【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の目的は、シリコンウェハの半径全体にわたって決定される、7%未満の酸素濃度の径方向変化量を有するシリコンウェハによって達成される。
【0026】
酸素濃度の径方向変化量は、以下のように決定される。
【0027】
【数1】
【0028】
O
maxは、シリコンウェハの半径全体にわたって最大の酸素濃度を示し、O
minは、シリコンウェハの半径全体にわたって最小の酸素濃度を示す。
【0029】
酸素濃度の測定は、SEMI MF951に従うFTIRによって行なわれる。たとえば、ブルカ・エクイノックス(Bruker Equinox)55s分光計はこれに好適である。この装置では、100、125、150、200および300mmの直径を有する標準的なSEMIウェハが測定可能である。しかしながら、それは、インゴット片の調査にも好適である。
【0030】
縁部領域の酸素濃度を決定するためには、標準的なウェハではなく、インゴット片を調査することが有利である。この方法では、450mmの直径を有する結晶の縁部領域の酸素濃度を調査することも可能である。
【0031】
シリコンウェハは、シリコンウェハの半径全体が考慮される、7%未満の酸素濃度の径方向変化量を示す。
【0032】
1つの実施形態では、シリコンウェハの酸素濃度の径方向変化量は、5%未満である。
好ましくは、シリコンウェハの酸素濃度の径方向変化量は、2%未満である。
【0033】
シリコンウェハは、150mm、200mm、300または450mmの直径を有する。
【0034】
1つの実施形態では、シリコンウェハは、エピタキシャルコーティングされている。
1つの実施形態では、シリコンウェハは、BMD核を安定化させるために、エピタキシャルコーティングの前に熱処理される。
【0035】
1つの実施形態では、シリコンウェハは、窒素でドープされ、5×10
12atoms/cm
3以上、3.5×10
13atoms/cm
3以下の窒素濃度を有する。
【0036】
好ましくは、シリコンウェハの酸素濃度は、5×10
17atoms/cm
3〜6×10
17atoms/cm
3である。
【0037】
1つの実施形態では、シリコンウェハは、ホウ素でドープされる。ホウ素濃度は、3.10×10
18atoms/cm
3〜8.43×10
18atoms/cm
3の範囲である。
【0038】
1つの実施形態では、シリコンウェハは、窒素および水素でドープされる。窒素濃度は、5×10
12atoms/cm
3以上、3.5×10
13atoms/cm
3以下である。水素濃度は、3×10
13atoms/cm
3以上、8×10
13atoms/cm
3以下である。
【0039】
1つの実施形態では、シリコンウェハにはエピタキシャル層が設けられており、エピタキシャルシリコンウェハは、p/p+ドープされ、IRトモグラフィによって決定される、シリコンウェハの半径にわたって平均される密度が1×10
5cm
-3以上、1×10
7cm
-3以下であるBMD核を備える。さらに、エピタキシャルシリコンウェハの半径に沿ったBMD核の密度の変化量は小さい。BMD密度は、エピタキシャルシリコンウェハの中央部から縁部までの平均値から20%以下で変化する。
【0040】
1つの実施形態では、シリコンウェハにはエピタキシャル層が設けられ、エピタキシャル層は、p/p−ドープされ、16時間の期間にわたる1000℃の温度での熱処理後に1×10
8cm
-3以上、好ましくは5×10
8cm
-3以上のエピタキシャルシリコンウェハの中央部から縁部までのシリコン基板ウェハの領域におけるBMD密度を有する。さらに、エピタキシャルシリコンウェハの半径に沿ったBMD密度の変化量は小さい。BMD密度は、エピタキシャルシリコンウェハの中央部から縁部までの平均値から20%以下で変化する。
【0041】
本発明に係るシリコンウェハは、以下を備える方法によって本発明に従って製造され得る。
a)るつぼにシリコン融解物を提供すること、
b)CZ法に従って融解物からシリコン単結晶を引き上げること、酸素が単結晶の中へ取り込まれる、
c)シリコン単結晶の引上げの間に、融解物に水平磁場を印加すること、
d)単結晶の引上げの間に、成長する結晶およびるつぼを回転させること、
e)シリコン単結晶を加工することによってシリコンウェハを提供すること、
印加された水平磁場の磁束密度がるつぼの中間部において1900〜2600Gsであり、成長する結晶が少なくとも8rpmで回転される。
【0042】
1つの実施形態では、磁束密度は2000〜2400Gsである。
別の実施形態では、磁束密度は2150〜2350Gsである。
【0043】
SI単位では、Gs=0.1mTで表現される。
好ましくは、結晶およびるつぼは同じ向きで回転される。
【0044】
別の実施形態では、るつぼは0.3〜0.8rpmで回転される。
特に好ましい実施形態では、成長する結晶は少なくとも10rpmで回転される。
【0045】
シリコンウェハの供給は、結晶をウェハへ切り取ることと、次いでシリコンウェハの側面および縁部の様々な機械的および化学機械的な加工ステップを含む。
【0046】
1つの実施形態では、シリコンウェハには研磨された側面上のエピタキシャル層が設けられる。
【0047】
磁束密度が上記に特定された範囲にあるとともに、特定の最小速度が結晶回転に従うときのみ、シリコンウェハの完全な縁部領域も考慮して、シリコンウェハの均質な径方向の酸素分布が達成され得ることが発見された。
【0048】
たとえば2700Gsの高い磁束密度を印加するとき、300mmウェハの場合、たとえばウェハの中央部から140〜150mmの距離を有する領域で、縁部における酸素濃度の大幅な減少が見られる。これの影響は、ウェハの半径全体にわたる酸素濃度の径方向変化量が10%より大きくなり得るということである。
【0049】
縁部における酸素濃度のこのような減少は、同様に、結晶の回転スピードが8rpm未満であるときに見られる。それ自体知られる結晶およびるつぼの回転は、好適な駆動ユニットによって行なわれる。
【0050】
磁場の低減にもかかわらず結晶の引上げがLPitおよびCOPなしに行なわれ得ることは、特に有利である。現在までに、V/Gを均質にするために高い磁束密度(たとえば3000Gs)が必要とされると考えられている。
【0051】
酸素濃度の縁部の減少を低減することによって、BMD密度はエピタキシャルシリコンウェハの縁部で、または熱処理を受けたシリコンウェハで高く維持され得る。
【0052】
1つの実施形態では、p/p+ドープされたエピタキシャルシリコンウェハが製造される。この端部まで、酸素およびホウ素が単結晶の引上げの間に単結晶の中へ取り込まれる。単結晶の酸素濃度は5×10
17atoms/cm
3以上、6×10
17atoms/cm
3以下であり、単結晶の抵抗は5mΩcm以上、10mΩcm以下である。
【0053】
BMD核の発生およびそれらの安定化を強める条件下で単結晶が引き上げられ、冷却されるとき、BMD核の安定化の目的のためのエピタキシ前のシリコン基板ウェハの熱処理は必要ではない。
【0054】
特に、単結晶は1000℃〜800℃の温度範囲で比較的ゆっくりと冷却されるべきであり、この温度範囲の冷却速度は、0.5℃/min以上、1.2℃/min以下である。
【0055】
単結晶は、比較的低い酸素濃度および比較的高いホウ素濃度が単結晶へ取り込まれる条件下で引上げられる。単結晶のホウ素濃度を調節するために、融解物はホウ素でドープされる。
【0056】
さらに、単結晶は、空孔が点欠陥(v領域)として格子間シリコン原子にわたって優位である単結晶シリコンの形成を可能にする条件下で引き上げられる。
【0057】
引き上げられた単結晶は、加工されて単結晶シリコンの基板ウェハを形成する。加工ステップの後、基板ウェハは研磨された縁部および少なくとも1つの研磨された側面を有する。好ましくは、両側面、すなわち前面および背面が研磨される。
【0058】
シリコンのエピタキシャル層は、基板ウェハの研磨された側面、または研磨された前面の上に堆積される。結果として生じるエピタキシャルシリコンウェハは、縁部領域においてさえも、BMDへ発達され得る多数のBMD核を有する。
【0059】
16hの期間にわたる1000℃の温度の熱処理、または、3hの期間にわたる780℃の温度の第1の熱処理に続いて16hの期間にわたる1000℃の温度の第2の熱処理などの標準試験の後、エピタキシャルシリコンウェハの中央部から縁部までのエピタキシャルシリコンウェハの基板ウェハの領域におけるBMD密度は、1×10
8cm
-3以上、好ましくは5×10
8cm
-3以上である。さらに、エピタキシャルシリコンウェハの半径に沿ったBMD密度の変化量は低い。BMD密度は、エピタキシャルシリコンウェハの中央部から縁部までの平均値から20%以下で変化量する。
【0060】
1つの実施形態では、融解物が酸素、窒素および水素でドープされる。酸素濃度は、4.9×10
17atoms/cm
3以上、5.7×10
17atoms/cm
3以下であり、窒素濃度は5×10
12atoms/cm
3以上、3.5×10
13atoms/cm
3以下であり、水素濃度は3×10
13atoms/cm
3以上、8×10
13atoms/cm
3以下である。
【0061】
さらに、単結晶は、空孔が点欠陥(v領域)として格子間シリコン原子にわたって優位にある単結晶シリコンの形成を可能にする条件下で引き上げられる。
【0062】
水素の存在は、OSF欠陥の核の形成を抑制し、特にシリコンウェハの縁部領域において、複数のBMDの密度の径方向のプロファイルをより均一にするのに寄与する。したがって、シリコンウェハの水素濃度は、3×10
13atoms/cm
3以上であるべきである。単結晶は、水素を含む大気中で引き上げられ、水素の分圧は好ましくは5Pa以上、15Pa以下である。
【0063】
シリコンウェハは、成長した結晶から分離され、さらに加工される。この場合、シリコンウェハの上側面および下側面ならびに縁部は、1つ以上の機械的加工ステップおよび少なくとも1つの研磨を受ける。エピタキシャル層は、好ましくは、シリコンウェハの研磨された側面上に堆積される。シリコンウェハおよびエピタキシャル層は、電気的に活性のあるドーパント、たとえばホウ素で、好ましくはpp−−ドープされたエピタキシャルシリコンウェハのドーピングに従ってドープされる。
【0064】
IRトモグラフィによって決定される、シリコンウェハの半径にわたって平均化されたBMD核の密度は、1×10
5cm
-3以上、1×10
7cm
-3以下である。BMD核の密度は、エピタキシャルシリコンウェハの中央部から縁部までの平均値から20%以下で変化する。
【0065】
シリコンウェハの前面上のエピタキシャル層の堆積から生じるエピタキシャル層を有するシリコンウェハは、エピタキシャル層の堆積にもかかわらず、その密度がシリコンウェハに対する内部ゲッタとして要求される効果を与えるのに十分である複数のBMDを形成することができる可能性を有する。しかしながら、BMD密度は、十分に低く、その径方向プロファイルを十分に均質に保つため、オーバーレイ欠陥に起因する問題は回避されることができる。
【0066】
複数のBMDは、好ましくは、エピタキシャル層への電子部品の製造およびこれに組み込まれる熱処理の過程で形成される。しかしながら、それらは、エピタキシャル層の堆積後、電子部品の製造前に、シリコンウェハが1つ以上の熱処理を受けることによっても形成され得る。
【0067】
本発明に係るシリコンウェハ、または本発明に係るエピタキシャルシリコンウェハの上述された実施形態に関して特定された特徴は、本発明に係る製造方法に対応して適用されてもよい。逆に、本発明に係る方法の上述された実施形態に関して特定された特徴は、本発明に係るシリコンウェハ、または本発明に係るエピタキシャルシリコンウェハに対応して適用されてもよい。本発明に係る実施形態のこれらのまたは他の特徴は、図面の説明および請求項において説明されるであろう。個々の特徴は、本発明の実施形態として単独でまたは組み合わせのいずれかで実施されてもよい。さらに、それらは、個々に保護可能である有利な実施形態について説明し得る。
【0068】
以下の実施例では、約300mmの直径を有する結晶が本発明に係る方法に従って成長した。径方向の酸素の変化量は、これらの結晶、またはインゴット片もしくはそれから製造されるシリコンウェハについて決定された。