特許第6723945号(P6723945)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6723945フォトマスクブランクス基板収納容器、フォトマスクブランクス基板の保管方法、及びフォトマスクブランクス基板の輸送方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6723945
(24)【登録日】2020年6月26日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】フォトマスクブランクス基板収納容器、フォトマスクブランクス基板の保管方法、及びフォトマスクブランクス基板の輸送方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/66 20120101AFI20200706BHJP
   H01L 21/673 20060101ALI20200706BHJP
   B65D 85/30 20060101ALI20200706BHJP
【FI】
   G03F1/66
   H01L21/68 T
   B65D85/30
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-49655(P2017-49655)
(22)【出願日】2017年3月15日
(65)【公開番号】特開2018-124526(P2018-124526A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2019年1月24日
(31)【優先権主張番号】特願2016-77010(P2016-77010)
(32)【優先日】2016年4月7日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-17635(P2017-17635)
(32)【優先日】2017年2月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 祥剛
(72)【発明者】
【氏名】小板橋 龍二
【審査官】 右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−321532(JP,A)
【文献】 特開2009−217113(JP,A)
【文献】 特開2005−031489(JP,A)
【文献】 特開2005−043796(JP,A)
【文献】 特開2001−154341(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/037176(WO,A1)
【文献】 韓国登録特許第10−1147841(KR,B1)
【文献】 特開平11−163115(JP,A)
【文献】 特開平09−139421(JP,A)
【文献】 特開2007−001293(JP,A)
【文献】 特開2016−186571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/30−85/48
B65D 85/86
B65D 85/90
G03F 1/00−1/92
H01L 21/67−21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトマスクブランクス基板を収納するためのフォトマスクブランクス基板収納容器であって、
前記フォトマスクブランクス基板を収容可能なインナーカセットと、該インナーカセットに収納した前記フォトマスクブランクス基板を上方から固定するリテイナー部材とを有するインナー部材と、
前記インナーカセットを収容可能な下箱と、前記リテイナー部材を内側に嵌合可能な上蓋とを有する容器本体と、
該容器本体を封止する封止テープとを有し、
前記容器本体は、0.1gのサンプリング時40℃で60分保持の下で放出されるアウトガス成分中、ガスクロマトグラフィー質量分析計にて検出されるアウトガスの総量が、n−テトラデカン換算で1.9×10ng以下である高分子系材料からなり、
前記インナー部材は、0.1gのサンプリング時40℃で60分保持の下で放出されるアウトガス成分中、ガスクロマトグラフィー質量分析計にて検出されるアウトガスの総量が、n−テトラデカン換算で1.9×10ng以下であり、かつ、
2gのサンプリング時100℃で20分保持の下で放出されるアウトガス成分中、ガスクロマトグラフィー質量分析計にて検出されるアウトガスの総量が、n−テトラデカン換算で1.0×10ng以下である高分子系材料からなり、
前記封止テープは、10mm×10mm大にサンプリング時150℃で10分保持の下で放出されるアウトガス成分中、ガスクロマトグラフィー質量分析計にて検出されるアウトガスの総量が、n−テトラデカン換算で1.8×10ng以下のものであることを特徴とするフォトマスクブランクス基板収納容器。
【請求項2】
前記容器本体及び前記インナー部材は、0.1gのサンプリング時40℃で60分保持の下で放出されるアウトガス成分中、ガスクロマトグラフィー質量分析計にて検出されるアウトガスの総量が、n−テトラデカン換算で500ng以下である高分子系材料からなり、
前記封止テープは、10mm×10mm大にサンプリング時150℃で10分保持の下で放出されるアウトガス成分中、ガスクロマトグラフィー質量分析計にて検出されるアウトガスの総量が、n−テトラデカン換算で1.0×10ng以下のものであることを特徴とする請求項1に記載のフォトマスクブランクス基板収納容器。
【請求項3】
前記容器本体の内面から発生するアウトガス成分によるアウトガスの総量と、前記インナー部材の表面から発生するアウトガス成分によるアウトガスの総量との和が、3.0×10μg未満のものであり、
前記容器本体を封止する封止テープから発生するアウトガス成分によるアウトガスの総量が、1.4×10μg未満のものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフォトマスクブランクス基板収納容器。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のフォトマスクブランクス基板収納容器内に収納して前記フォトマスクブランクス基板を保管することを特徴とするフォトマスクブランクス基板の保管方法。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のフォトマスクブランクス基板収納容器内に収納して前記フォトマスクブランクス基板を輸送することを特徴とするフォトマスクブランクス基板の輸送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトマスクブランクス基板収納容器、フォトマスクブランクス基板の保管方法、及びフォトマスクブランクス基板の輸送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体をはじめとする設計回路のデザインルールは、年々、回路のさらなる微細化を進めるものとなっている。これに伴い、回路を形成するためのフォトマスクについても、その線幅、形状、ピッチといった回路パターンに要求される条件が益々厳しくなっている。
【0003】
回路の形成方法としては、これまでフォトリソグラフィー法が用いられてきたが、こうした微細化に対応するためのレジスト材料として、より短波長、より高解像度に適した化学増幅型レジストが多用されている。
【0004】
化学増幅型レジストを用いるフォトリソグラフィー法は、エキシマレーザーといった光照射、あるいは電子ビームの照射により、当該レジスト材料中の触媒物質が生成し、次工程で熱処理を行うことにより、当該触媒物質と高分子が反応し、光または電子照射部分が可溶(ポジ型)、または不溶化(ネガ型)することにより、所望の回路パターンを得る方法である。
【0005】
これまで、このレジスト材料の塗布したフォトマスクブランクス基板を光または電子照射するまでに保管、搬送するフォトマスクブランクス基板収納容器(以下、単に収納容器ともいう)については、輸送、搬送が容易であることから軽量であることが望ましく、また安価で大量に製造できるなどの点から、種々の高分子系材料を基材とし、射出成型などにより製造した収納容器が用いられている。
【0006】
しかし、これら高分子系材料からなる収納容器から発生する種々の揮発性成分が、フォトマスクブランクス基板を保管及び輸送中に、フォトマスクブランクス基板上に塗布されたフォトレジスト材料の触媒作用、その可溶化作用あるいは不溶化作用に何らかの影響を及ぼし、光あるいは電子線照射及び熱処理、現像によって形成したフォトマスクブランクス基板上のレジストパターンに、例えば、線幅の拡大・縮小などの寸法変化を生じ、その結果、設計通りのパターンが得られないという不具合を生じることがあった。
【0007】
このような高分子系材料に起因する問題に対して、アウトガス中のカプロラクタムに着目し、カプロラクタム量がn−デカン換算で樹脂重量あたり0.01ppm以下となる熱可塑性樹脂からなる収納容器が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第WO2015/037176号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、近年、レジストに要求される解像性、コントラスト性能は増々高まっており、従来のフォトマスクブランクス基板収納容器では、寸法変動制御が不十分であることが明らかになってきた。加えて、これまでレジストパターンへの影響抑制手段として、収納容器からのアウトガス制御に着目されていたが、本発明者らが調査したところ、上述のプラスチック製の収納容器から発生する揮発性有機物成分だけでなく、その封止テープから発生する揮発成分もまた、フォトマスクブランクス基板上のレジストパターンに影響を及ぼすことが分かった。
【0010】
すなわち、フォトマスクブランクス基板を保管あるいは輸送するための収納容器に加え、その封止テープのアウトガスについても制御を要し、収納容器と封止テープの組み合わせについて、さらなる改善を要することが分かった。
【0011】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、収納したフォトマスクブランクス基板上のレジストパターンへの影響を抑えながら、フォトマスクブランクス基板の保管・輸送が可能であるフォトマスクブランクス基板収納容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明によれば、フォトマスクブランクス基板を収納するためのフォトマスクブランクス基板収納容器であって、
前記フォトマスクブランクス基板を収容可能なインナーカセットと、該インナーカセットに収納した前記フォトマスクブランクス基板を上方から固定するリテイナー部材とを有するインナー部材と、
前記インナーカセットを収容可能な下箱と、前記リテイナー部材を内側に嵌合可能な上蓋とを有する容器本体と、
該容器本体を封止する封止テープとを有し、
前記容器本体及び前記インナー部材は、0.1gのサンプリング時40℃で60分保持の下で放出されるアウトガス成分中、ガスクロマトグラフィー質量分析計にて検出されるアウトガスの総量が、n−テトラデカン換算で1.9×10ng以下である高分子系材料からなり、
前記封止テープは、10mm×10mm大にサンプリング時150℃で10分保持の下で放出されるアウトガス成分中、ガスクロマトグラフィー質量分析計にて検出されるアウトガスの総量が、n−テトラデカン換算で1.8×10ng以下のものであることを特徴とするフォトマスクブランクス基板収納容器を提供する。
【0013】
このようなものであれば、容器本体、インナー部材及び封止テープから発生する揮発性有機成分によるレジストパターンへの影響を抑えながら、フォトマスクブランクス基板の保管・輸送が可能となる。
【0014】
このとき、前記容器本体及び前記インナー部材は、0.1gのサンプリング時40℃で60分保持の下で放出されるアウトガス成分中、ガスクロマトグラフィー質量分析計にて検出されるアウトガスの総量が、n−テトラデカン換算で500ng以下である高分子系材料からなり、
前記封止テープは、10mm×10mm大にサンプリング時150℃で10分保持の下で放出されるアウトガス成分中、ガスクロマトグラフィー質量分析計にて検出されるアウトガスの総量が、n−テトラデカン換算で1.0×10ng以下のものであることが好ましい。
【0015】
このようなものであれば、容器本体、インナー部材及び封止テープから発生する揮発性有機成分によるレジストパターンへの影響を抑えることがより確実にできる。
【0016】
またこのとき、前記インナー部材は、2gのサンプリング時100℃で20分保持の下で放出されるアウトガス成分中、ガスクロマトグラフィー質量分析計にて検出されるアウトガスの総量が、n−テトラデカン換算で1.0×10ng以下である高分子系材料からなるものであることが好ましい。
【0017】
このようなものであれば、容器内に配置されるインナー部材から発生する揮発性有機成分によるレジストパターンへの影響を抑えることがより確実にできる。
【0018】
またこのとき、前記容器本体は、ポリカーボネートを主成分とする高分子系材料からなり、かつ、その表面抵抗値は2.0×10Ω/sq以下であり、
前記封止テープは、ポリエチレンテレフタラート、ポリプロピレン、ポリエチレンのいずれかからなる基材と、ポリアクリル酸エステルからなる粘着面とを有するものであることが好ましい。
【0019】
このようなものであれば、容器本体、インナー部材及び封止テープから発生する揮発性有機成分によるレジストパターンへの影響を抑えることがより確実にできるとともに、帯電しにくくなり、ゴミの吸着も抑制できる。
【0020】
またこのとき、前記容器本体の内面から発生するアウトガス成分によるアウトガスの総量と、前記インナー部材の表面から発生するアウトガス成分によるアウトガスの総量との和(容器内のアウトガス総量)が、3.0×10μg未満のものであり、
前記容器本体を封止する封止テープから発生するアウトガス成分によるアウトガスの総量(テープのアウトガス総量)が、1.4×10μg未満のものであることが好ましい。
【0021】
このようなものであれば、容器本体の内面、インナー部材の表面及び封止テープから発生する揮発性有機成分によるレジストパターンへの影響を抑えることがより確実にできる。
【0022】
また、本発明は、前記本発明のフォトマスクブランクス基板収納容器内に収納して前記フォトマスクブランクス基板を保管することを特徴とするフォトマスクブランクス基板の保管方法を提供する。さらに、本発明は、前記本発明のフォトマスクブランクス基板収納容器内に収納して前記フォトマスクブランクス基板を輸送することを特徴とするフォトマスクブランクス基板の輸送方法を提供する。
【0023】
このように、本発明のフォトマスクブランクス基板収納容器を用いて、フォトマスクブランクス基板を保管・輸送すれば、容器本体、インナー部材及び封止テープから発生する揮発性有機成分によるレジストパターンへの影響を抑えながら、フォトマスクブランクス基板の保管・輸送をすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、容器本体、インナー部材及び封止テープから発生する揮発性有機成分によるレジストパターンへの影響を抑えながら、収納されたフォトマスクブランクス基板を保管及び輸送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明のフォトマスクブランクス基板収納容器の一例を示した概略図である。
図2】本発明のフォトマスクブランクス基板収納容器において、基板を収納して封止テープでテーピングした状態を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明について実施の形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
上記したように、近年、レジストに要求される解像性、コントラスト性能は増々高まっており、従来のフォトマスクブランクス基板収納容器では、寸法変動制御が不十分であるという問題があった。
【0027】
そこで、本発明者らは、上記問題点を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、化学増幅型レジストを塗布したフォトマスクブランクス基板の保管及び輸送方法として、収納容器を構成する高分子系材料から発生するアウトガス総量が一定量以下である収納容器と、その封止テープから発生するアウトガス総量が一定量以下の封止テープを組み合わせることで、フォトマスクブランクス基板の保管・輸送後、露光、感光及び現像して形成されたレジストパターンの線幅に生じる不具合を防止し、高精細なレジストパターンが得られることを見出し、本発明に至った。そして、これらを実施するための最良の形態について精査し、本発明を完成させた。
【0028】
図1図2に示すように、本発明のフォトマスクブランクス基板収納容器1は、フォトマスクブランクス基板2を収容可能なインナーカセット3と、該インナーカセット3に収納したフォトマスクブランクス基板2を上方から固定するリテイナー部材4とを有するインナー部材5と、インナーカセット3を収容可能な下箱6と、リテイナー部材4を内側に嵌合可能な上蓋7とを有する容器本体8と、該容器本体8を封止する封止テープ9とを有する。
【0029】
インナーカセット3は、フォトマスクブランクス基板2を垂直方向に林立させ、一定間隔で整列させて収納可能なものとすることができる。
【0030】
なお、フォトマスクブランクス基板収納容器1は、上述のような複数のフォトマスクブランクス基板2を収納する容器に限らず、フォトマスクブランクス基板2を1枚ごとに収納する枚葉式容器でも良い。また、外気を遮断する密閉型容器でも、ケミカルフィルタを介して外気と通じている収納容器などとしても良い。
【0031】
フォトマスクブランクス基板収納容器1を用いて保管若しくは輸送するフォトマスクブランクス基板2は、位相シフト膜を有するもの、Cr遮光膜を有するもの等が挙げられるが、好ましくは化学増幅型レジストを塗布したものが望ましい。
【0032】
容器本体8及びインナー部材5は、それぞれが0.1gのサンプリング時40℃で60分保持の下で放出されるアウトガス成分中、ガスクロマトグラフィー質量分析計にて検出されるアウトガスの総量が、n−テトラデカン換算で1.9×10ng以下である高分子系材料からなるものである。そして、封止テープ9は、10mm×10mm大にサンプリング時150℃で10分保持の下で放出されるアウトガス成分中、ガスクロマトグラフィー質量分析計にて検出されるアウトガスの総量が、n−テトラデカン換算で1.8×10ng以下のものである。
なお、容器本体8とインナー部材5の材料は、同じ高分子系材料とすることもできるし、異なる高分子系材料とすることもできる。さらには、容器本体8の下箱6と上蓋7の材料は、同じ高分子系材料とすることもできるし、異なる高分子系材料とすることもできる。また、インナー部材5のインナーカセット3とリテイナー部材4の材料は、同じ高分子系材料とすることもできるし、異なる高分子系材料とすることもできる。
そして、本発明において、上記複数の部品の材料が異なる場合、それらの材料のそれぞれは、上記条件を満たす高分子系材料である。サンプリングは、材料の種類ごとに行うものとする。
【0033】
このような容器本体8、インナー部材5及び封止テープ9を組み合わせて用いたフォトマスクブランクス基板収納容器1であれば、容器本体8、インナー部材5及び封止テープ9から発生する揮発性有機成分によるレジストパターンへの影響を抑えながら、フォトマスクブランクス基板2の保管・輸送が可能となる。
【0034】
容器本体8を構成する下箱6と上蓋7、及びインナー部材5を構成するインナーカセット3とリテイナー部材4に用いることができる高分子系材料には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、アクリロニトリルブタジエンスチレンが挙げられる。なお、下箱6、上蓋7、インナーカセット3、リテイナー部材4として、これらの高分子系材料が好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0035】
このとき、容器本体8及びインナー部材5は、それぞれが0.1gのサンプリング時40℃で60分保持の下で放出されるアウトガス成分中、ガスクロマトグラフィー質量分析計にて検出されるアウトガスの総量が、n−テトラデカン換算で1.9×10ng以下、より好ましくは500ng以下、さらに好ましくは100ng以下、最も好ましくは50ng以下である高分子系材料からなるものとすることができる。また、封止テープは、10mm×10mm大にサンプリング時150℃で10分保持の下で放出されるアウトガス成分中、ガスクロマトグラフィー質量分析計にて検出されるアウトガスの総量が、n−テトラデカン換算で1.8×10ng以下、より好ましくは、1.0×10ng以下のものとすることができる。
【0036】
このようなアウトガスの総量がより少ない、容器本体8、インナー部材5及び封止テープ9を組み合わせて用いたフォトマスクブランクス基板収納容器1であれば、容器本体8、インナー部材5及び封止テープ9から発生する揮発性有機成分によるレジストパターンへの影響をより確実に抑えることができる。
【0037】
アウトガスがより少ない高分子材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタラートが挙げられる。収納容器はこれら複数の樹脂で構成されたものが良い。
【0038】
さらに、インナー部材5は、少なくとも1つの高分子系材料からなり、該少なくとも1つの高分子系材料の各々は、2gのサンプリング時100℃で20分保持の下で放出されるアウトガス成分中、ガスクロマトグラフィー質量分析計にて検出されるアウトガスの総量が、n−テトラデカン換算で1.0×10ng以下である高分子系材料であることがより好ましい。
【0039】
インナー部材5は、フォトマスクブランクス基板2に直接触れるものであるとともに、すべてが容器内に配置されるものなので、上記のような、検出されるアウトガスの総量がより少ないものを用いることで、インナー部材5から発生する揮発性有機成分によるレジストパターンへの影響をより確実に抑えることができる。
【0040】
このとき、容器本体8及びインナー部材5のうちいずれか1つ以上(特には容器本体8)は、ポリカーボネートを主成分とする少なくとも1つの高分子系材料からなり、かつ、その表面抵抗値は2.0×10Ω/sq以下であるものであることが好ましい。容器本体8の表面抵抗値は2.0×10Ω/sq以下であることが好ましく、容器本体8及びインナー部材5の表面抵抗値は2.0×10Ω/sq以下であることがさらに好ましい。表面抵抗値が小さい程、帯電しにくくなるため、静電気を抑え、ゴミの吸着や、パーティクル混入を防止することができる。
【0041】
また、封止テープ9は、基材と粘着面とを有するものとすることができる。このとき、封止テープ9の基材には、例えば、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリ塩化ビニル、ナイロンが挙げられるが、好ましくは、ポリエチレンテレフタラート、ポリプロピレン、ポリエチレンのいずれかからなるものであることが好ましい。また、封止テープ9の粘着面には、粘着剤として、例えば、ポリアクリル酸エステル系、ポリメタクリル酸エステル系、ポリ酢酸ビニル、ゴム系が挙げられるが、好ましくは、ポリアクリル酸エステルからなるものであることが好ましい。
【0042】
このような封止テープ9と、上記のような表面抵抗値を有する容器本体8及びインナー部材5を組み合わせたものであれば、容器本体8、インナー部材5及び封止テープ9から発生する揮発性有機成分によるレジストパターンへの影響を抑えることがより確実にできるとともに、帯電しにくくなり、ゴミの吸着も抑制できる。
【0043】
また、封止テープ9は、収納容器への外気流入を防ぐため、密着性能が高いものが望ましい。さらに、収納容器の密封及び開封を容易とするため、伸縮率が高いものが望ましい。
【0044】
次に、本発明のフォトマスクブランクス基板の保管方法及び輸送方法について説明する。ここでは、上述したような、図1、2に示す本発明のフォトマスクブランクス基板収納容器1を用いた場合について説明する。
【0045】
まず、下箱6にインナーカセット3を収納し、上蓋7にリテイナー部材4を嵌合する。そして、フォトマスクブランクス基板2をインナーカセット3に収納して、上蓋7を閉める。その後、容器本体8を封止テープ9で封止する。そして、フォトマスクブランクス基板収納容器1内にフォトマスクブランクス基板2を収納した状態で、フォトマスクブランクス基板2を保管・輸送する。このように、本発明のフォトマスクブランクス基板収納容器を用いて、フォトマスクブランクス基板を保管・輸送すれば、容器本体8、インナー部材5及び封止テープ9から発生する揮発性有機成分によるレジストパターンへの影響を抑えながら、フォトマスクブランクス基板2の保管・輸送をすることができる。
【0046】
なお、上述したようなガスクロマトグラフィー質量分析計によって、アウトガスの総量を検知する方法として、具体的には、以下のようにして行うことができる。
【0047】
GC−MS分析方法
(容器本体とインナー部材)
容器本体8の上蓋7の一部から0.1gを立方体形状に切削したサンプルを、精秤後にサンプルセル内に入れ、高純度ヘリウム雰囲気下で40℃×60minの加熱脱離を行う。発生したガス成分をガスクロマトグラフィー質量分析計(GC−MS, Agilent GC7890A)により分析し、検出されたピークの面積値をn−テトラデカンにて作成した検量線により換算することで、容器本体8を構成する高分子系材料のアウトガス総量(サンプルからのアウトガス量:x(ng))を求めることができる。これを容器本体のアウトガス総量と定義する。
また容器本体を構成する高分子系材料が複数存在する場合には、そのそれぞれの高分子系材料よりなる容器本体のアウトガス総量を求めることとする。
例えば、容器本体8の上蓋7と下箱6の高分子系材料が異なる場合には、それぞれの高分子系材料について上述の分析を行い、それぞれの高分子系材料よりなる容器本体のアウトガス総量(上蓋7から切削したサンプルからの容器本体のアウトガス総量をx(ng)、下箱6から切削したサンプルからの容器本体のアウトガス総量をx(ng)とする)を求めることとする。
同様にインナー部材5の一部から0.1gを立方体形状に切削したサンプルを、精秤後にサンプルセル内に入れ、高純度ヘリウム雰囲気下で40℃×60minの加熱脱離を行う。発生したガス成分をガスクロマトグラフィー質量分析計(GC−MS, Agilent GC7890A)により分析し、検出されたピークの面積値をn−テトラデカンにて作成した検量線により換算することで、インナー部材5を構成する高分子系材料のアウトガス総量(サンプルからのアウトガス量:y(ng))を求めることができる。これをインナー部材のアウトガス総量と定義する。
またインナー部材を構成する高分子系材料が複数存在する場合には、そのそれぞれの高分子系材料よりなるインナー部材のアウトガス総量を求めることとする。
例えば、インナー部材5のインナーカセット3とリテイナー部材4の高分子系材料が異なる場合には、それぞれの高分子系材料について上述の分析を行い、それぞれの高分子系材料よりなるインナー部材のアウトガス総量(インナーカセット3から切削したサンプルからのインナー部材のアウトガス総量をy(ng)、リテイナー部材4から切削したサンプルからのインナー部材のアウトガス総量をy(ng)とする)を求めることとする。
【0048】
さらに、これらの結果をもとに、容器本体の内面積相当から発生したアウトガス成分によるアウトガス総量と、インナー部材の面積相当から発生したアウトガス成分によるアウトガス総量をそれぞれ求め、その和を、フォトマスクブランクス基板が容器内で暴露される、容器本体の内面とインナー部材の表面から発生したアウトガス成分によるアウトガス総量と定義する。以下、容器内のアウトガス総量と定義する。
【0049】
具体的には、容器本体の内面積(B(mm2))をサンプルの表面積(A(mm2))で割り、上記サンプルからのアウトガス量をかけることにより、容器本体の内面からのアウトガス総量を算出する((B/A)×x(ng))。
次にインナー部材の表面積(D(mm2))をサンプルの表面積(C(mm2))で割り、上記サンプルからのアウトガス量をかけることにより、インナー部材の表面からのアウトガス総量を算出する((D/C)×y(ng))。
これらの和{(B/A)×x+(D/C)×y}(ng)により、容器内のアウトガス総量を得ることができる。
一般的に容器本体が複数の高分子系材料で構成され、さらにインナー部材も複数の高分子系材料で構成されている場合には、容器内のアウトガス総量は以下のような式となる。
{Σk=1(B/A)×x+Σl=1(D/C)×y}(ng)
ここで容器本体8は、n種の高分子系材料で構成され、インナー部材5は、m種の高分子系材料で構成されていることを示す。
【0050】
容器内のアウトガス総量は、3.0×10μg未満が好ましく、さらに好ましくは8.0×10μg以下が好ましく、より好ましくは6.5×10μg以下が好ましい。
【0051】
(インナー部材)
インナー部材5から2gを採取し、キュリーポイント・パージ&トラップ・サンプラー(日本分析工業 JHS−100A)を用い、100℃×20min、キャリアガスHeを流通させながらアウトガス成分を吸着管TENAX−TAに吸着採取する。吸着したアウトガス成分を、ガスクロマトグラフィー質量分析計(GC−MS, Agilent 5975C−MSD)により分析し、検出されたピークの面積値をn−テトラデカンにて作成した検量線により換算することで、インナー部材5のアウトガス総量を求めることができる。
【0052】
(封止テープ)
封止テープ9を10mm×10mmの大きさに切削したサンプルを、キュリーポイント・パージ&トラップ・サンプラー(日本分析工業 JHS−100A)を用いて150℃×10min、キャリアガスHeを流通させながらアウトガス成分を吸着採取した。吸着したアウトガス成分を、ガスクロマトグラフィー質量分析計(GC−MS, Agilent 5975C−MSD)により分析し、検出されたピークの面積値をn−テトラデカンにて作成した検量線により換算することで、封止テープのアウトガス総量(サンプルからのアウトガス量:z(ng))を求めることができる。これを封止テープのアウトガスの総量と定義する。
【0053】
また、容器本体の周囲をテーピングした時の封止テープからでるアウトガス総量を上記結果から求め、以下、テープのアウトガス総量と定義する。
【0054】
具体的には、今回の使用した封止テープの幅は全て10mmである。容器本体を封止するためのテープの全長をE(mm)とする。次に使用した封止テープの面積(10×E(mm2))から放出される、テープのアウトガス総量を算出する({(10×E)/(10×10)}×z(ng))。なお、テープの全長とは容器本体の全周に相当する長さである。容器本体を封止テープで全周にわたり密閉する際には、まかれた封止テープの上に重ねて封止テープを貼るが、この重なった長さは含まない。
【0055】
テープのアウトガス総量は、1.4×10μg未満が好ましく、さらに好ましくは1.0×10μg以下が好く、より好ましくは7.5×10μg以下が好ましい。
【0056】
なお、GC−MS測定条件は、例えば、以下のように設定することができる。
[GC−MS測定条件(容器本体、インナー部材)]
測定方法 :ダイナミックヘッドスペース法
カラム :DB−1(30m×0.32mmφ×0.25μm)
温度 :50℃3min(10℃/min)250℃12min
【0057】
[GC−MS測定条件(インナー部材、封止テープ)]
測定方法 :パージ&トラップ法
カラム :DB−5MS(30m×0.25mmφ×0.25μm)
温度 :40℃5min(10℃/min)300℃5min
【実施例】
【0058】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0059】
(実施例1)
容器本体として、図1に示すような、152mm角のフォトマスクブランクス基板2を複数枚林立可能なインナーカセット3を収納可能な、上蓋7及び下箱6の2点を、ポリカーボネート系樹脂Aを用いて、射出成型により製造した。
【0060】
製造した上蓋7の平面の平坦部において、表面抵抗測定器(三菱化学株式会社製)を使用して表面抵抗値を測定した結果、表面抵抗値は2.0×10Ω/sqであった。
【0061】
また、上蓋7の一部から0.1gを切削し、精秤後にサンプルセル内に入れ、高純度ヘリウム雰囲気下で40℃×60minの加熱脱離を行い、発生したガス成分をガスクロマトグラフィー質量分析計(GC−MS, Agilent GC7890A)により、下記の条件で分析した。このとき、検出されたピークの面積値をn−テトラデカンにて作成した検量線により換算することで、容器本体を構成する高分子系材料のアウトガス総量を求めた。その結果、検出されたアウトガス総量は、n−テトラデカン換算で18ngであった。また、同様に測定したインナー部材0.1gを分析した結果、検出されたアウトガス総量は、n−テトラデカン換算で9ngであった。これより求めた容器内のアウトガス総量は、37μgであった。
【0062】
[GC−MS測定条件(容器本体、インナー部材)]
測定方法 :ダイナミックヘッドスペース法
カラム :DB−1(30m×0.32mmφ×0.25μm)
温度 :50℃3min(10℃/min)250℃12min
【0063】
また、インナー部材5として、152mm角のフォトマスクブランクス基板2を複数枚林立可能なインナーカセット3と、上蓋7の内側に嵌合可能であって上蓋7を下箱6に嵌合した際にインナーカセット3に収納したそれぞれのフォトマスクブランクス基板2を上方から固定するリテイナー部材4とを、同一のポリブチレンテレフタラート樹脂を用いて、射出成型により製造した。
【0064】
インナー部材2gをキュリーポイント・パージ&トラップ・サンプラー(日本分析工業 JHS−100A)を用い、100℃×20min、キャリアガスHeを流通させながらアウトガス成分を吸着管TENAX−TAに吸着採取した。吸着したアウトガス成分を、ガスクロマトグラフィー質量分析計(GC−MS, Agilent 5975C−MSD)により、下記の条件で分析した。このとき、検出されたピークの面積値をn−テトラデカンにて作成した検量線により換算することで、インナー部材5のアウトガス総量を求めた。その結果、検出されたアウトガス総量は、n−テトラデカン換算で1.3×10ngであった。
【0065】
封止テープとして、基材がポリエチレンテレフタラート系かつ粘着面がポリアクリル酸エステルである封止テープAを用いた。
【0066】
封止テープAを10mm×10mmの大きさに切削し、キュリーポイント・パージ&トラップ・サンプラー(日本分析工業 JHS−100A)を用いて、150℃×10min、キャリアガスHeを流通させながらアウトガス成分を吸着採取した。吸着したアウトガス成分を、ガスクロマトグラフィー質量分析計(GC−MS, Agilent 5975C−MSD)により、下記の条件で分析し、検出されたピークの面積値をn−テトラデカンにて作成した検量線により換算することで、封止テープ9のアウトガス総量を求めた。その結果、封止テープAにおいて検出されたアウトガス総量は、n−テトラデカン換算で5.3×10ngであった。これより求めたテープのアウトガス総量は、40μgであった。
【0067】
[GC−MS測定条件(インナー部材、封止テープ)]
測定方法 :パージ&トラップ法
カラム :DB−5MS(30m×0.25mmφ×0.25μm)
温度 :40℃5min(10℃/min)300℃5min
【0068】
そして、化学増幅型レジストを塗布した3枚のフォトマスクブランクス基板2を、上記製造した上蓋7・下箱6・インナーカセット3・リテイナー部材4を組み立てたフォトマスクブランクス基板収納容器1に収納した。そして、上蓋7と下箱6の間隙を覆うように、封止テープAでテーピングした。
【0069】
そして、容器本体を封止テープAでテーピングした状態で40℃の恒温槽で保管した。20日間保管後、EB描画、ベーク、現像処理を行い、線幅400nmのL/S(ライン&スペース)のレジストパターンを形成し、そのスペース幅を測定した。
【0070】
また、同様にレジストを塗布したフォトマスクブランクス基板を、上記の収納容器に収納することなくEB描画、ベーク、現像処理を行い、上記の収納容器に保管したフォトマスクブランクス基板2とのレジストパターンのスペース幅の差をΔCDとして定義して、このΔCDの値を求めた。
【0071】
その結果、実施例1におけるΔCD値は20日間で+1.0nmであり、収納容器及び封止テープの影響はほとんど受けていなかった。
【0072】
(実施例2)
封止テープとして、基材がポリプロピレン系かつ粘着面がポリアクリル酸エステルである封止テープBを使用した以外、実施例1と同条件にてフォトマスクブランクス基板収納容器を製造した。
【0073】
封止テープBのアウトガス総量について、実施例1と同様にしてGC−MS分析した。その結果、封止テープBにおいて検出されたアウトガス総量は、n−テトラデカン換算で9.3×10ngであった。これより求めたテープのアウトガス総量は、71μgであった。
【0074】
フォトマスクブランクス基板を収納した実施例2の容器本体を封止テープBでテーピングした状態で、実施例1と同様に40℃で20日間保管した。
【0075】
保管後のフォトマスクブランクス基板を、実施例1と同様にして、EB描画、ベーク、現像して得られたパターンを測定した。その結果、実施例2におけるΔCD値は+0.3nmであり、収納容器及び封止テープの影響はほとんど受けていなかった。
【0076】
(実施例3)
封止テープとして、基材がポリエチレン系かつ粘着面がポリアクリル酸エステルである封止テープCを使用した以外、実施例1と同様にしてフォトマスクブランクス基板収納容器を製造した。
【0077】
封止テープCのアウトガス総量について、実施例1と同様にしてGC−MS分析した。その結果、封止テープCにおいて検出されたアウトガス総量は、n−テトラデカン換算7.2×10ngであった。これより求めたテープのアウトガス総量は、55μgであった。
【0078】
フォトマスクブランクス基板を収納した実施例3の容器本体を封止テープCでテーピングした状態で、実施例1と同様に40℃で20日間保管した。
【0079】
保管後のフォトマスクブランクス基板を、実施例1と同様にして、EB描画、ベーク、現像して得られたパターンを測定した。その結果、実施例3におけるΔCD値は−0.3nmであり、収納容器及び封止テープの影響はほとんど受けていなかった。
【0080】
(実施例4)
実施例1と同様にしてフォトマスクブランクス基板収納容器を製造した。
【0081】
フォトマスクブランクス基板を収納した実施例4の容器本体を封止テープAでテーピングした状態で、常温かつ3ヶ月間(90日間)保管した。
【0082】
保管後のフォトマスクブランクス基板を、実施例1と同様にして、EB描画、ベーク、現像して得られたパターンを測定した。その結果、実施例4におけるΔCD値は+0.2nmであり、収納容器及び封止テープの影響はほとんど受けていなかった。
【0083】
(実施例5)
実施例2と同様にしてフォトマスクブランクス基板収納容器を製造した。
【0084】
フォトマスクブランクス基板を収納した実施例5の容器本体を封止テープBでテーピングした状態で、実施例4と同様に常温かつ3ヶ月間(90日間)保管した。
【0085】
保管後のフォトマスクブランクス基板を、実施例1と同様にして、EB描画、ベーク、現像して得られたパターンを測定した。その結果、実施例5におけるΔCD値は−0.8nmであり、収納容器及び封止テープの影響はほとんど受けていなかった。
【0086】
(実施例6)
容器本体の高分子系材料として、上蓋及び下箱の材料にポリカーボネート系樹脂Bを使用した以外、実施例1と同条件にてフォトマスクブランクス基板収納容器を製造した。
【0087】
ポリカーボネート系樹脂Bのアウトガスの総量について、実施例1と同様にしてGC−MS分析した。その結果、ポリカーボネート系樹脂Bにおいて検出されたアウトガス総量は、n−テトラデカン換算で21ngであった。また実施例1と同様、インナー部材の検出されたアウトガス総量は、n−テトラデカン換算で9ngである。よって容器内のアウトガス総量は、42μgであった。
【0088】
フォトマスクブランクス基板を収納した実施例6の容器本体を封止テープAでテーピングした状態で、実施例4と同様に常温で3ヶ月間(90日間)保管した。
【0089】
保管後のフォトマスクブランクス基板を、実施例1と同様にして、EB描画、ベーク、現像して得られたパターンを測定した。その結果、実施例6におけるΔCD値は−0.1nmであり、収納容器及び封止テープの影響はほとんど受けていなかった。
【0090】
(実施例7)
容器本体の高分子系材料として、上蓋及び下箱の材料にポリカーボネート系樹脂Cを使用した以外、実施例1と同条件にてフォトマスクブランクス基板収納容器を製造した。
【0091】
ポリカーボネート系樹脂Cのアウトガス総量について、実施例1と同様にしてGC−MS分析した。その結果、ポリカーボネート系樹脂Cにおいて検出されたアウトガス総量は、n−テトラデカン換算で34ngであった。よって容器内のアウトガス総量は、61μgであった。
【0092】
フォトマスクブランクス基板を収納した実施例7の容器本体を封止テープAでテーピングした状態で、実施例4と同様に常温で3ヶ月間(90日間)保管した。
【0093】
保管後のフォトマスクブランクス基板を、実施例1と同様にして、EB描画、ベーク、現像して得られたパターンを測定した。その結果、実施例7におけるΔCD値は+0.5nmであり、収納容器及び封止テープの影響はほとんど受けていなかった。
【0094】
(実施例8)
容器本体の高分子系材料として、上蓋及び下箱の材料にポリプロピレン系樹脂Dを使用した以外、実施例1と同条件にてフォトマスクブランクス基板収納容器を製造した。
【0095】
ポリプロピレン系樹脂Dのアウトガス総量について、実施例1と同様にしてGC−MS分析した。その結果、ポリプロピレン系樹脂Dにおいて検出されたアウトガス総量は、n−テトラデカン換算で4.9×10ngであった。よって容器内のアウトガス総量は、635μg(6.4×10μg)であった。
【0096】
フォトマスクブランクス基板を収納した実施例8の容器本体を封止テープAでテーピングした状態で、実施例4と同様に常温で3ヶ月間(90日間)保管した。
【0097】
保管後のフォトマスクブランクス基板を、実施例1と同様にして、EB描画、ベーク、現像して得られたパターンを測定した。その結果、実施例8におけるΔCD値は−1.2nmであり、収納容器及び封止テープの影響はほとんど受けていなかった。以上の実施例1〜8の結果を、下記の表1にまとめた。
【0098】
【表1】
【0099】
(比較例1)
容器本体として、上蓋及び下箱の材料にメタクリル酸メチル系樹脂Eを使用した以外、実施例1と同条件にてフォトマスクブランクス基板収納容器を製造した。
【0100】
メタクリル酸メチル系樹脂Eのアウトガス総量について、実施例1と同様にしてGC−MS分析した。その結果、メタクリル酸メチル系樹脂Eにおいて検出されたアウトガス総量は、n−テトラデカン換算で2.0×10ngであった。よって容器内のアウトガス総量は、3032μgであった。
【0101】
フォトマスクブランクス基板を収納した比較例1の容器本体を封止テープAでテーピングした状態で、実施例1と同様に40℃で20日間保管した。
【0102】
保管後のフォトマスクブランクス基板を、実施例1と同様にして、EB描画、ベーク、現像して得られたパターンを測定した。その結果、比較例1におけるΔCD値は+7.4nmであり、収納容器の影響を受けていた。
【0103】
(比較例2)
封止テープとして、基材がポリ塩化ビニル系かつ粘着面が天然ゴム系である封止テープDを使用した以外、実施例1と同条件にてフォトマスクブランクス基板収納容器を製造した。
【0104】
封止テープDのアウトガス総量について、実施例1と同様にしてGC−MS分析した。その結果、封止テープDにおいて検出されたアウトガス総量は、n−テトラデカン換算で1.7×10ngであった。これより求めたテープのアウトガス総量は、1291μg(1.3×103μg)であった。
【0105】
フォトマスクブランクス基板を収納した比較例2の容器本体を封止テープDでテーピングした状態で、実施例1と同様に40℃で20日間保管した。
【0106】
保管後のフォトマスクブランクス基板を、実施例1と同様にして、EB描画、ベーク、現像して得られたパターンを測定した。その結果、比較例2におけるΔCD値は−12.9nmであり、封止テープの影響を受けていた。
【0107】
(比較例3)
封止テープとして、基材がポリエチレン系かつ粘着面がポリアクリル酸エステルである封止テープEを使用した以外、実施例1と同条件にてフォトマスクブランクス基板収納容器を製造した。
【0108】
また、封止テープEのアウトガスの総量について、実施例1と同様にしてGC−MS分析した。その結果、封止テープEにおいて検出されたアウトガス総量は、n−テトラデカン換算で1.9×10ngであった。これより求めたテープのアウトガス総量は、144μg(1.4×102μg)であった。
【0109】
フォトマスクブランクス基板を収納した比較例3の容器本体を封止テープEでテーピングした状態で、実施例1と同様に40℃で20日間保管した。
【0110】
保管後のフォトマスクブランクス基板を、実施例1と同様にして、EB描画、ベーク、現像して得られたパターンを測定した。その結果、比較例3におけるΔCD値は−3.9nmであり、封止テープの影響を受けていた。
【0111】
(比較例4)
封止テープとして、基材がポリエチレン系かつ粘着面がポリアクリル酸エステルである封止テープFを使用した以外、実施例1と同条件にてフォトマスクブランクス基板収納容器を製造した。
【0112】
また、封止テープFのアウトガス総量について、実施例1と同様にしてGC−MS分析した。その結果、封止テープFにおいて検出されたアウトガス総量は、n−テトラデカン換算で2.4×10ngであった。これより求めたテープのアウトガス総量は、182μg(1.8×102μg)であった。
【0113】
フォトマスクブランクス基板を収納した比較例4の容器本体を封止テープFでテーピングした状態で、実施例1と同様に40℃で20日間保管した。
【0114】
保管後のフォトマスクブランクス基板を、実施例1と同様にして、EB描画、ベーク、現像して得られたパターンを測定した。その結果、比較例4におけるΔCD値は−2.3nmであり、封止テープの影響を受けていた。
【0115】
(比較例5)
比較例2と同様にしてフォトマスクブランクス基板収納容器を製造した。
【0116】
フォトマスクブランクス基板を収納した比較例5の容器本体を封止テープDでテーピングした状態で、常温かつ3ヶ月間(90日間)保管した。
【0117】
保管後のフォトマスクブランクス基板を、実施例1と同様にして、EB描画、ベーク、現像して得られたパターンを測定した。その結果、比較例5におけるΔCD値は−2.4nmであり、封止テープの影響を受けていた。
【0118】
(比較例6)
容器本体として、上蓋及び下箱の材料にアクリロニトリルブタジエンスチレン系樹脂Fを使用した以外、実施例1と同条件にてフォトマスクブランクス基板収納容器を製造した。
【0119】
アクリロニトリルブタジエンスチレン系樹脂Fのアウトガス総量について、実施例1と同様にしてGC−MS分析した。その結果、アクリロニトリルブタジエンスチレン系樹脂Fにおいて検出されたアウトガス総量は、5.2×10ngであった。よって容器内のアウトガス総量は、7259μgであった。
【0120】
フォトマスクブランクス基板を収納した比較例6の容器本体を封止テープAでテーピングした状態で、実施例4と同様に常温で3ヶ月間(90日間)保管した。
【0121】
保管後のフォトマスクブランクス基板を、実施例1と同様にして、EB描画、ベーク、現像して得られたパターンを測定した。その結果、比較例6におけるΔCD値は−4.7nmであり、収納容器の影響を受けていた。
【0122】
(比較例7)
容器本体として、上蓋及び下箱の材料にアクリロニトリルブタジエンスチレン系樹脂Gを使用した以外、実施例1と同条件にて実施例1と同条件にてフォトマスクブランクス基板収納容器を製造した。
【0123】
アクリロニトリルブタジエンスチレン系樹脂Gのアウトガス総量について、実施例1と同様にしてGC−MS分析した。その結果、アクリロニトリルブタジエンスチレン系樹脂Gにおいて検出されたアウトガス総量は、n−テトラデカン換算で5.9×10ngであった。よって容器内のアウトガス総量は、8234μgであった。
【0124】
フォトマスクブランクス基板を収納した比較例7の容器本体を封止テープAでテーピングした状態で、実施例4と同様に常温で3ヶ月間(90日間)保管した。
【0125】
保管後のフォトマスクブランクス基板を、実施例1と同様にして、EB描画、ベーク、現像して得られたパターンを測定した。その結果、比較例7におけるΔCD値は−4.5nmであり、収納容器の影響を受けていた。比較例1〜7の結果を下記の表2にまとめた。
【0126】
【表2】
【0127】
表2に示すように、比較例1、6、7では、インナー部材及び封止テープのアウトガス総量は少なかったが、容器本体のアウトガス総量が、n−テトラデカン換算で2.0×10ng以上であった。また容器内のアウトガス総量は、3.0×10μg以上であった。そのため、比較例1、6、7では、収納容器における、特に、容器本体の影響を受けてΔCD値が悪化したと考えられる。
【0128】
また、比較例2〜5では、インナー部材及び容器本体のアウトガス総量は少なかったが、封止テープのアウトガス総量が、n−テトラデカン換算で1.9×10ng以上であった。またテープのアウトガス総量は1.4×102μg以上であった。そのため、比較例2〜5では、封止テープの影響を受けてΔCD値が悪化したと考えられる。
【0129】
一方、表1に示したように、実施例1〜8では、容器本体、インナー部材及び封止テープのアウトガス総量がいずれも本発明の範囲内であったので、ΔCD値の悪化を抑制することができた。
【0130】
このような、本発明のフォトマスクブランクス基板収納容器であれば、容器本体、インナー部材及び封止テープから発生する揮発性有機成分による、レジストパターンへの影響を抑えながら、フォトマスクブランクス基板の保管・輸送が可能となることが分かった。
【0131】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0132】
1…フォトマスクブランクス基板収納容器、 2…フォトマスクブランクス基板、
3…インナーカセット、 4…リテイナー部材、 5…インナー部材、
6…下箱、 7…上蓋、 8…容器本体、 9…封止テープ。
図1
図2