(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔第一実施形態〕
以下、本発明の第一実施形態のジテルペン及びステロイドの回収方法、ジテルペン及びステロイドの回収システムについて図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態のジテルペン及びステロイドの回収システム1(以下、回収システム1と呼ぶ)を示す概略構成図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の回収システム1は、木質バイオマス3を熱分解する熱分解ガス化炉2と、熱分解ガス化炉2で発生した熱分解ガス4が流通する流路5と、流路5上に設けられた第一の冷却装置7、第二の冷却装置8、及び第三の冷却装置9と、熱分解ガス4を直接排出するためのバイパス流路35と、バイパス流路35上に設けられた第一のバルブ36と、第一の冷却装置7と第二の冷却装置8の間で流路5上に設けられた第二のバルブ37と、第三の冷却装置9の後段で流路5上に設けられた第三のバルブ38と、を備えている。
【0019】
第一のバルブ36、第二のバルブ37、及び第三のバルブ38は、熱分解ガス4の流路を切り替える、流路切り替え用バルブとして機能する。
バイパス流路35は、熱分解ガス化炉2と第一の冷却装置7との間で流路5から分岐し、第三の冷却装置9の下流側で流路5に合流している。第三のバルブ38は、バイパス流路35と流路5との合流点より上流側に設けられている。
【0020】
木質バイオマス3は、木材からなるバイオマス(生物資源)であり、樹木の伐採や造材のときに発生した枝、葉などの林地残材、製材工場などから発生する樹皮や鋸屑等から生成される木質ペレット、木質チップである。
木質バイオマス3の細胞内含有成分は、テルペン(ジテルペン、モノテルペン、セスキテルペン等)、ステロイド、アルカロイド、フラボン類、炭化水素、脂肪酸、キノン類、エステル類、タンパク質、デンプン、ペクチン、無機質、糖類、アミノ酸等である。
ジテルペン及びステロイドは、木質バイオマス3の細胞内含有成分である生理活性物質である。
【0021】
本実施形態の回収システム1は、木質バイオマス3を300℃から450℃で熱分解する際に発生する熱分解ガス4を冷却することによって、熱分解ガス4からタールを介して有価物であるジテルペン(Diterpene、一例としてC
20H
32、フェルギノール)及びステロイド(Steroid)を回収するシステムである。
【0022】
図2に示すように、熱分解ガス化炉2は、原料である木質バイオマス3を搬送するスクリューコンベア42と、スクリューコンベア42から投入される木質バイオマス3を熱分解することにより炭化する熱分解ガス化炉本体43と、熱分解ガス化炉本体43から排出される炭化物6を排出するシュート44と、を有している。
【0023】
熱分解ガス化炉2は、木質バイオマス3を間接的に加熱させて熱分解やガス化反応を起こす間接加熱式の熱分解炉である。熱分解の進行により、木質バイオマス3は熱分解ガス4を発生しながら炭化される。
熱分解ガス化炉2は、円筒形状の外筒48(マッフル)と、外筒48に対して相対回転するとともに木質バイオマス3が投入される円筒形状の内筒49(キルンシェル)と、を有している外熱式ロータリーキルン型である。外筒48と内筒49とは、同軸状に配置されている。外筒48及び内筒49の軸線は水平方向に延びている。
本実施形態の熱分解ガス化炉2は、外熱式ロータリーキルン型であるが、木質バイオマス3を間接的に加熱する形式のものであればこれに限ることはない。例えば、熱分解ガス化炉2として、外熱式スクリューコンベアなどを用いてもよい。
【0024】
内筒49の上流側は、軸方向に移動可能な可動側支持部50によって軸線回りに回転可能に支持されている。内筒49の下流側は、固定側支持部53によって軸線回りに回転可能に支持されている。
スクリューコンベア42は、内筒49の入口部を構成する可動側支持部50に設けられている。シュート44は、内筒49の出口部を構成する固定側支持部53に設けられている。
可動側支持部50は、内筒49を回転可能に支持する環状フレーム51を有している。環状フレーム51の両側部は、設置面58から揺動自在に立ち上げられた支持部材52の上端部に回転可能に支持されている。
【0025】
内筒49の内壁部には、周方向に対して傾斜して配列された複数のフィン(又はスパイラル、図示せず)が設けられ、内筒49が駆動装置54により所定の回転速度(例えば1〜5rpm)で駆動回転されることにより、入口側(上流側)から投入された木質バイオマス3を加熱しながら出口側(下流側)に移送可能である。なお、フィンを設ける代わりに、内筒49が水平に対して僅かに傾斜した軸線回りに回転可能に支持され、その傾斜と内筒49の回転によって木質バイオマス3が出口側に移送される場合もある。
【0026】
駆動装置54は、内筒49に設けられた歯車55と、駆動モータ56と、駆動モータ56の回転軸に取り付けられ、歯車55に嵌合したピニオン歯車57と、を有している。駆動装置54は、駆動モータ56の駆動を歯車55に伝達させて歯車55を回転させることにより、内筒49を軸線回りに回転させる。
【0027】
外筒48は、内筒49の回転および軸線方向の移動を許容し、かつ、内筒49との間でシールを確保した状態で、支持部材52を介して設置部位に固定されている。
内筒49の可動側支持部50および固定側支持部53は、それぞれの回転部分と非回転部分との間にエアシールを形成している。可動側支持部50とスクリューコンベア42との接続部分には、可動側支持部50の軸方向の変位を吸収するエキスパンション67が設けられている。
【0028】
外筒48の一端には、加熱ガス供給管60が接続されている。外筒48には、加熱ガス供給管60を介して加熱ガスが供給される。
外筒48の他端には、加熱ガス送出管61が接続されている。加熱ガス送出管61には、加熱ガス量調節装置47として機能する加熱ガス量調節ダンパ62および誘引ファン63が設けられている。
【0029】
外筒48の上部には、軸線方向に離間して複数の点検窓64が設けられている。それぞれの点検窓64には、軸線回りに回転する内筒49の外周面に対向してキルンシェル温度(内筒49の鉄皮温度)を計測する非接触式温度計65が設けられている。非接触式温度計65としては放射温度計を用いることができる。非接触式温度計65によって測定されたキルンシェル温度は、図示しない制御装置に入力される。
【0030】
キルンシェル温度は、内筒49内の木質バイオマス3に直接的に接する部分の温度であるため、木質バイオマス3の熱分解温度との相関が高く、加熱状況を良好に反映している。このため、キルンシェル温度に基づいて温度制御を行うことによって、加熱温度の安定的な制御が可能となる。
【0031】
制御装置は、キルンシェル温度が所定の温度域に維持されるように、加熱ガス量を制御する。加熱ガス量は、加熱ガス量調節ダンパ62の開度及び誘引ファン63の回転数によって調整される。
加熱ガス量の調節を行っても、所定の温度域に維持できない場合は、内筒49の回転数を上げる(回転速度を上昇させる)ことによって、水分の蒸発を促進させる。キルンシェル温度は、水分の蒸発が増えることによって低下する。
【0032】
次に、第一のバルブ36と第二のバルブ37と第三のバルブ38の操作と目的について説明する。
第一のバルブ36を閉め、第二のバルブ37を開け、第三のバルブ38を開けると、熱分解ガス4は流路5を流れる。冷却装置8、9から、ジテルペンやステロイドを高濃度で含むタールT2、T3を回収できる。
第一のバルブ36を開け、第二のバルブ37を閉め、第三のバルブ38を閉めると、熱分解ガス4はバイパス流路35を流れる。冷却装置8と冷却装置9は他から切り離されるので、ジテルペンやステロイドを高濃度で含むタールT2、T3に影響を与えず、冷却装置7に凝縮付着して固化するタールT1を除去できる。
【0033】
熱分解ガス流路の屈曲部、熱分解ガス流速が遅くなる部分、流れを妨げる部分等に、タールが凝縮付着しやすいことが知られている。
【0034】
流路5を流れる熱分解ガス4を冷却する第一の冷却装置7について説明する。
【0035】
図3に示すように、第一の冷却装置7は、導入配管69と、冷却配管70と、排出配管71と、冷却配管70を冷却する冷却装置本体72と、冷却配管70中の熱分解ガス4の温度を測定する温度センサ73と、制御部74と、を有している。
【0036】
導入配管69は、冷却配管70に熱分解ガス4を導入する配管である。排出配管71は、冷却配管70から熱分解ガス4を排出する配管である。
冷却配管70は、導入配管69の下流側に接続されている配管である。冷却配管70は、第一鉛直部75と、第一鉛直部75の下流側に接続されている底部76と、底部76の下流側に接続されている第二鉛直部77と、を有している。
【0037】
冷却装置本体72は、冷却配管70を覆う冷却ジャケット78と、冷却ジャケット78に冷却水Wを供給する冷却水供給部80と、冷却水供給部80と冷却ジャケット78とを接続する冷却配管82と、冷却配管82に設けられている流量調整バルブ81と、を有している。
冷却ジャケット78は、冷却ジャケット78内に供給された冷却水Wで冷却配管70を冷却する。
流量調整バルブ81の開度は、制御部74によって制御される。
【0038】
制御部74と温度センサ73とは、電気的に接続されている。温度センサ73によって測定された冷却配管70を流れる熱分解ガス4の温度は、制御部74に入力される。
制御部74は、冷却配管70を流れる熱分解ガス4の温度が220℃から240℃の範囲の温度(第一の温度域)となるように、冷却装置本体72の流量調整バルブ81を制御する。
【0039】
熱分解ガス流路の屈曲部に、タールが凝縮付着しやすいことから、主に、導入配管69と直角に接合された第一鉛直部75と、第一鉛直部75と直角に接合された底部76と、底部76と直角に接合された第二鉛直部77と、にタールT1が凝縮付着する。
図4に示すように、第一の冷却装置7において第一鉛直部75と第二鉛直部77の側壁から底部76方向に延在する邪魔板84を設けてもよい。邪魔板84を設けることによって冷却装置7の体積を増やし、またガス流速を遅くしてタールT1の付着を促進することができる。
【0040】
次に、流路5を流れる熱分解ガス4を冷却する第二の冷却装置8、及び第三の冷却装置9について説明する。冷却装置8,9の構造は制御部19を除いて同じである。以下、第二の冷却装置8について説明する。
【0041】
図5に示すように、第二の冷却装置8は、導入配管10と、冷却配管11と、排出配管12と、冷却配管11を冷却する冷却装置本体13と、冷却配管11から分岐する回収配管14と、回収配管14に設けられている二重バルブ15と、冷却配管11中の熱分解ガス4の温度を測定する温度センサ18と、制御部19と、を有している。
【0042】
導入配管10は、冷却配管11に熱分解ガス4を導入する配管である。排出配管12は、冷却配管11から熱分解ガス4を排出する配管である。
冷却配管11は、導入配管10の下流側に接続されている配管である。冷却配管11は、第一傾斜部20と、第一傾斜部20の下流側に接続されている第一鉛直部21と、第一鉛直部21の下流側に接続されている回収部22と、回収部22の下流側に接続されている第二鉛直部23と、第二鉛直部23の下流側に接続されている第二傾斜部24と、を有している。
【0043】
第一傾斜部20は、導入配管10の下流側に接続されており、下流側に向かって低くなるように傾斜する部位である。第一傾斜部20の傾斜角度は、水平面に対して40°から50°である。
第一鉛直部21及び第二鉛直部23は、鉛直方向に延在する部位である。
【0044】
回収部22は、第一鉛直部21と第二鉛直部23とを接続する部位であり、熱分解ガス4からタールを回収する部位である。回収部22は、水平方向に延在する配管である。
回収配管14は、回収部22の中央から下方に延在する配管である。タールは回収配管14を介して回収される。
【0045】
回収部22の底面は、回収配管14に向かって低くなるように傾斜している。即ち回収部22は、入口側から回収配管14に向かって漸次低くなるように傾斜して形成された第一斜面30と、回収配管14から出口側に向かって漸次高くなるように傾斜して形成された第二斜面31と、を有している。
回収部22の上面は、水平方向に沿うように形成されている。
二重バルブ15は、上バルブ16と、上バルブ16の下方に設けられている下バルブ17と、を有している。上バルブ16は、回収配管14に流入したタールを堰き止める。
【0046】
第二傾斜部24は、下流側に向かって高くなるように傾斜している。第二傾斜部24の下流側は、排出配管12に接続されている。第二傾斜部24の傾斜角度は、水平面に対して40°から50°である。
【0047】
冷却装置本体13は、冷却配管11を覆う冷却ジャケット25と、冷却ジャケット25に冷却水Wを供給する冷却水供給部26と、冷却水供給部26と冷却ジャケット25とを接続する冷却配管11と、冷却配管11に設けられている流量調整バルブ27と、を有している。
冷却ジャケット25は、冷却ジャケット25内に供給された冷却水Wで冷却配管11を冷却する。
流量調整バルブ27の開度は、制御部19によって制御される。
【0048】
制御部19と温度センサ18とは、電気的に接続されている。温度センサ18によって測定された冷却配管11を流れる熱分解ガス4の温度は、制御部19に入力される。
制御部19は、冷却配管11を流れる熱分解ガス4の温度が180℃から200℃の範囲の温度(第二の温度域)となるように、冷却装置本体13の流量調整バルブ27を制御する。
【0049】
第三の冷却装置9の制御部19は、冷却配管11を流れる熱分解ガス4の温度が120℃から160℃の範囲の温度(第三の温度域)となるように、冷却装置本体13の流量調整バルブ27を制御する。
【0050】
発明者らは、木質バイオマス3(原料は主に杉)を300℃から450℃の範囲の温度で熱分解することで発生する熱分解ガス4を冷却し、これによって得られるタールを分析した。分析の結果、タールに高濃度でジテルペン及びステロイドが含まれることを見出した。
【0051】
まず、木質バイオマス3を熱分解する際の温度について説明する。本実施形態の回収方法では、木質バイオマス3を300℃から450℃で熱分解する。この温度で熱分解をする(半炭化する)ことによって、粉砕性と熱量残留率を両立した炭化物6の製造が可能となる。
木質バイオマス3が450℃以下の範囲の温度で熱分解されることで、木質バイオマス3に含まれる有価物であるジテルペン及びステロイドが分解されることはない。
また、木質バイオマス3は、300℃以下の範囲の温度では炭化されないため、熱分解の際の温度の下限は300℃である。
【0052】
そして、熱分解ガス4の冷却温度を120℃から220℃まで変化させて試験を行った。この試験により、熱分解ガス4を120℃から160℃に冷却することで、熱分解ガス4からジテルペンを高濃度で含むタールを回収できることを見出した。
【0053】
表1に、特許文献1に記載のジテルペンの回収方法(以下、特許文献1回収方法)と、本実施形態のジテルペンの回収方法(以下、本実施形態回収方法)との比較を示す。
【0055】
表1に記載されているように、本実施形態回収方法は、特許文献1回収方法と比較してタールに含まれるジテルペンの濃度、及び濃縮後のジテルペンの濃度が高い。
また、ステロイドについても、熱分解ガス4を180℃から200℃に冷却することで、熱分解ガス4からステロイドを高濃度で含むタールを回収できることを見出した。
【0056】
発明者らは、220℃以上で凝縮付着するタールは、縮重合して固化することを見出した。
200℃以下で凝縮付着するタールは、流動性を有する。
【0057】
熱分解ガスを220℃から240℃に予備冷却すると、タールT1は第一の冷却装置7内部に凝縮付着して、固化する。
第一の冷却装置7内部で固化するタールT1は、熱分解ガスの流れを妨げる、流路を閉塞する等の原因となる。
【0058】
第一のバルブ36を開け、第二のバルブ37を閉じ、第三のバルブ38を閉じると、熱分解ガス4は、バイパス流路35を流れる。第二の冷却装置8と第三の冷却装置9は、他から切り離される。
第一の冷却装置7に凝縮付着して固化するタールT1は、通常の付着物除去に用いられるデコーキング方法等により除去できる。
【0059】
第一の冷却装置7に凝縮付着して固化するタールT1の除去は、タールT1により第一の冷却装置7が閉塞した場合に行っても良い。また、第一の冷却装置7閉塞前に、定期的に行っても良い。
【0060】
次に、本実施形態の回収システム1の制御方法、即ちジテルペン及びステロイドの回収方法について説明する。
図6に示すように、回収システム1の制御方法は、木質バイオマス3を300℃から450℃の範囲の温度で熱分解する熱分解工程S1と、熱分解工程S1により発生した熱分解ガス4を予備冷却する第一の冷却工程S2と、第一の冷却工程S2を経た熱分解ガス4をステロイド回収のために冷却する第二の冷却工程S3と、第二の冷却工程S3を経た熱分解ガス4をジテルペン回収のために冷却する第三の冷却工程S4と、を有している。
【0061】
熱分解工程S1では、熱分解ガス化炉2の内筒49の内部に導入された木質バイオマス3は、酸素を遮断した状況下で300℃から450℃で間接加熱されて炭化される。
具体的には、木質バイオマス3は、内筒49の回転に伴い出口側に向けて移送されながら加熱される。これにより、まず、木質バイオマス3に残留する水分が蒸発する。水分蒸発の完了に伴い有機成分の熱分解が進行する。熱分解の進行により、木質バイオマス3は熱分解ガス4を発生しながら炭化される。生成された所定の炭化度の炭化物6としてシュート44から排出される。
熱分解工程S1を経た炭化物6の温度は、約300℃である。
【0062】
熱分解によって発生した熱分解ガス4は、第一の冷却装置7に導入されて、220℃から240℃の温度の範囲で予備冷却される。
【0063】
また、回収システム1の制御方法は、第一の冷却工程S2で発生したタールが固化した場合に、熱分解ガス4を冷却することなく直接排出するバイパス工程と、熱分解ガス4の流路を切り替える流路切り替え工程と、を有している。
流路切り替え工程は、第一のバルブ36を開け、第二のバルブ37を閉じ、第三のバルブ38を閉じて、熱分解ガス4をバイパス流路35に流す工程である。バイパス工程及び流路切り替え工程を実施することによって固化したタールT1を除去することができる。
【0064】
ここで、第一の冷却装置7の作用について説明する。
220℃から240℃で凝縮付着するタールT1は、ジテルペンやステロイドを含まない。
第一の冷却装置7による予備冷却を行わず、熱分解ガス4を第二の冷却装置8へ直接流すと、ジテルペンやステロイドを含まないタールも、第二の冷却装置8で凝縮するので、第二の冷却装置8により回収するタールT2のステロイド濃度が低下する。
第一の冷却装置7による予備冷却を行うと、後段の第二の冷却装置8により回収するタールT2のステロイド濃度が高くなる。
【0065】
次いで、熱分解ガス4は、第二の冷却装置8に導入される。
熱分解ガス4は、冷却されながら導入配管10を介して第一傾斜部20に流入する。第一傾斜部20が下流側に向かうに従って下方に傾斜していることによって、熱分解ガス4に含まれるタールは第一傾斜部20にほとんど付着することなく、第一鉛直部21を介して回収部22に流入する。この間、熱分解ガス4は、冷却ジャケット25に流入する冷却水Wによって冷却される。熱分解ガス4の温度は、制御部19によって180℃から200℃の範囲の温度に調整される。
回収部22に流入した熱分解ガス4が回収部22の底部に突き当たるとともに冷却されることによって、熱分解ガス4に含まれるタールT2が分離して回収部22の底部に付着する。
タールT2は、流動性を有する。これにより、熱分解ガス4からステロイドを多く含有するタールT2が分離される。
【0066】
次いで、熱分解ガス4は、第三の冷却装置9に導入される。熱分解ガス4は、第三の冷却装置9によって120℃から160℃の範囲の温度に冷却される。第二の冷却装置8と同様に熱分解ガス4からタールT3が分離されて回収部22に溜まる。これにより、熱分解ガス4からジテルペンを多く含有するタールT3が分離される。
タールT3は、流動性を有する。
【0067】
操作者は、二重バルブ15を操作して、タールT2,T3を回収することができる。具体的には、上バルブ16を開けてタールT2,T3を上バルブ16と下バルブ17との間の空間に移動させた後、上バルブ16を閉じる。次いで、下バルブ17を開けることによりタールT2,T3を回収することができる。
【0068】
上記実施形態によれば、木質バイオマス3から炭化物6を製造する過程で発生する副生成物である熱分解ガス4から、有価物であるジテルペン及びステロイドを回収することができる。
また、熱分解ガス4を冷却することによって、ジテルペン及びステロイドを含むタールT2,T3を、より簡易な方法で回収することができる。
また、熱分解ガス4を三段階で冷却することによって、木質バイオマス3に含有されるジテルペン及びステロイドを高濃度かつ高純度で回収することができる。
【0069】
〔第二実施形態〕
以下、本発明の第二実施形態のジテルペン及びステロイドの回収システムについて図面を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態では、上述した第一実施形態との相違点を中心に述べ、同様の部分についてはその説明を省略する。
図7に示すように、本実施形態の回収システムの第二の冷却装置8Bは、回収部22Bの体積が第一実施形態の回収部22の体積よりも大きい。また、本実施形態の回収部22Bの上面は、中央部より上流側に向かって低くなるように形成された第三斜面32と、中央部より下流側に向かって低くなるように形成された第四斜面33と、を有している。
即ち、本実施形態の回収部22Bの上面は、水平方向に沿った形状ではなく、熱分解ガス4の流れ方向の中央が最も高くなるように傾斜している。
【0070】
上記実施形態によれば、回収部22Bの流路断面積が増えることによって熱分解ガス4の流速を遅くして、タールの付着を促進させることができる。
また、回収部22Bの上面に斜面を形成したことによって、回収部22Bの上面に付着するタールを流れ易くすることができる。
【0071】
以上、本発明の実施形態について詳細を説明したが、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。