特許第6723932号(P6723932)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6723932
(24)【登録日】2020年6月26日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/00 20060101AFI20200706BHJP
   C08K 3/32 20060101ALI20200706BHJP
   C08K 5/3492 20060101ALI20200706BHJP
   C08K 5/3462 20060101ALI20200706BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20200706BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20200706BHJP
【FI】
   C08L23/00
   C08K3/32
   C08K5/3492
   C08K5/3462
   C08K7/14
   C08K3/22
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-573275(P2016-573275)
(86)(22)【出願日】2016年1月21日
(86)【国際出願番号】JP2016051741
(87)【国際公開番号】WO2016125597
(87)【国際公開日】20160811
【審査請求日】2018年11月2日
(31)【優先権主張番号】特願2015-21546(P2015-21546)
(32)【優先日】2015年2月5日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 辰也
(72)【発明者】
【氏名】倪 陽
(72)【発明者】
【氏名】浅井 佳
(72)【発明者】
【氏名】米澤 豊
(72)【発明者】
【氏名】石川 慎一
【審査官】 三原 健治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−088970(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/097967(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/084725(WO,A1)
【文献】 特開2007−063346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、下記(A)成分を10〜60質量部、下記(B)成分を15〜90質量部、下記(C)成分を10〜140質量部、下記(D)成分を0.01〜7.5質量部含有する難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物であって、
難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物中の(C)成分の含有量が、29.6質量%〜40質量%である、難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物。
(A)成分:オルトリン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミンの群から、1種以上選択されるメラミン塩
(B)成分:オルトリン酸ピペラジン、ピロリン酸ピペラジン、ポリリン酸ピペラジンの群から、1種以上選択されるピペラジン塩
(C)成分:ガラス繊維のチョップドストランド(ただしポリオレフィン系樹脂が含浸されているものを除く。)
(D)成分:酸化亜鉛
【請求項2】
ポリオレフィン系樹脂は、230℃におけるメルトフローレートが8.0〜60g/10minである、請求項1に記載された難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物から得られる成形体。
【請求項4】
厚さ1.6mm以下である請求項3に記載された成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性に優れたポリオレフィン系樹脂組成物に関し、特に難燃性の規格であるUL規格のUL94 5VAに適合する難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン系樹脂は、成形加工性、力学的特性及び低比重等に優れているという利点があり、安価な汎用樹脂として、その成形品は機械、電気・電子機器、OA機器、自動車内外装材、電気自動車用途等に広く使用されている。これらの製品のうち、電気・電子機器やOA機器等に関して、特にこれらのハウジング(枠、筐体、外装、カバー等)や部品に使用される場合、高い難燃性が要求されている。
【0003】
具体的には、アンダーライターズ ラボラトリー社(Underwritters Laboratories)のUL規格を満たすことが求められており、大型の稼働型機器や設置型機器、高電圧を使用する機器等を中心に、近年、特にUL94 5VAの規格を満たすことが求められている。
【0004】
一方、特許文献1には、ポリオレフィン系樹脂に対し難燃性を付与するために(ポリ)リン酸塩系の難燃剤とドリップ防止剤のポリテトラフルオロエチレンを併用することが提案されている。しかしながら、この場合、充分な難燃性を発揮するためには、多量の難燃剤を使用しなければならず、またフッ素系のドリップ防止剤を使用するため樹脂本来の物性を損なう恐れがあった。またフッ素を含むため、環境や生体への影響を考慮したノンハロゲンという観点からも改善が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】US2003−88000
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の第1の目的は、優れた難燃性を有する、特にUL94 5VAの規格を満足する難燃性を有するポリオレフィン系樹脂組成物を提供することにある。
また本発明の第2の目的は、優れた難燃性、特にUL94 5VAの規格を満足する成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、下記(A)成分を10〜60質量部、下記(B)成分を15〜90質量部、下記(C)成分を10〜140質量部含有する難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物を提供するものである。
(A)成分:オルトリン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミンの群から、1種以上選択されるメラミン塩
(B)成分:オルトリン酸ピペラジン、ピロリン酸ピペラジン、ポリリン酸ピペラジンの群から、1種以上選択されるピペラジン塩
(C)成分:ガラス繊維
【0008】
また本発明の前記難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物は、更にポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、(D)成分として酸化亜鉛を0.01〜7.5質量部含有することが好ましい。
【0009】
また本発明は、前記難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物の成形体を提供するものである。
【0010】
また本発明は、厚さ1.6mm以下であることを特徴とする前記成形体を提供するものであり、この成形体は、UL94 5VAの規格を満足する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、優れた難燃性を有する難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物を提供することができる。特に、UL94 5VAの規格を満足する難燃性を有するポリオレフィン系樹脂組成物を提供することができる。また本発明によれば、難燃性を有した成形体、特にUL94 5VAの規格を満足する成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、難燃性ポリオレフィン系組成物に係るものである。本発明において、難燃性とは、物質が着火しにくく、また着火して燃焼が持続してもその速度が非常に遅かったり、その後、自己消火したりする性質であること、好ましくはUL94 5VAの規格を満足することを意味する。またポリオレフィン系組成物とは、ポリオレフィンホモポリマー、ポリオレフィンコポリマー等のポリオレフィンの1種以上を含有する組成物を意味する。
先ず本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物に用いられるポリオレフィン系樹脂について説明する。
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、ヘミアイソタクチックポリプロピレン、ポリブテン、シクロオレフィンポリマー、ステレオブロックポリプロピレン、ポリ−3−メチル−1−ブテン、ポリ−3−メチル−1−ペンテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン重合体、ブロックコポリマーポリプロピレン、ランダムコポリマーポリプロピレン等のエチレンとプロピレンのブロック又はランダム共重合体、エチレン以外のα−オレフィンとプロピレンのブロック又はランダム共重合体、インパクトコポリマーポリプロピレン、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のα−オレフィン共重合体、マレイン酸変性ポリプロピレン、さらにポリオレフィン系熱可塑性エラストマーが挙げられ、これらの2種以上の共重合体でもよい。これらのポリオレフィン系樹脂は2種以上を使用してもよい。
【0013】
本発明で使用するポリオレフィン系樹脂は、分子量、重合度、密度、軟化点、溶媒への不溶分の割合、立体規則性の程度、触媒残渣の有無、原料となるモノマーの種類や配合比率、重合触媒の種類(例えば、チーグラー触媒、メタロセン触媒等)等に関わらず、使用することができるが、加工性と難燃性の点から、230℃におけるメルトフローレート(MFR)が2.0〜80g/10min以上であるものが好ましく、8.0〜60g/10minのものがより好ましい。
【0014】
上記のポリオレフィン系樹脂としては、難燃性の点から、ホモポリプロピレン、ランダムコポリマーポリプロピレン、ブロックコポリマーポリプロピレン等のポリプロピレン樹脂が好ましい。
【0015】
ポリオレフィン系樹脂の含有量は、本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物中、難燃性と樹脂物性の点から、25質量%〜80質量%が好ましく、30質量%〜60質量%がより好ましく、35〜50質量%がさらにより好ましい。
【0016】
次に本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物に用いられる(A)成分について説明する。
本発明の(A)成分のメラミン塩は、オルトリン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミンの群から選択され、これらは単独でも混合物で使用されてもよい。これらの中でも難燃性の点からピロリン酸メラミンが好ましい。これらを混合物で使用する場合は、ピロリン酸メラミンの含有割合が高いほど好ましい。また、ピロリン酸メラミンの、ピロリン酸とメラミンの比は、モル比で1:2のものが好ましい。
【0017】
これらリン酸とメラミンとの塩は、それぞれ対応するリン酸又はリン酸塩とメラミンを反応させることによって得ることもできるが、本発明の(A)成分で使用されるメラミン塩は、オルトリン酸1メラミンを加熱縮合させて得られたピロリン酸メラミン又はポリリン酸メラミンが好ましく、特にピロリン酸メラミンが好ましい。
【0018】
(A)成分の含有量は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、10〜60質量部であり、難燃性の点から、好ましくは20〜50質量部、より好ましくは25〜45質量部、さらにより好ましくは30〜40質量部である。
【0019】
次に本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物に用いられる(B)成分について説明する。
本発明の(B)成分のピペラジン塩は、オルトリン酸ピペラジン、ピロリン酸ピペラジン、ポリリン酸ピペラジンの群から選択され、これらは単独でも混合物で使用されてもよい。これらの中でも難燃性の点から、ピロリン酸ピペラジンが好ましく、混合物で使用する場合は、ピロリン酸ピペラジンの含有割合が高いほど好ましい。また、ピロリン酸ピペラジンの、ピロリン酸とピペラジンの比は、モル比で1:1のものが好ましい。
【0020】
これらリン酸とピペラジンの塩は、それぞれ対応するリン酸又はリン酸塩とピペラジンを反応させることで得ることもできるが、本発明の(B)成分で使用されるピペラジン塩は、2オルトリン酸1ピペラジンを加熱縮合させて得られたピロリン酸ピペラジン又はポリリン酸ピペラジンが好ましく、特にピロリン酸ピペラジンが好ましい。
【0021】
(B)成分の含有量は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、15〜90質量部であり、難燃性の点から、好ましくは30〜75質量部、より好ましくは35〜60質量部、さらにより好ましくは40〜50質量部である。
【0022】
また、上記(A)成分と(B)成分との合計含有量は、難燃性の点から、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物中、10質量%〜50質量%が好ましく、15質量%〜45質量%がより好ましく、20質量%〜40質量%がさらにより好ましく、25〜35質量%が最も好ましい。10質量%未満では充分な難燃性を得られない場合があり、50質量%を超えると、樹脂の物性を損なう恐れがある。
【0023】
また、上記(A)成分と上記(B)成分との含有比率(質量基準)は、難燃性の点から、(A)/(B)=20/80〜50/50であることが好ましく、(A)/(B)=30/70〜50/50であることが更に好ましい。
【0024】
次に本発明の(C)成分について説明する。
本発明の(C)成分のガラス繊維は、市販のものが使用できる。
上記のガラス繊維は、ポリオレフィン系樹脂との濡れ性や接着性等を良好なものとするために、表面処理剤で処理されていてもよい。この表面処理剤としては、例えばシラン系、チタネート系、アルミニウム系、クロム系、ジルコニウム系、ボラン系カップリング剤等が挙げられるが、これらの中でも、シラン系カップリング剤及びチタネート系カップリング剤が好ましく、特にシラン系カップリング剤が好適である。このシラン系カップリング剤としては、例えばトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0025】
また上記のガラス繊維は、ガラス繊維を収束するため収束剤を使用されていてもよい。収束剤としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリウレタン樹脂,ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、澱粉、植物油等が挙げられる。
【0026】
本発明で使用されるガラス繊維は、単繊維を収束したチョップドストランドが、加工性と難燃性及びドリップ防止の点から好ましい。チョップドストランドのカット長は、加工性と難燃性の点から、1.0mm〜5.0mmが好ましく、2.0mm〜4.0mmがより好ましい。また単繊維の径は、加工性と難燃性の点から、8μm〜16μmが好ましく、10μm〜14μmがより好ましい。
【0027】
(C)成分の含有量は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、10〜140質量部であり、加工性、難燃性及びドリップ防止の点から、20〜100質量部が好ましく、30〜90質量部がより好ましく、40〜80質量部がさらにより好ましい。
また(C)成分の含有量は、難燃性の点から、難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物中、5質量%〜60質量%が好ましく、15質量%〜50質量%がより好ましく、20質量%〜40質量%がより好ましい。
【0028】
本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物は、さらに(D)成分として、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、酸化亜鉛を0.01〜7.5質量部含有することが好ましい。該酸化亜鉛は表面処理されていてもよい。
【0029】
上記の酸化亜鉛は市販品を使用することができ、例えば、酸化亜鉛1種(三井金属鉱業(株)製)、部分被膜型酸化亜鉛(三井金属鉱業(株)製)、ナノファイン50(平均粒径0.02μmの超微粒子酸化亜鉛:堺化学工業(株)製)、ナノファインK(平均粒径0.02μmの珪酸亜鉛被膜した超微粒子酸化亜鉛:堺化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0030】
また、(D)成分の酸化亜鉛の含有量は、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、難燃性の点から、0.01〜10質量部が好ましく、0.5〜10質量部が好ましく、1.0〜7.5質量部がより好ましい。
また、(D)成分を配合した場合の(A)成分と(B)成分と(D)成分の合計含有量は、難燃性の点で、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物中、10質量%〜50質量%が好ましく、15質量%〜45質量%がより好ましく、20質量%〜40質量%がさらにより好ましく、25〜35質量%がより好ましい。10質量%未満では充分な難燃性を得られない場合があり、50質量%を超えると、樹脂の物性を損なう恐れがある。
【0031】
本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物には、二次凝集の抑制や耐水性の改良のために、シリコーンオイルを含有してもよい。シリコーンオイルの例としては、ポリシロキサンの側鎖、末端がすべてメチル基であるジメチルシリコーンオイル、ポリシロキサンの側鎖の一部がフェニル基であるメチルフェニルシリコーンオイル、ポリシロキサンの側鎖の一部が水素であるメチルハイドロジェンシリコーンオイル等や、これらのコポリマーが挙げられ、またこれらの側鎖及び/又は末端の一部に有機基を導入した、アミン変性、エポキシ変性、脂環式エポキシ変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、メルカプト変性、ポリエーテル変性、長鎖アルキル変性、フロロアルキル変性、高級脂肪酸エステル変性、高級脂肪酸アミド変性、シラノール変性、ジオール変性、フェノール変性及び/又はアラルキル変性した変性シリコーンオイルを使用してもよい。
【0032】
上記シリコーンオイルの具体例をあげると、ジメチルシリコーンオイルとして、KF−96(信越化学(株)製)、KF−965(信越化学(株)製)、KF−968(信越化学(株)製)等が挙げられ、メチルハイドロジェンシリコーンオイル又はメチルハイドロジェンポリシロキサン構造を有するシリコーンオイルとして、KF−99(信越化学(株)製)、KF−9901(信越化学(株))、HMS−151(Gelest社製)、HMS−071(Gelest社製)、HMS−301(Gelest社製)、DMS−H21(Gelest社製)等が挙げられ、メチルフェニルシリコーンオイルの例としては、KF−50(信越化学(株)製)、KF−53(信越化学(株)製)、KF−54(信越化学(株)製)、KF−56(信越化学(株)製)等が挙げられ、エポキシ変性品としては、例えば、X−22−343(信越化学(株)製)、X−22−2000(信越化学(株)製)、KF−101(信越化学(株)製)、KF−102(信越化学(株)製)、KF−1001(信越化学(株)製)、カルボキシル変性品としては、例えば、X−22−3701E(信越化学(株)製)、カルビノール変性品としては、例えば、X−22−4039(信越化学(株)製)、X−22−4015(信越化学(株)製)、アミン変性品としては、例えば、KF−393(信越化学(株)製)等が挙げられる。
【0033】
また、本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物には、二次凝集の抑制や、耐水性、耐熱性を付与するためにシランカップリング剤を含有してもよい。シランカップリング剤としては、例えば、アルケニル基を有するシランカップリング剤として、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジメトキシシラン、オクテニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン等が挙げられ、アクリル基を有するシランカップリング剤として、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられ、メタクリル基を有するシランカップリング剤として、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシオクチルトリメトキシシラン等が挙げられ、エポキシ基を有するシランカップリング剤として、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシオクチルトリメトキシシラン等が挙げられ、アミノ基を有するシランカップリング剤として、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N’−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩等が挙げられ、イソシアヌレート基を有するシランカップリング剤として、トリス−(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートが挙げられ、メルカプト基を有するシランカップリング剤として、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等が挙げられ、ウレイド基を有するシランカップリング剤として、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられ、スルフィド基を有するシランカップリング剤として、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドが挙げられ、チオエステル基を有するシランカップリング剤として、3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシランが挙げられ、イソシアネート基を有するシランカップリング剤として、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0034】
これらシランカップリング剤の中でも、二次凝集の抑制や、耐水性、耐熱性の点から、エポキシ基を有するシランカップリング剤が好ましい。
【0035】
上記シランカップリング剤は、市販品が使用でき、その例を挙げると、ビニルトリメトキシシランとしては、信越化学工業(株)製のKBM−1003、モンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製のA−171、東レ・ダウコーニング(株)製のZ−6300、旭化成ワッカーシリコーン(株)製のGENIOSIL XL10、日美商事株式会社製のサイラエースS210等が挙げられ、ビニルトリエトキシシランとしては、信越化学工業(株)製のKBE−1003、モンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製のA−151、東レ・ダウコーニング(株)製のZ−6519、旭化成ワッカーシリコーン(株)製のGENIOSIL GF56、日美商事株式会社製のサイラエースS220等が挙げられ、ビニルトリアセトキシシランとしては、旭化成ワッカーシリコーン(株)製のGENIOSIL GF62が挙げられ、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シランとしては、モンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製のA−172が挙げられ、ビニルメチルジメトキシシランとしては、モンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製のA−2171、旭化成ワッカーシリコーン(株)製のGENIOSIL XL12等が挙げられ、オクテニルトリメトキシシランとしては、信越化学工業(株)製のKBM−1083が挙げられ、アリルトリメトキシシランとしては、東レ・ダウコーニング(株)製のZ−6825が挙げられ、p−スチリルトリメトキシシランとしては、信越化学工業(株)製のKBM−1403が挙げられ、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランとしては、KBM−5103が挙げられ、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランとしては、信越化学工業(株)製のKBM−502、東レ・ダウコーニング(株)製のZ−6033等が挙げられ、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランとしては、信越化学工業(株)製のKBM−503、モンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製のA−174、東レ・ダウコーニング(株)製のZ−6030、旭化成ワッカーシリコーン(株)製のGENIOSIL GF31、日美商事株式会社製のサイラエースS710等が挙げられ、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシランとしては、信越化学工業(株)製のKBE−502が挙げられ、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランとしては、信越化学工業(株)製のKBE−503、モンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製のY−9936が挙げられ、メタクリロキシオクチルトリメトキシシランとしては、信越化学工業(株)製のKBM−5803が挙げられ、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランとしては、信越化学工業(株)製のKBM−303、モンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製のA−186、東レ・ダウコーニング(株)製のZ−6043、日美商事株式会社製のサイラエースS530等が挙げられ、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランとしては、信越化学工業(株)製のKBM−402、東レ・ダウコーニング(株)製のZ−6044、日美商事株式会社製のサイラエースS520等が挙げられ、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランとしては、信越化学工業(株)製のKBM−403、モンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製のA−187、東レ・ダウコーニング(株)製のZ−6040、旭化成ワッカーシリコーン(株)製のGENIOSIL GF80、日美商事株式会社製のサイラエースS510等が挙げられ、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランとしては、信越化学工業(株)製のKBE−402が挙げられ、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランとしては、信越化学工業(株)製のKBE−403、モンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製のA−1871、旭化成ワッカーシリコーン(株)製のGENIOSIL GF82等が挙げられ、グリシドキシオクチルトリメトキシシランとしては、信越化学工業(株)製のKBM−4803が挙げられ、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランとしては、信越化学工業(株)製のKBM−602、モンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製のA−2120、旭化成ワッカーシリコーン(株)製のGENIOSIL GF−95、日美商事株式会社製のサイラエースS310等が挙げられ、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランとしては、信越化学工業(株)製のKBM−603、モンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製のA−1120、モンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製のA−1122、東レ・ダウコーニング(株)製のZ−6020、東レ・ダウコーニング(株)製のZ−6094、旭化成ワッカーシリコーン(株)製のGENIOSIL GF−91、日美商事株式会社製のサイラエースS320等が挙げられ、3−アミノプロピルトリメトキシシランとしては、信越化学工業(株)製のKBM−903、モンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製のA−1110、東レ・ダウコーニング(株)製のZ−6610、日美商事株式会社製のサイラエースS360等が挙げられ、3−アミノプロピルトリエトキシシランとしては、KBE−903、モンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製のA−1100、東レ・ダウコーニング(株)製のZ−6011、日美商事株式会社製のサイラエースS330等が挙げられ、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミンとしては、KBE−9103、日美商事株式会社製のサイラエースS340等が挙げられ、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランとしては、信越化学工業(株)製のKBM−573、モンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製のY−9669、東レ・ダウコーニング(株)製のZ−6883等が挙げられ、N,N’−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミンとしては、日美商事株式会社製のサイラエースXS1003が挙げられ、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩としては、信越化学工業(株)製のKBM−575、東レ・ダウコーニング(株)製のZ−6032、日美商事株式会社製のサイラエースS350等が挙げられ、トリス−(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートとしては、信越化学工業(株)製のKBM−9659が挙げられ、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランとしては、信越化学工業(株)製のKBM−802、東レ・ダウコーニング(株)製のZ−6852、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランとしては、信越化学工業(株)製のKBM−803、モンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製のA−189、東レ・ダウコーニング(株)製のZ−6062、日美商事株式会社製のサイラエースS810等が挙げられ、3−メルカプトプロピルトリエトキシシランとしては、モンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製のA−1891、東レ・ダウコーニング(株)製のZ−6911が挙げられ、3−ウレイドプロピルトリエトキシシランとしては、モンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製のA−1160が挙げられ、3−ウレイドプロピルトリアルコキシシランとしては、信越化学工業(株)製のKBE−585が挙げられ、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドとしては、信越化学工業(株)製のKBE−846が挙げられ、3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシランとしては、モンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製のA−LINK599が挙げられ、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランとしては、信越化学工業(株)製のKBE−9007、モンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製のA−1310等が挙げられ、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシランとしては、モンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製のY−5187、旭化成ワッカーシリコーン(株)製のGENIOSIL GF40等が挙げられる。
【0036】
また、本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物には、難燃性助剤として、多価アルコール化合物を含有してもよい。多価アルコール化合物は、複数のヒドロキシル基が結合している化合物であり、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール 、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(THEIC)、ポリエチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、マンニトール、マルチトール、ラクチトール、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、キシロース、スクロース(シュクロース)、トレハロース、イノシトール、フルクトース、マルトース、ラクトース等である。これら多価アルコール化合物のうち、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール等の、ペンタエリスリトール、ペンタエリスリトールの縮合物の群から選ばれる一種以上が好ましく、ジペンタエリスリトール、ペンタエリスリトールの縮合物が特に好ましく、ジペンタエリスリトールが最も好ましい。また、THEIC及びソルビトールも好適に使用できる。
【0037】
上記多価アルコール化合物を含有する場合の含有量は、難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物中の合成樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01〜10.0質量部であり、より好ましくは1.0〜7.0質量部、さらにより好ましくは1.5〜3.0質量部である。
【0038】
また、本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物には、難燃性向上のために、ビシクロリン酸エステルを含有してもよい。ビシクロリン酸エステルとしては、2,6,7−トリオキサ−1−ホスファビシクロ[2,2,2]オクタン−4−メタノール−1−オキシドが挙げられる。
【0039】
更に、本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物には、必要に応じて滑剤を配合することも好ましい。このような滑剤としては、流動パラフィン、天然パラフィン、マイクロワックス、合成パラフィン、低分子量ポリエチレン、ポリエチレンワックス等の純炭化水素系滑剤;ハロゲン化炭化水素系滑剤;高級脂肪酸、オキシ脂肪酸等の脂肪酸系滑剤;脂肪酸アミド、ビス脂肪酸アミド等の脂肪酸アミド系滑剤;脂肪酸の低級アルコールエステル、グリセリド等の脂肪酸の多価アルコールエステル、脂肪酸のポリグリコールエステル、脂肪酸の脂肪アルコールエステル(エステルワックス)等のエステル系滑剤;金属石鹸、脂肪アルコール、多価アルコール、ポリグリコール、ポリグリセロール、脂肪酸と多価アルコールの部分エステル、脂肪酸とポリグリコール、ポリグリセロールの部分エステル系の滑剤や、シリコーンオイル、鉱油等が挙げられる。
【0040】
これら滑剤の配合量は、難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物中のポリオレフィン系樹脂100質量部に対して0.01〜5質量部が好ましく、0.3〜2質量部がより好ましい。
本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて更に、ハロゲンを含有しない、有機又は無機系の難燃剤又は難燃助剤の一種以上を使用することができる。それら難燃剤・難燃助剤としては、トリアジン環含有化合物、金属水酸化物、リン酸エステル系難燃剤、縮合リン酸エステル系難燃剤、ホスフェート系難燃剤、無機リン系難燃剤、ジアルキルホスフィン酸塩、シリコーン系難燃剤、金属酸化物、ホウ酸化合物、膨張性黒鉛、その他の無機系難燃助剤、その他の有機系難燃剤等が挙げられる。
【0041】
上記トリアジン環含有化合物としては、例えば、メラミン、アンメリン、ベンズグアナミン、アセトグアナミン、フタロジグアナミン、メラミンシアヌレート、ブチレンジグアナミン、ノルボルネンジグアナミン、メチレンジグアナミン、エチレンジメラミン、トリメチレンジメラミン、テトラメチレンジメラミン、ヘキサメチレンジメラミン、1,3−ヘキシレンジメラミン等が挙げられる。
【0042】
上記金属水酸化物としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化亜鉛、キスマー5A(協和化学工業(株)製水酸化マグネシウムの商標)等が挙げられる。
【0043】
上記リン酸エステル系難燃剤の例としては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリスクロロエチルホスフェート、トリスジクロロプロピルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、トリスイソプロピルフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、t-ブチルフェニルジフェニルホスフェート、ビス-(t-ブチルフェニル)フェニルホスフェート、トリス-(t-ブチルフェニル)ホスフェート、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェート、ビス-(イソプロピルフェニル)ジフェニルホスフェート、トリス-(イソプロピルフェニル)ホスフェート等が挙げられる。
【0044】
上記縮合リン酸エステル系難燃剤の例としては、1,3−フェニレン ビス(ジフェニルホスフェート)、1,3−フェニレン ビス(ジキシレニルホスフェート)、ビスフェノールA ビス(ジフェニルホスフェート)等が挙げられる。
上記無機リン系難燃剤としては、赤リンが挙げられる。
上記ジアルキルホスフィン酸塩としては、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛等が挙げられる。
【0045】
上記その他の無機系難燃助剤としては、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、二酸化チタン、ハイドロタルサイト等の無機化合物、及びその表面処理品が挙げられる。その具体例としては、例えば、TIPAQUE R−680(石原産業(株)製酸化チタンの商標)、キョーワマグ150(協和化学工業(株)製酸化マグネシウムの商標)、DHT−4A(ハイドロタルサイト:協和化学工業(株)製)、アルカマイザー4(協和化学工業(株)製亜鉛変性ハイドロタルサイトの商標)等の種々の市販品を用いることができる。
【0046】
本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物は、必要に応じて、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、老化防止剤等を配合してもよい。
【0047】
上記フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ第三ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、ジステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、1,6−ヘキサメチレンビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド〕、4,4'−チオビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−第三ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−第三ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデンビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2,2'−エチリデンビス(4,6―ジ第三ブチルフェノール)、2,2'−エチリデンビス(4−第二ブチル−6−第三ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−第三ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−アクリロイルオキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェノール、ステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス〔3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸メチル〕メタン、チオジエチレングリコールビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサメチレンビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ビス〔3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、ビス〔2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェニル〕テレフタレート、1,3,5−トリス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、トリエチレングリコールビス〔(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート〕等が挙げられる。
これらフェノール系酸化防止剤の配合量は、難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物中のポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、0.001〜10質量部が好ましく、0.05〜5質量部がより好ましい。
【0048】
上記リン系酸化防止剤としては、例えば、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス〔2−第三ブチル−4−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニルチオ)−5−メチルフェニル〕ホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジ(デシル)モノフェニルホスファイト、ジ(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第三ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6−トリ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4'−n−ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、9,10−ジハイドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,2'−メチレンビス(4,6−第三ブチルフェニル)−2−エチルヘキシルホスファイト、2,2'−メチレンビス(4,6−第三ブチルフェニル)−オクタデシルホスファイト、2,2'−エチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)フルオロホスファイト、トリス(2−〔(2,4,8,10−テトラキス第三ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ〕エチル)アミン、2−エチル−2−ブチルプロピレングリコールと2,4,6−トリ第三ブチルフェノールのホスファイト、トリス(2,4−ジ−第三ブチルフェニル)ホスファイト等が挙げられる。
これらリン系酸化防止剤の配合量は、難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物中のポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、0.001〜10質量部が好ましく、0.05〜5質量部がより好ましい。
【0049】
上記チオエーテル系酸化防止剤としては、例えば、チオジプロピオン酸ジラウリル、チオジプロピオン酸ジミリスチル、チオジプロピオン酸ジステアリル等のジアルキルチオジプロピオネート類、及びペンタエリスリトールテトラ(β−アルキルチオプロピオン酸エステル類が挙げられる。
これらチオエーテル系酸化防止剤の配合量は、難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物中のポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、0.001〜10質量部が好ましく、0.05〜5質量部がより好ましい。
【0050】
上記紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、5,5'−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等の2−ヒドロキシベンゾフェノン類;2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ第三ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾ−ル、2−(2'−ヒドロキシ−3'−第三ブチル−5'−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾ−ル、2−(2'−ヒドロキシ−5'−第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2,2'−メチレンビス(4−第三オクチル−6−(ベンゾトリアゾリル)フェノール)、2−(2'−ヒドロキシ−3'−第三ブチル−5'−カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾール等の2−(2'−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ第三ブチルフェニル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ第三アミルフェニル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート類;2−エチル−2'−エトキシオキザニリド、2−エトキシ−4'−ドデシルオキザニリド等の置換オキザニリド類;エチル−α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート類;2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシ−5−メチルフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)−s−トリアジン等のトリアリールトリアジン類が挙げられる。
これら紫外線吸収剤の配合量は、難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物中のポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、0.001〜30質量部が好ましく、0.05〜10質量部がより好ましい。
【0051】
上記ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルステアレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,4,4−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノ−ル/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−モルホリノ−s−トリアジン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−第三オクチルアミノ−s−トリアジン重縮合物、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8−12−テトラアザドデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕アミノウンデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕アミノウンデカン等のヒンダードアミン化合物が挙げられる。
これらヒンダードアミン系光安定剤の配合量は、難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物中のポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、0.001〜30質量部が好ましく、0.05〜10質量部がより好ましい。
【0052】
上記老化防止剤としては、ナフチルアミン系、ジフェニルアミン系、p−フェニルジアミン系、キノリン系、ヒドロキノン誘導体、モノフェノール系、チオビスフェノール系、ヒンダートフェノール系、亜リン酸エステル系等が挙げられる。これらの老化防止剤の配合量は、難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物中のポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、0.001〜10質量部が好ましく、0.05〜5質量部が好ましい。
【0053】
本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意成分として、強化材を配合してもよい。この強化材としては、通常合成樹脂の強化に用いられる繊維状、板状、粒状、粉末状のものを用いることができる。具体的には、アスベスト繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、金属繊維、チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、マグネシウム系ウイスカー、珪素系ウイスカー、ワラステナイト、セピオライト、アスベスト、スラグ繊維、ゾノライト、エレスタダイト、石膏繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化硅素繊維及び硼素繊維等の無機繊維状強化材、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、再生セルロース繊維、アセテート繊維、ケナフ、ラミー、木綿、ジュート、麻、サイザル、亜麻、リネン、絹、マニラ麻、さとうきび、木材パルプ、紙屑、古紙及びウール等の有機繊維状強化材、ガラスフレーク、非膨潤性雲母、グラファイト、金属箔、セラミックビーズ、クレー、マイカ、セリサイト、ゼオライト、ベントナイト、ドロマイト、カオリン、微粉ケイ酸、長石粉、チタン酸カリウム、シラスバルーン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、二酸化チタン、ケイ酸アルミニウム、石膏、ノバキュライト、ドーソナイト及び白土等の板状や粒状の強化材が挙げられる。これらの強化材は、エチレン/酢酸ビニル共重合体等の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂で被覆又は集束処理されていてもよく、アミノシランやエポキシシラン等のカップリング剤等で処理されていてもよい。
【0054】
本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意成分として層状ケイ酸塩を配合してもよい。層状ケイ酸塩としては、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノントロナイト等のスメクタイト系粘土鉱物、バーミキュライト、ハロイサイト、膨潤性マイカ、タルク等が挙げられ、その層間に、有機カチオン、第4級アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオンがインターカレートされているものでもよい。
【0055】
本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意成分として、更に結晶核剤を配合してもよい。該結晶核剤としては一般にポリマーの結晶核剤として用いられるものを適宜用いることができ、本発明においては無機系結晶核剤及び有機系結晶核剤の何れも使用することができる。
【0056】
上記無機系結晶核剤の具体例としては、カオリナイト、合成マイカ、クレー、ゼオライト、グラファイト、カーボンブラック、酸化マグネシウム、酸化チタン、硫化カルシウム、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、酸化ネオジウム及びフェニルホスホネート等の金属塩を挙げることができる。これらの無機系結晶核剤は、組成物中での分散性を高めるために、有機物で修飾されていてもよい。
【0057】
上記有機系結晶核剤の具体例としては、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸カルシウム、安息香酸マグネシウム、安息香酸バリウム、テレフタル酸リチウム、テレフタル酸ナトリウム、テレフタル酸カリウム、シュウ酸カルシウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、ミリスチン酸カルシウム、オクタコサン酸ナトリウム、オクタコサン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウム、トルイル酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸カリウム、サリチル酸亜鉛、アルミニウムジベンゾエート、カリウムジベンゾエート、リチウムジベンゾエート、ナトリウムβ−ナフタレート、ナトリウムシクロヘキサンカルボキシレート等の有機カルボン酸金属塩、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、スルホイソフタル酸ナトリウム等の有機スルホン酸塩、ステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、パルチミン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、トリメシン酸トリス(t−ブチルアミド)等のカルボン酸アミド、ベンジリデンソルビトール及びその誘導体、ナトリウム−2,2'−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェート等のリン化合物金属塩、及び2,2−メチルビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウム等を挙げることができる。
【0058】
本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意成分として、可塑剤を配合してもよい。該可塑剤としては、一般にポリマーの可塑剤として用いられるものを適宜用いることができ、例えばポリエステル系可塑剤、グリセリン系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、ポリアルキレングリコール系可塑剤及びエポキシ系可塑剤等を挙げることができる。
【0059】
上記ポリエステル系可塑剤の具体例としては、アジピン酸、セバチン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ロジン等の酸成分と、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のジオール成分とからなるポリエステルや、ポリカプロラクトン等のヒドロキシカルボン酸からなるポリエステル等を挙げることができる。これらのポリエステルは、単官能カルボン酸若しくは単官能アルコールで末端が封鎖されていてもよく、またエポキシ化合物等で末端が封鎖されていてもよい。
【0060】
上記グリセリン系可塑剤の具体例としては、グリセリンモノアセトモノラウレート、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリンモノアセトモノステアレート、グリセリンジアセトモノオレート及びグリセリンモノアセトモノモンタネート等を挙げることができる。
【0061】
上記多価カルボン酸エステル系可塑剤の具体例としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジベンジル、フタル酸ブチルベンジル等のフタル酸エステル、トリメリット酸トリブチル、トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリヘキシル等のトリメリット酸エステル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸n−オクチル−n−デシル、アジピン酸メチルジグリコールブチルジグリコール、アジピン酸ベンジルメチルジグリコール、アジピン酸ベンジルブチルジグリコール等のアジピン酸エステル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル等のクエン酸エステル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル等のアゼライン酸エステル、セバシン酸ジブチル、及びセバシン酸ジ−2−エチルヘキシル等のセバシン酸エステル等を挙げることができる。
【0062】
上記ポリアルキレングリコール系可塑剤の具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド)ブロック及び/又はランダム共重合体、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノール類のエチレンオキシド付加重合体、ビスフェノール類のプロピレンオキシド付加重合体、ビスフェノール類のテトラヒドロフラン付加重合体等のポリアルキレングリコール、或いはその末端エポキシ変性化合物、末端エステル変性化合物、及び末端エーテル変性化合物等の、末端封鎖化合物等を挙げることができる。
【0063】
上記エポキシ系可塑剤とは、一般にはエポキシステアリン酸アルキルと大豆油とからなるエポキシトリグリセリド等を指すが、その他にも、主にビスフェノールAとエピクロロヒドリンを原料とするような、いわゆるエポキシ樹脂も使用することができる。
【0064】
その他の可塑剤の具体例としては、ネオペンチルグリコールジベンゾエート、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート等の脂肪族ポリオールの安息香酸エステル、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド、オレイン酸ブチル等の脂肪族カルボン酸エステル、アセチルリシノール酸メチル、アセチルリシノール酸ブチル等のオキシ酸エステル、ペンタエリスリトール、各種ソルビトール、ポリアクリル酸エステル及びパラフィン類等を挙げることができる。
本発明において可塑剤を使用する場合は、1種のみを使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0065】
本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意成分として、更にアクリル系加工助剤を配合してもよい。アクリル系加工助剤は、(メタ)アクリル酸エステルの1種を重合又は2種以上を共重合させたものが使用できる。
【0066】
また本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、ドリップ防止剤を配合することも可能であるが、フッ素系ドリップ防止剤の配合は、環境への負荷を考慮したノンハロゲンという観点から好ましくなく、さらに、ランダムコポリマーポリプロピレンの持つ物性を落とす恐れがあるため好ましくない。フッ素系ドリップ防止剤の例としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン等のフッ素系樹脂やパーフルオロメタンスルホン酸ナトリウム塩、パーフルオロ−n−ブタンスルホン酸カリウム塩、パーフルオロ−t−ブタンスルホン酸カリウム塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ナトリウム塩、パーフルオロ−2−エチルヘキサンスルホン酸カルシウム塩等のパーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ金属塩化合物又はパーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ土類金属塩等が挙げられる。
【0067】
その他、本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物には、必要に応じて通常合成樹脂に使用される添加剤、例えば、架橋剤、帯電防止剤、金属石鹸、充点剤、防曇剤、プレートアウト防止剤、表面処理剤、蛍光剤、防黴剤、殺菌剤、発泡剤、金属不活性剤、離型剤、顔料、加工助剤等を、本発明の効果を損なわない範囲で、配合することができる。
【0068】
本発明において、ポリオレフィン系樹脂及び(A)〜(C)成分以外の任意成分(但しポリオレフィン系樹脂以外の合成樹脂は除く)を配合する場合、その配合量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に制限されるものではないが、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対し合計で40質量部以下とすることが好ましく、20質量部以下とすることがより好ましい。
【0069】
本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物には、樹脂成分として、ポリオレフィン系樹脂以外の合成樹脂を配合してもよい。このような合成樹脂の例としては、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、塩化ゴム、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン−酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル−シクロヘキシルマレイミド共重合体等の含ハロゲン樹脂;石油樹脂、クマロン樹脂、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート等のポリアルキレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリアルキレンナフタレート等の芳香族ポリエステル及びポリテトラメチレンテレフタレート等の直鎖ポリエステル;ポリヒドロキシブチレート、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリ乳酸樹脂、ポリリンゴ酸、ポリグリコール酸、ポリジオキサン、ポリ(2−オキセタノン)等の分解性脂肪族ポリエステル;ポリフェニレンオキサイド、ポリカプロラクタム及びポリヘキサメチレンアジパミド等のポリアミド、ポリカーボネート、分岐ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリウレタン、繊維素系樹脂等の熱可塑性樹脂及びこれらのブレンド物あるいはフェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンゴムポリエーテルスルホン、ポリサルフォン、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー等を挙げることができる。更に、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。さらに合成樹脂の具体例を挙げると、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ニトリル系熱可塑性エラストマー、ナイロン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0070】
これら合成樹脂は、1種のみ使用してもよく、2種以上を使用してもよい。また合成樹脂はアロイ化されていてもよい。
合成樹脂は、分子量、重合度、密度、軟化点、溶媒への不溶分の割合、立体規則性の程度、触媒残渣の有無、原料となるモノマーの種類や配合比率、重合触媒の種類(例えば、チーグラー触媒、メタロセン触媒等)等に関わらず、使用することができる。
【0071】
本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物の製造に際し、ポリオレフィン系樹脂に(A)成分、(B)成分及び(C)成分、必要に応じて(D)成分を配合するタイミングは特に制限されない。例えば、予め(A)〜(D)成分の中から選択される2種以上をワンパック化してからポリオレフィン系樹脂に配合してもよく、又は各々の成分をポリオレフィン系樹脂に対して配合してもよい。
ワンパック化する場合には、各成分を予め各々粉砕してから混合してもよく、又は予め各成分を混合してから粉砕してもよい。ポリオレフィン系樹脂以外の樹脂や他の任意成分を配合する場合も同様である。
【0072】
本発明の、難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物は成形することにより、難燃性に優れた成形体を得ることができ、特にUL94 5VA規格に適合した成形体を好ましく得ることができる。
【0073】
成形体の成形方法は、特に限定されるものではなく、押し出し加工、カレンダー加工、射出成形、ロール、圧縮成形、ブロー成形等が挙げられ、樹脂板、シート、フィルム、異形品等の種々の形状の成形品が製造できる。
【0074】
本発明の難燃性ポリオレフィン系脂組成物から得られる成形体によれば、好ましくは厚さ1.6mm以下で、UL94 5VAに適合することが可能である。
【0075】
本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物及びその成形体は、電気・電子・通信、農林水産、鉱業、建設、食品、繊維、衣類、医療、石炭、石油、ゴム、皮革、自動車、精密機器、木材、建材、土木、家具、印刷、楽器等の幅広い産業分野に使用することができる。より具体的には、プリンター、パソコン、ワープロ、キーボード、PDA(小型情報端末機)、電話機、複写機、ファクシミリ、ECR(電子式金銭登録機)、電卓、電子手帳、カード、ホルダー、文具等の事務、OA機器、洗濯機、冷蔵庫、掃除機、電子レンジ、照明器具、ゲーム機、アイロン、コタツ等の家電機器、TV、VTR、ビデオカメラ、ラジカセ、テープレコーダー、ミニディスク、CDプレーヤー、スピーカー、液晶ディスプレー等のAV機器、コネクター、リレー、コンデンサー、スイッチ、プリント基板、コイルボビン、半導体封止材料、LED封止材料、電線、ケーブル、トランス、偏向ヨーク、分電盤、時計等の電気・電子部品及び通信機器、OA機器等のハウジング(枠、筐体、カバー、外装)や部品、自動車内外装材の用途に用いられる。
【0076】
更に、本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物及びその成形体は、座席(詰物、表地等)、ベルト、天井張り、コンパーチブルトップ、アームレスト、ドアトリム、リアパッケージトレイ、カーペット、マット、サンバイザー、ホイルカバー、マットレスカバー、エアバック、絶縁材、吊り手、吊り手帯、電線被覆材、電気絶縁材、塗料、コーティング材、上張り材、床材、隅壁、カーペット、壁紙、壁装材、外装材、内装材、屋根材、デッキ材、壁材、柱材、敷板、塀の材料、骨組及び繰形、窓及びドア形材、こけら板、羽目、テラス、バルコニー、防音板、断熱板、窓材等の、自動車、ハイブリッドカー、電気自動車、車両、船舶、航空機、建物、住宅及び建築用材料や、土木材料、衣料、カーテン、シーツ、合板、合繊板、絨毯、玄関マット、シート、バケツ、ホース、容器、眼鏡、鞄、ケース、ゴーグル、スキー板、ラケット、テント、楽器等の生活用品、スポーツ用品、等の各種用途に使用される。
【0077】
特に本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物は、電気自動車、機械、電気・電子機器、OA機器等のハウジング(枠、筐体、カバー、外装)や部品、自動車内外装材等に好ましく使用でき、UL94 5VAの規格が必要とされる用途に用いられる。
【実施例】
【0078】
以下、実施例により本発明を詳細に示す。但し、本発明は以下の実施例により何ら制限されるものではない。なお、表1の配合は、すべて質量部基準である。
【0079】
〔実施例1〜5及び比較例1〜6〕
下記表1及び2記載の成分配合で、難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物を調製し、次いで難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物を、220℃で押し出してペレットを製造し、これを使用して金型温度50℃、樹脂温度200℃の条件で射出成型し、寸法127mm×13mm×1.6mmのバー(Bar)試験片を得た。また同じペレットを使用して220℃でプレス成形し、寸法150mm×150mm×1.6mmのプラーク(Plaque)試験片を得た。
これらの試験片を用いて、下記試験方法で難燃性試験を行った。結果を表1に示す。
【0080】
<難燃性試験方法>
上記で得られた試験片で、難燃性の評価を難燃性の規格UL94 5Vに基づいて、バー(Bar)試験とプラーク(Plaque)試験を行った。難燃性の評価は、5VAが5VBより優れ、5VA、5VBの何れも達成できなかった場合は、not-5Vとした。

【0081】
【表1】