(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
さらに、(C)酸化防止剤及び(D)シランカップリング剤を含有するものであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のエポキシ・シリコーンハイブリッド樹脂組成物。
前記(C)成分が、フェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤とを併用したものであることを特徴とする請求項4に記載のエポキシ・シリコーンハイブリッド樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0020】
上述のように、室温で固体であるため、扱いやすく、加圧成形によるタブレット化が可能であり、その硬化物が高強度、高透明であり、耐熱性、耐光性にも優れる光半導体素子封止用エポキシ・シリコーンハイブリッド樹脂組成物の開発が求められていた。
【0021】
本発明者は、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、脂肪族エポキシ基を含有するD単位(R
1R
2SiO
2/2単位)及び芳香族炭化水素基を含有するT単位(R
3SiO
3/2単位)を有するオルガノポリシロキサンと特定のエポキシ樹脂とを併用して得られるプレポリマーを含むエポキシ・シリコーンハイブリッド樹脂組成物が、室温で固体であるため、加圧成形によるタブレット化が可能であり、透明性や機械的強度、Tgが高く、耐熱性、耐光性にも優れる硬化物を与えることができることを見出し、本発明をなすに至った。
【0022】
即ち、本発明は、
(A)(A−1)下記式(1)で表されるオルガノポリシロキサン、
【化3】
(式中、R
1及びR
3は独立して炭素数6〜12の1価芳香族炭化水素基、又は炭素数1〜12の1価脂肪族炭化水素基であり、R
2は炭素数4〜50の1価脂肪族エポキシ基であり、1分子中、1個以上のR
3が1価芳香族炭化水素基であり、0≦l<0.4、0.1≦m≦0.5、0.1≦n≦0.8であり、l+m+n=1である。)
(A−2)1分子中にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ樹脂であって、トリアジン誘導体エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、及び脂環式エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1つのエポキシ樹脂、及び
(A−3)酸無水物系硬化剤、
の反応生成物であって、前記(A−1)及び(A−2)成分中のエポキシ基1個に対する前記(A−3)成分中の酸無水物基の個数が0.3〜1.0個となる量のプレポリマー、並びに
(B)硬化触媒
を含有し、25℃で固体である光半導体素子封止用エポキシ・シリコーンハイブリッド樹脂組成物である。
【0023】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0024】
<エポキシ・シリコーンハイブリッド樹脂組成物>
本発明のエポキシ・シリコーンハイブリッド樹脂組成物は、後述する(A)成分及び(B)成分を含有する、室温(25℃)で固体の組成物である。以下、各成分について説明する。
【0025】
[(A)プレポリマー]
本発明のエポキシ・シリコーンハイブリッド樹脂組成物の(A)成分は、後述する(A−1)〜(A−3)成分の反応生成物からなるプレポリマーである。
【0026】
[(A−1)オルガノポリシロキサン]
(A−1)成分は、下記式(1)で表されるオルガノポリシロキサンである。
【化4】
(式中、R
1及びR
3は独立して炭素数6〜12の1価芳香族炭化水素基、又は炭素数1〜12の1価脂肪族炭化水素基であり、R
2は炭素数4〜50の1価脂肪族エポキシ基であり、1分子中、1個以上のR
3が1価芳香族炭化水素基であり、0≦l<0.4、0.1≦m≦0.5、0.1≦n≦0.8であり、l+m+n=1である。)
【0027】
上記式(1)において、R
1は独立して炭素数6〜12の1価芳香族炭化水素基、又は炭素数1〜12の1価脂肪族炭化水素基である。R
1で示される1価芳香族炭化水素基の炭素数は6〜12、好ましくは6〜9であり、具体的には、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、2−フェニルエチル基、2−フェニルプロピル基等のアラルキル基などが挙げられる。中でも、フェニル基、ベンジル基、2−フェニルエチル基、及び2−フェニルプロピル基が好ましく、更に好ましくはフェニル基である。
【0028】
なお、分子中の全R
1のうち、好ましくは少なくとも1個以上、より好ましくは2〜6個が1価芳香族炭化水素基であり、更に好ましくはフェニル基である。
【0029】
また、R
1で示される1価脂肪族炭化水素基の炭素数は1〜12、好ましくは1〜6であり、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、ブテニル基、2−(3−シクロヘキセニル)エチル基等のアルケニル基などが挙げられる。中でも、アルキル基が好ましく、特にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、及びヘプチル基が好ましく、メチル基が更に好ましい。
【0030】
上記式(1)において、R
2は炭素数4〜50、好ましくは炭素数6〜40、更に好ましくは炭素数7〜30の1価脂肪族エポキシ基である。上記脂肪族エポキシ基の例としては、下記式(2)で表される構造が挙げられる。
【化5】
(式中、R’は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であり、R
4は炭素数1〜20の2価の炭化水素基である。)
【0031】
上記式(2)中、R’は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であり、特に好ましくは水素原子である。R
4は炭素数1〜20の2価炭化水素基であり、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等のアルキレン基が挙げられる。
【0032】
中でも、R
2としては、下記式(3)で表される脂肪族エポキシ基が好ましい。
【化6】
(式中、R
5は炭素数1〜20のアルキレン基であり、好ましくはプロピレン基である。)
【0033】
R
2は、特に好ましくは下記構造の脂肪族エポキシ基((3−グリシドキシ)プロピル基)である。
【化7】
【0034】
上記式(1)において、R
3は、独立して炭素数6〜12の1価芳香族炭化水素基、又は炭素数1〜12の1価脂肪族炭化水素基であり、1分子中、1個以上のR
3が1価芳香族炭化水素基である。R
3の好ましい例としては、上記R
1で示されたものと同様のものを例示することができる。
【0035】
本発明において、上記式(1)は組成式であり、l、m、nは、各シロキサン単位の個数比(モル比)を示す。0≦l<0.4、0.1≦m≦0.5、0.1≦n≦0.8であり、l+m+n=1である。なお、上記式(1)中の括弧内にある各シロキサン単位の結合順序は制限されない。
【0036】
上記式(1)中、lはR
12SiO
2/2単位の含有量(モル比)を示す。lの範囲としては、0≦l<0.4、好ましくは0≦l<0.35である。
【0037】
上記式(1)中、mは脂肪族エポキシ基を含有するD単位、即ち、R
1R
2SiO
2/2単位の含有量(モル比)を示す。mの範囲としては、0.1≦m≦0.5、好ましくは0.1≦m≦0.4、特に好ましくは0.1≦m≦0.35である。
【0038】
上記式(1)中、nは芳香族炭化水素基を含有するT単位、即ち、R
3SiO
3/2単位の含有量(モル比)を示す。nの範囲としては、0.1≦n≦0.8、好ましくは0.1≦n≦0.75、特に好ましくは0.1≦n≦0.7である。
なお、上記T単位中の全R
3のうち、少なくとも1個以上、好ましくは2〜6個が1価芳香族炭化水素基であり、より好ましくはフェニル基である。
【0039】
上記オルガノポリシロキサンは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によるポリスチレン換算での重量平均分子量(Mw)が、1,200以上6,000以下であることが好ましく、より好ましくは1,200以上5,000以下である。重量平均分子量(Mw)が上記範囲内であれば、作業性が良好な組成物となり、光半導体素子を封止する際に取り扱いやすい。また、この組成物から得られる硬化物は、光半導体素子封止材として十分な機械的特性を有する。
【0040】
上記式(1)で表されるオルガノポリシロキサンとしては、例えば、下記式で示される構造が挙げられる。
【化8】
【化9】
上記式中、l、m、nは上述の通りである。上記括弧内にある各シロキサン単位の結合順序は制限されない。Meはメチル基を示す。
【0041】
上記式(1)で示されるオルガノポリシロキサンの製造方法は、特に制限されるものではない。例えば、上記式(1)で示されるオルガノポリシロキサンは、R
12SiO
2/2単位、R
1R
2SiO
2/2単位、R
3SiO
3/2単位の原料となる、シラノール基又はアルコキシシリル基を1分子中に少なくとも2個有する有機ケイ素化合物の1種以上を、触媒存在下で、縮合反応させることによって得ることができる。原料化合物の反応比率は、各シロキサン単位のモル比l、m、nが上記の範囲となるように適宜調整されればよい。
【0042】
R
12SiO
2/2単位の原料となる有機ケイ素化合物としては、例えば、下記式(4)で示すオルガノ(ポリ)シロキサンが挙げられる。
【化10】
(式中、R
1は上述の通りであり、Xは水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基であり、好ましくはメチル基である。eは1〜20の整数である。)
【0043】
上記式(4)で表されるシラン化合物(e=1)としては、下記式で示すメチルジアルコキシシランが挙げられる。
【化11】
(式中、X及びR
1は上述の通りである。)
特には、Xが水素原子又はメチル基であり、R
1がメチル基又はフェニル基であるものが好ましい。より好ましくはジメトキシシランである。
【0044】
上記式(4)で表されるオルガノポリシロキサン(e=2〜20)としては、下記式で示すジアルコキシシランのオリゴマーが挙げられる。
【化12】
(式中、X及びR
1は上述の通りであり、e’は2〜10の整数である。)
特には、Xが水素原子又はメチル基であり、R
1がメチル基又はフェニル基であるものが好ましい。上記オリゴマーの中でも、反応性、作業性、低ガス透過性の観点から、ジメトキシシランのオリゴマーが特に好適である。
【0045】
R
1R
2SiO
2/2単位の原料となる有機ケイ素化合物としては、例えば、下記式で示す脂肪族エポキシ基含有シラン化合物が挙げられる。
【化13】
【0046】
R
3SiO
3/2単位の原料となる有機ケイ素化合物としては、下記式で示すフェニル基含有シラン化合物が挙げられる。
【化14】
【0047】
上記式(1)で示されるオルガノポリシロキサンを得るための縮合反応は、従来公知の触媒を使用して行うことができる。例えば、フェニル基を含有する両末端シラノール基及び/又はアルコキシ基を有するオルガノ(ポリ)シロキサンと、脂環式エポキシ基等の置換基を有するアルコキシシラン化合物との縮合反応として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニア水酸化物、ジアザビシクロウンデセン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンなどの強塩基類を用いる方法がある。
【0048】
[(A−2)1分子中にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ樹脂]
(A−2)成分は、1分子中にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ樹脂であって、トリアジン誘導体エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、及び脂環式エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1つのエポキシ樹脂である。(A−2)成分は、耐熱性、耐UV性、高Tg化という観点から、トリアジン誘導体エポキシ樹脂であることが望ましい。
【0049】
(A−2)成分のエポキシ樹脂は、上記式(2)で示される1価脂肪族エポキシ基を3つ含むものであることが好ましく、これらの1価脂肪族エポキシ基中、R
4は互いに異なっていてよい。具体的には、1−メチル−3,5−ジグリシジルイソシアヌレート、1,3,5−トリグリシジルイソシアヌレートなどが挙げられる。特には、下記式(5)で示される1,3,5−トリグリシジルイソシアヌレートが好ましい。
【化15】
【0050】
(A−2)成分のエポキシ樹脂の配合量は、(A−1)成分100質量部に対して、好ましくは10〜100質量部、より好ましくは20〜80質量部である。配合量が10質量部以上であれば、十分なTgを得ることができる。配合量が100質量部以下であれば、耐熱性、耐UV性が低下しない。
【0051】
[(A−3)酸無水物系硬化剤]
(A−3)成分は、エポキシ基との反応性を有する酸無水物基系硬化剤である。なお、酸無水物系硬化剤における酸無水物基は−CO−O−CO−で表される。
【0052】
上記酸無水物系硬化剤としては、例えば、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、3−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸と4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸との混合物、テトラヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、2,4−ジエチルグルタル酸無水物、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸−1,2−無水物などを挙げることができる。中でも、脂環式炭化水素構造を有する酸無水物が好ましく、2種以上の酸無水物を併用することがより好ましく、4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸及びその誘導体、特には4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸及びシクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸−1,2−無水物を併用することが更に好ましい。
【0053】
(A−3)成分の酸無水物系硬化剤の配合量は、(A−1)及び(A−2)成分中のエポキシ基1個に対する(A−3)成分中の酸無水物基の個数が、即ち、(A−1)及び(A−2)成分中のエポキシ基の合計数に対する(A−3)成分中の酸無水物基の個数の比が0.3〜1.0となる量、好ましくは0.4〜0.8となる量である。上記比が0.3未満の場合、硬化物の耐熱性及び透明性が低下する。また、上記比が1.0より大きい場合、硬化物の機械特性が低下してしまう。
【0054】
(プレポリマーの製造方法)
本発明の(A)成分であるプレポリマーは、例えば、上記(A−1)成分、(A−2)成分、及び(A−3)成分を60〜120℃、好ましくは70〜110℃で、2〜20時間、好ましくは2〜15時間反応させることで得ることができる。
【0055】
この際、(A−1)成分、(A−2)成分のいずれかと、(A−3)成分とを予めプレポリマー化させ、後で残りの成分を添加してもよい。更に、後述する(B)成分以外の各成分を添加して目的のプレポリマーを製造してもよい。このとき、添加する成分の順序はどのような順序でも構わない。
【0056】
こうして、軟化点が40〜100℃、好ましくは60〜80℃である固体生成物として、(A)成分のプレポリマーを得ることができる。このプレポリマーの軟化点が40℃以上であれば、得られる組成物が室温(25℃)で固体となり、室温において加圧成形が容易になる。また、プレポリマーの軟化点が、100℃以下であれば、ゲル化が進行しすぎることがなく、組成物として成形時に必要な流動性を得ることができる。
【0057】
[(B)硬化触媒]
本発明のエポキシ・シリコーンハイブリッド樹脂組成物の(B)成分である硬化触媒は、特に制限されるものでなく、エポキシ樹脂組成物に従来使用されている硬化触媒から選択すればよい。例えば、テトラブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等の第四級ホスホニウム塩、トリフェニルフォスフィン、ジフェニルフォスフィン等の有機フォスフィン系硬化触媒、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、トリエタノールアミン、ベンジルジメチルアミン等の三級アミン系硬化触媒、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7 フェノール塩、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7 オクチル酸塩、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7 p−トルエンスルホン酸塩、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7 ギ酸塩等の第四級アンモニウム塩、オクチル酸亜鉛、ナフチル酸亜鉛等の有機カルボン酸塩、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート等のアルミキレート化合物、2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類などが挙げられる。中でも第四級ホスホニウム塩、及び第四級アンモニウム塩が好ましい。
【0058】
上記硬化触媒の配合量は特に制限されず、(A)成分の反応を促進する有効量(触媒量)であればよい。好ましくは(A)成分100質量部に対して0.01〜3質量部、更に好ましくは0.05〜1.5質量部である。硬化触媒の配合量が0.01質量部以上であれば、エポキシ樹脂と硬化剤との反応を促進させる効果を十分に得ることができる。また、硬化触媒の配合量が3質量部以下であれば、組成物の硬化時やリフロー試験時に変色が生じない。
【0059】
[(C)酸化防止剤]
本発明のエポキシ・シリコーンハイブリッド樹脂組成物は、更に(C)成分として、酸化防止剤を含有するものであることが好ましい。上記酸化防止剤としては、亜リン酸化合物、ヒンダードフェノール系酸化防止剤等が挙げられる。特にはヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−プロパン−1,3−ジイルビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナミド]、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、6,6’−ジ−t−ブチル−2,2’−チオジ−p−クレゾール、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)]、ベンゼンプロパン酸,3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ,C7−C9側鎖アルキルエステル、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスホネート、2,2’−エチリデンビス[4,6−ジ−t−ブチルフェノール]、3,3’,3”,5,5’,5”−ヘキサ−t−ブチル−a,a’,a”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、カルシウムジエチルビス[[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスホネート]、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、4,6−ビス(ドデシルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレン ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオン、1,3,5−トリス[(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリル)メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、6,6’−ジ−t−ブチル−4,4’−チオジ−m−クレゾール、ジフェニルアミン、N−フェニルベンゼンアミンと2,4,4−トリメチルペンテンの反応生成物、2,6−ジ−t−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、3,4−ジヒドロ−2,5,7,8−テトラメチル−2−(4,8,12−トリメチルトリデシル)−2H−1−ベンゾピラン−6−オール、2’,3−ビス[[3−[3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオニル]]プロピオノヒドラジド、ジドデシル 3,3’−チオジプロピオネート、ジオクタデシル 3,3’−チオジプロピオネートが例示される。中でもフェノール系酸化防止剤やリン系酸化防止剤が好ましく、これらを併用して用いることが更に好ましい。
【0060】
(C)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して、0.1〜0.5質量部が好ましく、さらに好ましくは0.1〜0.3質量部である。酸化防止剤の配合量が0.5質量部以下であれば、残存する酸化防止剤が硬化後の樹脂の表面に析出する恐れがない。また、配合量が0.1質量部以上であれば、得られる硬化物の耐熱性及び透明性が向上する。
【0061】
[(D)シランカップリング剤]
本発明のエポキシ・シリコーンハイブリッド樹脂組成物は、更に(D)成分として、シランカップリング剤を含有するものであることが好ましい。上記シランカップリング剤としては、例えば、エポキシ基含有シラン、ビニル基含有シラン、メタクリロキシ基含有シラン、アミノ基含有シラン、メルカプト基含有シラン化合物等が挙げられる。中でも、エポキシ基含有シランもしくはメルカプト基含有シランが好ましい。
【0062】
(D)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.1〜0.5質量部、より好ましくは0.2〜0.3質量部である。
【0063】
[(E)離型剤]
本発明のエポキシ・シリコーンハイブリッド樹脂組成物には、更に(E)成分として、離型剤を配合することができる。(E)成分の離型剤は、成形時の離型性を高めるために配合するものである。離型剤としては、カルナバワックスをはじめとする天然ワックス、酸ワックス、ポリエチレンワックス、脂肪酸エステルをはじめとする合成ワックスがあるが、一般的に高温条件下や光照射下では、容易に黄変したり、経時劣化したりして、離型性を有しなくなるものが多い。また、一般的に離型剤は樹脂表面に滲み出るものであり、少量でも使用すると硬化物の透明性を大きく低下させてしまうことが多い。従って、本発明の(E)成分としては、グリセリン誘導体や脂肪酸エステルを使用することが透明性、離型性の両立の点で好ましい。
【0064】
(E)成分の配合量は、(A)成分に対して、0.20〜10.0質量%、特には1.0〜7.0質量%が好ましい。配合量が0.20質量%以上であれば、十分な離型性を得ることができる。配合量が10.0質量%以下であれば、十分な透明性を得ることができ、沁み出し不良や接着性不良等が起こる恐れがない。
【0065】
[その他の成分]
また、本発明のエポキシ・シリコーンハイブリッド樹脂組成物には、強靭化や耐クラック性向上のためにポリカプロラクトンポリオールやポリカーボネートポリオールのような可とう性付与剤、透明性を失わない範囲でガラスフィラーやシリカなどの無機充填材、硬化を穏やかにするためにエチレングリコールやジエチレングリコール、グリセリンのような低分子ポリオールを添加してもよい。
【0066】
(組成物の製造方法)
本発明のエポキシ・シリコーンハイブリッド樹脂組成物の製造方法としては、例えば、(A−1)〜(A−3)成分を所定の組成比で配合し、これをゲートミキサー等によって熱混合してプレポリマー化して得られた(A)成分のプレポリマーに、(B)成分や、必要に応じて(C)〜(E)成分等の添加剤を所定の割合で溶融し、冷却固化させ、適当な大きさに粉砕してエポキシ・シリコーンハイブリッド樹脂組成物の成形材料とする方法が挙げられる。この際、成分の投入順は制限されず、例えば(A−1)〜(A−3)成分をプレポリマー化させる際に、予め(C)成分等を投入しておいても構わない。
【0067】
また、(A−1)〜(A−3)成分のみを予めプレポリマー化して得られた(A)成分のプレポリマーを、冷却固化させ、適当な大きさに粉砕して、(B)成分の硬化触媒や、必要に応じてその他の添加剤を所定の組成比で配合し、これをミキサー等によって十分均一に混合した後、熱ロール、ニーダー、エクストルーダー等による溶融混合処理を行い、次いで冷却固化させ、適当な大きさに粉砕してエポキシ・シリコーンハイブリッド樹脂組成物の成形材料とすることもできる。
【0068】
<光半導体装置>
続いて、本発明の光半導体装置について説明する。本発明の光半導体装置は、上記エポキシ・シリコーンハイブリッド樹脂組成物の硬化物を備えたものであり、上記組成物を用いて光半導体素子を封止することにより得ることができる。光半導体装置の製造方法は、光半導体素子の種類に応じて公知の方法を採用すればよい。
【0069】
本発明のエポキシ・シリコーンハイブリッド樹脂組成物を用いた光半導体素子の封止は、トランスファー成形やコンプレッション成形により行なうことができるが、トランスファー成形が好ましい。なお、トランスファー成形やコンプレッション成形以外の公知のモールド方法により封止を行なってもよい。
【0070】
トランスファー成形法の条件としては、トランスファー成形機を用い、成形圧力5〜20N/mm
2、成形温度120〜190℃、成形時間30〜500秒、特に成形温度150〜185℃、成形時間90〜300秒で行うことが好ましい。更に、二次硬化を150〜185℃で0.5〜20時間行ってもよい。
【0071】
コンプレッション成形の条件としては、成形温度120〜180℃、成形時間30〜900秒、特に成形温度130〜150℃、成形時間60〜600秒で行うことが好ましい。更に、二次硬化を150〜185℃で0.5〜20時間行ってもよい。
【0072】
本発明のエポキシ・シリコーンハイブリッド樹脂組成物は、室温で固体であるため、扱いやすく、加圧成形によるタブレット化が可能であり、その硬化物が高強度、高透明であり、耐熱性、耐光性にも優れる。そのため、本発明のエポキシ・シリコーンハイブリッド樹脂組成物は、光半導体素子封止用の樹脂組成物として好適に使用でき、信頼性に優れた光半導体装置を提供することができる。
【実施例】
【0073】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。下記中、Meはメチル基を表す。
【0074】
下記実施例及び比較例に示した重量平均分子量(Mw)はポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した値である。以下に測定条件を示す。
[GPC測定条件]
展開溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.6mL/min
カラム:TSK Guardcоlumn SuperH−L
TSKgel SuperH4000(6.0mmI.D×15cm×1)
TSKgel SuperH3000(6.0mmI.D×15cm×1)
TSKgel SuperH2000(6.0mmI.D×15cm×2)
(いずれも東ソー社製)
カラム温度:40℃
試料注入量:20μl(試料濃度:0.5wt%−テトラヒドロフラン溶液)
検出器:示差屈折率計(RI)
【0075】
((A−1)オルガノポリシロキサンの合成)
[合成例1]オルガノポリシロキサン1の合成
フェニルトリメトキシシラン397g、(3−グリシドキシ)プロピルメチルジメトキシシラン165g、イソプロピルアルコール500g、及びトルエン750gを混合し、攪拌した後、触媒として水酸化テトラメチルアンモニウムの25質量%水溶液25g及び水182gを加え、3時間反応させた。反応終了後、リン酸二水素ナトリウム水溶液で中和し、熱水で水洗した後、トルエンを減圧下で溜去することで、下記式(6)で表される直鎖状のオルガノポリシロキサン1を得た。
【化16】
上記括弧内に示す各単位の結合順序は特に制限されない。
得られたオルガノポリシロキサン1のGPC測定によるポリスチレン換算の重量平均分子量は5,600であり、エポキシ当量は505g/eqであった。
【0076】
[合成例2]オルガノポリシロキサン2の合成
X’O―(Me
2SiO)
a―X’(X’は水素原子又はメチル基であり、aは1〜8の整数であり平均3.5である)139g、フェニルトリメトキシシラン297g、(3−グリシドキシ)プロピルメチルジメトキシシラン110g、イソプロピルアルコール500g、及びトルエン900gを混合し、攪拌した後、触媒として水酸化テトラメチルアンモニウムの25質量%水溶液24g及び水176gを加え、3時間反応させた。反応終了後、リン酸二水素ナトリウム水溶液で中和し、熱水で水洗した後、トルエンを減圧下で溜去することで、下記式(7)で表される直鎖状のオルガノポリシロキサン2を得た。
【化17】
得られたオルガノポリシロキサン2のGPC測定によるポリスチレン換算の重量平均分子量は4,000であり、エポキシ当量は830g/eqであった。
【0077】
[比較合成例1]オルガノポリシロキサン3の合成
X’O―(Me
2SiO)
a―X’(X’は水素原子又はメチル基であり、aは1〜8の整数であり平均3.5である)277g
、(3−グリシドキシ)プロピルメチルジメトキシシラン220g、及びイソプロピルアルコール500gを混合し、攪拌した後、触媒として水酸化テトラメチルアンモニウムの25質量%水溶液25g及び水180gを加え、3時間反応させた。反応終了後、トルエン900gを加えて攪拌し、リン酸二水素ナトリウム水溶液で中和し、熱水で水洗した後、トルエンを減圧下で溜去することで、下記式(8)で表される直鎖状のオルガノポリシロキサン3を得た。
【化18】
得られたオルガノポリシロキサン3のGPC測定によるポリスチレン換算の重量平均分子量は4,000であり、エポキシ当量は414g/eqであった。
【0078】
[実施例1〜4、比較例1、2]
下記表1に示す組成及び配合(質量部)でエポキシ・シリコーンハイブリッド樹脂組成物を調製した。表1に記載の各成分は以下のとおりである。
(A−2)1分子中にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ樹脂:
エポキシ樹脂1:1,3,5−トリグリシジルイソシアヌレート(TEPIC−S、日産化学株式会社製、エポキシ当量100、融点100℃)
(A−3)酸無水物系硬化剤:4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(新日本理化株式会社製、リカシッドMH)
(B)硬化触媒:第四級ホスホニウム塩(サンアプロ株式会社製、U−CAT5003)
(C)酸化防止剤:
酸化防止剤1:フェノール系酸化防止剤、化合物名:ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオナート](株式会社ADEKA社製、アデカスタブAO−60)
酸化防止剤2:リン系酸化防止剤、化合物名:イソデシルジフェニルホスファイト(株式会社ADEKA社製、アデカスタブ135A)
(D)シランカップリング剤:3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM−803)
【0079】
下記表1に示す(A−1)、(A−2)、(A−3)及び(C)成分を同表に示す割合で配合し、85℃に加熱したゲートミキサー内にて溶融混合し、プレポリマーを得た。得られたプレポリマーに、さらに同表に示す割合で(B)及び(D)成分を加えて5分間溶融混合し、冷却固化させて粉砕することで目的とする粉体状のエポキシ・シリコーンハイブリッド樹脂組成物を得た。
【0080】
―組成物及び硬化物の特性評価―
得られた組成物及びその硬化物の特性評価を以下の方法で行った。硬化物は各組成物を成形温度:175℃、成形圧力:6.9N/mm
2、成形時間120秒の条件でトランスファー成形した後、180℃で1時間硬化することで得た。
【0081】
(1)硬さ
上記の方法により55mm×15mm×4mmtの板状硬化物を作製した。各硬化物の硬さ(タイプD)をJIS K6253−3:2012に準拠して測定した。結果を表1に示す。
【0082】
(2)耐熱性
上記方法により1mm厚のシート状硬化物を作製した。得られた硬化物の波長450nmにおける初期光透過率(T
0)を分光光度計U−4100(日立ハイテック社製)にて測定した。次いで、該硬化物を180℃で72時間加熱し、加熱処理後の各硬化物の光透過率(T
1)をT
0と同じ方法で測定した。T
1/T
0(%)の値を表1に示す。
【0083】
(3)耐光性
上記方法により1mm厚のシート状硬化物を作製した。得られた硬化物の波長450nmにおける初期光透過率(T
0)を分光光度計U−4100(日立ハイテック社製)にて測定した。次いで、該硬化物に150℃で450nmの青色レーザーを48時間照射し、照射後の各硬化物の光透過率(T
1)をT
0と同じ方法で測定した。T
1/T
0(%)の値を表1に示す。
【0084】
(4)ガラス転移温度(Tg)
上記方法により40mm×6mm×1mmtの板状硬化物を作製し、下記条件にてDMA(Dynamic Mechanical Analysis)を測定し、得られた貯蔵弾性率(E’)と損失弾性率(E”)の商で表される損失係数(tanδ=E”/E’)の極大点の温度を求め、その値をTgとした。
<DMA測定条件>
機種:Q800−1494−DMA Q−800(TA INSTRUMENT JAPAN株式会社製)
測定温度:25℃〜300℃
昇温速度:5℃/min
周波数:1Hz
測定モード:引張振動
【0085】
(5)曲げ強度、曲げ弾性率
上記方法により10mm×120mm×4mmtの板状硬化物を作製した。得られた硬化物の曲げ強度、曲げ弾性率をJIS K7171に準拠して、オートグラフAG−IS(島津製作所製)を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
表1に示されるように、オルガノポリシロキサンがフェニル基を有さない比較例1のエポキシ・シリコーンハイブリッド樹脂組成物は、得られる硬化物の硬度、曲げ強度が低いものとなった。また、(A−2)成分のエポキシ樹脂を含まない比較例2のエポキシ・シリコーンハイブリッド樹脂組成物は、得られる硬化物の耐熱性、耐光性は優れるが、硬度が低く、曲げ強度や曲げ弾性率が非常に低いため測定不可能であった。
【0088】
これらに対し、本発明のエポキシ・シリコーンハイブリッド樹脂組成物(実施例1〜4)は、室温で固体であるため、加圧成形によるタブレット化が可能であり、その硬化物は透明でかつ機械的強度を有し、耐熱性、耐光性にも優れ、高硬度、高強度となった。
【0089】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。