(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明の実施の態様は、後述する実施例に限定されるものではなく、その技術思想の範囲において、種々の変形が可能である。
【0013】
(1)実施例1
(1−1)装置の全体構成
図1に、本実施例に係る自動分析装置100の全体構成を示す。自動分析装置100は、反応ディスク101、通常洗浄機構103、分光光度計104、攪拌機構105、洗浄槽106(攪拌機構105用)、第1試薬分注機構107、第2試薬分注機構107a、洗浄槽108(第1試薬分注機構107及び第2試薬分注機構107a用)、試薬格納庫109、試料分注機構111、111a、試料分注機構111aのプローブ111b、洗浄槽113(試料分注機構111、111a用)、試料搬送機構117、制御部118等により概略構成されている。
【0014】
反応ディスク101には、反応容器102が円周状に並んでいる。反応容器102は試料と試薬とを混合させた混合液を収容するための容器であり、反応ディスク101上に複数並べられている。反応ディスク101の近くには、試料容器115を搭載したサンプルラック116を搬送する試料搬送機構117が配置されている。反応ディスク101の周囲には、通常洗浄機構103、分光光度計104、および攪拌機構105等が配置されている。ここでの分光光度計104が分析部を構成する。
【0015】
試薬格納庫109は、前述の「保管機構部」に相当し、複数の試薬ボトル110や洗剤ボトル112に加え、希釈液や前処理用試薬を収容するボトルを搬送可能に保管する。試薬格納庫109の詳細な構造については後述する。通常洗浄機構103は、分光光度計104で測定が終了した混合液を吸引し、反応容器102内部を洗浄する機構である。分光光度計104は、反応容器102内の混合液を通過した測定用の光の吸光度を測定するための測定部である。反応ディスク101を回転させることにより、分光光度計104の測定光が一定間隔で反応容器102を通過する。その都度、分光光度計104は、反応容器102内の混合液の吸光度を測定する。制御部118は、測定された吸光度と予め作成しておいた検量線とに基づいて試料中の目的成分の濃度を演算する。
【0016】
反応ディスク101と試料搬送機構117との間には、回転及び上下動可能な試料分注機構111、111aが配置されている。この試料分注機構111、111aは、回転軸を中心に円弧を描きながら移動して試料容器115から反応容器102に試料を分注する。試料分注機構111、111aは、それぞれ1個又は複数設置される。
【0017】
反応ディスク101と試薬格納庫109との間には、水平面内(X−Y面)内での回転と上下方向(Z方向)への移動がいずれも可能な第1試薬分注機構107と第2試薬分注機構107aが配置されている。第1試薬分注機構107と第2試薬分注機構107aは、回転軸を中心に1軸又は多軸で回転移動し、試薬ボトル110、洗剤ボトル112、希釈液ボトル、前処理用試薬ボトル等から分取した試薬、洗剤、希釈液、前処理用試薬等を反応容器102に分注する。第1試薬分注機構107と第2試薬分注機構107aは、それぞれ1個又は複数設置されている。
【0018】
制御部118は、(1)反応ディスク101の回転駆動、(2)試料分注機構111、111aの駆動、(3)試薬分注機構107、107aの駆動、(4)試料、試薬、洗剤等の吸引および吐出の動作、(5)試料容器115、試薬ボトル110、洗剤ボトル112等の搬送など、自動分析装置100内の各機構の動作を制御する。
【0019】
(1−2)試薬格納庫の詳細構成
以下では、本実施例に係る自動分析装置100の要部である試薬格納庫109の詳細構成を説明する。
図2に、試薬格納庫109を上面から見た図(上段)と側面から見た図(下段)を示す。
図2では、試薬格納庫109に設けられている試薬ボトル110の搬入口と搬出口と分取位置を省略している。
【0020】
本実施例における試薬格納庫109では、同形状の駆動側プーリ201と従動側プーリ202とがX軸方向に所定距離だけ離れて配置されている。駆動側プーリ201と従動側プーリ202との間にはエンドレスベルト204が架け渡されている。エンドレスベルト204は、長円形状を形成するように架け渡されている。エンドレスベルト204は、不図示の駆動装置(例えばモータ)によって回転駆動される駆動側プーリ201の回転に応じて循環移動する。
【0021】
本実施例の場合、エンドレスベルト204の一辺には、22個の継手部材205の各一端が等間隔に固定されている。継手部材205はいずれも同一形状を有している。継手部材205の別の一端には、回転部材206が取り付けられている。回転部材206は、例えば軸受によって構成され、ボトルホルダ203の側面から垂直方向(Y軸)に突出する軸部材208を回転自在に支持する。因みに、軸部材208は、ボトルホルダ203の一側面(X−Z面)における2つの対角線の交点位置に配置される。なお、回転部材206と軸部材208による取り付けは一例であり、その他の取り付け構造も可能である。
【0022】
本実施例におけるボトルホルダ203は、長方体形状の箱であり、その上面(X−Y面)に開口が設けられている。ボトルホルダ203を構成する側面(枠体)の厚みは1〜5mmである。試薬ボトル110は、この開口を通じ、ボトルホルダ203の内部に着脱自在に収容される。本実施例の場合、ボトルホルダ203の上面が開口されているものとするが、用途や構成によりボトルホルダ203の形状は様々であり、例えば上面と前面が開口していても良い。また、試薬ボトル110の全体が、ボトルホルダ203に完全に収容されるものとするが、後述する寸法条件を満たす限り、試薬ボトル110の一部がボトルホルダ203からはみ出しても良い。
【0023】
更に、試薬格納庫109には、エンドレスベルト204と同じく長円形状の姿勢ガイド207が配置されている。本実施例における姿勢ガイド207は、エンドレスベルト204を上方(Z軸方向)に所定量だけオフセットした位置に配置されている。姿勢ガイド207は、複数のボトルホルダ203が常に上を向いた姿勢のまま移動するように、ボトルホルダ203の側面に設けられた姿勢ガイド接続部材209を案内する。姿勢ガイド207と姿勢ガイド接続部材209の連結には、既知の様々な手法を適用できる。
【0024】
(1−3)寸法条件
(1−3−1)条件1
ボトルホルダ203に架設された試薬ボトル110を可能な限り近づけた状態で収容し、かつ、試薬ボトル110を常に上方に向けたまま(同じ姿勢のまま)搬送可能とするには、試薬格納庫109を構成する各部が以下の寸法を満たすことが要求される。
図3に、駆動側プーリ201付近の構造を拡大して示す。
【0025】
隣接する2つの試薬ボトル110の間のピッチbは、駆動側プーリ201の半円部分(エンドレスベルト203が半円状になっている部分)に固定された継手部材205のピッチで決定される。
図3では、半円部分において隣り合う2つの継手部材205が、互いに90°(度)の角度で配置される場合について表している。なお、隣接する2つの継手部材205の配置関係は、必ずしも90°(度)に限らない。
【0026】
試薬格納庫109では、駆動側プーリ201(従動側プーリ202についても同様)の半円状の部分をボトルホルダ203が移動する際に、隣接する他のボトルホルダ203(ボトルホルダ203から試薬ボトル110がはみ出る場合には試薬ボトル110も)と接触することなく、試薬ボトル110が上向きの姿勢を維持したまま搬送できる必要がある。具体的には、ボトルホルダ203に試薬ボトル110を搭載した状態での対角線を直径とする仮想円302(図中点線で示す)が半円部において互いに接触しない距離をとる必要がある。
【0027】
図4を用いて、この条件を満たす寸法の関係を求める。
図4は、
図3に表された寸法の緒元を概略的に表した図である。図中、wは「ボトルホルダ203に試薬ボトル110を搭載した状態での幅」、hは、「ボトルホルダ203に試薬ボトル110を搭載した状態での高さ」、x(=√(w
2+h
2)は「ボトルホルダに試薬ボトルを搭載した状態での対角線の長さ」、yは「ボトルホルダ203が互いにぶつからずに回転できる最小距離」、r1は「ボトルホルダ203の軸部材208が通過する軌道円303の半径」である。なお、中心304は、駆動側プーリ201(従同側プーリ202についても同様)の回転中心である。また、本明細書で「幅」というときは図に示すようにボトルホルダの進行方向の幅を意味する。
【0028】
図4に示すように、仮想円302の直径の長さxと、同じ仮想円302の2つの半径の和で与えられる長さyとは同じである。そして、半径r1と対角線の長さyとの間には、1:√2の関係が成立することから、1:√2=r1:√(w
2+h
2)が成立する。この式をr1について整理すると、以下の式1が導き出される。
【数1】
【0029】
なお、式1で与えられる半径r1は、ボトルホルダ203の軸部材208が通過する軌道円303の半円部分でボトルホルダ203が互いにぶつからずに移動するために求められるボトルホルダ203の寸法の最小値に相当する。従って、半径r1は、以下の式2を満たすことが求められる。
【数2】
【0030】
(1−3−2)条件2
ここでは、直線的に配列されるボトルホルダ203の距離を近づけるために、ボトルホルダ203の寸法と、駆動側プーリ201(従動側プーリ202についても同様)の半径r2との間に求められる関係について説明する。
図5を用いて説明する。図中、pは「継手部材205を1ピッチ移動させるときの駆動側プーリ201(従動側プーリ202)の回転角(度)」、aは「1ピッチ動かすためのプーリの周長」、bは「ボトルホルダ203に試薬ボトル110を搭載した状態での隣接する試薬ボトル間のピッチ」、αは「ボトルホルダ203に試薬ボトル110を搭載した状態での隣接する試薬ボトル間のクリアランス」、r2は「プーリの半径」である。なお、中心304は、駆動側プーリ201(従同側プーリ202についても同様)の回転中心である。
【0031】
ここで、駆動側プーリ201を1ピッチ分動かすときの周長aは、a=2π(r2)p/360で与えられる。また、試薬ボトル間のピッチbは、ボトルホルダ203の幅wとクリアランスαの和(=w+α)で与えられる。さらに、1ピッチ動かすときのプーリの周長aと試薬ボトル間のピッチbは、当然同じである。すると、以下の関係が成立する。
【数3】
【0032】
この関係を変形すると、プーリの半径r2は、次式で表される。
【数4】
【0033】
図5は、継手部材205を1ピッチ移動させるときの駆動側プーリ201(従動側プーリ202)の回転角pが90度であるので、以下の式3が導き出される。
【数5】
【0034】
以下では、ボトルホルダ203に試薬ボトル110を搭載した状態での隣接する試薬ボトル間のクリアランスαをゼロにする場合に要求される寸法条件について説明する。なお、クリアランスαがゼロの場合、ボトルホルダ203が水平方向(X方向)で互いに接触してしまうので、この寸法条件は、試薬格納庫109の各部に要求される下限条件を与える。
【0035】
図6に、クリアランスαがゼロの各部の関係を示す。図中、wは「ボトルホルダ203に試薬ボトル110を搭載した状態での幅」、hは「ボトルホルダ203に試薬ボトル110を搭載した状態での高さ」、pは「継手部材205を1ピッチ移動させるときの駆動側プーリ201(従動側プーリ202)の回転角(度)」、aは「1ピッチ動かすためのプー
リの周長」、bは「ボトルホルダ203に試薬ボトル110を搭載した状態での隣接する試薬ボトル間のピッチ」、r2は「プーリの半径」である。
【0036】
ここで、駆動側プーリ201を1ピッチ分動かすときの周長aは、a=2π(r2)p/360で与えられる。また、試薬ボトル間のピッチbは、ボトルホルダ203の幅wで与えられる。さらに、1ピッチ動かすときのプーリの周長aと試薬ボトル間のピッチbは、当然同じである。すると、以下の関係が成立する。
【数6】
【0037】
この関係を変形すると、プーリの半径r2は、次式で表される。
【数7】
【0038】
なお、前述したとおり、式4はプーリの半径に要求される下限条件であるため、設定されるプーリの半径r2は以下の式5を満たす必要がある。
【数8】
【0039】
続いて、前述の実施例で説明した技術的効果が得られるクリアランスαの最大条件について検討する。この場合は、ボトルホルダ203に試薬ボトル110を搭載した状態での隣接する試薬ボトル間のピッチbが、ボトルホルダ203に試薬ボトル110を搭載した状態での対角線の長さx(=√(w
2+h
2))と同じ場合である。
【0040】
図11に、この場合の各部の関係を示す。図中、wは「ボトルホルダ203に試薬ボトル110を搭載した状態での幅」、hは「ボトルホルダ203に試薬ボトル110を搭載した状態での高さ」、pは「継手部材205を1ピッチ移動させるときの駆動側プーリ201(従動側プーリ202)の回転角(度)」、aは「1ピッチ動かすためのプーリの周長」、bは「ボトルホルダ203に試薬ボトル110を搭載した状態での隣接する試薬ボトル間のピッチ」、yは「ボトルホルダが互いにぶつからずに回転できる最小距離「=b」、r2は「プーリの半径」である。
【0041】
ここで、駆動側プーリ201を1ピッチ分動かすときの周長aは、a=2π(r2)p/360で与えられる。また、試薬ボトル間のピッチbは、ボトルホルダ203の幅wとクリアランスαの和(=w+α)で与えられる。なお、前提条件より、b=x=√(w
2+h
2)である。さらに、1ピッチ動かすときのプーリの周長aと試薬ボトル間のピッチbは、当然同じである。すると、以下の関係が成立する。
【数9】
【0042】
この関係を変形すると、プーリの半径r2は、次式で表される。
【数10】
【0043】
なお、前述したとおり、式6はプーリの半径に要求される最大条件であるため、設定されるプーリの半径r2は以下の式7を満たす必要がある。
【数11】
【0044】
よって、プーリの半径r2は、以下の式8を満たしていれば、前述した実施例と同様の効果を実現することができる。
【数12】
【0045】
なお、継手部材の長さに相当する連結部材に固定される端部と軸部材との距離はr1−r2で表わされる。
また、仮にピッチbがボトルホルダ203の対角線の長さとした場合に、回転部材206を中心にボトルホルダ203が大きく揺れると隣接するボトルホルダ203の角同士がプーリの箇所で接触する可能性がある。これを避けるためピッチbを対角線の長さより大きくすることは可能である。しかし、ピッチbを長くすると直線的にボトルホルダ203が移動する箇所でのボトルホルダ203の単位長さ当たりの密度が低くなり省スペース化の面でデメリットとなる。一方、ピッチbを対角線の長さ以下とすることでこの単位長さ当たりの密度を高くすることができ省スペース化のメリットがある。さらにより密度を高めるためにはピッチbを対角線の長さ未満とすることが望ましい。但し、言うまでもなくこのピッチbはボトルホルダ203の幅未満とすることはできないため下限はボトルホルダ203の幅となる。従い、ピッチbはボトルホルダ203の幅以上対角線の長さ以下であることが望ましく、さらには対角線の長さ未満であることが望ましい。なお、ボトルホルダ203同士の接触については
図2の姿勢ガイド207を設けることで揺れを防ぐことができプーリ箇所でも互いの接触を防ぐことができる。
【0046】
(1−4)具体例
ここで、式3において、クリアランスαは任意に設定することができる。例えばw=35mm、h=80mm、α=10mmとする場合の試薬格納庫109の構成例を
図8に示す。
図8において、駆動側プーリ201及び従動側プーリ202の半径r2は28.6mm、ボトルホルダ203(試薬ボトル110)の回転中心(すなわち、軸部材208)が通過する軌道円303の半径r1は61.8mmとなる。このとき、試薬ボトル110を20個格納する試薬格納庫109を、幅約520mm、高さ約205mmの空間に設置することができる。
【0047】
また、クリアランスαを5mmとする場合の試薬格納庫109の構成例を
図9に示す。
図9において、駆動側プーリ201及び従動側プーリ202の半径r2は25.5mm、ボトルホルダ203(試薬ボトル110)の回転中心(すなわち、軸部材208)が通過する軌道円303の半径r1は61.8mmとなる。このとき、試薬ボトル110を22個格納する試薬格納庫109を、幅520mm、高さ205mmの空間で設置することができる。
【0048】
また、
図6を用いてr2の下限条件であるクリアランスαがゼロの各部の関係を示した様にクリアランスαを0mmとする場合、駆動側プーリ201及び従動側プーリ202の半径r2は22.3mm、ボトルホルダ203(試薬ボトル110)の回転中心(すなわち、軸部材208)が通過する軌道円303の半径r1は61.8mmとなる。このとき、試薬ボトル110を24個格納する試薬格納庫109を、幅520mm、高さ205mmの空間で設置することができる。
【0049】
また、
図7を用いてr2の最大条件である試薬ボトル間のピッチbが対角線の長さxの各部の関係を示した様に試薬ボトル間のピッチbを√(w
2+h
2)mmとする場合、駆動側プーリ201及び従動側プーリ202の半径r2は55.6mm、ボトルホルダ203(試薬ボトル110)の回転中心(すなわち、軸部材208)が通過する軌道円303の半径r1は61.8mmとなる。このとき、試薬ボトル110を12個格納する試薬格納庫109を、幅520mm、高さ205mmの空間で設置することができる。
【0050】
つまり、隣接する試薬ボトル間のクリアランスαを最小限にすることが理想であるが、隣接する試薬ボトル間のピッチbが、ボトルホルダ203が互いにぶつからずに回転できる最小距離y以下となるように設定する。即ち、1ピッチ動かすためのプーリの周長aがボトルホルダ203が互いにぶつからずに回転できる最小距離y以下となるよう駆動側プーリ201及び従動側プーリ202の径を小さくすることで同じ設置空間であれば従来装置に比してより多くの試薬ボトル110を搭載でき、同じ個数の試薬ボトル110を収容するのであれば従来装置に比して設置空間をより小さくできる。かくして、従来装置に比してよりコンパクトで収容能力が高い自動分析装置100を実現することができる。
【0051】
(1−5)分析動作の概要
図10に、本実施例に係る自動分析装置100において実行される分析時の動作の概要を示す。自動分析装置100の動作は、前述の通り、制御部118が制御する。制御部118は、試料分注機構111a、試料搬送機構117、反応ディスク101の動作を制御し、サンプルラック116に搭載された試料容器115に収容されている試料を反応容器102に一定量分注する(ステップS1)。
【0052】
次に、制御部118は、第2試薬分注機構107a、試薬格納庫109、反応ディスク101の動作を制御し、前処理工程を実施するために、前処理用の試薬を反応容器102に分注する(ステップS2)。この際、試薬格納庫109には、制御部118からオペレータから依頼のあった測定項目に応じた試薬ボトル110を吸引位置に移動させるように指示が与えられる。制御部118は、複数の動作パラメータを記憶部に保存しており、移動対象である試薬ボトル110の現在位置と吸引位置(目標位置)までの距離に応じた動作パラメータを選択し、不図示の駆動装置を駆動させる。駆動装置によって駆動側プーリ201が回転駆動されると、エンドレスベルト204を介して連結された従動側プーリ202も回転する。
【0053】
継手部材205を通じてエンドレスベルト204に連結されているボトルホルダ203は、回転部材206と姿勢ガイド207によって常に上方を向いた状態のまま(同じ姿勢のまま)、所定の吸引位置へと搬送される。この後、制御部118は、第1試薬分注機構107又は第2試薬分注機構107aによって、吸引位置に搬送された試薬ボトル110から試薬を分取し、反応ディスク101に架設された反応容器102に分注する。
【0054】
続いて、制御部118は、撹拌機構105、反応ディスク101の動作を制御し、前処理用試薬を分注した反応容器102内における前処理用試薬と試料の混合液を撹拌する(ステップS3)。以下では、撹拌後の混合液を前処理液という。その後、制御部118は、試料分注機構111、反応ディスク101の動作を制御し、前処理液を別の反応容器102a(不図示)に分注する(ステップS4)。次に、制御部118は、第1試薬分注機構107、試薬格納庫109、反応ディスク101の動作を制御し、第1試薬を反応容器102aに分注する(ステップS5)。試薬格納庫109は、前述と同様に駆動制御される。続いて、制御部118は、撹拌機構105、反応ディスク101の動作を制御し、第1試薬を分注した反応容器102a内の混合液を撹拌する(ステップS6)。
【0055】
更に、制御部118は、第1試薬分注機構107(又は、第2試薬分注機構107a)、試薬格納庫109、反応ディスク101の動作を制御し、反応容器102aに第2試薬を分注する(ステップS7)。試薬格納庫109は、前述と同様に駆動制御される。次に、制御部118は、撹拌機構105、反応ディスク101の動作を制御し、第2試薬を分注した反応容器102a内の混合液を撹拌する(ステップS8)。その後、制御部118は、分光光度計104、反応ディスク101の動作を制御し、反応容器102a内の混合液の吸光度を測定する(ステップS9)。ここで、反応ディスク101は周期的に回転と停止を繰り返し、反応容器102aが分光光度計104の前を通過するタイミングで測定が行われる。実際の測定では、第1試薬の分注以降、混合液の反応過程を測定する。この動作が、依頼された項目について測定が全て完了されるまで繰り返される。
【0056】
(2)実施例2
前述の実施例においては、継手部材205を1ピッチ移動させるときの駆動側プーリ201(従動側プーリ202)の回転角pが90度の場合について説明したが、前述したように、回転角pは90度に限らない。例えば回転角pが180度であってもよい。この場合に求められる寸法条件を、
図11を用いて説明する。図中、pは「継手部材205を1ピッチ移動させるときの駆動側プーリ201(従動側プーリ202)の回転角(度)」、aは「1ピッチ動かすためのプーリの周長」、bは「ボトルホルダ203に試薬ボトル110を搭載した状態での隣接する試薬ボトル間のピッチ」、αは「ボトルホルダ203に試薬ボトル110を搭載した状態での隣接する試薬ボトル間のクリアランス」、r2は「プーリの半径」である。この場合、隣接する試薬ボトル間のピッチbがボトルホルダ203に試薬ボトル110を搭載した状態での対角線の長さ以下になる。
【0057】
ここで、駆動側プーリ201を1ピッチ分動かすときの周長aは、a=2π(r2)p/360で与えられる。また、試薬ボトル間のピッチbは、ボトルホルダ203の幅wとクリアランスαの和(=w+α)で与えられる。さらに、1ピッチ動かすときのプーリの周長aと試薬ボトル間のピッチbは、当然同じである。すると、以下の関係が成立する。
【数13】
【0058】
この関係を変形すると、プーリの半径r2は、次式で表される。
【数14】
【0059】
図9は、継手部材205を1ピッチ移動させるときの駆動側プーリ201(従動側プーリ202)の回転角pが180度であるので、以下の式9が導き出される。
【数15】
【0060】
(3)他の実施例
(3−1)前述の実施例では、駆動側プーリ201と従動側プーリ202をつなぐ部材がエンドレスベルト204である場合について説明したが、発明はこれに限定されない。駆動側プーリと従動側プーリをつなぎ伝達する部材(連結部材)であれば、例えばチェーンであっても良い。
【0061】
(3−2)前述の実施例では、姿勢ガイド207をエンドレスベルト204の片側に1本だけ配置する場合について説明したが、例えば2本配置しても良く、3本以上配置しても良い。また、姿勢ガイド207をエンドレスベルト204の両側に配置されても良い。また、姿勢ガイド207を設けることでボトルホルダ203の揺れを防ぐことが可能ではあるが、揺れを抑制するための手段として姿勢ガイド207を例として説明したが回転部材206の回転許容角度を規制するなどによりボトルホルダ203の揺れ幅を抑制しつつ常に上を向いた状態を確保することも可能である。従い、図示する姿勢ガイド207とは異なる形態でボトルホルダ203の姿勢を維持することも可能である。但し、姿勢ガイド207のようにすることで安定的にボトルホルダ203の揺れを実質的に無くすことが可能となる。
【0062】
(3−3)前述の実施例では、試薬格納庫109内における搬送ラインが
図1に示すように1本の場合について説明したが、例えば2本配置しても良く、3本以上配置しても良い。試薬格納庫109内に複数本の搬送ラインを有する場合、それらの制御は一括に実行しても良いし、個別に実行しても良い。また、個々の搬送ラインに対応する試薬ボトル110の格納数及び間隔などは全て同じでも良いし、それぞれ別々でも良い。
【0063】
(3−4)ボトルホルダ203の肉厚は、例えば1〜5mmであるのが望ましい。肉厚が薄い場合、ボトルホルダ203に負荷がかかって破損するおそれがある。一方、肉厚が厚い場合、試薬ボトル110が上段から下段又は下段から上段に移動する部分の回転半径(ボトルホルダ203の軸部材208が通過する軌道円303の半径r1)が大きくなりデットスペースの肥大化につながる。また、肉厚が厚い場合、ボトルホルダ203に試薬ボトル110を搭載した状態での隣接する試薬ボトル間のピッチbが大きくなり、前述した効果が得られなくなる。
【0064】
(3−5)前述の実施例では、試薬ボトル110の高さhが試薬ボトル110の幅wより大きい場合に使用して好適な試薬格納庫109について説明した。すなわち、エンドレスベルト204の延長方向が鉛直方向(Z方向)よりも水平方向(X方向)に長い試薬格納庫109について説明した。しかし、本発明はこの構成に限らない。例えば試薬ボトル110の幅wが試薬ボトル110の高さhより大きい場合には、エンドレスベルト204の延長方向が水平方向(X方向)よりも鉛直方向(Z方向)に長い試薬格納庫109を採用しても良い。
【0065】
図12に、この種の試薬格納庫109の具体例を示す。
図12には、
図2と対応部分に同一符号を付して示している。
図12には、試薬格納庫109を側面から見た図のみを示している。
図12においても、試薬格納庫109に設けられている試薬ボトル110の搬入口と搬出口と分取位置を省略している。
図12におけるボトルホルダ203も長方体形状の箱であり、その上面(X−Y面)側に幅広の開口が設けられている。試薬ボトル110は、この開口を通じ、ボトルホルダ203の内部に着脱自在に収容される。従って、試薬ボトル110へのアクセス(例えば吸引/吐出)は、ボトルホルダ203の幅広の開口側から行われる。
【0066】
(3−6)
前述の実施例では、プーリの大きさとピッチbとの関係で継手部材を1ピッチ移動させるときのプーリの回転角pを90度又は180度の場合について説明したが、この回転角pはこれに限られるものではない。但し、回転角pが小さくなるに従い保管機構は縦方向に大きくなるためpは大きい方が望ましい。例えば、回転角pは90度以上180度以下であることが望ましい。
(3−7)
前述の実施例では、保管機構に試薬ボトル110が保管される場合について説明したが、保管機構は、ディスポーザルの反応容器を収容するマガジンラックやディスポーザルの分注チップを収容するマガジンラックであっても良い。