特許第6724297号(P6724297)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6724297光学積層体の製造方法、円偏光板の製造方法及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6724297
(24)【登録日】2020年6月29日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】光学積層体の製造方法、円偏光板の製造方法及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20200706BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20200706BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20200706BHJP
   G02F 1/13363 20060101ALN20200706BHJP
【FI】
   G02B5/30
   H05B33/02
   H05B33/14 A
   !G02F1/13363
【請求項の数】8
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2015-107857(P2015-107857)
(22)【出願日】2015年5月27日
(65)【公開番号】特開2016-224128(P2016-224128A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2018年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】橋本 弘昌
【審査官】 森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−512904(JP,A)
【文献】 特開2006−209097(JP,A)
【文献】 特開2014−174470(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/064581(WO,A1)
【文献】 特開2008−225429(JP,A)
【文献】 特開2014−186248(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/32
H01L 51/50
H05B 33/00 − 33/28
G02B 5/30
G02F 1/1335 − 1/13363
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学積層体の製造方法であって、
長尺状の基材上に、直接、第1の液晶化合物を含有する第1の液晶組成物を塗布し、第1の液晶組成物の層を得る工程(I)、
前記第1の液晶組成物の層中の前記第1の液晶化合物を配向させ、前記第1の液晶組成物の層に不活性ガス雰囲気下で活性エネルギー線を照射し前記第1の液晶組成物を硬化させ、表面の鉛筆硬度がHB以上4H以下である第1光学異方性層を形成する工程(II)、
前記第1光学異方性層上に、直接、光配向材料を含む液を塗布して光配向材料を含む液の層を得て、不活性ガス雰囲気下、前記基材の幅手方向と異なる方向の照射偏光方向を有する偏光紫外線を前記光配向材料を含む液の層に照射し、前記光配向材料を含む液を硬化させ表面の鉛筆硬度がB以上4H以下である光配向層を形成する工程(III)、及び
前記光配向層上に、直接、第2の液晶化合物を含有する第2の液晶組成物を塗布して第2の液晶組成物の層を得て、前記第2の液晶組成物の層中の前記第2の液晶化合物を配向させ、前記第2の液晶組成物の層に活性エネルギー線を照射し前記第2の液晶組成物を硬化させ、第2光学異方性層を形成する工程(IV)
を含み、
前記工程(II)における照射の積算光量が1000mJ/cm以上であり、前記工程(III)における照射の積算光量が500mJ/cm以上である、製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の光学積層体の製造方法であって、
前記工程(III)における前記照射偏光方向が、前記幅手方向となす角度が10〜20°又は70〜80°である、製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光学積層体の製造方法であって、
前記工程(II)および前記工程(III)における照射の積算光量の合計が1500mJ/cm以上である、製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学積層体の製造方法であって、
前記工程(III)における照射の積算光量が1000mJ/cm以上である、製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学積層体の製造方法であって、
前記基材として延伸前基材を延伸して得られた延伸基材を用いる、製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学積層体の製造方法であって、
前記工程(III)における基材の張力が100〜500N/mである、製造方法。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法により製造した光学積層体を用いる円偏光板の製造方法であって、
前記光学積層体より前記基材を剥離して、光学異方性積層体を得る工程と、
前記光学異方性積層体と、長尺状の直線偏光子とをロールツーロールで貼合する貼合工程と、を含み、
前記光学異方性積層体は、第1光学異方性層、光配向膜、及び第2光学異方性層をこの順に備え、
前記光学異方性積層体の、前記直線偏光子と貼合する側の前記光学異方性層が、λ/2波長板であり、
前記貼合工程において、前記直線偏光子の透過軸と、前記直線偏光子と貼合する側の前記光学異方性層の遅相軸とがなす角が10〜20°又は70〜80°となるように前記光学異方性積層体と、前記直線偏光子とを貼合する、円偏光板の製造方法。
【請求項8】
請求項に記載の円偏光板の製造方法により製造した円偏光板を備える、有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層体の製造方法、当該製造方法により製造してなる光学積層体、光学異方性積層体、円偏光板、及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
位相差板等の光学異方性を有するフィルムは、液晶表示装置及び有機エレクトロルミネッセンス(以下において「有機EL」と呼ぶことがある)表示装置等の表示装置の構成要素として、広く用いられている。特に、λ/4、λ/2等の所望の位相差を有する複数層の光学異方性層を備える光学積層体は、有機EL表示装置の反射防止フィルムとして用いられている(例えば特許文献1)。
【0003】
光学異方性層を得るための方法の一つとして、液晶相を呈しうる化合物を、液晶相を呈した状態のまま固体のフィルムに成形する方法が知られている。そのような方法の例としては、重合性を有し且つ液晶相を呈しうる重合性液晶化合物を含む組成物を、適切な基材の表面に塗布して層とし、層内の重合性液晶化合物を配向させ、さらに配向させた状態を維持して重合させることにより、光学異方性を有するフィルムを形成する方法が挙げられる。このような液晶相を呈しうる化合物を配向させる方法としては、基材の表面に配向規制力を付与し、その上に液晶相を呈しうる化合物を含む組成物を塗布し、さらに配向に適した条件に置くことが一般的に行なわれる。基材の表面に配向規制力を付与する方法の例としては、光配向(例えば特許文献2〜4)およびラビング(例えば特許文献5〜7)による方法が挙げられる。また、基材として延伸処理を施されたフィルムを用いることにより、液晶化合物をフィルム上に配向させる方法も知られている(例えば特許文献8〜10)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−68816号公報
【特許文献2】特表2008−542837号公報
【特許文献3】特許第2980558号公報
【特許文献4】特開平11−153712号公報
【特許文献5】特開平8−160430号公報
【特許文献6】特開2000−267105号公報
【特許文献7】特開2002−6322号公報
【特許文献8】特開平3−9325号公報
【特許文献9】特開平4−16919号公報
【特許文献10】特開2003−207641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上に述べた従来技術により複数層の光学異方性層を有する光学積層体を製造する方法は、複数枚の基材の上にそれぞれの光学異方性層を形成しそれらを貼合する方法と、1層の基材の上に光学異方性層を順次形成する方法とに大別される。前者は、工程が煩雑であるという問題点がある。一方後者は、基材の直上に形成する1層目の光学異方性層には良好な品質を付与することが可能だが、2層目以上の光学異方層の形成においては、表面にスジが入る等の不具合が起きやすいという問題点がある。
【0006】
従って、本発明の目的は、高品質な複数層の光学異方性層を有する光学積層体を簡便且つ効率的に製造することができる、光学積層体の製造方法、並びに、高品質で簡便且つ効率的に製造できる光学積層体、光学異方性積層体、円偏光板、及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は前記の課題を解決するべく検討した結果、特定の基材の上に光学異方性層を順次形成する方法において、第2の光学異方性層を形成する際に光配向層により配向規制力を付与し、さらに、各層を形成する操作の条件を特定のものとすることにより、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明によれば、以下のものが提供される。
【0008】
〔1〕 光学積層体の製造方法であって、
長尺状の基材上に、直接、第1の液晶化合物を含有する第1の液晶組成物を塗布し、第1の液晶組成物の層を得る工程(I)、
前記第1の液晶組成物の層中の前記第1の液晶化合物を配向させ、前記第1の液晶組成物の層に不活性ガス雰囲気下で活性エネルギー線を照射し前記第1の液晶組成物を硬化させ、第1光学異方性層を形成する工程(II)、
前記第1光学異方性層上に、直接、光配向材料を含む液を塗布して光配向材料を含む液の層を得て、不活性ガス雰囲気下、前記基材の幅手方向と異なる方向の照射偏光方向を有する偏光紫外線を前記光配向材料を含む液の層に照射し、光配向層を形成する工程(III)、及び
前記光配向層上に、直接、第2の液晶化合物を含有する第2の液晶組成物を塗布して第2の液晶組成物の層を得て、前記第2の液晶組成物の層中の前記第2の液晶化合物を配向させ、前記第2の液晶組成物の層に活性エネルギー線を照射し前記第2の液晶組成物を硬化させ、第2光学異方性層を形成する工程(IV)
を含む、製造方法。
〔2〕 〔1〕に記載の光学積層体の製造方法であって、
前記工程(III)における前記照射偏光方向が、前記幅手方向となす角度が10〜20°又は70〜80°である、製造方法。
〔3〕 〔1〕又は〔2〕に記載の光学積層体の製造方法であって、
前記工程(II)および前記工程(III)における照射の積算光量が1000mJ/cm以上である、製造方法。
〔4〕 〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の製造方法により製造してなる光学積層体であって、
前記基材が、配向規制力を有し、かつ、配向軸方向が前記幅手方向と異なる方向にあり、
前記第1光学異方性層の遅相軸が前記基材の配向軸方向と平行で、かつ、
前記第1光学異方性層の遅相軸と前記第2光学異方性層の遅相軸とがなす角が55°〜65°である、光学積層体。
〔5〕 〔4〕に記載の光学積層体であって、
前記第1光学異方性層の、前記光配向層側の表面の鉛筆硬度がB以上であり、かつ、
前記光配向層の、前記第2光学異方性層側の表面の鉛筆硬度がB以上である、光学積層体。
〔6〕 〔4〕又は〔5〕に記載の光学積層体であって、
前記基材が延伸フィルムである、光学積層体。
〔7〕 〔4〕〜〔6〕のいずれか1項に記載の光学積層体であって、
前記基材が、脂環式構造含有重合体を含む樹脂のフィルムである、光学積層体。
〔8〕 〔4〕〜〔7〕のいずれか1項に記載の光学積層体であって、
前記第1光学異方性層及び前記第2光学異方性層の一方がλ/4波長板であり、他方がλ/2波長板である、光学積層体。
〔9〕 第1光学異方性層、光配向膜、及び第2光学異方性層をこの順に備える光学異方性積層体であって、
〔4〕〜〔8〕のいずれか1項に記載の光学積層体より前記基材を剥離してなる、光学異方性積層体。
〔10〕 〔9〕に記載の光学異方性積層体と、長尺状の直線偏光子とをロールツーロールで貼合してなる円偏光板であって、
前記光学異方性積層体の、前記直線偏光子と貼合する側の前記光学異方性層が、λ/2波長板であり、
前記直線偏光子の透過軸と、前記直線偏光子と貼合する側の前記光学異方性層の遅相軸とがなす角が10〜20°又は70〜80°である、円偏光板。
〔11〕 〔10〕に記載の円偏光板を備える、有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明の光学積層体の製造方法によれば、高品質な複数層の光学異方性層を有する光学積層体を簡便且つ効率的に製造することができる。また、本発明の光学積層体、光学異方性積層体、円偏光板、及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、高品質で簡便且つ効率的に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の製造方法で得られた光学積層体の一例を模式的に示す断面図である。
図2図2は、図1に示す光学積層体から得た光学異方性積層体の一例を模式的に示す断面図である。
図3図3は、図2に示す光学異方性積層体から得た円偏光板の一例を模式的に示す断面図である。
図4図4は、本発明の製造方法で得られた光学積層体の別の一例を模式的に示す断面図である。
図5図5は、図4に示す光学積層体から得た光学異方性積層体の一例を模式的に示す断面図である。
図6図6は、図5に示す光学異方性積層体から得た円偏光板の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、例示物及び実施形態を挙げて本発明について詳細に説明するが、本発明は以下に挙げる例示物及び実施形態に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施してもよい。
本願において、「偏光板」、「λ/2波長板」、「λ/4波長板」及び「位相差板」といった板状の形状を有する部材は、剛直な部材に限られるものではなく、フィルム状の、可撓性を有するものとしうる。
本願において、構成要素の角度関係が「平行」「垂直」であるとは、別に断らない限り、本発明の効果を損ねない範囲での誤差を含みうる。例えば、5°以内、好ましくは3°以内、より好ましくは1°以内の誤差を含みうる。
また特に、本願において「略15°」とは、15°又はそれに近い角度であり、好ましくは10〜20°、より好ましくは11〜19°、さらにより好ましくは12〜18°である。一方、「略75°」とは、75°又はそれに近い角度であり、好ましくは70〜80°、より好ましくは71〜79°、さらにより好ましくは72〜78°である。
【0012】
〔1.光学積層体の製造方法の概要〕
本発明の光学積層体の製造方法は、
長尺状の基材上に、直接、第1の液晶化合物を含有する第1の液晶組成物を塗布し、第1の液晶組成物の層を得る工程(I)、
第1の液晶組成物の層中の第1の液晶化合物を配向させ、第1の液晶組成物の層に不活性ガス雰囲気下で活性エネルギー線を照射し第1の液晶組成物を硬化させ、第1光学異方性層を形成する工程(II)、
第1光学異方性層上に、直接、光配向材料を含む液を塗布して光配向材料を含む液の層を得て、不活性ガス雰囲気下、基材の幅手方向と異なる方向の照射偏光方向を有する偏光紫外線を光配向材料を含む液の層に照射し、光配向層を形成する工程(III)、及び
光配向層上に、直接、第2の液晶化合物を含有する第2の液晶組成物を塗布して第2の液晶組成物の層を得て、第2の液晶組成物の層中の第2の液晶化合物を配向させ、第2の液晶組成物の層に活性エネルギー線を照射し第2の液晶組成物を硬化させ、第2光学異方性層を形成する工程(IV)
を含む。
【0013】
〔2.工程(I):基材〕
本発明において用いる基材は、長尺状の基材である。本願において「長尺状」の形状とは、幅に対して、少なくとも5倍以上の長さを有する形状をいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムの形状をいう。
【0014】
基材の材料は、特に限定されず、種々の樹脂を用いうる。樹脂の例としては、各種の重合体を含む樹脂が挙げられる。当該重合体としては、脂環式構造含有重合体、セルロースエステル、ポリビニルアルコール、ポリイミド、UV透過アクリル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、エポキシ重合体、ポリスチレン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。これらの中でも、透明性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性等の観点から、脂環式構造含有重合体及びセルロースエステルが好ましく、脂環式構造含有重合体がより好ましい。
【0015】
基材は正の固有複屈折性を有する樹脂のフィルムであることが好ましい。正の固有複屈折性を有する樹脂を材料として用いた場合、配向規制力の高さ、強度の高さ、コストの低さ等の良好な特性を備えた基材を、容易に得ることができる。
【0016】
脂環式構造含有重合体は、繰り返し単位中に脂環式構造を有する非晶性の重合体であり、主鎖中に脂環式構造を含有する重合体及び側鎖に脂環式構造を含有する重合体のいずれも用いることができる。
脂環式構造としては、例えば、シクロアルカン構造、シクロアルケン構造等が挙げられるが、熱安定性等の観点からシクロアルカン構造が好ましい。
1つの脂環式構造の繰り返し単位を構成する炭素数に特に制限はないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは6〜15個である。
【0017】
脂環式構造含有重合体中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合は使用目的に応じて適宜選択されるが、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。
脂環式構造を有する繰り返し単位が過度に少ないと、フィルムの耐熱性が低下するおそれがある。
【0018】
脂環式構造含有重合体は、具体的には、(1)ノルボルネン重合体、(2)単環の環状オレフィン重合体、(3)環状共役ジエン重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素添加物などが挙げられる。
これらの中でも、透明性や成形性の観点から、ノルボルネン重合体及びこれらの水素添加物がより好ましい。
【0019】
ノルボルネン重合体としては、例えば、ノルボルネンモノマーの開環重合体、ノルボルネンモノマーと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環共重合体、及びそれらの水素添加物;ノルボルネンモノマーの付加重合体、ノルボルネンモノマーと共重合可能なその他のモノマーとの付加共重合体などが挙げられる。
これらの中でも、透明性の観点から、ノルボルネンモノマーの開環重合体水素添加物が最も好ましい。
上記の脂環式構造含有重合体は、例えば特開2002−321302号公報等に開示されている公知の重合体から選ばれる。
【0020】
脂環式構造含有重合体は、そのガラス転移温度が、好ましくは80℃以上、より好ましくは100〜250℃の範囲である。
ガラス転移温度がこのような範囲にある脂環式構造含有重合体は、高温下での使用における変形や応力が生じることがなく耐久性に優れる。
【0021】
脂環式構造含有重合体の分子量は、溶媒としてシクロヘキサン(樹脂が溶解しない場合にはトルエン)を用いたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略す。)で測定したポリイソプレン換算(溶媒がトルエンのときは、ポリスチレン換算)の重量平均分子量(Mw)で、通常10,000〜100,000、好ましくは25,000〜80,000、より好ましくは25,000〜50,000である。
重量平均分子量がこのような範囲にあるときに、フィルムの機械的強度及び成形加工性が高度にバランスされ好適である。
【0022】
脂環式構造含有重合体の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は特に制限されないが、通常1〜10、好ましくは1〜4、より好ましくは1.2〜3.5の範囲である。
【0023】
脂環式構造含有重合体を含む樹脂は、その分子量2,000以下の樹脂成分(すなわち、オリゴマー成分)の含有量が、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下、さらに好ましくは2重量%以下である。
オリゴマー成分の量が前記範囲内にあると、表面における微細な凸部の発生が減少し、厚みむらが小さくなり面精度が向上する。
オリゴマー成分の量を低減するためには、重合触媒や水素化触媒の選択、重合、水素化等の反応条件、樹脂を成形用材料としてペレット化する工程における温度条件、等を最適化すればよい。
オリゴマーの成分量は、前述のGPCによって測定することができる。
【0024】
基材の厚みは特に制限されないが、生産性の向上、薄型化及び軽量化を容易にする観点から、その厚みは、通常1〜1000μm、好ましくは5〜300μm、より好ましくは30〜100μmである。
【0025】
脂環式構造含有重合体を含む樹脂は、脂環式構造含有重合体のみからなってもよいが、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意の配合剤を含んでもよい。脂環式構造含有重合体を含む樹脂中の、脂環式構造含有重合体の割合は、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上である。
脂環式構造含有重合体を含む樹脂の好適な具体例としては、日本ゼオン社製「ゼオノア1420、ゼオノア1420R」を挙げうる。
【0026】
セルロースエステルとしては、セルロースの低級脂肪酸エステル(例:セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレートおよびセルロースアセテートプロピオネート)が代表的である。低級脂肪酸は、1分子あたりの炭素原子数6以下の脂肪酸を意味する。セルロースアセテートには、トリアセチルセルロース(TAC)やセルロースジアセテート(DAC)が含まれる。
【0027】
セルロースアセテートの酢化度は、50〜70%が好ましく、特に55〜65%が好ましい。重量平均分子量70000〜120000が好ましく、特に80000〜100000が好ましい。また、上記セルロースアセテートは、酢酸だけでなく上記酢化度を満足する限り、一部プロピオン酸、酪酸等の脂肪酸でエステル化されていても良い。また、基材を構成する樹脂は、セルロースアセテートと、セルロースアセテート以外のセルロースエステル(セルロースプロピオネート及びセルロースブチレート等)とを組み合わせて含んでも良い。その場合、これらのセルロースエステルの全体が、上記酢化度を満足することが好ましい。
【0028】
基材として、トリアセチルセルロースのフィルムを用いる場合、かかるフィルムとしては、トリアセチルセルロースを低温溶解法あるいは高温溶解法によってジクロロメタンを実質的に含まない溶剤に溶解することで調製されたトリアセチルセルロースドープを用いて作成されたトリアセチルセルロースフィルムが、環境保全の観点から特に好ましい。トリアセチルセルロースのフィルムは、共流延法により作製しうる。共流延法は、トリアセチルセルロースの原料フレークを溶媒に溶解し、これに必要に応じて任意の添加剤を添加し溶液(ドープ)を調製し、当該ドープをドープ供給手段(ダイ)から支持体の上に流延し、流延物をある程度乾燥して剛性が付与された時点でフィルムとして支持体から剥離し、当該フィルムをさらに乾燥して溶媒を除去することにより行いうる。原料フレークを溶解する溶媒の例としては、ハロゲン化炭化水素類(ジクロロメタン等)、アルコール類(メタノール、エタノール、ブタノール等)、エステル類(蟻酸メチル、酢酸メチル等)、エーテル類(ジオキサン、ジオキソラン、ジエチルエーテル等)等が挙げられる。ドープに添加する添加剤の例としては、レターデーション上昇剤、可塑剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤、滑り剤、剥離促進剤等が挙げられる。ドープを流延する支持体の例としては、水平式のエンドレスの金属ベルト、及び回転するドラムが挙げられる。流延に際しては、単一のドープを単層流延することもできるが、複数の層を共流延することもできる。複数の層を共流延する場合、例えば、低濃度のセルロースエステルドープの層と、そのおもて面及び裏面に接して設けられた高濃度のセルロースエステルドープの層が形成されるよう、複数のドープを順次流延しうる。フィルムを乾燥して溶媒を除去する手段の例としては、フィルムを搬送して、内部を乾燥に適した条件に設定した乾燥部を通過させる手段が挙げられる。
【0029】
トリアセチルセルロースのフィルムの好ましい例としては、TAC−TD80U(富士写真フィルム(株)製)等の公知のもの、及び発明協会公開技報公技番号2001−1745号にて公開されたものが挙げられる。トリアセチルセルロースのフィルムの厚みは特に限定されないが、30〜150μmが好ましく、40〜130μmがより好ましく、70〜120μmが更に好ましい。
【0030】
基材は、透明性に優れることが、製造工程の自由度を高める上で好ましい。具体的には、基材の全光線透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、特に好ましくは88%以上である。基材の全光線透過率は、紫外・可視分光計を用いて、波長400nm〜700nmの範囲で測定しうる。
【0031】
長尺状の基材は、好ましくは、ロール状の形状として調製し、これを使用時に繰り出すことにより、本発明の製造方法に供しうる。
【0032】
好ましい態様において、基材は、配向規制力を有する。配向規制力は、この上に形成される液晶組成物の層における液晶化合物の配向を規制する能力である。基材への配向規制力の付与は、延伸前の基材を延伸し、延伸基材とすることにより、好ましく行いうる。延伸基材においては、基材を構成する分子が配向し、当該配向軸方向に配向規制力が発現しうる。このように延伸により配向規制力を付与することにより、高品質な光学異方性層の配向を達成しうる基材を簡便に製造することができる。
【0033】
好ましい態様において、基材の配向軸方向は、基材の幅手方向と異なる方向にある。基材の配向軸と基材の幅手方向とがなす角度は、具体的には0°超90°未満としうる。このような範囲の角度において配向軸を有することにより、本発明の光学積層体を、円偏光板等の効率的な製造を可能にする材料とすることができる。
より具体的には、基材の配向軸と基材の幅手方向とがなす角度を、略75°又は略15°といった特定の範囲とすることにより、広帯域反射防止フィルムの材料として有用に用いうる光学積層体を、効率的に製造することができる。
【0034】
延伸前基材の延伸は、斜め延伸のみでもよく、横延伸(基材の幅手方向への延伸)のみでもよく、縦延伸(基材の長手方向への延伸)のみでもよく、又はこれらの延伸を組み合わせて行ってもよい。延伸倍率は、基材表面に配向規制力が生じる範囲で適宜設定しうる。基材が正の固有複屈折性を有する樹脂を材料として用いた場合、延伸方向に分子が配向して延伸方向に配向軸が発現する。延伸は、テンター延伸機などの既知の延伸機を用いて行いうる。
【0035】
基材の面内方向の位相差Reは、好ましくは10nm以上、より好ましくは50nm以上であり、一方好ましくは500nm以下であり、より好ましくは300nm以下である。基材の複屈折Δnの下限は、好ましくは0.000050以上、より好ましくは0.000070以上であり、一方、基材の複屈折Δnの上限は好ましくは0.007500以下、より好ましくは0.007000以下である。特に、基材の材料として、上に述べた脂環式構造含有重合体を含む樹脂又はトリアセチルセルロースを含む樹脂を用い、当該範囲内の光学特性を付与することにより、基材の厚み方向全体に亘って分子ダイレクターが略均一に配向し、良好な配向規制力を基材表面に与えることができる。
【0036】
〔3.工程(I)〕
本発明の光学積層体の製造方法の工程(I)では、基材上に、直接、第1の液晶組成物を塗布し、第1の液晶組成物の層を得る。
【0037】
基材上への、液晶組成物の「直接」の塗布とは、基材の表面に、他の層を介さずに液晶組成物を塗布することである。配向規制力を有する基材を採用し、その表面に液晶組成物を直接塗布すると、所望の方向に遅相軸を有する光学異方性層を得ることができる。
液晶組成物を基材上に塗布する場合、基材を適度の張力(通常、100〜500N/m)でテンションを掛けて、基材の搬送ばたつきを少なくし平面性を維持したまま塗布することが好ましい。平面性とは、基材の幅手方向および搬送方向に垂直な上下方向の振れ量であり、理想的には0mmであるが、通常、1mm以下である。
また、液晶組成物を塗布する側の基材面の表面粗さ(Ra)は、好ましくは0.05μm以下、より好ましくは0.005μm以下である。この上限以下であれば、塗布ムラが少なく、平面性に優れた光学異方性層を得ることができる。表面粗さ(Ra)は、JIS B0601に準じて測定することができる。
【0038】
工程(I)への基材の供給は、上に述べた特定の長尺状の基材のロールを用意し、これから基材を繰り出すことにより行いうる。
【0039】
第1の液晶組成物の塗布の具体的な操作の例としては、カーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、スライドコーティング法、印刷コーティング法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、キャップコーティング法、及びディッピング法が挙げられる。
【0040】
第1の液晶組成物の層の厚みは、特に限定されず、第1光学異方性層の厚みが所望の値となるよう適宜調整しうる。塗布の際の温度等の条件は、塗布及びその後の工程を円滑に行うことができる温度に適宜設定しうる。
【0041】
〔3.1.第1の液晶組成物〕
第1の液晶組成物は、第1の液晶化合物を含有する組成物である。
【0042】
本願において、第1の液晶組成物の成分としての第1の液晶化合物とは、第1の液晶組成物に配合し配向させた際に、液晶相を呈しうる化合物である。重合性液晶化合物とは、かかる液晶相を呈した状態で第1の液晶組成物中で重合し、液晶相における分子の配向を維持したまま重合体となりうる液晶化合物である。
また、本願において、第1の液晶組成物の成分であって、重合性を有する化合物(重合性液晶化合物及びその他の重合性を有する化合物等)を総称して単に「重合性化合物」ということがある。
【0043】
〔3.1.1.重合性液晶化合物〕
重合性液晶化合物の例としては、重合性基を有する液晶化合物、側鎖型液晶ポリマーを形成しうる化合物、円盤状液晶性化合物などが挙げられる。重合性基を有する液晶化合物の例としては、特開平11−513360号公報、特開2002−030042号公報、特開2004−204190号公報、特開2005−263789号公報、特開2007−119415号公報、特開2007−186430号公報などに記載された重合性基を有する棒状液晶化合物、並びに国際公開第WO2012/147904号に記載される逆波長分散液晶化合物などが挙げられる。また、側鎖型液晶ポリマー化合物としては、例えば、特開2003−177242号公報などに記載の側鎖型液晶ポリマー化合物などが挙げられる。また、好ましい液晶化合物の例を製品名で挙げると、BASF社製「LC242」等が挙げられる。円盤状液晶性化合物の具体例としては、特開平8−50206号公報、文献(C. Destrade et al., Mol. Crysr. Liq. Cryst., vol. 71, page 111 (1981) ;日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B. Kohne et al., Angew. Chem. Soc. Chem. Comm., page 1794 (1985);J. Zhang et al., J. Am. Chem. Soc., vol. 116, page 2655 (1994))に記載されている。重合性液晶化合物としては、これらの液晶化合物及び以下に述べる他の液晶化合物のうちの、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0044】
重合性液晶化合物のさらなる例として、下記の一般式(1)で表される棒状液晶性化合物が挙げられる。
−C−D−C−M−C−D−C−R (1)
【0045】
一般式(1)において、R及びRは、それぞれ独立して、重合性官能基を表す。重合性官能基としては、例えば、カルボキシル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、チオエポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、オキセタン基、チエタニル基、アジリジニル基、ピロール基、ビニル基、アリル基、フマレート基、シンナモイル基、オキサゾリン基、ヒドロキシル基、アルコキシシリル基、及びアミノ基などが挙げられる。(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタクリルのことを指す。
【0046】
一般式(1)において、D及びDは、それぞれ独立して、単結合、炭素原子数1〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のメチレン基及びアルキレン基等の二価の飽和炭化水素基、並びに、炭素原子数1〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレンオキサイド基からなる群より選択される基を表す。
【0047】
一般式(1)において、C〜Cは、それぞれ独立して、単結合、−O−、−S−、−S−S−、−CO−、−CS−、−OCO−、−CH−、−OCH−、−CH=N−N=CH−、−NHCO−、−OCOO−、−CHCOO−、及び−CHOCO−からなる群より選択される基を表す。
【0048】
一般式(1)において、Mはメソゲン基を表す。Mの具体例を挙げると、非置換又は置換基を有していてもよい、アゾメチン類、アゾキシ類、フェニル類、ビフェニル類、ターフェニル類、ナフタレン類、アントラセン類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類、アルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類の群から選択された2〜4個の骨格を、−O−、−S−、−S−S−、−CO−、−CS−、−OCO−、−CH−、−OCH−、−CH=N−N=CH−、−NHCO−、−OCOO−、−CHCOO−、及び−CHOCO−等の結合基によって結合されて形成される基を表す。
【0049】
前記のメソゲン基Mが有しうる置換基としては、例えば、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、−O−R、−O−C(=O)−R、−C(=O)−O−R、−O−C(=O)−O−R、−NR−C(=O)−R、−C(=O)−NR、または−O−C(=O)−NRを表す。
ここで、R及びRは、水素原子又は炭素原子数1〜10のアルキル基を表す。R及びRがアルキル基である場合、当該アルキル基には、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR−C(=O)−、−C(=O)−NR−、−NR−、または−C(=O)−が介在していてもよい(ただし、−O−および−S−がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。)。ここで、Rは、水素原子または炭素原子数1〜6のアルキル基を表す。前記「置換基を有してもよい炭素原子数1〜10個のアルキル基」における置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、炭素原子数1〜6個のアルコキシ基、炭素原子数2〜8個のアルコキシアルコキシ基、炭素原子数3〜15個のアルコキシアルコキシアルコキシ基、炭素原子数2〜7個のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2〜7個のアルキルカルボニルオキシ基、炭素原子数2〜7個のアルコキシカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0050】
〔3.1.2.第1の液晶組成物のその他の成分〕
第1の液晶組成物は、重合性液晶化合物に加えて、必要に応じて、以下に例示するもの等の任意の成分を含みうる。
【0051】
第1の液晶組成物は、重合開始剤を含みうる。重合開始剤としては、第1の液晶組成物中の、重合性液晶化合物、及びその他の重合性化合物が有する重合性基の種類に応じて適宜選択しうる。例えば、重合性基がラジカル重合性であればラジカル重合開始剤を、アニオン重合性の基であればアニオン重合開始剤を、カチオン重合性の基であればカチオン重合開始剤を、それぞれ使用しうる。
【0052】
ラジカル重合開始剤としては、加熱することにより、重合性化合物の重合を開始しえる活性種が発生する化合物である熱ラジカル発生剤;及び可視光線、紫外線(i線など)、遠紫外線、電子線、X線等の露光光の露光により、重合性化合物の重合を開始しえる活性種が発生する化合物である光ラジカル発生剤;のいずれも使用可能であるが、光ラジカル発生剤を使用するのが好適である。
【0053】
光ラジカル発生剤としては、例えば、国際公開第WO2012/147904号に記載される、アセトフェノン系化合物、ビイミダゾール系化合物、トリアジン系化合物、O−アシルオキシム系化合物、オニウム塩系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、α−ジケトン系化合物、多核キノン系化合物、キサントン系化合物、ジアゾ系化合物、イミドスルホナート系化合物等を挙げることができる。
【0054】
前記アニオン重合開始剤としては、例えば、アルキルリチウム化合物;ビフェニル、ナフタレン、ピレン等の、モノリチウム塩又はモノナトリウム塩;ジリチウム塩やトリリチウム塩等の多官能性開始剤;等が挙げられる。
【0055】
また、前記カチオン重合開始剤としては、例えば、硫酸、リン酸、過塩素酸、トリフルオロメタンスルホン酸等のプロトン酸;三フッ化ホウ素、塩化アルミニウム、四塩化チタン、四塩化スズのようなルイス酸;芳香族オニウム塩又は芳香族オニウム塩と、還元剤との併用系;が挙げられる。
【0056】
重合開始剤としては、市販品を用いうる。例えば、BASF社製の、商品名:Irgacure907、商品名:Irgacure184、商品名:Irgacure369、品名:Irgacure651、品名:Irgacure819、品名:Irgacure907、品名:Irgacure379、及び商品名:Irgacure OXE02、ADEKA社製の、商品名:アデカオプトマーN1919を用いうる。
これらの重合開始剤は一種単独で、又は二種以上を組合わせて用いることができる。
第1の液晶組成物において、重合開始剤の配合割合は、重合性化合物100重量部に対し、通常、0.1〜30重量部、好ましくは0.5〜10重量部である。
【0057】
第1の液晶組成物は、表面張力を調整するための、界面活性剤を含みうる。当該界面活性剤としては、特に限定はないが、通常、ノニオン系界面活性剤が好ましい。当該ノニオン系界面活性剤としては、例えば、分子量が数千程度のオリゴマーであるノニオン系界面活性剤等が挙げられる。
界面活性剤としては、市販品を用いうる。例えば、これらの界面活性剤の具体例としては、OMNOVA社PolyFoxの「PF−151N」、「PF−636」、「PF−6320」、「PF−656」、「PF−6520」、「PF−3320」、「PF−651」、「PF−652」;ネオス社フタージェントの「FTX−209F」、「FTX−208G」、「FTX−204D」;セイミケミカル社サーフロンの「KH−40」、「S−420」等を用いることができる。また、界面活性剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
第1の液晶組成物において、界面活性剤の配合割合は、重合性化合物100重量部に対し、通常、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜2重量部である。
【0058】
第1の液晶組成物は、有機溶媒等の溶媒を含みうる。かかる有機溶媒の例としては、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸ブチル、酢酸アミル等の酢酸エステル類;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;1,4−ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類;及びトルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素が挙げられる。溶媒の沸点は、取り扱い性に優れる観点から、60〜250℃であることが好ましく、60〜150℃であることがより好ましい。溶媒の使用量は、重合性化合物100重量部に対し、通常、100〜1000重量部である。
【0059】
第1の液晶組成物は、さらに、金属、金属錯体、染料、顔料、蛍光材料、燐光材料、レベリング剤、チキソ剤、ゲル化剤、多糖類、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、抗酸化剤、イオン交換樹脂、酸化チタン等の金属酸化物等の任意の添加剤を含みうる。本発明の重合性組成物において、かかる任意の添加剤の配合割合は、重合性化合物100重量部に対し、通常、各々0.1〜20重量部である。
【0060】
第1の液晶組成物は、通常、上に述べた成分を混合することにより、調製することができる。
【0061】
〔4.工程(II)〕
本発明の光学積層体の製造方法の工程(II)では、第1の液晶組成物の層中の第1の液晶化合物を配向させ、第1の液晶組成物の層に不活性ガス雰囲気下で活性エネルギー線を照射し第1の液晶組成物を硬化させ、第1光学異方性層を形成する。
【0062】
第1の液晶化合物の配向は、塗布により直ちに達成される場合もあるが、必要に応じて、塗布の後に、加温などの配向処理を施すことにより達成される場合もある。配向処理の条件は、使用する液晶組成物の性質に応じて適宜設定しうるが、例えば、50〜160℃の温度条件において30秒間〜5分間処理する条件としうる。用いる液晶組成物の組成及び処理条件を適宜設定することにより、基材の配向軸の方向と同一方向に沿った配向を達成しうる。
【0063】
配向の後直ちに活性エネルギー線照射を行ってもよいが、配向の後直ちに活性エネルギー線照射の前に、必要に応じて液晶組成物の層を乾燥させる工程を行なってもよい。かかる乾燥は、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、減圧加熱乾燥等の乾燥方法で達成しうる。かかる乾燥により、液晶組成物の層から、溶媒を除去することができる。
【0064】
活性エネルギー線照射は、不活性ガス雰囲気下で行う。不活性ガスの例としては、窒素及びアルゴンが挙げられ、低コストであることから窒素が好ましい。不活性ガス雰囲気の酸素濃度は、好ましくは3%以下、より好ましくは1%以下、特に好ましくは500ppm以下である。
【0065】
活性エネルギー線照射のその他の条件は、液晶組成物の成分の性質に適合した条件を適宜選択しうる。照射される活性エネルギー線には、可視光線、紫外線、及び赤外線等の光、並びに電子線等の任意のエネルギー線が含まれうる。なかでも、操作が簡便なことから、紫外線等の光を照射する方法が好ましい。紫外線照射時の温度の上限は、基材のガラス転移温度(Tg)以下とすることが好ましい。通常、150℃以下、好ましくは100℃以下、特に好ましくは80℃以下の範囲である。紫外線照射時の温度の下限は、15℃以上としうる。紫外線照射強度は、通常、0.1mW/cm〜1000mW/cmの範囲、好ましくは0.5mW/cm〜600mW/cmの範囲である。紫外線照射時間は、1秒〜300秒の範囲、好ましくは5秒〜100秒の範囲である。紫外線積算光量(mJ/cm)=紫外線照射強度(mW/cm)×照射時間(秒)で求められる。積算光量は、好ましくは10〜5000mJ/cmの範囲である。紫外線照射光源としては、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、低圧水銀灯を用いることができる。
【0066】
活性エネルギー線の照射は、塗布面側(基材/第1の液晶組成物の層の積層物の、第1の液晶組成物の層が形成されている側)に行うこともできるが、基材の透明度が十分に高ければ、裏面側(液晶組成物の層が形成されている側とは反対側)から行うこともできる。
【0067】
工程(II)の結果得られる第1光学異方性層の表面の鉛筆硬度は、好ましくはB以上、好ましくは4H以下である。前記鉛筆硬度がB未満の場合、耐擦傷性が不足し、搬送工程でキズが発生しやすくなる場合がある。また、前記鉛筆硬度が4Hを越える場合、光学異方性層が脆くなりすぎてクラック発生率が高くなる場合がある。このような高い表面硬度を有する第1光学異方性層は、上に述べた不活性ガス雰囲気下等の条件を満たす活性エネルギー線照射を行うことにより、容易に得ることができる。鉛筆硬度は、JIS K5600−5−4に基づき測定しうる。
【0068】
〔5.工程(III)〕
本発明の光学積層体の製造方法の工程(III)では、第1光学異方性層上に、直接、光配向材料を含む液(以下において「光配向材料液」ということがある。)を塗布して光配向材料液の層を得て、不活性ガス雰囲気下、基材の幅手方向と異なる方向の照射偏光方向を有する偏光紫外線を光配向材料の層に照射し、光配向層を形成する。
光配向材料を基材上に形成された第1光学異方性層上に塗布する場合、基材を適度の張力(通常、100〜500N/m)でテンションを掛けて、基材の搬送ばたつきを少なくし平面性を維持したまま塗布することが好ましい。平面性とは、基材の幅手方向および搬送方向に垂直な上下方向の振れ量であり、理想的には0mmであるが、通常、1mm以下である。
【0069】
このように第1光学異方性層上に直接光配向層を形成することにより、薄い光学積層体を簡便に形成することができる。また、本発明の製造方法では、上に述べた特定の方法により第1光学異方性層を形成することにより、表面硬度が高い第1光学異方性層が得られるので、その上にさらに直接光配向層を形成しても、表面にスジ状の傷を形成する傾向が少ない。
【0070】
光配向材料とは、光配向材料とは、偏光を照射されることにより不可逆的に配向する材料である。このような光配向材料の例としては、偏光を照射することにより分子そのものを変化させる光反応タイプである特許第4267080号公報に記載のPPN層に使用されるPPN材料、特許第4647782号公報に記載のLPP/LCP混合物、特許第2543666号公報に記載のPPN材料、また、偏光を照射することによりシス−トランス光異性化によって分子形状を変化させる光異性化タイプである特許第4816003号公報、特許第4935982号公報、特許第5057157号公報、特許第5076810号公報に記載のアゾベンゼン系材料などが挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。このような材料を用いて層を形成することにより、光配向層、即ち配向規制力を有し、偏光の照射により配向規制方向を制御しうる層を得ることができる。
【0071】
光配向材料液中の光配向材料の割合は、0.5〜30重量%としうる。光配向材料の割合が上記範囲よりも多いと、第1光学異方性層上に光配向層を塗工する塗布方式によっては、平面粗さに優れた配向層を形成することが困難となる場合があり、また、上記範囲よりも薄いと、溶媒の乾燥負荷が増加するため、塗布速度を所望の範囲にできない可能性がある。光配向材料液のその他の成分は、特に限定されず、溶媒等の任意の成分を含みうる。溶媒の種類は光配向材料等を所望の濃度に溶解できるもの、および第1光学異方性層を溶解させないものであれば特に限定されず、光配向材料に適合するものを適宜選択して用いうる。具体的には、メタノール、エタノール等のアルコール系溶剤、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール等のジオール系溶剤、テトラヒドロフラン、2−メトキシエターノール、2−ブトキシエタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール等のエーテル系溶剤、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤、γ−ブチロラクトン、クロロベンゼン、ジメチルスルホキシド等の有機溶媒を用いうる。これらは、単独で使用することもできるし、2種類以上混合して使用することもできる。
【0072】
光配向材料液の塗布の具体的な操作は、特に限定されず、その例としては、第1の液晶組成物の塗布のための例として挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0073】
光配向材料液の層の厚みは、特に限定されず、光配向層の厚みが所望の値となるよう適宜調整しうる。塗布の際の温度等の条件は、塗布及びその後の工程を円滑に行うことができる温度に適宜設定しうる。
【0074】
偏光紫外線は、通常、直線偏光紫外線である。偏光紫外線の照射は、不活性ガス雰囲気下で行う。不活性ガスの例としては、窒素及びアルゴンが挙げられ、低コストであることから窒素が好ましい。不活性ガス雰囲気の酸素濃度は、好ましくは3%以下、より好ましくは1%以下、特に好ましくは500ppm以下である。
【0075】
偏光紫外線の照射は、光配向材料液の層の塗布面側(光配向材料液の層の、第1光学異方性層側と反対側)から照射することもでき、その反対側から照射することもできるが、塗布面側から照射することが、製造効率や高品質な層を得る観点から好ましい。
【0076】
偏光紫外線の「照射偏光方向」とは、偏光紫外線により光配向材料の配向を規制する方向である。偏光紫外線の具体的な照射の態様としては、正面照射(即ち照射面に対して垂直な方向からの照射)、及び斜め照射(即ち照射面に対して垂直でない方向からの照射)が挙げられ、使用する光配向材料に適合する態様を適宜採用しうる。正面照射がより垂直に近いほど、光配向材料の反応が効率的に進行する。正面照射を行った場合、使用する光配向材料により、偏光紫外線の偏光方向(電場の振動面の方向)と平行または垂直な方向に光配向材料が配向する。偏光紫外線の偏光方向と平行な方向に配向する光配向材料を選定すれば、その方向が「照射偏光方向」となり、偏光方向と平行な方向に配向規制力を付与することができる。
【0077】
照射偏光方向は、基材の幅手方向と異なる方向に設定される。照射偏光方向と基材の幅手方向とがなす角度は、具体的には0°超90°未満としうる。照射偏光方向をこのような範囲の角度に設定することにより、本発明の光学積層体を、円偏光板等の効率的な製造を可能にする材料とすることができる。より具体的には、照射偏光方向と基材の幅手方向とがなす角度を、略15°又は略75°といった特定の範囲とすることにより、広帯域反射防止フィルムの材料として有用に用いうる光学積層体を、効率的に製造することができる。
【0078】
偏光紫外線照射のその他の条件は、液晶組成物の成分の性質に適合した条件を適宜選択しうる。偏光紫外線照射時の温度の上限は、基材のガラス転移温度(Tg)以下とすることが好ましい。通常、150℃以下、好ましくは100℃以下、特に好ましくは80℃以下の範囲である。紫外線照射時の温度の下限は、15℃以上としうる。紫外線照射強度は、通常、0.01mW/cm〜200mW/cmの範囲、好ましくは0.1mW/cm〜150mW/cmの範囲である。紫外線照射時間は0.1秒〜60秒の範囲、好ましくは1秒〜30秒の範囲である。積算光量は、好ましくは50〜10000mJ/cm、より好ましくは100〜5000mJ/cmの範囲である。
偏光紫外線の最大出力波長は、300nm〜500nmの範囲内であることが好ましい。また、出射される光量のうち、波長300nm〜500nmの光に由来する光量が50%以上であることが好ましい。この範囲の波長の偏光紫外線を用いることで、光配向性材料の反応が効率的に進行する。
【0079】
本発明の製造方法では、工程(II)において照射される活性エネルギー線の照射量及び工程(III)において照射される偏光紫外線照射量の合計の積算光量が、好ましくは1000mJ/cm以上、より好ましくは2000mJ/cm以上である。当該合計の積算光量の上限は、特に限定されないが、例えば10000mJ/cm以下としうる。このような高い積算光量での照射を行うことにより、その上に直接第2光学異方性層を形成する際に、その表面のスジ状の傷の形成をさらに低減することができる。
【0080】
工程(III)の結果得られる光配向層の厚みは、第2光学異方性層の配向を規制する配向規制力が得られる厚みに適宜調整しうる。具体的には、好ましくは0.001μm以上、より好ましくは0.01μm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは2μm以下である。
【0081】
工程(III)の結果得られる光配向層の表面の鉛筆硬度は、好ましくはB以上、好ましくは4H以下である。前記鉛筆硬度がB未満の場合、耐擦傷性が不足し搬送工程でキズが発生しやすくなる場合がある。また、前記鉛筆硬度が4Hを越える場合、光配向層が脆くなりすぎてクラック発生率が高くなる場合がある。このような高い表面硬度を有する光配向層は、上に述べた不活性ガス雰囲気下等の条件を満たす偏光紫外線照射を行うことにより、容易に得ることができる。第1光学異方性層の表面の鉛筆硬度、及光配向層の表面の鉛筆硬度がいずれもB以上であることにより、その上に直接第2光学異方性層を形成する際に、その表面のスジ状の傷の形成をさらに低減することができる。
【0082】
〔6.工程(IV)〕
本発明の光学積層体の製造方法の工程(IV)では、光配向層上に、直接、第2の液晶化合物を含有する第2の液晶組成物を塗布して第2の液晶組成物の層を得て、第2の液晶組成物の層中の第2の液晶化合物を配向させ、第2の液晶組成物の層に活性エネルギー線を照射し第2の液晶組成物を硬化させ、第2光学異方性層を形成する。第2の液晶組成物は、第1の液晶組成物と同一の組成物であってもよく、異なる組成物であってもよい。その例としては、第1の液晶組成物の例として上に述べたものと同様のものが挙げられる。
【0083】
第2の液晶化合物の塗布、配向、活性エネルギー線の照射の態様の具体例も、第1の液晶組成物に関するものの例として上に述べたものと同様のものが挙げられる。工程(IV)における活性エネルギー線の照射は、既に形成された強固な第1光学異方性層及び光配向層の上に第2光学異方性層を形成する工程であるので、必ずしも不活性ガス雰囲気下で行う必要は無いが、工程(II)と同様の不活性ガス雰囲気下で行うことにより、より高品質な光学異方性層を形成することができる。
【0084】
本発明の製造方法により得られた光学積層体においては、上に述べた特定の方法により第1光学異方性層及び光配向層を形成することにより、表面硬度が高く、表面の性状が良好な光配向膜が得られるので、その上にさらに第2光学異方性層を形成しても、表面にスジ状の傷を形成する傾向が少なく、塗布ムラ(第2の液晶組成物の塗布のムラに起因する、光学異方性層の表面のムラ)が少ない第2光学異方性層を得ることができる。
【0085】
〔7.光学異方性層の光学的特性等〕
好ましい態様において、第1光学異方性層及び前記第2光学異方性層の一方はλ/4波長板であり、他方がλ/2波長板である。具体的には、測定波長590nmで測定した面内レターデーションReが、108nm〜168nmの範囲である場合、λ/4波長板として使用しうる。また測定波長590nmで測定した面内レターデーションReが245nm〜305nmの範囲である場合、λ/2波長板として使用しうる。より具体的には、λ/4波長板の場合、測定波長590nmで測定した面内レターデーションReは、好ましくは128nm〜148nm、より好ましくは133nm〜143nmの範囲である。またλ/2波長板の場合、測定波長590nmで測定した面内レターデーションReは、好ましくは265nm〜285nm、より好ましくは270nm〜280nmの範囲である。ここで、面内レターデーションReは、下記式に従って算出する。
Re=(nx−ny)×d(式中、nxは、光学異方性層の面内の遅相軸方向の屈折率(面内の最大屈折率)であり、nyは、光学異方性層の面内の遅相軸に垂直な方向の屈折率であり、dは、光学異方性層の厚み(nm)である。)第1光学異方性層及び第2光学異方性層が、このようなλ/4波長板及びλ/2波長板の組み合わせである場合、それを利用して、λ/4波長板又はλ/2波長板を有する円偏光板等の光学素子を容易に製造しうる。
【0086】
第1光学異方性層の遅相軸方向は、基材の配向軸と平行となりうる。また、第2光学異方性層の遅相軸方向は、偏光紫外線の照射偏光方向と平行となりうる。
より具体的には、第1光学異方性層の遅相軸と基材の幅手方向とがなす角度を、略75°又は略15°といった特定の範囲としうる。また、第2光学異方性層の遅相軸と基材の幅手方向とがなす角度を、略15°又は略75°といった特定の範囲としうる。また、第1光学異方性層の遅相軸と第2光学異方性層の遅相軸とがなす角は、好ましくは55°〜65°、より好ましくは56°〜64°、さらにより好ましくは57°〜63°としうる。遅相軸をこのような特定の範囲とすることにより、広帯域反射防止フィルムの材料として有用に用いうる光学積層体を、効率的に製造することができる。
【0087】
光学異方性層において、液晶化合物は、液晶相を呈した状態のまま固体となり、硬化液晶分子を形成しうる。
第1光学異方性層の硬化液晶分子は、好ましくは、基材の配向軸の方向と略同一方向に沿ったホモジニアス配向規則性を有しうる。また、第2光学異方性層の硬化液晶分子は、好ましくは、偏光紫外線の照射偏光方向と略同一方向に沿ったホモジニアス配向規則性を有しうる。ここで、「ホモジニアス配向規則性を有する」とは、硬化液晶分子のメソゲンの長軸方向をフィルム面に投影して得られる線の平均方向が、フィルム面に水平なある一の方向(例えば基材フィルムの表面ダイレクターの方向)に整列することをいう。さらに、ある所定の方向に「沿った」ホモジニアス配向規則性とは、当該整列方向が、前記所定の方向に略一致することをいう。例えば、前記所定の方向とは、基材等の配向規制方向である。硬化液晶分子がホモジニアス配向規則性を有しているか否か、及びその整列方向は、AxoScan(Axometrics社製)に代表されるような位相差計を用いた遅相軸方向の測定と、遅相軸方向における入射角毎のレターデーション分布の測定とにより確認しうる。硬化液晶分子が、棒状の分子構造を有する重合性液晶化合物を重合させてなるものである場合は、通常は、当該重合性液晶化合物のメソゲンの長軸方向が、硬化液晶分子のメソゲンの長軸方向となる。
【0088】
基材として上に説明した所定の配向軸を有するものを用い、さらに光学異方性層の材料を適宜選択することにより、光学異方性層に、遅相軸の方向と略同一方向に沿ったホモジニアス配向規則性等の配向規則性を付与することができ、その結果、このような配向規則性を有する光学異方性層を得ることができる。
【0089】
光学異方性層の厚みは、特に限定されず、レターデーションなどの特性を所望の範囲とできるよう適宜調整することができる。具体的には、厚みの下限は0.5μm以上であることが好ましく、1.0μm以上であることがより好ましく、一方厚みの上限は10μm以下であることが好ましく、7μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることがさらにより好ましい。第1の液晶組成物及び第2の液晶組成物として、同じ組成物を用いる場合、光学異方性層の厚みを異なる厚みに調整することにより、一方をλ/4波長板、他方をλ/2波長板とすることができる。
光学異方性層の長さ及び幅は、基材と同様の長尺状のフィルム状の形状とすることができ、これを、必要に応じて所望の用途に適合した矩形などの形状に裁断することができる。
【0090】
〔8.光学異方性積層体〕
本発明の光学異方性積層体は、第1光学異方性層、光配向膜、及び第2光学異方性層をこの順に備える光学異方性積層体であって、前記本発明の光学積層体より基材を剥離してなる。本願においては、光学積層体より得られたこのような構成を有する積層体を、光学積層体と文言上区別するため「光学異方性積層体」と称する。
【0091】
本発明の光学異方性積層体は、必要に応じてさらに、光学異方性層を保護するため光学異方性層に貼合された、マスキングフィルム等の保護フィルムを含みうる。マスキングフィルムとしては、既知のもの(例えば、トレテガー社製のFF1025、「FF1035」;サンエー化研社製の「SAT116T」、「SAT2038T−JSL」及び「SAT4538T−JSL」;藤森工業社製の「NBO−0424」、「TFB−K001」、「TFB−K0421」及び「TFB−K202」;日立化成社製の「DT−2200−25」及び「K−6040」;寺岡製作所社製の「6010#75」、「6010#100」、「6011#75」及び「6093#75」)を用いうる。このようなマスキングフィルムを有する光学異方性積層体からは、光学異方性層を他の部材に容易に転写することができる。したがって、光学異方性層を有する光学素子を容易に製造することができる。
【0092】
〔9.円偏光板〕
本発明の円偏光板は、前記本発明の光学異方性積層体と、長尺状の直線偏光子とをロールツーロールで貼合してなる。ロールツーロールでの貼合とは、長尺状のフィルムのロールからフィルムを繰り出し、これを搬送し、搬送ライン上で他のフィルムとの貼合の工程を行い、さらに得られた貼合物を巻き取りロールとする態様の貼合をいう。例えば、直線偏光子と光学異方性積層体とを貼合する場合、長尺状の光学異方性積層体のロールから光学異方性積層体を繰り出し、これを搬送し、搬送ライン上で直線偏光子との貼合の工程を行い、得られた貼合物を巻き取りロールとすることにより、ロールツーロールでの貼合を行いうる。この場合において、直線偏光子も、ロールから繰り出して貼合の工程に供給しうる。光学異方性積層体と貼合する直線偏光子としては、予め偏光子保護フィルムと貼合された複層構造の状態のものを用い、これを貼合してもよい。
【0093】
本発明に用いる偏光子に自然光を入射させると一方の偏光だけが透過する。本発明に用いる偏光子の偏光度は特に限定されないが、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上である。偏光子の平均厚みは好ましくは5〜80μmである。
【0094】
直線偏光子としては、液晶表示装置、及びその他の光学装置等の装置に用いられている既知の偏光子を用いうる。直線偏光子の例としては、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素又は二色性染料を吸着させた後、ホウ酸浴中で一軸延伸することによって得られるもの、及びポリビニルアルコールフィルムにヨウ素又は二色性染料を吸着させ延伸しさらに分子鎖中のポリビニルアルコール単位の一部をポリビニレン単位に変性することによって得られるものが挙げられる。直線偏光子の他の例としては、グリッド偏光子、多層偏光子、コレステリック液晶偏光子などの偏光を反射光と透過光に分離する機能を有する偏光子が挙げられる。これらのうちポリビニルアルコールを含有する偏光子が好ましい。また、直線偏光子としては、市販の製品(例えばサンリッツ社製、商品名「HLC2−5618S」、「LLC2−9218S」、「HLC2−2518)、日東電工社製、商品名「TEG1465DU」、「SEG1423DU」、「SEG5425DU」等)を用いうる。
【0095】
光学異方性積層体と、直線偏光子との貼合は、光学異方性積層体の、直線偏光子と貼合する側の光学異方性層が、λ/2波長板となり、且つ、直線偏光子の透過軸と、直線偏光子と貼合する側の光学異方性層の遅相軸とがなす角が10〜20°又は70〜80°となるよう行う。
【0096】
本発明にかかるある製品(光学積層体、光学異方性積層体、円偏光板、表示装置等)において、面内の光学軸(遅相軸、透過軸、透過軸等)の方向及び幾何学的方向(フィルムの長手方向及び幅手方向等)の角度関係は、ある方向のシフトを正、他の方向のシフトを負として規定され、当該正及び負の方向は、当該製品内の構成要素において共通に規定される。例えば、ある円偏光板において、「直線偏光子の透過軸の方向に対するλ/2波長板の遅相軸の方向が15°であり直線偏光子の透過軸の方向に対する1/4λ波長板の遅相軸の方向が75°である」とは、下記の2通りの場合を表す:
・当該円偏光板を、そのある一方の面から観察すると、λ/2波長板の遅相軸の方向が、直線偏光子の透過軸の方向から時計周りに15°シフトし、且つ1/4λ波長板の遅相軸の方向が、直線偏光子の透過軸の方向から時計周りに75°シフトしている。
・当該円偏光板を、そのある一方の面から観察すると、λ/2波長板の遅相軸の方向が、直線偏光子の透過軸の方向から反時計周りに15°シフトし、且つ1/4λ波長板の遅相軸の方向が、直線偏光子の透過軸の方向から反時計周りに75°シフトしている。
【0097】
本発明の円偏光板の好ましい例としては、以下の例(a)及び例(b)が挙げられる。
例(a):直線偏光子、λ/2波長板、及びλ/4波長板をこの順に有し、直線偏光子の透過軸の方向に対するλ/2波長板の遅相軸の方向が略15°であり直線偏光子の透過軸の方向に対する1/4λ波長板の遅相軸の方向が略75°である。
例(b):直線偏光子、λ/2波長板、及びλ/4波長板をこの順に有し、直線偏光子の透過軸の方向に対するλ/2波長板の遅相軸の方向が略75°であり直線偏光子の透過軸の方向に対する1/4λ波長板の遅相軸の方向が略15°である。
【0098】
本発明の製造方法で得られた光学積層体から、光学異方性積層体及び円偏光板を順次製造する工程を、図面を参照して説明する。図1は、本発明の製造方法で得られた光学積層体の一例を模式的に示す断面図であり、図2は、図1に示す光学積層体から得た光学異方性積層体の一例を模式的に示す断面図であり、図3は、図2に示す光学異方性積層体から得た円偏光板の一例を模式的に示す断面図である。
【0099】
図1において、光学積層体100は、基材111と、その面上に形成された第1光学異方性層121(λ/4)、その面上に形成された光配向層131、及びその面上に形成された第2光学異方性層122(λ/2)を備える。この例では、第1光学積層体121(λ/4)はλ/4波長板であり、一方第2光学異方性層122(λ/2)はλ/2波長板である。図2に示す光学異方性積層体200は、光学積層体100から基材111を剥離してなるものである。図3に示す円偏光板300は、図2に示す光学異方性積層体200の第2光学異方性層122(λ/2)側の面に、直線偏光子141を貼合してなるものである。
【0100】
一般に、容易に入手しうる長尺の直線偏光子の多くは、その幅手方向に透過軸を有する。このような円偏光板300において、第1光学異方性層121(λ/4)の遅相軸、第2光学異方性層122(λ/2)の遅相軸、及び直線偏光子の透過軸の関係の好ましい例は、下記例(300−a)及び(300−b)の通りである。
【0101】
例(300−a):
直線偏光子の透過軸方向:幅手方向
第1光学異方性層121(λ/4)の遅相軸方向:幅手方向となす角略75°
第2光学異方性層122(λ/2)の遅相軸方向:幅手方向となす角略15°
【0102】
例(300−b):
直線偏光子の透過軸方向:幅手方向
第1光学異方性層121(λ/4)の遅相軸方向:幅手方向となす角略15°
第2光学異方性層122(λ/2)の遅相軸方向:幅手方向となす角略75°
【0103】
図4は、本発明の製造方法で得られた光学積層体の別の一例を模式的に示す断面図であり、図5は、図4に示す光学積層体から得た光学異方性積層体の一例を模式的に示す断面図であり、図6は、図5に示す光学異方性積層体から得た円偏光板の一例を模式的に示す断面図である。
【0104】
図4において、光学積層体400は、基材111と、その面上に形成された第1光学異方性層422(λ/2)、その面上に形成された光配向層131、及びその面上に形成された第2光学異方性層421(λ/4)を備える。この例では、第1光学積層体422(λ/2)はλ/2波長板であり、一方第2光学異方性層421(λ/4)はλ/4波長板である。図5に示す光学異方性積層体500は、光学積層体500から基材111を剥離してなるものである。図6に示す円偏光板600は、図5に示す光学異方性積層体500の第1光学異方性層422(λ/2)側の面に、直線偏光子141を貼合してなるものである。
【0105】
このような円偏光板600において、第1光学異方性層422(λ/2)の遅相軸、第2光学異方性層421(λ/4)の遅相軸、及び直線偏光子の透過軸の関係の好ましい例は、下記例(600−a)及び(600−b)の通りである。
【0106】
例(600−a):
直線偏光子の透過軸方向:幅手方向
第1光学異方性層422(λ/2)の遅相軸方向:幅手方向となす角略15°
第2光学異方性層421(λ/4)の遅相軸方向:幅手方向となす角略75°
【0107】
例(600−b):
直線偏光子の透過軸方向:幅手方向
第1光学異方性層422(λ/2)の遅相軸方向:幅手方向となす角略75°
第2光学異方性層421(λ/4)の遅相軸方向:幅手方向となす角略15°
【0108】
このような円偏光板は、ロールツーロールで製造することができ、且つ、長尺の形状の長手方向に平行な方向及び幅手方向に平行な方向に切断することにより、表示装置の反射防止フィルムとして適用可能な矩形の形状に切り出すことができるため、高品質の円偏光板として効率的に製造することが可能となる。
【0109】
本発明の円偏光板は、必要に応じてその他の任意の層を有していてもよい。任意の層の例としては、他の部材と接着するための接着層、フィルムの滑り性を良くするマット層、耐衝撃性ポリメタクリレート樹脂層などのハードコート層、反射防止層、防汚層等が挙げられる。
【0110】
〔10.有機エレクトロルミネッセンス表示装置〕
本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、前記本発明の円偏光板を備える。本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置において、円偏光板は、反射防止フィルムとして機能しうる。即ち、表示装置の表面に、上に述べた構成を有する円偏光板を、直線偏光子側の面が視認側に向くように設けることにより、装置外部から入射した光が装置内で反射して装置外部へ出射することを抑制することができ、その結果、表示装置の表示面のぎらつきなどの不所望な減少を抑制しうる。具体的には、装置外部から入射した光は、その一部の直線偏光のみが直線偏光子を通過し、次にそれが光学異方性層を通過することにより円偏光となる。ここでいう円偏光としては、実質的に反射防止機能を発現する範囲であれば楕円偏光も包含される。円偏光は、装置内の光を反射する構成要素(有機EL素子中の反射電極等)により反射され、再び光学異方性層を通過することにより、入射した直線偏光の偏光軸と直交する方向に偏光軸を有する直線偏光となり、直線偏光子を通過しなくなる。これにより、反射防止の機能が達成される。
【実施例】
【0111】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明は以下に説明する実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施してもよい。
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温及び常圧の条件において行った。
【0112】
〔位相差値および遅相軸方向の測定方法〕
測定対象物を偏光解析装置(アクソメトリクス社製「AxoScan」)のステージに設置し、4方位角方位(0°、45°、90°、135°)に対し、極角−50°〜50°の範囲でデータを取得し、これにより位相差値及び遅相軸方向を測定した。
測定対象物が、延伸基材と他の層との複層物である場合は、取得したデータを多層解析ソフト(アクソメトリクス社製「Multi−Layer Analysis」)に入力し、延伸基材の物性を既知とし、光学異方性層の三次元屈折率および配向角をフィッティングパラメータとして算出し、それにより位相差値、遅相軸方向、及び(測定対象物が光学積層体である場合は)第1光学異方性層の遅相軸と第2光学異方性層の遅相軸との交差角度を求めた。
【0113】
〔基材の配向軸方向と第1光学異方性層の遅相軸方向とのズレの測定方法〕
基材に第1の液晶組成物を塗布する前に、基材の第1の液晶組成物塗布面と反対の面に基準線を描いた。工程(I)、(II)を経て、第1光学異方性層を形成した後、第1光学異方性層の面に、基材の基準面と重なる位置に、基準線を描いた。その後、第1光学異方性層を粘着剤を介してガラス板に転写し、基材から剥離した。その後、基材の配向軸方向及び第1光学異方性層の遅相軸のそれぞれを、AxoScan(アクソメトリクス社製)を用いて測定し、基材と配向軸方向と基材上の基準線とがなす角度、及び第1光学異方性層の遅相軸と第1光学異方性層上の基準線とがなす角度を求めた。これらの角度から、基材の配向軸方向と第1光学異方性層の遅相軸方向とのズレを求めた。
【0114】
〔表面硬度〕
光学異方性層及び光配向層の表面硬度は、JISK5600−5−4に基づき、鉛筆硬度を測定して評価した。
【0115】
〔表面傷の評価〕
光配向層及び第2光学異方性層の表面傷は、以下の評価基準に基づいて評価した。
良:偏光顕微鏡で観察した時に、スジ状の傷が無い。
可:偏光顕微鏡で観察した時に、スジ状の傷が少しある。
不良:偏光顕微鏡で観察した時に、スジ状の傷が多数ある。
【0116】
〔塗布ムラの評価〕
第2光学異方性層の塗布ムラは、以下の評価基準に基づいて評価した。
良:偏光顕微鏡で観察した時に、ムラが無い。
不良:偏光顕微鏡で観察した時に、ムラがある。
【0117】
〔製造例1:延伸前基材A〕
熱可塑性ノルボルネン樹脂のペレット(日本ゼオン株式会社製、商品名「ZEONOR1420R」、Tg137℃)を100℃で5時間乾燥させた。乾燥させたペレットを押し出し機に供給し、押し出し機内で溶融させ、ポリマーパイプおよびポリマーフィルターを通し、Tダイからキャスティングドラム上にシート状に押し出し、冷却し、マスキングフィルム(トレテガー社製、FF1025)で保護しながら巻取り、厚み80μm、幅1490mmの延伸前基材のロール(A)を得た。
【0118】
〔製造例2:延伸前基材B〕
熱可塑性ノルボルネン樹脂のペレットを、Tg126℃のもの(日本ゼオン株式会社製)に変更し、Tダイを変更した他は、製造例1と同様にして、厚み100μm、幅1490mmの延伸前基材のロール(B)を得た。
【0119】
〔製造例3:延伸前基材C〕
熱可塑性ノルボルネン樹脂のペレットを、Tg126℃のもの(日本ゼオン株式会社製)に変更し、Tダイを変更した他は、製造例1と同様にして、厚み60μm、幅1350mmの延伸前基材のロール(C)を得た。
【0120】
〔製造例4:液晶組成物A〕
重合性液晶化合物(商品名「LC242」BASF社製、式(A1)で示される化合物)24.15部、界面活性剤(商品名「フタージェントFTX−209F」、ネオス社製)0.12部、重合開始剤(商品名「IRGACURE379」、BASF社製)0.73部、及び溶媒(メチルエチルケトン)75.00部を混合し、液晶組成物を調製した。
【0121】
【化1】
【0122】
〔実施例1〕
(1−1.延伸基材)
製造例1で得た長尺の延伸前基材Aを、ロール(A)から引き出し、連続的にマスキングフィルムを剥離してテンター延伸機に供給し、基材の配向角が幅手方向に対して15°となるように斜め延伸を行った。新たなマスキングフィルム(トレテガー社製、FF1025)で保護しながら延伸された基材を巻き取り、延伸基材のロールを得た。得られた延伸基材の遅相軸は幅手方向に対して15°、Reは265nm、膜厚は40μmであった。また、液晶組成物を塗布する面の表面粗さ(Ra)は、0.005μmであった。
【0123】
(1−2.工程(I))
(1−1)で得た延伸基材のロールから、延伸基材を繰り出し、連続的にマスキングフィルムを剥離して搬送した。搬送される延伸基材の、マスキングフィルムが貼合されていた側の面上に直接、製造例4で得た液晶組成物Aを、ダイコーターを使用して室温25℃にて塗布し、液晶組成物の層を形成した。
【0124】
(1−3.工程(II))
(1−2)で延伸基材上に形成した液晶組成物の層を、110℃で2.5分間配向処理した。その後、窒素雰囲気下(酸素濃度0.1%以下)、積算光量1000mJ/cmの紫外線を基材裏面側(液晶組成物の層が形成されている側とは反対側)に照射して、液晶組成物の層を硬化させた。これにより、延伸基材上に、Re240nm、乾燥膜厚2.2μmの、ホモジニアス配向した第1光学異方性層を形成し、(第1光学異方性層)/(延伸基材)の層構成を有する複層物を得た。第1光学異方性層の遅相軸方向と、基材の配向軸方向とのズレは1°であり、第1光学異方性層の表面硬度はFであった。
【0125】
(1−4.工程(III))
(1−3)で得た複層物の第1光学異方性層側の面上に、光配向材料液(DIC社製:LIA−02、固形分1重量%、溶媒2−ブトキシエタノール99重量%)を#2バーにより塗布し、80℃にて2分間乾燥させて、光配向材料液の層を形成した。その後、光配向材料液の層の塗布面側(光配向材料液の層の、光学異方性層側と反対側)に、313nm付近の波長の直線偏光紫外線を照射し、光配向材料液の層を硬化させた。照射の方向の極角は0°(照射面に対して垂直)とし、直線偏光紫外線の偏光方向の方位角は、基材の幅手方向に対して75°とした。照射の環境は、窒素雰囲気下(酸素濃度0.1%以下)、室温25℃とした。照射の積算光量は500mJ/cmとした。これにより、厚み0.05μmの光配向層を形成し、(光配向層)/(第1光学異方性層)/(延伸基材)の層構成を有する複層物を得た。光配向層の表面硬度はBであった。光配向層の表面を偏光顕微鏡で観察し、表面傷の状態を評価したところ、「良」(スジ状の傷が無し)と判定された。
【0126】
(1−5.工程(IV))
(1−4)で得た複層物の光配向層側の面上に、製造例4で得た液晶組成物Aを、ダイコーターを使用して室温25℃で塗布し、液晶組成物の層を形成した。この液晶組成物の層を110℃で2.5分間配向処理した。その後、窒素雰囲気下(酸素濃度0.1%以下)、2000mJ/cm以上の紫外線を塗布面側(液晶組成物の層の、光配向層と反対側)に照射して、液晶組成物の層を硬化させた。これにより、光配向層上に、Re145nm、乾燥膜厚1.1μmの、ホモジニアス配向した第2光学異方性層を形成し、(第2光学異方性層)/(光配向層)/(第1光学異方性層)/(延伸基材)の層構成を有する光学積層体を得た。第2光学異方性層の遅相軸方向と、光配向層方向とのズレは1°であり、第2光学異方性層の表面硬度はHBであった。第2光学異方性層の表面を偏光顕微鏡で観察し、塗布ムラ及び表面傷の状態を評価したところ、塗布ムラは「良」(ムラなし)、表面傷は「可」(スジ状の傷が少しある)と判定された。
【0127】
〔実施例2〕
(2−1.延伸基材)
製造例2で得た長尺の延伸前基材Bを、ロール(B)から引き出し、連続的にマスキングフィルムを剥離してテンター延伸機に供給し、斜め延伸、及びそれに続く縦延伸を連続的に行った。その結果、基材の配向角は幅手方向に対して75°となった。新たなマスキングフィルム(トレテガー社製、FF1025)で保護しながら延伸された基材を巻き取り、延伸基材のロールを得た。得られた延伸基材の遅相軸は幅手方向に対して75°、Reは140nm、膜厚は57μmであった。
【0128】
(2−2.工程(I)〜(IV))
下記の事項を変更した他は実施例1の(1−2)〜(1−5)と同一の操作で光学積層体を製造し評価した。評価結果を表1〜表4に示す。
・(1−2)において、延伸基材として、実施例1の(1−1)で得たものに代えて、(2−1)で得たものを用いた。
・(1−3)において、紫外線の照射の積算光量を2000mJ/cmに変更した。
・(1−2)における液晶組成物の塗布厚みを調整した。その結果、(1−3)において得られた第1光学異方性層のReは145nm、乾燥膜厚は1.1μmであった。
・(1−4)において、直線偏光紫外線の偏光方向の方位角は、基材の幅手方向に対して15°とした。
・(1−5)において、液晶組成物の塗布厚みを調整した。得られた第2光学異方性層のReは260nm、乾燥膜厚は2.2μmであった。
【0129】
〔実施例3〕
(3−1.延伸基材)
製造例1で得た長尺の延伸前基材Aを、ロール(A)から引き出し、連続的にマスキングフィルムを剥離してテンター延伸機に供給し、斜め延伸、及びそれに続く縦延伸を連続的に行った。その結果、基材の配向角は幅手方向に対して75°となった。新たなマスキングフィルム(トレテガー社製、FF1025)で保護しながら延伸された基材を巻き取り、延伸基材のロールを得た。得られた延伸基材の遅相軸は幅手方向に対して75°、Reは144nm、膜厚は54μmであった。
【0130】
(3−2.工程(I)〜(IV))
下記の事項を変更した他は実施例1の(1−2)〜(1−5)と同一の操作で光学積層体を製造し評価した。評価結果を表1〜表4に示す。
・(1−2)において、延伸基材として、実施例1の(1−1)で得たものに代えて、(3−1)で得たものを用いた。
・(1−3)において、紫外線の照射の積算光量を1500mJ/cmに変更した。また、得られた第1光学異方性層の厚み等が若干変動し、Reは245nm、乾燥膜厚は2.1μmであった。
・(1−4)において、直線偏光紫外線の偏光方向の方位角は、基材の幅手方向に対して15°とした。
・(1−5)において、得られた第2光学異方性層の厚み等が若干変動し、Reは148nm、乾燥膜厚は1.2μmであった。
【0131】
〔実施例4〕
下記の事項を変更した他は実施例1と同一の操作で光学積層体を製造し評価した。評価結果を表1〜表4に示す。
・(1−1)において、製造例1で得た延伸前基材Aに代えて、製造例3で得た延伸前基材Cを用いた。得られた延伸基材の遅相軸は幅手方向に対して15°、Reは141nm、膜厚は25μmであった。
・(1−2)において、延伸基材として、実施例1の(1−1)で得たものに代えて、(4−1)で得たものを用いた。
・(1−3)において、紫外線の照射を、基材裏面側ではなく塗布面側(液晶組成物の層が形成されている側)への照射とした。また、積算光量は500mJ/cmに変更した。
・(1−2)における液晶組成物の塗布厚みを調整した。その結果、(1−3)において得られた第1光学異方性層のReは148nm、乾燥膜厚は1.2μmであった。
・(1−5)において、液晶組成物の塗布厚みを調整した。得られた第2光学異方性層のReは255nm、乾燥膜厚は2.1μmであった。
【0132】
〔実施例5〕
下記の事項を変更した他は実施例1と同一の操作で光学積層体を製造し評価した。評価結果を表1〜表4に示す。
・(1−3)において、紫外線の照射の積算光量を1500mJ/cmに変更した。また、得られた第1光学異方性層の厚み等が若干変動し、Reは235nm、乾燥膜厚は2.1μmであった。
・(1−4)において、直線偏光紫外線の積算光量を1000mJ/cmに変更した。
・(1−5)において、得られた第2光学異方性層の厚み等が若干変動し、Reは144nm、乾燥膜厚は1.1μmであった。
【0133】
〔比較例1〕
下記の事項を変更した他は実施例1の(1−1)〜(1−4)と同一の操作を行い、複層物を得て評価した。但し、光配向層の状態が不良であったため、実施例1の工程(1−5)に相当する工程は行わなかった。評価結果を表1〜表4に示す。
・(1−3)において、紫外線の照射の積算光量を200mJ/cmに変更し、照射の環境を、窒素雰囲気下ではなく、空気下に変更した。また、得られた第1光学異方性層の厚み等が若干変動し、Reは233nm、乾燥膜厚は2.1μmであった。
・(1−4)において、直線偏光紫外線の積算光量を200mJ/cmに変更し、照射の環境を、窒素雰囲気下ではなく、空気下に変更した。
【0134】
〔比較例2〕
下記の事項を変更した他は実施例1と同一の操作を行い、複層物を得て評価した。評価結果を表1〜表4に示す。
・(1−3)において、紫外線の照射の積算光量を500mJ/cmに変更した。
・(1−4)において、直線偏光紫外線の積算光量を200mJ/cmに変更し、照射の環境を、窒素雰囲気下ではなく、空気下に変更した。
【0135】
【表1】
【0136】
【表2】
【0137】
【表3】
【0138】
【表4】
【0139】
実施例及び比較例の結果から、本発明によれば、基材上に第1光学異方性層、光配向層、及び第2光学異方性層を順次形成する製造方法で、各層の表面傷及び塗布ムラの少ない光学積層体を容易に製造することができ、従って、そのような光学異方性層を備えた円偏光板等の製造を効率的に行いうることが分かる。
【符号の説明】
【0140】
100:光学積層体
111:基材
121(λ/4):第1光学異方性層
131:光配向層
122(λ/2):第2光学異方性層
200:光学異方性積層体
300:円偏光板
141:直線偏光子
400:光学積層体
422(λ/2):第1光学異方性層
421(λ/4):第2光学異方性層
500:光学異方性積層体
600:円偏光板
図1
図2
図3
図4
図5
図6