(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6722658
(24)【登録日】2020年6月24日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】灰処理用重金属固定化剤およびそれを用いた灰の処理方法
(51)【国際特許分類】
B09B 3/00 20060101AFI20200706BHJP
A62D 3/33 20070101ALI20200706BHJP
【FI】
B09B3/00 304G
A62D3/33ZAB
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-510959(P2017-510959)
(86)(22)【出願日】2016年3月31日
(86)【国際出願番号】JP2016060846
(87)【国際公開番号】WO2016163310
(87)【国際公開日】20161013
【審査請求日】2018年12月7日
(31)【優先権主張番号】特願2015-78071(P2015-78071)
(32)【優先日】2015年4月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000213840
【氏名又は名称】朝日化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】村田 裕之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】上恐 敏史
(72)【発明者】
【氏名】坂根 真行
【審査官】
藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−078196(JP,A)
【文献】
特開2009−078197(JP,A)
【文献】
特開2009−078198(JP,A)
【文献】
特開2007−302986(JP,A)
【文献】
特開昭58−219273(JP,A)
【文献】
特開2000−96272(JP,A)
【文献】
特開2002−155279(JP,A)
【文献】
米国特許第5649895(US,A)
【文献】
中国特許出願公開第102965119(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 1/00− 5/00
B09C 1/00− 1/10
A62D 3/33
101/08
101/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸系固定化剤および鉄塩系固定化剤から成る重金属固定化剤と、金属腐食抑制剤とを含む灰処理用重金属固定化剤であって、該金属腐食抑制剤が、(A)第4級アンモニウム塩としてトリメチルベンジルアンモニウムクロライドと、(B)有機硫黄化合物としてチオ尿素化合物と、(C)ポリアミン化合物と、(D)アセチレンアルコールとを含み、前記(C)ポリアミン化合物が、ポリアミンスルホン、ポリアリルアミン、ポリジアリルアミン、芳香族ポリアミン、ポリビニルアミン、ポリアルキレンポリアミン、ポリメチレンイミン、ポリアミド、ポリアクリロニトリルおよびポリエチレンイミンから選択される1種または2種以上であり、前記(D)アセチレンアルコールが、2−プロピン−1−オール、3−メチル−1− ブチン−3−オール、アセチレングリコールおよびアセチレンチオールから選択される1種または2種以上であることを特徴とする灰処理用重金属固定化剤。
【請求項2】
前記ポリアミンスルホンは、下記式(1)で表される化合物であり、前記芳香族ポリアミンは、下記式(2)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の灰処理用重金属固定化剤。
【化5】
(式(1)中、aは2以上の整数であり、R
11,R
12は同一もしくは異なって水素原子またはメチル基を表し、Xはフッ素原子、塩素原子、臭素原子もしくはヨウ素原子を表す。)
【化6】
[式(2)中、bは2以上の整数を表す。]
【請求項3】
請求項1または2のいずれか1項に記載の灰処理用重金属固定化剤を、重金属含有灰に添加することを特徴とする灰の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重金属固定化剤およびそれを用いた灰の処理方法に係り、特に、廃棄物焼却施設や発電プラントなどの焼却プラントから発生する焼却灰や、排ガスに同伴して排出され、除塵された飛灰(以下、これら焼却灰及び飛灰を「重金属含有灰」と記載する)を処理して、重金属の溶出を防止するための灰処理用重金属固定化剤であって、この重金属固定処理のための処理設備の腐食劣化を防止して、その寿命の延長とメンテナンス費用の軽減を図る灰処理用重金属固定化剤と、この灰処理用重金属固定化剤を用いた灰の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、重金属の溶出防止方法としては、飛灰あるいは飛灰と焼却灰の混合物に、水酸化カルシウム源存在下、特定量の水溶性リン酸またはその塩を添加する処理法があり、鉛とカドミウムを固定化できることが示されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、特許文献2には、固体状廃棄物への浸透性を高くし、かつカルシウムを固定化することで有害重金属を固定化することができることが開示されている。
【0004】
さらに、重金属含有灰中の鉛やカドミウムなどの重金属をリン酸系重金属固定化剤と反応させてリン酸鉛、リン酸カドミウムなどの難溶性塩として安定に固定化すると共に、六価クロム,ヒ素,セレンを第一鉄化合物と反応させて安定に固定化することができることから、重金属固定化剤としては、第一鉄化合物とリン酸系重金属固定化剤とを併用するものが提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平4−61710号公報
【特許文献2】特開2006−218373号公報
【特許文献3】特開平10−128273号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記処理において用いられる正リン酸などのリン酸系重金属固定化剤および第一鉄化合物などの鉄塩系重金属固定化剤は酸性物質であるため、これらを重金属含有灰に添加する際の添加設備や重金属含有灰との混練機などの反応容器の金属部を腐食させ、設備の寿命を短命化したり、メンテナンス費用を高くする問題があった。
【0007】
即ち、例えば、混練機の内壁を構成する鉄またはステンレスの部分と前記金属固定化剤とが直接接触し、その部分を腐食させ、設備が短命化し、交換頻度が上がり、多額の修繕コストを要していた。また、重金属固定化剤と接触するタンク、ポンプの注入ノズルなどの薬剤注入設備についても同様の問題があった。
【0008】
特に、重金属固定化剤として鉄塩系固定化剤とリン酸系固定化剤を併用する場合、腐食挙動も複雑になり、従来の腐食抑制剤の配合では、満足できる効果が得られなかった。
【0009】
本発明は、重金属固定化剤として鉄塩系固定化剤とリン酸系固定化剤を併用した灰処理用重金属固定化剤であって、重金属含有灰に添加して重金属の固定処理を行う際の薬剤添加設備や混練機などの反応容器の金属部の腐食を防止して、処理設備の寿命の延長、メンテナンス費用の軽減を図ることができる灰処理用重金属固定化剤、および該灰処理用重金属固定化剤を用いた灰の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、リン酸系固定化剤および鉄塩系固定化剤から成る重金属固定化剤と、金属腐食抑制剤とを含む灰処理用重金属固定化剤であって、該金属腐食抑制剤が、(A)第4級アンモニウム塩
としてトリメチルベンジルアンモニウムクロライドと、(B)有機硫黄化合物と
してチオ尿素化合物と、(C)ポリアミン化合物と、(D)アセチレンアルコールとを含
み、前記(C)ポリアミン化合物が、ポリアミンスルホン、ポリアリルアミン、ポリジアリルアミン、芳香族ポリアミン、ポリビニルアミン、ポリアルキレンポリアミン、ポリメチレンイミン、ポリアミド、ポリアクリロニトリルおよびポリエチレンイミンから選択される1種または2種以上であり、前記(D)アセチレンアルコールが、2−プロピン−1−オール、3−メチル−1− ブチン−3−オール、アセチレングリコールおよびアセチレンチオールから選択される1種または2種以上であることを特徴とする灰処理用重金属固定化剤である。
【0017】
また本発明の灰処理用重金属固定化剤において、前記ポリアミンスルホンは、下記式(1)で表される化合物であり、
前記芳香族ポリアミンは、下記式(2)で表される化合物であることを特徴とする。
【化1】
[式(1)中、aは2以上の整数であり、R
11,R
12は同一もしくは異なって水素原子またはメチル基を表し、Xはフッ素原子、塩素原子、臭素原子もしくはヨウ素原子を表す。]
【化2】
[式(2)中、bは2以上の整数を表す。]
【0019】
また本発明は、前記灰処理用重金属固定化剤を、重金属含有灰に添加することを特徴とする灰の処理方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、リン酸系固定化剤および鉄塩系固定化剤から成る重金属固定化剤を用いた重金属含有灰の重金属固定処理において、特定の金属腐食抑制剤を組合せ併用することにより、リン酸系固定化剤および鉄塩系固定化剤による金属腐食を抑制して、処理設備の寿命の延長、メンテナンス費用の軽減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、重金属固定化剤としてリン酸系固定化剤および鉄塩系固定化剤を併用し、これに特定の金属腐食抑制剤を加えて用いることにより、目的が達成できることを見出し、本発明を完成させた。以下に本発明の灰処理用重金属固定化剤、および該灰処理用重金属固定化剤を用いた灰の処理方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0022】
[灰処理用重金属固定化剤]
本発明の灰処理用重金属固定化剤は重金属含有灰に添加することによって、重金属含有灰からの重金属の溶出を防止する(重金属を固定化する)ためのものであり、リン酸系固定化剤および鉄塩系固定化剤から成る重金属固定化剤と、金属の腐食抑制剤とを含む。そして、本発明の灰処理用重金属固定化剤において、金属の腐食抑制剤は、(A)第4級アンモニウム塩と、(B)有機硫黄化合物と、(C)ポリアミン化合物と、(D)アセチレンアルコールとを含む。
【0023】
本発明で重金属固定化剤として用いるリン酸系固定化剤としては、リン酸やリン酸塩が用いられ、このうち、リン酸としては正リン酸や次亜リン酸、メタ亜リン酸、ピロ亜リン酸、正亜リン酸、次リン酸、メタリン酸、ピロリン酸、三リン酸、縮合リン酸が挙げられ、リン酸塩としては、これらのリン酸の塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、第1リン酸塩、第2リン酸塩が挙げられる。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0024】
これらの中で特に好ましくは、正リン酸(H
3PO
4)、リン酸二水素一ナトリウム(NaH
2PO
4)、リン酸一水素二ナトリウム(Na
2HPO
4)、縮合リン酸等を好適に使用することができる。
【0025】
また本発明で重金属固定化剤として併用する鉄塩系固定化剤としては、塩化第一鉄、硫酸第一鉄等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。これらの鉄塩系固定化剤のうち、特に重金属の固定効果の面からは、塩化第一鉄、硫酸第一鉄が好ましく、とりわけ塩化第一鉄が好ましい。
【0026】
このリン酸系固定化剤と鉄塩系固定化剤との、重金属固定化剤としての配合割合は、用いる処理すべき灰の種類によっても異なるが、リン酸系固定化剤100重量部に対し鉄塩系固定化剤が50〜90重量部、特に70〜90重量部とすることが好ましい。
【0027】
鉄塩系固定化剤の割合がこの下限よりも少ないと、十分な重金属の固定効果を得ることができず、上限より多いと薬剤コストが高騰するため好ましくない。
【0028】
本発明において、リン酸系固定化剤および鉄塩系固定化剤からなる重金属固定化剤に加えて用いる金属の腐食抑制剤(以下、「金属腐食抑制剤」)は、(A)第4級アンモニウム塩と、(B)有機硫黄化合物と、(C)ポリアミン化合物と、(D)アセチレンアルコールとを含む。
【0029】
(A)第4級アンモニウム塩としては、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、1,8−ビス(1−ヒドロキシ−1−ベンジルイミダゾリウムクロライド)−2,2’オクタン、2−ウンデシル−1−ヒドロキシアルキル−1−ベンジルイミダゾリウムクロライド、アルキルピコリニウムクロライド、アルキルピリジニウムクロライド、N−(P−クロロベンジル)−ピコリニウムクロライド、アルキルピコリニウムブロマイド、ベンジルピリジニウムクロライド、ベンジルピコリニウムクロライド、N−ヒドロキシエチル−ピリジニウムクロライド、N−ヒドロキシエチル−ピコリニウムクロライド、N−(P−ラウリルベンジル)−ピリジニウムクロライド、N−カルボキシメチル−ピリジニウムクロライド、N−カルボキシメチル−ピコリニウムクロライド、N−ヒドロキシエトキシエチル−ピリジニウムクロライド、N−ヒドロキシエチルエトキシエチル−ピコリニウムクロライド、N−アリル−ピリジニウムクロライド、N−アリル−ピコリニウムクロライド、ドデシルベンジル−4−ピコリニウムクロライド、1−ヒドロキシ−1−エチル−2−ステアリルイミダゾリウムエトサルフェート、1−ヒドロキシ−1−エチル−2−ステアリルイミダゾリウムクロライド、1−ヒドロキシ−1−エチル−2−ステアリルイミダゾリウムブロマイド、1−ヒドロキシ−1−エチル−2−ステアリルイミダゾリウムアイオダイド、1−ヒドロキシ−1−エチル−2−ステアリルイミダゾリウムフルオライド、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムエトサルフェート、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムブロマイド、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムアイオダイド、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムフルオライド、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾリウムエトサルフェート、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾリウムクロライド、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾリウムブロマイド、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾリウムアイオダイド、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾリウムフルオライド、2−ウンデシル−1−ヒドロキシエチル−1−ベンジルイミダゾリウムエトサルフェート、2−ウンデシル−1−ヒドロキシエチル−1−ベンジルイミダゾリウムクロライド、2−ウンデシル−1−ヒドロキシエチル−1−ベンジルイミダゾリウムブロマイド、2−ウンデシル−1−ヒドロキシエチル−1−ベンジルイミダゾリウムアイオダイド、2−ウンデシル−1−ヒドロキシエチル−1−ベンジルイミダゾリウムフルオライド、2−アビエチル−1−ヒドロキシエチル−1−ベンジルイミダゾリウムエトサルフェート、2−アビエチル−1−ヒドロキシエチル−1−ベンジルイミダゾリウムクロライド、2−アビエチル−1−ヒドロキシエチル−1−ベンジルイミダゾリウムブロマイド、2−アビエチル−1−ヒドロキシエチル−1−ベンジルイミダゾリウムアイオダイド、2−アビエチル−1−ヒドロキシエチル−1−ベンジルイミダゾリウムフルオライド、1,8−ビス(1−ヒドロキシ−1−ベンジルイミダゾリウムエトサルフェート)−2,2’オクタン、1,8−ビス(1−ヒドロキシ−1−ベンジルイミダゾリウムクロライド)−2,2’オクタン、1,8−ビス(1−ヒドロキシ−1−ベンジルイミダゾリウムブロマイド)−2,2’オクタン、1,8−ビス(1−ヒドロキシ−1−ベンジルイミダゾリウムアイオダイド)−2,2’オクタン、1,8−ビス(1−ヒドロキシ−1−ベンジルイミダゾリウムフルオライド)−2,2’オクタン、アルキルキノリニウムクロライド、アルキルキノリニウムブロマイド、アルキルイソキノリニウムクロライド、アルキルイソキノリニウムブロマイドを挙げることができる。
【0030】
これらの中で特に、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、1,8−ビス(1−ヒドロキシ−1−ベンジルイミダゾリウムクロライド)−2,2’オクタンおよび2−ウンデシル−1−ヒドロキシアルキル−1−ベンジルイミダゾリウムクロライドから選択される1種または2種以上であることが好ましい。
【0031】
(B)有機硫黄化合物としては、チオ尿素、エチレンチオ尿素、ジエチルチオ尿素、ジブチルチオ尿素、フェニルチオ尿素、トリルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、S−メチルチオ尿素、N−メチルチオ尿素、ジメチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、メチルイソチオ尿素、二酸化チオ尿素、グアニルチオ尿素、ベンジルイソチオ尿素、ジイソブチルチオ尿素などのチオ尿素化合物、その他の有機硫黄化合物として、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリコール酸、チオグリコール酸アンモニウム、チオグリコール酸−2−エチルヘキシル、チオグリコール酸、チオグリセロール、チオ酢酸、チオグリコール、3,3−チオジプロピオン酸、チオフェノール、ベンジルメルカプタン、チオ安息香酸、チオサリチル酸、2−アミノチオフェノール、2−メルカプトイミダゾリン、2−メルカプトエタノール、メルカプトプロピオン酸、β−メルカプトプロピオン酸、β−メルカプトプロピオン酸−3−メトキシブチル、β−チオプロピロール、β−メルカプトプロピオン酸−2−エチルヘキシル、2−メルカプトベンゾチアゾール、トリグリコールジメルカプタン、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート、2,4,6−トリメルカプト−S−トリアジン、ペンタエリス
リトールテトラキスチオグリコレート、3,3−ジチオジプロピオン酸、2,2−ジチオエタノール、エチレングリコールジチオグリコレート、チオジグリコール、チオジグリコール酸、ジチオジグリコール酸ジアンモニウム、チオアセトアミド、イソチ
オシアン酸アミド、P−トルエンスルホン酸ナトリウム、
グリオキザール重亜硫酸ナトリウム、チオ乳酸、チオリンゴ酸、2−メルカプトブチル酸、チオシアン酸ベンジル、ジメチルスル
ホキシド、ジエチルチオカルバミン酸ナトリウム、P−ジエチルチオカルバミン酸ナトリウム、P−トルエンスルホンヒドラジン、メタンスルホン酸、ブタンスルフィン酸、ベン
ゼンスルフィン酸、トルエンスルフィン酸、ピリジンスルフィン
酸、ベンゼンスルフィン酸アンモニウム、トルエンスルフィン酸アンモニウム、ベンゼンスルフィン酸エチル、塩化ベンゼンスルフィン酸フィニル、N−メチルベンゼンスルフィニルアミド、ブタンスルフェニルクロライド、塩化ベンゼンスルフェニル、ピリジンスルフェニルクロライド、ブタンジスルホキシド、ベンゼンスル
ホキシド、ピリジンスル
ホキシド、ブタンジスルホン、ジフェニルスルホン、ジビリジンスルホン、ベンゼンスルフィン酸、1−チオグリセロールなどを挙げることができる。
【0032】
これらの中で特に、チオ尿素、エチレンチオ尿素、ジエチルチオ尿素、ジブチルチオ尿素、フェニルチオ尿素、トリルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、S−メチルチオ尿素、N−メチルチオ尿素、ジメチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、メチルイソチオ尿素、二酸化チオ尿素、グアニルチオ尿素、ベンジルイソチオ尿素、ジイソブチルチオ尿素などのチオ尿素化合物が好ましい。
【0033】
(C)ポリアミン化合物としては、ポリアミンスルホン、ポリアリルアミン、ポリジアリルアミン、芳香族ポリアミン、ポリビニルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミン、などのポリアルキレンポリアミン、ポリメチレンイミン、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンイミンを挙げることができる。これらの中で特に好ましいのはポリアミンスルホン、ポリエチレンイミンである。
【0034】
ここで、(C)ポリアミン化合物としてのポリアミンスルホンは、下記式(1)で表される化合物であり、芳香族ポリアミンは、下記式(2)で表される化合物である。
前記芳香族ポリアミンとしては、式(2)で示される化合物であって、bが2〜12である化合物が好ましい。
【0035】
【化3】
[式(1)中、aは2以上の整数であり、R
11,R
12は同一もしくは異なって水素原子またはメチル基を表し、Xはフッ素原子、塩素原子、臭素原子もしくはヨウ素原子を表す。]
【0036】
【化4】
[式(2)中、bは2以上の整数を表す。]
【0037】
なお、上記式(1)で表されるポリアミンスルホンは、式(1)において、Xとしては塩素原子が好ましく、R
11,R
12としては水素原子が好ましい。
【0038】
(D)アセチレンアルコールとしては、4−(3−アミノフェニル)−2−メチル−3−ブチン−2−オール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−2−ブチン、2−ブチン−1−オール、3−ブチン−1−オール、3−ブチン−2−オール、2−デシン−1−オール、3−デシン−1−オール、9−デシン−1−オール、1,4−ジアセトキシ−2−ブチン、4−ジエチルアミノ−2−ブチン−1−オール、3,6−ジメチル−1−ヘプチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3,4−ジメチル−1−ペンチン−3−オール、1,1−ジフェニル−2−プロピン−1−オール、3−エチル−1−ヘプチン−3−オール、エチル−1−オクチン−3−オール、3−エチル−1−ペンチン−3−オール、1−ヘプチン−3−オール、2−ヘプチン−1−オール、3−ヘプチン−1−オール、4−ヘプチン−2−オール、5−ヘプチン−3−オール、6−ヘプチン−1−オール、1−ヘキシン−3−オール、2−ヘキシン−1−オール、3−ヘキシン−1−オール、5−ヘキシン−1−オール、5−ヘキシン−3−オール、2−メチル−3−ブチン−2−オール、5−メチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、3−メチル−1−ペンテン−4−イン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、2−メチル−4−フェニル−3−ブチン−2−オール、3−ノニン−1−オール、1−オクチン−3−オール、3−オクチン−1−オール、1−ペンチン−3−オール、2−ペンチン−1−オール、3−ペンチン−1−オール、4−ペンチン−1−オール、4−ペンチン−2−オール、5−フェニル−4−ペンチン−1−オール、1−フェニル−2−プロピン−1−オール、3−フェニル−2−プロピン−1−オール、3−フェニル−2−プロピン−1−オール、2−プロピン−1−オール、2,2,8,8−テトラメチル−3,6−ノナジイン−5−オール、4−トリメチルシリル−3−ブチン−2−オール、3−トリメチルシリル−2−プロピン−1−オール、1,1,3−トリフェニル−2−プロピン−1−オール、10−ウンデシン−1−オールなど、アセチレングリコールである2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオール、3−ヘキシン−2,5−ジオールなど、およびアセチレンチオールを挙げることができる。
【0039】
これらの中で特に好ましいのは、3−メチル−1−ブチン−3−オール、2−プロピン−1−オール、アセチレングリコールおよびアセチレンチオールから選択される1種または2種以上である。
【0040】
これら(A)第4級アンモニウム塩、(B)有機硫黄化合物、(C)ポリアミン化合物および(D)アセチレンアルコールからなる金属腐食抑制剤の配合割合は、金属腐食抑制剤を含む全灰処理用重金属固定化剤100重量部に対し、0.1〜10重量部が好ましい。金属腐食抑制剤の配合割合がこの下限よりも少ないと、十分な腐食抑制効果を得ることができず、この上限よりも多くても腐食抑制効果は飽和し、また、薬剤コストの高騰を招き、好ましくない。
【0041】
また(A)第4級アンモニウム塩、(B)有機硫黄化合物、(C)ポリアミン化合物および(D)アセチレンアルコールそれぞれの配合割合は、全灰処理用重金属固定化剤100重量部に対し、(A)第4級アンモニウム塩は0.02〜1重量部、(B)有機硫黄化合物は0.02〜1重量部、(C)ポリアミン化合物は0.02〜1重量部、(D)アセチレンアルコールは0.01〜0.5重量部とするのが好ましい。この範囲からはずれると腐食抑制の効果が減少するので好ましくない。
【0042】
本発明の灰処理用重金属固定化剤は、リン酸系固定化剤と鉄塩系固定化剤と金属腐食抑制剤と、更に必要に応じて配合されるその他の成分が予め混合されて一剤化されたものであっても良く、各々別々に貯留されて現場にて混合使用されるものであっても良い。
【0043】
ただし、金属腐食抑制剤がリン酸系固定化剤および鉄塩系固定化剤とは別に反応容器の金属部などに塗布されて使用されることは好ましくなく、リン酸系固定化剤および鉄塩系固定化剤と金属腐食抑制剤とは、混合状態で薬注されることが好ましい。これは、金属腐食抑制剤が予め金属部に塗布されても、重金属含有灰との摩擦等で塗布された金属腐食抑制剤が剥れ落ち、腐食抑制効果を得ることができなくなるためである。
【0044】
[灰の処理方法]
本発明の灰の処理方法は、上述のような本発明の灰処理用重金属固定化剤を、重金属含有灰に添加することにより、重金属含有灰からの重金属の溶出を防止するものである。
【0045】
重金属含有灰に対する本発明の灰処理用重金属固定化剤の添加量は、重金属含有灰の重金属量や含有される重金属の種類、用いる灰処理用重金属固定化剤の薬剤や配合によっても異なるが、通常重金属含有灰に対する添加量として0.1〜6.0重量%とすることが好ましい。これよりも少ない添加量では十分な重金属固定効果を得ることができず、多くてもそれ以上の効果の向上は望めず、従に薬剤コストが嵩み好ましくない。
【0046】
通常、本発明の灰処理用重金属固定化剤は、水と共に灰処理用重金属固定化剤と混練される。水の使用量には特に制限はなく、取り扱い性、作業性に基いて決定されるが、通常重金属含有灰に対して10〜40重量%程度である。
【0047】
本発明の灰処理用重金属固定化剤は、特に、重金属固定化剤と金属腐食抑制剤とを含む、有効成分濃度10〜40重量%程度の水溶液として重金属含有灰に添加混練することにより、簡便な操作で重金属含有灰を処理することができる。
【実施例】
【0048】
以下に実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0049】
なお、以下において用いた薬剤とその略号は次のとおりである。
<(A)第4級アンモニウム塩>
A−1:トリメチルベンジルアンモニウムクロライド
A−2:1,8−ビス(1−ヒドロキシ-1−ベンジルイミダジリウムクロライド)
A−3:2−ウンデシル−1−ヒドロキシアルキル−1−ベンジルイミダゾリウムクロライド
<(B)有機硫黄化合物>
B−1:ジエチルチオ尿素
B−2:トリメチルチオ尿素
B−3:ジブチルチオ尿素
B−4:エチレンチオ尿素
B−5:S−メチルチオ尿素
B−6:N−メチルチオ尿素
B−7:ジメチルチオ尿素
B−8:チオ尿素
B−9:フェニルチオ尿素
B−10:トリルチオ尿素
B−11:テトラメチルチオ尿素
B−12:メチルイソチオ尿素
B−13:二酸化チオ尿素
B−14:グアニルチオ尿素
B−15:ベンジルイソチオ尿素
B−16:ジイソブチルチオ尿素な
<(C)ポリアミン化合物>
C−1:式(1)で表されるポリアミンスルホン
(式(1)においてa=25,R
11=R
12=水素原子、X=塩素原子:重量平均分子量5000)
C−2:ポリエチレンイミン(重量平均分子量1800)
<(D)アセチレンアルコール>
D−1:2−プロピン−1−オール
D−2:3−メチル−1−ブチン−3−オール
【0050】
[腐食試験]
焼却プラントにおける添加設備、反応器に用いられている金属として、SS400、SUS304を用いて、腐食抑制効果の確認を行った。
【0051】
鉄塩系固定化剤水溶液(固形分濃度37%)160gとリン酸系固定化剤水溶液(固形分濃度75%)40gの混合液に焼却プラントから排出される飛灰10gを加え、表1,2の化合物配合例の金属腐食抑制剤成分をさらに配合した試験溶液を60℃に保ちこの試験液溶液にSS400、SUS304の各試験片を2時間浸漬したときの腐食速度を下記の計算式により計算し、結果を表3に示した。
【0052】
【数1】
【0053】
ここで、目標とする腐食速度(mdd)は、SS400の試験片に対しては2100以下、SUS304の試験片に対しては1100以下である。
【0054】
[重金属溶出試験]
表1,2に示す配合の鉄塩系固定化剤およびリン酸系固定化剤と、(A)第4級アンモニウム塩、(B)有機硫黄化合物、(C)ポリアミン化合物、および(D)アセチレンアルコールの金属腐食抑制剤とからなる灰処理用重金属固定化剤を、飛灰に対して1.4重量%となるように添加すると共に、飛灰に対して25重量%の水を添加して混練した。
【0055】
得られた処理灰について、環境庁告示第13号で定められた溶出試験を行い、溶出液中の重金属(Cr
6+:六価クロム)濃度を分析した。溶出試験結果を表3に示した。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
[試験結果]
表1〜3に示す試験結果から明らかなように、鉄塩系固定化剤およびリン酸系固定化剤に、(A)第4級アンモニウム塩と(B)有機硫黄化合物と(C)ポリアミン化合物と(D)アセチレンアルコールとが配合された、実施例1〜35の灰処理用重金属固定化剤は、高い腐食抑制効果が得られる。
【0060】
一方、金属腐食抑制剤が配合されていない比較例1の灰処理用重金属固定化剤は、大きな腐食が生じ、また、(A)第4級アンモニウム塩、(B)有機硫黄化合物、(C)ポリアミン化合物、または(D)アセチレンアルコールだけが添加された比較例2〜5の灰処理用重金属固定化剤は、十分な腐食抑制効果を得ることができない。
【0061】
また、(A)第4級アンモニウム塩、(B)有機硫黄化合物、(C)ポリアミン化合物、(D)アセチレンアルコールのうち、3つの成分が添加された比較例6〜9の灰処理用重金属固定化剤は、ある程度の腐食抑制効果は認められるが、目標とする腐食速度(mdd)を得ることができない。
【0062】
また、(A)第4級アンモニウム塩、(B)有機硫黄化合物、(C)ポリアミン化合物、(D)アセチレンアルコールのうち、(A)第4級アンモニウム塩、(B)有機硫黄化合物、(C)ポリアミン化合物の3つの成分が添加された比較例6の灰処理用重金属固定化剤に対して、前記3つの成分の配合量を2倍にした比較例10の灰処理用重金属固定化剤は、配合量が2倍であるにもかかわらず、目標とする腐食速度(mdd)を得ることができない。
【0063】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形態で実施できる。したがって、前述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、本発明の範囲は特許請求の範囲に示すものであって、明細書本文には何ら拘束されない。さらに、特許請求の範囲に属する変形や変更は全て本発明の範囲内のものである。