特許第6722192号(P6722192)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6722192薬物送達デバイスに使用するための駆動機構
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6722192
(24)【登録日】2020年6月23日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】薬物送達デバイスに使用するための駆動機構
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/315 20060101AFI20200706BHJP
   A61M 5/31 20060101ALI20200706BHJP
【FI】
   A61M5/315 550R
   A61M5/315 550C
   A61M5/315 550X
   A61M5/31 520
【請求項の数】14
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2017-548340(P2017-548340)
(86)(22)【出願日】2015年12月8日
(65)【公表番号】特表2017-536960(P2017-536960A)
(43)【公表日】2017年12月14日
(86)【国際出願番号】EP2015078962
(87)【国際公開番号】WO2016091869
(87)【国際公開日】20160616
【審査請求日】2018年11月28日
(31)【優先権主張番号】14306965.6
(32)【優先日】2014年12月8日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・ジェフリー・アーサー・マーシュ
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・メレディス・ジョーンズ
(72)【発明者】
【氏名】ジョーセフ・バトラー
(72)【発明者】
【氏名】アントニー・ポール・モーリス
【審査官】 田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/166905(WO,A1)
【文献】 特表2014−500086(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/156224(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/052676(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/153041(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/315
A61M 5/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カートリッジ(140)を有する薬物送達デバイスに使用するための駆動機構であって、
ベース要素(30)と、
満杯のカートリッジに対応する第1の後退位置から、空のカートリッジに対応する第2の伸張位置まで可動の歯付ピストンロッド(120)であって、ベース要素(30)の中で案内され、また該ベース要素に対して可動である歯付ピストンロッド(120)と、
ピニオン(114)を有する駆動歯車(110)であって、ベース要素(30)の中に回転可能に保持され、歯付ピストンロッド(120)と噛み合い係合し、歯付ピストンロッド(120)は、ヒンジ(122)によって連結されている複数の剛性ロッド部片(121)を含む、駆動歯車と、
一方の端部でベース要素(30)に固定され、他方の端部で駆動歯車(110)に固定されている、またベース要素(30)に対して駆動歯車(110)を回転させるために力またはトルクを駆動歯車(110)にかける、駆動ばね(130)であって、駆動歯車の回転により歯付ピストンロッド(120)が動くことになる、駆動ばねとを含み、
駆動歯車(110)のスプライン部分(113)によって提供されたクラッチと、対応するベース要素(30)のスプライン部分(31)とをさらに含み、ここで、駆動歯車(110)は、駆動歯車(110)がクラッチの係合によってベース要素(30)に回転方向に拘束される第1の位置と、クラッチが係合解除されベース要素(30)と駆動歯車(110)の間の相対回転が可能になる第2の位置との間で、その回転軸(117)に沿って軸方向に可動であり、
ここで、駆動ばね(130)は製造中または組立て中にチャージされ、駆動ばねに蓄積されたエネルギーは、ピストンロッド(120)を第1から第2の位置まで動かすのに十分である、
前記駆動機構。
【請求項2】
駆動歯車(110)をその第1の位置にベース要素(30)に対して付勢するように配置された圧縮ばね(80)を含む、請求項に記載の駆動機構。
【請求項3】
駆動歯車(110)の回転軸(117)の方向の軸方向に可動であるトリガ(40)を
さらに含み、ここで、該トリガ(40)が作動することにより、駆動歯車(110)がその第2の軸方向位置に軸方向に動くことになる、請求項に記載の駆動機構。
【請求項4】
駆動歯車(110)は、互いに回転方向に固定され軸方向に可動である少なくとも2つの別個の構成部材(119a、119b)を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の駆動機構。
【請求項5】
駆動歯車(110)は、ピニオン(114)に対して軸方向に変位可能であり回転方向に固定される、請求項1〜のいずれか1項に記載の駆動機構。
【請求項6】
圧縮ばね(80)は、ピニオン(114)と駆動歯車(110)の間に配置される、請求項に記載の駆動機構。
【請求項7】
駆動ばね(130)はゼンマイばね、またはねじりばねである、請求項1〜のいずれか1項に記載の駆動機構。
【請求項8】
ベース要素(30)に対して回転可能な設定要素(100)をさらに含み、
ここで、ベース要素(30)に対する設定要素(100)の回転は、ゼロ用量位置および好ましくは最大用量位置も画成する回転止め具(101、102)によって制限され;
駆動歯車(110)は、第1から第2の位置へ動いたときに設定要素(100)に係合し、それにより、設定要素(100)が駆動歯車(110)に回転方向に拘束されるように構成される、請求項1〜のいずれか1項に記載の駆動機構。
【請求項9】
設定要素(100)は、一連のマーキングを外周部に備えた数字ホイールとして構成される、請求項に記載の駆動機構。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか1項に記載の駆動機構を含む薬物送達デバイスであって、
薬剤の使用者可変用量を設定するための、かつベース要素(30)に対して回転可能な、用量設定部材(50)をさらに含み、
ここで、該用量設定部材(50)および設定要素(100)はそれぞれ、トリガ(40)上の対応するスプライン機能(42、43)にトリガ(40)の第1の軸方向位置で係合し、それにより、トリガが設定要素(100)を用量設定部材(50)に回転方向に拘束するように構成されたスプライン機能(52、103)を含む、前記薬物送達デバイス。
【請求項11】
トリガ(40)が第1から第2の軸方向位置に動くことにより、トリガ(40)が用量設定部材(50)および設定要素(100)から回転デカップリングする、請求項10に記載の薬物送達デバイス。
【請求項12】
用量投薬の終わりに可聴および/または触覚フィードバックを生成するフィードバック機構をさらに含み、該フィードバック機構は、設定要素(100)上の突起(106)を載り越えて可聴および/または触覚フィードバックを生じるように構成された、ベース要素(30)上の可撓性クリッカアーム(36)を含み、駆動歯車(110)が第2の位置にあるときに、駆動歯車(110)は、クリッカアーム(36)の有効長(L1)が短縮されるようにクリッカアーム(36)に係合する、請求項10または11に記載の薬物送達デバイス。
【請求項13】
カートリッジ(140)は薬剤を含む、請求項1012のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項14】
デバイス(1)は使い捨て注射デバイスである、請求項1013のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、薬物送達デバイス、すなわち薬剤のいくつかの使用者可変用量を選択および投薬するための手持ち注射デバイスに使用する駆動機構を対象とする。
【背景技術】
【0002】
薬物送達デバイスには、正式な医療訓練を受けていない人によって定期的な注射が行われる適用例がある。こうした適用例は、糖尿病の患者の間でますます一般的になっており、自己療法が、このような患者が自分の糖尿病の効果的な管理を行うことを可能にする。実際に、このような薬物送達デバイスは、使用者が薬剤のいくつかの使用者可変用量を個別に選択し投薬することを可能にする。本発明は、単に所定の用量を投薬できるようにするだけで設定用量を増加または減少させる可能性のない、いわゆる固定用量デバイスは対象としない。
【0003】
基本的に2つのタイプの薬物送達デバイス:すなわち、再設定可能デバイス(すなわち、再使用可能)および再設定不能デバイス(すなわち、使い捨て)がある。たとえば、使い捨て薬物送達デバイスは独立型デバイスとして供給される。このような独立型デバイスには、着脱可能充填済みカートリッジがない。というより、その充填済みカートリッジは、デバイス自体を壊さなければこれらのデバイスから取り出し、取り替えることができない。それゆえに、このような使い捨てデバイスは、再設定可能用量設定機構を有する必要がない。本発明は一般に、両方のタイプのデバイス、すなわち使い捨てデバイスならびに再使用可能デバイスに適用することができる。
【0004】
薬物送達デバイスタイプの別の区分は駆動機構に関連する:たとえば使用者が注射ボタンに力を加えることによって手で駆動されるデバイス、ばねなどによって駆動されるデバイス、およびこれら2つの概念を合わせたデバイス、すなわち使用者が注射力をかけることがやはり必要とされるばね補助式デバイスがある。ばね型デバイスは、予荷重がかけられているばねと、用量選択中に使用者によって負荷がかけられるばねとを含む。いくつかの蓄積エネルギーデバイスは、ばね予荷重と、たとえば用量設定中に使用者によって提供される追加エネルギーとの組合せを使用する。別のタイプのエネルギー蓄積器は、圧縮流体、または電池などを備えた電気駆動デバイスを含む。本発明の多くの態様は、これらすべてのタイプのデバイスに、すなわち駆動ばねまたは同様のエネルギー蓄積器があるデバイスにも、ないデバイスにも適用することができるが、好ましい実施形態には何らかの種類のエネルギー蓄積器を必要とする。
【0005】
こうしたタイプの送達デバイスは、一般に3つの主な要素:すなわち、多くの場合ハウジングまたはホルダの中に含まれるカートリッジを含むカートリッジセクション;カートリッジセクションの一端に連結されたニードルアセンブリ;カートリッジセクションの他端に連結された投薬セクションから構成される。カートリッジ(アンプルと呼ばれることが多い)は通常、薬剤(たとえば、インスリン)が充填されている貯蔵器と、カートリッジ貯蔵器の一端にある可動ゴム型の栓またはストッパと、多くはくびれている他端にある穿孔可能ゴム封止を有する上部とを含む。圧着環状金属バンドが通常、ゴム封止を適所に保持するために使用される。カートリッジハウジングは通常、プラスチックで作ることができるが、カートリッジ貯蔵器は歴史的にガラスで作られてきた。
【0006】
ニードルアセンブリは通常、交換可能両頭針アセンブリである。注射の前に、交換可能両頭針アセンブリがカートリッジアセンブリの一端に取り付けられ、用量が設定されてから設定用量が投与される。このような着脱可能ニードルアセンブリは、カートリッジアセンブリの穿孔可能封止端に装着または押し付けられる(すなわち、カチッと留められる)。
【0007】
投薬セクションまたは用量設定機構は通常、用量を設定(選択)するために使用されるデバイスの部分である。注射中、用量設定機構の中に含まれるプランジャまたはピストンロッドが、カートリッジの栓またはストッパまたはピストンを押す。この力により、カートリッジの中に含まれる薬剤が、取り付けられたニードルアセンブリを通して注射される。注射の後、ほとんどの薬物送達デバイスおよび/またはニードルアセンブリの製造業者および納入業者によって一般に推奨されるように、ニードルアセンブリは取り外され廃棄される。
【0008】
薬剤のいくつかの使用者可変用量を選択および投薬するための薬物送達デバイスの投薬セクションは、選択された用量を使用者に示すためのディスプレイを含むことが多い。これは、使用者が健康状態に応じて毎回異なる用量を選択する場合に特に重要である。機械式ディスプレイ(たとえば、数字が外面に印刷されているドラム)があり、実際に選択された用量に対応する数字がデバイスの窓または開口部を通して見える。このような機械式ディスプレイは簡単で確実であるが、通常では比較的大きい構築空間を必要とし、そのためデバイスが大きくなる。加えて、数字のサイズが目の不自由な使用者にとっては小さすぎる場合がある。別に、電子ディスプレイが知られており(たとえば、液晶ディスプレイ)、これには、過大な構築空間を必要とせずに数字サイズが比較的大きくなるという利点がある。しかし、電子ディスプレイの不利な面として、エネルギー源が必要なこと、またこのような電子部材が、特に使い捨て薬物送達デバイスではあまりに高価なことがある。
【0009】
1つの使い捨て薬物送達デバイスが特許文献1から知られており、そのディスプレイは、数字が外面に印刷されている数字スリーブを含む。デバイスはさらに、ハウジング、薬剤を含むカートリッジを保持するためのカートリッジホルダ、カートリッジホルダに対して変位可能なピストンロッド、ピストンロッドに連結された駆動体、駆動体に連結され数字スリーブに固定された用量設定つまみ、および注射ボタンを含む。数字スリーブは、用量選択中に螺旋経路に沿って第1の方向に回転し、また用量投薬中に第2の反対の方向に回転してハウジングの中に戻るように、ハウジングとねじ係合する。
【0010】
注射デバイスがジャケットのポケットまたはハンドバッグの中に難なく入るように十分小さくなければならないことは、問題である。また、注射デバイスは、カートリッジ内のカートリッジ栓を駆動するために使用されるピストンなどが最大投薬位置にまでも動くことができるサイズでなければならない。特許文献2は、テープ状の可撓性ラックによって形成されたピストンロッドを開示している。第2の実施形態は、ヒンジで連結された複数の剛性ロッド部片を含む。剛性ロッド部片はそれぞれ、湾曲したラックを備える。ラックの反対側に設けられた支持体がカートリッジ内部に入って、ピストンロッドをカートリッジの中で案内する。このようなピストンロッドを、ロッドをその全長を超えて案内することが必要なカートリッジの反対側のロッド端に加わる力によって、またはピストンロッドがピニオンのまわりで輪を描きながら動くピニオンによって、駆動することが提案されている。両方の代替方法が、薬物送達デバイスの中の駆動機構の設計および位置に関する制約条件をもたらす。このような駆動機構は、サイズが小さい注射デバイスに適しており、患者にとって扱いやすい設計選択肢を可能にするが、一般に、患者は依然として用量を設定し、注射に必要なエネルギーでデバイスをチャージする必要がある。特に、障害のある患者には、設定および/または間違った用量が万一設定された場合のリセットがしやすく、薬剤を注射する点で扱いやすい注射デバイスが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】WO2004/078241A1
【特許文献2】WO98/01173A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、投薬、用量設定および/または用量取消しが改善される、必要な操作力が小さい改善された駆動機構および薬物送達デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、請求項1の特徴を有する駆動機構、および請求項11の特徴を有する薬物送達デバイスによって解決される。
【0014】
本発明による駆動機構は、好ましくは円筒形のカートリッジを備えた薬物送達デバイスに使用するのに適しており、シャーシと呼ばれるベース要素と、ベース部分すなわちシャーシの中で案内されシャーシに対して可動の歯付ピストンロッドと、ベース要素すなわちシャーシ内に回転可能に保持され、歯付ピストンロッドと噛み合い係合する、ピニオンがある駆動歯車とを含む。歯付ピストンは、満杯のカートリッジに対応する第1の後退位置から、空のカートリッジに対応する第2の伸張位置まで可動である。ピストンロッドがカートリッジ栓の後ろに置かれているときにピストンロッドを第1から第2の位置に向けて動かすことによって、カートリッジの内容物が、カートリッジの反対端部に取り付けられた投薬インターフェースを通して投薬される。駆動ばねは製造中または組立て中にチャージされ、前記チャージング中に駆動ばねに蓄積されたエネルギーは、ピストンロッドを第1から第2の位置まで動かすのに十分である。言い換えると、駆動ばねに蓄積されたエネルギーは、カートリッジ内のピストンまたは栓を、カートリッジの最初の使用前ピストンの位置に対応する初期位置から、完全使用済みのカートリッジに対応する終了位置まで駆動するのに十分である。ばねに蓄積されたエネルギーが十分であるので、ばねが解放されたとき、カートリッジの全量は、何回かの注射サイクルにわたって、駆動ばねを再チャージする必要なしに投薬される。
【0015】
ピストンロッドは複数の剛性ロッド部片を含み、これらは、たとえば一体化ヒンジであるヒンジによって、剛性ロッド部片が旋回して前後に並んで配置されるように連結される。後退位置では、ピストンロッドの少なくとも主要部がデバイスの内側で巻かれるか、または巻き上げられる。ピニオンによって、ピストンロッドは、第2の位置にまでセグメントごとに伸張され、ピストンロッドの少なくとも主要部は伸張状態にある。この駆動機構では、小サイズの駆動機構の利点が、薬物送達デバイスの使用期間全体にわたって必要な入力の力が非常に小さいことと組み合わさる。
【0016】
事前にチャージされる、または事前に応力がかけられるばねは、組立て中に、たとえば駆動ばねがベース要素に連結されるときにチャージされ、あるいは駆動ばねは、すでに事前に応力がかけられた状態で薬物送達デバイスに組み込まれる。
【0017】
駆動ばねを使用すると、カートリッジの内容物を排出するために必要な使用者の力が低減する利点が得られ、また可撓性のピストンロッドと組み合わせて、より小型のデバイスが実現可能になる。事前にチャージされる、または事前に応力がかけられるばねにはさらに、カートリッジの内容物を排出するのに必要な投薬する力でばねをチャージする必要が使用者にはないので、用量設定中に必要な力を低減させる利点がある。これによりデバイスが使いやすくなる。
【0018】
ピストンロッドの第1の位置はまた、ピストンロッドが栓に対して心合わせされる薬物送達デバイスの組立て後の、ピストンロッドの位置に一致する。ピストンロッドはまた製造中に栓と接触し、それにより、栓はカートリッジの内部で短い距離にわたって変位する。本発明の感覚では、カートリッジのこの状態(組立て後にすぐ使える)はまた、満杯のカートリッジとも理解される。
【0019】
別の実施形態によれば、剛性ロッド部片はそれぞれ、まっすぐな歯付ラックを備えた平板を含む。言い換えると、剛性ロッド部片も歯付ラックも湾曲していない、または反り上がっていない。このことがロッドの屈曲剛性を増し、また、ピストンロッドの伸張のためにロッドがピニオンのまわりで輪を描きながら動くことを必要としない、ラックとピニオンの応用例においてロッドを使用することを可能にする。したがって、駆動機構内および/または薬物送達デバイス内のロッドとピニオンの位置および配置について、より多くの設計選択肢がある。加えて、ピニオンは相対的に小さくすることができ、これは、ロッドがピニオンのまわりで輪を描きながら動くことが意図されている場合には実現不可能である。
【0020】
通常、可撓性ピストンロッドは、ベース要素すなわちシャーシの中に置かれ、駆動歯車の回転によりピストンロッドが前進するように、ラックとピニオンのインターフェースを介して駆動歯車に係合する。栓があるカートリッジと共に薬物送達デバイス内で使用される場合、ピストンロッドの遠位端は液体薬剤カートリッジの中の栓に作用し、これにより薬剤が、用量投薬中にピストンロッドが前進することによってカートリッジから排出される。
【0021】
可撓性ピストンロッドは単一の構成要素であり、個別のセグメント(剛性ロッド部片)が、可撓性ヒンジを形成する材料の薄いセクションによって、一緒に連結されている。曲げの可撓性により、従来のガラス製薬剤カートリッジを使用しながら、かなり短いデバイス形態が可能になる。
【0022】
本発明の好ましい実施形態では、セグメントの端面は平坦であり、可撓性ピストンロッドがまっすぐである場合、近傍のセグメント面は互いに当接して、構成要素は圧縮負荷に耐えられるようになる。このことが、平板としてのセグメントの設計と併せて、ロッドの屈曲剛性に寄与する。可撓性ピストンロッドは、曲げた状態を維持するようにベース要素すなわちシャーシの中に拘束され、ラック歯車の歯が駆動歯車のピニオンから係合解除することを防止する。ピストンロッドが前進すると、ラックおよびピニオンと駆動歯車との係合を介して、ピストンロッドの背向セグメントが駆動歯車ピニオンとの係合に引き込まれる。後に続くセグメントは、先行するセグメントを、これに圧縮負荷をかけて駆動し、栓に力を加える。可撓性ピストンロッドが前進すると、第1のセグメントは、ベース要素すなわちシャーシによって提供された支持体から出る。追加支持体がなければ、ピストンロッドは、この圧縮負荷を受けてバックルで留まる可能性がある。バックル留めを防止するための追加支持体がカートリッジの内部側壁によって作られて、可撓性ピストンロッドの外面に制約が設けられる。
【0023】
ロッドの屈曲剛性をさらに増すために、各セグメントまたはロッド部片の平板は、まっすぐな歯付ラックの反対側に置かれたフランジを含む。フランジの端面は、好ましくは平坦であり、可撓性ピストンロッドがまっすぐである場合、近傍のフランジ面は互いに隣接して、構成要素は圧縮負荷に耐えられるようになる。フランジの長さは、フランジが(板と共に)カートリッジの中でロッドを案内するように、好ましくはカートリッジの寸法に適用される。
【0024】
ベース要素すなわちシャーシは剛性構成要素部材であり、通常はケースワークなどのデバイスハウジングの中に固定されるか、またはその一部になっている。ベース要素すなわちシャーシは、ピストンロッド、駆動歯車、または駆動機構もしくは薬物送達デバイスの別の構成要素部材の各相対運動に対する(動かせない)基準である。ケースワークは、上側ケースワークまたはハウジング部材と下側ケースワークまたはハウジング部材などの、接合された構成部材によって構成される。好ましくは、ケースワーク部材は、駆動機構の構成部材を堅固に収容するための、および/またはケースワーク部材を互いに堅固に取り付けるための、クリップ留め機能を含む。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、ベース要素すなわちシャーシは、第1の湾曲した案内セクション、および第2のまっすぐな案内セクションを含み、駆動歯車および/またはそのピニオンが、第2のまっすぐな案内セクションの中に突き出て、またはそれに隣接して配置される。言い換えると、ピニオンとロッドセグメントの間の噛み合い係合が、まっすぐな案内セクション内に生じる。したがって、案内セクションが曲げられる設計は、ピニオンとロッドの係合を可能にするように適合されなくてもよいが、可撓性ピストンロッドをたとえば巻き上げ状態で保存するための、使用可能な空間を最適化するのに適している形状を有する。この駆動機構は、相対的に小型の薬物送達デバイスの設計を可能にする。
【0026】
加えて、ベース要素すなわちシャーシは、カートリッジを保持するための受け入れセクションを含む。通常、受け入れセクションは、ロッドがピニオンのすぐ後にカートリッジに入るように、第2のまっすぐな案内セクションに隣接して配置される。第2のまっすぐな案内セクションは、受けセクションに入るか、またはそれと合体する。受けセクションの少なくとも1つのセクションは、使用者がカートリッジ内容物または充填レベルを見ることができるように、開口部もしくは窓、または透明材料がある透明セクションを有する。さらに、栓は、使用者がカートリッジの充填レベルを容易に認識できるように、色付きマーキングなどのインジケータを備える。
【0027】
本発明の別の実施形態では、ベース要素すなわちシャーシは、ピニオンがベース要素の中心に置かれている概ね円形の構成を有する。第1の湾曲した案内セクション、および第2のまっすぐな案内セクションは、ベース要素の中心からオフセットして置かれる。こうすることが、この駆動機構を使用する薬物送達デバイスの全体寸法を低減することに寄与する。
【0028】
別の実施形態によれば、駆動機構は、駆動歯車のスプライン部分によって提供されたクラッチと、対応するベース要素のスプライン部分とを含み、駆動歯車は、クラッチの係合によって駆動歯車がベース要素に回転方向に拘束される第1の位置と、クラッチが係合解除されベース要素と駆動歯車の間の相対回転が可能になる第2の位置との間で、その回転軸に沿って軸方向に可動である。駆動歯車とベース要素の係合により、事前チャージされた駆動ばねから加えられるトルクの作用を受けた駆動歯車の、意図的ではない回転が効果的に防止され、したがって、この係合は、設定用量の送達の前にピストンロッドが動くことを防止する。好ましくはスプライン部分は、駆動歯車の回転軸に対して径方向に形成される。たとえば、駆動歯車のスプライン部分は、駆動歯車の外周面の少なくとも1つのセクション上に形成される。その理由は、歯および/または溝ならびにベース要素のスプライン部分などの外側スプライン機能は、ベース要素の内周面の少なくとも1つのセクション上に歯および/または溝などの内側スプライン機能として形成され、それにより、駆動ばねの弛緩を防止するのに効果のあるレバーアームが非常に効果的になるからである。
【0029】
駆動歯車のスプライン機能とベース要素の係合を確実にするために、駆動機構は、ベース要素に対して駆動歯車をその第1の位置に付勢するように配置された圧縮ばねなどのトリガばねを含む。トリガばねは、ベース要素と駆動歯車の間に置かれる。言い換えると、駆動歯車とベース要素すなわちシャーシは、ばねの力に抗する駆動歯車とベース要素すなわちシャーシとの相対運動によってデカップリングされる。さらに、駆動歯車を第2の位置に動かすことによって、駆動歯車とベース要素は、駆動ばねのチャージされたエネルギーが解放され、駆動歯車が回転し、それによってピストンロッドが変位するようにデカップリングされる。
【0030】
本発明の別の実施形態は、たとえば用量ボタンまたは駆動ボタンであるトリガを含み、これは、駆動歯車の回転軸の方向の軸方向に可動であり、作動したときに駆動歯車に係合し、駆動歯車をベース要素に対して第2の位置に動かすように構成される。トリガの作動とは、ベース要素と駆動歯車の間のクラッチが係合解除するように、トリガが使用者によって駆動歯車に向けて軸方向に動かされる、または押されることを意味する。駆動歯車との係合によって、トリガの軸方向の動きが駆動歯車に移され、駆動歯車は第2の位置に動き、それによって、駆動歯車がベース要素からデカップリングされる。この目的のためにトリガは、第1の軸方向位置と第2の軸方向位置の間で可動であり、第1から第2の位置へのトリガの動きが、駆動歯車をベース要素からデカップリングする。ボタンを作動させるために必要な力は比較的小さいので、大きな人間工学的な利点が、特にあまり器用ではない使用者にもたらされる。
【0031】
別の実施形態によれば、駆動歯車は、互いに回転方向に固定され軸方向に可動の、少なくとも2つの別個の構成部材を含む。それによって、駆動ばねの効率に影響を及ぼすおそれがある、駆動ばねの軸方向の変位が効果的に回避される。本発明の別の実施形態は、下方および上方の構成部材がある駆動歯車を提供する。駆動歯車の下方構成部材は、ピストンロッドを駆動するピニオンを含む。上方構成部材は、トリガボタンと共に下方構成部材に対して軸方向に動く。駆動歯車のこれら2つの部材は、両方の構成部材が一緒に回転しているために駆動ばねが打ち勝たなければならない摩擦損失を何ら付加しないトリガばねによって、離して付勢される。好ましくは、駆動ばねは、ピニオンに回転方向に固定されている下方構成部材に取り付けられる。
【0032】
別の実施形態によれば、駆動歯車とピニオンは別個の構成部材であり、トリガばねはピニオンと駆動歯車の間に配置される。これは特に、組立て上の利点を提供する。1つの実施形態によれば、駆動ピニオンは軸の形であり、駆動歯車のセクションを受けるように構成されたカップ状の要素として一部は形作られる。好ましくは、軸は駆動歯車にスプライン連結される。この目的のために、カップ状要素の内面、および駆動歯車の受けセクションの外面は、相対軸方向運動は可能にするが相対回転は阻止する歯および/または溝などの、対応するスプライン機能を備える。特に、トリガばね端部は、回転摺動接点を必要としない。このことはまた、軸がスプラインの角度クリアランスの中で巻き戻ると、軸に作用する駆動ばねトルクが衝撃エネルギーを吸収するので、カートリッジによって生成されたいかなる衝撃負荷も駆動機構にかかる力にはならないことを確実にする助けになる。
【0033】
好ましくは駆動ばねは、「時計」ばねまたは主ばねと呼ばれることが多い、好ましくは一定のトルクを供給するゼンマイばねである。駆動ばねはまた、ねじりばねとすることもできる。駆動ばねは、組み込まれたときに51Nmmのトルクを供給する場合に効果的であることが判明している。
【0034】
駆動機構はまた、ベース要素に対して回転可能である設定要素を含む。この目的のために設定要素は、薬物送達デバイスのハウジング、または少なくともケースワーク部材に取り付けられる。ベース要素に対する設定要素の回転が、ゼロ用量位置、および好ましくは最大用量位置も画成する回転止め具によって制限される。これらの止め具は、設定要素が相対して回転するハウジング部材または他の任意の適切な要素に設けられる。駆動歯車は、設定要素をその第1から第2の位置に動いたときに係合して、設定要素が駆動歯車に回転方向に拘束されるように、構成される。駆動歯車は、スプラインインターフェースを介して設定要素に係合し、スプラインおよび/または溝が駆動歯車および設定要素上に形成され、スプラインインターフェースは、駆動歯車と設定要素の間の相対的な軸方向運動を可能にし、駆動歯車が第1から第2の位置に動くことにより、駆動歯車および設定要素上の対応する各スプライン機能が係合する。駆動歯車の第1の位置では、設定要素が駆動歯車に対して自由に回転し、駆動歯車の第2の位置では、設定要素が駆動歯車に回転方向にロックされる。駆動歯車を設定要素に回転連結することによって、駆動歯車の回転が効果的に制限される。したがって、投薬中、ピストンロッドは回転止め具が係合するまで駆動される。回転止め具は、設定要素およびハウジング部材またはシャーシ上に形成された、たとえば突起および/または当接部として形成される。好ましくは、同一の突起がゼロ用量位置および最大用量位置を規定し、すなわち、ゼロと最大の用量止め間の相対回転がほぼ360°に制限される。特に、用量設定過程における設定要素の回転によって、使用者は駆動歯車の回転の度合い、すなわち投薬されるべき薬剤の量を設定することができる。用量を設定するのに必要な力は、駆動歯車がその第1の位置では設定要素と係合しないので最小限になる。
【0035】
非視覚的フィードバックに加えて、薬物送達デバイスは通常、実際に設定された用量を示すディスプレイを有する。別の実施形態によれば、設定要素は、外周に一連のマーキングを備えた数字ホイールとして構成される。このような数字ホイールは、駆動歯車の回転を制限する機能と、設定され注射された用量を表示する機能とを、機構の精度に寄与する1つの構成要素として一体化する。本発明の好ましい実施形態は、一連のマーキングをディスプレイの数字ホイールの外周に設けること、および数字ホイールのマーキングの像をプリズムによって好ましくは90°偏向させることに基づく。数字ホイールの外周は、示されるすべての単数字による、または示される1つおきの数字および中間位置を印付ける線による、一連のマーキングを配置するのに十分なスペースを有する区域である。一方で、ホイールの外周が、用量設定中および投薬中に使用者が可読であるべきマーキングの最も都合のよい位置ではない場合があるので、使いやすさを増すための偏向が行われる。
【0036】
偏向の方向に関して、一部の使用者にとっては、ディスプレイが用量設定中および/または用量投薬中に動かす必要のある方向に向いていれば都合がよい。たとえば、用量設定のために一平面内の回転が必要であり、用量投薬のために前記平面に垂直にトリガを押す必要がある場合、ディスプレイはこの平面に近接して配置される。好ましくは、数字ホイールは軸のまわりに回転可能であり、プリズムは、数字ホイールのマーキングの像が前記軸に平行な方向に偏向されるように配置される。好ましい実施形態によれば、少なくとも1つのプリズムは三角形プリズムであり、一連のマーキングは、プリズムを通して可読になるように反転(鏡映)されて数字ホイールの外周に設けられる。一代替形態として、単純(三角形)プリズムの代わりにペンタプリズムを使用し、像を直角によって反転せずに、すなわち像の対称性を変えずに透過させることもできる。したがって、一連のマーキングは、鏡映されずに数字ホイールの外周に設けられる。
【0037】
好ましくは、プリズムの表面は、数字ホイール上のマーキングの拡大像を提供するように設計される。こうすると、数字ホイールの外周面で得られる限られたスペースでも、使用者が依然として都合よく可読である、設定されるべき用量のすべての単位(または1つおきの単位)の個々の数字を提供することが可能になる。
【0038】
本発明による薬物送達デバイスは、本明細書に記載された駆動機構を含む。デバイスはさらに、ベース要素によって固定されるハウジングを含み、このハウジングは、カートリッジを受ける区画によって画成された長手方向軸を有し、設定要素および/または駆動歯車はハウジングの中に回転可能に配置され、その回転軸はハウジングの長手方向軸に垂直になっている。
【0039】
薬物送達デバイスはさらに、薬剤の使用者可変用量を設定するための用量ダイヤルなどの用量設定部材を含み、この用量設定部材は、ベース要素および/またはハウジングもしくはケースワークに対して回転可能であり、用量設定部材および設定要素/数字ホイールはそれぞれ、トリガ上の歯および/または溝などの対応するスプライン機能にトリガの第1の軸方向位置で係合し、それにより、トリガが設定要素(数字ホイール)を用量設定部材(ダイヤル)に回転方向に拘束するように構成された歯および/または溝などのスプライン機能を含み、トリガが作動すると、用量設定部材(ダイヤル)と設定要素(数字ホイール)が回転デカップリングする。トリガの作動により、トリガのスプライン機能が数字ホイールから係合解除し、したがって、投薬中にトリガは回転しないので、使用者には都合がよい。用量設定部材は薬剤の用量の便利な設定を提供し、設定部材の設定の動きは設定要素へじかに移される。言い換えると、用量設定部材またはダイヤルを回すことによって、使用者は、可能な設定要素の回転の度合いを、たとえばハウジングまたはシャーシ上のゼロ用量回転止め具と、設定要素上のそれぞれの対向当接部との間の角距離を設定することによって決定する。
【0040】
本発明の別の態様によれば、駆動機構はさらに、駆動歯車および設定要素の一方に対して軸方向に変位可能に、かつ回転不能に案内される最終用量ナットを含む。たとえば、このナットは、スプラインインターフェースを介して駆動歯車に回転連結される。ナットは、数字ホイールと駆動歯車の間に相対回転が生じたときに(すなわち、ダイヤル中)、設定要素(または数字ホイール)に対して、ねじインターフェースを介して螺旋経路に沿って動く。ナットは端部止め具に向かって動き、ナットおよび端部止め具は、注射デバイス内の薬剤の(投薬可能)量を超える用量設定をナットが防止するように、注射デバイスの駆動機構内に設けられる。言い換えると、端部止め具は好ましくは、用量設定中にナットが移動する軌道の長さを画成し、この軌道の長さは、カートリッジ内の薬剤の総(投薬可能)量に対応する。
【0041】
別の実施形態によれば、最終用量ナットに対するねじ山が駆動歯車の外面に設けられ、最終用量ナットは、スプラインインターフェースを介して数字ホイールの内面に係合する。この実施形態は、コアを数字ホイールの方へ回す必要を取り除くので、製造作業を簡単にする。さらに、薬物送達デバイスの組立てが簡単になる。
【0042】
本発明の別の実施形態によれば、デバイスはクリッカ構成部材を含む。それぞれ異なるクリッカ機構が、用量設定中および用量投薬中に活動している。たとえば、用量設定フィードバックが、用量設定部材とハウジングの間に設けられたラチェットによって生成される。この目的のために、ハウジング上の一連の突起を乗り越える可撓性アームの形のクリッカ要素が、用量設定要素上に形成される。用量設定要素は投薬中に回転しないように構成されるので、用量設定作業のための明瞭な標示がもたらされる。
【0043】
発明の別の実施形態では、用量設定部材と駆動歯車の間に、特に軸方向に、クリッカ手段が設けられる。駆動歯車は、用量設定部材/ダイヤル上の剛性クリッカアームに当たって反応するための、用量設定部材/ダイヤルに向かって軸方向に延びる歯を備える。各単位がダイヤル設定されるとき、駆動歯車は軸方向に歯のたけだけ強制的に下に向けられ、次に、トリガばねの作用を受けて、その最初の軸方向高さまで戻る。これにより、各単位がダイヤル設定されるときに可聴クリック音が生じる。別の実施形態では、用量設定中に、トリガボタンは用量設定要素と、これら2つの要素が互いに回転方向に拘束されるが軸方向には動くことができるように、スプライン係合する。用量設定部材は、駆動歯車上の、好ましくは駆動歯車の近位面の、対応するラチェット要素に向かって延びる歯など、いくつかのラチェット機能を有する。
【0044】
別の実施形態によれば、用量投薬の終わりに可聴および/または触覚フィードバックを生成するためのフィードバック機構が含まれ、このフィードバック機構は、設定要素上の突起を載り越えて可聴および/または触覚フィードバックを生じるように構成された、ベース要素上の可撓性クリッカを含み、駆動歯車が第2の位置にあるとき、駆動歯車は、クリッカアームの実効長が短縮されるようにクリッカアームに係合する。可撓性クリッカアームの長さを短縮することによって、その剛性が増してフィードバック音の音量が増大することになる。
【0045】
好ましくは、カートリッジは、デバイスが組み立てられるときに、かつ/または薬物送達デバイスが使い捨て注射デバイスであるときに、薬剤を含んでいる。
【0046】
本明細書で使用する用語「薬剤」は、少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで、一実施形態において、薬学的に活性な化合物は、最大1500Daまでの分子量を有し、および/または、ペプチド、タンパク質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、酵素、抗体もしくはそのフラグメント、ホルモンもしくはオリゴヌクレオチド、または上述の薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病関連の合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチの処置および/または予防に有用であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病または糖尿病性網膜症などの糖尿病に関連する合併症の処置および/または予防のための少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリンもしくはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)もしくはその類似体もしくは誘導体、またはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4もしくはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4の類似体もしくは誘導体を含む。
【0047】
インスリン類似体は、たとえば、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、およびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0048】
インスリン誘導体は、たとえば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、およびB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0049】
エキセンジン−4は、たとえば、H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2配列のペプチドであるエキセンジン−4(1−39)を意味する。
【0050】
エキセンジン−4誘導体は、たとえば、以下のリストの化合物:
H−(Lys)4−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)5−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);または
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
(ここで、基−Lys6−NH2が、エキセンジン−4誘導体のC−末端に結合していてもよい);
【0051】
または、以下の配列のエキセンジン−4誘導体:
desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2(AVE0010)、
H−(Lys)6−desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desAsp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desMet(O)14,Asp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2;
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Lys6−desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(S1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2;
または前述のいずれか1つのエキセンジン−4誘導体の薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物
から選択される。
【0052】
ホルモンは、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどの、Rote Liste、2008年版、50章に列挙されている脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストである。
【0053】
多糖類としては、たとえば、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩がある。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。
【0054】
抗体は、基本構造を共有する免疫グロブリンとしても知られている球状血漿タンパク質(約150kDa)である。これらは、アミノ酸残基に付加された糖鎖を有するので、糖タンパク質である。各抗体の基本的な機能単位は免疫グロブリン(Ig)単量体(1つのIg単位のみを含む)であり、分泌型抗体はまた、IgAなどの2つのIg単位を有する二量体、硬骨魚のIgMのような4つのIg単位を有する四量体、または哺乳動物のIgMのように5つのIg単位を有する五量体でもあり得る。
【0055】
Ig単量体は、4つのポリペプチド鎖、すなわち、システイン残基間のジスルフィド結合によって結合された2つの同一の重鎖および2本の同一の軽鎖から構成される「Y」字型の分子である。それぞれの重鎖は約440アミノ酸長であり、それぞれの軽鎖は約220アミノ酸長である。重鎖および軽鎖はそれぞれ、これらの折り畳み構造を安定化させる鎖内ジスルフィド結合を含む。それぞれの鎖は、Igドメインと呼ばれる構造ドメインから構成される。これらのドメインは約70〜110個のアミノ酸を含み、そのサイズおよび機能に基づいて異なるカテゴリー(たとえば、可変すなわちV、および定常すなわちC)に分類される。これらは、2つのβシートが、保存されたシステインと他の荷電アミノ酸との間の相互作用によって一緒に保持される「サンドイッチ」形状を作り出す特徴的な免疫グロブリン折り畳み構造を有する。
【0056】
α、δ、ε、γおよびμで表される5種類の哺乳類Ig重鎖が存在する。存在する重鎖の種類により抗体のアイソタイプが定義され、これらの鎖はそれぞれ、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM抗体中に見出される。
【0057】
異なる重鎖はサイズおよび組成が異なり、αおよびγは約450個のアミノ酸を含み、δは約500個のアミノ酸を含み、μおよびεは約550個のアミノ酸を有する。各重鎖は、2つの領域、すなわち定常領域(C)と可変領域(V)を有する。1つの種において、定常領域は、同じアイソタイプのすべての抗体で本質的に同一であるが、異なるアイソタイプの抗体では異なる。重鎖γ、α、およびδは、3つのタンデム型のIgドメインと、可撓性を加えるためのヒンジ領域とから構成される定常領域を有し、重鎖μおよびεは、4つの免疫グロブリン・ドメインから構成される定常領域を有する。重鎖の可変領域は、異なるB細胞によって産生された抗体では異なるが、単一B細胞またはB細胞クローンによって産生された抗体すべてについては同じである。各重鎖の可変領域は、約110アミノ酸長であり、単一のIgドメインから構成される。
【0058】
哺乳類では、λおよびκで表される2種類の免疫グロブリン軽鎖がある。軽鎖は2つの連続するドメイン、すなわち1つの定常ドメイン(CL)および1つの可変ドメイン(VL)を有する。軽鎖のおおよその長さは、211〜217個のアミノ酸である。各抗体は、常に同一である2本の軽鎖を有し、哺乳類の各抗体につき、軽鎖κまたはλの1つのタイプのみが存在する。
【0059】
すべての抗体の一般的な構造は非常に類似しているが、所与の抗体の固有の特性は、上記で詳述したように、可変(V)領域によって決定される。より具体的には、各軽鎖(VL)について3つおよび重鎖(HV)に3つの可変ループが、抗原との結合、すなわちその抗原特異性に関与する。これらのループは、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。VHドメインおよびVLドメインの両方からのCDRが抗原結合部位に寄与するので、最終的な抗原特異性を決定するのは重鎖と軽鎖の組合せであり、どちらか単独ではない。
【0060】
「抗体フラグメント」は、上記で定義した少なくとも1つの抗原結合フラグメントを含み、そのフラグメントが由来する完全抗体と本質的に同じ機能および特異性を示す。パパインによる限定的なタンパク質消化は、Igプロトタイプを3つのフラグメントに切断する。1つの完全なL鎖および約半分のH鎖をそれぞれが含む2つの同一のアミノ末端フラグメントが、抗原結合フラグメント(Fab)である。サイズが同等であるが、鎖間ジスルフィド結合を有する両方の重鎖の半分の位置でカルボキシル末端を含む第3のフラグメントは、結晶可能なフラグメント(Fc)である。Fcは、炭水化物、相補結合部位、およびFcR結合部位を含む。限定的なペプシン消化により、Fab片とH−H鎖間ジスルフィド結合を含むヒンジ領域の両方を含む単一のF(ab’)2フラグメントが得られる。F(ab’)2は、抗原結合に対して二価である。F(ab’)2のジスルフィド結合は、Fab’を得るために切断することができる。さらに、重鎖および軽鎖の可変領域は、縮合して単鎖可変フラグメント(scFv)を形成することもできる。
【0061】
薬学的に許容される塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩としては、たとえば、HClまたはHBr塩がある。塩基性塩は、たとえば、アルカリまたはアルカリ土類、たとえば、Na+、またはK+、またはCa2+から選択されるカチオン、または、アンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1〜R4は互いに独立に:水素、場合により置換されたC1〜C6アルキル基、場合により置換されたC2〜C6アルケニル基、場合により置換されたC6〜C10アリール基、または場合により置換されたC6〜C10ヘテロアリール基を意味する)を有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」17版、Alfonso R.Gennaro(編)、Mark Publishing Company、Easton、Pa.、U.S.A.、1985およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0062】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物である。
【0063】
次に、本発明についてさらに詳細に添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1】本発明による駆動機構を含む注射デバイスの分解組立図である。
図2図1のデバイスの断面図である。
図3図1のデバイスの、一部分が取り除かれた斜視図である。
図4図4a〜cは、図1のデバイスの、異なる構成要素の斜視図である。
図5図1のデバイスの、一部分が取り除かれた斜視図である。
図6】数字ホイールの斜視図である。
図7図1のデバイスの上面図である。
図8】本発明の別の実施形態による駆動機構の一部分の斜視図である。
図9図1のデバイスの最終用量ナット機構の断面図である。
図10図10a〜cは、図1のデバイスの、投薬順の駆動機構の断面図である。
図11】本発明の別の実施形態によるベース要素の斜視図である。
図12図12a〜bは、本発明の別の実施形態による駆動機構の一部分の斜視図である。
図13】本発明の別の実施形態による駆動機構の一部分の斜視図である。
図14】本発明の別の実施形態による駆動機構の一部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
図1および図2は、薬物送達デバイス1の図を示す。図1は、注射デバイスに組み込まれる構成要素部材を示し、これらは、上側または外側ケースワーク13および下側ケースワーク14を備えたケースワーク10または本体、カートリッジホルダ20、ベース要素すなわちシャーシ30、トリガすなわち用量ボタン40、ダイヤルカバー51を備えた用量設定またはダイヤル部材50、最終用量ナット60、トリガばね80、プリズム90、設定要素または数字ホイール100、駆動ギヤ110、可撓性ピストンロッド120、駆動ばね130、および薬剤カートリッジ140である。ダイヤルカバー51は、ダイヤル50の中に堅固に固定される。上側ケースワーク13と下側ケースワーク14は、一緒になってハウジングのケースワーク10を形成する。上側ケースワーク12は、プリズム90が挿入され恒久的に固定される開口部を有する。シャーシ30は、駆動歯車110のピニオン114を受けるための、シャーシ30の中心にある、切開円筒の形を有する支承部を含む。
【0066】
図2に示されるように、ボタン40は、ダイヤル50と駆動歯車110の間で軸方向に拘束されている。数字ホイール100は、シャーシ30と上側ケースワーク13の間で軸方向に拘束されている。数字ホイール100は、数字ホイールと上側ケースワーク13の当接部によって形成された、2つの固定された回転止め具の間で上側ケースワーク13に対し自由に回転する。
【0067】
ダイヤル50(図4a)の図4aから図4cの詳細な図のように、ボタン(図4b)および数字ホイール(図4c)が見え、ボタン40は、ダイヤル50の内面上の対応する内側スプライン/歯機能52とインターフェースする内側スプライン/歯機能42と、数字ホイール100の径方向内面上の対応するスプライン/歯機能103とインターフェースするスプライン/歯機能43とを有する。これらのインターフェース面は、用量送達中に分離する。ダイヤル50は、用量選択中に、保持機能(図示せず)によって軸方向でケースワーク10に拘束され、また、スプライン/歯インターフェース面52/42によってボタン40に回転方向に拘束される。数字ホイール100のスプライン機能103は、ダイヤル設定中にボタン40と相互作用する。さらに、内面上に、数字ホイール100はまた、投薬中に駆動歯車110の対応する駆動機能と相互作用するスプライン/歯機能104を有する。外周面上に、数字ホイールは、設定用量を示すマーキングを備える。
【0068】
駆動ばね130は、つる巻きねじりばねの形状で設けられ、一端でシャーシ30に取り付けられ、他端で駆動歯車110に取り付けられる。駆動ばね130は終身チャージされており、これは、アセンブリ中に駆動ばねが完全にチャージされ、カートリッジ140の全内容物が投薬されるまで、使用者によってチャージされる必要がないことを意味する。
【0069】
駆動歯車110は、シャーシ30と数字ホイール100の間で軸方向に拘束され、圧縮ばねの形状で設けられているトリガばね80によってシャーシ30から離れるように付勢される。駆動歯車は、用量送達を開始するためにボタン40が押されたときに、軸方向にボタン40と共に移動する。用量選択中、駆動歯車110はシャーシ30とスプライン係合しており、したがって回転に抗してロックされるが、用量送達のためにボタン40が下方に押し下げられるにつれて駆動歯車が軸方向に移動すると、このスプライン係合が分離する。同様に、数字ホイール100と駆動歯車110の間の分離したスプライン機能は、ボタン40が押し下げられると係合する。トリガばね80は、シャーシ30と駆動歯車110の間に力を加えて、これらを引き離す。「静止」状態では、このことにより、ボタン40を押す前に駆動歯車110がシャーシ30に回転連結されていること、およびボタンスプライン42がダイヤル50と係合することが確実になる。
【0070】
可撓性ピストンロッド120は、シャーシ30の中にあり、ラックとピニオンのインターフェースを介して駆動歯車110と係合し、したがって、駆動歯車110の反時計方向(CCW)回転により、可撓性ピストンロッド120がカートリッジ140の中で栓の方へ前進する。ピニオン114は、シャーシ30の中に回転可能に保持され、ピストンロッド120と噛み合い係合する。ピストンロッド120は単一の構成要素であり、個別の剛性ロッド部片またはセグメント121が、可撓性ヒンジ122を形成する材料の薄いセクションによって一緒に連結されている。セグメント121の端面は平坦であり、ピストンロッド120がまっすぐになると隣接セグメント面が互いに当接して、この構成要素が圧縮負荷に耐えられるようにする。セグメント121は、ラック歯123が一方の側に、フランジが反対側にある平板として形成される。カートリッジの方に向くセグメントは、カートリッジ栓に接触する押さえを含む。ピストンロッド120が前進すると、ラック123およびピニオン114の駆動歯車110との係合を介して、ピストンロッド120の背向セグメント121が、駆動歯車ピニオン114との係合に引き込まれる。後に続くセグメント121は、先行するセグメントを駆動して圧縮の負荷をこれらにかけ、栓に力を加える。ピストンロッド120が前進すると、第1のセグメントは、シャーシ30によって提供された支持体から出る。追加支持体がなければ、ピストンロッド120は、この圧縮負荷を受けてバックルで留まる可能性がある。バックル留めを防止するための追加支持体がカートリッジ140の内部側壁によって作り出されて、ピストンロッド120の外面に制約が設けられる。
【0071】
可撓性ピストンロッド120の遠位端は、液体薬剤カートリッジ内部の栓に作用する。液体薬剤カートリッジ140は、カートリッジホルダ20の中に収容される。カートリッジホルダ20、シャーシ30、および外側/上側ケースワーク13と下側ケースワーク14、およびプリズム90が互いに堅固に固定される。
【0072】
薬物送達デバイスは、薬剤のいくつかの使用者可変用量をカートリッジ140から、針(図示せず)を介して送達するように操作することができる。デバイスは使い捨てであり、すぐに使える完全組立て状態で使用者に届けられる。その機構は、用量の設定および送達のための別個の使用者インターフェースを提供する。手短に言えば、用量が、デバイスの面にあるダイヤル50を回すことによって設定される。用量の送達が、ダイヤル50の中心に位置する用量ボタン40を押すことによって開始され、用量送達が、用量ボタン40が押し下げられたままの間、全設定用量が送達されるまで継続する。機構は、可聴、視覚的および触覚フィードバックを、3つとも各用量の設定および送達の際に提供する。任意の用量サイズをゼロと事前画成最大値の間で、薬剤および使用者プロファイルに適合させる増分で選択することができる。機構は、用量を選択するときに反対方向にダイヤル50を回すことによって薬剤が投薬されることが全くなしに、用量の取消しを可能にする。
【0073】
用量ボタン40を作動させるのに必要な力、および動かさなければならない距離が小さいので、大きな人間工学的な利点が、特にあまり器用ではない使用者にもたらされる。機構は、用量を設定し用量の送達を開始するのに必要とする使用者入力の力が不変であり、この力は、カートリッジ140の中の栓を変位させるのに必要な力の変化の影響を受けない。ダイヤル50は用量送達中、回転しないように係合解除され、これにより使用中のデバイスの操作性が改善する。デバイスは部品点数が比較的少なく、サイズが非常にコンパクトであり、コスト重視のデバイス用途に特に魅力がある。
【0074】
以下では、デバイスの使用および機能について、より詳細に説明する。
【0075】
図3は、「静止」状態のデバイス1を示す。数字ホイール上に用量マーキング「0」がプリズム90を通して見える。デバイスのアセンブリ中に完全にチャージされる、または事前に巻かれる駆動ばねは、ゼロ用量単位がダイヤル設定されるとトルクを駆動歯車110に加える。駆動歯車110は、このトルクの作用を受けて、シャーシ30とのスプラインインターフェースによって形成されたクラッチ機構により、回転が防止される。図3の拡大抜き出しに示されるように、スプラインインターフェースは駆動歯車110の外周面に、シャーシ30の内周面の内側スプライン/歯機能31と係合する外側スプライン/歯機能113を含む。相対軸方向変位によって、駆動歯車110とシャーシ30は、駆動歯車110が駆動ばねの力を受けて回転できるようにデカップリングされる。
【0076】
液体薬剤の可変用量をダイヤル設定するために、使用者はダイヤル50を時計回り(CW)方向に回す。ダイヤルの下側およびボタン上に設けられたスプライン機能と、数字ホイールとは係合する(図4参照)。図5は、用量ダイヤル設定中のスプラインインターフェースを示す。図5の拡大セクションが示すように、ダイヤル50が回転すると、ボタン40とダイヤル50の間のスプラインインターフェース52/42により、ボタン40に同一の回転が発生する。さらに、ボタン40と数字ホイール100の間のスプラインインターフェース43/103により、数字ホイール100もまた回転する。駆動歯車110は、そのスプライン歯(splined teeth)113とシャーシ30のスプライン歯31との係合により、回転が防止される(図3参照)。
【0077】
図6に示されるように、数字ホイール100は2つの回転止め具、すなわち、当接部によって形成される最大用量止め具101およびゼロ用量止め具102を有する。上側ケースワークの内面に、それぞれの対向当接部が設けられる。ダイヤル50のCW回転により数字ホイール100が、前記対向当接部によってケースワーク13上に形成されたゼロ単位止め具から離れて、上側ケーシング13上に対向当接部として形成された最大単位止め具に向かって回転する。ダイヤル50は、数字ホイール100がケースワーク13内でゼロ用量または最大用量止め当接部と接触していないときに、使用者によってCW方向にもCCW方向にも回される。ゼロ単位当接部102は、ゼロ単位位置の下でのダイヤル50のCCW回転を防止する。最大用量当接部101は、機構最大値よりも大きい用量を設定することを防止する。
【0078】
図7に駆動機構の上面図が示されており、ダイヤル50が、上側ケースワーク13上の一連の突起に当たってクリック音を生じる、可撓性アームの形のダイヤルクリッカ54を備える。クリッカ54は、ダイヤル50の上に留まるダイヤルキャップ51によって、使用者の視界から隠されている。用量送達中、ダイヤル50は動かないので、ダイヤルクリッカ54は、用量のダイヤル設定中に動作するだけである。ダイヤルクリッカ54は、数字ホイールをプリズムに対しダイヤル50を介して付勢して、専ら薬剤の単位全体がダイヤル設定されることを確実にする。
【0079】
図8に、クリッカ機構の代替形態が提示されている。このクリッカ機構は、ダイヤル50と駆動歯車110の間で軸方向に動作する。駆動歯車110上のはす歯112は、ダイヤル50上の剛性クリッカアーム55に当たって反応する。各単位が、ダイヤル50を駆動歯車110の回転軸117のまわりに回転させることによってダイヤル設定されるので、駆動歯車は、歯112のたけだけ強制的に軸方向に下に向けられ、次に、トリガばねの作用を受けて、その最初の軸方向高さまで戻る。これにより、各単位がダイヤル設定されるときに可聴クリック音が生じる。送達中、ダイヤルクリッカ55は、ボタン40の軸方向移動によって係合解除され、駆動歯車110はダイヤル50から離れる。この実施形態は、金属ばねがプラスチックアームよりもおそらく堅牢であるので、堅牢性の点で有利である。加えて、複数の接触面を使用することができて負荷が均一に分散するので、損傷が低減され、クリッカに打ち勝つために必要なトルクが増大することがない。図8はまた、駆動歯車110の外周面が一般に2組のスプライン歯111および113を備えることを示し、第1の組111は、数字ホイール上の対応して形成されたスプライン機能104と係合するためのものであり、第2の組113は、シャーシ30との係合のために設けられる。
【0080】
図9に、最終用量機構が表示されている。最終用量ナット60は、数字ホイール100と駆動歯車110の間にある。最終用量ナットは、最終用量ナット60の径方向内面および駆動歯車110の径方向外面に設けられた、相対軸方向変位は可能にするが相対回転は阻止するスプラインインターフェース64を介して、駆動歯車110に回転連結される。たとえば、スプラインインターフェース64は、最終用量ナット60の径方向内面に軸方向に延びるリブを含み、これは、駆動歯車110の径方向外面の、それぞれの軸方向に延びる溝に係合する。さらに、最終用量ナット60は、ねじ係合によって数字ホイール100と係合し、最終用量ナットは、数字ホイール中の螺旋形に延びる相手側物に係合する外側ねじ62を形成する、螺旋形に延びる溝を備え、それにより、最終用量ナット60は、数字ホイール100と駆動歯車110の間に相対回転が生じると(すなわち、ダイヤル設定中に)、数字ホイール100に対して螺旋経路に沿って動く。数字ホイール100と駆動歯車110が回転軸117まわりで相対回転することにより、最終用量ナット60が数字ホイール100上の最終当接部105(端部止め具)に向かって軸方向に移動する。どれだけの単位が機構によってすでに送達されたかに応じて、用量の選択中、最終用量ナット60はその最終当接部105に接触する。この当接部は、数字ホイール100と駆動歯車110のさらなる相対回転を阻止し、したがって、選択される用量を制限する。最終用量ナット60の位置は、数字ホイール100と駆動歯車110の間の、使用者が用量を設定するたびに生じる相対回転の総数によって決まる。機構が、ある用量が選択されている状態であれば、使用者は、その用量から任意の単位数を選択解除することができる。用量を選択解除することは、使用者がダイヤル50をCCWに回すことによって実現される。数字ホイール100と駆動歯車110の間の相対回転により、最終用量ナット60が軸方向に戻り、最終用量当接部105から離れる。
【0081】
図10aから図10cに、用量を投薬するための一連の駆動機構が示されている。図10aは、用量がダイヤル設定された後のデバイスを示す。数字ホイール上のゼロ止め当接部は、その対向当接部から離れるように回転されている。ボタン40は、スプラインインターフェース43/103を介して数字ホイール100と係合し、ダイヤルは、スプラインインターフェース52/42を介してボタン40と係合する。ボタン40が回転軸117に沿って軸方向に押し下げられると、ボタン40はダイヤル50および数字ホイール100に対して動き、それによりボタン40は、ダイヤル50のスプライン機能52から係合解除し、また数字ホイール100のスプライン機能103から係合解除する。
【0082】
駆動歯車110は、ボタン40と共に軸方向にトリガばね80の力に抗して動き、ボタン40が半ば押し下げられると(図10b)、駆動歯車110は、その外周面のスプライン歯111を数字ホイール100上のスプライン機能104と係合させる。ボタンが完全に押し下げられると(図10C)、駆動歯車110は、シャーシロッキング歯またはスプライン機能31から係合解除し、ここでシャーシ30に対して回転することができる。言い換えると、駆動歯車110は、第1の「静止」から、駆動歯車がシャーシ30から係合解除する第2の作動位置まで可動である。
【0083】
ボタン40が完全に押し下げられた後、駆動歯車110と数字ホイール100は回転方向にロックされ、駆動ばね130の作用を受けて自由に回転する。ボタン40は、すべてのスプライン歯から係合解除され、したがって、機構はボタン40およびダイヤル50に対して回転することができる。
【0084】
駆動歯車110のピニオン114はピストンロッド120の歯に作用して、薬剤が投薬される。用量の終わりに、数字ホイール100ゼロ止め当接部が外側ケースワーク13の止め機能に当たって止まり、機構を停止させる。用量の送達中、駆動歯車110と数字ホイール100は一緒に回転し、したがって、最終用量ナット60における相対運動が生じない。
【0085】
用量送達クリッカアームは、シャーシ30に一体化されたコンプライアントカンチレバー梁であり、駆動歯車110上のラチェット機能(図示せず)と軸方向にインターフェースする。ラチェット歯間隔は、単一用量単位を送達するのに必要な駆動歯車110の回転に対応する。投薬中、駆動歯車110が回転すると、ラチェット機能がクリッカアームと係合して、送達される用量ごとに可聴クリック音を生じる。
【0086】
ボタン40が解放されると、トリガばね80が駆動歯車110を、したがってボタン40を、その静止位置まで軸方向に移動させる。この移動により、駆動歯車110のスプライン歯113が再びシャーシ30と噛み合って、駆動歯車110をさらなる回転に対抗してロックする。駆動歯車110はまた、そのスプライン歯111を数字ホイール100から係合解除する。次に、ボタン40は、そのスプライン歯機能42および43をダイヤル50および数字ホイール100と再係合する。その後、使用者は、必要な場合に自分の次の用量を自由にダイヤル設定する。
【0087】
図11に別の実施形態が示されており、シャーシ上のスプライン歯が傾斜しているか、またはスプライン歯の下面に傾斜した面があり、それにより、ボタン40が解放されたとき、スプライン歯31の再係合により駆動歯車110がわずかに巻き戻され、それによって、ゼロ用量止め当接部への数字ホイール100の係合が除去される。あるいは、傾斜したスプライン歯が駆動歯車110上に設けられる。傾斜した機能により、機構中の隙間(たとえば、許容誤差による)の影響が取り除かれ、この影響は、取り除かなければ、後に続く用量のためにデバイスがダイヤル設定されるときに、もはや機構を拘束せず、代わりに駆動歯車とシャーシの間のスプラインまで拘束復帰する数字ホイールゼロ用量止め具が、ピストンロッドのわずかな前進および薬剤投薬をもたらす。
【0088】
図12aおよび図12bに、用量の終わりを示す機構が示されている。用量機構の端部は、機構がそのゼロ位置に達する用量の終わりに可聴クリック音を生じる。このクリック音は、シャーシ30上の可撓性クリッカアーム36、駆動歯車110、および数字ホイール100の間の相互作用によって作り出される。クリック音の音量は、用量送達中に増大し、使用者がデバイスをゼロに、またはゼロから、ダイヤル設定するときには、ダイヤルクリッカによっておそらくマスクされる。図12aに関して、ダイヤル設定中、ボタン40および駆動歯車110は、シャーシ30から軸方向に間隔があけられ、可撓性クリッカアーム36は、その大きい実効カンチレバー長さL1により、数字ホイール100の内径上の突起106を最小限のトルクで乗り越えることができ、したがって、可聴クリック音の音量は小さくなる。用量送達中、ボタン40が、したがって駆動歯車110が軸方向にシャーシ30に向かって押されると、クリッカアーム36の内面は、数字ホイール100の隆起機能または突起106をアームが乗り越えるときに、駆動歯車110に接触する。この駆動歯車110との接触により、クリッカアームの実効長がL2に短縮され(図12b)、それによってその剛性が増して、用量がゼロに戻るときに生じる可聴クリック音の音量が増大することになる。
【0089】
ねじりばねの代わりに、ゼンマイばねが組み合わされる。図13は、ゼンマイばねがシャーシに固定されているデバイスの斜視図である。駆動ばね130としてねじりばねを使用する場合、ばねのエンドフォームは、ボタンが押されたときに軸方向に動く駆動歯車に固定される。ボタン行程が、したがって駆動歯車110の軸方向行程が少ないことは、ねじりばねの性能に大きな影響を及ぼさない。しかし、特にゼンマイばねを使用する場合、ばねの内側エンドフォームが駆動歯車と共に軸方向に動かないことは有利である。この機能を実現するために、本発明の別の実施形態は、回転方向に固定されているが互いに軸方向には動くことができる、2つの構成要素に分割される駆動歯車を含む。
【0090】
図14に示される実施形態は、スプライン係合によって互いに回転方向に固定され軸方向に可動である、2つの別個の構成部材を有する駆動歯車を含む。上側の第1の駆動歯車構成部材119aは、数字ホイール100との係合セクションを構成し、また投薬中にボタン40によって下向きに付勢される。第1の駆動歯車構成部材119aの下側の中心セクション上で、第1の駆動歯車構成部材119aの突出セクションが、下側の第2の駆動歯車構成部材119bの開口部に受け入れられる。構成部材119aと119bは、突出セクションの外径と受け入れセクション(開口部)の内径とに形成されるスプライン連結部によってインターフェースし、それにより、嵌め込み(telescope)のような相対軸方向運動が可能になるが、第1の駆動歯車構成部材119aと第2の駆動歯車構成部材119bの間の相対回転は阻止される。トリガばね80は、第1の駆動歯車構成部材119aと第2の駆動歯車構成部材119bの間の前記開口部に配置される。
【0091】
下側構成部材119bは、軸方向に動かず、ゼンマイばね130の内側足を固定する。下側構成部材はまた、可撓性ピストンロッド120を駆動するピニオン114を含む。上側駆動歯車構成部材119aは、第2の駆動歯車構成部材119bに対してボタン行程と共に軸方向に動き、数字ホイール100および最終用量ナット60とインターフェースする。あるいは、ピニオン114は、第2の構成部材を構成する軸の一部である。2つの部材119aと119bはトリガばね80によって離して付勢され、これによりまた、用量送達中に、両方の構成部材が一緒に回転しているので、このばねは駆動ばね130が打ち勝たなければならない摩擦損失を何ら付加しない、という利点が得られる。それにより、駆動歯車110と数字ホイール100の間のクラッチが解放されるようにボタン40を下向きに動かすことを意味する、ボタンを作動させるときに、トリガばねは加圧される。
【符号の説明】
【0092】
1 薬物送達デバイス
10 本体(ケースワーク)
13 上側ケースワーク
14 下側ケースワーク
20 カートリッジホルダ
30 シャーシ(ベース要素)
31 スプライン歯
36 クリッカアーム
40 用量ボタン
42 スプライン歯
43 スプライン歯
50 ダイヤル(用量設定部材)
51 ダイヤルカバー
52 スプライン歯
54 ダイヤルクリッカ
55 ダイヤルクリッカ
60 最終用量ナット
62 外側ねじ
64 スプラインインターフェース
80 トリガばね
90 プリズム
100 数字ホイール(設定要素)
101 最大値止め具
102 ゼロ止め具
103 スプライン歯
104 スプライン歯
105 端部止め具
106 突起
110 駆動歯車
111 スプライン歯
112 螺旋歯
113 スプライン歯
114 ピニオン
117 駆動歯車の回転軸
119a 第1の駆動歯車構成部材
119b 第2の駆動歯車構成部材
120 可撓性ピストンロッド
121 セグメント(剛性ロッド部片)
122 ヒンジ
123 ラック歯
130 駆動ばね
140 カートリッジ
図1
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図5
図6
図7
図8
図9
図10a
図10b
図10c
図11
図12a
図12b
図13
図14