特許第6726935号(P6726935)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三星エスディアイ株式会社の特許一覧

特許6726935リチウム電池用負極、リチウム電池、リチウム電池の製造方法、及び、リチウム電池の使用方法
<>
  • 特許6726935-リチウム電池用負極、リチウム電池、リチウム電池の製造方法、及び、リチウム電池の使用方法 図000018
  • 特許6726935-リチウム電池用負極、リチウム電池、リチウム電池の製造方法、及び、リチウム電池の使用方法 図000019
  • 特許6726935-リチウム電池用負極、リチウム電池、リチウム電池の製造方法、及び、リチウム電池の使用方法 図000020
  • 特許6726935-リチウム電池用負極、リチウム電池、リチウム電池の製造方法、及び、リチウム電池の使用方法 図000021
  • 特許6726935-リチウム電池用負極、リチウム電池、リチウム電池の製造方法、及び、リチウム電池の使用方法 図000022
  • 特許6726935-リチウム電池用負極、リチウム電池、リチウム電池の製造方法、及び、リチウム電池の使用方法 図000023
  • 特許6726935-リチウム電池用負極、リチウム電池、リチウム電池の製造方法、及び、リチウム電池の使用方法 図000024
  • 特許6726935-リチウム電池用負極、リチウム電池、リチウム電池の製造方法、及び、リチウム電池の使用方法 図000025
  • 特許6726935-リチウム電池用負極、リチウム電池、リチウム電池の製造方法、及び、リチウム電池の使用方法 図000026
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6726935
(24)【登録日】2020年7月2日
(45)【発行日】2020年7月22日
(54)【発明の名称】リチウム電池用負極、リチウム電池、リチウム電池の製造方法、及び、リチウム電池の使用方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/134 20100101AFI20200713BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20200713BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20200713BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20200713BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20200713BHJP
   H01M 4/1395 20100101ALI20200713BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20200713BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20200713BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20200713BHJP
【FI】
   H01M4/134
   H01M4/38 Z
   H01M4/48
   H01M4/36 B
   H01M4/36 C
   H01M4/62 Z
   H01M4/1395
   H01M10/052
   H01M10/44 P
   H01M10/058
【請求項の数】18
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-94922(P2015-94922)
(22)【出願日】2015年5月7日
(65)【公開番号】特開2015-216114(P2015-216114A)
(43)【公開日】2015年12月3日
【審査請求日】2018年3月29日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0055739
(32)【優先日】2014年5月9日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】尹 徳▲ヒョン▼
(72)【発明者】
【氏名】李 劭羅
(72)【発明者】
【氏名】嚴 惠悧
【審査官】 阿川 寛樹
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第102891306(CN,A)
【文献】 国際公開第2013/183717(WO,A1)
【文献】 特開2004−146292(JP,A)
【文献】 特開2013−062162(JP,A)
【文献】 特開2014−067592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05− 10/0587,10/36−10/39
H01M 4/00− 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体と、前記集電体の少なくとも一面に配置された負極活物質層と、を含み、
前記負極活物質層は、チタン酸リチウム粒子からなる多孔性マトリックスと、リチウムと合金を形成する金属ナノ粒子と、バインダとからなり
前記チタン酸リチウム粒子の平均粒径が、前記金属ナノ粒子の平均粒径の少なくとも2倍以上であり、
前記金属ナノ粒子が、前記チタン酸リチウム粒子間に存在するリチウム電池用負極。
【請求項2】
前記チタン酸リチウム粒子の平均粒径が、前記金属ナノ粒子の平均粒径の10倍ないし50倍であることを特徴とする請求項1に記載のリチウム電池用負極。
【請求項3】
前記チタン酸リチウム粒子の平均粒径は、100nmないし1μmであることを特徴とする請求項1または2に記載のリチウム電池用負極。
【請求項4】
前記チタン酸リチウム粒子が、下記化学式1で表示される化合物を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のリチウム電池用負極:
【化1】

前記化学式1で、2.4≦x≦4.2、4.8<y≦6.6である。
【請求項5】
前記チタン酸リチウム粒子の含量は、重量を基準として、前記金属ナノ粒子の含量の3倍ないし10倍であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のリチウム電池用負極。
【請求項6】
前記金属ナノ粒子の平均粒径は、10nmないし500nmであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のリチウム電池用負極。
【請求項7】
前記金属ナノ粒子は、Si、Sn、Al、Ge、Pb、Bi、Sb、それらの合金及びそれらの酸化物からなる群から選択された1種以上を含むことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のリチウム電池用負極。
【請求項8】
前記金属ナノ粒子は、SiまたはSiO(0<x<2)を含むことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のリチウム電池用負極。
【請求項9】
前記金属ナノ粒子は、炭素系コーティング層が形成された金属ナノ粒子を含むことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載のリチウム電池用負極。
【請求項10】
前記金属ナノ粒子の含量は、前記負極活物質層総重量を基準として、0.1重量%ないし50重量%であることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載のリチウム電池用負極。
【請求項11】
前記チタン酸リチウム粒子は、リチウム電池の充放電過程において、リチウムイオンを放出しないことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載のリチウム電池用負極。
【請求項12】
前記チタン酸リチウム粒子は、導電性を有することを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載のリチウム電池用負極。
【請求項13】
請求項1ないし12のうちいずれか1項に記載のリチウム電池用負極を含むリチウム電池。
【請求項14】
正極、負極、前記正極及び負極の間に配置されるセパレータ、並びに電解質を含むリチウム電池構造体を提供する段階と、
前記リチウム電池構造体に化成工程を実施し、リチウム電池を製造する段階と、
を含むリチウム電池の製造方法であって、
前記リチウム電池構造体を提供する段階は、
金属ナノ粒子チタン酸リチウム粒子、バインダ、及び溶媒を含む負極活物質組成物を製造する段階と、
前記負極活物質組成物を集電体上にコーティングした後、乾燥させて圧延し、前記集電体上に負極活物質層が形成された前記負極を製造する段階と、を含み、
前記負極活物質層は、チタン酸リチウム粒子と、金属ナノ粒子と、バインダとからなり、
前記化成工程は、1.5V以下の電圧で、前記リチウム電池構造体に対するカットオフを実施する放電工程を含み、
前記金属ナノ粒子が、前記チタン酸リチウム粒子間に存在するリチウム電池の製造方法。
【請求項15】
前記負極活物質組成物の前記チタン酸リチウム粒子が、下記化学式2で表示される化合物を含むことを特徴とする請求項14に記載のリチウム電池の製造方法:
【化2】

前記化学式2で、2.4≦x≦4.2、4.8<y≦6.6である。
【請求項16】
前記放電工程において、前記チタン酸リチウム粒子が、下記化学式1で表示される化合物を含むことを特徴とする請求項15に記載のリチウム電池の製造方法:
【化3】

前記化学式1で、2.4≦x≦4.2、4.8<y≦6.6である。
【請求項17】
前記化成工程後、前記チタン酸リチウム粒子は、リチウムイオンを放出しない非活性物質に変化することを特徴とする請求項14から16のいずれか1項に記載のリチウム電池の製造方法。
【請求項18】
請求項13に記載のリチウム電池を、1.5V以下の電圧で放電させる段階を含むことを特徴とするリチウム電池の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム電池用負極、リチウム電池、リチウム電池の製造方法、及び、リチウム電池の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池は、リチウムイオンの吸蔵及び放出が可能な活物質を含んだ、正極及び負極の間に、有機電解液またはポリマー電解液を充填させた状態で、リチウムイオンが、正極及び負極で吸蔵/放出されるときの酸化反応、還元反応によって、電気エネルギーを生産する。
【0003】
リチウム二次電池の負極活物質としては、炭素材活物質が多用され、その例として、グラファイト及び人造黒鉛のような結晶質炭素と、ソフトカーボン(soft carbon)及びハードカーボン(hard carbon)のような非晶質炭素と、がある。しかし、そのような炭素材活物質の理論容量は、高いとしても380mAh/gほどに過ぎず、高容量リチウム電池には使用され難いという問題点がある。
【0004】
そのような問題点を改善するために、シリコン、スズ、アルミニウム、ゲルマニウム、シリコン、鉛のようなリチウムと反応して合金を形成することができる金属、並びにそれと係わる合金及び複合体が活発に研究されている。そのような非炭素材を利用した負極活物質は、炭素材活物質を利用した負極活物質より多くのリチウムイオンを吸蔵及び放出させることができ、高容量及び高エネルギー密度を有する電池を製造することができるとのことである。例えば、純粋なシリコンは4200mAh/gの高い理論容量を有することが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
負極活物質として使用されるシリコンやスズのような無機質粒子は、充電によってリチウムイオンが吸蔵されれば、無機質粒子の体積が約300%ないし約400%に至るほど膨脹し、放電によってリチウムイオンが放出されれば、前記無機質粒子は、収縮することになる。従って、そのような充放電過程において、体積変化によって、負極集電体から負極活物質が剥離される現象が発生し、それにより、電池の容量が損失され、寿命が急激に低下してしまうという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、リチウム電池の寿命特性が向上することが可能な、新規かつ改良されたリチウム電池用負極等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、集電体と、前記集電体の少なくとも一面に配置された負極活物質層と、を含み、前記負極活物質層は、チタン酸リチウム粒子を含む多孔性マトリックスと、リチウムと合金を形成することができる金属ナノ粒子と、を含み、前記チタン酸リチウム粒子の平均粒径が、前記金属ナノ粒子の平均粒径の少なくとも2倍以上であるリチウム電池用負極が提供される。
【0008】
前記チタン酸リチウム粒子の平均粒径が、前記金属ナノ粒子の平均粒径の10倍ないし50倍でもあってもよい。
【0009】
前記金属ナノ粒子が、前記チタン酸リチウム粒子間に存在することができる。
【0010】
前記チタン酸リチウム粒子の平均粒径が100nmないし1μmでもあってもよい。
【0011】
前記チタン酸リチウム粒子が、下記化学式1で表示される化合物を含んでもよい:
【0012】
【化1】
前記化学式1で、2.4≦x≦4.2、4.8<y≦6.6である。
【0013】
前記チタン酸リチウム粒子の含量は、重量、前記金属ナノ粒子の含量の3倍ないし10倍でもあってもよい。
【0014】
前記金属ナノ粒子の平均粒径は、10nmないし500nmでもあってもよい。
【0015】
前記金属ナノ粒子がSi、Sn、Al、Ge、Pb、Bi、Sb、それらの合金及びそれらの酸化物からなる群から選択された1種以上を含んでもよい。
【0016】
前記金属ナノ粒子は、SiまたはSiO(0<x<2)を含んでもよい。
【0017】
前記金属ナノ粒子は、炭素系コーティング層が形成された金属ナノ粒子を含んでもよい。
【0018】
前記金属ナノ粒子の含量は、前記負極活物質層総重量を基準として、0.1重量%ないし50重量%でもある。
【0019】
前記チタン酸リチウム粒子は、リチウム電池の充放電過程において、リチウムイオンを放出しない粒子であることもできる。
【0020】
前記チタン酸リチウム粒子は、導電性を有することができる。
【0021】
前記負極活物質層が導電材をさらに含んでもよい。
【0022】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、前記リチウム電池用負極を含むリチウム電池が提供される。
【0023】
また、上記課題を解決するために、本発明のさらなる別の観点によれば、正極、負極、前記正極及び負極の間に配置されるセパレータ、並びに電解質を含むリチウム電池構造体を提供する段階と、前記リチウム電池構造体に化成工程を実施し、リチウム電池を製造する段階と、を含むリチウム電池の製造方法であって、前記リチウム電池構造体を提供する段階は、金属ナノ粒子及びチタン酸リチウム粒子を含む負極活物質組成物を製造する段階と、前記負極活物質組成物を集電体上にコーティングした後、乾燥させて圧延し、前記集電体上に負極活物質層が形成された前記負極を製造する段階と、を含み、前記化成工程は、1.5V以下の電圧で、前記リチウム電池構造体に対するカットオフ(cut-off)を実施する放電工程を含むリチウム電池の製造方法が提供される。
【0024】
前記チタン酸リチウム粒子が、下記化学式2で表示される化合物を含んでもよい:
【0025】
【化2】
前記化学式2で、2.4≦x≦4.2、4.8<y≦6.6である。
【0026】
前記放電工程において、前記チタン酸リチウム粒子は、下記化学式1で表示される化合物を含んでもよい:
【0027】
【化3】
前記化学式1で、2.4≦x≦4.2、4.8<y≦6.6である。
【0028】
前記化成工程後、前記チタン酸リチウム粒子は、それ以上リチウムイオンを放出しない非活性物質に変化してもよい。
【0029】
また、上記課題を解決するために、本発明のさらなる別の観点によれば、前述のリチウム電池を、1.5V以下の電圧で放電させる段階を含むリチウム電池の使用方法が提供される。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように本発明によれば、リチウム電池の寿命特性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】一実施例による電池の充放電時、負極の構造変化を示した概略図である。
図2】一実施例によるリチウム電池の構造を示した概略図である。
図3】実施例1による負極活物質層の20,000倍率で測定された走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscopy)写真である。
図4】実施例1による負極活物質層において、第1地点に対するX線分光分析(EDS:Energy Dispersive X−ray Spectroscopy)結果である。
図5】実施例1による負極活物質層において、第2地点に対するX線分光分析結果である。
図6】実施例8,9及び11,12によって製造されたリチウム電池の体積膨脹率を図示したグラフである。
図7】実施例7及び比較例4によって製造されたリチウム電池のCレートによる容量維持率を図示したグラフである。
図8】実施例9ないし11によって製造されたリチウム電池のサイクル別容量維持率を図示したグラフである。
図9】実施例7及び比較例7によって製造されたリチウム電池のインピーダンス測定結果を図示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0033】
従来から、充放電の反復において、負極活物質の体積膨脹の抑制が可能である方法が要求されていた。一般的に、充放電の反復によって生じる負極活物質の体積膨脹を抑制するために、リチウムと合金を形成することができる金属粒子の大きさを最小化させたり、多重相(multi-phase)合金を使用したり、あるいは合金及び金属の複合体を使用したりする。しかし、前記方法は、体積膨脹の抑制に限界があるか、あるいは製造コストが高いというような限界があった。
【0034】
そのために、本発明者らは、前述の問題点を克服すべく、チタン酸リチウム粒子と金属ナノ粒子との粒径比を調節することにより、チタン酸リチウム粒子を含む多孔性マトリックス内部空隙に、金属ナノ粒子を分散させ、負極の体積膨脹を抑制しながら電池の寿命特性を改善することにした。
【0035】
具体的には、一側面によるリチウム電池用負極は、集電体と、前記集電体の少なくとも一面に配置された負極活物質層と、を含み、前記負極活物質層は、チタン酸リチウム粒子を含む多孔性マトリックスと、リチウムと合金を形成することができる金属ナノ粒子と、を含み、前記チタン酸リチウム粒子の平均粒径が、前記金属ナノ粒子の平均粒径の少なくとも2倍以上である。
【0036】
前記金属ナノ粒子は、電池の充電時、リチウムイオンを吸蔵して合金を形成し、それによって、格子定数が増大することになって体積が膨脹する。その後、電池の放電時、リチウムイオンを放出し、本来の金属ナノ粒子に戻りながら、格子定数が低減することになって体積が収縮する。
【0037】
一方、前記チタン酸リチウム(LTO)は、リチウムイオンが吸蔵及び放出される間、結晶格子定数の変化を伴わないリチウム吸蔵材料(zero-strain lithium insertion material)として知られている。言い換えれば、前記金属ナノ粒子と異なり、前記チタン酸リチウム粒子は、充放電時、体積変化が非常に小さい。代表的なチタン酸リチウムであるLiTi12のリチウムイオンの吸蔵反応式は、次の通りである。
【0038】
【化4】
【0039】
一実施例によれば、前記金属ナノ粒子は、前記チタン酸リチウム粒子間に存在することができ、例えば、前記チタン酸リチウム粒子間に存在する空隙に位置することができる。
【0040】
例えば、一実施例による電池の充放電時、負極の構造変化を示した概略図を図1に例示する。図1の最初の図面から分かるように、集電体10の一面に、負極活物質層20が配置され、前記負極活物質層20は、チタン酸リチウム粒子22及び金属ナノ粒子24を含んでもよい。具体的には、前記チタン酸リチウム粒子22は、多孔性マトリックス構造を形成し、前記金属ナノ粒子24は、前記チタン酸リチウム粒子間に存在することができる。
【0041】
前記負極を含む電池の最初の(初回の)充電時、前記金属ナノ粒子24は、約0.4Vないし約0.6Vで、リチウムイオンを吸蔵し、前記チタン酸リチウム粒子22は、約1.8Vでリチウムイオンを吸蔵することができる。従って、充電後、図1の2番目の図面から分かるように、結晶格子定数の変化がないチタン酸リチウム粒子22の体積は変わりがないが、前記金属ナノ粒子24は、充電で体積が膨脹されることが分かる。そのとき、通常の場合と異なり、前記金属ナノ粒子24は、多孔性マトリックスをなすチタン酸リチウム粒子22に取り囲まれ、体積膨脹が抑制される。
【0042】
その後、図1の3番目の図面から分かるように、前記負極を含む電池の放電時、前記金属ナノ粒子24は、リチウムイオンを放出し、充電前の大きさに収縮される。
【0043】
一実施例によれば、前記チタン酸リチウム粒子22は、リチウム電池の充放電過程において、リチウムイオンを放出しない。例えば、リチウム電池の充放電過程において、リチウムイオンを吸蔵や放出を行わない非活性物質(inactive material)でもある。言い換えれば、前記チタン酸リチウム粒子22は、最初(初回)の充電時にリチウムイオンを吸蔵する。そして、前記チタン酸リチウム粒子22は、その後の充放電の反復時には、リチウムイオンを吸蔵した状態を維持し、それ以上リチウムイオンの吸蔵や放出を行わない。
【0044】
一実施例によれば、前記負極を含む電池の放電終止電圧(discharge cut-off voltage)を、前記チタン酸リチウム粒子22がリチウムイオンを放出しない電圧に設定することができる。従って、前記負極を含む電池の放電時、前記金属ナノ粒子24では、リチウムイオンが放出される一方、前記チタン酸リチウム粒子22では、充電時に吸蔵されたリチウムイオンが放出されない。
【0045】
従って、前記チタン酸リチウム粒子22を含む多孔性マトリックスは、電池の化学反応には参与しないが、リチウム電池の充放電時、前記金属ナノ粒子24の体積膨脹を抑制する構造体(body)として機能する。
【0046】
さらに、前記チタン酸リチウム粒子22は、導電性を有することができる。具体的には、リチウムイオンが吸蔵された形態で、チタン酸リチウム粒子22が存在する場合、前記チタン酸リチウム粒子22は、導電材の役割も担うことができる。例えば、前記チタン酸リチウム粒子22は、導電性を有し、充放電を実施する前より、前記負極を含む電池の抵抗を低くすることができる。また、放電終止電圧を前記チタン酸リチウム粒子22がリチウムイオンを放出するように設定した場合、すなわち前記チタン酸リチウム粒子22が活性物質となる場合に比べ、前記負極を含む電池の抵抗が低くなる。従って、前記負極活物質層20は、チタン酸リチウム粒子22以外に、別途の導電材を含まない。すなわち、前記チタン酸リチウム粒子22は、導電材の役割も担うことができ、金属ナノ粒子24の導電性を補うことができる。
【0047】
前記チタン酸リチウム粒子22は、前記金属ナノ粒子24にコーティングされるのではなく、金属ナノ粒子24の体積膨脹に対する応力に耐えることができるマトリックスを形成することにより、別途のコーティング工程の実施を必要としない。例えば、前述の平均粒径の比率を有するチタン酸リチウム粒子22と金属ナノ粒子24とのブレンディングを介して、図1のような構造を具現することができる。従って、コーティング層の剥離によって、体積膨脹抑制効果が低減したり、あるいはコーティング層の存在によって、非可逆容量が増加したりするような問題点が生じない。したがって、負極の構造的安定性を向上させることができる。
【0048】
一実施例によれば、前記チタン酸リチウム粒子22の平均粒径は、前記金属ナノ粒子24の平均粒径の5倍ないし50倍でもある。好ましくは、前記チタン酸リチウム粒子22の平均粒径は、前記金属ナノ粒子24の平均粒径の7倍ないし50倍でもある。より好ましくは、前記チタン酸リチウム粒子22の平均粒径は、前記金属ナノ粒子24の平均粒径の10倍ないし50倍でもある。さらにより好ましくは、前記チタン酸リチウム粒子22の平均粒径は、前記金属ナノ粒子24の平均粒径の10倍ないし30倍でもある。さらにより好ましくは、前記チタン酸リチウム粒子22の平均粒径は、前記金属ナノ粒子24の平均粒径の10倍ないし20倍でもある。前記範囲で、前記チタン酸リチウム粒子22間に十分な空隙が確保され、前記空隙に、前記金属ナノ粒子24が位置することができる。
【0049】
例えば、前記チタン酸リチウム粒子22及び前記金属ナノ粒子24の平均粒径は、粒子サイズが最小である粒子から最大である粒子順序で累積させた分布曲線で、全体粒子個数を100%にしたとき、最小である粒子から50%に該当する粒径であるD50を意味する。D50は、当業者に周知の方法で測定され、例えば、粒度分析機(particle size analyzer)で測定するか、TEM(Transmission Electron Microscopy)写真またはSEM(Scanning Electron Microscope)写真から測定することもできる。他の方法の例を挙げれば、動的光散乱法(dynamic light-scattering)を利用した測定装置を利用して測定した後、データ分析を実施し、それぞれのサイズ範囲に対して粒子数が計数され、その計数を介して平均粒径を容易に得ることができる。
【0050】
一実施例によれば、前記チタン酸リチウム粒子22の平均粒径は、100nmないし1μmでもある。好ましくは、前記チタン酸リチウム粒子22の平均粒径は、100nmないし700nmでもある。さらに好ましくは、前記チタン酸リチウム粒子22の平均粒径は、100nmないし500nmでもある。さらにより好ましくは、前記チタン酸リチウム粒子22の平均粒径は、100nmないし300nmでもある。前記範囲で、前記チタン酸リチウム粒子22を含む多孔性マトリックスは、金属ナノ粒子24の体積膨脹による応力に耐えることができるほど機械的強度を確保することができる。
【0051】
一実施例によれば、前記チタン酸リチウム粒子22は、下記化学式1で表示される化合物を含んでもよい。
【0052】
【化5】
前記化学式1で、2.4≦x≦4.2、4.8<y≦6.6である。
【0053】
例えば、前記チタン酸リチウム粒子22は、LiTi12でもある。従って、前記チタン酸リチウム粒子22は、最初1回の充電後、リチウムイオンが吸蔵された形態である前記反応式1のLiTi12として存在し、それ以上リチウムイオンを吸蔵または放出しないのである。
【0054】
一実施例によれば、前記チタン酸リチウム粒子22の含量は、重量を基準として、前記金属ナノ粒子24の含量の3倍ないし10倍でもある。好ましくは、前記チタン酸リチウム粒子22の含量は、重量を基準として、前記金属ナノ粒子24の含量の3倍ないし8倍でもある。好ましくは、前記チタン酸リチウム粒子22の含量は、重量を基準として、前記金属ナノ粒子24の含量の4倍ないし7倍でもある。前記範囲で、前記チタン酸リチウム粒子22が効果的にマトリックスを形成し、金属ナノ粒子24の体積膨脹を抑制することができ、負極のリチウム保存容量が低減しない。
【0055】
一実施例によれば、前記金属ナノ粒子24の平均粒径は、10nmないし500nmでもある。好ましくは、前記金属ナノ粒子24の平均粒径は、10nmないし200nmでもある。より好ましくは、前記金属ナノ粒子24の平均粒径は、10nmないし100nmでもある。前記範囲で、前記金属ナノ粒子24は、前記多孔性マトリックス内の空隙に押しなべて分布することにより、充放電中の金属ナノ粒子24の体積膨脹が、それを取り囲んでいるチタン酸リチウム粒子22によって効率的に抑制され、金属ナノ粒子24の破壊を防ぐことができる。
【0056】
一実施例によれば、前記金属ナノ粒子24は、Si、Sn、Al、Ge、Pb、Bi、Sb、それらの合金及びそれらの酸化物からなる群から選択された1種以上を含んでもよい。
【0057】
例えば、前記金属ナノ粒子24は、Siでもある。前記Siは、約4020mAh/gの最大理論容量を有し、それを採用したリチウム電池は、高容量を示すことができる。
【0058】
例えば、前記金属ナノ粒子24は、Si−Y合金(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素、またはそれらの組み合わせ元素であり、Siではない)、Sn−Y合金(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素、またはそれらの組み合わせ元素であり、Snではない)などでもある。前記元素Yとしては、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Ti、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po、またはそれらの組み合わせでもある。
【0059】
例えば、前記金属ナノ粒子24は、SnO、SiO(0<x<2)などの酸化物でもある。
【0060】
一実施例によれば、前記金属ナノ粒子24は、炭素系コーティング層が形成された金属ナノ粒子を含んでもよい。
【0061】
例えば、前記金属ナノ粒子24は、炭素系物質にコーティングされる。前記炭素系物質は、非晶質炭素を含んでもよい。そのとき、非晶質炭素は、ソフトカーボン、ハードカーボン、メゾ相ピッチ(mesophase pitch)炭化物、焼成されたコークス、ナノ炭素ファイバ、またはそれらの混合物から選択される。
【0062】
前記炭素系コーティング層のコーティング方法は、以下に制限されるものではないが、乾式コーティング法または液状コーティング法をいずれも使用することができる。例えば、前記乾式コーティング法としては、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、蒸着などを使用することができ、前記液状コーティング法としては、含浸、スプレーなどを使用することができる。前記液状コーティング法を使用する場合、溶媒として、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)などを使用することができる。
【0063】
一実施例によれば、前記金属ナノ粒子24の含量は、前記負極活物質層20総重量を基準として、0.1重量%ないし50重量%でもある。好ましくは、前記金属ナノ粒子24の含量は、前記負極活物質層20総重量を基準として、1重量%ないし30重量%でもある。より好ましくは、金属ナノ粒子24の含量は、前記負極活物質層20総重量を基準として、10重量%ないし20重量%でもある。前記範囲で、負極の構造的安定性が確保されながら、高容量の電池が具現される。
【0064】
一実施例によれば、前記負極活物質層20は、リチウムイオンを吸蔵及び放出することができる炭素系材料をさらに含んでもよい。
【0065】
例えば、前記炭素系材料は、結晶質炭素、非晶質炭素、またはそれらの混合物でもある。前記結晶質炭素の例としては、無定形、板状、鱗片状(flake)、球形またはファイバ型の天然黒鉛または人造黒鉛のような黒鉛を有することができ、前記非晶質炭素の例としては、ソフトカーボンまたはハードカーボン、メゾ相ピッチ炭化物、焼成されたコークスなどを挙げることができる。
【0066】
前記負極活物質層20が前記炭素系材料をさらに含むとしても、前記金属ナノ粒子24は、前記チタン酸リチウム粒子22間に存在することができる。
【0067】
例えば、前記炭素系材料は、前記チタン酸リチウム粒子22よりサイズが大きいか、あるいは板状または球形などの構造を有し、炭素系材料間に、前記チタン酸リチウム粒子22を含む多孔性マトリックスが存在することができ、前記多孔性マトリックス内の空隙に、金属ナノ粒子24が存在することができる。
【0068】
一実施例によれば、前記炭素系材料の含量は、前記負極活物質層総重量を基準として、10重量%ないし90重量%でもある。前記範囲で、構造的安定性が向上した負極が製造される。
【0069】
一実施例によれば、前記負極活物質層20は、バインダをさらに含んでもよい。前記バインダは、水系バインダでもある。例えば、前記金属ナノ粒子24と集電体との結合、前記チタン酸リチウム粒子と集電体との結合、前記金属ナノ粒子24と導電材との結合などに一助となる成分である。前記バインダは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ塩化ビニリデン、ポリベンジミダゾール、ポリイミド、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアニリン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフェニルスルフィド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエチレンスルホン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリ酸化フェニレン、ポリブチレンテレフタレート、エチレン−プロピレン−ジエンモノマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはそれらの組み合わせから選択されるが、それらに制限されるものではない。前記バインダの含量は、負極活物質の役割を行うことができる金属ナノ粒子24及び炭素系材料の和100重量部を基準として、1ないし50重量部、例えば、1ないし30重量部、例えば、1ないし20重量部、あるいは、例えば、1ないし15重量部でもある。
【0070】
一実施例によれば、前記負極活物質層20は、導電材をさらに含んでもよい。前記導電材は、前記金属ナノ粒子24に導電通路を提供し、導電性をさらに向上させることができる。前記導電材としては、一般的にリチウム電池に使用されるものであるならば、いかなるものでも使用することができ、その例として、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素ファイバなどの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属ファイバなどの金属系物質;ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー;またはそれらの混合物を含む導電性材料を使用することができる。導電材の含量は、適当に調節して使用することができる。例えば、前記金属ナノ粒子24及び導電材の重量比は、99:1ないし90:10の範囲でもある。
【0071】
前記集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せずに、高い導電性を有するものであるならば、特別に制限されるものではない。例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン及びステンレススチールのうちから選択される少なくとも1つの素材からなる。前記アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレススチールなどの素材表面には、ニッケル、銅、アルミニウム、チタン、金、銀、白金、パラジウムなどのコーティング成分で、電気メッキまたはイオン蒸着して表面処理するか、あるいはそれらコーティング成分のナノ粒子を、ディップまたは圧着などの方法を介して、前記主素材の表面に、コーティング処理したものを基材として使用することもできる。また、前記集電体は、非導電性の材料からなるベースに、前述のような導電性素材を被覆させた形態でも構成される。
【0072】
前記集電体は、その表面に、微細な凹凸構造が形成されたものでもあるが、そのような凹凸構造は、基材上にコーティングされる活物質層との接着力を高めることができる。前記集電体は、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態が可能である。前記集電体は、一般的に、3μmないし500μmの厚みを有することができる。
【0073】
本発明の他の側面によるリチウム電池は、前述の負極を含む。
【0074】
以下、本発明のさらに他の側面による、リチウム電池の製造方法について説明する。
【0075】
前記リチウム電池の製造方法は、正極、負極、前記正極及び負極の間に配置されるセパレータ、並びに電解質を含むリチウム電池構造体を提供する段階と、前記リチウム電池構造体に化成工程を実施し、リチウム電池を製造する段階と、を含むリチウム電池の製造方法であって、前記リチウム電池構造体を提供する段階は、金属ナノ粒子及びチタン酸リチウム粒子を含む負極活物質組成物を製造する段階と、前記負極活物質組成物を集電体上にコーティングした後、乾燥させて圧延し、前記集電体上に負極活物質層が形成された負極を製造する段階と、を含み、前記化成工程は、1.5V以下の電圧で、前記リチウム電池構造体に対するカットオフを実施する放電工程を含む。
【0076】
まず、正極、負極、及び前記正極及び負極の間に配置されるセパレータ、並びに電解質を含むリチウム電池構造体を提供する段階は、次の通りである。
【0077】
前記負極は、次のように製造される。
【0078】
前記金属ナノ粒子、チタン酸リチウム粒子、選択的に、炭素系材料、バインダ及び導電材を溶媒に分散させ、負極活物質組成物を製造することができる。
【0079】
その後、前記負極活物質組成物を集電体上にコーティングし、前記コーティングは、集電体上に、前記負極活物質組成物を直接コーティングするか、あるいは別途の支持体上に、前記負極活物質組成物をキャスティングした後、前記支持体から剥離させた負極活物質フィルムを集電体上にラミネーションして行われる。
【0080】
その次に、前記負極活物質組成物がコーティングされた集電体を乾燥させた後で圧延し、集電体上に負極活物質層が形成された負極を製造する。
【0081】
一実施例によれば、前記負極活物質組成物に含まれる金属ナノ粒子、チタン酸リチウム粒子、炭素系材料、バインダ及び導電材は、前述の通りである。
【0082】
一実施例によれば、前記負極活物質組成物の前記チタン酸リチウム粒子が、下記化学式2で表示される化合物を含んでもよい:
【0083】
【化6】
前記化学式2で、2.4≦x≦4.2、4.8<y≦6.6である。
【0084】
例えば、前記化学式2で表示されるチタン酸リチウムは、LiTi12を含んでもよい。
【0085】
その場合、前記溶媒としては、N−メチルピロリドン(NMP)、アセトン、水などが使用される。前記溶媒の含量は、正極活物質100重量部を基準にして、1重量部ないし40重量部を使用することができる。前記溶媒の含量は、前記範囲であるとき、活物質層を形成するための作業が容易である。
【0086】
次に、前記正極は、前記負極の金属ナノ粒子、チタン酸リチウム粒子、炭素系材料の代わりに、正極活物質を使用することを除いては、負極と同一の方法で製造される。また、正極活物質組成物において、バインダ、導電材及び溶媒は、負極の場合と同一のものを使用することができる。
【0087】
例えば、正極活物質、バインダ、及び選択的に導電材を溶媒に分散させ、正極活物質組成物を製造することができる。その後、集電体上に、前記正極活物質組成物を直接コーティングするか、あるいは別途の支持体上に、前記正極活物質組成物をキャスティングした後、前記支持体から剥離させた正極活物質フィルムを集電体上にラミネーションし、前記集電体の少なくとも一面に、正極活物質層を形成することができる。その次に、正極活物質層が形成された集電体を乾燥させて圧延し、正極を製造することができる。
【0088】
前記正極活物質としては、当該技術分野で正極活物質として、一般的に使用される物質であるならば、いずれも使用することができる。具体的には、前記第1正極活物質及び前記第2正極活物質のコアとして、それぞれ独立して、次の化合物を使用することができる。例えば、Li1−bB’(前記式で、0.90≦a≦1及び0≦b≦0.5である);Li1−bB’2−c(前記式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である);LiE2−bB’4−c(前記式で、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である);LiNi1−b−cCoB’α(前記式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2である);LiNi1−b−cCoB’2−αF’α(前記式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiNi1−b−cCoB’2−αF’(前記式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiNi1−b−cMnB’α(前記式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2である);LiNi1−b−cMnB’2−αF’α(前記式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiNi1−b−cMnB’2−αF’(前記式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiNi(前記式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0.001≦d≦0.1である);LiNiCoMnGeO(前記式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0≦d≦0.5、0.001≦e≦0.1である);LiNiG(前記式で、0.90≦a≦1、0.001≦b≦0.1である);LiCoG(前記式で、0.90≦a≦1、0.001≦b≦0.1である);LiMnG(前記式で、0.90≦a≦1、0.001≦b≦0.1である);LiMn(前記式で、0.90≦a≦1、0.001≦b≦0.1である);QO;QS;LiQS;V;LiV;LiI’O;LiNiVO;Li(3−f)(PO(0≦f≦2);Li(3−f)Fe(PO(0≦f≦2);LiFePOの化学式のうちいずれか一つで表現される化合物を使用することができる。
【0089】
前記化学式において、Aは、Ni、Co、Mn、またはそれらの組み合わせであり、B’は、Al、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、希土類元素、またはそれらの組み合わせであり、Dは、O、F、S、P、またはそれらの組み合わせであり、Eは、Co、Mn、またはそれらの組み合わせであり、F’は、F、S、P、またはそれらの組み合わせであり、Gは、Al、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、V、またはそれらの組み合わせであり、Qは、Ti、Mo、Mn、またはそれらの組み合わせであり、I’は、Cr、V、Fe、Sc、Y、またはそれらの組み合わせであり、Jは,V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、またはそれらの組み合わせである。
【0090】
例えば、LiCoO、LiMn2x(x=1、2)、LiNi1−xMn2x(0<x<1)、LiNi1−x−yCoMn(0≦x≦0.5、0≦y≦0.5)、FePoなどである。
【0091】
次に、前記正極及び負極の間に挿入されるセパレータを設ける。前記セパレータは、リチウム電池で一般的に使用されるものであるならば、いずれも使用される。特に、電解質のイオン移動に対して低抵抗でありながら、電解液含湿能にすぐれるものが適する。例えば、ガラスファイバ、ポリエステル、テフロン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、その化合物のうちから選択された材質であり、不織布形態でも織造形態でもよい。前記セパレータは、一般的に、気孔径が0.01μmないし10μmであり、厚みが5μmないし300μmであるものを使用する。
【0092】
前記電解質は、非水系電解質及びリチウム塩からなる。非水系電解質としては、非水電解液、有機固体電解質、無機固体電解質などが使用される。
【0093】
前記非水電解液としては、例えば、N−メチル−2−ピロリジノン、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ガンマ−ブチロラクトン(GBL)、1,2−ジメトキシエタン(DME)、テトラヒドロフラン(THF)、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、1,3−ジオキソラン(DOL)、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ニトロメタン、ホルム酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非プロトン性有機溶媒が使用される。
【0094】
前記有機固体電解質としては、例えば、ポリエチレン誘導体、ポリ酸化エチレン誘導体、ポリ酸化プロピレン誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリアジテーションリシン(agitation lysine)、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、またはイオン性解離基を含む重合体などが使用される。
【0095】
前記無機固体電解質としては、例えば、LiN、LiI、LiNi、LiN−LiI−LiOH、LiSiO、LiSiO−LiI−LiOH、LiSiS、LiSiO、LiSiO−LiI−LiOH、LiPo−LiS−SiSなどのLiのチッ化物、ハロゲン化物または硫酸塩などが使用される。
【0096】
前記リチウム塩は、リチウム電池で一般的に使用されるものであるならば、いずれも使用可能であり、前記非水系電解質に溶解されやすい物質として、例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiPF、LiCFSO、LiCFCo、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、CHSOLi、CFSOLi、(CFSONLi、リチウムクロロボレート、低級脂肪族カルボン酸リチウム、4フェニルホウ酸リチウムまたはイミドなどの物質が一つ以上使用される。
【0097】
また、前記電解液には、負極表面に、SEI(Solid Electrolyte Interphase)を形成し、それを維持させるために、ビニレンカーボネート(VC)、カテコールカーボネート(CC)などを含んでもよい。選択的に、前記電解質は、過充電を防止するために、N−ブチルフェロセン、ハロゲン置換ベンゼンなどのレドックスシャトル(redox-shuttle)型添加剤を含んでもよい。選択的に、前記電解質は、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニルなどの被膜形成用添加剤を含んでもよい。選択的に、前記電解質は、伝導特性を向上させるために、クラウンエーテル系化合物などの陽イオン受容体(cation receptor)、及びホウ素系化合物などの陰イオン受容体(anion receptor)を含んでもよい。選択的に、前記電解質は、難燃剤として、トリメチルホスフェート(TMP)、トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスフェート(TFP)、ヘキサメトキシシクロトリポスファゼン(HMTP)などのホスフェート系化合物を添加することができる。
【0098】
必要によって、前記電解質は、電極表面に安定したSEIまたは被膜の形成の一助となり、リチウム電池の安定性をさらに改善させるように、例えば、トリス(トリメチルシリル)ホスフェート(TMSPa)、リチウムジフルオロオキサレートボレート(LiFOB)、それ以外に、例えば、アクリル、アミノ、エポキシ、メトキシ、エトキシ、ビニルのように、シロキサン結合を形成することができる官能基を有するシラン化合物、ヘクサメチルジシラザン(hexamethyldisilazane)などのシラザン化合物など、具体的に例えば、プロパンスルトン(PS)、スクシノニトリル(SN)、LiBFなどの添加剤をさらに含んでもよい。例えば、LiPF、LiClO、LiBF、LiN(SOCFなどのリチウム塩を、高誘電性溶媒であるエチレンカーボネート(EC)またはプロピレンカーボネート(PC)の環状カーボネートと、低粘度溶媒であるジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)またはエチルメチルカーボネート(EMC)の線形カーボネートとの混合溶媒に添加して電解質を製造することができる。
【0099】
次に、前記リチウム電池構造体に、化成工程を実施し、リチウム電池を製造する段階を含み、前記化成工程は、1.5V以下の電圧で、前記リチウム電池構造体に対するカットオフを実施する放電工程を含む。
【0100】
前記化成工程は、電池構造を安定化させ、前記リチウム電池構造体を使用可能な状態にする工程である。例えば、前記化成工程は、前記リチウム電池構造体のエージング(aging)工程、充電工程、放電工程などを含んでもよい。
【0101】
前記エージング工程は、リチウム電池構造体内に、電解液を含浸させる工程である。
【0102】
前記充電工程は、負極表面に、SEI被膜(Solid Electrolyte Interphase layer)形成のために、電池を完全に充電させる工程である。前記充電工程で、前記金属ナノ粒子及び前記チタン酸リチウム粒子に、リチウムイオンが吸蔵される。
【0103】
例えば、前記充電工程中、前記チタン酸リチウム粒子は、前記化学式2で表示される化合物に、リチウムイオンが吸蔵される。例えば、前記チタン酸リチウム粒子は、前記化学式2で表示される化合物にリチウムイオンが吸蔵された、下記化学式1で表示される化合物に変わる:
【0104】
【化7】
前記化学式1で、2.4≦x≦4.2、4.8<y≦6.6である。
【0105】
前記放電工程は、充電工程で充電された電池を完全放電する工程であり、その後の製品出荷のために再充電工程が実施される。
【0106】
前記放電工程において、前記リチウム電池構造体に対するカットオフは、0.2Vないし1.5Vの電圧で実施される。
【0107】
前記放電工程において、1.5V以下の電圧で、前記化学式2で表示される化合物は、リチウムイオンが吸蔵された形態を維持することができる。例えば、前記化学式2で表示される化合物は、リチウムイオンが吸蔵された前記化学式1で表示される化合物の形態を維持することができる。
【0108】
従って、前記放電工程において、1.5V以下の電圧で、前記チタン酸リチウム粒子は、前記化学式1で表示される化合物を含んでもよい。
【0109】
具体的には、放電時1.5V以下の電圧でカットオフする場合、前記リチウム電池構造体の前記負極に含まれた金属ナノ粒子は、リチウムイオンを放出することができる。一方、前記負極に含まれたチタン酸リチウム粒子は、1.5V以下の電圧では、リチウムイオンを放出しない。言い換えれば、前記負極に含まれたチタン酸リチウム粒子は、1.5V以下の電圧では放電せず、充電された状態を維持することができる。
【0110】
従って、前記化成工程後、前記チタン酸リチウム粒子は、それ以上リチウムイオンを吸蔵または放出しない非活性物質に変化する。すなわち、前記チタン酸リチウム粒子22は、最初充電後には、リチウムイオンが吸蔵された形態で続けて存在することができる。それにより、前記チタン酸リチウム粒子22を含む多孔性マトリックスは、電池の化学反応には参与しないが、前記金属ナノ粒子24の体積膨脹を効果的に抑制することができる。
【0111】
本発明のさらに他の側面によるリチウム電池の使用方法は、前述のリチウム電池を1.5V以下の電圧で放電させる段階を含む。
【0112】
前記リチウム電池を1.5V超過の電圧で放電させないことにより、リチウム電池の負極内チタン酸リチウム粒子がリチウムイオンを放出すること防ぐことができる。
【0113】
図2は、本発明の一実施例によるリチウム電池の代表的な構造を概略的に図示したのである。
【0114】
図2を参照すれば、前記リチウム電池100は、正極93、負極92、及び前記正極93と負極92との間に配置されたセパレータ94を含む。また、内部短絡の防止のために、前記正極93または負極92の外面に、セパレータ94をさらに含んでもよい。前述の正極93、負極92及びセパレータ94が巻き取られたり、あるいは折り畳まれたりして電池容器95に収容される。次に、前記電池容器95に電解質が注入され、封入部材96で密封され、リチウム電池100が完成される。前記電池容器95は、円筒状、角形、薄膜型などでもある。前記リチウム電池は、リチウムイオン電池でもある。
【0115】
前記リチウム二次電池は、電極形態によって、巻き取り(winding)タイプとスタック(stack)タイプとがあり、外装材の種類によって、円筒状、角形、コイン型、ポーチ型に分類される。
【0116】
前記リチウム電池は、小型デバイスの電源として使用される電池に使用されるだけではなく、多数の電池を含む中型・大型デバイス電池モジュールの単位電池としても使用される。
【0117】
前記中型・大型デバイスの例としては、パワーツール(power tool);電気車両(EV:Electric Vehicle)、ハイブリッド電気車両(HEV:Hybrid Electric Vehicle)及びプラグインハイブリッド電気車両(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)を含むxEV;e−bike、e−scooterを含む電気二輪車;電気ゴルフカート(electric golf cart);電気トラック;電気商用車;または電力保存用システムなどを挙げることができるが、それらに限定されるものではない。また、前記リチウム電池は、高出力、高電圧及び高温駆動が要求されるその他あらゆる用途に使用される。
【0118】
以下の実施例及び比較例を介して、例示的な実施形態についてさらに詳細に説明する。ただし、実施例は、技術的思想を例示するためのものであり、それらだけで本発明の範囲が限定されるものではない。
【0119】
(負極の製造)
実施例1
平均粒径が15nmであるSi粒子(Sigma Aldrich社製)、平均粒径が150nmであるLiTi12(三星精密化学社製)、及びバインダとしてポリアクリロニトリル(PAN)を、13.3:81.7:5の重量比で混合し、粘度を調節するために、溶媒N−メチルピロリドンを、固形分の含量が60重量%になるように添加し、負極活物質組成物を製造した。なお、Si粒子及びLiTi12の平均粒径については、先に説明した方法により測定した。
【0120】
前記負極活物質組成物を、15μm厚の銅集電体上に、一般的な方法を使用して、約40μm厚に塗布する。前記組成物が塗布された集電体を常温で乾燥させた後、120℃でさらに1回乾燥し、圧延及びパンチングし、コインセルに適用する負極を製造した。
【0121】
実施例2
平均粒径が100nmであるLiTi12を使用したことを除いては、実施例1と同一の方法で負極を製造した。
【0122】
実施例3
平均粒径が200nmであるLiTi12を使用したことを除いては、実施例1と同一の方法で負極を製造した。
【0123】
実施例4
平均粒径が300nmであるLiTi12を使用したことを除いては、実施例1と同一の方法で負極を製造した。
【0124】
実施例5
平均粒径が700nmであるLiTi12を使用したことを除いては、実施例1と同一の方法で負極を製造した。
【0125】
実施例6
平均粒径が1μmであるLiTi12を使用したことを除いては、実施例1と同一の方法で負極を製造した。
【0126】
比較例1
前記LiTi12の代わりに、平均粒径が18μmである黒鉛(三菱社製)を使用したことを除いては、実施例1と同一の方法で負極を製造した。
【0127】
比較例2
平均粒径が15nmであるLiTi12を使用したことを除いては、実施例1と同一の方法で負極を製造した。
【0128】
比較例3
平均粒径が45nmであるSi粒子、及び平均粒径が15nmであるLiTi12を使用したことを除いては、実施例1と同一の方法で負極を製造した。
【0129】
(評価例1:負極活物質層の表面分析−SEM(Scanning Electron Microscope)測定及びEDS(Energy Dispersive X-ray Spectrometer)測定)
図3に、実施例1による負極活物質層の20,000倍率で測定された走査電子顕微鏡(SEM)写真を示した。
【0130】
また、前記負極活物質層で、LiTi12粒子部分とSi粒子部分とを調べるために、前記負極活物質層において、第1地点40及び第2地点50に対するX線分光分析を実施した。前記第1地点に対する結果を、図4及び下記表1に示し、前記第2地点に対する結果を、図5及び下記表2に示した。
【0131】
【表1】
【0132】
【表2】
【0133】
図4,5及び表1,2から分かるように、第1地点40は、第2地点50に比べ、Ti含量が多く、Si含量が少ないということが分かる。従って、前記負極活物質層において、第1地点40である明るい部分が、LiTi12粒子であると判断され、第2地点50である暗い部分が、Si粒子であると判断される。前述の図3で、暗い部分のほとんどが明るい部分で取り囲まれているということから見て、Si粒子は、マトリックス形態のLiTi12粒子で取り囲まれているということが分かる。
【0134】
(リチウム二次電池の製造−コインハーフセル(coin half cell))
実施例7
前記実施例1で製造された負極、相対電極であるリチウム金属、及び14μm厚のポリプロピレンセパレータを使用して、電解質を注入して圧縮した2032規格のリチウム電池構造体を製造した。そのとき、電解質は、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)及びフルオロエチレンカーボネート(FEC)の混合溶媒(EC:DEC:FECは、5:70:25の体積比)に、LiPFが1.10Mの濃度になるように溶解させたものを使用した。
【0135】
前記リチウム電池構造体を、10分間0.1Cレートの電流で初期充電した後、25℃で1日放置した。
【0136】
その後、0.1Cレートの電流で、電圧が4.2Vに至るまで定電流で充電した。次に、放電終止電圧である1.5Vに至るまで、0.1Cレートの定電流で放電した(化成段階)。
【0137】
次に、0.2Cレートの電流で、電圧が4.3Vに至るまで定電流充電し、4.3Vを維持しながら、電流が0.05Cになるまで定電圧充電した。次に、放電終止電圧である1.5Vに至るまで、0.2Cの定電流で放電し、リチウム二次電池を製造した(定格段階)。
【0138】
実施例8ないし12
実施例2ないし6で製造された負極をそれぞれ使用したことを除いては、実施例7と同一の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0139】
比較例4ないし6
比較例1ないし3で製造された負極をそれぞれ使用したことを除いては、実施例7と同一の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0140】
比較例7
前記化成段階及び定格段階で、放電時に、放電終止電圧である2.0Vに至るまで放電したことを除いては、実施例7と同一の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0141】
(評価例2:電池の体積膨脹率評価)
前記実施例7ないし12、及び比較例4ないし6で製造されたコインセルの負極に対して、0.05Cで充電(formation)させた後、コインセルを解体し、負極板の充電前/後の厚みを比較して体積膨脹率を測定し、その結果の一部を、下記表3及び図6に図示する。
【0142】
【数1】
【0143】
【表3】
【0144】
前記表3及び図6から分かるように、前記LiTi12の平均粒径が、Siの平均粒径より一定レベル以上大きい場合、負極の体積膨脹率が低下した。具体的には、前記LiTi12の平均粒径が、Siの平均粒径と同一であるか、あるいはそれより小さい場合には、体積膨張率は、LiTi12を使用していない場合と同程度であることが分かる。従って、実施例7及び9ないし12によって製造された電池においては、前記LiTi12を含むマトリックス構造によって、充放電時、Siの体積膨脹が抑制されるということが分かる。
【0145】
また、前記LiTi12の平均粒径が、Siの平均粒径より大きくなるほど、負極の体積膨脹率は低下した。それは、前記LiTi12の平均粒径の増大により、形成されるマトリックス内部の空隙サイズも増加し、LiTi12に取り囲まれていないSiの粒子の数が減少したものと見られる。
【0146】
(評価例3:率特性評価)
実施例7及び比較例4で製造された、前記化成定格段階を経た電池を、0.9V定電流(CC:Constant Current)/定電圧(CV:Constant Voltage)0.01Cカットオフ充電した後、0.2Cの放電速度で、1.5Vカットオフ放電するサイクルを1回遂行した後、放電速度を、0.5C、1.0C、2.0C、3.0C及び5.0Cにそれぞれ変換し、Cレート別容量維持率を測定した。その結果を図7に示した。なお、Cレート別容量維持率は、0.2Cでの放電時での容量維持率を100としたときの値とした。
【0147】
図7から分かるように、比較例4で製造された電池の場合、3Cから測定が不可能である一方、実施例7で製造された電池の場合、5Cでも90%以上の容量維持率を示した。従って、Siより大きい平均粒径を有するLiTi12を含んだ負極の場合、それを使用しない場合に比べ、高率特性が顕著に向上するということが分かる。それは、黒鉛においては、黒鉛間の空間が大きく、充放電時、Siの体積膨脹を効果的に抑制することができなかったものと見られる。
【0148】
(評価例4:寿命特性の評価)
前記実施例9ないし12、及び比較例4ないし6で製造された、前記化成定格段階を経たリチウム電池を、25℃で0.5C レートの電流で、電圧が4.3Vに至るまで定電流充電し、4.3Vを維持しながら、電流が0.05Cになるまで定電圧充電した。次に、放電時に、電圧が1.5Vに至るまで、1Cの定電流で放電するサイクルを50回まで反復した。
【0149】
前記コインハーフセルの容量維持率(CRR:Capacity Retention Rate)を測定し、表4及び図8に示した。ここで、容量維持率は、下記数式1で定義される。
【0150】
【数2】
【0151】
【表4】
【0152】
表4及び図8から分かるように、比較例によって製造された電池に比べ、実施例によって製造された電池の容量維持率が改善している。それは、充放電の間、負極の体積膨脹が抑制されるなど、負極の構造的安定性が向上したためであると見られる。すなわち、実施例の負極を採用したリチウム電池では、寿命特性が向上する。
【0153】
(評価例5:インピーダンス測定)
前記実施例7及び比較例7によって製造された電池のインピーダンスをPARSTAT 2273を使用して、2−プローブ(probe)法によって測定した。周波数範囲は、10Hz〜10−1Hzであった。前記インピーダンス測定で得られたナイキストプロット(Nyquist plot)を図9に図示する。
【0154】
図9から分かるように、比較例7で製造されたリチウム電池に比べ、実施例7で製造されたリチウム電池のインピーダンスが低減している。それは、放電時、1.5Vの電圧でカットオフする場合、LiTi12は、リチウムイオンが吸蔵された形態であるLiTi12として存在し、それ以上充放電の反復にも、リチウムイオンの吸蔵及び放出なしに、導電材としての役割を行うからである。
【0155】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0156】
本発明の負極、それを採用したリチウム電池、及びリチウム電池の製造方法は、例えば、電源関連の技術分野に効果的に適用可能である。
【符号の説明】
【0157】
10 集電体
20 負極活物質層
22 チタン酸リチウム粒子
24 金属ナノ粒子
40 第1地点
50 第2地点
92 負極層
93 正極層
94 セパレータ
95 電池容器
96 封入部材
100 リチウム電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9