(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6725215
(24)【登録日】2020年6月29日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】ゲル状食品の製造方法及びゲル状食品
(51)【国際特許分類】
A23L 29/20 20160101AFI20200706BHJP
A23L 9/10 20160101ALI20200706BHJP
A23L 21/10 20160101ALI20200706BHJP
A23C 9/13 20060101ALI20200706BHJP
A23G 3/34 20060101ALI20200706BHJP
【FI】
A23L29/20
A23L9/10
A23L21/10
A23C9/13
A23G3/34 107
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-122226(P2015-122226)
(22)【出願日】2015年6月17日
(65)【公開番号】特開2017-6017(P2017-6017A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2018年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】711002926
【氏名又は名称】雪印メグミルク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】特許業務法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳平修一
(72)【発明者】
【氏名】三浦真理
(72)【発明者】
【氏名】奥崎美紗子
【審査官】
戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−068747(JP,A)
【文献】
特開平07−274915(JP,A)
【文献】
特開平06−141824(JP,A)
【文献】
特開2005−328768(JP,A)
【文献】
特開平06−030714(JP,A)
【文献】
特開2011−004718(JP,A)
【文献】
特開平11−164657(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/026460(WO,A1)
【文献】
特開2011−246407(JP,A)
【文献】
徳島県立工業技術センター研究報告,2010年,vol.19,pp.17-21
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 1/00−9/20
A61K 47/00−47/69
FSTA/CAplus/WPIDS/AGRICOLA/BIOSIS/
MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショ糖及び水飴を実質的に含まず、全固形分が11重量%以上のゲル状食品であって、ブドウ糖を4重量%以上又は果糖を2重量%以上含むことを特徴とする、ゲル状食品(ただし、ブドウ糖10.41重量%以上のゲル状食品及び果糖8重量%以上のゲル状食品を除く)。
【請求項2】
ショ糖を実質的に含まず、水飴を含み、全固形分が11重量%以上のゲル状食品であって、ブドウ糖及び/又は果糖を4重量%以上含むことを特徴とする、ゲル状食品。
【請求項3】
水飴を実質的に含まず、ショ糖を含み、全固形分が11重量%以上のゲル状食品であって、ブドウ糖及び/又は果糖を1重量%以上含むことを特徴とする、ゲル状食品(ただし、ブドウ糖4.11重量%以上のゲル状食品及び果糖5.35重量%以上のゲル状食品を除く)。
【請求項4】
水飴が1〜30重量%含まれる、請求項2に記載のゲル状食品。
【請求項5】
ショ糖が1〜30重量%含まれる、請求項3に記載のゲル状食品。
【請求項6】
ゲル状食品が、プリン、ムース、ゼリー、ババロア、ヨーグルト、杏仁豆腐、および羊羹から選択される1以上の食品である請求項1〜5のいずれかに記載のゲル状食品。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれかに記載のゲル状食品の製造方法であって、以下の(a)〜(d)の工程を含む、前記製造方法。
(a)ベースミックスを配合して溶解する調合工程、
(b)ベースミックスを加熱殺菌する工程、
(c)殺菌温度よりも低く、ゲル化剤の凝固温度よりも高い温度域でベースミックスを維持する恒温工程、
(d)容器に充填する工程、
【請求項8】
(b)の加熱殺菌工程が75℃以上で15分間以上加熱する工程であり、(c)工程における殺菌温度よりも低く、ゲル化剤の凝固温度よりも高い温度域が45〜75℃である請求項7に記載のゲル状食品の製造方法。
【請求項9】
ゲル状食品が、プリン、ムース、ゼリー、ババロア、ヨーグルト、杏仁豆腐、および羊羹から選択される1以上の食品である請求項7又は8に記載のゲル状食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゲル化温度より高く殺菌温度よりも低い温度帯において、微生物の増殖を抑制することができるゲル状食品の製造方法及び本製造方法により得られるゲル状食品に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンやゼリーおよびムースなどのゲル状食品は近年ではバラエティー化が進んでおり、乳・乳製品、卵、野菜、果実、コーヒーおよびチョコレートなどが主原料として用いられる。これらゲル状食品を製造する場合には、目的とした原材料に原料水(原料としての水)や糖類(甘味料)およびゲル化剤を混合して、加熱しながら均質化して原材料ベースミックス(以下、単にベースミックスということがある)を調製し、前記ベースミックスを殺菌した後に恒温工程で保持しつつ、容器に充填して冷却し、ゲル化剤や増粘剤の特性を利用してゲル化させる。なお、甘味料としては、ショ糖や水飴および、その混合物などを主に使用する。
ベースミックスの殺菌ついて、一般的には高温下(75℃以上で、15分間加熱するか又はこれと同等以上の殺菌効果を有する方法)での加熱殺菌処理により、食品衛生上で問題となるサルモネラ菌や大腸菌および黄色ブドウ球菌などは、死滅させることができる。しかし、食品の品質に影響を及ぼす耐熱性菌(例:芽胞菌)は、前記の高温下での加熱殺菌処理をした後であっても、残存する可能性が高く、完全に殺菌するには困難を伴うのが現状である。従って、前記のような殺菌した後の恒温工程で残存した耐熱性菌を増殖させない事が、ベースミックスの品質維持において肝要である。
【0003】
このような背景から、以下に示すような耐熱性菌の増殖を抑制する方法が公表されている。
(1)ゲル状食品製造の恒温工程において、ゲル状食品のベースミックスの水分活性を0.98以下に調製することにより、バチルス属細菌の増殖を抑制する方法(文献1)、(2)バキュームチャンバーを有する直接加熱式殺菌機で加熱殺菌する工程を含む野菜プリンの製造法(文献2)、(3)特定範囲のHLB値の乳化剤を用いることにより、芽胞菌の殺菌性や静菌性を高めたココアプリンの製造方法(文献3)(4)同じく特定範囲のHLB値の乳化剤を用いたチョコレートプリンの製造方法(文献4)などが公表されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】再表2012−26460号公報
【特許文献2】特開2004−166607号公報
【特許文献3】特開2010−075158号公報
【特許文献4】特開2010−075159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、耐熱性菌の増殖を抑制するこれらの方法はいずれも、特殊な装置を必要としたり、最終製品の風味や味覚に影響を与える乳化剤の添加を要したり、高濃度の甘味料添加による水分活性(aw0.98以下)の調整など煩雑な方法を必要したり、必ずしもゲル状食品の製造には適したものではなかった。
【0006】
本発明者らはゲル状食品の製造において、しばしば耐熱性菌の増殖による風味異常を経験している。特に商業規模でのゲル状食品の製造では、加熱殺菌したベースミックスをタンクに入れ、冷却工程へ移行するまでに、比較的温度が高い恒温条件が一定時間以上保持されるため、ベースミックス中の耐熱性菌が増殖し、最終製品であるゲル状食品の風味異常が発生する事が問題となる場合があった。
本発明は上記の問題点、特にゲル状食品の製造において耐熱性菌の増殖を抑制し、かつ最終製品の風味に影響を及ぼすことがないゲル状食品の製造方法及び該ゲル状食品の提供を課題とする。
【0007】
本発明者らは上述の課題を解決するために鋭意研究を重ねたところ、ゲル状食品の製造工程内で、原材料ベースミックスに特定の糖類を一定濃度添加することにより、ベースミックスを比較的長い時間、タンク内に高温下で保持される恒温工程において、耐熱性菌の増殖を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は以下の構成からなるものである。
[1]ショ糖及び水飴を実質的に含まないゲル状食品であって、ブドウ糖を4重量%以上又は果糖を2重量%以上含むことを特徴とする、ゲル状食品。
[2]ショ糖を実質的に含まず、水飴を含むゲル状食品であって、ブドウ糖及び/又は果糖を4重量%以上含むことを特徴とする、ゲル状食品。
[3]水飴を実質的に含まず、ショ糖を含むゲル状食品であって、ブドウ糖及び/又は果糖を1重量%以上含むことを特徴とする、ゲル状食品。
[4]全固形分が11重量%以上であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載のゲル状食品。
[5]水飴が1〜30重量%含まれる、[2]に記載のゲル状食品。
[6]ショ糖が1〜30重量%含まれる、[3]に記載のゲル状食品。
[7]以下の(a)〜(d)の工程を含むゲル状食品の製造方法であって、
(a)ベースミックスを配合して溶解する調合工程、
(b)ベースミックスを加熱殺菌する工程、
(c)殺菌温度よりも低く、ゲル化剤の凝固温度よりも高い温度域でベースミックスを維持する恒温工程、
(d)容器に充填する工程、
ベースミックスが以下の(1)〜(3)のいずれかである、前記製造方法。
(1)ショ糖及び水飴を実質的に含まず、ブドウ糖を4重量%以上又は果糖を2重量%以上含む
(2)ショ糖を実質的に含まず、水飴を含み、ブドウ糖及び/又は果糖を4重量%以上含む
(3)水飴を実質的に含まず、ショ糖を含み、ブドウ糖及び/又は果糖を1重量%以上含む
[8](b)の加熱殺菌工程が75℃以上で15分間以上加熱する工程であり、(c)工程における殺菌温度よりも低く、ゲル化剤の凝固温度よりも高い温度域が45〜75℃である[7]に記載の方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、プリンやゼリーおよびムースなどのゲル状食品の製造において、果糖やブドウ糖、あるいはその混合物を一定濃度以上添加することにより、ゲル状食品の風味・味質を損なうことなく、恒温工程における耐熱性菌の増殖を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】アノキシバチルス・フラビサーマス(Anoxybacillus flavithermus)の増殖特性を示した図である。
【
図2】ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)の増殖特性を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明におけるゲル状食品の製造方法は、一般的なゲル状食品の製造工程を変更することなく、また特別な設備を必要とせずに、ベースミックスの配合工程で特定の糖類を一定量添加することにより、恒温工程からタンクを経て、容器への充填までの一連の工程で微生物の増殖を抑制することができる。
特定の糖類の添加のタイミングは、原材料であるベースミックスにあらかじめ含ませて調合することもでき、また、ベースミックスを加熱殺菌する工程、あるいはその後に続く恒温工程の段階であってもよい。ただし、殺菌工程の後に添加する場合は、あらかじめ殺菌された糖類を恒温工程の初期の段階で添加することが望ましい。
本発明において、ゲル状食品とはゲル化剤(含む増粘剤、安定剤)の性質を利用して、ゲル状あるいは固化させた食品であり、例えばムース、ゼリー、ババロア、プリン、ヨーグルト、杏仁豆腐および羊羹などが該当する。
【0011】
本発明において、ベースミックスとは目的とした食品を製造するための原材料混合物であり、実際に使用される原材料は特に限定されず、例えば乳・乳製品、卵類、豆類、野菜類、果物類、チョコレート、ココア、コーヒーおよび糖類などを主原料とすることができる。
本発明における恒温工程とは、加熱殺菌温度よりも低く、ゲル化剤の凝固温度よりも高い温度域を意味し、例えば45℃から75℃の範囲であり、好ましくは55℃から65℃である。実際にはベースミックスを調合した大型タンクからタンクを経て容器に充填するまでの一連の工程を意味する。
【0012】
本発明のゲル状食品は、少なくともブドウ糖及び/又は果糖を所定量以上含むことを特徴とする。
具体的には、(1)ショ糖も水飴も実質的に含まないゲル状食品の場合は、ブドウ糖を4重量%以上又は果糖を2重量%以上含むことを特徴とし、(2)ショ糖を実質的に含まず、水飴を含むゲル状食品の場合は、ブドウ糖及び/又は果糖を4重量%以上含むことを特徴とし、(3)水飴を実質的に含まず、ショ糖を含むゲル状食品の場合は、ブドウ糖及び/又は果糖を1重量%以上含むことを特徴とする。前記水飴またはショ糖の含有量は、ゲル状食品中1〜30重量%が好ましい。
一般に、耐熱性菌の増殖源となるショ糖などのオリゴ糖を含むと、菌増殖の制御が困難となるので、ゲル状食品の製造に添加するのは好ましくないところ、本発明は、ショ糖を含む場合であっても、ブドウ糖及び/又は果糖を1重量%以上含むことによって耐熱生菌の増殖を抑制することができ、本発明の意義は大きい。
【0013】
本発明における、耐熱性菌とは原材料や製造環境由来であり、恒温工程、すなわち高温条件下でも増殖することができる芽胞形成菌であり、より詳しくはアノキシバチルス・フラビサーマス(Anoxybacillus flavithermus)やゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)などが挙げられる。これらの耐熱性菌は45〜70℃での恒温工程において増殖が著しく速く、45〜65℃での恒温工程においては更に増殖が速い。
【0014】
アノキシバチルス・フラビサーマスおよびゲオバチルス・ステアロサーモフィルスの増殖特性を以下のように試験をして確認した。
15mLのBHI培地(BHI:ブレインハートインフュージョンブイヨン、Becton Dickinson社製)をL字型試験管に分注し、アノキシバチルス・フラビサーマスおよびゲオバチルス・ステアロサーモフィルスの初発菌数がそれぞれ1×10
2〜1×10
3cfu/mLになるように接種した。各L字管は振盪温度勾配培養装置(ADOVANTEC TVS126MA)にセットした。連続培養は、30℃から70℃までの温度勾配(12点)に設定し、培養開始から15分毎に吸光度(660nm)を測定して菌の生育を計測した。アノキシバチルス・フラビサーマスの、BHI培地中での生育至適温度は53〜60℃であり、吸光度の立ち上がり(増殖)は約2〜3時間であり、その後急速に増殖することが判明した(
図1)。また、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルスのBHI培地中での生育至適温度は56〜64℃であり、また吸光度の立ち上がり(増殖)は、約4から5時間であり、その後急速に増殖することが判明した(
図2)。
【0015】
本発明に使用するゲル化剤や増粘剤および安定剤はベースミックス調製時に添加することができ、例えばゼラチンやジェランガム、寒天、ペクチン、カラギナン、キサンタンガム、タマリンド、カルボキシメチルセルロース、グアーガムおよびローカストビーンズがあげられる。
以下に本発明を具体的に開示する実施例について説明する。
【0016】
[試験例1]
(1)ベースミックスの調整
表1、2に示す配合組成となるように原材料を混合しベースミックスを調合した。
比較品1〜3は甘味料として果糖及び/又はブドウ糖のみを添加した。比較品4〜6は甘味料として水飴のみを、また比較品7、8はショ糖のみを添加した。
実施品1〜5は、甘味料として果糖及び/又はブドウ糖のみを添加した。実施品6〜11は水飴の他にブドウ糖及び/又は果糖をそれぞれ添加した。実施品12〜17はショ糖の他にブドウ糖及び/又は果糖をそれぞれ添加した。
表1、2の原材料を全て混合し、60℃で5分間分散機を用いて攪拌した。その後、75℃で15分加熱殺菌し、速やかに60℃に冷却し、ベースミックスを得た。
【0017】
(2)ベースミックス中における水分活性の測定
ベースミックスの水分活性は、GSIクレオス社が販売しているロトニック水分活性測定システム(Aw−プロ)を用いて測定した。測定温度は22℃、サンプル採取量は約5g、測定時間は25分とした。なお、測定時間の設定は純水を専用カップに採取したのち、サンプルチャンバー内にセットし測定開始から数値が安定化(Aw1.000)した時間を採用した。
【0018】
(3)ベースミックス中における菌増殖特性の測定
耐熱性菌の指標として、高温性好気性菌(高温菌)として知られているアノキシバチルス・フラビサーマス及びゲオバチルス・ステアロサーモフィルスを用い、各ベースミックスに約1×10
3cfu/gになるように接種した。接種後、60℃で培養し、8時間後に各種高温菌の菌数を計測した。
【0019】
(4)試験結果および考察
各ベースミックスの水分活性の測定結果および菌増殖特性の測定結果を表1、2に示す。
一般的に水分活性が高い方が微生物の増殖速度が大きくなるが、実施品1〜22のいずれも、比較品1〜8と比較し、水分活性は同等または高いにも関わらず、菌の増殖が抑制された。
比較品4〜6より、甘味料として水飴のみを含むベースミックスは、水飴の配合量が25%である時もアノキシバチルス・フラビサーマスとゲオバチルス・ステアロサーモフィルスの両菌ともに増加した。特に、比較品4は水分活性が0.975と、比較品5、6と比べて低いにも関わらず、菌の増殖が認められた。
従って、甘味料として水飴のみを含むベースミックスは、水飴の配合量を25%にしても、菌の増殖を抑えることができない事がわかった。
一方、実施品7〜14より、甘味料として水飴を含むベースミックスに更にブドウ糖5%、果糖4%、ブドウ糖2%及び果糖2%又はブドウ糖5%及び果糖4%を配合したところ、両菌ともに増加が見られなかった。
また、比較品7〜8より、甘味料としてショ糖のみを含むベースミックスは、ショ糖の配合量が15%であってもアノキシバチルス・フラビサーマスとゲオバチルス・ステアロサーモフィルスの両菌ともに増加した。従って、甘味料としてショ糖のみを含むベースミックスは、水飴の配合量を15%にしても、菌の増殖を抑えることができない事がわかった。
一方、実施品15〜22より、甘味料としてショ糖を含むベースミックスに更にブドウ糖1%、果糖1%、ブドウ糖1%及び果糖1%又はブドウ糖5%及び果糖4%を配合したところ、両菌ともに増加が見られなかった。
また、比較品1〜3より、甘味料としてブドウ糖2%のみ又は果糖1%のみ又はブドウ糖1%及び果糖1%を含むベースミックスはアノキシバチルス・フラビサーマスとゲオバチルス・ステアロサーモフィルスの両菌ともに増加した。
一方、実施品1〜6より、甘味料としてブドウ糖4%、果糖2%、ブドウ糖2%及び果糖2%又はブドウ糖5%及び果糖4%を含むベースミックスは、両菌ともに増加が見られなかった。
以上の実験結果より、デザートのベースミックスにブドウ糖及び/又は果糖を一定量添加することにより恒温工程における両耐熱性菌の増殖を抑制できることを見出した。特に、甘味料としてショ糖を含むベースミックスにおいては、ブドウ糖及び/又は果糖を一定量(1重量%以上)添加することにより、恒温工程における両耐熱性菌の増殖を抑制することを見出した。また、甘味料として水飴を含むベースミックスにおいては、ブドウ糖及び/又は果糖を合計量として4重量%以上添加することにより、恒温工程における両耐熱性菌の増殖を抑制することを見出した。さらにまた、甘味料としてショ糖、水飴を含まないベースミックスにおいては、ブドウ糖を4重量%以上又は果糖を2重量%以上添加することにより恒温工程における両耐熱性菌の増殖を抑制することを見出した。
【0022】
[実施例1] プリンの製造
表3に示す配合組成となるように原材料を混合しデザート類(プリン)のベースミックスを20kg作成した。これにアノキシバチルス・フラビサーマス及びゲオバチルス・ステアロサーモフィルスをそれぞれ接種して、恒温工程(60℃)に保持し、2時間ごとに菌数を計測した。
結果を、表4、5に示す。表4、5より、両菌ともに増殖しないことが明らかとなった。また、該ベースミックスを陶器カップに80g充填し、10℃で24時間冷却した後に風味の確認を行った所、良好であった。
【0023】
[実施例2] コーヒーゼリーの製造
表3に示した配合にしたがってデザート類(コーヒーゼリー)のベースミックスを20kg作成した。これにアノキシバチルス・フラビサーマス及びゲオバチルス・ステアロサーモフィルスをそれぞれ接種して、恒温工程(60℃)に保持し、2時間ごとに菌数を計測した。
アノキシバチルス・フラビサーマスの菌数測定結果を表4に、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルスの菌数測定結果を表5に示す。表4、5より、両菌ともに増殖しないことが明らかとなった。また、該ベースミックスをプラスチックカップに100g充填し、8℃で24時間冷却した後に風味の確認を行った所、良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明により、ゲル状食品の製造において耐熱性菌の増殖を抑制し、かつ最終製品の風味に影響を及ぼすこともないゲル状食品の製造方法及び該ゲル状食品の提供が可能となる。