【課題を解決するための手段】
【0012】
本目的は、請求項1に記載の薬物送達デバイスにより解決される。本発明によれば、クラッチ機構は、駆動スリーブと数字スリーブとを連結する2つの別個の方法を含む。したがって、連結の一方が損傷し、またはスリップしても、デバイスを使用して他方の連結を介してトルクを伝達することができる。たとえば、クラッチ機構は、駆動スリーブの軸方向位置に応じて駆動スリーブと数字スリーブとを回転方向に拘束する第1のインターフェースと、好ましくは再び駆動スリーブの軸方向位置および/またはクラッチばねの付勢に応じて、クラッチ要素を介して駆動スリーブと数字スリーブとを回転方向に拘束する第2のインターフェースとを含む。好ましくは、両インターフェースが、用量投薬中に駆動スリーブと数字スリーブとを回転方向に拘束し、用量設定中に相対回転を可能にする。
【0013】
本発明の第1の実施形態によれば、駆動スリーブは、第1の近位用量設定または用量修正位置と第2の遠位用量投薬位置との間で軸方向に可動である。言い換えると、たとえばハウジングおよび/または数字スリーブに対する駆動スリーブの軸方向位置は、薬物送達デバイスの状態、すなわち用量設定モードもしくは用量修正モードであるか、または用量投薬モードであるかを決める。用量修正は、薬剤を投薬することなく、既に設定された用量を減らすことであると理解される。
【0014】
駆動スリーブの軸方向運動により、両インターフェースが同時に係合もしくは係合解除してもよく、または、たとえば駆動スリーブの軸方向変位の程度に応じて、インターフェースが順々に係合してもよい。たとえば、インターフェースの一方が、インターフェースのスリップ(緩めること)を可能にするモード、または駆動スリーブが軸方向変位したときインターフェースのスリップを防ぐモードで恒久的に係合してもよい。
【0015】
好ましくは、第1のインターフェースは、駆動スリーブの外面のスプラインと、数字スリーブの内面の対応するスプラインまたは溝とを含む。スプラインまたは溝は、たとえば用量投薬位置である、ハウジングおよび/または数字スリーブに対する駆動スリーブの第1の軸方向位置において、スプラインまたは溝が係合して駆動スリーブを数字スリーブに回転方向に拘束するように配置される。さらに、たとえば用量設定または修正位置である、ハウジングおよび/または数字スリーブに対する駆動スリーブの第2の軸方向位置において、スプラインまたは溝が係合解除されて、駆動スリーブと数字スリーブとの相対回転を可能にする。
【0016】
第2のインターフェースは、クラッチ要素の対応するラチェットクラッチ機能に係合するように適用された、駆動スリーブのラチェットクラッチ機能を含んでもよく、このクラッチ要素は数字スリーブに恒久的に回転方向に拘束される。ラチェットクラッチ機能は、好ましくは、ダイヤル設定中に両方向への動きを可能にする(したがって、戻り止めのように作用する)が、投薬中に動きを不可能にする(したがって、クラッチのように作用する)。このラチェットは様々な機能を有してよい。用量投薬中に駆動スリーブおよび数字スリーブを回転方向に拘束することに加えて、ラチェットクラッチ機能は恒久的に接触し、すなわち用量設定中または用量修正中にも、駆動スリーブと数字スリーブとが相対回転したときフィードバック信号を生成する。好ましくは、ラチェットクラッチ機能および対応するラチェットクラッチ機能は、用量修正のために互いを緩めることを可能にするランプ角を有する歯を含む。さらに、このラチェットクラッチインターフェースを、たとえば噛み合うラチェット歯を駆動スリーブおよびクラッチ要素に設けることにより、駆動スリーブと数字スリーブとの相対回転が比較的小さい力またはトルクを一方向に、好ましくは用量設定方向に必要とし、非常に大きい力またはトルクを反対方向、好ましくは用量修正方向に必要とするように設計してもよい。たとえば、用量設定方向では、浅いランプによりトルクを小さくするが、ばねを巻くことによってトルクを大きくし、用量修正方向では、急なランプによりトルクを大きくするが、ばねを巻き出すことによりトルクを小さくする。したがって、用量修正および用量ダイヤル設定のためのトルクは等しくてもよいが、一方が他方より大きくてもよい。代替案として、ラチェット機能を、駆動スリーブと数字スリーブとの一方向、通常は用量設定方向のみへの相対回転を可能にし、駆動スリーブと数字スリーブとの反対方向のみへの相対回転を完全に防ぐように設計してもよい。
【0017】
たとえば、ラチェットクラッチ機能は、一連の歯、好ましくは鋸歯を各々含んでよく、これらの歯は、互いに強く押され過ぎなければ互いの上をスリップすることができる。言い換えると、駆動スリーブおよび/またはクラッチ要素がクラッチばねの力に対抗して軸方向に並進運動できるようにすることにより、クラッチばねの付勢に対抗してクラッチ機能を緩めることができる。これにより、連続する係合解除とそれに続く次の戻り止め位置への再係合とによって、駆動スリーブおよび/またはクラッチ要素の振動軸方向運動が生じ得る。この再係合によって可聴クリックを発生させることができ、必要なトルク入力の変更によって触覚フィードバックを与えることができる。
【0018】
好ましくは、第2のインターフェースは、駆動スリーブと各用量単位に対応するクラッチ要素との間に戻り止め位置を提供し、時計方向および反時計方向の相対回転中に異なるランプ歯角に係合する。これは、デバイスが、第2のインターフェースを介してクラッチ要素および駆動スリーブからハウジングへ反作用する力またはトルクを有する駆動ばねをさらに含む場合に特に有用である。駆動ばねを、直接または間接的にクラッチ要素に連結してもよい。
【0019】
第2のインターフェースの一時的または恒久的係合を、好ましくはハウジングと駆動スリーブとの間に軸方向に位置するクラッチばねによって達成してもよい。クラッチばねは、駆動スリーブをクラッチ要素に向けて付勢してもよい。第2のインターフェースを緩めること、またはスリップは、クラッチばねの付勢に対抗する駆動スリーブおよび/またはクラッチ要素の軸方向変位を必要としてもよい。
【0020】
クラッチばねは、圧縮ばね、好ましくは軸方向に作用する圧縮ばねであってよい。代替案として、クラッチばねは引きばねであってよい。好ましい実施形態において、クラッチばねはコイルばねである。代替案として、クラッチばねは、ゴムなどの弾性変形可能材料から作られたばねワッシャまたはブロックまたはスリーブであってよい。本明細書ではクラッチばねを単一ばねと呼ぶが、本発明は、平行または直列に配置可能な2つ以上の単一ばね要素を含むクラッチばねの実施形態を包含する。
【0021】
第2のインターフェースは、駆動スリーブが遠位位置にあって、クラッチばねが駆動スリーブのさらなる軸方向変位を可能にしない状態に圧縮され、少なくともラチェットクラッチ機能を緩めるために必要な程度になっていないときに、ラチェットクラッチ機能が回転方向に拘束されるように配置され得る。
【0022】
本発明のさらなる実施形態において、駆動スリーブは、駆動スリーブとピストンロッドとを恒久的に回転方向に拘束するさらなる(第3の)インターフェースを含む。たとえば、この第3のインターフェースは、恒久的に係合する駆動スリーブ内面およびピストンロッド外面の1つまたはそれ以上のスプラインまたは溝を含んでもよい。ピストンロッドまたは親ねじがハウジングとねじ係合する場合、用量投薬中の駆動スリーブの回転により、ピストンロッドがハウジングに対して前進する。代替案として、ピストンロッドをハウジングにスプライン連結し、駆動スリーブにねじ留めしてもよい。
【0023】
駆動スリーブは、駆動スリーブの軸方向位置に応じて駆動スリーブとハウジングとを回転方向に拘束するさらなる(第4の)インターフェースを含んでもよい。たとえば、この第4のインターフェースは、駆動スリーブ外面およびハウジングの内面の1つまたはそれ以上のスプラインまたは溝を含んでもよい。駆動スリーブの軸方向変位により、スプラインまたは溝を係合させ、または係合解除する。好ましくは、これらのスプラインまたは溝の長さおよび位置は、第1のインターフェースのスプラインが、第4のインターフェースの係合解除の直前に係合するような長さおよび位置である。言い換えると、第1および第4のインターフェースは、たとえばボタンを作動させることにより、駆動スリーブがハウジングに対して回転できるようになる前に、駆動スリーブを数字スリーブに回転方向に拘束するように設計され配置される。同様に、用量投薬後にボタンが解放されると、駆動スリーブの軸方向運動により駆動スリーブをハウジングに最初に回転方向に拘束し、その後、第1のインターフェースのスプラインをデカップリングする。
【0024】
駆動スリーブは、好ましくは、クラッチ要素を介してボタンに連結され、たとえば、ボタンを作動させたとき、駆動スリーブとクラッチ要素とが、駆動スリーブがハウジングに回転方向にロックされる近位位置から駆動スリーブがハウジングから回転方向にロック解除される遠位位置へ、クラッチばねの付勢に対抗して並進運動するようになっている。ボタンを解放したとき、クラッチばねが、駆動スリーブ、クラッチ要素、およびボタンを近位位置へ並進運動させることができる。言い換えると、ボタンを作動させることにより駆動スリーブの変位が生じるため、デバイスの用量設定モードと用量投薬モードとを切り替える。
【0025】
薬物送達デバイスは、用量設定中、用量投薬中および/または用量投薬終了時に、可聴および/または触覚フィードバック信号を生成する少なくとも1つのクリッカ配置を含んでもよい。
【0026】
たとえば、駆動スリーブは、駆動スリーブが回転したとき、駆動スリーブの軸方向位置に応じてフィードバック信号を生成する追加の(第5の)インターフェースを含んでもよい。この信号は用量投薬標示の終了であってもよい。言い換えると、クリッカ配置を起動して、駆動スリーブをその用量投薬位置にすることによりフィードバック信号を生成することができ、クリッカ配置を停止状態にして、駆動スリーブをその用量設定位置にすることにより信号の生成を防ぐことができる。これにより、規定のモードにおいてのみフィードバック信号を生成することができる。したがって、収納中またはダイヤル設定中、クリッカアームは偏向されず、クリープ変形を受けない。加えて、クリッカ配置はダイヤル設定中または用量修正中に摩擦損失を生じさせないため、小さいダイヤル設定力またはトルクのみを必要とするユーザフレンドリなデバイスをもたらす。
【0027】
クリッカ配置により生成されるフィードバック信号は、好ましくは、薬物送達デバイスにおいて生成可能な他の信号、たとえば用量設定中、用量修正中および/または用量投薬中に生成される視覚標示および/または可聴および/もしくは触覚フィードバック信号とは異なる。
【0028】
好ましくは、薬物送達デバイスは、数字スリーブのクリッカアーム、駆動スリーブのランプ、およびさらなる要素、たとえばゲージ要素のカムを有するクリッカ配置を含み、数字スリーブとゲージ要素とが相対回転したとき、クリッカアームがカムにより弾性偏向可能であり、カムと係合解除したとき弛緩可能であることにより、可聴および/または触覚フィードバック信号を生成する。駆動スリーブが第1の軸方向位置にあるときに、ランプは、好ましくは、クリッカアームと相互作用しないため、クリッカアームがカムに接触せず、駆動スリーブが第2の軸方向位置にあるときに、ランプはクリッカアームを偏向させて、クリッカアームがカムに接触するようになっている。数字スリーブとゲージ要素とはねじ係合してもよい。したがって、数字スリーブが相対回転したとき、ゲージ要素は軸方向に変位する。これにより、カムとクリッカアームとの相対軸方向位置に応じて、カムとクリッカアームとの係合および係合解除が可能になる。
【0029】
好ましくは、クリッカアームを含む要素、たとえば数字スリーブは、クリッカアームが半径方向内方および外方へ偏向可能な管状要素である。ランプを含む駆動スリーブは、好ましくは、クリッカアームを含む要素の半径方向内方に配置されて、ランプがクリッカアームを半径方向外方へ押すことができるようになっている。カムを含む要素、たとえばゲージ要素は、クリッカアームを含む要素の半径方向外方に配置されて、カムがクリッカアームを半径方向内方へ押すことができるようになっている。
【0030】
本発明のクリッカ配置のいずれかにより、可聴および/または触覚フィードバック信号を生成する様々な方法がある。たとえば、可聴および/または触覚フィードバック信号を、クリッカアームと歯またはカムとの係合解除により生成してもよい。言い換えると、たとえば、予め張力がかかったクリッカアームが歯またはカムの縁部から外れることによって、信号が生じる。代替案として、クリッカアームの第2の部分と歯またはカムとが係合解除した後にクリッカアームの第1の部分が歯またはカムに接触することにより、可聴および/または触覚フィードバック信号を生成してもよい。たとえば、クリッカアームの第1の部分、たとえばアームの突出先端が歯またはカムと係合解除した後、またはこれに接触しなくなった後に、クリッカアームの第2の部分、たとえばクランク部分が歯またはカムに当たってもよい。カムを含む実施形態において、カムを有する要素が、クリッカアームの第2の部分がカムと係合解除した後にクリッカアームの第2の部分、たとえば先端を受けるための凹部をさらに含むと好ましい。
【0031】
さらなる実施形態によれば、薬物送達デバイスは駆動ばねを含む。好ましくは、用量設定中の数字スリーブと駆動スリーブとの相対回転により駆動ばねを緊張させ、用量投薬中に駆動ばねは弛緩することができることにより、数字スリーブ、駆動スリーブ、およびピストンロッドを回転方向に駆動する。
【0032】
好ましい実施形態において、駆動ばねは、クラッチ要素に回転方向に連結されたねじりばねである。駆動ばねを、予め緊張させてもよく、かつ/または駆動スリーブとクラッチ要素との相対回転により緊張させて(チャージして)もよい。駆動ばねを一端でハウジング部材および/または追加のハウジング部材に取り付け、他端で、クラッチ要素、たとえば数字スリーブに連結された構成部材に取り付けてもよい。薬物送達デバイスを組み立てたとき、ねじりばねが予め巻かれ、機構がゼロ単位にダイヤル設定されているときにねじりばねがトルクをクラッチ要素に加えるようにしてもよい。
【0033】
用量投薬に必要な力またはトルクを生じさせるねじりばねなどの弾性駆動部材を設けることにより、ユーザが用量投薬のために加える力を減らす。これは、器用でないユーザにとって特に有用である。加えて、弾性部材を設けることにより、必要な投薬ストロークの結果である公知の手動駆動デバイスのダイヤル伸長を省くことができる。これは、弾性部材の解放には小さいトリガストロークしか必要ないからである。
【0034】
ねじりばねを、少なくとも2つの異なるピッチを有する螺旋ワイヤから形成してもよい。好ましくは、両端が「閉」コイルから形成され、すなわちピッチがワイヤ直径に等しく、各コイルが隣接するコイルに接触し、一方、中心部分が「開」コイルを有し、すなわちコイルが互いに接触しない。
【0035】
ばねに開コイルと閉コイルとの両方があることは、以下の利点を有する。すなわち:用量が設定されると、通常、ねじりばねがチャージされる。すべてのコイルが閉であれば、ばねを巻くことによって巻きごとに1つのワイヤ直径分だけばねの長さが増加するため、ばねのフック端は、たとえば数字スリーブおよびハウジング上のアンカ点と位置合わせされなくなる。開コイルにより、ばねを圧縮して、ばねの全長を増加させることなくワイヤのさらなる巻きを収容することができる。さらに、開コイルにより、組立て中にばねを圧縮することができる。たとえば、ばねは、デバイス内で使用可能な空間よりも長く製造される。その後、組立て中にばねを圧縮することにより、フック端の軸方向位置が、ハウジングおよび数字スリーブ上のアンカ点とより適切に位置合わせされることを確実にする。加えて、コイルの大部分が閉である場合、これらのコイルの長さはワイヤ直径のみによって決まるため、ばねを特定の長さに製造することがより容易である。組立て後に、ばねを圧縮することによって、数字スリーブをハウジングに対して軸方向に一貫した方向へ付勢して、幾何学的公差の影響を少なくする。各端部に閉コイルを加えることにより、ばねは、製造と組立てとの間に一緒に収納されるときに互いにもつれにくくなる。端部の閉コイルは、ハウジングと数字スリーブとの好ましい接触のための平坦面を提供する。
【0036】
好ましい実施形態において、薬物送達デバイスは、ハウジングと数字スリーブとの間に置かれたゲージ要素を含む。ゲージ要素は、第2のアパーチャを有することができ、この第2のアパーチャは、数字スリーブの少なくとも一部が第1および第2のアパーチャまたは窓を通して見えるように、ハウジングの第1のアパーチャに対して位置する。ゲージ要素は、ハウジング内で軸方向に案内され、数字スリーブとねじ係合して、数字スリーブの回転によりゲージ要素の軸方向変位を生じさせるようにしてもよい。
【0037】
したがって、ゲージ要素の位置を使用して、実際に設定および/または投薬された用量を特定することができる。ゲージ部材の異なる色のセクションによって、ディスプレイ上の数字、記号などを読むことなく、設定および/または投薬された用量の特定を容易にしてもよい。ゲージ要素が数字スリーブとねじ係合すると、数字スリーブの回転により、数字スリーブおよびハウジングに対するゲージ要素の軸方向変位が生じる。ゲージ要素は、デバイスの長手方向に延びるシールドまたはストリップの形を有してもよい。代替案として、ゲージ要素はスリーブであってよい。本発明の実施形態において、数字スリーブは、一連の数字または記号で印付けられ、ゲージ要素はアパーチャを含む。数字スリーブがゲージ要素の半径方向内方に位置すると、これにより、数字スリーブ上の数字または記号の少なくとも1つがアパーチャを通して見えるようになる。言い換えると、ゲージ要素を使用して数字スリーブの一部を遮蔽し、または覆い、数字スリーブの限られた部分のみが見えるようにすることができる。この機能は、ゲージ要素自体に加えて、実際に設定および/または投薬された用量を特定し、または示すのに適したものであってよい。
【0038】
好ましい実施形態において、用量設定中、数字スリーブは、ハウジング内でハウジングに対して回転運動しか受けないように適用される。言い換えると、数字スリーブは用量設定中に並進運動を行わない。これにより、数字スリーブをハウジングから巻き出すこと、またはハウジング内の数字スリーブを覆うためにハウジングを長くしなければならないことを防ぐ。
【0039】
用量を設定するように動作可能な用量セレクタに加えて、デバイスは、用量投薬を行うように動作可能なボタンを含んでもよい。デバイスのボタンが、その用量設定位置でハウジングに対して回転可能であり、数字スリーブに回転方向にロックされ、加えて、その用量投薬位置で数字スリーブに対して回転可能であり、ハウジングに回転方向にロックされた場合、ボタンと用量セレクタとの相対回転運動はない。用量投薬中にボタンをハウジングに回転方向に拘束することは、ユーザの指とボタンとの相対回転による摩擦がないというさらなる利点を有する。さらに、これにより、投薬中の意図しない設定用量の操作を防ぐ。
【0040】
さらに、ボタンを使用してフィードバック信号を生成してもよい。たとえば、可撓性アームおよび歯付外形を含む投薬クリッカを設けてもよい。好ましい実施形態によれば、可撓性アームはクラッチ要素に設けられ、歯付外形はボタンに設けられる。言い換えると、投薬クリッカは、ボタンおよびクラッチ要素により提供される。
【0041】
好ましくは、歯付外形は、半径方向内方を向いたラチェット歯のリングである。クリッカアームは、様々な構成、たとえば屈曲構成を有してもよく、この構成は、半径方向外方へ延びて歯付外形と相互作用する先端のある自由端を有する。好ましくは、クリッカアームは、柔軟なカンチレバークリッカアームである。本発明の実施形態は、用量投薬中に、クラッチ板に組み込まれた柔軟なカンチレバークリッカアームを介して触覚フィードバックが提供される薬物送達デバイスを含む。このアームは、ボタンの内面のラチェット機能と半径方向に界接することにより、ラチェット歯の間隔が、1増分の投薬に必要な数字スリーブの回転に対応する。好ましくは、投薬中に数字スリーブが回転し、ボタンがハウジングに回転方向に連結されると、ラチェット機能がクリッカアームと係合して、各用量増分の送達と共に可聴クリックを発生させる。
【0042】
本発明の実施形態において、クラッチ要素は駆動スリーブを係合するラチェットクラッチ機能を含み、板またはディスクの形を有してもよい。代替案として、クラッチ要素はスリーブの形を有してもよい。クラッチ要素は、スリーブとボタンとの間に軸方向に置かれて、ボタンの第1の方向、好ましくは遠位方向への軸方向運動が、クラッチ要素を介してスリーブに伝わり、反対方向、好ましくは近位方向への軸方向運動が、クラッチ要素を介してボタンに伝わるようになっている。代替案として、クラッチ要素はボタンの一体部材であってもよい。好ましい実施形態において、クラッチ要素は、薬物送達デバイスのさらなる構成部材、たとえば数字スリーブおよび/または用量設定部材に恒久的または解放可能に連結される。クラッチ要素は、駆動スリーブとのインターフェースおよびボタンとのインターフェースに加えて、たとえばクリッカ機能および/または少なくとも1つのさらなるインターフェースを有する多機能要素であってもよい。
【0043】
ボタンは、好ましくは、スリーブおよびクラッチ要素から近位に位置するユーザ操作可能な要素である。薬物送達デバイスで使用されるときに、ボタンはデバイスの近位端から延びてよく、好ましくは、用量設定中にその軸方向位置を変化させない。ボタンは、好ましくは、ユーザ操作可能な用量設定部材に連結され、数字スリーブ部材および/または不動ハウジング部材に解放可能に連結される。代替実施形態において、ボタンは用量設定配置の一部であってよく、または用量設定部材であってもよい。ボタンは、好ましくは、上記の機能に加えてクリッカ機能を有する多機能要素である。
【0044】
不動ハウジング部材は、軸方向に可動の駆動スリーブ、クラッチ要素、およびボタンの相対運動の固定基盤(fixed basis)である。ハウジングは、多部材ハウジングの一部であってもよく、または薬物送達デバイスの唯一のハウジング部材であってもよい。好ましい実施形態において、不動ハウジングは、クラッチばねの軸方向支持部または支承部と、スリーブに解放可能に係合する手段とを含む。好ましくは、ハウジングは、1つまたはそれ以上の歯、たとえば歯のリングを含み、この歯のリングは、ハウジングに対する駆動スリーブの相対軸方向位置に応じて、駆動スリーブの1つまたはそれ以上の対応する歯、好ましくは同じく歯のリングに係合する。言い換えると、係合手段または歯が、ハウジングに対する駆動スリーブの第1の位置、たとえば近位位置で噛み合って連動し、係合解除することにより、ハウジングに対する駆動スリーブの第2の位置、たとえば遠位位置における相対回転を可能にする。ハウジングは、上記の機能に加えて、たとえばクリッカ機能および/またはピストンロッドとのインターフェースを有する多機能要素であってもよい。
【0045】
薬物送達デバイスにおいて、用量を設定するように動作することができる少なくとも1つの用量設定部材を設けてもよく、ボタンを作動させることより設定用量を投薬する。好ましくは、少なくとも1つの用量設定部材の動作により、駆動ばねを緊張させ、ボタンを作動させることにより駆動ばねを弛緩させて、クラッチ要素、駆動スリーブ、およびピストンロッドをハウジングに対して回転させ、ピストンロッドをハウジングに対して遠位方向に前進させる。
【0046】
デバイスが可変のユーザ選択可能な薬剤の用量を投薬するのに適していると好ましい。デバイスは、使い捨てデバイス、すなわち、空のカートリッジを交換することに備えていないデバイスであってよい。
【0047】
好ましい実施形態によれば、薬物送達デバイスは、最大設定可能用量および最小設定可能用量を定義するリミッタ機構を含む。通常、最小設定可能用量はゼロ(0IUのインスリン製剤)であり、リミッタが、用量投薬終了時にデバイスを停止させるようになっている。最大設定可能用量、たとえば60、80または120IUのインスリン製剤を限定して、過剰摂取の危険を減らし、非常に大きい用量の投薬に必要な追加のばねトルクを避け、かつ異なる用量サイズを必要とする広範囲の患者に適したものとすることができる。好ましくは、最小用量および最大用量の限界がハードストップ機能により提供される。リミッタ機構は、最小用量(ゼロ)位置において当接する数字スリーブの第1の回転止め具およびゲージ要素の第1の対向止め具と、最大用量位置において当接する数字スリーブの第2の回転止め具およびゲージ要素の第2の対向止め具とを含んでよい。用量設定中および用量投薬中に数字スリーブがゲージ要素に対して回転するため、これら2つの部材は確実で頑強なリミッタ機構を形成するのに適している。
【0048】
薬物送達デバイスは、カートリッジ内に残った液体の量を超える用量の設定を防ぐための最終用量保護機構をさらに含んでもよい。これは、用量送達の開始前にどのくらいの量が送達されるかをユーザが知ることができるという利点を有する。また、これにより、小径のカートリッジの首部に栓が入って不十分な用量となり得ることなく、用量送達が制御された方法で確実に停止する。好ましい実施形態において、この最終用量保護機構は、カートリッジが最大用量(たとえば120IU)未満の用量を含むときのみ、カートリッジ内に残っている薬剤を検出する。たとえば、最終用量保護機構は、駆動部材と用量設定中および用量投薬中に回転する部材との間に置かれたナット部材を含む。用量設定中および用量投薬中に回転する部材は、数字スリーブまたは数字スリーブに回転方向に拘束されたダイヤルスリーブであってよい。好ましい実施形態において、数字スリーブは、用量設定中および用量投薬中に回転するが、駆動部材は用量投薬中にのみ、数字スリーブと共に回転する。したがって、本実施形態において、ナット部材は用量設定中にのみ軸方向に動き、用量投薬中にはこれらの部材に対して不動のままとなる。好ましくは、ナット部材は駆動部材にねじ留めされ、数字スリーブおよび/またはダイヤルスリーブにスプライン連結される。代替案として、ナット部材を数字スリーブおよび/またはダイヤルスリーブにねじ留めし、駆動部材にスプライン連結してもよい。ナット部材は、フルナットまたはその一部、たとえばハーフナットであってもよい。
【0049】
好ましくは、ピストンロッド(親ねじ)は、軸方向に可動の駆動スリーブの回転ごとに一定変位だけ前進する。他の実施形態において、変位の割合が変化してもよい。たとえば、ピストンロッドは、1回転ごとに大きい変位で前進して、第1の量の薬剤をカートリッジから投薬し、その後、1回転ごとにより小さい変位で前進して、カートリッジの残りを投薬してもよい。これは、機構の所与の変位について、カートリッジから投薬される第1の用量の体積が他の用量よりも小さいことが多いという事実を補償することができるため有利である。ハウジングおよびピストンロッドのねじ山のピッチが等しい場合、ピストンロッドは、可動スリーブの回転ごとに一定量だけ前進する。しかしながら、代替実施形態において、ピストンロッドのねじ山の第1の巻きが大きいピッチを有し、他の巻きが小さいピッチを有する場合、第1の回転中、ピストンロッドの変位はピストンロッドのねじ山の第1の巻きの大きいピッチに応じて決まるため、ピストンロッドの1回転当たりの変位量は大きくなる。次の回転については、ピストンロッドの変位はピストンロッドのねじ山のより小さいピッチに応じて決まるため、ピストンロッドの変位量はより小さくなる。さらなる実施形態において、ハウジングのねじ山がピストンロッドよりも大きいピッチを有する場合、第1の回転中、ピストンロッドの変位はハウジングのねじ山のピッチに応じて決まるため、ピストンロッドの1回転当たりの変位量は大きくなる。次の回転については、ピストンロッドの変位はピストンロッドのねじ山のピッチに応じて決まるため、ピストンロッドの変位量はより小さくなる。
【0050】
ハウジングのアパーチャおよび/またはゲージ要素のアパーチャは、単純な開口部であってよい。しかしながら、少なくとも1つのアパーチャを窓もしくはレンズにより閉じて、汚れの侵入を防ぎ、かつ/または、たとえば数字スリーブの数字を、たとえば拡大することによりさらに読みやすくできると好ましい。
【0051】
本発明の好ましい実施形態によれば、数字スリーブは、遠位端でハウジングにクリップ留めされる。これにより、ゲージ位置の幾何学的公差が低減する。言い換えると、数字スリーブは、好ましくは、ハウジングに対して軸方向に固定されるが、ハウジングに対して回転することができる。
【0052】
好ましくは、駆動スリーブを数字スリーブ内にクリップ留めして、次の組立工程中に保持する。代替実施形態において、駆動スリーブを代わりにハウジングにクリップ留めして、次の組立工程中に保持する。両実施形態において、ボタンが押されると、駆動スリーブはその組立位置を越えて自由に動く。クリップにより、分解方向への動きを防ぐが、たとえば投薬のためのさらなる動きは防がない。
【0053】
ゲージのレンズおよび窓を、「ツインショット(twin−shot)」成形技術を用いてハウジングに組み込んでもよい。たとえば、レンズおよび窓は半透明材料の「第1のショット」中に成形され、ハウジングの外カバーは不透明材料の「第2のショット」中に成形される。
【0054】
ゲージ要素にねじ付部分が1つしかない場合、これにより、この部材の長さが短くなる。
【0055】
好ましくは、クラッチ板および駆動スリーブの歯の幾何形状は、ダイヤル設定トルクが小さくなるように選択される。さらに、クラッチ板はボタンのクリッカ歯に干渉する投薬クリッカを含んでもよい。
【0056】
薬物送達デバイスは、薬剤を含むカートリッジを含んでもよい。本明細書で使用する用語「薬剤」は、少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで、一実施形態において、薬学的に活性な化合物は、最大1500Daまでの分子量を有し、および/または、ペプチド、タンパク質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、酵素、抗体もしくはそのフラグメント、ホルモンもしくはオリゴヌクレオチド、または上述の薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病関連の合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチの処置および/または予防に有用であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病または糖尿病性網膜症などの糖尿病に関連する合併症の処置および/または予防のための少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリンもしくはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)もしくはその類似体もしくは誘導体、またはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4もしくはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4の類似体もしくは誘導体を含む。
【0057】
インスリン類似体は、たとえば、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、およびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0058】
インスリン誘導体は、たとえば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、およびB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0059】
エキセンジン−4は、たとえば、H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2配列のペプチドであるエキセンジン−4(1−39)を意味する。
【0060】
エキセンジン−4誘導体は、たとえば、以下のリストの化合物:
H−(Lys)4−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)5−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);または
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
(ここで、基−Lys6−NH2が、エキセンジン−4誘導体のC−末端に結合していてもよい);
【0061】
または、以下の配列のエキセンジン−4誘導体:
desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2(AVE0010)、
H−(Lys)6−desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desAsp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desMet(O)14,Asp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2;
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Lys6−desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(S1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2;
または前述のいずれか1つのエキセンジン−4誘導体の薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物
から選択される。
【0062】
ホルモンは、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどの、Rote Liste、2008年版、50章に列挙されている脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストである。
【0063】
多糖類としては、たとえば、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩がある。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。
【0064】
抗体は、基本構造を共有する免疫グロブリンとしても知られている球状血漿タンパク質(約150kDa)である。これらは、アミノ酸残基に付加された糖鎖を有するので、糖タンパク質である。各抗体の基本的な機能単位は免疫グロブリン(Ig)単量体(1つのIg単位のみを含む)であり、分泌型抗体はまた、IgAなどの2つのIg単位を有する二量体、硬骨魚のIgMのような4つのIg単位を有する四量体、または哺乳動物のIgMのように5つのIg単位を有する五量体でもあり得る。
【0065】
Ig単量体は、4つのポリペプチド鎖、すなわち、システイン残基間のジスルフィド結合によって結合された2つの同一の重鎖および2本の同一の軽鎖から構成される「Y」字型の分子である。それぞれの重鎖は約440アミノ酸長であり、それぞれの軽鎖は約220アミノ酸長である。重鎖および軽鎖はそれぞれ、これらの折り畳み構造を安定化させる鎖内ジスルフィド結合を含む。それぞれの鎖は、Igドメインと呼ばれる構造ドメインから構成される。これらのドメインは約70〜110個のアミノ酸を含み、そのサイズおよび機能に基づいて異なるカテゴリー(たとえば、可変すなわちV、および定常すなわちC)に分類される。これらは、2つのβシートが、保存されたシステインと他の荷電アミノ酸との間の相互作用によって一緒に保持される「サンドイッチ」形状を作り出す特徴的な免疫グロブリン折り畳み構造を有する。
【0066】
α、δ、ε、γおよびμで表される5種類の哺乳類Ig重鎖が存在する。存在する重鎖の種類により抗体のアイソタイプが定義され、これらの鎖はそれぞれ、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM抗体中に見出される。
【0067】
異なる重鎖はサイズおよび組成が異なり、αおよびγは約450個のアミノ酸を含み、δは約500個のアミノ酸を含み、μおよびεは約550個のアミノ酸を有する。各重鎖は、2つの領域、すなわち定常領域(CH)と可変領域(VH)を有する。1つの種において、定常領域は、同じアイソタイプのすべての抗体で本質的に同一であるが、異なるアイソタイプの抗体では異なる。重鎖γ、α、およびδは、3つのタンデム型のIgドメインと、可撓性を加えるためのヒンジ領域とから構成される定常領域を有し、重鎖μおよびεは、4つの免疫グロブリン・ドメインから構成される定常領域を有する。重鎖の可変領域は、異なるB細胞によって産生された抗体では異なるが、単一B細胞またはB細胞クローンによって産生された抗体すべてについては同じである。各重鎖の可変領域は、約110アミノ酸長であり、単一のIgドメインから構成される。
【0068】
哺乳類では、λおよびκで表される2種類の免疫グロブリン軽鎖がある。軽鎖は2つの連続するドメイン、すなわち1つの定常ドメイン(CL)および1つの可変ドメイン(VL)を有する。軽鎖のおおよその長さは、211〜217個のアミノ酸である。各抗体は、常に同一である2本の軽鎖を有し、哺乳類の各抗体につき、軽鎖κまたはλの1つのタイプのみが存在する。
【0069】
すべての抗体の一般的な構造は非常に類似しているが、所与の抗体の固有の特性は、上記で詳述したように、可変(V)領域によって決定される。より具体的には、各軽鎖(VL)について3つおよび重鎖(HV)に3つの可変ループが、抗原との結合、すなわちその抗原特異性に関与する。これらのループは、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。VHドメインおよびVLドメインの両方からのCDRが抗原結合部位に寄与するので、最終的な抗原特異性を決定するのは重鎖と軽鎖の組合せであり、どちらか単独ではない。
【0070】
「抗体フラグメント」は、上記で定義した少なくとも1つの抗原結合フラグメントを含み、そのフラグメントが由来する完全抗体と本質的に同じ機能および特異性を示す。パパインによる限定的なタンパク質消化は、Igプロトタイプを3つのフラグメントに切断する。1つの完全なL鎖および約半分のH鎖をそれぞれが含む2つの同一のアミノ末端フラグメントが、抗原結合フラグメント(Fab)である。サイズが同等であるが、鎖間ジスルフィド結合を有する両方の重鎖の半分の位置でカルボキシル末端を含む第3のフラグメントは、結晶可能なフラグメント(Fc)である。Fcは、炭水化物、相補結合部位、およびFcR結合部位を含む。限定的なペプシン消化により、Fab片とH−H鎖間ジスルフィド結合を含むヒンジ領域の両方を含む単一のF(ab’)2フラグメントが得られる。F(ab’)2は、抗原結合に対して二価である。F(ab’)2のジスルフィド結合は、Fab’を得るために切断することができる。さらに、重鎖および軽鎖の可変領域は、縮合して単鎖可変フラグメント(scFv)を形成することもできる。
【0071】
薬学的に許容される塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩としては、たとえば、HClまたはHBr塩がある。塩基性塩は、たとえば、アルカリまたはアルカリ土類、たとえば、Na+、またはK+、またはCa2+から選択されるカチオン、または、アンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1〜R4は互いに独立に:水素、場合により置換されたC1〜C6アルキル基、場合により置換されたC2〜C6アルケニル基、場合により置換されたC6〜C10アリール基、または場合により置換されたC6〜C10ヘテロアリール基を意味する)を有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」17版、Alfonso R.Gennaro(編)、Mark Publishing Company、Easton、Pa.、U.S.A.、1985およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0072】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物である。
【0073】
以下で、添付図面を参照しながら、本発明の非限定的な例示的実施形態について説明する。