【0026】
上記ガラスとしては、着色成分を添加しない無色透明な材質を用いてもよく、あるいは、本発明の効果を損なわない範囲で上記グリーンガラスのように着色された着色透明な材質を用いてもよい。さらには、これらのガラスは1種類もしくは2種類以上を組合せて用いてもよく、例えば、2層以上に積層された積層基板であってもよい。合わせガラスの適用箇所にもよるがガラスとしては、無機ガラスが好ましい。
【0027】
合わせガラス10Aに用いる1対のガラス板1A、1Bは、互いに異なった種類の材質から構成されてもよいが、同一であることが好ましい。ガラス板1A、1Bの形状は平板でもよく、全面または一部が曲率を有していてもよい。ガラス板1A、1Bには、大気に晒される表出面に、撥水機能、親水機能、防曇機能等を付与するコーティングが施されていてもよい。また、ガラス板1A、1Bの互いに対向する対向面には、低放射性コーティング、赤外線遮蔽コーティング、導電性コーティング等の通常金属層を含む機能性コーティングが施されていてもよい。
【0028】
なお、ガラス板1A、1Bの対向面が上記機能性コーティングを有する場合には、以下の中間膜2Aのスキン層41、43はガラス板1A、1Bの対向面上の該機能性コーティングに接する構成となる。
【0029】
[中間膜]
合わせガラス10Aにおける中間膜2Aは、ガラス板1A側からガラス板1B側に向かってスキン層41、コア層31、スキン層42、コア層32、スキン層43の順に5層が積層された構成である。中間膜2Aは、ガラス板1A、1Bの間に配置され、ガラス板1A、1Bを接着して合わせガラス10Aとして一体化する機能を有するものである。
【0030】
コア層31、32のガラス転移点は15℃未満であり、スキン層41、42、43のガラス転移点は15℃以上である。コア層31、32およびスキン層41、42、43は、合わせガラスに通常用いられる中間膜を構成する主材料である熱可塑性樹脂から、各層ごとに上記ガラス転移点が得られるように樹脂を適宜選択して構成される。上記ガラス転移点に調整できれば、用いる熱可塑性樹脂の種類は特に制限されない。以下、コア層のガラス転移点をTgc、スキン層のガラス転移点をTgsということもある。
【0031】
Tgcは、10℃以下が好ましく、8℃以下がより好ましい。Tgcが15℃未満であることで、合わせガラスにおいて所期の遮音性能が得られる。Tgcはコア層自体の形状保持の観点から−10℃以上が好ましく、0℃以上がより好ましい。
【0032】
Tgsは、20℃以上が好ましく、25℃以上がより好ましい。Tgsが15℃以上であることで、合わせガラスにおいて所期の遮音性能が得られる。Tgsは耐貫通性の観点から50℃以下が好ましく、40℃以下がより好ましい。
【0033】
遮音性を高める観点からTgsからTgcを引いた値は、10〜40℃が好ましく、20〜35℃がより好ましい。
【0034】
コア層において上記Tgcを、スキン層において上記Tgsをそれぞれ実現できる熱可塑性樹脂として、具体的には、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)等のポリビニルアセタール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体樹脂、シクロオレフィンポリマー(COP)等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、例えば、可塑剤量等を調整することで、上記TgcまたはTgsに調整できる。熱可塑性樹脂は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
【0035】
また、熱可塑性樹脂は、コア層およびスキン層においてそれぞれTgcおよびTgsの条件に加えて、合わせガラスの用途に応じて、透明性、耐候性、接着力、耐貫通性、衝撃エネルギー吸収性、耐湿性、遮熱性等の諸性能のバランスを考慮して選択される。このような観点から、コア層を構成する熱可塑性樹脂としては、PVB、EVA、ポリウレタン樹脂等が好ましい。また、スキン層は、それぞれ、PVB、EVA、ポリウレタン樹脂等が好ましい。
【0036】
中間膜を構成する2層以上のコア層のTgcは、各コア層において上記範囲内であれば同一であっても異なってもよい。また、中間膜が複数のスキン層を有する場合、各スキン層においてTgsが上記範囲内であれば同一であっても異なってもよい。また、コア層、スキン層を構成する熱可塑性樹脂の種類についても、コア層、スキン層毎に同一であっても異なってもよい。中間膜は、2層以上のコア層においてTgcおよび熱可塑性樹脂の種類が同じであり、スキン層を複数有する場合においてTgsおよび熱可塑性樹脂の種類が同じであり、かつ、コア層とスキン層において熱可塑性樹脂の種類が同じである構成が好ましい。
【0037】
本発明の合わせガラスにおいて中間膜は、上記Tgcを満たすコア層と上記Tgsを満たすスキン層が交互に積層され、かつ上記コア層を2層以上有する構成である。中間膜はガラス板との関係において中間膜質量%が14質量%以上であって、かつ上記積層構造を有すれば層数は特に限定されない。中間膜において最も層数が少ない構成は、1対のコア層間にスキン層が挟持された構成である。その場合、合わせガラスは、ガラス板、コア層、スキン層、コア層、ガラス板の積層構造となる。
【0038】
中間膜は、合わせガラス製造時の作業性の観点から、1対のガラス板の対向面に接するようにスキン層を有する構成が好ましい。また、中間膜においては、1対のガラス板にそれぞれ最も近い1対のコア層間の厚み(以下、「最外コア層間の厚み」ともいう。)を指標として合わせガラスの遮音性能を図ることができる。さらに、中間膜においては、1対のガラス板にそれぞれ最も近い1対のコア層間に配置される層全体の面密度(以下、「最外コア層間の面密度」ともいう。)を指標としても合わせガラスの遮音性能を図ることができる。
【0039】
1対のガラス板の対向面に接するようにスキン層を有しコア層を2層以上有する積層構造の中間膜として、最も層数が少ない構成が
図1Bに示される中間膜2Aのスキン層41、コア層31、スキン層42、コア層32、スキン層43という5層を積層した構成である。コア層31、32、スキン層41、42、43は各コア層およびスキン層においてそれぞれ上記TgcおよびTgsを満たせば、単層構造であっても、多層構造であってもよい。
【0040】
中間膜2Aにおける1対のガラス板1A、1Bにそれぞれ最も近い1対のコア層31、32間の厚みを
図1BにおいてTaで示す。また、
図1Bにおいて中間膜2Aの厚みをTbで示す。最外コア層間の厚みTaは、中間膜が十分にせん断変形し、合わせガラスの遮音性能を高める観点から0.45mm以上が好ましく、0.50mm以上がより好ましい。最外コア層間の厚みTaの上限は特に限定されないが、軽量化の観点からTaは4.0mm以下が好ましく、3.0mm以下がより好ましい。なお、合わせガラス10Aにおいては、最外コア層間の厚みTaは、スキン層42の厚みと等しい。
【0041】
中間膜2Aにおける最外コア層間の面密度は、スキン層42の面密度である。中間膜における最外コア層間の面密度は、最外コア層間の厚みTaと同様に、中間膜が十分にせん断変形し、合わせガラスの遮音性能を高める観点から0.5kg/m
2以上が好ましく、0.55g/m
2以上がより好ましく、0.6kg/m
2以上がさらに好ましい。最外コア層間の面密度の上限は特に限定されないが、軽量化の観点から該面密度は3.3kg/m
2以下が好ましく、2.0kg/m
2以下がより好ましく、1.3kg/m
2以下がさらに好ましい。
【0042】
中間膜2Aの厚みTbは、コア層31、32、スキン層41、42、43の厚みの合計であり、中間膜質量%を上記範囲とする点、遮音性の観点から1.53mm以上が好ましく、2.0mm以上がより好ましい。中間膜2Aの厚みTbの上限は特に限定されないが、軽量化の観点からTbは4.0mm以下が好ましい。
【0043】
コア層31、32の厚みは、特に制限されない。合わせガラスの遮音性と軽量化、TaおよびTbを上記範囲とする等の観点から、それぞれ0.05〜0.2mmが好ましく、0.07〜0.15mmがより好ましい。コア層31、32の厚みは互いに同一であっても異なってもよい。中間膜2Aにおける1対のガラス板1A、1Bにそれぞれ最も近い1対のコア層31、32と1対のガラス板1A、1Bの間にそれぞれ位置するスキン層41とスキン層43の厚みは、特に制限されず、合わせガラスの遮音性と軽量化、TaおよびTbを上記範囲とする等の観点から、0.15〜1.1mmが好ましく、0.2〜0.76mmがより好ましく、0.2〜0.45mmがさらに好ましい。
【0044】
ここで、
図1Bは合わせガラス10Aの主面に垂直な一断面を示し、合わせガラスの一方の端部から他方の端部の間でガラス板1A、1Bおよび中間膜2Aが均一な厚みで積層されていることを示す図である。合わせガラス10Aにおいては、その主面に垂直な断面はいずれも同様である。すなわち、合わせガラス10Aにおいては、主面内のいずれの箇所においても、各層の厚み、TaおよびTbは同じである。
【0045】
本発明の合わせガラスは、1対のガラス板にそれぞれ最も近い1対のコア層間の厚みを上記範囲に調整しやすい点で、中間膜はコア層を3層以上有することが好ましい。なお、コア層の数は、中間膜の製造時の容易さの観点から5層以下が好ましい。中間膜のコア層が3層以上の場合においても、合わせガラスは、1対のガラス板の対向面に接するようにスキン層を有することが好ましい。
【0046】
1対のガラス板の対向面に接するようにスキン層を有しコア層を3層以上有する積層構造の中間膜として、最も層数が少ない構成が
図2に示される合わせガラス10Bが有する中間膜2Bのスキン層41、コア層31、スキン層42、コア層32、スキン層43、コア層33、スキン層44という7層を積層した構成である。合わせガラス10Bにおいては、中間膜2Bにおける1対のガラス板1A、1Bにそれぞれ最も近い1対のコア層は、ガラス板1Aに最も近いコア層31と、ガラス板1Bに最も近いコア層33である。中間膜2Bにおいては、コア層31とコア層33の間の厚みがTaであり、スキン層42、コア層32、およびスキン層43の厚みの合計が最外コア層間の厚みTaである。また、中間膜2Bにおける最外コア層間の面密度は、スキン層42、コア層32、およびスキン層43を積層した3層における面密度である。
【0047】
本発明の合わせガラスに係る中間膜において、最外コア層間の厚みおよび最外コア層間面密度の好ましい範囲は、最外コア層間の層構成によらず上述のとおりである。すなわち、中間膜2Bにおける最外コア層間の厚みTaおよび最外コア層間の面密度は、中間膜2Aの最外コア層間の厚みTaおよび最外コア層間の面密度と好ましい値を含めて同様とできる。
【0048】
中間膜2Bの厚みTbは、コア層31、32、33、スキン層41、42、43、44の厚みの合計であり、中間膜2Aにおける厚みTbと好ましい範囲を含め同様とできる。中間膜2Bにおけるコア層31、32、33の厚みについては、合わせガラスの遮音性と軽量化、TaおよびTbを上記範囲とする等の観点から、それぞれ0.05〜0.2mmが好ましく、0.07〜0.15mmがより好ましい。中間膜2Bにおけるスキン層41、42、43、44の厚みについては上記と同様の観点から、それぞれ0.15〜1.1mmが好ましく、0.2〜0.76mmがより好ましく、0.2〜0.45mmがさらに好ましい。コア層同士で厚みは同じであっても異なってもよく、スキン層同士で厚みは同じであっても異なってもよい。
【0049】
合わせガラス10Bにおいては中間膜2Bの積層構成が合わせガラス10Aの中間膜2Aの積層構成と異なる以外、その他の構成は全て合わせガラス10Aと同様とできる。
【0050】
中間膜におけるコア層、スキン層の作製には、上述した熱可塑性樹脂を主成分として含有する熱可塑性樹脂含有組成物が用いられる。該熱可塑性樹脂含有組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で各種目的に応じて、例えば、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、蛍光剤、接着性調整剤、カップリング剤、界面活性剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、脱水剤、消泡剤、帯電防止剤、難燃剤等の各種添加剤の1種類もしくは2種類以上を含有していてもよい。これらの添加剤はコア層およびスキン層において、それぞれ全体に均一に含有される。
【0051】
なお、上記添加剤のうちでも特に、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、蛍光剤等のコア層やスキン層に追加の機能を付与するための添加剤の含有については、例えば、合わせガラス10Aにおける中間膜2Aであれば、コア層31、32とスキン層41、42、43を合わせて5層からなる中間膜の各層において、いずれか1層のみが含有する構成であっても、2層以上が含有する構成であってもよく、さらに2層以上が含有する場合、同種の添加剤を同量、または異なる量含有してもよく、異なる添加剤をそれぞれ含有してもよい。
【0052】
中間膜2Aは、例えば、コア層31、32およびスキン層41、42、43を、それぞれに適した熱可塑性樹脂含有組成物から、好ましくは最終的に合わせガラスとしたときの各層の厚みが上記の範囲になるようにシート状に製膜して準備し、得られた各層をスキン層41、コア層31、スキン層42、コア層32、スキン層43の順に積層して、加圧下に加熱することで作製される。あるいは共押出しにより一体的に作製してもよい。作製の条件は熱可塑性樹脂の種類により適宜選択される。中間膜2Bについても同様に作製できる。
【0053】
以上、本発明の合わせガラスにおける中間膜について、中間膜2A、2Bを例にコア層が2層の場合、3層の場合について説明した。コア層が4層以上の中間膜の場合においても、上記と同様に、中間膜質量%、最外コア層間の厚みTa、最外コア層間の面密度、中間膜の厚みTbを勘案して、適宜コア層およびスキン層を設計すればよい。
【0054】
本発明の合わせガラスにおいて中間膜は、中間膜2A、2Bのように合わせガラスの主面内で各層が均一な厚みを有するものであってもよく、主面内で各層が異なる厚みを有するものであってもよい。その場合、各層の厚み、最外コア層間の厚みTa、中間膜の厚みTbは、中間膜の厚みが最も大きい箇所で測定された値が、上記合わせガラスの主面内で各層が均一な厚みを有する場合の範囲、具体的には、中間膜2A、2Bで示した範囲となるように設計される。また、上記のとおり中間膜質量%および面密度は合わせガラス全体に対して測定される物性である。
【0055】
図3Aは、中間膜として5層の積層膜を用いた本発明の合わせガラスの実施形態の別の一例における正面図であり、
図3Bは、
図3Aに示す合わせガラスのY−Y線における断面図である。
図3Aに示す合わせガラス10Cは、例えば、自動車のフロントガラスに用いられる合わせガラスである。
図3Aにおいて、合わせガラス10Cの上側がフロントガラスの上側として自動車に取り付けられる。以下、合わせガラス10Cの上側の辺を上辺、下側の辺を下辺という。
図3Bに示す合わせガラス10Cの断面図においては、左側が上辺側であり右側が下辺側である。
【0056】
図3Aに示すように合わせガラス10Cの主面は、上辺より下辺が長い略台形の形状である。
図3Bに示すように合わせガラス10Cが有する中間膜2Cは、上辺から下辺に向かって厚みが漸減するいわゆる楔形状の中間膜である。中間膜2Cの積層構成は、ガラス板1A側からガラス板1B側に向かってスキン層41、コア層31、スキン層42、コア層32、スキン層43が順に積層された5層構成である。
図3Bに示す中間膜2Cにおいて、スキン層41、コア層31、スキン層42、コア層32、スキン層43は、いずれも同じ割合で上辺から下辺に向かって厚みが漸減した構成である。ただし、中間膜2Cと同様に5層の積層膜を用いた楔形状の中間膜であっても中間膜全体として楔形状であれば、スキン層41、コア層31、スキン層42、コア層32、スキン層43のうち、いずれかの層の厚みが変化していなくてもよい。
【0057】
通常、このような合わせガラスにおいては、上辺において一方の端部から他方の端部に向かって中間膜およびこれを構成する各層の厚みは一定であり、下辺において一方の端部から他方の端部に向かって中間膜およびこれを構成する各層の厚みは一定である。
【0058】
合わせガラス10Cにおいては中間膜2Cの厚みが最も大きい箇所は上辺である。
図3Bに、中間膜2Cにおける最外コア層間の厚みTa、中間膜2Cの厚みTbの測定箇所を示す。中間膜2Cにおいては、該上辺で測定されるTaおよびTbとして、中間膜2Aの場合と同様の厚みが適用できる。また、中間膜2Cにおける、各層の厚みは、TaおよびTbと同様、厚みが最も大きい箇所である上辺における厚みとして、中間膜2Aの場合と同様の厚みが適用できる。
【0059】
一方、合わせガラス10Cにおいて中間膜2Cの厚みは下辺から上辺に向かって厚み変化の割合が一定ではなく、該厚み変化の割合が変化してもよい。例えば、中間膜2Cの厚みが下辺から上辺に向かって、途中に厚みが変化しない部分がある場合も含まれ、また、中間膜2Cの厚みが下辺から上辺に向かって漸増し、途中で漸減するような構成も含まれる。
【0060】
合わせガラスにおいては、一般的に、合わせガラスの主面の形状に合わせて中間膜を部分的に伸展して用いる場合がある。その場合、伸展された部分の中間膜の厚みは伸展されなかった部分の中間膜の厚みに比べて小さくなる。また、厚さの異なる複数のブロック状の中間膜を組み合わせて一つの中間膜として用いる場合もありうる。このような場合においても、上記楔型の中間膜の場合と同様、各層の厚み、最外コア層間の厚みTa、中間膜の厚みTbは、中間膜の厚みが最も大きい箇所で測定された値が、上記合わせガラスの主面内で各層が均一な厚みを有する場合の範囲、具体的には、中間膜2A、2Bで示した範囲となるように設計される。
【0061】
本発明の合わせガラスにおける中間膜は、周波数1Hz、温度20℃における貯蔵弾性率G’が5.0×10
4Pa以上であることが好ましく、1.0×10
5Pa以上がより好ましい。貯蔵弾性率G’は中間膜の剛性を示す指標であり、中間膜の貯蔵弾性率G’が上記範囲であれば剛性が十分に確保できる。
【0062】
中間膜の貯蔵弾性率G’の上限は特に制限されるものではない。ただし、中間膜の貯蔵弾性率G’が高くなると合わせガラスの遮音性能を損なう場合がある。また、中間膜の貯蔵弾性率G’が高すぎると、切断等の加工において特殊な機器を要する等、生産性が低下することがある。さらに中間膜が脆くなり耐貫通性が低下する。このような点を考慮すると、中間膜の貯蔵弾性率G’は、1.0×10
7Pa以下が好ましい。なお、本明細書における中間膜の貯蔵弾性率G’は、周波数1Hz、温度20℃、振り角gamma0.015%の条件下、せん断法、例えば、アントンパール社製、レオメーターMCR301により測定される動的粘弾性試験における貯蔵弾性率である。
【0063】
[合わせガラス]
本発明の合わせガラスは、互いに対向する1対のガラス板と、該1対のガラス板間に挟持される上記構成の中間膜を備え、中間膜質量%が14質量%以上であり、好ましくは上記の範囲である。合わせガラスの面密度についても上記のとおりである。本発明においては、得られる合わせガラスとして、中間膜質量%および面密度が所定の範囲や好ましい範囲となるように上記ガラス板および中間膜を適宜組み合わせる。
【0064】
本発明の合わせガラスは、上記構成により高い遮音性能を有する。具体的には、本発明の合わせガラスは、温度20℃の条件下、0〜10000Hzの周波数領域で測定される1次共振点における損失係数が0.4以上であることが好ましい。以下、1次共振点とは特に断りのない限り温度20℃の条件下、0〜10000Hzの周波数領域で測定される1次共振点をいう。
【0065】
なお、1次共振点における損失係数は、ISO_PAS_16940に準拠した中央加振法により測定できる。中央加振法による損失係数の測定装置としては、例えば、小野測器社製、中央加振法測定システム(MA−5500、DS−2000)が挙げられる。本発明の合わせガラスにおける1次共振点の周波数領域は、概ね0〜300Hzである。本発明の合わせガラスにおいて、1次共振点における損失係数が0.4以上であれば、例えば、自動車のエンジン音や、タイヤの振動音等の比較的低周波数領域の音を十分に遮音することができる。また、本発明の合わせガラスにおいて、1次共振点における損失係数が0.4以上であれば、2次共振点〜7次共振点等の高次共振点における損失係数についても、相対的に高く、例えば、0.4以上になりやすく、低周波数領域〜高周波領域の音まで効率的に遮音することができる。
【0066】
本発明の合わせガラスにおいて、1次共振点における損失係数は、0.42以上がより好ましく、0.45以上がさらに好ましい。また、本発明の合わせガラスにおいては、1次共振点および2次共振点における損失係数がともに0.5以上であるのが特に好ましい。なお、例えば、湾曲した形状の合わせガラスにおいては、当該合わせガラスと同等の構成となるように平らなガラス板を使用した合わせガラスを作製して損失係数が測定される。
【0067】
本発明の合わせガラスはさらに、三点曲げ剛性が100N/mm以上であることが好ましい。三点曲げ剛性は、三点曲げ試験により得られる剛性であり、例えば、圧縮引張試験機により測定できる。三点曲げ剛性は120N/mm以上が特に好ましい。合わせガラスの三点曲げ強度剛性が100N/mm以上であれば、車両高速走行時のガラス開閉を妨げないレベルの剛性であり好ましい。
【0068】
本発明の合わせガラスはまた、SAE J1400に準拠して測定されるコインシデンス領域における音響透過損失が35dB以上であることが好ましく、42dB以上であることが特に好ましい。合わせガラスの音響透過損失が35dB以上であれば、遮音性に優れると評価できる。
【0069】
(その他の層)
実施形態の合わせガラスは、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の層として、1対のガラス板の間に機能性フィルムを有してもよい。機能性フィルムを有する場合は、例えば、上記のとおり複数層で構成される中間膜の層間に機能性フィルムを挟持させる構成が好ましい。
【0070】
機能性フィルムとしては、例えば、赤外線遮蔽フィルム、導電性フィルム、調光フィルム等が挙げられる。赤外線遮蔽フィルムとして、具体的には、25〜200μm程度の厚みのPETフィルム等の支持フィルム上に、赤外線反射膜として膜厚100〜500nm程度の、誘電体多層膜、液晶配向膜、赤外線反射材含有コーティング膜、金属膜を含む単層または多層の赤外線反射膜等の従来公知の赤外線反射膜が形成されたものが挙げられる。赤外線遮蔽フィルムとしては、さらに屈折率の異なる樹脂フィルムを積層した合計膜厚が25〜200μm程度の誘電多層フィルム等が挙げられる。導電性フィルムとしては、樹脂からなる支持フィルム上にITO等の透明導電性膜や導電性の金属細線パターンを形成したもの、等が挙げられる。調光フィルムとしては、液晶、SPD(懸濁粒子デバイス(Suspended Particle Device))、等が挙げられる。機能性フィルムは2つ以上を併用してもよい。
【0071】
本発明の合わせガラスが機能性フィルムを有する場合、機能性フィルムが最外コア層間にある場合には、最外コア層間の厚みTaおよび最外コア層間の面密度は、機能性フィルムを含む状態として測定、算出される。また、中間膜の厚みTb、および、中間膜質量%は、機能性フィルムを除いて、測定、算出され、合わせガラスの面密度は、機能性フィルムを含む状態として算出される。
【0072】
実施形態の合わせガラスは、その他の層として、例えば、合わせガラスの枠体等への取り付け部分や配線導体等を隠蔽する目的で、その周縁部の一部または全部に帯状に、黒色セラミックス層を有してもよい。黒色セラミックス層の幅は、合わせガラスの用途に応じて適宜選択される。例えば、合わせガラスが、自動車の天井部位に使用されるルーフガラスの場合には、黒色セラミックス層は、通常、幅が10〜100mm程度の額縁状に形成される。また、自動車のサイドガラスに用いる場合は、通常、幅が30〜200mm程度の帯状に形成されることがある。
【0073】
黒色セラミックス層は、例えば、合わせガラスが有する1対のガラス板のうちのいずれか一方のガラス板の大気側または中間膜側の主面に、通常の方法で、上記の形状に形成できる。黒色セラミックス層の形成箇所は使用用途に応じて適宜選択される。なお、本発明の合わせガラスが黒色セラミックス層を有する場合、中間膜の厚みTb、および、中間膜質量%は、黒色セラミックス層を除いて、測定、算出され、合わせガラスの面密度は、黒色セラミックス層を含まない状態として算出される。
【0074】
なお、黒色セラミックス層の「黒色」は、例えば、色の三属性等で規定された黒を意味するものではなく、少なくとも隠蔽が求められる部分が隠蔽できる程度に可視光線を透過させないように調整された黒色と認識可能な範囲を含む。したがって、黒色セラミックス層においては、この機能が果たせる範囲内で、必要に応じて黒色に濃淡があってもよく、色味が色の三属性で規定された黒とは若干異なってもよい。同様の観点から、黒色セラミックス層は配設される箇所に応じて層全体が連続した一体膜となるように構成されてもよく、形状や配置等の設定で可視光透過の割合を容易に調整できるドットパターン等により構成されてもよい。
【0075】
また、本実施形態の合わせガラスはシェード領域を有していてもよい。合わせガラスが車両用の合わせガラス、特にフロントガラスである場合には、防眩性、遮熱性などの向上のために、グリーン、ブルーなどに着色した帯状のシェード領域が形成されることがある。シェード領域は、ガラス板の表面に設けられることもあるが、中間膜を帯状に着色することにより形成されることが多い。その一方で、可視光線透過率を所定値以上(例えば70%以上)とするべき法定の視野領域があるため、フロントガラスのシェード領域は、視野領域の外であるフロントガラスの上部に通常は配置される。
【0076】
[合わせガラスの製造]
本発明の実施形態の合わせガラスは、一般的に用いられる公知の技術により製造できる。合わせガラス10Aにおいては、上記のようにしてスキン層41、コア層31、スキン層42、コア層32、スキン層43の順に積層した中間膜2Aを作製し、あるいは各層の製膜時に共押出しで中間膜2Aを作製し、これを1対のガラス板1A、1Bの間に挿入して、ガラス板1A、中間膜2(ただし、ガラス板1A側にスキン層41が位置する)、ガラス板1Bの順に積層された圧着前の合わせガラスである合わせガラス前駆体を準備する。その他の層を有する場合も、同様に得られる合わせガラスと同様の積層順にガラス板と各層を積層して合わせガラス前駆体を準備する。
【0077】
この合わせガラス前駆体をゴムバッグのような真空バッグの中に入れ、この真空バッグを排気系に接続して、真空バッグ内の圧力が約−65〜−100kPaの減圧度となるように減圧吸引(脱気)しながら温度約70〜110℃で接着することで実施形態の合わせガラスを得ることができる。さらに、例えば、100〜140℃、圧力0.6〜1.3MPaの条件で加熱加圧する圧着処理を行うことで、より耐久性の優れた合わせガラスを得ることができる。
【0078】
本発明の合わせガラスの用途は特に限定されない。建築用合わせガラス、自動車用合わせガラス等として使用できるが、自動車用合わせガラとして用いればより顕著な遮音効果が達成できる。さらに、好ましい態様において軽量化を達成できる。
【0079】
なお、本発明の合わせガラスを自動車用に用いる場合、JIS R3212(1998年)にしたがって測定された可視光線透過率が70%以上であることが好ましく、74%以上であることがより好ましい。ISO13837−2008にしたがって測定されたTts(Total solar energy transmitted through a glazing)が66%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましい。
【実施例】
【0080】
以下に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。本発明は、以下で説明する実施形態および実施例に何ら限定されるものではない。例1〜21が実施例であり、例22〜39が比較例である。
【0081】
[例1〜例39]
表1に示す構成の例1〜例39の合わせガラスを以下のとおり製造し、評価した。表1においてガラス板の外板および内板は、例えば、自動車用ガラスとして使用する場合、それぞれ、車外側に配置されるガラス板および車内側に配置されるガラス板を意味する。ただし、例1〜例39の合わせガラスの使用方法は限定されない。
【0082】
[中間膜の製造または準備]
各例において表1に示す積層構成の中間膜を製造または準備した。なお、中間膜におけるスキン層には厚み以外は全て同じPVBシート(Tgs;30℃)を用いた。また、コア層としては全て厚みが0.1mmのPVBシート(Tgc;3℃)を用いた。表1の「積層構成」の欄において、数字はスキン層の厚み[mm]を示し、「c」はコア層を示す。
【0083】
例えば、例1の合わせガラスの中間膜は、積層構成が「0.76/c/0.2/c/0.2/c/0.96」と示されている。例1の合わせガラスは、
図2に示される合わせガラス10Bと同様の構成であり、例えば、ガラス板1Bを外板、ガラス板1Aを内板として、表1に示す板厚の外板1B側から内板1A側に向かって、厚み0.76mmのスキン層44、厚み0.1mmのコア層33、厚み0.2mmのスキン層43、厚み0.1mmのコア層32、厚み0.2mmのスキン層42、厚み0.1mmのコア層31、厚み0.96mmのスキン層41が積層された中間膜2Bを有する構成である。
【0084】
なお、中間膜は各層を構成するPVBシートを積層してホットプレス成形機にて、150℃、300秒間、プレス圧50kg/cm
2でプレスして製造した。各層の厚みはプレス後の厚みである。
【0085】
例1の合わせガラスの中間膜は、コア層を3層有し、最外コア層間の厚みTaはスキン層43、コア層32、スキン層42の厚みの合計、0.2+0.1+0.2=0.5mmである。最外コア層間の面密度は、0.55kg/m
2である。中間膜の厚みTbは上記各層の厚みの合計(0.76+0.1+0.2+0.1+0.2+0.1+0.96)である2.42mmである。
【0086】
[合わせガラスの製造]
各例において上記のようにして製造または準備した中間膜を、表1に示す板厚のガラス板(外板、内板)間に挟み込むように積層し、例えば、例1の合わせガラスにおいては、
図2の合わせガラス10Bと同様の構成となるように、ガラス板1A、中間膜2B、ガラス板1Bを積層し、この積層体を真空バッグに入れ、減圧度が−60kPa以下となる減圧下で脱気しながら110℃で圧着を行った後、温度140℃、圧力1.3MPaの条件でさらに加熱加圧による圧着を行うことにより合わせガラスを得た。なお、用いたガラス板は全てソーダライムガラス(25mm×300mm)であり、中間膜のサイズは予めガラス板と同じサイズにして積層に用いた。
【0087】
各例で得られた合わせガラスにおける、中間膜のコア層数、最外コア層間の厚みTa、最外コア層間の面密度、中間膜の厚みTb、合わせガラス面密度、中間膜質量%を表1に示す。
【0088】
(評価)
例1〜例39で得られた合わせガラスの遮音性および剛性を以下のようにして測定した。結果を表2に示す。
(1)遮音性
上記で得られた合わせガラスについて、周波数0〜10000Hz、温度20℃における1次共振点〜7次共振点における損失係数を、ISO_PAS_16940に準拠し、小野測器社製、中央加振法測定システム(MA−5500、DS−2000)を用いて測定した。
(2)剛性
上記(1)と同様にして上記で得られた合わせガラスについて、周波数0〜10000Hz、温度20℃における1次共振点〜7次共振点におけるモジュラスを測定した。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
表2から、実施例の合わせガラスは、遮音性に優れることが明らかである。