(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものでない。
【0016】
[感光性樹脂組成物]
本実施形態の感光性樹脂組成物は、(A)フェノール性水酸基を有する樹脂、(B)2つ以上のオキシラン環を有する、脂肪族又は脂環式エポキシ化合物、(C)光感応性酸発生剤、及び(D)溶剤を含有する。また、本実施形態の感光性樹脂組成物は、必要に応じて、(E)成分:架橋剤、(F)成分:増感剤等を含有してもよい。
【0017】
本実施形態の感光性樹脂組成物によって、高アスペクト比の樹脂パターンが形成できる理由を本発明者らは以下のとおりと考えている。まず、未露光部では(A)フェノール性水酸基を有する樹脂の現像液に対する溶解性が(B)成分の添加により大幅に向上する。次に露光部では、(C)光感応性酸発生剤から発生した酸により、(B)成分における2つ以上のオキシラン環が反応して架橋するだけではなく、(A)成分のフェノール性水酸基とも反応し、現像液に対する組成物の溶解性が大幅に低下する。これによって、現像したとき、未露光部及び露光部の現像液に対する溶解性の差が顕著になり、充分な解像性が得られ、また現像後パターンの加熱処理により(B)成分の架橋、(A)成分との反応がさらに進行し、充分な耐熱性を有する樹脂パターンが得られるものと、本発明者らは推察する。
【0018】
<(A)成分>
(A)成分であるフェノール性水酸基を有する樹脂としては、特に限定されないが、アルカリ水溶液に可溶な樹脂であることが好ましく、ノボラック樹脂が特に好ましい。このようなノボラック樹脂はフェノール類とアルデヒド類とを触媒の存在下で、縮合させることにより得られる。
【0019】
上記フェノール類としては、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、o−ブチルフェノール、m−ブチルフェノール、p−ブチルフェノール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、カテコール、レゾルシノール、ピロガロール、α−ナフトール、β−ナフトール等が挙げられる。
【0020】
また、上記アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。
【0021】
このようなノボラック樹脂の具体例としては、フェノール/ホルムアルデヒド縮合ノボラック樹脂、クレゾール/ホルムアルデヒド縮合ノボラック樹脂、フェノール−ナフトール/ホルムアルデヒド縮合ノボラック樹脂等が挙げられる。
【0022】
また、ノボラック樹脂以外の(A)成分としては、例えば、ポリヒドロキシスチレン及びその共重合体、フェノール−キシリレングリコール縮合樹脂、クレゾール−キシリレングリコール縮合樹脂、フェノール−ジシクロペンタジエン縮合樹脂等が挙げられる。(A)成分は1種単独又は2種以上を混合して使用することができる。
【0023】
(A)成分は、得られる硬化膜の解像性、現像性、熱衝撃性、耐熱性等の観点から、重量平均分子量が100000以下であることが好ましく、1000〜80000であることがより好ましく、2000〜50000であることがさらに好ましく、2000〜20000であることが特に好ましく、5000〜15000であることが極めて好ましい。
【0024】
本実施形態の感光性樹脂組成物において、(A)成分の含有量は、(D)成分を除く感光性樹脂組成物の全量100質量部に対して、30〜90質量部であることが好ましく、40〜80質量部であることがより好ましい。(A)成分の割合が上記範囲であると、得られる感光性樹脂組成物を用いて形成された膜はアルカリ水溶液による現像性により優れている。
【0025】
<(B)成分>
(B)成分である2つ以上のオキシラン環を有する、脂肪族又は脂環式エポキシ化合物は、重量平均分子量が1000以下のエポキシ化合物であることが好ましい。また、(B)成分は、2つ以上のグリシジルエーテル基を有する化合物であることが好ましく、3つ以上のグリシジルエーテル基を有する化合物であることがより好ましい。なお、本明細書において、「脂肪族又は脂環式エポキシ化合物」とは、主骨格が脂肪族骨格及び/又は脂環式骨格であり、芳香環又は複素環を含まないものをいう。
【0026】
(B)成分としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールプロポキシレートトリグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンジオキシド、1,2,5,6−ジエポキシシクロオクタン、1,4−シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ジグリシジル1,2−シクロヘキサンジカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート及びシクロヘキセンオキシド型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0027】
(B)成分の中でも、感度及び解像性に優れる点で、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル又はトリメチロールプロパントリグリシジルエーテルが好ましい。
【0028】
(B)成分は、例えば、エポライト40E、エポライト100E、エポライト70P、エポライト200P、エポライト1500NP、エポライト1600、エポライト80MF、エポライト100MF(以上、共栄社化学(株)製、商品名)、アルキル型エポキシ樹脂ZX−1542(新日鉄住金化学(株)製、商品名)、デナコールEX−212L、デナコールEX−214L、デナコールEX−216L、デナコールEX−321L及びデナコールEX−850L(以上、ナガセケムテック(株)製、商品名)として商業的に入手可能である。(B)成分は1種単独又は2種以上を混合して使用することができる。
【0029】
本実施形態の感光性樹脂組成物において、(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、20〜70質量部であり、25〜65質量部であることが好ましく、35〜55質量部であることがより好ましい。(B)成分の含有量が20質量部以上では、露光部における架橋が充分となるため解像性がより向上しやすく、70質量部以下では、感光性樹脂組成物を所望の支持体上に成膜しやすくすることができ、解像性も低下しにくい傾向がある。
【0030】
<(C)成分>
(C)成分である光感応性酸発生剤は、活性光線等の照射によって酸を発生する化合物であり、発生した酸により(B)成分同士が架橋するだけではなく、(B)成分が(A)成分のフェノール性水酸基とも反応し、現像液に対する組成物の溶解性が大幅に低下する。
【0031】
(C)成分は活性光線の照射によって酸を発生する化合物であれば特に限定されないが、例えば、オニウム塩化合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物、スルホン化合物、スルホン酸化合物、スルホンイミド化合物及びジアゾメタン化合物等が挙げられる。中でも、入手の容易さという観点で、オニウム塩化合物又はスルホンイミド化合物を用いることが好ましい。特に、(F)成分:溶剤に対する溶解性の観点で、オニウム塩化合物を用いることが好ましい。以下、その具体例を示す。
【0032】
オニウム塩化合物:
オニウム塩化合物としては、例えば、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩及びピリジニウム塩が挙げられる。好ましいオニウム塩化合物の具体例としては、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムp−トルエンスルホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート等のジアリールヨードニウム塩;トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムp−トルエンスルホネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等のトリアリールスルホニウム塩;4−t−ブチルフェニル−ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート;4−t−ブチルフェニル−ジフェニルスルホニウムp−トルエンスルホネート;4,7−ジ−n−ブトキシナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネートなどが挙げられる。
【0033】
ハロゲン含有化合物:
ハロゲン含有化合物としては、例えば、ハロアルキル基含有炭化水素化合物及びハロアルキル基含有複素環式化合物が挙げられる。好ましいハロゲン含有化合物の具体例としては、1,10−ジブロモ−n−デカン、1,1−ビス(4−クロロフェニル)−2,2,2−トリクロロエタン;フェニル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−メトキシフェニル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、スチリル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、ナフチル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等のs−トリアジン誘導体が挙げられる。
【0034】
ジアゾケトン化合物:
ジアゾケトン化合物としては、例えば、1,3−ジケト−2−ジアゾ化合物、ジアゾベンゾキノン化合物、ジアゾナフトキノン化合物等を挙げることができる。具体例としては、フェノール類の1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル化合物が挙げられる。
【0035】
スルホン化合物:
スルホン化合物としては、例えば、β−ケトスルホン化合物、β−スルホニルスルホン化合物及びこれらの化合物のα−ジアゾ化合物を挙げることができる。具体例としては、4−トリルフェナシルスルホン、メシチルフェナシルスルホン、ビス(フェナシルスルホニル)メタン等が挙げられる。
【0036】
スルホン酸化合物:
スルホン酸化合物としては、例えば、アルキルスルホン酸エステル類、ハロアルキルスルホン酸エステル類、アリールスルホン酸エステル類、イミノスルホネート類等が挙げられる。好ましい具体例としては、ベンゾインp−トルエンスルホネート、ピロガロールトリストリフルオロメタンスルホネート、o−ニトロベンジルトリフルオロメタンスルホネート、o−ニトロベンジルp−トルエンスルホネート等が挙げられる。
【0037】
スルホンイミド化合物:
スルホンイミド化合物の具体例としては、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ナフタルイミド、N−(p−トルエンスルホニルオキシ)−1,8−ナフタルイミド、N−(10−カンファースルホニルオキシ)−1,8−ナフタルイミド等が挙げられる。
【0038】
ジアゾメタン化合物:
ジアゾメタン化合物の具体例としては、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン及びビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタンが挙げられる。
【0039】
本実施形態においては、感度及び解像性に優れる点で(C)成分はトリフルオロメタンスルホネート基、ヘキサフルオロアンチモネート基、ヘキサフルオロホスフェート基又はテトラフルオロボレート基を有している化合物であることが好ましい。また、(C)成分は1種単独又は2種以上を混合して使用することができる。
【0040】
本実施形態の感光性樹脂組成物において、(C)成分の含有量は、本実施形態の感光性樹脂組成物の感度、解像度、パターン形状等を確保する観点から(A)成分100質量部に対して、0.1〜15質量部であることが好ましく、0.3〜10質量部であることがより好ましい。
【0041】
<(D)成分>
(D)成分である溶剤は、感光性樹脂組成物の取り扱い性を向上させたり、粘度及び保存安定性を調節したりするために添加される。(D)成分は、有機溶剤であることが好ましい。該有機溶剤の種類は、上記性能を発揮できるものであれば特に制限はないが、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル等のプロピレングリコールジアルキルエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、ブチルカルビトール等のカルビトール類;乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−プロピル、乳酸イソプロピル等の乳酸エステル類;酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n−アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸イソブチル等の脂肪族カルボン酸エステル類;3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;2−ブタノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類などが挙げられる。上記有機溶剤は、1種単独又は2種以上を混合して使用することができる。
【0042】
本実施形態の感光性樹脂組成物において、(D)成分の含有量は、(D)成分を除く感光性樹脂組成物の全量100質量部に対して、30〜200質量部であることが好ましく、60〜120質量部であることがより好ましい。
【0043】
<(E)成分>
本実施形態の感光性樹脂組成物は、必要に応じて、(E)成分である架橋剤を更に含有していてもよい。(E)成分を含有することにより、樹脂パターン形成後の感光層を加熱して硬化する際に、(E)成分が(A)成分と反応して橋架け構造が形成し、樹脂パターンの脆弱化及び樹脂パターンの変形を防ぐことができる。
【0044】
また、(E)成分としては、具体的には、フェノール性水酸基を有する化合物(ただし、(A)成分は包含されない)、ヒドロキシメチルアミノ基を有する化合物が好ましいものとして用いることができる。(E)成分は1種単独又は2種以上を混合して使用することができる。
【0045】
(E)成分として用いる「フェノール性水酸基を有する化合物」は、さらにメチロール基又はアルコキシアルキル基を有することが好ましい。(E)成分としてのフェノール性水酸基を有する化合物は、アルカリ水溶液で現像する際の未露光部の溶解速度を増加させ、感度を向上させることができる。該フェノール性水酸基を有する化合物の重量平均分子量は、2000以下が好ましい。アルカリ水溶液に対する溶解性、感光性及び機械特性とのバランスを考慮して、数平均分子量で94〜2000が好ましく、108〜2000がより好ましく、108〜1500がさらに好ましい。
【0046】
(E)成分として用いる「フェノール性水酸基を有する化合物」としては、従来公知のものを用いることができるが、下記一般式(1)で表される化合物が、未露光部の溶解促進効果と加熱による硬化後の樹脂パターンの変形を防止する効果とのバランスに優れることから好ましい。
【化1】
[一般式(1)中、Zは単結合又は2価の有機基を示し、R
1及びR
2はそれぞれ独立に水素原子又は1価の有機基を示し、R
3及びR
4はそれぞれ独立に1価の有機基を示し、a及びbはそれぞれ独立に1〜3の整数を示し、c及びdはそれぞれ独立に0〜3の整数を示す。]
【0047】
一般式(1)において、Zが単結合である化合物は、ビフェノール(ジヒドロキシビフェニル)誘導体である。また、Zで示される2価の有機基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等の炭素原子数が1〜10であるアルキレン基、エチリデン基等の炭素原子数が2〜10であるアルキリデン基、フェニレン基等の炭素原子数が6〜30であるアリーレン基、これら炭化水素基の水素原子の一部又は全部をフッ素原子等のハロゲン原子で置換した基、スルホニル基、カルボニル基、エーテル結合、スルフィド結合、アミド結合などが挙げられる。これらの中で、Zは下記一般式(2)で表される2価の有機基であることが好ましい。
【0048】
【化2】
[一般式(2)中、Xは、単結合、アルキレン基(例えば、炭素原子数が1〜10のアルキレン基)、アルキリデン基(例えば、炭素原子数が2〜10のアルキリデン基)、それらの水素原子の一部又は全部をハロゲン原子で置換した基、スルホニル基、カルボニル基、エーテル結合、スルフィド結合又はアミド結合を示す。R
5は、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基又はハロアルキル基を示し、eは1〜10の整数を示す。複数のR
5は互いに同一でも異なっていてもよい。]
【0049】
上記ヒドロキシメチルアミノ基を有する化合物としては、(ポリ)(N−ヒドロキシメチル)メラミン、(ポリ)(N−ヒドロキシメチル)グリコールウリル、(ポリ)(N−ヒドロキシメチル)ベンゾグアナミン、(ポリ)(N−ヒドロキシメチル)尿素等のメチロール基の全部又は一部をアルキルエーテル化した含窒素化合物が挙げられる。ここで、アルキルエーテルのアルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基、又はこれらを混合したものが挙げられ、一部自己縮合してなるオリゴマー成分を含有していてもよい。具体的には、ヘキサキス(メトキシメチル)メラミン、ヘキサキス(ブトキシメチル)メラミン、テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル、テトラキス(ブトキシメチル)グリコールウリル、テトラキス(メトキシメチル)尿素等が挙げられる。
【0050】
本実施形態の感光性樹脂組成物において、(E)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、5〜50質量部であることが好ましく、5〜30質量部であることがより好ましい。
【0051】
<(F)成分>
本実施形態の感光性樹脂組成物は、必要に応じて、(F)成分として増感剤を更に含有していてもよい。(F)成分を含有することにより、感光性樹脂組成物の感度を向上させることができる。増感剤としては、例えば、9,10−ジブトキシアントラセン等が挙げられる。また、(F)成分は1種単独又は2種以上を混合して使用することができる。
【0052】
本実施形態の感光性樹脂組成物において、(F)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.01〜1.5質量部であることが好ましく、0.05〜0.5質量部であることがより好ましい。
【0053】
また、本実施形態の感光性樹脂組成物は、(A)成分に加えて、分子量が1000未満であるフェノール性低分子化合物(以下、「フェノール化合物(a)」という。)を含有していてもよい。例えば、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,3−ビス[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]ベンゼン、1,4−ビス[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]ベンゼン、4,6−ビス[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]−1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−[4−{1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル}フェニル]エタン、1,1,2,2−テトラ(4−ヒドロキシフェニル)エタン等が挙げられる。これらのフェノール化合物(a)は、(A)成分に対して0〜40質量%、特に0〜30質量%の範囲で含有することができる。
【0054】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、上述の成分以外のその他の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、無機フィラー、密着助剤、レベリング剤等が挙げられる。
【0055】
[感光性フィルム]
次に、本実施形態の感光性フィルムについて説明する。
【0056】
本実施形態にかかる感光性フィルムは、支持体と、該支持体上に形成された上述の感光性樹脂組成物から形成される感光層とを備えるものである。感光層上には、該感光層を被覆する保護フィルムを更に備えていてもよい。
【0057】
上記支持体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の耐熱性及び耐溶剤性を有する重合体フィルムを用いることができる。上記支持体(重合体フィルム)の厚みは、5〜25μmとすることが好ましい。なお、上記重合体フィルムは、一つを支持体として、他の一つを保護フィルムとして感光層の両面に積層して使用してもよい。
【0058】
上記保護フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の耐熱性及び耐溶剤性を有する重合体フィルムを用いることができる。
【0059】
上記感光層は、上記感光性樹脂組成物を支持体又は保護フィルム上に塗布することにより形成することができる。塗布方法としては、例えば、ディッピング法、スプレー法、バーコート法、ロールコート法、スピンコート法等が挙げられる。上記感光層の厚みは用途により異なるが、感光層を乾燥した後に10〜100μmであることが好ましく、15〜60μmであることがより好ましく、20〜50μmであることが特に好ましい。
【0060】
[レジストパターンの形成方法]
次に、本実施形態のレジストパターンの形成方法を説明する。
【0061】
まず、レジストを形成すべき基材(樹脂付き銅箔、銅張積層板、金属スパッタ膜を付けたシリコンウエハー、アルミナ基板等)上に、上述の感光性樹脂組成物から形成される感光層を形成する。該感光層の形成方法としては、上記感光性樹脂組成物を基材に塗工し、乾燥して溶剤等を揮発させて塗膜(感光層)を形成する方法、上述の感光性フィルムにおける感光層を基材上に転写する方法が挙げられる。
【0062】
上記感光性樹脂組成物を基材に塗布する方法としては、例えば、ディッピング法、スプレー法、バーコート法、ロールコート法、スピンコート法等の塗布方法を用いることができる。また、塗膜の厚さは、塗布手段、感光性樹脂組成物の固形分濃度及び粘度を調節することにより、適宜制御することができる。
【0063】
次に、所定のマスクを介して、上記感光層を所定のパターンに露光する。露光に用いられる活性光線としては、例えば、g線ステッパーの光線;低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、i線ステッパー等の紫外線;電子線;レーザー光線などが挙げられ、露光量としては使用する光源及び塗膜の厚さ等によって適宜選定されるが、例えば高圧水銀灯からの紫外線照射の場合、塗膜の厚さ10〜50μmでは、1000〜20000J/m
2程度である。
【0064】
さらに、露光後に加熱処理(露光後ベーク)を行う。露光後ベークを行うことにより、発生した酸による(A)成分と(B)成分との硬化反応を促進させることができる。露光後ベークの条件は感光性樹脂組成物の含有量、塗膜の厚さ等によって異なるが、通常、70〜150℃で1〜60分程度加熱することが好ましく、80〜120℃で1〜60分程度加熱することがより好ましい。
【0065】
次いで、露光後ベークを行った塗膜をアルカリ性現像液により現像して、光硬化部以外(未露光部)の領域を溶解、除去することにより所望の樹脂パターンを得る。この場合の現像方法としては、シャワー現像法、スプレー現像法、浸漬現像法、パドル現像法等が挙げられる。現像条件としては通常、20〜40℃で1〜10分程度である。
【0066】
上記アルカリ性現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、コリン等のアルカリ性化合物を濃度が1〜10質量%程度になるように水に溶解したアルカリ性水溶液、アンモニア水等のアルカリ性水溶液などが挙げられる。上記アルカリ性水溶液には、例えば、メタノール、エタノール等の水溶性の有機溶剤又は界面活性剤などを適量添加することもできる。なお、アルカリ性現像液で現像した後は、水で洗浄し、乾燥する。アルカリ性現像液は、解像性に優れる点で、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドが好ましい。
【0067】
さらに、絶縁膜特性を発現させるために加熱処理を行うことにより、硬化膜(レジストパターン)を得る。上記感光性樹脂組成物の硬化条件は特に制限されるものではないが、硬化物の用途に応じて、50〜200℃で30分〜10時間程度加熱し、感光性樹脂組成物を硬化させることができる。
【0068】
また、硬化を充分に進行させたり、得られた樹脂パターン形状の変形を防止するために二段階で加熱することもできる。例えば、第一段階で、50〜120℃で5分〜2時間程度加熱し、さらに第二段階で、80〜200℃で10分〜10時間程度加熱して硬化させることもできる。
【0069】
上述の硬化条件であれば、加熱設備として特に制限はなく、一般的なオーブン、赤外線炉等を使用することができる。
【0070】
[多層プリント配線板]
本実施形態の感光性樹脂組成物から形成される硬化物は、例えば、多層プリント配線板におけるソルダーレジスト及び/又は層間絶縁膜として好適に用いることができる。
図1は、本実施形態の感光性樹脂組成物の硬化物をソルダーレジスト及び/又は層間絶縁膜として含む多層プリント配線板の製造方法を示す図である。
図1(f)に示す多層プリント配線板100Aは表面及び内部に配線パターンを有する。多層プリント配線板100Aは、銅張積層体、層間絶縁膜及び金属箔等を積層するとともにエッチング法又はセミアディティブ法によって配線パターンを適宜形成することによって得られる。以下、多層プリント配線板100Aの製造方法を
図1に基づいて簡単に説明する。
【0071】
まず、表面に配線パターン102を有する銅張積層体101の両面に層間絶縁膜103を形成する(
図1(a)参照)。層間絶縁膜103は、感光性樹脂組成物をスクリーン印刷機又はロールコータを用いて印刷することにより形成してもよいし、上述の感光性フィルムを予め準備し、ラミネータを用いて、この感光性フィルムにおける感光層をプリント配線板の表面に貼り付けて形成することもできる。次いで、外部と電気的に接続することが必要な箇所に、YAGレーザー又は炭酸ガスレーザーを用いて開口部104を形成する(
図1(b)参照)。開口部104周辺のスミア(残渣)はデスミア処理により除去する。次いで、無電解めっき法によりシード層105を形成する(
図1(c)参照)。上記シード層105上に上述の感光性樹脂組成物から形成される感光層を積層し、所定の箇所を露光、現像処理して配線パターン106を形成する(
図1(d)参照)。次いで、電解めっき法により配線パターン107を形成し、はく離液により感光性樹脂組成物の硬化物を除去した後、上記シード層105をエッチングにより除去する(
図1(e)参照)。以上の操作を繰り返し行い、最表面に上述の感光性樹脂組成物の硬化物からなるソルダーレジスト108を形成することで多層プリント配線板100Aを作製することができる(
図1(f)参照)。
【0072】
このようにして得られた多層プリント配線板100Aは、対応する箇所に半導体素子が実装され、電気的な接続を確保することが可能である。
【実施例】
【0073】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例における部は特に断らない限り質量部の意味で用いる。
【0074】
<アルカリ溶解性の評価>
ノボラック樹脂(A−1)100質量部、エポキシ化合物(B−1〜B−7、B’−8〜B’−13)43質量部及び溶剤(D−1)100質量部を混合し、樹脂組成物を得た。
この樹脂組成物を6インチのシリコンウエハーにスピンコートし、ホットプレート上にて65℃で2分間、次いで95℃で8分間加熱し、厚さが25μmの均一な塗膜を作製した。作製した塗膜をシャーレ中、23℃で2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に浸漬させて、完溶時間を測定した。溶解速度(nm/秒)は、成膜後の膜厚/完溶時間から算出した。また、溶解性を以下の基準にしたがって評価した。評価結果を表1に示す。
<溶解性の評価基準>
○:均一に溶解
△:白濁して溶解
×:不溶
【0075】
【表1】
【0076】
表1に記載の各成分は、以下のとおりである。
A−1:ノボラック樹脂(旭有機材工業(株)製、商品名:MXP5560BF、重量平均分子量=7800)
B−1:ジシクロペンタジエンジオキシド(アルドリッチ社製、商品名)
B−2:1,4−シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル(アルドリッチ社製、商品名)
B−3:プロピレングリコールジグリシジルエーテル(共栄社化学(株)製、商品名:エポライト70P)
B−4:ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(共栄社化学(株)製、商品名:エポライト1500NP)
B−5:トリメチロールエタントリグリシジルエーテル(アルドリッチ社製、商品名)
B−6:トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(新日鉄住金化学(株)製、商品名:ZX−1542、下記式(3)参照)
【化3】
B−7:シクロヘキセンオキシド型エポキシ樹脂((株)ダイセル製、商品名:CEL2021P、下記式(4)参照)
【化4】
B’−8:エチルグリシジルエーテル(東京化成工業(株)製、商品名)
B’−9:フェニルグリシジルエーテル(和光純薬工業(株)製、商品名)
B’−10:レゾルシノールジグリシジルエーテル(アルドリッチ社製、商品名)
B’−11:トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタントリグリシジルエーテル(アルドリッチ社製、商品名)
B’−12:ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製、商品名:NC−3000H、下記式(5)参照)
【化5】
B’−13:イソシアヌル型エポキシ樹脂(四国化成工業(株)製、商品名:MA−DGIC、下記式(6)参照)
【化6】
D−1:プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート(和光純薬工業(株)製、商品名)
【0077】
以上の結果から、(B)成分を添加していない参考例8と比べて参考例1〜7はアルカリ水溶液に対する溶解性は良好で溶解速度が向上した。一方、(B)成分以外のエポキシ化合物を添加した参考例9〜14は溶解速度が低下し、参考例10〜14はアルカリ水溶液に対する溶解性が低下した。
【0078】
<解像性の評価>
ノボラック樹脂(A−1〜A−3)100質量部に対し、エポキシ化合物(B−1〜B−7、B’−8〜B’−10)、光感応性酸発生剤(C−1)、溶剤(D−1)及び増感剤(F−1)を表2に示した所定量にて配合し、感光性樹脂組成物を得た。
【0079】
上記感光性樹脂組成物を6インチのシリコンウエハーにスピンコートし、ホットプレート上にて65℃で2分間、次いで95℃で8分間加熱し、厚さが25μmの均一な塗膜を作製した。作製した塗膜に、i線ステッパー(キヤノン(株)製、商品名:FPA−3000iW)を用いてi線(波長365nm)で、マスクを介して、縮小投影露光を行った。マスクとしては、露光部及び未露光部の幅の比が1:1となるようなパターンを、2μm:2μm〜30μm:30μmまで1μm刻みで有するものを用いた。また、露光量は、50〜950mJ/cm
2の範囲で、50mJ/cm
2ずつ変化させながら縮小投影露光を行った。
【0080】
次いで、露光された塗膜を65℃で1分間、次いで95℃で4分間加熱し(露光後ベーク)、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて最小現像時間(未露光部が除去される最小時間)の1.5倍に相当する時間で浸漬することで現像し、未露光部を除去して現像処理を行った。現像処理後、金属顕微鏡を用いて形成されたレジストパターンを観察した。スペース部分(未露光部)がきれいに除去され、且つライン部分(露光部)が蛇行又は欠けを生じることなく形成された樹脂パターンのうち、最も小さいスペース幅の値を最小解像度とするとともに、そのときの露光量を評価した。評価結果を表2に示す。
【0081】
表2の結果から、実施例1〜7は比較例1〜5に比べて少ない露光量で高解像度パターンが得られた。また実施例4、5と比べて比較例4、5は高解像度パターンが得られないことが分かった。
【0082】
なお、
図2は、実施例4の感光性樹脂組成物を用いて樹脂パターンを形成した際の金属顕微鏡写真である。また、
図3は、実施例4の感光性樹脂組成物を用いて樹脂パターンを形成した際の走査型電子顕微鏡写真である。これに対し、
図4は、比較例3の感光性樹脂組成物を用いて樹脂パターンを形成した際の金属顕微鏡写真である。これらの図面から明らかなように、実施例4の感光性樹脂組成物を用いると、スペース部分がきれいに除去され、解像度5μmの樹脂パターンが形成された。一方、比較例3の感光性樹脂組成物を用いると、形成された樹脂パターンには蛇行及び剥がれが生じ、その解像度は14μmであった。
【0083】
<耐熱性の評価>
次に、実施例4の感光性樹脂組成物をポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム(株)製、商品名:ピューレックスA53)上に均一に塗布し、90℃の熱風対流式乾燥機で10分間乾燥して、乾燥後の厚さが40μmである感光層を形成した。次いで高圧水銀灯を有する露光機((株)オーク製作所製、商品名:EXM−1201)を用いて、照射エネルギー量が400mJ/cm
2となるように感光層を露光した。露光された感光層をホットプレート上にて65℃で2分間、次いで95℃で8分間加熱し、熱風対流式乾燥機にて180℃で60分間加熱処理をした後、ポリエチレンテレフタレートフィルムから剥離して硬化膜を得た。熱機械的分析装置(セイコーインスツルメンツ(株)製、商品名:TMA/SS6000)を用いて、昇温速度5℃/分で温度を上昇させたときの該硬化膜の熱膨張率を測定し、その曲線から得られる変曲点をガラス転移温度Tgとして求めた。なお、熱膨張率の測定条件を以下に示す。
サンプル幅:2mm
サンプル長さ:20mm
チャック間距離:10mm
荷重:5gf(0.05N)
引っぱり速度:5mm/min
測定温度範囲:18〜420℃
その結果、実施例1〜10のガラス転移温度は90℃以上であり、耐熱性に優れていることが分かった。その他の評価結果を表2に示す。
【0084】
【表2】
*1:樹脂パターンが形成できない、又は硬化膜が脆く、測定不可
【0085】
表2に記載の組成は、以下のとおりである。
A−2:クレゾールノボラック樹脂(旭有機材工業(株)製、商品名:EP4050G)
A−3:クレゾールノボラック樹脂(旭有機材工業(株)製、商品名:EP4020G)
C−1:トリアリールスルホニウム塩(サンアプロ(株)製、商品名:CPI−101A)
F−1:9,10−ジブトキシアントラセン(川崎化成工業(株)製、商品名:DBA)
【0086】
表2から明らかなように、実施例1〜10は、硬化に必要な露光量が800mJ/cm
2以下であり、最小解像度が9以下であり、耐熱性が良好であった。一方、2つ以上のオキシラン環を有する、脂肪族又は脂環式エポキシ化合物を含有していない比較例1〜3及び7は、実施例1〜10と比較して、硬化に必要な露光量が高く、最小解像度が大きかった。さらに、(A)成分100質量部に対して(B)成分20〜70質量部を含有する実施例4、5、9及び10は、比較例4〜6と比較すると、硬化に必要な露光量、解像性及び耐熱性のバランスに優れていた。