(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
パラボラアンテナ用の放射器が接続される一端の第1開口部から他端の第2開口部まで内部を伸延する導波路が形成される導波管であって、前記一端と前記他端との間で、前記導波管の管壁を貫通する貫通孔を有する導波管と、
前記導波管の外周面に取り付けられ、前記外周面に沿って回転可能な環状の第1調整部材であって、径方向の厚さが第1厚さから、前記第1厚さよりも厚い第2厚さまで外周方向に沿って連続的に変化する第1テーパ部と、前記第1テーパ部の前記第1厚さの位置から前記第2厚さの位置まで外周方向に沿って設けられ、前記貫通孔に対応した幅を有するスリットとを有する第1調整部材と、
前記第1調整部材の外周側に設けられる環状の第2調整部材であって、前記第1テーパ部に対応する第2テーパ部を内周面に有する第2調整部材と、
前記スリットと前記貫通孔とに挿通され、前記導波路内に先端が突出するスタブと、前記スタブの前記先端とは反対側に設けられ、前記第1テーパ部と前記第2テーパ部との間に挟まれた状態で前記第1テーパ部に係合する係合部とを有する調整スタブと、を含み、
前記貫通孔に対する、前記第1テーパ部及び前記第2テーパ部の前記外周方向における回転量により、前記スタブが前記導波路内に突出する突出量が調整される、一次輻射器。
パラボラアンテナ用の放射器が接続される一端の第1開口部から他端の第2開口部まで内部を伸延する導波路が形成される導波管であって、前記一端と前記他端との間で、前記導波管の管壁を貫通する貫通孔を有する導波管と、
前記導波管の外周面に取り付けられ、前記外周面に沿って前記導波路の伸延方向に移動可能な環状の調整部材であって、前記貫通孔に対応した幅を有するスリットを有する調整部材と、
前記スリットと前記貫通孔とに挿通され、前記導波路内に先端が突出するスタブと、前記スタブの前記先端とは反対側に設けられ、前記調整部材の外周面に係合する係合部とを有する調整スタブと
を含み、
前記調整部材及び前記係合部は、前記調整部材を前記貫通孔に対して前記伸延方向に移動させて得られる前記調整スタブの回転移動量を、前記スタブが前記導波路内に突出する突出量に変換する変換機構を有する、一次輻射器。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一次輻射器を適用した実施の形態について説明する。
【0010】
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1の一次輻射器100を含むアンテナ装置1を示す図である。
図1(B)は、
図1(A)におけるA−A矢視断面を示す図である。
図1ではXYZ座標系を定義する。
【0011】
アンテナ装置1は、一次輻射器100、パラボラ反射鏡10、及び偏分波器20を含む。
【0012】
一次輻射器100の長手方向(X軸方向)の中程には、パラボラ反射鏡10が取り付けられており、また、一次輻射器100のパラボラ反射鏡10の裏側(X軸正方向側)に位置する端部には、偏分波器20が接続されている。
【0013】
パラボラ反射鏡10は、一例として、直径が0.6mであり、X軸負方向側にパラボラ鏡面を有する。
【0014】
偏分波器20は、所謂OMT(Orthogonal Mode Transducer:水平垂直偏波分波器)である。偏分波器20は、導波管21を有し、導波管21の内部には、円形導波路20Aが設けられている。
【0015】
円形導波路20Aの内部には、
図1(B)に示すように、ピン22、ピン23、反射部24が設けられている。ピン22は、水平偏波の電波を放射するために設けられており、ピン23は、垂直偏波の電波を放射するために設けられている。ピン22、ピン23は、導波管21の外周壁部を貫通する孔部に通されており、導波管21とは絶縁されている。
【0016】
このため、ピン22とピン23の位置は、円形導波路20Aの円形の断面内で、円形導波路20Aの中心軸に対して、円周方向に90度異なる位置に配設されている。また、ピン22、23は、それぞれ、導波管21の外側に設けられたコネクタ22A、23Aに接続されている。コネクタ22A、23Aは、それぞれ、水平偏波用の電波、垂直偏波用の電波を入出力するために用いられるコネクタである。
【0017】
反射部24は、X軸負方向側から伝搬する垂直偏波の電波を反射するために設けられている。なお、円形導波路20AのX軸正方向側の端部は、導波管21の壁部によって閉じられて(終端されて)いる。
【0018】
図2は、実施の形態1の一次輻射器100を示す図である。
図2(A)は、
図1の破線で囲む部分を拡大して示す図である。
図2(B)は、
図2(A)におけるB−B矢視断面を示す図である。
図2では、
図1と同一のXYZ座標系を定義する。
【0019】
一次輻射器100は、導波管110、放射器120、及び調整スタブ130V、130Hを有する。一次輻射器100は、この他に調整部材を含むが、調整部材については、
図4乃至
図6を用いて後述する。
図2では、調整部材を省いて説明する。
【0020】
導波管110は、内部に円形導波路110Aを有する。また、導波管110は、円形導波路110Aの内部のX軸負方向側の端部に、放射器120の整合部123が挿入される。整合部123は、誘電体製で、円形導波路110Aの内部に嵌着される円筒状の部材であり、径方向の中心に、X軸正方向側に突出する凸部123Aを有する。導波管110は、金属製である。
【0021】
また、導波管110は、調整スタブ130V、130Hのスタブ131V、131Hを挿入するための貫通孔111V、111Hを有する。貫通孔111V、111Hの開口は、円柱型のスタブ131V、131Hのサイズに合わせてあり、スタブ131V、131Hが貫通孔111V、111Hに挿入された状態で、隙間が生じずに、かつ、スタブ131V、131Hが貫通孔111V、111Hに対して抜き差しする方向に移動可能になるようにされている。
【0022】
貫通孔111V、111Hは、それぞれ、2つずつ設けられている。2つの貫通孔111Vは、導波管110の中心軸(円形導波路110Aの中心をX軸方向に伸延する軸)を含むXZ平面に含まれるように設けられている。2つの貫通孔111Vのうちの一方は、Z軸正方向側に設けられ、他方は、Z軸負方向側に設けられている。
【0023】
2つの貫通孔111Hは、導波管110の中心軸(円形導波路110Aの中心をX軸方向に伸延する軸)を含むXY平面に含まれるように設けられている。2つの貫通孔111Hのうちの一方は、Y軸正方向側に設けられ、他方は、Y軸負方向側に設けられている。
【0024】
放射器120は、反射板121、誘電体レンズ122、及び整合部123を有する。
【0025】
反射板121は、円板状の基部の一方の面(X軸正方向側の面)に形成される反射調整部121Aを有する。反射板121は、例えば、アルミニウム、真鍮、銅等の金属で形成される。反射調整部121Aは、円錐状の凸部であり、円錐形状の頂点は、基部の円板形状の中心軸上に位置する。反射板121のX軸正方向側の面は、誘電体レンズ122によって覆われている。
【0026】
誘電体レンズ122は、誘電体製で円錐台形の部材である。誘電体レンズ122は、導波管110から出力(放射)される電波を反射板121に誘導するために設けられている。
このため、誘電体レンズ122は、tanδ(誘電損失)が小さい材料で形成されることが望ましい。実施の形態1では、誘電体レンズ122は、一例として、テフロン樹脂で形成される。誘電体レンズ122は、一例として、整合部123と一体的に成型される。
【0027】
整合部123は、波長を短縮する効果を有するため、導波管110と放射器120との間で波長を調整するために設けられている。整合部123は、一例として、誘電体レンズ122と一体的に成型されており、円形導波路110Aの内部に嵌着される。これにより、放射器120は、導波管110に取り付けられる。
【0028】
調整スタブ130V、130Hは、それぞれ2つずつ設けられている。調整スタブ130V、130Hは、それぞれ、導波管110のインピーダンスを変更することにより、垂直偏波、水平偏波の電波のVSWR特性を調整するために設けられている。調整スタブ130V、130Hは、それぞれ、スタブ131V、131Hと、係合部132V、132Hとを有する。調整スタブ130V、130Hは、導電性材料又は金属で構成すればよい。
【0029】
ここで、調整スタブ130V、130Hの説明には、
図1及び
図2に加えて
図3を用いる。
図3は、調整スタブ130V(130H)を示す図である。
図3では、
図1、2と同一のXYZ座標系を定義する。なお、調整スタブ130Hは、調整スタブ130Vと同様の構成を有するため、
図3(A)には、調整スタブ130H、スタブ131H、係合部132Hの符号を括弧書きで示す。
【0030】
スタブ131V、131Hは、それぞれ、貫通孔111V、111Hに挿入される。また、係合部132V、132Hは、スタブ131V、131Hが貫通孔111V、111Hに挿入される側とは反対側に設けられており、円柱状の部材である。スタブ131V、131Hと、係合部132V、132Hとは、それぞれ、一体的に構成されている。
【0031】
係合部132V、132Hの円柱形状は、スタブ131V、131Hの円柱形状に対して、中心軸が直交するように配置されている。
図3(A)では、一例として、スタブ131V、131Hの円柱形状の中心軸がZ軸方向であるのに対して、係合部132V、132Hの円柱形状はX軸方向を向いている。
【0032】
このため、係合部132V、132Hは、貫通孔111V、111Hの内部には入らない。係合部132V、132Hの円柱形状の向きを上述のようにする理由については後述する。
【0033】
調整スタブ130Vは、上述のようにスタブ131Vが貫通孔111Vに挿入されているため、スタブ131Vが導波管110の内周面から円形導波路110Aに突出する量(突出量)を調整することにより、導波管110の垂直偏波の電波についてのインピーダンスを変更することができる。インピーダンスが変化するとVSWRの値にも変化が生じる。このため、一次輻射器100では、調整スタブ130Vを偏分波器20から入力される垂直偏波の電波のVSWR特性を調整するために用いる。
【0034】
調整スタブ130Hは、スタブ131Hが貫通孔111Hに挿入されているため、スタブ131Hが導波管110の内周面から円形導波路110Aに突出する量(突出量)を調整することにより、導波管110の水平偏波の電波についてのインピーダンスを変更することができる。インピーダンスが変化するとVSWRの値にも変化が生じる。このため、一次輻射器100では、調整スタブ130Hを偏分波器20から入力される水平偏波の電波のVSWR特性を調整するために用いる。
【0035】
なお、
図2では図示を省略するが、導波管110の外周面には、実際には調整部材が設けられるため、スタブ131V、131Hは、それぞれ、調整部材のスリットを介して貫通孔111V、111Hに挿入され、調整部材によって突出量が調整される。
【0036】
一次輻射器100は、調整スタブ130V、130Hの突出量を調整した状態で、偏分波器20から入力される水平偏波の電波と垂直偏波の電波を放射器120からパラボラ反射鏡10に放射する。放射器120からパラボラ反射鏡10に放射された電波は、パラボラ反射鏡10で反射され、放射状に伝送される。なお、電波を受信するときは、この逆の動作になる。
【0037】
図4は、導波管110を示す図である。
図5は、導波管110に調整スタブ130と調整部材140及び150を取り付けた状態を示す図である。
図5(B)の断面図は、
図5(A)のC−C矢視断面を示す図である。
図6は、調整部材140及び150を示す図である。なお、
図4乃至
図6では、
図1と同一のXYZ座標系を定義する。
【0038】
図4に示すように、導波管110には、貫通孔111V、111Hが形成されている。このような導波管110の外周に、
図5(A)、(B)に示すように、調整部材140及び150が取り付けられる。
図5(B)に示すように、導波管110の外周に、まず調整部材140が取り付けられ、調整部材140のスリット142V、142H(
図6(A)参照)にスタブ131V、131Hを挿入し、さらに、スタブ131V、131Hを貫通孔111V、111Hに挿入する。
【0039】
調整部材140は、
図6(A)に示すように、略円環状の部材であり、X軸に平行な中心軸に対するYZ平面に平行な断面形状は、円周方向に90度ずつに区切られたテーパ部141を有する形状になっている。すなわち、調整部材140の外周面は、中心軸を中心として、90度ずつの4つの区間に分けられており、径方向の厚さが連続的に変化するテーパ部141になっている。
【0040】
換言すれば、テーパ部141は、厚さが連続するくさび形の部材を調整部材140の円周に沿って湾曲させた形状を有する。調整部材140は、このようなテーパ部141を円周方向に4つ接続したような構成を有する。
【0041】
また、4つのテーパ部141には、X軸方向の幅の中央に、円周方向に沿って、テーパ部141を径方向に貫通するスリット142V、142Hが設けられている。スリット142V、142Hは、調整部材140の外周に沿って、4つのテーパ部141にスリット142V、142H、142V、142Hの順に設けられている。また、スリット142V、142Hの円周方向における長さは、貫通孔111V、111Hより長く、90度ずつに区切られた区間より短い。
【0042】
スリット142Vには、スタブ131Vが挿入され、さらに、スタブ131Vは貫通孔111Vに挿入される。スリット142Hには、スタブ131Hが挿入され、さらに、スタブ131Hは貫通孔111Hに挿入される。
【0043】
この状態で、調整部材140は、導波管110の外周方向に沿って回転することができ、調整部材140を回転させると、係合部132V、132Hがテーパ部141の外周表面に沿って移動し、スタブ131V、131Hがスリット142V、142Hの内部で円周方向に移動することになる。
【0044】
このため、調整部材140を導波管110の外周に沿って回転させることにより、スタブ131V、131Hが円形導波路110Aの内周面から突出する量(突出量)を調整することができる。
【0045】
より具体的には、X軸負方向側から調整部材140を見て、調整部材140を時計回りに回転させると突出量が減り、調整部材140を反時計回りに回転させると突出量が増えることになる。以上のような調整部材140は、金属又は樹脂等で構成すればよい。
【0046】
調整部材150は、調整部材140の径方向外側に配設される部材であり、内周側に4つのテーパ部151を有する。4つのテーパ部151は、それぞれ、4つのテーパ部141に対応して、円周方向に90度ずつに区切られた区間に設けられている。調整部材150は、調整部材140と同様に、金属又は樹脂等で構成すればよい。
【0047】
テーパ部151の径方向の厚さが調整部材150の円周方向において変化する度合は、テーパ部141の径方向の厚さが調整部材140の円周方向において変化する度合の逆であり、調整部材140の外側に調整部材150を配置したときに、テーパ部141とテーパ部151との間で、係合部132V、132Hが隙間なく挟まれるように構成されている。
【0048】
従って、調整部材140及び150を導波管110の外周に沿って回転させると、係合部132V、132Hがテーパ部141とテーパ部151との間で挟まれた状態で径方向の外側又は内側に移動するので、スタブ131V、131Hが円形導波路110Aの内周面から突出する量(突出量)を調整することができる。
【0049】
図7は、アンテナ装置1で得られるVSWRの周波数特性の例を示す図である。
図7において、横軸は周波数であり、ここでは実際の値ではなく、チャンネル1〜5を示す。縦軸は、VSWRの値を示す。
【0050】
図7に示すVSWRは、偏分波器20の垂直偏波を放射するピン23で測定した値である。なお、水平偏波を放射するピン22においても、略同様の特性が測定できている。
【0051】
図7に示すように、偏分波器20からピン23に入力する電波の周波数を変化させたところ、VSWRの値は変化した。チャンネル1、2では、それぞれ、約1.35、約1.25という良好な値が得られており、チャンネル3、4、5では、それぞれ、約1.65、約1.3、約1.25という概ね良好な値が得られている。
【0052】
ところで、例えば、アンテナ装置1をFPU(Field Pick-up Unit)送受信装置に接続して用いるような場合がある。
【0053】
FPU送受信装置は、例えば、緊急報道やスポーツ中継などで映像,音声を無線伝送するシステムとして用いられている装置である。映像信号をFPUで伝送する場合、中継車やビルの屋上に送信アンテナ(パラボラアンテナ)を設置して、ビルや山の上に設置した受信基地局に向けて映像音声信号を送信する。
【0054】
アンテナ装置1がこのように利用される場合には、中継を行う現場で、当日の運用等によって、中継に利用するチャンネルが決まる場合がある。
【0055】
図7に示すチャンネル1〜5は、概ね良好な値が得られているが、例えば、
図7のチャンネル2と3の間に、利用するチャンネルがあるような場合に、一次輻射器100の導波管110のインピーダンスをその場で安定的に調整できれば、そのチャンネルにおけるVSWRの値を中継に利用可能な値にまで低減することができる。
【0056】
また、例えば、チャンネル3を利用することになった場合に、チャンネル3におけるVSWRの値をさらに低くすることができれば、より良い中継品質を得ることができる。
【0057】
このような場合には、一次輻射器100の調整部材140及び150を導波管110の外周に沿って回転させることにより、容易かつ安定的に、スタブ131V、131Hの突出量を調整できるので、所望のチャンネルにおけるVSWRの値を容易かつ安定的に最適化することができる。
【0058】
ここで、例えば、調整スタブ130V、130Hと調整部材140及び150を用いる代わりに、導波管110の貫通孔111V、111Hに、導波管110の外側からねじをねじ込み、ねじの先端が導波管110の内周面から円形導波路110Aに突出する量を調整する手法が考えられる。
【0059】
しかしながら、このような手法では、4本のねじの突出量を正確に揃えることは困難である。
【0060】
これに対して、一次輻射器100は、調整スタブ130V、130Hと調整部材140及び150を含むため、導波管110に対して、調整部材140及び150を回転させることにより、4本のスタブ131V、131Hの突出量を容易かつ安定的に調整することができる。
【0061】
この結果、アンテナ装置1を利用する現場で割り当てられる周波数に合わせて、インピーダンス特性を調整できる一次輻射器100を提供することができる。そして、このような一次輻射器100を用いることにより、使用する送受信周波数に応じてインピーダンス整合を最適化し、高効率化を図ったアンテナ装置1を提供することができる。
【0062】
また、導波管110のインピーダンスを調整すれば、様々な周波数に対応することができる。例えば、アンテナ装置1に対して、他の形式のアンテナ装置に一次輻射器100を接続し、
図7に示すチャンネル1〜5以外の周波数において、導波管110のインピーダンスを調整することができるため、適用の幅が広がる。
【0063】
なお、以上では、導波管110に貫通孔111V、111Hを設け、調整スタブ130V、130Hのスタブ131V、131Hを円形導波路110Aに突出させる形態について説明した。
【0064】
しかしながら、偏分波器20を一次輻射器100に接続するのではなく、一次輻射器100に水平偏波又は垂直偏波のいずれか一方の電波のみが入力される場合には、一次輻射器100は、貫通孔111V、111Hと調整スタブ130V、130Hのうち、利用する偏波に対応する方だけを含む構成であってもよい。
【0065】
また、以上では、2つの貫通孔111Vに2つの調整スタブ130Vのスタブ131Vを挿入して円形導波路110Aに突出させる形態について説明したが、調整スタブ130Vが1個で足りる場合は、貫通孔111Vの数も1つでよい。
【0066】
また、以上では、調整部材140の外側に調整部材150を設ける形態について説明した。しかしながら、一次輻射器100は、調整部材150を含まない形態であってもよい。特に、スタブ131V、131Hが貫通孔111V、111Hにしっかりと嵌った状態で、調整部材140の回転に伴って貫通孔111V、111Hに対して挿抜可能である場合には、調整部材150を含まない形態であってよい。
【0067】
また、調整スタブ130Vの代わりに、
図3(B)に示す調整スタブ130V1を用いてもよい。調整スタブ130V1は、
図3(A)に示す調整スタブ130Vの係合部132Vをローラータイプの係合部132V1に変えた構成を有する。このような係合部132V1は、調整部材140及び150のテーパ部141及び151の表面に沿って回動し易いため、ローラータイプを用いた方がよい場合には好適である。なお、この場合には、調整スタブ130Hの代わりに、調整スタブ130V1と同様のローラータイプの調整スタブを用いればよい。
【0068】
また、以上では、スタブ131V、131Hが円柱状である形態について説明したが、スタブ131V、131Hは、導波管110のインピーダンスを劣化させることがなければ、他の形状であってもよい。例えば、円柱の代わりに、角柱、楕円状の柱体等であってもよい。
【0069】
また、以上では、スタブ131Vと、偏分波器20のピン23とが、導波管110の中心軸から見て同じ角度の位置に存在し、かつ、スタブ131Hと、偏分波器20のピン22とが、導波管110の中心軸から見て同じ角度の位置に存在する形態について説明した。
【0070】
しかしながら、電波の伝送特性に問題が生じなければ、スタブ131V、131Hと、ピン23、22との位置は、ずれていてもよい。
【0071】
<実施の形態2>
図8及び
図9は、実施の形態2の一次輻射器200を示す図である。
【0072】
一次輻射器200は、導波管210、放射器120、調整スタブ230V、230H、調整部材240及び250を含む。放射器120は、実施の形態1の一次輻射器100の放射器120と同様である。
【0073】
図8(A)には一次輻射器200の全体を示し、
図8(B)には放射器120を取り除いた状態で、調整部材240及び250の内部構造を透過的に示し、
図9(A)には、調整スタブ230V(230H)を示し、
図9(C)には調整部材240を単独で示し、
図9(D)には調整部材250を単独で示す。
【0074】
図9(A)に示すように、調整スタブ230Vは、ねじ型のスタブ231Vに歯車型の係合部232Vを取り付けたものである。スタブ231Vと係合部232Vの向きは、それぞれ、スタブ131Vと係合部132Vの向きと同様である。
【0075】
調整スタブ230Vは、係合部232Vの歯車の回転をスタブ231Vのねじの回転に変換する。調整スタブ230Hは、調整スタブ230Vと同様の構成を有するため、
図9(A)には、調整スタブ230H、スタブ231H、係合部232Hの符号を括弧書きで示す。
【0076】
調整スタブ230Vと230Hは、2本ずつ用いる。なお、調整スタブ230Vと調整スタブ230Hは、導電性材料又は金属で構成すればよい。
図9(B)に示すように、導波管210は、実施の形態1の導波管110の貫通孔111V、111Hをねじ孔式の貫通孔211V、211Hに置き換えた構成を有する。貫通孔211V、211Hには、それぞれ、調整スタブ230V、230Hのスタブ231V、231Hのねじがねじ込まれる。このため、貫通孔211V、211Hの口径やねじの形状等は、スタブ231V、231Hに合わせられている。
【0077】
図9(C)に示すように、調整部材240は、円筒状の部材であり、X軸に平行な中心軸に沿って設けられる2本のスリット241Vと、2本のスリット241Hとを有する。スリット241V、241Hは、それぞれ、スタブ231V、231Hを挿通するために設けられている。
【0078】
2本のスリット241Vと、2本のスリット241Hとは、調整部材240の中心軸から見て、90度間隔で、スリット241V、241H、241V、241Hの順に設けられる。
【0079】
スタブ231V、231Hは、スリット241V、241Hに挿通されてから、導波管210の貫通孔111V、111Hにそれぞれ挿入される。スリット241V、241HのX軸方向の長さは、後述するスタブ231V、231Hの突出量の調節代に合わせて設定すればよい。スリット241V、241Hの幅は、スタブ231V、231Hが調整部材240の円周方向において隙間が生じないように、スタブ231V、231Hの直径に合わせればよい。
【0080】
図9(D)に示すように、調整部材250は、円筒状の部材であり、X軸に平行な中心軸に沿って内周面に設けられる2本の溝251Vと、2本の溝251Hとを有する。溝251V、251Hは、それぞれ、歯車型の係合部232V、232Hと係合する歯(ねじ山)252V、252Hを有する。
【0081】
調整部材250の円筒形状は、調整部材240を内部に隙間なく入れ子式に収容できるように構成されている。
【0082】
調整部材240を導波管210の外周に取り付け、スタブ231V、231Hをスリット241V、241Hに挿通させ、さらにスタブ231V、231Hの先端を貫通孔111V、111Hにそれぞれ挿入する。この状態で、調整部材240の外周に、調整部材250を取り付ける。この状態で、調整部材250に調整部材240を図示しないねじ等で固定すればよい。
【0083】
そして、導波管110に対して、調整部材240及び250をX軸方向に移動させれば、調整スタブ230Vによって、係合部232Vの歯車の回転がスタブ231Vのねじの回転に変換されるので、調整部材240に対する調整部材250のX軸方向における移動量で、スタブ231V、231Hが円形導波路110Aの内周面から突出する量(突出量)を調整することができる。
【0084】
一次輻射器200は、調整スタブ230V、230Hと調整部材240及び250を含むため、導波管110に対して、調整部材240及び250をX軸方向に移動させることにより、4本のスタブ231V、231Hの突出量を容易かつ安定的に調整することができる。
【0085】
この結果、アンテナ装置1を利用する現場で割り当てられる周波数に合わせて、インピーダンス特性を調整できる一次輻射器200を提供することができる。
【0086】
なお、以上では、歯車型の係合部232V、232Hと歯252V、252Hとが係合し、導波管110に対する調整部材240及び250のX軸方向の移動によって、係合部232V、232Hが回転される形態について説明した。
【0087】
しかしながら、導波管110に対する調整部材240及び250のX軸方向の移動を、係合部232V、232Hの回転に変換できる構成であれば、歯車型の係合部232V、232Hと歯252V、252Hとの代わりに用いてもよい。例えば、歯252V、252Hをなくして、溝251V、251Hに、円柱状のゴム製の係合部232V、232Hを当接させて、導波管110に対する調整部材240及び250がX軸方向の移動されると、係合部232V、232Hが回転するようにしてもよい。
【0088】
また、以上では、調整部材240のスリット241V、241Hにスタブ231V、231Hを挿通させ、調整部材250の歯252V、252Hに歯車型の係合部232V、232Hを係合させて、調整部材240及び250のX軸方向の移動によって、係合部232V、232Hが回転される形態について説明した。
【0089】
しかしながら、調整部240に歯252V、252Hと同様の歯を設けて、係合部232V、232Hを係合させて、調整部材240のX軸方向の移動によって、係合部232V、232Hを回転させてもよい。この場合には、一次輻射器200は、調整部材250を含まなくてもよい。
【0090】
以上、本発明の例示的な実施の形態の一次輻射器について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。