(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態について説明する。
<有機エレクトロニクス材料>
本発明の実施形態である有機エレクトロニクス材料は、sp
2炭素を7個以上含み、芳香環を2個以上有し、ベンゼン環が3個以上隣接して縮合した縮合環を含まない構造単位(当該構造単位を「構造単位T1」ともいう。)を、少なくとも1つの末端に有する電荷輸送性ポリマーを含有する。有機エレクトロニクス材料は、電荷輸送性ポリマーを、1種のみ含有しても、又は、2種以上含有してもよい。電荷輸送性ポリマーは、低分子化合物と比較し、湿式プロセスにおける成膜性に優れるという点で好ましい。
【0021】
[電荷輸送性ポリマー]
電荷輸送性ポリマーは電荷を輸送する能力を有する。輸送する電荷としては正孔が好ましい。電荷輸送性ポリマーのポリマー鎖は、電荷を輸送する能力を有する構造単位を含む。電荷輸送性ポリマーは、1種の構造単位を有する単独重合体であっても、又は、2種以上の構造単位を有する共重合体であってもよい。電荷輸送性ポリマーが共重合体である場合、共重合体は、交互、ランダム、ブロック又はグラフト共重合体であってもよいし、それらの中間的な構造を有する共重合体、例えばブロック性を帯びたランダム共重合体であってもよい。一実施形態において、構造単位は単量体単位を意味する。電荷を輸送する能力を有する構造単位の例としては、後述する構造単位Lが挙げられる。
【0022】
電荷輸送性ポリマーは、直鎖状であっても、又は、分岐構造を有していてもよい。直鎖状の電荷輸送性ポリマーは、2個の末端を有し、分岐構造を有する電荷輸送性ポリマーは、3個以上の末端を有する。末端とは、ポリマー鎖の端をいう。電荷輸送性ポリマーは、構造単位T1を少なくとも1つの末端に有する。
【0023】
電荷輸送性ポリマーは、好ましくは、電荷輸送性を有する2価の構造単位Lと末端部を構成する1価の構造単位Tとを少なくとも含み、分岐部を構成する3価以上の構造単位Bを更に含んでもよい。構造単位Tは、構造単位T1を少なくとも含む。電荷輸送性ポリマーは、各構造単位を、それぞれ1種のみ含んでいても、又は、それぞれ複数種含んでいてもよい。電荷輸送性ポリマーにおいて、各構造単位は、「1価」〜「3価以上」の結合部位において互いに結合している。
【0024】
(構造)
電荷輸送性ポリマーに含まれる部分構造の例として、以下が挙げられる。電荷輸送性ポリマーは以下の部分構造を有するポリマーに限定されない。部分構造中、「L」は構造単位Lを、「T」は構造単位Tを、「B」は構造単位Bを表す。「*」は、他の構造単位との結合部位を表す。以下の部分構造中、複数のLは、互いに同一の構造単位であっても、互いに異なる構造単位であってもよい。T及びBについても、同様である。
【0025】
直鎖状の電荷輸送性ポリマー
【化1】
【0026】
分岐構造を有する電荷輸送性ポリマー
【化2】
【0027】
(構造単位L)
構造単位Lは、電荷輸送性を有する2価の構造単位である。構造単位Lは、電荷を輸送する能力を有する原子団を含んでいればよく、特に限定されない。例えば、構造単位Lは、置換又は非置換の、芳香族アミン構造、カルバゾール構造、チオフェン構造、フルオレン構造、ベンゼン構造、ビフェニレン構造、ターフェニレン構造、ナフタレン構造、アントラセン構造、テトラセン構造、フェナントレン構造、ジヒドロフェナントレン構造、ピリジン構造、ピラジン構造、キノリン構造、イソキノリン構造、キノキサリン構造、アクリジン構造、ジアザフェナントレン構造、フラン構造、ピロール構造、オキサゾール構造、オキサジアゾール構造、チアゾール構造、チアジアゾール構造、トリアゾール構造、ベンゾチオフェン構造、ベンゾオキサゾール構造、ベンゾオキサジアゾール構造、ベンゾチアゾール構造、ベンゾチアジアゾール構造、ベンゾトリアゾール構造、及び、これらの1種又は2種以上を含む構造から選択される。芳香族アミン構造は、好ましくはトリアリールアミン構造であり、より好ましくはトリフェニルアミン構造である。
【0028】
一実施形態において、構造単位Lは、優れた正孔輸送性を得る観点から、置換又は非置換の、芳香族アミン構造、カルバゾール構造、チオフェン構造、フルオレン構造、ベンゼン構造、ピロール構造、及び、これらの1種又は2種以上を含む構造から選択されることが好ましく、置換又は非置換の、芳香族アミン構造、カルバゾール構造、及び、これらの1種又は2種以上を含む構造から選択されることがより好ましい。他の実施形態において、構造単位Lは、優れた電子輸送性を得る観点から、置換又は非置換の、フルオレン構造、ベンゼン構造、フェナントレン構造、ピリジン構造、キノリン構造、及び、これらの1種又は2種以上を含む構造から選択されることが好ましい。
【0029】
構造単位Lの具体例として、以下が挙げられる。構造単位Lは、以下に限定されない。
【化3】
【0031】
Rは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。好ましくは、Rは、それぞれ独立に、−R
1、−OR
2、−SR
3、−OCOR
4、−COOR
5、−SiR
6R
7R
8、ハロゲン原子、及び、後述する重合性官能基を含む基からなる群から選択される。R
1〜R
8は、それぞれ独立に、水素原子;炭素数1〜22個の直鎖、環状又は分岐アルキル基;又は、炭素数2〜30個のアリール基又はヘテロアリール基を表す。アルキル基は、更に、炭素数2〜20個のアリール基又はヘテロアリール基により置換されていてもよく、アリール基又はヘテロアリール基は、更に、炭素数1〜22個の直鎖、環状又は分岐アルキル基により置換されていてもよい。Rは、好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキル置換アリール基である。Arは、炭素数2〜30個のアリーレン基又はヘテロアリーレン基を表す。Arは、好ましくはアリーレン基であり、より好ましくはフェニレン基である。
【0032】
本明細書において、アリール基は、芳香族炭化水素から水素原子1個を除いた原子団である。ヘテロアリール基は、芳香族複素環から水素原子1個を除いた原子団である。アリーレン基は、芳香族炭化水素から水素原子2個を除いた原子団である。ヘテロアリーレン基は、芳香族複素環から水素原子2個を除いた原子団である。芳香族炭化水素としては、単環、縮合環、又は、単環及び縮合環から選択される2個以上が単結合を介して結合した多環が挙げられる。芳香族複素環としては、単環、縮合環、又は、単環及び縮合環から選択される2個以上が単結合を介して結合した多環が挙げられる。
【0033】
(構造単位T)
構造単位Tは、電荷輸送性ポリマーの末端部を構成する1価の構造単位である。構造単位Tは、構造単位Lと同じ構造を有していても、又は、異なる構造を有していてもよい。電荷輸送性ポリマーは、構造単位Tとして、少なくとも1つの末端に、sp
2炭素を7個以上含み、芳香環を2個以上有し、ベンゼン環が3個以上隣接して縮合した縮合環を含まない構造単位T1を有する。電荷輸送性ポリマーは、構造単位T1を、1種のみ有していても、又は、2種以上有していてもよい。電荷輸送性ポリマーは、末端に構造単位T1を含むことで、電子の輸送性が向上すると考えられる。特に、電荷輸送性ポリマーが、正孔輸送性を有する構造単位と、末端に構造単位T1とを有する場合、電荷輸送性ポリマーは、正孔輸送性が保たれつつ、電子に対しての安定性が向上するため、結果として有機エレクトロニクス材料として高い性能を発揮することができると考えられる。
【0034】
「sp
2炭素を7個以上含む」とは、構造単位T1に含まれる炭素原子のうち、7個以上の炭素原子がsp
2混成軌道をとっていることを意味する。構造単位T1に含まれるsp
2炭素が7個未満であると、寿命特性の向上効果が得られない。sp
2炭素の数は、寿命特性を十分に高める観点から、好ましくは10個以上であり、より好ましくは12個以上である。また、sp
2炭素の数は、剛直な骨格となることを防ぎ、溶解性を高める観点から、好ましくは40個以下であり、より好ましくは35個以下であり、更に好ましくは30個以下である。
【0035】
構造単位T1は、芳香環を2個以上含む。ここでの「芳香環」は、芳香性を示す1つの環をいう。「芳香環」としては、例えば、ベンゼン環、ピリジン環、ピロール環、フラン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ホスホール環等が挙げられる。寿命特性を高める観点から、好ましくは、ベンゼン環である。構造単位T1が、ベンゼン環を2個以上含む場合は、ベンゼン環を含まない場合(例えば、ビピリジン)又はベンゼン環を1個のみ含む場合と比較し、発光効率及び発光寿命が向上する傾向がある。
【0036】
芳香環の数は、正孔輸送性を良好に保つ観点から、8個以下が好ましく、7個以下がより好ましく、6個以下が更に好ましい。芳香環の数が1個であると、寿命特性の向上効果が得られない。
【0037】
2個以上の芳香環は、互いに縮合した縮合環を含んでいても、又は、単環を含んでいてもよい。2個以上の芳香環の態様には、縮合環;互いに結合した2個以上の単環;互いに結合した2個以上の縮合環;互いに結合した単環と縮合環などが含まれる。結合としては、単結合又は連結基を介した結合が挙げられる。連結基としては、例えば、アルキレン基、アルケニレン基等が挙げられ、好ましくはアルケニレン基である。但し、構造単位T1内には、ベンゼン環が3個以上隣接して縮合した縮合環(例えば、アントラセン、フェナントレン、ピレン、ペリレン等)は含まれないものとする。ベンゼン環が3個以上隣接して縮合した縮合環が含まれると、その共役系によって局所的に低いエネルギー準位が生成するために、良好な性能が得られない。
【0038】
好ましい一実施形態において、構造単位T1は、2個以上の芳香環として縮合環を含む。縮合環は、好ましくは、ナフタレン、アセナフチレン、フルオレン、スピロビフルオレン、カルバゾール、カルボリン、アクリジン、カルバジン、インデノカルバゾール、インドロカルバゾール、キサンテン、ジベンゾフラン、フルオレノン、アントラキノン、チアントレン、ジベンゾチオフェン、インドール、イソインドール、ベンゾイミダゾール、キノリン、イソキノリン、及びキノキサリンからなる群から選択され、より好ましくは、ナフタレン、アセナフチレン、フルオレン、スピロビフルオレン、カルバゾール、アクリジン、キサンテン、ジベンゾフラン、インドール、イソインドール、ベンゾイミダゾール、キノリン、イソキノリン、及びキノキサリンからなる群から選択される。特に限定するものではないが、優れた耐久性を得ることが容易になるという観点から、構造単位T1は、より好ましくは、ナフタレン、フルオレン、スピロビフルオレン、カルバゾール、アクリジン、及びジベンゾフランからなる群から選択される少なくとも1種の構造を含む。
【0039】
好ましい他の一実施形態において、構造単位T1は、2個以上の芳香環として、互いに連結した単環を含む。互いに連結した単環は、好ましくは、ビフェニル、テルフェニル(o−テルフェニル、m−テルフェニル、p−テルフェニル)、及びテトラフェニルエチレンからなる群から選択される。特に限定するものではないが、優れた耐久性を得ることが容易となるという観点から、構造単位T1は、より好ましくは、テルフェニル(o−テルフェニル、m−テルフェニル、p−テルフェニル)、及びテトラフェニルエチレンからなる群から選択される少なくとも1種の構造を含む。
【0040】
一実施形態によれば、優れた発光効率及び発光寿命を得るという観点から、構造単位T1は、カルバゾール、アクリジン等の窒素原子を含む縮合環を有することが好ましい。また、他の一実施形態によれば、優れた発光効率及び発光寿命を得るという観点から、構造単位T1は、テルフェニル、テトラフェニルエチレン等の互いに連結したベンゼン環を有することが好ましい。
【0041】
縮合環又は単環は、置換又は非置換であってよい。置換基としては、アルキル基(好ましくは、炭素数1〜20、より好ましくは1〜15、更に好ましくは1〜10)、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜20、より好ましくは1〜15、更に好ましくは1〜10)等が挙げられる。アルキル基及びアルコキシ基は、直鎖状、分岐状、又は環状のいずれであってもよい。置換基を有する場合、溶解性、安定性等に優れる観点から、アルキル基が好ましい。置換基の数は、1個又は2個以上であり、2個以上の置換基は、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0042】
また、構造単位T1内には、非環状第3級芳香族アミン構造が含まれないことが好ましい。非環状第3級芳香族アミンとは、RR’R”N(R、R’及びR”の少なくとも1つがアリール基又はヘテロアリール基)である第3級芳香族アミンにおいて、R、R’及びR”から選択される少なくとも2つの基の間で結合が形成されていないアミンをいう。すなわち、非環状第3級芳香族アミンとは、前記Nを構成原子として含む環が形成されていないアミンである。非環状第3級芳香族アミン構造は正孔輸送性に優れているが、電子に対する安定性の観点から、構造単位T1は、非環状第3級芳香族アミン構造を含まないことが好ましい。なお、「非環状第3級芳香族アミン」としては、例えば、トリアリールアミン、ジアリール(アルキル)アミン等が挙げられる。また、「非環状第3級芳香族アミン」以外としては、例えば、9−フェニルカルバゾール、10−フェニル−9,10−ジヒドロアクリジン、1−フェニルベンゾイミダゾール等の環状第3級芳香族アミン、カルバゾール、ジフェニルアミン等の環状又は非環状第2級芳香族アミンなどが挙げられる。
【0043】
構造単位T1として、例えば、以下の構造単位t1が挙げられる。
<構造単位t1>
【化5】
【0044】
式中、Ar
1は、sp
2炭素を7個以上含み、芳香環を2個以上有し、ベンゼン環が3個以上隣接して縮合した縮合環を含まない環状構造を表す。Ar
1は、非置換であるか、又は、置換基を有する。置換基としては、例えば、直鎖、環状、又は分岐アルキル基(好ましくは、炭素数1〜20、より好ましくは1〜15、更に好ましくは1〜10);直鎖、環状、又は分岐アルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜20、より好ましくは1〜15、更に好ましくは1〜10)等が挙げられる。
【0045】
構造単位T1の好ましい具体例を以下に列挙する。
【化6】
【0046】
一実施形態において、電荷輸送性ポリマーは、末端に、構造単位T1以外の構造単位(当該構造単位を「構造単位T2」ともいう。)を有する。電荷輸送性ポリマーは、構造単位T2を、1種のみ有しても、又は、2種以上有してもよい。構造単位T2は、特に限定されない。例えば、芳香族炭化水素構造若しくは芳香族複素環構造を有する構造単位が挙げられる。芳香族炭化水素構造若しくは芳香族複素環構造を有する構造単位として、例えば、以下に示す構造単位t2が挙げられる。構造単位t2は、構造単位t1とは異なる構造を有するものとする。
【0048】
式中、Ar
2は、炭素数2〜30個のアリール基又はヘテロアリール基を表す。末端への重合性官能基の導入が容易であるという観点から、Ar
2は、例えばアリール基であり、好ましくはフェニル基である。Ar
2は置換基を有してもよく、置換基としては、構造単位LにおけるRと同様の基が挙げられる。
【0049】
(構造単位B)
構造単位Bは、電荷輸送性ポリマーが分岐構造を有する場合に、分岐部を構成する3価以上の構造単位である。構造単位Bは、有機エレクトロニクス素子の耐久性向上の観点から、好ましくは6価以下であり、より好ましくは3価又は4価である。構造単位Bは、電荷輸送性を有する単位であることが好ましい。例えば、構造単位Bは、有機エレクトロニクス素子の耐久性向上の観点から、置換又は非置換の、芳香族アミン構造、カルバゾール構造、縮合多環式芳香族炭化水素構造、及び、これらの1種又は2種以上を含有する構造から選択される。構造単位Bは、構造単位Lと同じ構造を有していても、又は、異なる構造を有していてもよく、また、構造単位Tと同じ構造を有していても、又は、異なる構造を有していてもよい。
【0050】
構造単位Bの具体例として、以下が挙げられる。構造単位Bは、以下に限定されない。
【化8】
【0051】
Wは、3価の連結基を表し、例えば、炭素数2〜30個のアレーントリイル基又はヘテロアレーントリイル基を表す。Arは、それぞれ独立に2価の連結基を表し、例えば、それぞれ独立に、炭素数2〜30個のアリーレン基又はヘテロアリーレン基を表す。Arは、好ましくはアリーレン基、より好ましくはフェニレン基である。Yは、2価の連結基を表し、例えば、構造単位LにおけるR(ただし、重合性官能基を含む基を除く。)のうち水素原子を1個以上有する基から、更に1個の水素原子を除いた2価の基が挙げられる。Zは、炭素原子、ケイ素原子、又はリン原子のいずれかを表す。構造単位中、ベンゼン環及びArは、置換基を有していてもよく、置換基の例として、構造単位LにおけるRが挙げられる。
【0052】
本明細書において、アレーントリイル基は、芳香族炭化水素から水素原子3個を除いた原子団である。ヘテロアレーントリイル基は、芳香族複素環から水素原子3個を除いた原子団である。
【0053】
(重合性官能基)
一実施形態において、重合反応により硬化させ、溶剤への溶解度を変化させる観点から、電荷輸送性ポリマーは、重合性官能基を少なくとも1つ有することが好ましい。「重合性官能基」とは、熱及び/又は光を加えることにより、互いに結合を形成し得る官能基をいう。
【0054】
重合性官能基としては、炭素−炭素多重結合を有する基(例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、エチニル基、アクリロイル基、アクリロイルオキシ基、アクリロイルアミノ基、メタクリロイル基、メタクリロイルオキシ基、メタクリロイルアミノ基、ビニルオキシ基、ビニルアミノ基等)、小員環を有する基(例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基等の環状アルキル基;エポキシ基(オキシラニル基)、オキセタン基(オキセタニル基)等の環状エーテル基;ジケテン基;エピスルフィド基;ラクトン基;ラクタム基等)、複素環基(例えば、フラン−イル基、ピロール−イル基、チオフェン−イル基、シロール−イル基)などが挙げられる。重合性官能基としては、特に、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、エポキシ基、及びオキセタン基が好ましく、反応性及び有機エレクトロニクス素子の特性の観点から、ビニル基、オキセタン基、又はエポキシ基がより好ましい。
【0055】
重合性官能基の自由度を上げ、重合反応を生じさせやすくする観点からは、電荷輸送性ポリマーの主骨格と重合性官能基とが、アルキレン鎖で連結されていることが好ましい。また、例えば、電極上に有機層を形成する場合、ITO等の親水性電極との親和性を向上させる観点からは、エチレングリコール鎖、ジエチレングリコール鎖等の親水性の鎖で連結されていることが好ましい。さらに、重合性官能基を導入するために用いられるモノマーの調製が容易になる観点からは、電荷輸送性ポリマーは、アルキレン鎖及び/又は親水性の鎖の末端部、すなわち、これらの鎖と重合性官能基との連結部、及び/又は、これらの鎖と電荷輸送性ポリマーの骨格との連結部に、エーテル結合又はエステル結合を有していてもよい。前述の「重合性官能基を含む基」とは、重合性官能基それ自体、又は、重合性官能基とアルキレン鎖等とを合わせた基を意味する。重合性官能基を含む基として、例えば、国際公開第WO2010/140553号に例示された基を好適に用いることができる。
【0056】
重合性官能基は、電荷輸送性ポリマーの末端部(すなわち、構造単位T)に導入されていても、末端部以外の部分(すなわち、構造単位L又はB)に導入されていても、末端部と末端以外の部分の両方に導入されていてもよい。硬化性の観点からは、少なくとも末端部に導入されていることが好ましく、硬化性及び電荷輸送性の両立を図る観点からは、末端部のみに導入されていることが好ましい。また、電荷輸送性ポリマーが分岐構造を有する場合、重合性官能基は、電荷輸送性ポリマーの主鎖に導入されていても、側鎖に導入されていてもよく、主鎖と側鎖の両方に導入されていてもよい。
【0057】
重合性官能基は、溶解度の変化に寄与する観点からは、電荷輸送性ポリマー中に多く含まれる方が好ましい。一方、電荷輸送性を妨げない観点からは、電荷輸送性ポリマー中に含まれる量が少ない方が好ましい。重合性官能基の含有量は、これらを考慮し、適宜設定できる。
【0058】
例えば、電荷輸送性ポリマー1分子あたりの重合性官能基数は、十分な溶解度の変化を得る観点から、2個以上が好ましく、3個以上がより好ましい。また、重合性官能基数は、電荷輸送性を保つ観点から、1,000個以下が好ましく、500個以下がより好ましい。
【0059】
電荷輸送性ポリマー1分子あたりの重合性官能基数は、電荷輸送性ポリマーを合成するために使用した、重合性官能基の仕込み量(例えば、重合性官能基を有するモノマーの仕込み量)、各構造単位に対応するモノマーの仕込み量、電荷輸送性ポリマーの重量平均分子量等を用い、平均値として求めることができる。また、重合性官能基の数は、電荷輸送性ポリマーの
1H NMR(核磁気共鳴)スペクトルにおける重合性官能基に由来するシグナルの積分値と全スペクトルの積分値との比、電荷輸送性ポリマーの重量平均分子量等を利用し、平均値として算出できる。簡便であることから、仕込み量が明らかである場合は、好ましくは、仕込み量を用いて求めた値を採用する。
【0060】
(構造単位の割合)
電荷輸送性ポリマーに含まれる構造単位Lの割合は、十分な電荷輸送性を得る観点から、全構造単位を基準として、10モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく、30モル%以上が更に好ましい。また、構造単位Lの割合は、構造単位T及び必要に応じて導入される構造単位Bを考慮すると、95モル%以下が好ましく、90モル%以下がより好ましく、85モル%以下が更に好ましい。
【0061】
電荷輸送性ポリマーに含まれる構造単位Tの割合は、有機エレクトロニクス素子の特性向上の観点、又は、粘度の上昇を抑え、電荷輸送性ポリマーの合成を良好に行う観点から、全構造単位を基準として、5モル%以上が好ましく、10モル%以上がより好ましく、15モル%以上が更に好ましい。また、構造単位Tの割合は、十分な電荷輸送性を得る観点から、60モル%以下が好ましく、55モル%以下がより好ましく、50モル%以下が更に好ましい。
【0062】
電荷輸送性ポリマーの全末端における構造単位T1の割合は、有機エレクトロニクス素子の特性向上の観点から、全末端数を基準として25モル%以上、より好ましくは30モル%以上、更に好ましくは35モル%以上である。上限は特に限定されず、100モル%以下である。
【0063】
電荷輸送性ポリマーが構造単位T2を有する場合、全末端における構造単位T2の割合は、有機エレクトロニクス素子の特性向上の観点から、全末端数を基準として、好ましくは75モル%以下、より好ましくは70モル%以下、更に好ましくは65モル%以下である。下限は特に限定されないが、後述する重合性官能基の導入、成膜性、ぬれ性等の向上のための置換基の導入などを考慮すると、例えば、5モル%以上とできる。
【0064】
電荷輸送性ポリマーが構造単位Bを含む場合、構造単位Bの割合は、有機エレクトロニクス素子の耐久性向上の観点から、全構造単位を基準として、1モル%以上が好ましく、5モル%以上がより好ましく、10モル%以上が更に好ましい。また、構造単位Bの割合は、粘度の上昇を抑え、電荷輸送性ポリマーの合成を良好に行う観点、又は、十分な電荷輸送性を得る観点から、50モル%以下が好ましく、40モル%以下がより好ましく、30モル%以下が更に好ましい。
【0065】
電荷輸送性ポリマーが重合性官能基を有する場合、重合性官能基の割合は、電荷輸送性ポリマーを効率よく硬化させるという観点から、全構造単位を基準として、0.1モル%以上が好ましく、1モル%以上がより好ましく、3モル%以上が更に好ましい。また、重合性官能基の割合は、良好な電荷輸送性を得るという観点から、70モル%以下が好ましく、60モル%以下がより好ましく、50モル%以下が更に好ましい。なお、ここでの「重合性官能基の割合」とは、重合性官能基を有する構造単位の割合をいう。
【0066】
電荷輸送性、耐久性、生産性等のバランスを考慮すると、構造単位L及び構造単位Tの割合(モル比)は、L:T=100:1〜70が好ましく、100:3〜50がより好ましく、100:5〜30が更に好ましい。また、電荷輸送性ポリマーが構造単位Bを含む場合、構造単位L、構造単位T、及び構造単位Bの割合(モル比)は、L:T:B=100:10〜200:10〜100が好ましく、100:20〜180:20〜90がより好ましく、100:40〜160:30〜80が更に好ましい。
【0067】
構造単位の割合は、電荷輸送性ポリマーを合成するために使用した、各構造単位に対応するモノマーの仕込み量を用いて求めることができる。また、構造単位の割合は、電荷輸送性ポリマーの
1H NMRスペクトルにおける各構造単位に由来するスペクトルの積分値を利用し、平均値として算出することができる。簡便であることから、仕込み量が明らかである場合は、好ましくは、仕込み量を用いて求めた値を採用する。
【0068】
電荷輸送性ポリマーは、高い正孔注入性、正孔輸送性等を有する観点から、芳香族アミン構造を有する構造単位及び/又はカルバゾール構造を有する構造単位を主要な構造単位(主骨格)とする化合物であることが好ましい。また、電荷輸送性ポリマーは、多層化を容易に行う観点から、少なくとも2個以上の重合性官能基を有する化合物であることが好ましい。
【0069】
(数平均分子量)
電荷輸送性ポリマーの数平均分子量は、溶剤への溶解性、成膜性等を考慮して適宜、調整できる。数平均分子量は、電荷輸送性に優れるという観点から、500以上が好ましく、1,000以上がより好ましく、2,000以上が更に好ましい。また、数平均分子量は、溶媒への良好な溶解性を保ち、インク組成物の調製を容易にするという観点から、1,000,000以下が好ましく、100,000以下がより好ましく、50,000以下が更に好ましい。
【0070】
(重量平均分子量)
電荷輸送性ポリマーの重量平均分子量は、溶剤への溶解性、成膜性等を考慮して適宜、調整できる。重量平均分子量は、電荷輸送性に優れるという観点から、1,000以上が好ましく、5,000以上がより好ましく、10,000以上が更に好ましい。また、重量平均分子量は、溶媒への良好な溶解性を保ち、インク組成物の調製を容易にするという観点から、1,000,000以下が好ましく、700,000以下がより好ましく、400,000以下が更に好ましい。
【0071】
数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、標準ポリスチレンの検量線を用いて測定することができる。
【0072】
(製造方法)
電荷輸送性ポリマーは、種々の合成方法により製造でき、特に限定されない。例えば、鈴木カップリング、根岸カップリング、園頭カップリング、スティルカップリング、ブッフバルト・ハートウィッグカップリング等の公知のカップリング反応を用いることができる。鈴木カップリングは、芳香族ボロン酸誘導体と芳香族ハロゲン化物の間で、Pd触媒を用いたクロスカップリング反応を起こさせるものである。鈴木カップリングによれば、所望とする芳香環同士を結合させることにより、電荷輸送性ポリマーを簡便に製造できる。
【0073】
カップリング反応では、触媒として、例えば、Pd(0)化合物、Pd(II)化合物、Ni化合物等が用いられる。また、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、酢酸パラジウム(II)等を前駆体とし、ホスフィン配位子と混合することにより発生させた触媒種を用いることもできる。電荷輸送性ポリマーの合成方法については、例えば、国際公開第WO2010/140553号の記載を参照できる。
【0074】
鈴木カップリング反応に使用できるモノマーとして、例えば、以下が挙げられる。
<モノマーL>
【化9】
【0078】
式中、Lは構造単位Lを表し、T
1は構造単位T1を表し、T
2は構造単位T2を表し、Bは構造単位Bを表す。R
1〜R
4は、互いに結合を形成することが可能な官能基を表し、好ましくは、それぞれ独立に、ボロン酸基、ボロン酸エステル基、及びハロゲン基からなる群から選択されるいずれか1種を表す。
【0079】
[ドーパント]
有機エレクトロニクス材料は、ドーパントを更に含有してもよい。ドーパントは、有機エレクトロニクス材料に添加することでドーピング効果を発現させ、電荷の輸送性を向上させ得る化合物であればよく、特に制限はない。ドーピングには、p型ドーピングとn型ドーピングがあり、p型ドーピングではドーパントとして電子受容体として働く物質が用いられ、n型ドーピングではドーパントとして電子供与体として働く物質が用いられる。正孔輸送性の向上にはp型ドーピング、電子輸送性の向上にはn型ドーピングを行うことが好ましい。有機エレクトロニクス材料に用いられるドーパントは、p型ドーピング又はn型ドーピングのいずれの効果を発現させるドーパントであってもよい。また、1種のドーパントを単独で添加しても、複数種のドーパントを混合して添加してもよい。
【0080】
p型ドーピングに用いられるドーパントは、電子受容性の化合物であり、例えば、ルイス酸、プロトン酸、遷移金属化合物、イオン化合物、ハロゲン化合物、π共役系化合物等が挙げられる。具体的には、ルイス酸としては、FeCl
3、PF
5、AsF
5、SbF
5、BF
5、BCl
3、BBr
3等;プロトン酸としては、HF、HCl、HBr、HNO
5、H
2SO
4、HClO
4等の無機酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、1−ブタンスルホン酸、ビニルフェニルスルホン酸、カンファスルホン酸等の有機酸;遷移金属化合物としては、FeOCl、TiCl
4、ZrCl
4、HfCl
4、NbF
5、AlCl
3、NbCl
5、TaCl
5、MoF
5;イオン化合物としては、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオン、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドイオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、AsF
6−(ヘキサフルオロ砒酸イオン)、BF
4−(テトラフルオロホウ酸イオン)、PF
6−(ヘキサフルオロリン酸イオン)等のパーフルオロアニオンを有する塩、アニオンとして前記プロトン酸の共役塩基を有する塩など;ハロゲン化合物としては、Cl
2、Br
2、I
2、ICl、ICl
3、IBr、IF等;π共役系化合物としては、TCNE(テトラシアノエチレン)、TCNQ(テトラシアノキノジメタン)等が挙げられる。また、特開2000−36390号公報、特開2005−75948号公報、特開2003−213002号公報等に記載の電子受容性化合物を用いることも可能である。好ましくは、ルイス酸、イオン化合物、π共役系化合物等である。
【0081】
n型ドーピングに用いられるドーパントは、電子供与性の化合物であり、例えば、Li、Cs等のアルカリ金属;Mg、Ca等のアルカリ土類金属;LiF、Cs
2CO
3等のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の塩;金属錯体;電子供与性有機化合物などが挙げられる。
【0082】
電荷輸送性ポリマーが重合性官能基を有する場合は、有機層の溶解度の変化を容易にするために、ドーパントとして、重合性官能基に対する重合開始剤として作用し得る化合物を用いることが好ましい。
【0083】
[他の任意成分]
有機エレクトロニクス材料は、電荷輸送性低分子化合物、上記以外の電荷輸送性ポリマー等を更に含有してもよい。
【0084】
[含有量]
電荷輸送性ポリマーの含有量は、良好な電荷輸送性を得る観点から、有機エレクトロニクス材料の全質量に対して、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましい。100質量%とすることも可能である。
【0085】
ドーパントを含有する場合、その含有量は、有機エレクトロニクス材料の電荷輸送性を向上させる観点から、有機エレクトロニクス材料の全質量に対して、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上が更に好ましい。また、成膜性を良好に保つ観点から、有機エレクトロニクス材料の全質量に対して、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。
【0086】
<インク組成物>
本発明の実施形態であるインク組成物は、前記実施形態の有機エレクトロニクス材料と該材料を溶解又は分散し得る溶媒とを含有する。インク組成物を用いることによって、塗布法といった簡便な方法によって有機層を容易に形成できる。
【0087】
[溶媒]
溶媒としては、水、有機溶媒、又はこれらの混合溶媒を使用できる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール;ペンタン、ヘキサン、オクタン等のアルカン;シクロヘキサン等の環状アルカン;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、ジフェニルメタン等の芳香族炭化水素;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート等の脂肪族エーテル;1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール等の芳香族エーテル;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル等の脂肪族エステル;酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、アセトン、クロロホルム、塩化メチレンなどが挙げられる。好ましくは、芳香族炭化水素、脂肪族エステル、芳香族エステル、脂肪族エーテル、芳香族エーテル等である。
【0088】
[重合開始剤]
電荷輸送性ポリマーが重合性官能基を有する場合、インク組成物は、好ましくは、重合開始剤を含有する。重合開始剤として、公知のラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤、アニオン重合開始剤等を使用できる。インク組成物を簡便に調製できる観点から、ドーパントとしての機能と重合開始剤としての機能とを兼ねる物質を用いることが好ましい。そのような物質として、例えば、前記イオン化合物が挙げられる。
【0089】
[添加剤]
インク組成物は、更に、任意成分として添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、重合禁止剤、安定剤、増粘剤、ゲル化剤、難燃剤、酸化防止剤、還元防止剤、酸化剤、還元剤、表面改質剤、乳化剤、消泡剤、分散剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0090】
[含有量]
インク組成物における溶媒の含有量は、種々の塗布方法へ適用することを考慮して定めることができる。例えば、溶媒の含有量は、溶媒に対し電荷輸送性ポリマーの割合が、0.1質量%以上となる量が好ましく、0.2質量%以上となる量がより好ましく、0.5質量%以上となる量が更に好ましい。また、溶媒の含有量は、溶媒に対し電荷輸送性ポリマーの割合が、20質量%以下となる量が好ましく、15質量%以下となる量がより好ましく、10質量%以下となる量が更に好ましい。
【0091】
<有機層>
本発明の実施形態である有機層は、前記実施形態の有機エレクトロニクス材料又はインク組成物を用いて形成された層である。インク組成物を用いることによって、塗布法により有機層を良好に形成できる。塗布方法としては、例えば、スピンコーティング法;キャスト法;浸漬法;凸版印刷、凹版印刷、オフセット印刷、平版印刷、凸版反転オフセット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷等の有版印刷法;インクジェット法等の無版印刷法などの公知の方法が挙げられる。塗布法によって有機層を形成する場合、塗布後に得られた有機層(塗布層)を、ホットプレート又はオーブンを用いて乾燥させ、溶媒を除去してもよい。
【0092】
電荷輸送性ポリマーが重合性官能基を有する場合、光照射、加熱処理等により電荷輸送性ポリマーの重合反応を進行させ、有機層の溶解度を変化させることができる。溶解度を変化させた有機層を積層することで、有機エレクトロニクス素子の多層化を容易に図ることが可能となる。有機層の形成方法については、例えば、国際公開第WO2010/140553号の記載を参照できる。
【0093】
乾燥後又は硬化後の有機層の厚さは、電荷輸送の効率を向上させる観点から、好ましくは0.1nm以上であり、より好ましくは1nm以上であり、更に好ましくは3nm以上である。また、有機層の厚さは、電気抵抗を小さくする観点から、好ましくは300nm以下であり、より好ましくは200nm以下であり、更に好ましくは100nm以下である。
【0094】
<有機エレクトロニクス素子>
本発明の実施形態である有機エレクトロニクス素子は、少なくとも前記実施形態の有機層を有する。有機エレクトロニクス素子として、例えば、有機EL素子、有機光電変換素子、有機トランジスタ等が挙げられる。有機エレクトロニクス素子は、好ましくは、少なくとも一対の電極の間に有機層が配置された構造を有する。
【0095】
[有機EL素子]
本発明の実施形態である有機EL素子は、少なくとも前記実施形態の有機層を有する。有機EL素子は、通常、発光層、陽極、陰極、及び基板を備えており、必要に応じて、正孔注入層、電子注入層、正孔輸送層、電子輸送層等の他の機能層を備えている。各層は、蒸着法により形成してもよく、塗布法により形成してもよい。有機EL素子は、好ましくは、有機層を発光層又は他の機能層として有し、より好ましくは機能層として有し、更に好ましくは正孔注入層及び正孔輸送層の少なくとも一方として有する。
【0096】
図1は、有機EL素子の一実施形態を示す断面模式図である。
図1の有機EL素子は、多層構造の素子であり、基板8、陽極2、前記実施形態の有機層からなる正孔注入層3及び正孔輸送層6、発光層1、電子輸送層7、電子注入層5、並びに陰極4をこの順に有している。以下、各層について説明する。
【0097】
[発光層]
発光層に用いる材料として、低分子化合物、ポリマー、デンドリマー等の発光材料を使用できる。ポリマーは、溶媒への溶解性が高く、塗布法に適しているため好ましい。発光材料としては、蛍光材料、燐光材料、熱活性化遅延蛍光材料(TADF)等が挙げられる。
【0098】
蛍光材料として、ペリレン、クマリン、ルブレン、キナクドリン、スチルベン、色素レーザー用色素、アルミニウム錯体、これらの誘導体等の低分子化合物;ポリフルオレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリビニルカルバゾール、フルオレンーベンゾチアジアゾール共重合体、フルオレン−トリフェニルアミン共重合体、これらの誘導体等のポリマー;これらの混合物等が挙げられる。
【0099】
燐光材料として、Ir、Pt等の金属を含む金属錯体などを使用できる。Ir錯体としては、例えば、青色発光を行うFIr(pic)(イリジウム(III)ビス[(4,6−ジフルオロフェニル)−ピリジネート−N,C
2]ピコリネート)、緑色発光を行うIr(ppy)
3(ファク トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム)、赤色発光を行う(btp)
2Ir(acac)(ビス〔2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジナート−N,C
3〕イリジウム(アセチル−アセトネート))、Ir(piq)
3(トリス(1−フェニルイソキノリン)イリジウム)等が挙げられる。Pt錯体としては、例えば、赤色発光を行うPtOEP(2、3、7、8、12、13、17、18−オクタエチル−21H、23H−フォルフィンプラチナ)等が挙げられる。
【0100】
発光層が燐光材料を含む場合、燐光材料の他に、更にホスト材料を含むことが好ましい。ホスト材料としては、低分子化合物、ポリマー、又はデンドリマーを使用できる。低分子化合物としては、例えば、CBP(4,4’−ビス(9H−カルバゾール−9−イル)ビフェニル)、mCP(1,3−ビス(9−カルバゾリル)ベンゼン)、CDBP(4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)−2,2’−ジメチルビフェニル)、これらの誘導体等が、ポリマーとしては、前記実施形態の有機エレクトロニクス材料、ポリビニルカルバゾール、ポリフェニレン、ポリフルオレン、これらの誘導体等が挙げられる。
【0101】
熱活性化遅延蛍光材料としては、例えば、Adv. Mater., 21, 4802-4906 (2009);Appl. Phys. Lett., 98, 083302 (2011);Chem. Comm., 48, 9580 (2012);Appl. Phys. Lett., 101, 093306 (2012);J. Am. Chem. Soc., 134, 14706 (2012);Chem. Comm., 48, 11392 (2012);Nature, 492, 234 (2012);Adv. Mater., 25, 3319 (2013);J. Phys. Chem. A, 117, 5607 (2013);Phys. Chem. Chem. Phys., 15, 15850 (2013);Chem. Comm., 49, 10385 (2013);Chem. Lett., 43, 319 (2014)等に記載の化合物が挙げられる。
【0102】
[電子輸送層、電子注入層]
電子輸送層及び電子注入層に用いる材料としては、例えば、フェナントロリン誘導体、ビピリジン誘導体、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレン、ペリレンなどの縮合環テトラカルボン酸無水物、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、キノキサリン誘導体、アルミニウム錯体等が挙げられる。また、前記実施形態の有機エレクトロニクス材料も使用できる。
【0103】
[陰極]
陰極材料としては、例えば、Li、Ca、Mg、Al、In、Cs、Ba、Mg/Ag、LiF、CsF等の金属又は金属合金が用いられる。
【0104】
[陽極]
陽極材料としては、例えば、金属(例えば、Au)又は導電性を有する他の材料が用いられる。他の材料として、例えば、酸化物(例えば、ITO:酸化インジウム/酸化錫)、導電性高分子(例えば、ポリチオフェン−ポリスチレンスルホン酸混合物(PEDOT:PSS))が挙げられる。
【0105】
[基板]
基板として、ガラス、プラスチック等を使用できる。基板は、透明であることが好ましく、また、フレキシブル性を有することが好ましい。石英ガラス、光透過性樹脂フィルム等が好ましく用いられる。
【0106】
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート等からなるフィルムが挙げられる。
【0107】
樹脂フィルムを用いる場合、水蒸気、酸素等の透過を抑制するために、樹脂フィルムへ酸化珪素、窒化珪素等の無機物をコーティングして用いてもよい。
【0108】
[発光色]
有機EL素子の発光色は特に限定されない。白色の有機EL素子は、家庭用照明、車内照明、時計又は液晶のバックライト等の各種照明器具に用いることができるため好ましい。
【0109】
白色の有機EL素子を形成する方法としては、複数の発光材料を用いて複数の発光色を同時に発光させて混色させる方法を用いることができる。複数の発光色の組み合わせとしては、特に限定されないが、青色、緑色及び赤色の3つの発光極大波長を含有する組み合わせ、青色と黄色、黄緑色と橙色等の2つの発光極大波長を含有する組み合わせなどが挙げられる。発光色の制御は、発光材料の種類と量の調整により行うことができる。
【0110】
<表示素子、照明装置、表示装置>
本発明の実施形態である表示素子は、前記実施形態の有機EL素子を備えている。例えば、赤、緑及び青(RGB)の各画素に対応する素子として、有機EL素子を用いることで、カラーの表示素子が得られる。画像の形成方法には、マトリックス状に配置した電極でパネルに配列された個々の有機EL素子を直接駆動する単純マトリックス型と、各素子に薄膜トランジスタを配置して駆動するアクティブマトリックス型とがある。
【0111】
また、本発明の実施形態である照明装置は、本発明の実施形態の有機EL素子を備えている。さらに、本発明の実施形態である表示装置は、照明装置と、表示手段として液晶素子とを備えている。例えば、表示装置は、バックライトとして本発明の実施形態である照明装置を用い、表示手段として公知の液晶素子を用いた表示装置、すなわち液晶表示装置とできる。
【実施例】
【0112】
以下に、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0113】
<Pd触媒の調製>
窒素雰囲気下のグローブボックス中で、室温下、サンプル管にトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(73.2mg、80μmol)を秤取り、アニソール(15mL)を加え、30分間撹拌した。同様に、サンプル管にトリス(t−ブチル)ホスフィン(129.6mg、640μmol)を秤取り、アニソール(5mL)を加え、5分間撹拌した。これらの溶液を混合し、室温で30分間撹拌し、触媒とした。全ての溶媒は、30分以上窒素バブルにより脱気した後、使用した。
【0114】
<電荷輸送性ポリマー1の合成>
三口丸底フラスコに、下記モノマーL(5.0mmol)、下記モノマーB−1(2.0mmol)、下記モノマーT1−1(2.0mmol)、下記モノマーT2−1(2.0mmol)、及びアニソール(20mL)を加え、更に調製したPd触媒溶液(7.5mL)を加えた。30分撹拌した後、10%テトラエチルアンモニウム水酸化物水溶液(20mL)を加えた。全ての溶媒は30分以上、窒素バブルにより脱気した後、使用した。この混合物を2時間、加熱還流した。ここまでの全ての操作は窒素気流下で行った。
【0115】
【化13】
【0116】
反応終了後、有機層を水洗し、有機層をメタノール−水(9:1)に注いだ。生じた沈殿を吸引ろ過により回収し、メタノール−水(9:1)で洗浄した。得られた沈殿をトルエンに溶解し、メタノールから再沈殿した。得られた沈殿を吸引ろ過により回収し、トルエンに溶解し、金属吸着剤(Strem Chemicals社製「Triphenylphosphine, polymer-bound on styrene-divinylbenzene copolymer」、沈殿物100mgに対して200mg)を加えて、一晩撹拌した。撹拌終了後、金属吸着剤と不溶物とをろ過して取り除き、ろ液をロータリーエバポレーターで濃縮した。濃縮液をトルエンに溶解した後、メタノール−アセトン(8:3)から再沈殿した。生じた沈殿を吸引ろ過により回収し、メタノール−アセトン(8:3)で洗浄した。得られた沈殿を真空乾燥し、電荷輸送性ポリマー1を得た。得られた電荷輸送性ポリマー1の数平均分子量は6,900、重量平均分子量は45,700であった。電荷輸送性ポリマー1は、構造単位L(モノマーLに由来)、構造単位B(モノマーB−1に由来)、構造単位T1(モノマーT1−1に由来)、及びオキセタン基を有する構造単位T2(モノマーT2−1に由来)を有し、それぞれの構造単位の割合(モル比)は、45.5%、18.2%、18.2%、及び18.2%であった。
【0117】
数平均分子量及び重量平均分子量は、溶離液にテトラヒドロフラン(THF)を用いたGPC(ポリスチレン換算)により測定した。測定条件は以下のとおりである。
送液ポンプ :L−6050 (株)日立ハイテクノロジーズ
UV−Vis検出器:L−3000 (株)日立ハイテクノロジーズ
カラム :Gelpack
(R) GL−A160S/GL−A150S 日立化成(株)
溶離液 :THF(HPLC用、安定剤を含まない) 和光純薬工業(株)
流速 :1 mL/min
カラム温度 :室温
分子量標準物質 :標準ポリスチレン
【0118】
<電荷輸送性ポリマー2の合成>
三口丸底フラスコに、前記モノマーL(5.0mmol)、前記モノマーB−1(2.0mmol)、下記モノマーT1−2(2.0mmol)、前記モノマーT2−1(2.0mmol)、及びアニソール(20mL)を加え、更に調製したPd触媒溶液(7.5mL)を加えた。以降、電荷輸送性ポリマー1の合成と同様にして、電荷輸送性ポリマー2の合成を行った。得られた電荷輸送性ポリマー2の数平均分子量は17,600、重量平均分子量は47,400であった。電荷輸送性ポリマー2は、構造単位L(モノマーLに由来)、構造単位B(モノマーB−1に由来)、構造単位T1(モノマーT1−2に由来)、及びオキセタン基を有する構造単位T2(モノマーT2−1に由来)を有し、それぞれの構造単位の割合は、45.5%、18.2%、18.2%、及び18.2%であった。
【0119】
【化14】
【0120】
<電荷輸送性ポリマー3の合成>
三口丸底フラスコに、前記モノマーL(5.0mmol)、前記モノマーB−1(2.0mmol)、下記モノマーT1−3(3.0mmol)、前記モノマーT2−1(1.0mmol)、及びアニソール(20mL)を加え、更に調製したPd触媒溶液(7.5mL)を加えた。以降、電荷輸送性ポリマー1の合成と同様にして、電荷輸送性ポリマー3の合成を行った。得られた電荷輸送性ポリマー3の数平均分子量は5,100、重量平均分子量は40,200であった。電荷輸送性ポリマー3は、構造単位L(モノマーLに由来)、構造単位B(モノマーB−1に由来)、構造単位T1(モノマーT1−3に由来)、及びオキセタン基を有する構造単位T2(モノマーT2−1に由来)を有し、それぞれの構造単位の割合は、45.5%、18.2%、27.3%、及び9.1%であった。
【0121】
【化15】
【0122】
<電荷輸送性ポリマー4の合成>
三口丸底フラスコに、前記モノマーL(5.0mmol)、前記モノマーB−1(2.0mmol)、下記モノマーT1−4(2.0mmol)、前記モノマーT2−1(2.0mmol)、及びアニソール(20mL)を加え、更に調製したPd触媒溶液(7.5mL)を加えた。以降、電荷輸送性ポリマー1の合成と同様にして、電荷輸送性ポリマー4の合成を行った。得られた電荷輸送性ポリマー4の数平均分子量は14,400、重量平均分子量は53,100であった。電荷輸送性ポリマー4は、構造単位L(モノマーLに由来)、構造単位B(モノマーB−1に由来)、構造単位T1(モノマーT1−4に由来)、及びオキセタン基を有する構造単位T2(モノマーT2−1に由来)を有し、それぞれの構造単位の割合は、45.5%、18.2%、18.2%、及び18.2%であった。
【0123】
【化16】
【0124】
<電荷輸送性ポリマー5の合成>
三口丸底フラスコに、前記モノマーL(5.0mmol)、前記モノマーB−1(2.0mmol)、前記モノマーT2−1(2.0mmol)、下記モノマーT2−2(2.0mmol)、及びアニソール(20mL)を加え、更に調製したPd触媒溶液(7.5mL)を加えた。以降、電荷輸送性ポリマー1の合成と同様にして、電荷輸送性ポリマー5の合成を行った。得られた電荷輸送性ポリマー5の数平均分子量は14,500、重量平均分子量は64,000であった。電荷輸送性ポリマー5は、構造単位L(モノマーLに由来)、構造単位B(モノマーB−1に由来)、オキセタン基を有する構造単位T2(モノマーT2−1に由来)、及びベンゼン構造を含む構造単位T2(モノマーT2−2に由来)を有し、それぞれの構造単位の割合は、45.5%、18.2%、18.2%、及び18.2%であった。
【0125】
【化17】
【0126】
<電荷輸送性ポリマー6の合成>
三口丸底フラスコに、前記モノマーL(5.0mmol)、下記モノマーB−2(2.0mmol)、下記モノマーT1−5(2.0mmol)、前記モノマーT2−1(2.0mmol)、及びアニソール(20mL)を加え、更に調製したPd触媒溶液(7.5mL)を加えた。以降、電荷輸送性ポリマー1の合成と同様にして、電荷輸送性ポリマー6の合成を行った。得られた電荷輸送性ポリマー6の数平均分子量は20,700、重量平均分子量は75,600であった。電荷輸送性ポリマー6は、構造単位L(モノマーLに由来)、構造単位B(モノマーB−2に由来)、構造単位T1(モノマーT1−5に由来)、及びオキセタン基を有する構造単位T2(モノマーT2−1に由来)を有し、それぞれの構造単位の割合は、45.5%、18.2%、18.2%、及び18.2%であった。
【0127】
【化18】
【0128】
<電荷輸送性ポリマー7の合成>
三口丸底フラスコに、前記モノマーL(5.0mmol)、前記モノマーB−2(2.0mmol)、下記モノマーT1−6(2.0mmol)、前記モノマーT2−1(2.0mmol)、及びアニソール(20mL)を加え、更に調製したPd触媒溶液(7.5mL)を加えた。以降、電荷輸送性ポリマー1の合成と同様にして、電荷輸送性ポリマー7の合成を行った。得られた電荷輸送性ポリマー7の数平均分子量は1,500、重量平均分子量は23,200であった。電荷輸送性ポリマー7は、構造単位L(モノマーLに由来)、構造単位B(モノマーB−2に由来)、構造単位T1(モノマーT1−6に由来)、及びオキセタン基を有する構造単位T2(モノマーT2−1に由来)を有し、それぞれの構造単位の割合は、45.5%、18.2%、18.2%、及び18.2%であった。
【0129】
【化19】
【0130】
<電荷輸送性ポリマー8の合成>
三口丸底フラスコに、前記モノマーL(5.0mmol)、前記モノマーB−2(2.0mmol)、下記モノマーT1−7(2.0mmol)、前記モノマーT2−1(2.0mmol)、及びアニソール(20mL)を加え、更に調製したPd触媒溶液(7.5mL)を加えた。以降、電荷輸送性ポリマー1の合成と同様にして、電荷輸送性ポリマー8の合成を行った。得られた電荷輸送性ポリマー8の数平均分子量は11,300、重量平均分子量は43,900であった。電荷輸送性ポリマー8は、構造単位L(モノマーLに由来)、構造単位B(モノマーB−2に由来)、構造単位T1(モノマーT1−7に由来)、及びオキセタン基を有する構造単位T2(モノマーT2−1に由来)を有し、それぞれの構造単位の割合は、45.5%、18.2%、18.2%、及び18.2%であった。
【0131】
【化20】
【0132】
<電荷輸送性ポリマー9の合成>
三口丸底フラスコに、前記モノマーL(5.0mmol)、前記モノマーB−2(2.0mmol)、下記モノマーT1−8(2.0mmol)、前記モノマーT2−1(2.0mmol)、及びアニソール(20mL)を加え、更に調製したPd触媒溶液(7.5mL)を加えた。以降、電荷輸送性ポリマー1の合成と同様にして、電荷輸送性ポリマー9の合成を行った。得られた電荷輸送性ポリマー9の数平均分子量は15,900、重量平均分子量は64,400であった。電荷輸送性ポリマー9は、構造単位L(モノマーLに由来)、構造単位B(モノマーB−2に由来)、構造単位T1(モノマーT1−8に由来)、及びオキセタン基を有する構造単位T2(モノマーT2−1に由来)を有し、それぞれの構造単位の割合は、45.5%、18.2%、18.2%、及び18.2%であった。
【0133】
【化21】
【0134】
<電荷輸送性ポリマー10の合成>
三口丸底フラスコに、前記モノマーL(5.0mmol)、前記モノマーB−2(2.0mmol)、前記モノマーT2−1(2.0mmol)、下記モノマーT2−3(2.0mmol)、及びアニソール(20mL)を加え、更に調製したPd触媒溶液(7.5mL)を加えた。以降、電荷輸送性ポリマー1の合成と同様にして、電荷輸送性ポリマー10の合成を行った。得られた電荷輸送性ポリマー10の数平均分子量は14,300、重量平均分子量は102,600であった。電荷輸送性ポリマー10は、構造単位L(モノマーLに由来)、構造単位B(モノマーB−2に由来)、オキセタン基を有する構造単位T2(モノマーT2−1に由来)、及びベンゼン構造を含む構造単位T2(モノマーT2−3に由来)を有し、それぞれの構造単位の割合は、45.5%、18.2%、18.2%、及び18.2%であった。
【0135】
【化22】
【0136】
<電荷輸送性ポリマー11の合成>
三口丸底フラスコに、前記モノマーL(5.0mmol)、前記モノマーB−2(2.0mmol)、前記モノマーT2−1(2.0mmol)、下記モノマーT2−4(2.0mmol)、及びアニソール(20mL)を加え、更に調製したPd触媒溶液(7.5mL)を加えた。以降、電荷輸送性ポリマー1の合成と同様にして、電荷輸送性ポリマー11の合成を行った。得られた電荷輸送性ポリマー11の数平均分子量は14,500、重量平均分子量は53,900であった。電荷輸送性ポリマー11は、構造単位L(モノマーLに由来)、構造単位B(モノマーB−2に由来)、オキセタン基を有する構造単位T2(モノマーT2−1に由来)、及びチオフェン構造を含む構造単位T2(モノマーT2−4に由来)を有し、それぞれの構造単位の割合は、45.5%、18.2%、18.2%、及び18.2%であった。
【0137】
【化23】
【0138】
<有機EL素子の作製1>
[実施例1]
窒素雰囲気下で、電荷輸送性ポリマー1(10.0mg)、下記電子受容性化合物1(0.5mg)、及びトルエン(2.3mL)を混合し、インク組成物を調製した。ITOを1.6mm幅にパターニングしたガラス基板上に、インク組成物を回転数3,000min
−1でスピンコートした後、ホットプレート上で220℃、10分間加熱して硬化させ、正孔注入層(25nm)を形成した。
【0139】
【化24】
【0140】
上記で得た基板を、真空蒸着機中に移し、正孔注入層上に、α−NPD(40nm)、CBP:Ir(ppy)
3(94:6、30nm)、BAlq(10nm)、TPBi(30nm)、LiF(0.8nm)、及びAl(100nm)をこの順に蒸着法で成膜し、封止処理を行って有機EL素子を作製した。
【0141】
[実施例2]
正孔注入層の形成工程において、電荷輸送性ポリマー1を電荷輸送性ポリマー2に変えた以外は、実施例1と同様にして、有機EL素子を作製した。
【0142】
[実施例3]
正孔注入層の形成工程において、電荷輸送性ポリマー1を電荷輸送性ポリマー3に変えた以外は、実施例1と同様にして、有機EL素子を作製した。
【0143】
[実施例4]
正孔注入層の形成工程において、電荷輸送性ポリマー1を電荷輸送性ポリマー4に変えた以外は、実施例1と同様にして、有機EL素子を作製した。
【0144】
[参考例1]
正孔注入層の形成工程において、電荷輸送性ポリマー1を電荷輸送性ポリマー5に変えた以外は、実施例1と同様にして、有機EL素子を作製した。
【0145】
表1に実施例1〜4及び参考例1にて作製した有機EL素子の層構成をまとめて示す。
【0146】
【表1】
【0147】
実施例1〜4及び参考例1で得た有機EL素子に電圧を印加したところ緑色発光が確認された。それぞれの素子について、発光輝度1,000cd/m
2における発光効率、及び初期輝度5,000cd/m
2における発光寿命(輝度半減時間)を測定した。測定結果を表2に示す。
【0148】
【表2】
【0149】
表2に示したとおり、本発明の実施形態である有機エレクトロニクス材料を正孔注入層に用いることで、発光効率が高く、駆動安定性に優れた長寿命の素子が得られた。
【0150】
<有機EL素子の作製2>
[実施例5]
窒素雰囲気下で、電荷輸送性ポリマー3(10.0mg)、下記電子受容性化合物2(0.5mg)、及びトルエン(2.3mL)を混合し、インク組成物を調製した。ITOを1.6mm幅にパターニングしたガラス基板上に、インク組成物を回転数3,000min
−1でスピンコートした後、ホットプレート上で220℃、10分間加熱して硬化させ、正孔注入層(25nm)を形成した。
【0151】
【化25】
【0152】
次に、電荷輸送性ポリマー6(10.0mg)及びトルエン(1.15mL)を混合し、インク組成物を調製した。上記で形成した正孔注入層の上に、インク組成物を回転数3,000min
−1でスピンコートした後、ホットプレート上で200℃、10分間加熱して硬化させ、正孔輸送層(40nm)を形成した。正孔注入層を溶解させることなく、正孔輸送層を形成することができた。
【0153】
上記で得た基板を、真空蒸着機中に移し、正孔輸送層上に、CBP:Ir(ppy)
3(94:6、30nm)、BAlq(10nm)、TPBi(30nm)、LiF(0.8nm)、及びAl(100nm)をこの順に蒸着法で成膜し、封止処理を行って有機EL素子を作製した。
【0154】
[実施例6]
正孔輸送層の形成工程において、電荷輸送性ポリマー6を電荷輸送性ポリマー7に変えた以外は、実施例5と同様にして、有機EL素子を作製した。
【0155】
[実施例7]
正孔輸送層の形成工程において、電荷輸送性ポリマー6を電荷輸送性ポリマー8に変えた以外は、実施例5と同様にして、有機EL素子を作製した。
【0156】
[実施例8]
正孔輸送層の形成工程において、電荷輸送性ポリマー6を電荷輸送性ポリマー9に変えた以外は、実施例5と同様にして、有機EL素子を作製した。
【0157】
[参考例2]
正孔輸送層の形成工程において、電荷輸送性ポリマー6を電荷輸送性ポリマー10に変えた以外は、実施例5と同様にして、有機EL素子を作製した。
【0158】
[参考例3]
正孔輸送層の形成工程において、電荷輸送性ポリマー6を電荷輸送性ポリマー11に変えた以外は、実施例5と同様にして、有機EL素子を作製した。
【0159】
表3に実施例5〜8並びに参考例2及び3にて作製した有機EL素子の層構成をまとめて示す。
【0160】
【表3】
【0161】
実施例5〜8並びに参考例2及び3で得た有機EL素子に電圧を印加したところ緑色発光が確認された。それぞれの素子について、発光輝度1,000cd/m
2における発光効率、及び初期輝度5,000cd/m
2における発光寿命(輝度半減時間)を測定した。測定結果を表4に示す。
【0162】
【表4】
【0163】
表4に示したとおり、本発明の有機エレクトロニクス材料を正孔輸送層に用いることで、発光効率が高く、駆動安定性に優れた長寿命の素子が得られた。
【0164】
<白色有機EL素子(照明装置)の作製>
[実施例9]
窒素雰囲気下で、電荷輸送性ポリマー3(10.0mg)、前記電子受容性化合物2(0.5mg)、及びトルエン(2.3mL)を混合し、インク組成物を調製した。ITOを1.6mm幅にパターニングしたガラス基板上に、インク組成物を回転数3,000min
−1でスピンコートした後、ホットプレート上で220℃、10分間加熱して硬化させ、正孔注入層(25nm)を形成した。
【0165】
次に、電荷輸送性ポリマー9(20mg)及びトルエン(1.15mL)を混合し、インク組成物を調製した。正孔注入層の上に、インク組成物を回転数3,000min
−1でスピンコートした後、ホットプレート上で200℃、10分間加熱して硬化させ、正孔輸送層(40nm)を形成した。正孔注入層を溶解させることなく、正孔輸送層を形成することができた。
【0166】
次に、窒素中、CDBP(15mg)、FIr(pic)(0.9mg)、Ir(ppy)
3(0.9mg)、(btp)
2Ir(acac)(1.2mg)、及びジクロロベンゼン(0.5mL)を混合し、インク組成物を調製した。インク組成物を回転数3,000min
−1にてスピンコートし、ホットプレート上で80℃、5分間加熱して乾燥させ、発光層(40nm)を形成した。正孔輸送層を溶解させることなく、発光層を形成することができた。
【0167】
ガラス基板を真空蒸着機中に移し、発光層上にBAlq(10nm)、TPBi(30nm)、LiF(0.5nm)、及びAl(100nm)をこの順に蒸着法で成膜した。その後、封止処理して白色有機EL素子を作製した。白色有機EL素子は、照明装置として使用することができた。
【0168】
[参考例4]
電荷輸送性ポリマー9を電荷輸送性ポリマー10に変えた以外は、実施例9と同様にして、白色有機EL素子を作製した。正孔輸送層を溶解させることなく、発光層を形成することができた。白色有機EL素子は、照明装置として使用することができた。
【0169】
実施例9及び参考例4で得た白色有機EL素子に電圧を印加して、初期輝度1,000cd/m
2として発光寿命(輝度半減時間)を測定した。実施例9における発光寿命を1とすると、参考例4では0.23であった。また、実施例9における輝度1,000cd/m
2における電圧を1とすると、参考例4では1.09であった。
【0170】
実施例9の白色有機EL素子は、優れた発光寿命及び駆動電圧を示した。
【0171】
以上に実施例を用いて本発明の実施形態の効果を示した。実施例において使用した電荷輸送性ポリマー以外にも、上記で説明した電荷輸送性ポリマーを用い、長寿命を有する有機EL素子を得ることが可能であり、同様に優れた効果を示すものである。