【文献】
WANG, Ruiping et al.,Fabrication and characterization of potassium-sodium niobate piezoelectric ceramics by spark-plasma-,Materials Research Bulletin,英国,Elsevier;Kidlington,2004年 6月25日,Vol.39, Issue 11,pp.1709-1715
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
相対密度が95%以上であり、体積抵抗率が1000Ωcm未満、体積抵抗率のばらつき(最大値/最小値)が1.5未満であることを特徴とするニオブ酸カリウムナトリウムスパッタリングターゲット。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ニオブ酸カリウムナトリウムは、比較的PZTに近い圧電特性を示す材料であり、環境負担の小さい非鉛系の圧電セラミックス材料として注目されている。ニオブ酸カリウムナトリウムの圧電体層を形成する場合、特許文献1に記載されるように、ゾルゲル法などの液相法を用いる方法が知られている。一方、ニオブ酸カリウムナトリウムの圧電体をスパッタ法などの気相法を用いることも検討されている。
【0010】
スパッタ法は、スパッタリングターゲットにArイオンを衝突させることでターゲットを構成する原子や分子を対向する基板上に堆積させて、ターゲットの組成比とほぼ同一の組成からなる膜を作製する技術である。スパッタ法を用いることで膜の組成比や膜厚の厳密な制御が可能となる。このようなスパッタ法を採用する場合、ニオブ酸カリウムナトリウムのスパッタリングターゲットが必要となる。しかし、工業的に使用可能な、ニオブ酸カリウムナトリウムスパッタリングターゲットは未だ存在しない。
【0011】
酸化物系のスパッタリングターゲットは、通常、原料粉末を焼結して焼結体を作製し、これをターゲット形状に加工して作製される。しかしながら、ニオブ酸カリウムナトリウム焼結体のスパッタリングターゲットを作製しようとする場合、原料の取り扱いが難しく、また難焼結性であることから、高密度のターゲットを作製することが困難であった。一方、密度の低いターゲットを用いた場合には、スパッタリング時にパーティクルが多く発生し、工業的に使用できないという問題がある。
【0012】
上記の事情に鑑み、本発明の実施形態に係るニオブ酸カリウムナトリウムスパッタリングターゲットは、相対密度が95%以上であることを特徴とする。相対密度が95%未満であると、ターゲットの強度が低下し、スパッタリングの際のターゲット割れ発生や、パーティクルが増加して、膜の特性を低下させることにつながる。したがって、工業的に使用可能とするために相対密度95%以上であるのが好ましい。さらに好ましくは、98%以上である。また、密度の高い焼結体は、ターゲットに加工する際、割れや脱粒の発生を抑制することができ、さらにはスパッタリングの際に、ハイパワーでのスパッタリングでも割れにくくなり、成膜速度の向上が期待できる。
【0013】
本発明の実施形態において、相対密度は、次のようにして求める。まず、ターゲットを所定のサイズに切り出して、その寸法と重量を測定して寸法密度を算出する。次に、この寸法密度を理論密度で除して、相対密度(%)(=寸法密度/理論密度×100)を求める。このとき、ニオブ酸カリウムナトリウムの理論密度は、4.51g/cm
3とする。なお、理論密度は、K/Naの比率によって若干変化するが、本発明の実施形態に係る相対密度は、組成によらず一律に上記理論密度の値を用いて計算する。
【0014】
本発明の実施形態において、ニオブ酸カリウムナトリウムスパッタリングターゲットの平均結晶粒径が1〜20μmであることが好ましい。組織を微細化することで、安定なスパッタリングを実現することができる。さらに、ターゲット加工前の焼結体においても同様に微細な組織を有していることから、ターゲット加工時に、割れや脱粒が発生し難いという効果が得られる。
【0015】
本発明の実施形態において、スパッタリングターゲットの平均結晶粒径は、スパッタリングターゲットの切断面を研磨した後、電子顕微鏡(倍率1000倍)を用いて組織を観察し、組織写真に直線を3本引き(全長L)、これらの直線が横切った結晶粒の数nを求め、これから、平均結晶粒径(L/n)を算出する(切断法)。
【0016】
本発明の実施形態において、ニオブ酸カリウムナトリウムスパッタリングターゲットの抗折強度が50MPa以上であること好ましい。高強度にすることにより、ターゲットの運搬や装置への設置の際に割れなどを効果的に防止することができる。抗折強度は、JIS R1601:2008に準拠して測定を行う。
【0017】
本発明の実施形態において、ニオブ酸カリウムナトリウムスパッタリングターゲットのスパッタ面内の体積抵抗率が1000Ωcm以下であることが好ましい。この場合、DCスパッタリングによる高速成膜が可能である。一方、本発明の実施形態においては、ニオブ酸カリウムナトリウムスパッタリングターゲットのスパッタ面内の体積抵抗率が500kΩcm超であってもよい。この場合、RFスパッタリングによる低速成膜が可能で、膜厚制御が容易となる。いずれの体積抵抗率を選択するかは、要求されるプロセスにより決定することができる。
【0018】
また、本発明の実施形態において、ニオブ酸カリウムナトリウムスパッタリングターゲットのスパッタ面内の体積抵抗率が1000Ωcm以下の場合、その面内の体積抵抗率のばらつき(最大値/最小値)が1.5未満であることが好ましい。より好ましくは1.2以下である。体積抵抗率のばらつきは、組成や組織のばらつきと関係があり、体積抵抗率のばらつきが小さいことは組成や組織が均一であること意味し、均一な組成や組織は、膜の均一性を向上させることができる。
【0019】
本発明の実施形態において、スパッタ面内の体積抵抗率及びそのばらつきは、次のようにして求める。まず、ターゲット(円盤形状)のスパッタ面(使用時に基板に対向する側の面)内、9箇所(中心1箇所、半径1/2の点を90度間隔で4箇所、外周から3cm内側の点を90度間隔で4箇所)の体積抵抗率を直流4探針法で測定し、そして、その平均値を体積抵抗率とする。また、上記9箇所で測定した体積抵抗率の中、その最大値と最小値から、最大値/最小値を算出し、これを体積抵抗率のばらつきとする。
【0020】
本発明の実施形態に係るニオブ酸カリウムナトリウムスパッタリングターゲットは、カリウム(K)、ナトリウム(Na)及びニオブ(Nb)を含む酸化物焼結体からなり、該酸化物中の各成分の含有比率を原子数比でNb:K:Na=1.0:X:1−X(但し、Xは、0.3≦X)とするのが好ましい。カリウム(K)の比率を30%以上とすることで、より高い圧電特性を得ることができる。
また、特許文献2に開示されるように、圧電特性を改善するためにKやNaの一部をアルカリ金属のLiに置換したり、Nbの一部を同族のTa、あるいはCuに置換することができる。また、スパッタリングターゲット(焼結体)の高密度が維持できれば、Sb、Bi、Zr、Ti、Ba、Sr、Caなどその他の成分(副成分)を添加してもよい。これらの副成分の添加(通常は酸化物の形態で添加)によって、焼結温度の変化や焼結性の向上が狙えること(生産性の向上)や、分極性やキュリー点、比誘電率、機械的品質係数といった圧電性の変化も生じるため、実際の圧電体の用途ごとに、所望の特性に合わせて、添加する副成分を調整することができる。
【0021】
次に本発明の実施形態に係るニオブ酸カリウムナトリウムスパッタリングターゲットの製造方法について説明する。
【0022】
(原料粉について)
原料粉として、Nb
2O
5粉末、K
2CO
3粉末、Na
2CO
3粉末を用意する。このとき原料粉(特に炭酸塩原料)の平均粒子径が大きい場合には(例えば、d
50が約1mm)、その後の混合、粉砕での粉砕が困難であるため、秤量前に各原料粉を粉砕処理することが望ましい。
【0023】
(混合、粉砕について)
次に、Nb
2O
5粉末、K
2CO
3粉末、Na
2CO
3粉末を、原子数比でNb:K:Na=1.0:X:1−X(但し、Xは、0.3≦x)となるように秤量する。このとき、上記炭酸塩原料は特に吸水性が高いため、状態が変化して秤量時に組成比のズレを起こしやすい。したがって、炭酸塩原料について十分な脱水、乾燥を行うともに、秤量時はできるだけ、ArやN
2などの不活性ガス雰囲気下で秤量することが好ましい。
【0024】
秤量後、これらを混合する。これらの原料粉末は凝集性が非常に強く、またNb
2O
3原料と炭酸塩原料との間で粒径差があるため、微粉化及び均一混合が難しく、緻密で均一な焼結体を得るためには、ボールミル(湿式混合)やアトライタ(乾式混合)といった混合器を用いて、微細粉砕と均一混合を十分に行うことに留意する。
【0025】
湿式混合は、秤量後原料量に応じたメディアの量を決定し、メディア径がφ1mm〜15mm程度のものを1種類もしくは複数組み合わせて使用する。メディア材質はアルミナ(Al
2O
3)やジルコニア(ZrO
2)を使用できる。分散媒質は水もしくはエタノールとし、水を使用する場合は混合スラリー取出しの際、全量を回収することが好ましい。また、混合時間は5時間以上とし、ポットは60rpm以上で回転させる。
【0026】
乾式混合の場合、メディア量の決定は、湿式混合と同様、原料粉量に応じて決定する。メディアはアルミナ(Al
2O
3)やジルコニア(ZrO
2)で混合時間は30分以上とする。乾式混合は、比較的短時間で混合を行えるが、粉回収時の歩留まりが悪いという点があり、湿式混合は、時間が掛かるものの回収歩留や均一性に優れるという利点があり、必要原料量に応じて、使い分けや併用するのが好ましい。
【0027】
以上のような粉砕方法を用いて、粒子径d
50(メジアン径)が100μm以下になるまで混合、粉砕を行う。このような粒子径の小さい混合粉を焼結用原料粉とすることは、緻密な焼結体(スパッタリングターゲット)を得る上で重要である。
【0028】
(焼結について)
混合粉末をグラファイトモールドに充填し、不活性ガス又は真空雰囲気中、900℃以上1150℃未満でホットプレス焼結する。また、荷重は、150kgf/cm
2以上400kgf/cm
2以下とする。焼結温度が900℃未満であると、焼結体の密度が十分に上がらず、一方、1150℃以上であると、ニオブ酸カリウムの液相出現温度を超えて溶融してしまう。また、荷重が150kgf/cm
2未満であると、焼結体の密度が十分に上がらず、一方、400kgf/cm
2超であると、焼結時の割れの可能性が高くなる。
【0029】
以上により、相対密度が95%以上のニオブ酸カリウムナトリウムからなる焼結体を作製することができ、焼結温度1000℃以上とすることで、さらに密度を高めることができ、相対密度98%以上を達成することが可能である。なお、ホットプレス以外の製法として、CIP(冷間等方圧加圧法)や鋳込みにて成型後、大気焼結、その後に真空熱処理を行う方法も実施したが、この場合、高密度の焼結体を得ることは困難であった。
【0030】
また、上記の相対密度が95%以上のニオブ酸カリウムナトリウム焼結体について、熱処理を行うことで、高密度を維持したまま、体積抵抗率を変化させることができる。低抵抗のターゲットを作製する場合、ホットプレス焼結後、600℃以上900℃以下で真空熱処理するか、或いは、800℃以上1150℃以下でHIP(熱間等方圧加圧方)処理する。これにより、酸素欠損を均一に生じさせて、低抵抗で、ばらつきの少ないスパッタリングターゲットを得ることができる。一方、高抵抗のターゲットを作製する場合、ホットプレス焼結後、酸素雰囲気中或いは大気中、550℃以上1000℃以下で熱処理する。これにより、高抵抗のスパッタリングターゲットを得ることができる。
【0031】
(仕上げ加工について)
以上により得られた、ニオブ酸カリウムナトリウム焼結体の端部を切削した後、表面を研磨して、ターゲット形状に仕上げ加工を行う。前述した通り、焼結体の相対密度は95%以上と高いことから、ターゲット加工時に割れや脱粒が発生し難いという利点がある。
【実施例】
【0032】
以下、実施例および比較例に基づいて説明する。なお、本実施例はあくまで一例であり、この例によって何ら制限されるものではない。すなわち、本発明は特許請求の範囲によってのみ制限されるものであり、本発明に含まれる実施例以外の種々の変形を包含するものである。
【0033】
(実施例1−1〜実施例1−6)
Nb
2O
5粉末、K
2CO
3粉末、Na
2CO
3粉末を、原子数比(Nb:K:Na=1.0:0.45:0.55)となるように秤量した。次に、これらの粉末とZrO
2メディアをボールミルポットに充填し、分散媒質としてエタノールを導入した後、70rpmでポットを回転して、5時間湿式混合を行った。乾燥後、目開き100μmの篩で篩別行った。その後、この粉砕粉をそれぞれ、真空中又はAr雰囲気中、焼結温度900、1000、1050℃、荷重200、300、400kgf/cm
2の条件で、ホットプレス(HP)焼結を行った。その後、これらの焼結体を機械加工してスパッタリングターゲット形状に仕上げた。
このようにして得られたニオブ酸カリウムナトリウムからなるスパッタリングターゲットについて、各種特性について測定を行った結果、いずれも相対密度が95%以上と高密度なものが得られた。また、平均結晶粒径が20μm以下と微細な組織を備えており、抗折強度は50MPa以上と高強度なものが得られた。以上の結果を表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
(実施例1−7〜実施例1−9)
Nb
2O
5粉末、K
2CO
3粉末、Na
2CO
3粉末を原子数比(Nb:K:Na=1.0:0.45:0.55)となるように秤量した。次に、これらの粉末とZrO
2メディアをボールミルポットに充填した後、60〜100rpmでポットを回転して、30分間乾式混合を行った。乾燥後、目開き100μmの篩で篩別行った。その後、この粉砕粉をそれぞれ、真空中又はAr雰囲気中、焼結温度900、1050℃、荷重300kgf/cm
2の条件でホットプレス(HP)焼結を行った。その後、この焼結体を機械加工してスパッタリングターゲット形状に仕上げた。
このようにして得られたニオブ酸カリウムナトリウムからなるスパッタリングターゲットについて、各種特性について測定を行った結果、表1に示す通り、いずれも相対密度が95%以上と高密度であった。また、平均結晶粒径が20μm以下と微細な組織を備えており、抗折強度は50MPa以上と高強度であった。以上の結果を表1に示す。
【0036】
(実施例1−10〜実施例1−12)
Nb
2O
5粉末、K
2CO
3粉末、Na
2CO
3粉末をそれぞれ、原子数比(Nb:K:Na=1.0:0.50:0.50、Nb:K:Na=1.0:0.4:0.6、Nb:K:Na=1.0:0.6:0.4)となるように秤量した。次に、これらの粉末とZrO
2メディアをボールミルポットに充填し、分散媒質としてエタノールを導入した後、70rpmでポットを回転して、5時間湿式混合を行った。乾燥後、目開き100μmの篩で篩別行った。その後、この粉砕粉を真空中、焼結温度1500℃、荷重300kgf/cm
2の条件でホットプレス(HP)焼結を行った。その後、この焼結体を機械加工してスパッタリングターゲット形状に仕上げた。
このようにして得られたニオブ酸カリウムナトリウムからなるスパッタリングターゲットについて、各種特性について測定を行った結果、いずれも相対密度は95%以上と高密度であった。また、平均結晶粒径が20μm以下と微細な組織を備え、抗折強度は50MPa以上と高強度であった。以上の結果を表1に示す。
【0037】
(比較例1−1)
Nb
2O
5粉末、K
2CO
3粉末、Na
2CO
3粉末を、原子数比(Nb:K:Na=1.0:0.45:0.55)となるように秤量した。次に、これらの粉末とZrO
2メディアをボールミルポットに充填し、分散媒質としてエタノールを導入した後、70rpmでポットを回転して、5時間湿式混合を行った。乾燥後、目開き100μmの篩で篩別行った。その後、この粉砕粉を、真空中、焼結温度800℃、荷重300kgf/cm
2の条件で、ホットプレス(HP)焼結を行った。その後、これらの焼結体を機械加工してスパッタリングターゲット形状に仕上げた。このようにして得られたニオブ酸カリウムナトリウムからなるスパッタリングターゲットについて、密度の測定を行った結果、相対密度が88.7%であった。
【0038】
(比較例1−2)
Nb
2O
5粉末、K
2CO
3粉末、Na
2CO
3粉末を、原子数比(Nb:K:Na=1.0:0.45:0.55)となるように秤量した。次に、これらの粉末とZrO
2メディアをボールミルポットに充填し、分散媒質としてエタノールを導入した後、70rpmでポットを回転して、5時間湿式混合を行った。乾燥後、目開き100μmの篩で篩別行った。その後、この粉砕粉を、真空中、焼結温度1050℃、荷重100kgf/cm
2の条件で、ホットプレス(HP)焼結を行った。その後、これらの焼結体を機械加工してスパッタリングターゲット形状に仕上げた。このようにして得られたニオブ酸カリウムナトリウムからなるスパッタリングターゲットについて、密度の測定を行った結果、相対密度が94.3%であった。
【0039】
(比較例1−3)
Nb
2O
5粉末、K
2CO
3粉末、Na
2CO
3粉末を、原子数比(Nb:K:Na=1.0:0.45:0.55)となるように秤量した。次に、これらの粉末とZrO
2メディアをボールミルポットに充填し、分散媒質としてエタノールを導入した後、70rpmでポットを回転して、5時間湿式混合を行った。乾燥後、目開き100μmの篩で篩別行った。その後、この粉砕粉を、真空中、焼結温度1150℃、荷重300kgf/cm
2の条件で、ホットプレス(HP)焼結を行った。しかしながら、得られた焼結体には、溶融箇所が見られた。
【0040】
(比較例1−4)
Nb
2O
5粉末、K
2CO
3粉末、Na
2CO
3粉末を、原子数比(Nb:K:Na=1.0:0.45:0.55)となるように秤量した。次に、これらの粉末とZrO
2メディアをボールミルポットに充填し、分散媒質としてエタノールを導入した後、70rpmでポットを回転して、5時間湿式混合を行った。乾燥後、目開き100μmの篩で篩別行った。その後、この粉砕粉を、真空中、焼結温度1050℃、荷重500kgf/cm
2の条件で、ホットプレス(HP)焼結を行った。しかしながら、得られた焼結体には、割れが見られた。
【0041】
(比較例1−5)
Nb
2O
5粉末、K
2CO
3粉末、Na
2CO
3粉末を、原子数比(Nb:K:Na=1.0:0.45:0.55)となるように秤量した。次に、これらの粉末とZrO
2メディアをボールミルポットに充填し、分散媒質としてエタノールを導入した後、60〜100rpmでポットを回転して、30分間湿式混合を行った。乾燥後、目開き150μmの篩で篩別行った。その後、この粉砕粉を、真空中、焼結温度1050℃、荷重300kgf/cm
2の条件で、ホットプレス(HP)焼結を行った。このようにして得られたニオブ酸カリウムナトリウムからなるスパッタリングターゲットについて、密度の測定を行った結果、相対密度が94.5%であった。
【0042】
(比較例1−6)
Nb
2O
5粉末、K
2CO
3粉末、Na
2CO
3粉末を、原子数比(Nb:K:Na=1.0:0.45:0.55)となるように秤量した。次に、これらの粉末とZrO
2メディアをボールミルポットに充填し、分散媒質としてエタノールを導入した後、70rpmでポットを回転して、5時間湿式混合を行った。乾燥後、目開き100μmの篩で篩別行った。その後、この粉砕粉を、大気中、焼結温度1050℃で、大気焼結を行った。その後、この焼結体を機械加工してスパッタリングターゲット形状に仕上げた。
このようにして得られたニオブ酸カリウムナトリウムからなるスパッタリングターゲットについて、密度の測定を行った結果、相対密度が92.4%であった。
【0043】
(実施例2−1〜実施例2−3)
実施例1−3で作製したニオブ酸カリウムナトリウム焼結体について、ホットプレス焼結後に、600℃、900℃で真空熱処理し又は1100℃でHIP処理した。熱処理後、焼結体を機械加工してスパッタリングターゲット形状に仕上げた。このようにして得られたニオブ酸カリウムナトリウムからなるスパッタリングターゲットについて、体積抵抗率を測定した結果、数Ωcmと低抵抗であり、そのばらつきも1.2未満と非常に小さかった。以上の結果を表2に示す。
【0044】
【表2】
【0045】
(実施例2−4)
実施例1−1で作製したニオブ酸カリウムナトリウムスパッタリングターゲットについて、体積抵抗率を測定した結果、表2に示す通り、1000Ωcmと低抵抗であったが、そのばらつきは1.55であった。
【0046】
(実施例2−5)
実施例1−3で作製したニオブ酸カリウムナトリウムスパッタリングターゲットについて、体積抵抗率を測定した結果、表2に示す通り、1000Ωcmと低抵抗であり、そのばらつきも1.5未満と小さかった。
【0047】
(実施例2−6〜実施例2−7)
実施例1−3で作製したニオブ酸カリウムナトリウム焼結体について、ホットプレス焼結後に、大気中又は酸素雰囲気中、900℃で熱処理した。熱処理後、焼結体を機械加工してスパッタリングターゲット形状に仕上げた。このようにして得られたニオブ酸カリウムナトリウムからなるスパッタリングターゲットについて、体積抵抗率を測定した結果、表2に示す通り、500kΩcm超高抵抗であった。
【0048】
(比較例2−1)
参考までに、比較例1−7のニオブ酸カリウムナトリウムスパッタリングターゲットについて体積抵抗率を測定した結果、表2に示す通り、500kΩcm超と高抵抗であった。