特許第6724650号(P6724650)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6724650
(24)【登録日】2020年6月29日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】発光装置及び発光装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/54 20100101AFI20200706BHJP
【FI】
   H01L33/54
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-161584(P2016-161584)
(22)【出願日】2016年8月20日
(65)【公開番号】特開2018-29163(P2018-29163A)
(43)【公開日】2018年2月22日
【審査請求日】2019年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】爲本 広昭
【審査官】 右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−232503(JP,A)
【文献】 特開2013−012545(JP,A)
【文献】 特開2012−060181(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/137356(WO,A1)
【文献】 特開2015−220431(JP,A)
【文献】 特開2016−004959(JP,A)
【文献】 特開2009−043764(JP,A)
【文献】 特開2016−072304(JP,A)
【文献】 特開2015−228397(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0179901(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 − 33/64
H01L 23/28 − 23/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面を構成する透光性基板と前記第1面と反対側の第2面を構成する半導体層と前記第1面と前記第2面との間であって前記透光性基板の側面及び前記半導体層の側面を含む側面とを備える積層構造体と、前記積層構造体の前記第2面に備えられる電極と、を備える発光素子と、
前記電極の少なくとも一部が露出するよう、前記積層構造体の表面を被覆する封止部材と、
を備える発光装置であって、
前記封止部材は、前記透光性基板の第1面及び側面を被覆する第1封止部材と、前記半導体層の第2面及び側面、並びに前記透光性基板の側面を被覆する前記第1封止部材を被覆する第2封止部材と、を備え、
前記第1封止部材と前記第2封止部材は、前記半導体層の側面上で重ならない発光装置。
【請求項2】
前記第1封止部材は、前記積層構造体の側面において、前記第1面側から前記第2面に近づくにつれて膜厚が薄くなる請求項1記載の発光装置。
【請求項3】
前記第1封止部材は、前記積層構造体の第1面と側面との間の角部において、丸みを帯びた形状である請求項1又は請求項2記載の発光装置。
【請求項4】
第1面を構成する透光性基板と前記第1面と反対側の第2面を構成する半導体層と前記第1面と前記第2面との間であって前記透光性基板の側面及び前記半導体層の側面を含む側面とを備える積層構造体と、前記積層構造体の前記第2面に備えられる電極と、を備える発光素子を準備する工程と、
前記透光性基板の第1面及び前記側面を被覆し、前記半導体層の側面を被覆しない第1封止部材を形成する工程と、
前記半導体層の第2面及び側面、並びに前記透光性基板の側面を被覆する前記第1封止部材を、第2封止部材で被覆する工程と、
を備える発光装置の製造方法。
【請求項5】
第1面を構成する透光性基板と前記第1面と反対側の第2面を構成する半導体層と前記第1面と前記第2面との間であって前記透光性基板の側面及び前記半導体層の側面を含む側面とを備える積層構造体と、前記積層構造体の前記第2面に備えられる電極と、を備える発光素子を準備する工程と、
前記半導体層の第2面及び側面、並びに前記透光性基板の側面を、第2封止部材で被覆する工程と、
前記透光性基板の第1面及び側面、並びに前記第2封止部材被覆し、前記半導体層の側面を被覆している前記第2封止部材を被覆しない第1封止部材を形成する工程と、
を備える発光装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1封止部材で被覆する工程の前に、前記電極を露出させる工程を有する請求項5記載の発光装置の製造方法。
【請求項7】
前記第1封止部材で被覆する工程の後に、前記電極を露出させる工程を有する請求項5記載の発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置及び発光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子を収納するハウジングを設けずに、封止部材のみで発光素子の表面の全面を被覆した小型の発光装置が知られている。封止部材を2度に分けて形成することで、発光素子の全面を被覆する方法が開示されている。そして、発光素子の全面を被覆するために、2種の封止部材の一部が重なるように形成されていることが開示されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−60181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
封止部材が重なる部分において、封止部材が剥がれる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態は、以下の構成を含む。
第1面を構成する透光性基板と第1面と反対側の第2面を構成する半導体層と第1面と第2面との間であって透光性基板の側面及び半導体層の側面を含む側面とを備える積層構造体と、積層構造体の第2面に備えられる電極と、を備える発光素子と、電極の少なくとも一部が露出するよう、積層構造体の表面を被覆する封止部材と、を備える発光装置であって、封止部材は、透光性基板の第1面及び側面を被覆する第1封止部材と、半導体層の第2面及び側面、並びに透光性基板の側面を被覆する第1封止部材を被覆する第2封止部材と、を備え、第1封止部材と第2封止部材は、半導体層の側面上で重ならない発光装置。
【発明の効果】
【0006】
以上により、封止部材が剥がれにくい小型の発光装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係る発光装置の概略断面図である。
図2図2(a)〜図2(e)は、実施形態に係る発光装置の製造方法を示す概略断面図である。
図3図3は、実施形態に係る発光装置の概略断面図である。
図4図4(a)〜図4(e)は、実施形態に係る発光装置の製造方法を示す概略図である。
図5図5(a)〜図4(f)は、実施形態に係る発光装置の製造方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「右」、「左」および、それらの用語を含む別の用語)を用いる。それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が限定されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一の部分又は部材を示す。
【0009】
実施形態に係る発光装置は、発光素子と、発光素子の表面を被覆する封止部材と、を備える。封止部材は少なくとも一部が透光性であり、発光装置の発光面として機能する。また、封止部材は発光装置の外表面を構成しており、発光素子を外部から保護する保護膜として機能する。
【0010】
発光素子は、積層構造体と電極と、を備える。積層構造体は、透光性基板と半導体層とを備える。半導体層は発光層を含む。積層構造体は、第1面と、その反対側の第2面と、第1面と第2面の間の側面と、を備えている。積層構造体の第1面は透光性基板で構成され、第2面は半導体層で構成される。積層構造体の側面は、透光性基板の側面と、半導体層の側面と、で構成される。
【0011】
封止部材は、発光素子の表面を被覆する。詳細には、電極の少なくとも一部が露出するように、積層構造体の表面を被覆する。封止部材は、透光性基板の第1面及び側面を被覆する第1封止部材を備える。封止部材は、半導体層の第2面及び側面、並びに透光性基板の側面を被覆する第2封止部材と、を備える。第1封止部材と第2封止部材は、半導体層の側面上で重ならない。
【0012】
通電により半導体層の発光層からは光が放出される。このとき、発光層からは熱も発生している。そのため、発光層を含む半導体層を被覆する封止部材は、熱の影響を受けやすい。実施形態に係る発光装置では、2つの封止部材を用いており、透光性基板の側面上で重なっている。封止部材が重なった部分は、2つの封止部材のそれぞれの縁部であると共に、薄く形成されている部分である。そのため、他の部分、すなわち重なっていない封止部材に比べると剥がれやすい。実施形態に係る発光装置は、第1封止部材と第2封止部材は、半導体層の側面上で重ならない。つまり、最も熱の影響を受けやすい部分である半導体層の側面上で、第1封止部材と第2封止部材とが重ならない。これにより、封止部材が剥がれることを低減することができる。また封止部材が透光性である場合には、透光性部材を用いる必要がある。そのため、接着性、または、耐熱変形性等封止部材の剥がれを抑制する特性を備えた材質の選定自由度に制約が生じる。本実施形態では、上記のような制約がある場合であっても、2つの封止部材が重なる位置を特定の位置とすることで、封止部材を剥がれにくくすることができる。
【0013】
<実施形態1>
実施形態1に係る発光装置1を図1に示す。発光装置1は、発光素子10と、封止部材20と、を備える。発光素子10は、半導体層を含む積層構造体11と、一対の電極17と、を備える。積層構造体11は、透光性基板13と半導体層15とを備える。積層構造体11は、第1面11aと、その反対側の第2面11bと、第1面11aと第2面11b間の側面11cと、を備えている。積層構造体11の第1面11aは透光性基板13の第1面13aで構成され、第2面11bは半導体層15の第2面15bで構成される。積層構造体11の側面11cは、透光性基板13の側面13cと、半導体層15の側面15cと、で構成される。
【0014】
封止部材20は、発光素子10の表面を被覆する。詳細には、電極17の少なくとも一部が露出するように、積層構造体11の表面を被覆する。封止部材20は、透光性基板13の第1面13a及び側面13cを被覆する第1封止部材21を備える。封止部材20は、半導体層15の第2面15b及び側面15c、並びに透光性基板13の側面13cを被覆する第2封止部材22と、を備える。
【0015】
透光性基板13の側面13cは、第1封止部材21と、第2封止部材22の両方によって被覆されている。また、半導体層15の側面15cは、第2封止部材22のみで被覆される。つまり、第1封止部材21と第2封止部材22は、半導体層15の側面15c上で重ならない。実施形態1では、透光性基板13の側面13cと接する第1封止部材21と、その第1封止部材21を被覆する第2封止部材22と、を備える。
【0016】
第1封止部材21が第2封止部材22によって覆われている。これにより、発光素子の電極以外の表面を封止部材によって被覆することができる。
【0017】
第1封止部材21は、透光性基板13の側面13cにおいて、厚みが異なっている。詳細には、積層構造体の第1面11a側が厚く、第2面11b側に近づくにつれて薄くなっている。これにより、第2封止部材と重なる部分において、封止部材が他所に比して厚くなり易くなることを抑制することができる。例えば、第1封止部材21及び第2封止部材22が同じ材料である場合、すなわち、同じ蛍光体を略均一な濃度で含む波長変換部材を用いる場合は、膜厚が厚い部分と薄い部分が形成されると発光色の相違が生じる。そのため、2つの封止部材が重なった部分の厚みを、重なっていない部分の厚みと略等しくなるようにすることで、あたかも1つの封止部材で発光素子の表面を覆ったようにすることができる。これにより、発光色を略均一にすることができる。
【0018】
また、封止部材の厚みが厚い部分は、外部への放熱性が低下し、厚みが薄い部分と比べ温度が高くなる傾向を有する。そのため、熱による変形量が大きくなり易い。2つの封止部材が重なった部分の厚みを、重なっていない部分と略等しく、あるいは薄くすることで、熱による変形量を抑制することができ、剥がれを抑制することができる。さらに、熱による劣化も抑制することができる。。また、第1封止部材21は第2面側が薄くなるため、外側の側面が傾斜面となっている。これにより、第2封止部材と接する面積を大きくすることができ、第1封止部材と第2封止部材との相互間の接着力を向上することができる。
【0019】
また、第1封止部材21を透光性部材、第2封止部材22を光反射性部材とする場合、第1封止部材21と第2封止部材22との界面が傾斜面となる。つまり、光反射性である第2封止部材22が上側(第1面側)に向いた反射面となる。これにより、発光層からの光をその界面である傾斜面で反射して、透光性基板側に向けて光を放出し易くすることができる。
【0020】
第1封止部材21は、透光性基板13の第1面13aと側面13cの間の角部において、丸みを帯びた形状で形成されている。これにより、封止部材を加熱硬化する場合に封止部材の硬化収縮により生じる応力を角部に集中させることなく丸み部にて分散させることができる。これにより、応力集中によって角部において封止部材の割れ、または、剥がれを抑制することが可能となる。また、この発光装置の検査を行う際や配線基板に実装する際に、発光装置の表面すなわち封止部材に装置の治具等が接触し、封止部材が押圧変形したとしても、第1封止部材が角ばっている場合に比して、変形応力を角部に集中させることなく丸み部にて分散させることができる。これにより、応力集中によって角部において封止部材の割れ、または、剥がれを抑制することが可能となる。
【0021】
発光装置1の製造方法を、図2(a)〜図2(e)を用いて説明する。
【0022】
まず、図2(a)に示すように、粘着剤層(不図示)を備えたシートS1に、発光素子10を載置する。発光素子10は、シートS1上に複数載置することができ、ここでは、発光素子10を2個載置した例を示す。発光素子10は積層構造体11の第2面11b、すなわち、半導体層15の第2面15b側をシートS1の粘着剤層と対向して載置する。
【0023】
複数の発光素子10は、隣接する発光素子10との距離を一定の間隔をあけて規則正しく載置することが好ましい。その場合、発光素子と、隣接する発光素子との隙間の幅は、後述の第1封止部材の膜厚(積層構造体の第1面上における膜厚)よりも、隣り合う素子同士の癒着を防止するために大きいことが好ましい。
【0024】
後述のように、第1封止部材は、透光性の樹脂部材をスプレー塗布することで形成される。そのため、発光素子10と、隣接する発光素子10との間隔を小さくすることで、積層構造体11の側面11cの下方、すなわち、半導体層15の側面15cに第1封止部材を形成されにくくすることができる。例えば、積層構造体11の上面視が四角形で縦100μm〜3000μm×横100μm〜3000μmであり、積層構造体11の高さ50μm〜500μm、電極17の高さが5μm〜100μmの発光素子を用い、膜厚が50μm〜200μmの第1封止部材を形成する場合、発光素子と隣接する発光素子との隙間の幅は、70μm〜1000μmとすることができる。
【0025】
また、発光素子10をシートS1上に載置する際、図2(a)に示すように、シートS1の粘着剤層中に電極17が埋設されるようにしてもよい。更に、粘着剤層中に電極17及び半導体層15が埋設されるようにしてもよい。半導体層15の側面15cが粘着剤層に埋設されることで、後述の第1封止部材が半導体層の側面を被覆することをより確実に抑制することができる。このように発光素子10の一部を粘着剤層中に埋設させる場合は、発光素子と隣接する発光素子との間の隙間の幅は、上述の隙間の幅よりも大きくすることができる。
【0026】
次に、図2(b)に示すように第1封止部材21を形成する。第1封止部材21は、液状の樹脂部材をスプレー塗布することで形成することが好ましく、特に、間欠的にスプレーを噴射するパルススプレー法で形成することが好ましい。樹脂部材は、樹脂材料に波長変換部材、拡散材等を混合させたものを用いることができる。
【0027】
スプレーのノズルの噴霧口は、シートS1及び発光素子の上方に配置されており、発光素子の上方から液状の樹脂部材が噴霧される。スプレー法によって形成された第1封止部材21は、図2(b)に示すように、発光素子の積層構造体11の第1面11a及び側面11c、詳細には、透光性基板13の第1面13a及び側面13cに形成されている。透光性基板13の第1面13aと側面13cの間の角部では、第1封止部材21は丸みを帯びた形状で形成されている。また、透光性基板13の側面13cでは、下方にいくにしたがって、第1封止部材21の厚みは薄くなっている。また、発光素子と発光素子の間、すなわちシートS1が露出されている部分にも、樹脂部材は噴霧される。シートS1上の樹脂部材と、発光素子の側面を被覆する樹脂部材とは、連続しているか、あるいは、不連続である。
【0028】
塗布された樹脂部材を加熱により硬化することで、第1封止部材21が形成される。尚、シートS1上に載置したまま硬化させるため、シートS1上の樹脂部材も共に硬化される。尚、後述の第2封止部材を硬化させる際にも加熱される。そのため、この段階において、第1封止部材21の加熱温度は、第2封止部材22を硬化する際の加熱温度よりも低くすることができる。例えば、この段階での第1封止部材21を硬化させる温度および時間として、80℃〜250℃にて5分〜30分保持とすることができる。また、第1封止部材21の硬化の状態は、最終的な硬化状態よりも柔らかく弾性の低い半硬化状態(仮硬化状態)、または、目的とする硬さまで硬化せた本硬化状態としてもよい。好ましくは、第1封止部材21は、この段階では仮硬化としておく。
【0029】
なお、「仮硬化」は、樹脂材料が液状から固体状となった状態を指すものであり、樹脂中には未反応(未硬化)分を含んだ状態を指す。つまり、液状のみの状態の樹脂が流動しない程度に硬化された状態を指す。仮硬化状態の樹脂は、弾性に乏しく、脆い状態である。また、「本硬化」は、樹脂中に未反応(未硬化分)を含まない状態まで硬化された状態(完全硬化状態)を指す。
【0030】
次に、図2(c)に示すように、第1封止部材21を備えた発光素子を、シートS1からシートS2に転写する。詳細には、発光素子の積層構造体の第1面11a側に形成した第1封止部材21にシートS2を貼り付けた後、シートS1を剥離する。
【0031】
樹脂部材が、積層構造体の側面からシートS1の上面にまで連続して形成されている場合は、発光素子をシートS1から剥がす際に、シートS1の上面に近い位置で厚みが薄くなっている部分の樹脂部材を引きちぎる。これにより、シートS1上に樹脂部材を残したまま、発光素子を転写することができる。また、引きちぎる前に、例えば、発光素子が載置された部分のシートS1を、下側からヘラ等を当接させて擦ることで、あらかじめ引きちぎり易くしておくことができる。引きちぎりの際に第1封止部材が半硬化状態で有れば、弾性が低いため引きちぎり性が良くなる。
【0032】
尚、シートS2の粘着剤層中に、第1封止部材21の一部が埋設されてもよいが、好ましくは、埋設しないようにする。これは第1封止部材21が、前記のようにまだ半硬化状態で脆弱であり、過度な粘着材の拘束力を受けると変形する可能性を有するためである。発光素子を過度に押圧せず転写を行うためにシートS2の粘着剤層はシートS1よりも粘着強度の高いものが好ましい。
【0033】
図2(c)に示すように、シートS1からシートS2に転写することで、発光素子の電極17が上側に向いて露出された状態となる。そのため、この段階で、発光素子に通電して発光させる発光検査を行うことができる。例えば、第1封止部材21に波長変換部材が含まれている場合、この段階で色度を確認することができる。後述の第2封止部材に波長変換部材が含まれる場合は、この段階での色度を元に、第2封止部材の塗布量などを調整することができる。なお、このような発光検査を行う場合は、シートS2は透明のものを用いるのが好ましい。
【0034】
次に、図2(d)に示すように第2封止部材22を形成する。第2封止部材22は、第1封止部材と同様に、液状の樹脂部材をスプレー塗布することで形成することができ、特に、間欠的にスプレーを噴射するパルススプレー法で形成することが好ましい。樹脂部材は、樹脂材料に波長変換部材、拡散材等を混合させたものを用いることができる。
【0035】
スプレーのノズルの噴霧口は、シートS2及び発光素子の上方に配置され、発光素子の上方から液状の樹脂部材が噴霧される。スプレー法によって形成された第2封止部材22は、図2(d)に示すように、発光素子の積層構造体11の第2面11b及び側面11cに形成される。詳細には、第2封止部材22は、半導体層15の第2面15b及び側面15cに加え、透光性基板13の側面13cに形成された第1封止部材21までを被覆するように形成されている。また、電極17の表面も被覆するように第2封止部材22が形成されている。半導体層15の第2面15bと側面15cの間の角部では、第2封止部材22は丸みを帯びた形状で形成されている。
【0036】
半導体層15の側面において、第2封止部材22の膜厚は略均一である。また、透光性基板13の側面13cでは、図2(d)に示すように、下方に近づくにしたがって第2封止部材22の厚みは薄くなっている。尚、第1封止部材21は、図2(d)に示すように、下方に近づくにしたがって、厚みが厚くなっている。そのため、第1封止部材21と第2封止部材22とが重なっている部分における両者の総膜厚は、半導体層の側面15cを被覆する第2封止部材22の膜厚と略等しくすることができる。これにより、発光装置の配光色ムラを低減することができる。
【0037】
第1封止部材21の側面は、第2封止部材22によって全て覆われていてもよい。これにより、封止部材間の接着面積を増やし、接着をより強固とすることができる。あるいは、第1封止部材21の側面の一部が露出してもよい。これにより、素子側面の封止部材厚を薄くし、封止部材の放熱性の向上を図ることができる。
【0038】
発光素子と発光素子の間、すなわちシートS2が露出されている部分にも、樹脂部材は噴霧される。塗布された樹脂部材を加熱により硬化することで、第2封止部材22が形成される。尚、シートS2上に載置したまま硬化させるため、シートS2上の樹脂部材も共に硬化される。第2封止部材を硬化する際の加熱温度および時間としては、例えば、120℃〜250℃にて60分〜360分保持することができる(本硬化)。この加熱により第2封止部材22とともに、前記第1封止部材21も本硬化し、封止部材20は目的とする硬さの硬硬化状態となる。
【0039】
次に、図2(e)に示すように、第2封止部材22の一部を研磨などにより除去することで、電極17の少なくとも一部を露出させる。好ましくは、電極17の上面の全面を露出させる。最後にシートS2を除去することで、図1に示す発光装置1を得ることができる。第2封止部材22は、研磨によって除去されるため、その研磨量によっては図2(e)に示すように角部の丸みがなくなり、角張った形状となる場合がある。
【0040】
<実施形態2>
実施形態2に係る発光装置2を図3に示す。発光装置2は、封止部材220を構成する第1封止部材212と第2封止部材222の重なり方が、実施形態1とは異なる。すなわち、発光装置2では、透光性基板13の側面13cと接する第2封止部材222と、その第2封止部材222を被覆する第1封止部材212と、を備える。
【0041】
第2封止部材222が第1封止部材212によって覆われていることで、第2封止部材222と半導体層15との密着性を向上することができる。
【0042】
第2封止部材222が、透光性基板13の側面13cにおいて、厚みが異なることで、第2封止部材222の側面が傾斜面となる。これにより第1封止部材212と接する面積を大きくすることができ、第1封止部材212と第2封止部材222との相互間の接着力を向上することができる。また、第1封止部材212を透光性部材、第2封止部材222を光反射性部材とする場合、発光素子の側方に出射する光の少ない正面配光性の高い素子とすることができる。また第2封止部材222を光反射性部材とする場合、正面への光出射量、すなわち正面輝度の高い素子とすることができる。
【0043】
(製造方法1)
発光装置2の製造方法1を、図4(a)〜図4(e)を用いて説明する。発光装置2は、先に第2封止部材を形成し、その後第1封止部材を形成することで得ることができる。
【0044】
まず、発光素子を準備し、図4(a)に示すように、粘着剤層(不図示)を備えたシートS3に、発光素子10を載置する。発光素子10は、シートS3上に複数載置することができ、ここでは、発光素子10を2個載置した例を示す。発光素子10は積層構造体11の第1面11a、すなわち、透光性基板13の第1面13a側をシートS3の粘着剤層と対向して載置する。
【0045】
複数の発光素子10は、隣接する発光素子10との距離を一定の間隔をあけて規則正しく載置することが好ましい。その場合、発光素子と、隣接する発光素子との間隔は、後述の第2封止部材の膜厚(積層構造体の第1面上における膜厚)よりも大きいことが好ましい。
【0046】
後述のように、第2封止部材は、透光性の樹脂部材をスプレー塗布することで形成される。そのため、発光素子10と、隣接する発光素子10との間隔を小さくすることで、積層構造体11の側面11cの下方、すなわち、透光性基板13の側面13cに第2封止部材を形成されにくくすることができる。例えば、積層構造体11の上面視が四角形で縦100μm〜3000μm×横100μm〜3000μmであり、積層構造体11の高さ50μm〜500μm、電極17の高さが5μm〜100μmの発光素子を用い、膜厚が50μm〜200μmの第1封止部材を形成する場合、発光素子と隣接する発光素子との隙間の幅は、70μm〜1000μmとすることができる。
【0047】
次に、図4(b)に示すような第2封止部材222を形成する。第2封止部材222は、液状の樹脂部材をスプレー塗布することで形成することが好ましく、特に、間欠的にスプレーを噴射するパルススプレー法で形成することが好ましい。樹脂部材は、樹脂材料に波長変換部材、拡散材、光反射部材等を混合させたものを用いることができる。
【0048】
スプレーのノズルの噴霧口は、シートS1及び発光素子の上方に配置されており、発光素子の上方から液状の樹脂部材が噴霧される。スプレー法によって形成された第2封止部材222、図4(b)に示すように、発光素子の積層構造体11の第2面11b及び側面11c、詳細には、半導体層15の第2面15b及び側面15c、透光性基板13の側面13cを被覆するように形成されている。さらに、電極17の上面も被覆するように第2封止部材222を設ける。
【0049】
半導体層15の第2面15bと側面15cの間の角部では、第2封止部材222は丸みを帯びた形状で形成されている。また、透光性基板13の側面13cでは、下方にいくにしたがって、第2封止部材222の厚みは薄くなっている。また、発光素子と発光素子の間、すなわちシートS3が露出されている部分にも、樹脂部材は噴霧される。シートS3上の樹脂部材と、発光素子の側面を被覆する樹脂部材とは、連続しているか、あるいは、不連続である。
【0050】
塗布された樹脂部材を加熱により硬化することで、第2封止部材222が形成される。尚、シートS3上に載置したまま硬化させるため、シートS3上の樹脂部材も共に硬化される。第2封止部材を硬化する際の加熱温度および時間としては、例えば、120℃〜250℃にて60分〜360分保持することができる。この硬化により第2封止部材は目的とする硬さの硬化状態となる(本硬化される)。
【0051】
次に、図4(c)に示すように、第2封止部材222の一部を研磨などにより除去することで、電極17の少なくとも一部を露出させる。好ましくは、電極17の上面の全面を露出させる。製造方法1では、第1封止部材を形成する前に第2封止部材を研磨等により除去するため、上述のような加熱温度で第2封止部材222を硬化させる。これにより、研磨の際に封止部材が崩落的に過剰に研磨されることを低減することができる。また、後述の第1封止部材を硬化する際に、電極の周囲で第2封止部材が熱収縮によって剥離するなどの問題を生じにくくすることができる。
【0052】
次に、図4(d)に示すように、第2封止部材222を備えた発光素子を、シートS3からシートS4に転写する。詳細には、発光素子の積層構造体の第2面11b側に形成した第2封止部材222にシートS4を貼り付けた後、シートS3を剥離する。樹脂部材が、積層構造体の側面からシートS3の上面にまで連続して形成されている場合は、発光素子をシートS3から剥がす際に、シートS3上面に近い位置で厚みが薄くなっている部分の樹脂部材を引きちぎる。これにより、シートS3上に樹脂部材を残したまま、発光素子を転写することができる。また、引きちぎる前に、例えば、発光素子が載置された部分のシートS3を、下側からヘラ等を当接させて擦ることで、引きちぎり易くすることができる。
【0053】
次に、図4(e)に示すように、第1封止部材212を形成する。第1封止部材212は、第2封止部材と同様に、液状の樹脂部材をスプレー塗布することで形成することができ、特に、間欠的にスプレーを噴射するパルススプレー法で形成することが好ましい。樹脂部材は、樹脂材料に波長変換部材、拡散材等を混合させたものを用いることができる。
【0054】
スプレーのノズルの噴霧口は、シートS4及び発光素子の上方に配置され、発光素子の上方から液状の樹脂部材が噴霧される。スプレー法によって形成された第1封止部材212は、図4(e)に示すように、発光素子の積層構造体11の第1面11a及び側面11cに形成される。詳細には、第1封止部材212は、透光性基板13の第1面13a及び側面13cに形成されている。半導体層15の側面15cを被覆する第2封止部材222は、第1封止部材212によって覆われず、露出されている。また、透光性基板13の第1面13aと側面13cの間の角部では、第1封止部材21は丸みを帯びた形状で形成されている。
【0055】
透光性基板13の側面13cでは、図4(d)に示すように、下方に近づくにしたがって、第1封止部材212の厚みは薄くなっている。尚、第2封止部材222は、図4(e)に示すように、下方に近づくにしたがって、厚みが厚くなっている。そのため、第1封止部材212と第2封止部材222とが重なっている部分における両者の総膜厚は、半導体層の側面15cを被覆する第2封止部材222の膜厚と略等しくすることができる。これにより、発光装置の配光色ムラを低減することができる。
【0056】
発光素子と発光素子の間、すなわちシートS4が露出されている部分にも、樹脂部材は噴霧される。塗布された樹脂部材を加熱により硬化することで、第1封止部材212が形成される。尚、シートS4上に載置したまま硬化させるため、シートS4上の樹脂部材も共に硬化される。
【0057】
最後にシートS4を除去することで、図3に示す発光装置2を得ることができる。
【0058】
製造方法1では、第2封止部材を形成した後に電極を露出させるため、転写回数を少なくすることができる。
【0059】
(製造方法2)
図3に示す発光装置2は、図5(a)〜図5(f)に示す製造方法2によって得ることもできる。製造方法1では、第2封止部材を形成し、電極を露出させた後に、第1封止部材を形成する。これに対し、製造方法2では、第2封止部材を形成し、次いで第1封止部材を形成した後に、電極を露出させる。以下、主に製造方法1と異なる点について説明する。
【0060】
図5(a)は、図4(a)と同様の工程であり、発光素子10を準備し、粘着剤層を備えたシートS3上に発光素子10を載置する工程を示す。発光素子10は積層構造体11の第1面11a、すなわち、透光性基板13の第1面13a側をシートS3の粘着剤層と対向して載置する。
【0061】
図5(b)は、図4(b)と同様の工程であり、第2封止部材222を形成する工程を示す。第2封止部材222は、電極17の上面を覆うように設けられている。
【0062】
次に、図5(c)に示すように、電極17を埋設した第2封止部材222を備えた発光素子を、シートS3からシートS5に転写する。
【0063】
次に、図5(d)に示すように、第1封止部材212を形成する。
【0064】
次に、図5(e)に示すように、第1封止部材212及び第2封止部材222を備えた発光素子を、シートS5からシートS6に転写する。
【0065】
次に、図5(f)に示すように、第2封止部材222の一部を研磨などにより除去することで、電極17の少なくとも一部を露出させる。最後にシートS6を除去することで、図3に示す発光装置2を得ることができる。
【0066】
製造方法2では、2つの封止部材を形成した後に、電極を露出するために研磨を行う。そのために、第2封止部材及び第1封止部材は、それぞれ形成後に仮硬化のみを行い、両方を形成した後にまとめて、本硬化を行うことができる。
【0067】
以下に、各実施形態に用いられる構成部材について説明する。
【0068】
(発光素子)
発光素子としては、例えば発光ダイオード等の半導体発光素子を用いることができ、青色、緑色、赤色等の可視光を発光可能な発光素子を用いることができる。半導体発光素子は、発光層を含む積層構造体と、電極と、を備える。積層構造体は、電極が形成された側の面(電極形成面)と、それとは反対側の面が光取り出し面とを備える。
【0069】
積層構造体は、発光層を含む半導体層を含む。さらに、サファイア等の透光性基板を備えていてもよい。半導体積層体の一例としては、第1導電型半導体層(例えばn型半導体層)、発光層(活性層)および第2導電型半導体層(例えばp型半導体層)の3つの半導体層を含むことができる。紫外光や、青色光から緑色光の可視光を発光可能な半導体層としては、例えば、III−V族化合物半導体等の半導体材料から形成することができる。具体的には、InAlGa1−X−YN(0≦X、0≦Y、X+Y≦1)等の窒化物系の半導体材料を用いることができる。赤色を発光可能な半導体積層体としては、GaAs、GaAlAs、GaP、InGaAs、InGaAsP等を用いることができる。
【0070】
発光素子は一対の電極を備えており、積層構造体の上であって、同一面側(電極形成面)に配置されている。これらの一対の電極は、積層構造体と、電流−電圧特性が直線又は略直線となるようなオーミック接続されるものであれば、単層構造でもよいし、積層構造でもよい。このような電極は、当該分野で公知の材料及び構成で、任意の厚みで形成することができる。例えば、電極の厚みは、十数μm〜300μmが好ましい。また、電極としては、電気良導体を用いることができ、例えばCu等の金属が好適である。
【0071】
(封止部材)
封止部材は、第1封止部材及び第2封止部材を含み、発光素子の積層構造体の表面を被覆する。封止部材は、発光素子の外表面を構成する。第1封止部材は積層構造体の第1面を被覆する部材であり、透光性である。第2封止部材は積層構造体の第2面を被覆する部材であり、透光性又は光反射性である。
【0072】
封止部材は、透光性材料を含む。透光性材料としては、透光性樹脂が使用できる。透光性樹脂としてはシリコーン樹脂、シリコーン変性樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、メチルペンテン樹脂、ポリノルボルネン樹脂などの熱可塑性樹脂を用いることができる。特に、耐光性、耐熱性に優れるシリコーン樹脂が好適である。
【0073】
封止部材は、上記の透光性材料に加え、波長変換部材として蛍光体を含んでもよい。蛍光体は、発光素子からの発光で励起可能なものが使用される。例えば、青色発光素子又は紫外線発光素子で励起可能な蛍光体としては、セリウムで賦活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(YAG:Ce);セリウムで賦活されたルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(LAG:Ce);ユウロピウムおよび/又はクロムで賦活された窒素含有アルミノ珪酸カルシウム系蛍光体(CaO−Al−SiO);ユウロピウムで賦活されたシリケート系蛍光体((Sr,Ba)SiO);βサイアロン蛍光体、CASN系蛍光体、SCASN系蛍光体等の窒化物系蛍光体;KSF系蛍光体(KSiF:Mn);硫化物系蛍光体、量子ドット蛍光体などが挙げられる。これらの蛍光体と、青色発光素子又は紫外線発光素子と組み合わせることにより、様々な色の発光装置(例えば白色系の発光装置)を製造することができる。
また、封止部材には、粘度や光散乱性を調整する等の目的で、各種のフィラー等を含有させてもよい。
【0074】
第2封止部材は、光反射性としてもよい。光反射性とは、発光素子からの光に対する反射率が70%以上の樹脂材料を意味する。光反射性の封止部材としては、例えば透光性樹脂に、光反射性物質を分散させたものが使用できる。光反射性物質としては、例えば、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、チタン酸カリウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ムライトなどが好適である。光反射性物質は、粒状、繊維状、薄板片状などが利用できるが、特に、繊維状のものは封止部材の熱膨張率を低下させる効果も期待できるので好ましい。
【0075】
以上、本発明に係るいくつかの実施形態について例示したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意のものとすることができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0076】
1、2…発光装置
10…発光素子
11…積層構造体
11a…積層構造体の第1面
11b…積層構造体の第2面
11c…積層構造体の側面
13…透光性基板
13a…透光性基板の第1面
13c…透光性基板の側面
15…半導体層
15b…半導体層の第2面
15c…半導体層の側面
17…電極
20、220…封止部材
21、221…第1封止部材
22、222…第2封止部材
図1
図2
図3
図4
図5