(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1光を発するレーザ光源と、上面を有し第2光を発する波長変換部材と、を備え、前記第1光が前記波長変換部材の上面に照射されることにより前記第1光及び前記第2光が前記波長変換部材の上面側から取り出される発光装置であって、
前記波長変換部材は、
一種の蛍光体又は混在した二種以上の蛍光体を含み、
その上面側に、上方から視て、それぞれが第1方向に延伸し且つ前記第1方向と垂直をなす第2方向に並列に配置された複数の凸部を有し、且つ
前記複数の凸部により規定される複数の溝の底部を含む面を基準面としたときに、前記第1光の光軸が上方から視て前記第2方向に沿い且つ前記基準面に対して斜めになるように配置され、
前記複数の凸部のそれぞれは、少なくとも第1面を有し、
前記第1面は、上方から視て前記第1方向に延伸しており、かつ前記第1光の光軸に沿って前記第1面に直接入射される光が上方に正反射されるように、前記基準面に対して傾斜していることを特徴とする発光装置。
前記波長変換部材は、上方から視て格子状に設けられた切り欠き部を有し、前記格子状の切り欠き部で区切られた領域の少なくとも一部に前記複数の凸部を有する、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の発光装置。
前記切り欠き部の幅は3μm以上10μm以下である、ことを特徴とする請求項6に記載の発光装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明の実施の形態について適宜図面を参照して説明する。ただし、以下に説明する発光装置及び波長変換部材は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本発明を以下のものに限定しない。各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張していることがある。
【0010】
図1Aは一実施形態に係る発光装置10を示す模式的な上面図であり、
図1Bは
図1Aの1B−1B線における模式的な断面図である。発光装置10は、第1光を発するレーザ光源11と、上面12Aを有し第2光を発する波長変換部材12と、を有する。発光装置10では、第1光が波長変換部材12の上面12Aに照射されることにより、第1光及び第2光が波長変換部材12の上面12A側から取り出される。なお、
図1A及び
図1Bにおいて、第1光の光軸を符号Lの矢印で示す。発光装置10によれば、第1光を波長変換部材12の上面12Aにおいて上方に反射させやすくすることができるため、光取り出し効率を向上させることができる。以下、波長変換部材12及びこれを含む発光装置10について詳述する。
【0011】
(波長変換部材12)
波長変換部材12は、上面12Aを有し、レーザ光源11から発せられた第1光が上面12Aに照射されることにより上面12A側から第1光及び第2光が取り出される。波長変換部材12は、一種の蛍光体又は混在した二種以上の蛍光体を含む。
【0012】
図1A及び
図1Bに示すように、波長変換部材12は、その上面12A側に複数の凸部12cを有する。複数の凸部12cは、上方から視て、それぞれが第1方向A
1に延伸し、且つ、第1方向A
1と垂直をなす第2方向A
2に並列に配置されている。つまり、波長変換部材12においては、複数の凸部12cが第2方向A
2に連なるように配置されている。
【0013】
図2に
図1Bの部分拡大図を示す。
図2は、第1方向A
1に対して垂直な断面における波長変換部材12の模式図である。
図2に示すように、複数の凸部12cにより規定される複数の溝12dの底部を含む面を基準面Bとすると、波長変換部材12は、第1光の光軸Lが上方から視て第2方向A
2に沿い且つ基準面Bに対して斜めになるように配置されている。複数の凸部12cのそれぞれは、上方から視て第1方向A
1に延伸した第1面121であって、第1光の光軸Lに沿って第1面121に直接入射される光が上方に正反射されるように、基準面Bに対して傾斜した第1面121を有する。なお、本明細書において光が「直接入射」するとは、波長変換部材の上面12Aで反射等されていない光が波長変換部材のある面に入射することを意味しており、光がレンズ等を通って波長変換部材のある面に入射することを除外するものではない。
【0014】
このような第1面121を有することにより、波長変換部材12は、基準面Bに対して斜め方向から照射される第1光を上方に反射しやすい。また、波長変換部材12に含まれる蛍光体は第1光によって励起されて蛍光(第2光)を主として上方に発する。したがって、この蛍光の最大強度の方向に波長変換部材12によって反射された第1光の最大強度の方向を近づけることができるので、光取り出し効率の向上した発光装置10を実現することができる。さらに、複数の凸部12cは、上方から視て、それぞれが第1方向A
1に延伸している。これにより、波長変換部材の上面12Aが単に荒れている場合と比較して、第1光を比較的広い平面で上方に反射させることができるので、光取出し効率に優れた光源装置とすることができる。
【0015】
凸部12cの第1面121は、第1光の光軸Lと平行な直線(
図2中の線L
A)に対して以下の関係を有する面であるということができる。まず、第1面121は第1光の光軸Lと平行な線L
Aに対して非垂直な面である。次に、線L
Aは一の凸部12cの第1面121と直接交わる。このような関係により、第1面121の少なくとも一部において第1光を直接入射させることが可能である。さらに、
図2に示すように、第1面121に垂直な直線を対称軸として線L
Aに対して線対称である直線(
図2中の線L
B)が、波長変換部材12から上方へ向かう光を示す線である。線L
Aに対してこのような関係を有する第1面121とすることにより、第1面121に照射される第1光を上方に反射させることが可能となる。
【0016】
なお、上方とは、光取り出し方向と換言することができる。例えば、基準面Bに対して垂直な方向から−30°〜+30°程度の範囲内を上方とすることができる。また、後述するように、例えば
図4に示す発光装置10の具体例であれば、蓋体22の開口が存在する方向が上方であるといえる。なお、波長変換部材12の上面12Aとは、第1光が照射される面を指す。
【0017】
図3A〜3Cに、凸部12cの別の例を示す。
図3A〜3Cは、第1方向A
1に対して垂直な断面における波長変換部材12の模式図である。
図3A〜3Cに示すように、複数の凸部12cそれぞれは、第2面122をさらに有することができる。第2面122は、上方から視て第1方向A
1に延伸するとともに、第1光の光軸Lに沿った光が直接入射される面である。第2面122は、複数の凸部12cのうち一の凸部(第1凸部12c1)における第2面122で正反射された第1光が、第1凸部12c1に隣接する他の凸部(第2凸部12c2)における第1面121で上方に正反射されるように、基準面Bに対して傾斜している。なお、
図3A〜3Cに示すように、第1凸部12c1と第2凸部12c2とはレーザ光源11の第1光出射口に近い側からこの順に並んで配置されている。
【0018】
このような第2面122を有する波長変換部材12を用いることにより、波長変換部材12から上方へ向かう光の強度分布を改善することができると考えられる。
図2に示す凸部12cの場合は、溝12dの底部およびその付近にはレーザ光源11からの第1光が直接照射され難い。このため、溝12dの底部およびその付近では蛍光体の蛍光が少なくなる。したがって、第1光及び第2光の混合光の発光強度分布にむらが生じる。一方、
図3A〜3Cに示すように第2面122を有する凸部12cを設けた波長変換部材12であれば、レーザ光源11からの第1光を、溝12dの底部およびその付近を含む領域、すなわち第1凸部12c1の第2面122から第2凸部12c2の第1面121に亘るほぼ全域に直接照射することができる。これにより、溝12dの底部およびその付近を含むほぼ全領域において蛍光体を励起させることができる。
【0019】
より詳細に言えば、
図3A〜3Cに示す凸部12cは、第1光の光軸Lと平行な線L
Aに対して以下の関係である第1面121及び第2面122を有するといえる。まず、
図3Aに示すように、第1面121は光軸Lと平行な線L
Aに対して非垂直な面であり、且つ、第1面121に垂直な直線を対称軸として線L
Aに対して線対称である線L
Bは波長変換部材12から上方へ向かう光を示す線である。これらは
図2に示す凸部12cと同様であるが、以下の点において
図2に示す凸部12cと
図3A〜3Cに示す凸部12cとは異なる。すなわち、
図3Bに示すように、まず、線L
Aは第1凸部12c1の第2面122と直接交わる。そして、第1凸部12c1の第2面122に垂直な直線を対称軸として線L
Aに対して線対称である線L
Cと交わる位置に、第2凸部12c2の第1面121が配置されている。さらに、第2凸部12c2の第1面121に垂直な直線を対称軸として線L
Cに対して線対称である線L
Dが、波長変換部材12から上方へ向かう光を示す線である。また、
図3A〜3Cに示す凸部12cは、第1面121の全域において第1面121と線L
Aとが直接交差するように形成されているので、第1面121の下端から上端までのほぼ全面から第2光を取り出すことが可能である。
【0020】
図3A〜3Cに示すように、複数の凸部12cそれぞれにおいて第2面122の面積は第1面121の面積よりも大きいことが好ましい。つまり、第1方向A
1における第1面121及び第2面122それぞれの長さが略同じ場合において、第2面122における第2方向A
2の幅が、第1面121における第2方向A
2の幅よりも大きいことが好ましい。また、
図3Cに示すように、第1凸部12c1の第2面122の上端近傍に垂直な直線を対称軸として線L
Aと線対称をなす線L
Cと交わる位置に、第2凸部12c2の第1面121を配置することが好ましい。これにより、第2面122において反射された第1光の大部分を隣接する第1面121において再反射し、上方に向かわせることが可能となる。
【0021】
波長変換部材12において、レーザ光源11からの第1光が一度に照射される範囲内に複数の凸部12cが存在することが好ましい。これにより、上面視における第1光の発光強度分布の偏りを低減することができる。具体的には、複数の凸部12cそれぞれの幅W
1は5μm以上80μm以下とすることができる。また、複数の凸部12cそれぞれの高さHは3μm以上35μm以下とすることができる。上述の
図2に示す凸部12cのように、凸部12cが溝12dの底部およびその付近にレーザ光源11からの第1光が直接照射されない形状である場合は、幅W
1を小さくすることが好ましい。これにより、第1光が直接照射される領域同士の間隔を小さくすることができるため、輝度分布を均一に近づけることが可能である。具体的には、複数の凸部12cそれぞれの幅W
1を5μm以上20μm以下とすることが好ましい。この場合、複数の凸部12cそれぞれの高さHを例えば3μm以上10μm以下とすることが好ましい。なお、凸部12cの幅W
1とは、上面視において、第2方向A
2における凸部12cの一端から他端までの最短距離を指す。凸部12cの高さHとは、基準面Bから凸部12cの上端までの最短距離を指す。
【0022】
また、上面視において、凸部12cの第1方向A
1における長さは、第1面121が反射面として機能する程度に長いことが好ましい。具体的には、凸部12cの第1方向A
1における長さを幅W
1よりも大きくすることができる。例えば、凸部12cの第1方向A
1における長さを波長変換部材12の第1方向A
1における長さと等しくする。
【0023】
図1Bに示すように、すべての凸部12cを同じサイズとすることができる。一方で、波長変換部材12に対する第1光の入射角度は上面12A内で若干の差異があるため、これに合わせて凸部12cのサイズや傾斜角度を上面12A内で異ならせることもできる。
【0024】
レーザ光源11からの第1光が一度に照射される範囲内に配置される凸部12cの数は、例えば3以上とする。
図1Bに示すように、波長変換部材12の第1方向A
1に沿った外縁部分は凸部12cを設けなくてもよい。例えば、基準面Bと略平行な平坦面を波長変換部材12の第1方向A
1に沿った外縁部分に配置し、それよりも内側に複数の凸部12cを配置することができる。なお、基準面Bは、例えば、上面12Aと反対側の面である下面12Bと平行な面となる。
【0025】
波長変換部材12の上面12Aは、レーザ光源11からの第1光が一度に照射される範囲内において、複数の凸部12cのみで構成することができる。すなわち、隣接する凸部12c同士を連続して配置することができる。例えば、1つの凸部12cは1つの第1面121と1つの第2面122のみからなり、隣接する2つの凸部に亘って第1面121と第2面122が連続するように複数の凸部を形成することができる。なお、第1面121及び第2面122は典型的には平坦面であるが、第1光を意図する方向へ反射可能であれば面内に凸部や凹部を有していてもよい。例えば、凸部12cの高さHより小さい高低差が第1面121又は第2面122に存在していてもよい。
【0026】
波長変換部材12は、一種の蛍光体又は混在した二種以上の蛍光体を含む。波長変換部材12に含まれる蛍光体は、第1光によって励起されて蛍光としての第2光を発する。第1光と第2光の混合により、例えば白色光を得る。本明細書において、蛍光体が二種以上である場合は、それらの蛍光体が発する光をすべて第2光に含める。第1光が青色光である場合には、第2光として黄色光、あるいは黄色光及び赤色光を選択することにより、これらの混合光として白色光を得ることができる。黄色光を発する蛍光体としては、YAG、LAG等が挙げられる。赤色光を発する蛍光体としては、CASN、BSESN等が挙げられる。蛍光体は、凸部12cに含有させることができる。すなわち、波長変換部材12における基準面Bより上方の部分に含有させることができる。ただし、凸部12cのみでは波長変換が不十分となる虞がある。したがって、波長変換部材12においては、基準面Bよりも下の部分にも蛍光体が含有されていることが好ましい。また、波長変換部材12には、蛍光体と屈折率の異なる透光性材料(例えばアルミナ)を混合させることができる。これにより、波長変換部材12の内部において光を散乱させ、上面12Aから取り出すことができる。
【0027】
(レーザ光源11)
レーザ光源11は、波長変換部材12に含まれる蛍光体を励起する第1光を出射する。第1光は、波長変換部材12の上方(すなわち光取り出し方向)とは異なる方向から波長変換部材12に照射される。このような配置であれば、波長変換部材12からの光は主にレーザ光源11と異なる方向に向かうため、波長変換部材12からレーザ光源11に向かう光を遮断する部材を不要とすることができる。また、このような配置であれば、発光装置10の安全性を高めることもできる。もし波長変換部材12の上方にレーザ光源11を配置する発光装置であれば、波長変換部材12が剥離するなどレーザ光の照射位置から波長変換部材12が外れた際に、発光装置の外部への光取り出し方向とレーザ光源11が出射するレーザ光の光路がほぼ一致する場合がある。そうすると、レーザ光が発光装置の外部に直接取り出されることとなる。しかし、波長変換部材12の上方とは異なる方向にレーザ光源11を配置する発光装置10であれば、波長変換部材12が外れた場合であっても、発光装置の外部への光取り出し方向とレーザ光源11が出射するレーザ光の光路が一致しない配置とすることができる。したがって、波長変換部材12が外れた場合であってもレーザ光が発光装置10の外部に直接取り出され難く、安全性の高い発光装置10を得ることができる。
【0028】
レーザ光源11としては、例えば半導体レーザ素子を用いることができる。半導体レーザ素子と、レンズのような光学部材、ファイバ、及び反射ミラー等の1以上の部材とを組み合わせて、これらを総称してレーザ光源11としてもよい。レーザ光源11は、少なくとも、レーザ光源11から出射される第1光の光軸Lが複数の凸部12cのいずれかの表面に位置するように配置される。波長変換部材12における第1光の照射領域は、例えば上面12Aよりも小さい。なお第1光の照射領域は、例えば、第1光のうちピーク強度値から1/e
2等の任意の強度に落ちたときまでの強度範囲の部分が照射される領域として特定することができる。
【0029】
レーザ光源11が出射する第1光は、レーザ光源11から出射して波長変換部材12に到達するまではレーザ光(コヒーレンス光)であるが、波長変換部材12の上面12Aで反射された後の第1光や波長変換部材12に進入してから外部に取り出される第1光は非レーザ光(インコヒーレンス光)となる場合がある。本実施形態ではレーザ光であるか否かを問わず、レーザ光源11を起点とする光であって波長変換されていない光(例えば青色光)を第1光とする。
【0030】
第1光は、例えば350nm〜600nmの範囲内にピーク波長を有する光とすることができる。YAGのような黄色蛍光体と組み合わせて白色光を得る場合、430nm〜460nmの範囲内にピーク波長を有する第1光とすることが好ましい。このようなピーク波長のレーザ光を出射する光源としてはGaN系半導体レーザ素子が挙げられる。GaN系半導体レーザ素子は例えばInGaNの井戸層を含む量子井戸構造を有する。
【0031】
(光反射部材13)
図1Bに示すように、波長変換部材12の下面12Bには光反射部材13を設けてもよい。光反射部材13によって第1光及び/又は第2光を上方に反射することにより、発光装置10の光取り出し効率をさらに向上させることができる。光反射部材13は、例えば、第1光及び第2光の両方を反射する誘電体多層膜及び/又は金属膜を含む。
【0032】
(発光装置)
発光装置20としてのレーザパッケージを
図4に示す。
図4は、発光装置20の模式的な断面図である。
図4に示すように、発光装置20は、基体23と基体23に接合された蓋体22とを有し、基体23と蓋体22とによって封止空間が構成されている。封止空間は、例えば気密封止された空間である。そしてこの封止空間に、第1光を出射するレーザ光源21としてのレーザ素子と、第1光によって励起されて第2光を発する蛍光体を含む波長変換部材12とが配置されている。蓋体22は、金属等からなる遮光部22aと、ガラス等からなる透光性部22bとを有し、遮光部22aに設けられた開口を塞ぐ位置に透光性部22bが設けられている。
【0033】
発光装置20においては、遮光部22aの開口と波長変換部材12との位置関係によって光取り出し方向、すなわち「上方」を定めることができる。このような発光装置20の封止空間内から外部へ光を取り出すためには遮光部22aの開口を通過する必要がある。したがってこの場合、上方とは、波長変換部材12の上面と遮光部22aの開口とを結ぶ方向を指す。
【0034】
波長変換部材12の上面における第1光照射領域の外縁と遮光部22aの開口の外縁とを結ぶ直線(
図4中の線L
E)によって「上方」を定義することもできる。この場合、波長変換部材12の基準面Bに対する線L
Eの傾斜角度よりも、基準面Bに対する上述の線L
Bの傾斜角度の方を大きくすればよい。なお、傾斜角度とは基準面Bに対する角度のうち90°以下の角度を指す。これにより、第1光を、波長変換部材12が有する凸部12cによって上方すなわち光取り出し方向に反射することができる。例えば、
図2に示す線L
Bの傾斜角度は約80°であり、
図4に示す線L
Eの傾斜角度約60°よりも大きい。また、第2面122を有する凸部12cの場合は、線L
Dについても同様に、基準面Bに対する傾斜角度は線L
Eよりも線L
Dの方を大きくすればよい。例えば、
図3Aに示す線L
Dの傾斜角度は約80°であり、
図4に示す線L
Eの傾斜角度約60°よりも大きい。
【0035】
レーザ光源21(レーザ素子)は、例えば第1光の出射方向が封止空間の底面と略平行となるように、直接又はサブマウント24を介して基体23に実装される。この場合、プリズム等の透明体25を封止空間内に配置し、透明体25と封止空間に充填された気体との屈折率差によって第1光を下方に屈曲させる。これにより、波長変換部材12の上面に第1光を照射することができる。また、レーザ光の拡がり角を考慮して、第1光の光路上であってレーザ光源21と透明体25との間にレンズ26を設けてよい。レンズ26としては、集光レンズ又はコリメートレンズを選択する。
【0036】
このような発光装置20において、上述した凸部12cを定義するための第1光の光軸は、波長変換部材12に入射する直前の領域における第1光の光軸である。すなわち、
図4においては、第1光が透明体25を通過した後であって波長変換部材12に照射されるまでの領域における第1光の光軸によって、凸部12cを定義する。
【0037】
発光装置30としてのレーザモジュールを
図5に示す。
図5に示すように、発光装置30は、第1光を出射するレーザ光源31としての固体光源と、第1光が照射される波長変換部材12と、波長変換部材12からの第1光及び第2光が入射するレンズ等の光学系32と、を有する。光学系32を通過した第1光及び第2光は、例えば窓33から外部に取り出される。
【0038】
発光装置30において「上方」とは、波長変換部材12の上面と光学系32の光入射面とを結ぶ方向である。また、発光装置20と同様に、波長変換部材12の上面における第1光照射領域の外縁と光学系32の光入射面の外縁とを結ぶ直線(
図5中の線L
F)によって「上方」を定義することもできる。この場合、波長変換部材12の基準面Bに対する線L
Fの傾斜角度よりも、基準面Bに対する上述の線L
Bの傾斜角度の方を大きくする。これにより、第1光を、波長変換部材12が有する凸部12cによって上方すなわち光取り出し方向に反射することができる。また、第2面122を有する凸部12cの場合は、線L
Dについても同様に、基準面Bに対する傾斜角度は線L
Fよりも線L
Dの方を大きくする。
【0039】
発光装置30は、レーザ光源31が出射する第1光を波長変換部材12に向けて反射する反射機構34を有してよい。反射機構34は、例えば、多数の鏡面を有するデジタルマイクロミラーデバイスを有する。これによって波長変換部材12における第1光の照射位置を可変とすることができる。レーザ光源31は、例えば、半導体レーザ素子を気密封止したレーザパッケージである。また、発光装置30は、波長変換部材12の下面と熱的に接続された放熱体35を有してもよい。反射機構34等によって第1光の照射位置を可変とすると、これに伴い、波長変換部材12に照射される第1光の方向、すなわち基準面Bに対する光軸の傾きも可変となる場合がある。この場合、例えば、それらの第1光のうち中央部に向かう第1光の光軸を基準として凸部12cを形成する。もしくは、波長変換部材12の各部分に実際に照射される第1光の光軸を基準として各部分の凸部12cをそれぞれ形成してもよい。
【0040】
(波長変換部材12の変形例)
波長変換部材12は切り欠き部12eを有することができる。この例を
図6A〜6Cに示す。
図6Aは波長変換部材12を示す模式的な上面図であり、
図6Bは
図6Aの6B−6B線における模式的な断面図である。
図6Cは、
図6Bの部分拡大図である。
【0041】
切り欠き部12eは、上方から視て格子状に設けられている。そして、格子状の切り欠き部12eで区切られた領域の少なくとも一部に複数の凸部12cが設けられている。これにより、切り欠き部12eで区切られた領域に第1光を照射した際に、波長変換部材12内における光の広がりを切り欠き部12eによって制限することができる。したがって、切り欠き部12eを有する波長変換部材12は、波長変換部材12における第1光の照射位置が可変である発光装置30に特に適している。
【0042】
さらに、切り欠き部12eには遮光部材が埋設されていてもよい。第1光照射領域は、例えば、切り欠き部12eで区切られた領域内に収まる大きさとする。切り欠き部12eの幅W
2としては3μm以上10μm以下が挙げられる。
図6Cに示すように、切り欠き部12eの幅W
2は凸部12cの幅W
1よりも狭くすることができる。また、波長変換部材12内における光の広がりを制限するために、切り欠き部12eの深さDは、凸部12cの高さHよりも小さいことが好ましい。切り欠き部12eの深さDは、例えば30μm以上、さらには50μm以上とする。切り欠き部12eの深さDは、波長変換部材12を完全に分断する深さでもよい。また、切り欠き部12eは、機械的な除去によって形成してもよいが、化学的なエッチングや成型によって形成することもできる。
【実施例】
【0043】
(実施例)
実施例の波長変換部材12として、
図2に示す形状の波長変換部材を作製した。実施例の波長変換部材12は、それぞれが第1方向A
1に延伸し且つ第2方向A
2に並列に配置された複数の凸部12cを有する。複数の凸部12cそれぞれは、上述の第1面121を有する形状である。波長変換部材12の平面視形状は約1mm四方の略正方形であり、その厚みは約100μmである。波長変換部材12の上面には16個の凸部12cがすべて同様の形状で形成されている。凸部12cそれぞれの幅は約60μmであり、凸部12cそれぞれの高さは約30μmである。凸部12cは第1面121を含む2つの面からなり、第1面121はレーザ光が直接照射される位置にあり、他方の面はレーザ光が直接照射されない位置にある。第1面121と他方の面とがなす角度は約70°である。波長変換部材12は、蛍光体としてYAGを含有する。作製した波長変換部材12の断面写真を
図7Aに示す。
図7Aは光学顕微鏡写真であり、図中右下の直線は20μmを示す線である。このような波長変換部材12と同様のものを用いて、
図4に示す発光装置20(レーザパッケージ)と同様の構造であるが蓋体22は設けない測定用サンプルを作製した。レーザ光源21(レーザ素子)としては、ピーク波長約450nmのレーザ光(第1光)を発振するGaN系半導体レーザ素子を用いた。凸部12cの第1面121の、波長変換部材12に照射されるレーザ光の光軸と平行な方向Lとなす角度は、約55°であった。
【0044】
このような測定用サンプルについて、配光特性を測定した。結果を
図7Bに示す。
図7Bに示す結果は、第2方向における測定結果である。
図7Bにおいて、横軸は上方を0°として第2方向における位置を示し、縦軸は最大光度を1としたときの相対光度を示す。
図7Bにおいて、実線が青色光(第1光)を示し、破線が黄色光(第2光)を示す。また、レーザ光源11からの第1光は約−70°の方向から波長変換部材12に照射された。
【0045】
(比較例)
【0046】
比較例の波長変換部材は、凸部を設けない以外は実施例の波長変換部材12と同様である。このような比較例の波長変換部材を用いて実施例と同様の部材を用いた測定用サンプルを作製し、配光特性を測定した。結果を
図8に示す。
図8に示す結果は、第2方向における測定結果である。
図8において、横軸は上方を0°として第2方向における位置を示し、縦軸は最大光度を1としたときの相対光度を示す。
図8において、実線が青色光(第1光)を示し、破線が黄色光(第2光)を示す。また、レーザ光源11からの第1光は約−70°の方向から波長変換部材に照射された。
【0047】
(実施例の評価)
図7B及び
図8に示すとおり、実施例の波長変換部材12を用いることで、比較例の波長変換部材を用いた場合よりも青色光(第1光)の配光特性を改善することができた。すなわち、
図8では青色光の光度の最大値は+50°付近であるが、
図7Bでは−30°付近及び+30°付近であり、黄色光(第2光)の光度が最大となる位置に近くなった。なお、黄色光の光度の最大値は、
図7B及び
図8共に−12°付近である。このように、波長変換部材12に第1面121を有する凸部12cを設けることで、第1光の最大光度の位置を第2光の最大光度の位置に近づけることができる。これにより、蓋体22を設けたときに、第1光と第2光共に最大光度の部分を外部に取り出すことができ、発光装置20の光取り出し効率を向上させることができる。