特許第6727306号(P6727306)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6727306CMMタッチプローブのためのセンサ信号オフセット補正システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6727306
(24)【登録日】2020年7月2日
(45)【発行日】2020年7月22日
(54)【発明の名称】CMMタッチプローブのためのセンサ信号オフセット補正システム
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/008 20060101AFI20200713BHJP
【FI】
   G01B5/008
【請求項の数】24
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-533064(P2018-533064)
(86)(22)【出願日】2016年12月21日
(65)【公表番号】特表2018-538547(P2018-538547A)
(43)【公表日】2018年12月27日
(86)【国際出願番号】US2016068029
(87)【国際公開番号】WO2017112774
(87)【国際公開日】20170629
【審査請求日】2019年9月11日
(31)【優先権主張番号】62/271,082
(32)【優先日】2015年12月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】110002963
【氏名又は名称】特許業務法人MTS国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100080458
【弁理士】
【氏名又は名称】高矢 諭
(74)【代理人】
【識別番号】100076129
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 圭佑
(74)【代理人】
【識別番号】100144299
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100150223
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 修三
(72)【発明者】
【氏名】ビョルン イー・ビー ジャンソン
【審査官】 眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第4945501(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0213604(US,A1)
【文献】 国際公開第2015/014901(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00−5/30
G01B 21/00−21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
座標測定システムで使用されるタッチプローブにおいて、タッチトリガ信号の決定に寄与する信号を出力するタッチプローブ回路であって、
前記タッチプローブに取り付けられたスタイラスの変位に応答するセンサ信号を出力するように構成された変位センサと、
前記変位センサによって出力される静止状態の信号の成分の変化を補償するために使用される可変のオフセット補償信号を提供するように構成されたオフセット補償制御部と、
前記オフセット補償信号と前記センサ信号を入力し、それらの入力された信号の間の差を増幅し、前記タッチプローブのためのタッチトリガ信号の決定に寄与するトリガ信号決定処理回路に出力されるとともに、前記オフセット補償信号の調整に使用するために前記オフセット補償制御部にも入力されるオフセット補償された変位信号として、増幅された前記差を出力するように接続された差分増幅器と、を備え、
前記オフセット補償制御部は、前記オフセット補償された変位信号を入力し、その入力に応答し、前記静止状態の信号の成分による前記センサ信号のオフセットを補償する前記差分増幅器に入力されるローパスフィルタされたオフセット補償信号を生成するフィードバックループを提供するように構成されている
ことを特徴とするタッチプローブ回路。
【請求項2】
請求項1において、
前記タッチプローブ回路は、公称Mビット分機能で動作するアナログ/デジタル変換器(A/D変換器)を備え、
前記差分増幅器は、前記オフセット補償された変位信号を前記A/D変換器に出力するように構成されたアナログ増幅器を備え、前記A/D変換器は、前記オフセット補償された変位信号を、前記トリガ信号決定処理回路に出力されるとともに、前記オフセット補償信号の調整に使用される前記オフセット補償制御部にも入力される対応するデジタルオフセット補償された変位信号に変換するように構成されていることを特徴とするタッチプローブ回路。
【請求項3】
請求項2において、
前記オフセット補償制御部は、公称Nビット分解能で動作するデジタル/アナログ変換器(D/A変換器)を備え、
前記オフセット補償制御部は、前記デジタルオフセット補償された変位信号を入力し、前記D/A変換器に入力されるローパスフィルタされたデジタルオフセット補償信号の値を決定するように構成されたデジタル回路を備え、前記D/A変換器は、前記ローパスフィルタされたデジタルオフセット補償信号を、前記差分増幅器に入力される対応するアナログオフセット補償信号に変換するように構成されていることを特徴とするタッチプローブ回路。
【請求項4】
請求項3において、
NはMより少なくとも2ビット大きいことを特徴とするタッチプローブ回路。
【請求項5】
請求項4において、
Mは少なくとも12であることを特徴とするタッチプローブ回路。
【請求項6】
請求項3において、
Mは少なくとも14であり、Nは少なくともMと同じであることを特徴とするタッチプローブ回路。
【請求項7】
請求項3において、
前記オフセット補償制御部は、前記デジタルオフセット補償された変位信号を第1のサンプルレートで入力し、前記ローパスフィルタされたデジタルオフセット補償信号を前記第1のサンプルレートよりも少なくとも10倍遅い第2のサンプルレートで出力するように構成されていることを特徴とするタッチプローブ回路。
【請求項8】
請求項7において、
前記第2のサンプルレートは、前記第1のサンプルレートよりも少なくとも100倍遅いことを特徴とするタッチプローブ回路。
【請求項9】
請求項7において、
前記第1のサンプルレートは、少なくとも50KHzであることを特徴とするタッチプローブ回路。
【請求項10】
請求項3において、
前記オフセット補償制御部は、
前記デジタルオフセット補償された変位信号を入力し、ローパスフィルタデジタル出力信号を出力するように構成されたデジタルローパスフィルタ構成体と、
前記ローパスフィルタデジタル出力信号を入力し、前記D/A変換器に入力される前記ローパスフィルタされたデジタルオフセット補償信号の値を決定するように構成されたデジタル補正フィードバックコントローラと、を備えることを特徴とするタッチプローブ回路。
【請求項11】
請求項10において、
前記デジタル補正フィードバックコントローラは、前記ローパスフィルタデジタル出力信号の変化に応答して比例積分コントローラとして動作するように構成されることを特徴とするタッチプローブ回路。
【請求項12】
請求項1において、
前記差分増幅器は、第1の遮断周波数を有する相対的に高い帯域幅を提供するように構成され、前記オフセット補償制御部は、第2の遮断周波数を有する相対的に低い帯域幅に対応して前記ローパスフィルタされたオフセット補償信号を生成するように構成され、前記第2の遮断周波数は、前記第1の遮断周波数よりも少なくとも1000倍低いことを特徴とするタッチプローブ回路。
【請求項13】
請求項12において、
前記第2の遮断周波数は、前記第1の遮断周波数よりも少なくとも5000倍低いことを特徴とするタッチプローブ回路。
【請求項14】
請求項12において、
前記第1の遮断周波数は少なくとも5000Hzであり、前記第2の遮断周波数は最大で5Hzであることを特徴とするタッチプローブ回路。
【請求項15】
請求項14において、
前記第2の遮断周波数は、少なくとも0.1Hzであることを特徴とするタッチプローブ回路。
【請求項16】
請求項12において、
前記オフセット補償制御部は、
前記オフセット補償された変位信号を入力し、前記第2の遮断周波数を有するローパスフィルタ出力信号を出力するように構成されたローパスフィルタ構成体と、
前記ローパスフィルタ出力信号を入力し、前記差分増幅器に生成されて入力される前記ローパスフィルタされたオフセット補償信号のレベルを決定するように構成された補正フィードバックコントローラと、を備えることを特徴とするタッチプローブ回路。
【請求項17】
請求項16において、
前記補正フィードバックコントローラは、前記ローパスフィルタ出力信号の変化に応答して比例積分コントローラとして動作するように構成されていることを特徴とするタッチプローブ回路。
【請求項18】
請求項12において、
前記タッチプローブ回路は、公称Mビット分解能で動作するアナログ/デジタル変換器(A/D変換器)を備え、
前記差分増幅器は、前記オフセット補償された変位信号を前記A/D変換器に出力するように構成されたアナログ増幅器を備え、前記A/D変換器は、前記オフセット補償された変位信号を、前記トリガ信号決定処理回路に出力するとともに、前記オフセット補償信号の調整に使用するために前記オフセット補償制御部にも入力される対応するデジタルオフセット補償された変位信号に変換するように構成され、
前記オフセット補償制御部は、公称Nビット分解能で動作するデジタル/ アナログ変換器(D/A変換器)を備え、そして、
前記オフセット補償制御部は、前記デジタルオフセット補償された変位信号を入力し、前記第2の遮断周波数を有し、前記D/A変換器に入力されるローパスフィルタされたデジタルオフセット補償信号の値を決定するように構成されたデジタル回路を備え、前記D/A変換器は、前記ローパスフィルタされたデジタルオフセット補償信号を、前記第2の遮断周波数を有し、前記差分増幅器に入力される対応するアナログローパスフィルタされたオフセット補償信号に変換するように構成されていることを特徴とするタッチプローブ回路。
【請求項19】
請求項1において、
前記オフセット補償制御部は、前記トリガ信号決定処理回路が、ワークピースに接触している前記スタイラスに応答するタッチトリガ信号を出力している間に、前記差分増幅器に入力される前記ローパスフィルタされたオフセット補償信号を実質的に一定に保持するようにさらに構成されていることを特徴とするタッチプローブ回路。
【請求項20】
請求項19において、
前記オフセット補償制御部は、前記トリガ信号決定処理回路が、ワークピースに接触している前記スタイラスに応答するタッチトリガ信号を出力したときに提供される割込み信号を受信するように構成され、前記差分増幅器に入力される前記ローパスフィルタされたオフセット補償信号を実質的に一定に保持するように、前記割込み信号に応答することを特徴とするタッチプローブ回路。
【請求項21】
請求項1において、
前記タッチプローブ回路は、前記タッチプローブのハウジングに組み込まれ、前記トリガ信号決定処理回路の少なくとも一部は、前記タッチプローブの前記ハウジングの外側に配置されることを特徴とするタッチプローブ回路。
【請求項22】
請求項1において、
前記タッチプローブ回路は、前記タッチプローブのハウジングに組み込まれ、前記トリガ信号決定処理回路の少なくとも一部は、前記タッチプローブの前記ハウジングの内部に配置されることを特徴とするタッチプローブ回路。
【請求項23】
請求項22において、
複数の変位センサに対応する複数の前記タッチプローブ回路が前記タッチプローブのハウジングに組み込まれ、前記トリガ信号決定処理回路が前記タッチプローブの前記ハウジングの内部に配置され、前記タッチプローブは、ワークピースに接触している前記スタイラスに応答するタッチトリガ信号を出力するように構成されていることを特徴とするタッチプローブ回路。
【請求項24】
請求項1において、
前記変位センサは、前記タッチプローブ内のスタイラス懸架構成体に使用される屈曲要素に取り付けられたシリコン歪みゲージを備えることを特徴とするタッチプローブ回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、精密計量に関し、より詳細には、座標測定システムで使用されるタッチプローブで使用するための回路構成体に関する。
【背景技術】
【0002】
座標測定システム、即ち、座標測定装置(CMM)などの1次元又は3次元測定システムは、タッチプローブのスタイラスがワークピースに接触したときに、座標測定ゲージの読み取りをトリガするタッチプローブを使用することによって、検査されたワークピースの測定値を得ることができる。その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,526,576号('576特許)に記載されている1つの例示的な従来技術のCMMは、ワークピースに接触するためのタッチプローブと、タッチプローブを移動させるためのマルチ駆動を備える移動機構と、タッチプローブヘッド内又はタッチプローブヘッドから信号を処理することに関連する機能を含む関連した電子システムと、を備える。
【0003】
タッチプローブは、タッチプローブのスタイラスがワークピースに接触したことを示すために、タッチプローブのスタイラスの偏向を検出する様々なタイプの高感度変位センサを使用している。タッチプローブの1つの問題は、可能な限り最小の偏向は、可能な限り最小の信号変化から検出されなければならないことである。しかしながら、スタイラスがワークピースに接触していないとき、すなわち、スタイラス及び/又はタッチプローブが(スタイラスがワークピースに積極的に接触している状態とは対照的に)静止状態にあるときでさえ、変位センサ信号は、数多くの理由でドリフト又は変化し得る。例えば、センサ信号は、センサ、関連する回路、又は周囲の構造に対する温度又は湿気の影響の変化により、あるいは、タッチプローブの向きの変化により(例えば、スタイラス又はその懸架機構に対する重力作用により)、あるいは、(例えば、スタイラスが表面によって偏向され、次いで静止状態に戻される場合などの)機械的なヒステリシス効果により、あるいは、振動効果などにより、静止状態でドリフト又は変化し得る。このようなセンサ信号のドリフト又は変化が、ワークピースへの接触によって開始されるスタイラスの偏向を示す所望の小さな信号変化を識別することと混同しないこと、及び/又は干渉しないことを確実にするための測定がなされる必要がある。
【0004】
ワークピースへの接触は、概して、上述したような様々な要因に起因する静止状態のセンサ信号のドリフトよりも速いレートで変化するワークピース接触信号をもたらす。したがって、ワーク接触信号を静止状態のセンサ信号のドリフトと区別するのに使用される最も一般的な従来技術の方法は、より急速に変化するワークピース接触信号の成分を、よりゆっくり変化する静止状態の信号のドリフトの成分と分離するために、変位センサ信号に対するハイパスフィルタを使用することである。ハイパスフィルタリングを含む変位センサの信号処理の1つの例示的な方法は、例えば、以前に組み込まれた'576特許に記載されている。
【0005】
静止状態のセンサ信号のドリフトからワークピース接触信号を区別するために使用される別の従来技術の方法は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,487,785号('785特許)に開示されている。'785特許は、「タッチ指示された」切替閾値を左右する基準値を変更するためのインクリメンタル補正器の使用を開示している。インクリメンタル補正器は、タッチ要素が安静状態にあるとき(すなわち、静止状態のとき)に、システムパラメータ(例えば、変位センサの出力)の測定によって左右される一連の小さなインクリメンタル補正値を使用する。
【0006】
ワークピース接触信号を温度による1つの特定のタイプの静止状態のセンサ信号のドリフトから区別するために使用される別の従来技術の方法が知られている。この方法は、タッチプローブ内の変位センサに対応する「ダミー」センサ及び/又は関連回路を提供することを含む。ダミーセンサは変位から分離されている。このような構成では、ダミーセンサは、同じ原因に起因する静止状態のセンサ信号のドリフトに近い何らかの原因(例えば、温度変化)に起因するセンサ信号のドリフトを示すことがある。したがって、ダミーセンサ信号の変化は、静止状態の変位センサ信号の変化の一部を補償するために使用され得る。しかしながら、この方法はタッチプローブアセンブリを複雑にし、実用上重要な数多くの原因又はタイプの静止状態のセンサ信号のドリフトには適用できないことは言うまでもない。
【0007】
したがって、上記の方法を含む、より急速に変化するワーク接触信号の成分を、よりゆっくり変化する静止状態のセンサ信号のドリフト(静止状態の信号のドリフトとも称する)の成分から分離するために使用される様々な従来の方法を改善することが望ましい。例えば、変位信号の分離又は識別、回路応答安定性、回路応答時間、回路経済性、使いやすさ及び理解のいずれか又はすべての改善、ならびにタッチプローブ及び変位センサの様々なタイプ及びモデルに対する解決の普遍性を向上させることが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
この概要は、以下の[発明を実施するための形態]でさらに説明する様々な開示された特徴及び原理のより急速な認識及び理解を可能にするために、概念の抜粋を簡略化した形で紹介するように提供される。したがって、この概要は、簡単に説明するのみであり、特許請求される主題の主要な特徴を分離することを意図するものではなく、特許請求される主題の範囲を決定する助けとして使用されることを意図するものでもない。
【0009】
上述の方法を含む、より急速に変化するワークピース接触信号の成分を、よりゆっくりと変化する静止状態の信号のドリフトの成分から分離するための先に示した先行技術の方法は、少なくともいくつかの用途に対して様々な望ましくない側面を持つよう決定されていた。
【0010】
例えば、'576特許に開示されているようなハイパスフィルタリングを含む従来技術の方法は、それらが変位センサ信号の増幅に課す制限により、いくつかの用途では望ましくないことが分かっている。先に示唆したように、敏感なタッチプローブを作成するためには、可能な限り最小のスタイラスの偏向は、可能な限り最小の変位センサ信号の変化から急速に感知されなければならない。したがって、一般に、検出のために変位センサからの信号を増幅するための高利得増幅器を使用することが望ましい。しかしながら、タッチプローブにおける様々なタイプの変位センサ及び/又はそれらの実施形態では、変位センサによって出力される静止状態の信号の成分の変化(例えば、上に概説した様々な種類のセンサ信号「ドリフト」)は、しばしば、スタイラスの偏向の許容量に起因する変位センサ信号の変化を超えている。これは、偏向による変位センサ信号の成分の望ましい高利得増幅が電力供給の限界に達するように、相対的に大きな静止状態のセンサ信号の成分の変化を増幅するかもしれないことを意味しており、それは許容できない。従って、高利得増幅の使用は、上記に概説した理由のため別な方法が望ましく、より急速に変化するワークピース接触信号の成分を、よりゆっくり変化する静止状態の信号のドリフト(あるいは信号のドリフト)の成分から分離するハイパスフィルタリングを含む様々な従来技術の方法においては適していない。
【0011】
1以上の変位センサによって出力される静止状態の信号又は静止状態の信号の組合せの変化を補償するためのタッチトリガ信号の切替閾値の調整を含む従来技術の方法も、様々な用途において望ましくないことが判明している。そのような方法の1つは、例えば '785特許に開示されている。このような方法の1つの問題点は、様々なタッチプローブにおいて、タッチトリガ信号の切替閾値と比較される合成信号を提供するために、複数の変位センサ信号を組み合わせることが望ましいことである。異なる変位センサの個々の静止状態の信号の成分の変化は、実際のスタイラスの偏向と個々の変位センサによる信号出力との関係の変化と事実上、関連していることは言うまでもない。しかしながら、異なる変位センサによって出力された個々の静止状態の信号の成分のそのような変化は、相互作用して、タッチトリガ信号の切替閾値との比較のための合成信号を生成する処理において予測不能に失われたり誇張されたりするかもしれない。これにより、トリガ信号が非対称になる、さもなければその幾何学的形状において変化を引き起こすような実際のスタイラス変位が生じる可能性がある。このような影響は、様々なタッチプローブの実施形態における個々の変位センサの静止状態の信号の変化を補償する手段として、合成されたトリガ信号の切替レベルの補償を望ましくないものにする。'785特許は、前述の問題を回避する単一の変位センサを使用するタッチプローブの一実施形態を開示している。しかしながら、複数の軸のスタイラス変位に応答するための単一の変位センサの使用は、別の一連の問題を導入し、幅広い用途を見出していない。さらに、インクリメント補正器が、タッチ要素が安静状態にあるときにタッチプローブの静止状態の信号によって左右される一連の小さなインクリメンタル補正値を使用する'785特許に開示された方法は、非常にゆっくり変化するあるいは適用される補正値を提供するのに適したものとして開示されている。例えば、'785特許は、「タッチピン2が安静状態の位置に戻った後、論理要素23のデジタルカウンタのカウンタ状態は1だけ増減され、少なくとも1分のゆっくりとしたサイクルでステップをカウントする」と記述している。対照的に、様々な実施形態では、変位センサの静止状態の信号の変化がより急速に補正されることが望ましいかもしれない。例えば、タッチプローブの向きが変更されると、その中の変位センサの静止状態の信号は、(例えば、スタイラスの偏向の方向又は量を変える変更された重力方向により)直ちに変化することがある。検査スループットの観点から、変位センサの静止状態の信号の変化に対する補償のゆっくりとした適用を待つ間、その後のタッチプローブ測定動作を遅らせることは極めて望ましくない。
【0012】
前述の問題の一部又は全部を克服し、他の望ましい特徴を提供するために、改善されたタッチプローブ回路の様々な実施形態がここに開示される。タッチプローブ回路は、タッチトリガ信号の決定に寄与する信号を出力し、座標測定システムと共に使用されるタッチプローブの使用のために提供される。タッチプローブ回路は、変位センサと、オフセット補償制御部と、差分増幅器と、を備える。変位センサは、タッチプローブに取り付けられたスタイラスの変位に応答するセンサ信号を出力するように構成される。オフセット補償制御部は、変位センサによって出力される静止状態の信号の成分の変化を補償するために使用される可変のオフセット補償信号を提供するように構成される。補償された静止状態の信号の成分は、静止状態の間に変位センサによって出力される唯一の信号の成分であってもよいことは言うまでもないが、この信号の成分はまた、スタイラスがワークピースに接触する際に、スタイラスの偏向から生じる変位センサ信号の成分に一体となされている。それゆえ、静止状態の信号の成分の補償は、タッチプローブの「非静止」状態の動作中に継続すべきである。これにより、差分増幅器は、オフセット補償信号とセンサ信号とを入力し、それら入力信号の間の差分を増幅し、オフセット補償された変位信号としてその増幅された差分を出力するように接続されている。オフセット補償された変位信号は、タッチプローブのタッチトリガ信号の決定に寄与するようにトリガ信号決定処理回路に出力されるとともに、オフセット補償信号の調整に使用されるオフセット補償制御部にも入力される。オフセット補償制御部は、オフセット補償された変位信号を入力し、その入力に応答して、静止状態の信号の成分によるセンサ信号のオフセットを補償するように差分増幅器に入力されるローパスフィルタされたオフセット補償信号を生成するフィードバックループを提供するように構成されている。
【0013】
様々な実施形態では、タッチプローブ回路は、公称Mビット分解能で動作するアナログ/デジタル変換器(A/D変換器)を備え、差分増幅器は、オフセット補償された変位信号をA/D変換器に出力するように構成されたアナログ増幅器を備える。なお、A/D変換器は、オフセット補償された変位信号を、トリガ信号決定処理回路に出力されるとともに、オフセット補償信号の調整に使用されるオフセット補償制御部にも入力される対応するデジタルオフセット補償された変位信号に変換するように構成されている。様々な実施形態では、オフセット補償制御部は、公称Nビット分解能で動作するデジタル/アナログ変換器(D/A変換器)を備え、オフセット補償制御部は、デジタルオフセット補償された変位信号を入力し、D/A変換器に入力されるローパスフィルタされたデジタルオフセット補償信号の値を決定するように構成されたデジタル回路を備え、D/A変換器は、ローパスフィルタされたデジタルオフセット補償信号を、差分増幅器に入力される対応するアナログオフセット補償信号に変換するように構成される。様々な実施形態では、Nは少なくともMよりも2ビット大きい。様々な実施形態では、Mは少なくとも12(以上)である。様々な実施形態では、Mは少なくとも14であり、Nは少なくともMと同じである。様々な実施形態では、オフセット補償制御部は、第1のサンプルレートでデジタルオフセット補償された変位信号を入力し、第1のサンプルレートより少なくとも10倍遅い第2のサンプルレートでローパスフィルタされたデジタルオフセット補償信号を出力するように構成される。様々な実施形態では、第2のサンプルレートは、第1のサンプルレートよりも少なくとも100倍遅い。様々な実施形態では、第1のサンプルレートは少なくとも50KHzである。様々な実施形態では、オフセット補償制御部は、デジタルオフセット補償された変位信号を入力し、ローパスフィルタデジタル出力信号を出力するように構成されたデジタルローパスフィルタ構成体と、ローパスフィルタデジタル出力信号を入力し、D/A変換器に入力されるローパスフィルタされたデジタルオフセット補償信号の値を決定するように構成されたデジタル補正フィードバックコントローラと、を備える。様々な実施形態では、デジタル補正フィードバックコントローラは、ローパスフィルタデジタル出力信号の変化に応答して、比例積分コントローラとして動作するように構成される。
【0014】
様々な実施形態では、差分増幅器は、第1の遮断周波数を有する相対的に高い帯域幅を提供するように構成され、オフセット補償制御部は、第2の遮断周波数を有する相対的に低い帯域幅に対応するローパスフィルタされたオフセット補償信号を生成するように構成され、第2の遮断周波数は、第1の遮断周波数よりも少なくとも1000倍低い。様々な実施形態では、第2の遮断周波数は、第1の遮断周波数よりも少なくとも5000倍低い。様々な実施形態では、第1の遮断周波数は少なくとも5000Hzであり、第2の遮断周波数は最大で5Hzである。様々な実施形態では、第2の遮断周波数は少なくとも0.1Hzである。様々な実施形態では、オフセット補償制御部は、オフセット補償された変位信号を入力し、第2の遮断周波数を有するローパスフィルタ出力信号を出力するように構成されたローパスフィルタ構成体と、ローパスフィルタ出力信号を入力し、差分増幅器に生成され入力されるローパスフィルタされたオフセット補償信号のレベルを決定するように構成された補正フィードバックコントローラと、を備える。様々な実施形態では、補正フィードバックコントローラは、ローパスフィルタ出力信号の変化に応答して比例積分コントローラとして動作するように構成される。様々な実施形態では、タッチプローブ回路は、公称Mビット分解能で動作するアナログ/デジタル変換器(A/D変換器)を備え、差分増幅器は、オフセット補償された変位信号をA/D変換器に出力するように構成されたアナログ増幅器を備える。なお、A/D変換器は、オフセット補償された変位信号を、トリガ信号決定処理回路に出力されるとともに、オフセット補償信号の調整に使用するためにオフセット補償制御部にも入力される対応するデジタルオフセット補償された変位信号に変換するように構成されている。オフセット補償制御部は、公称Nビット分解能で動作するデジタル/アナログ変換器(D/A変換器)を備え、オフセット補償制御部は、デジタルオフセット補償された変位信号を入力し、第2の遮断周波数を有しD/A変換器に入力されるローパスフィルタされたデジタルオフセット補償信号の値を決定するように構成されたデジタル回路を備え、D/A変換器は、ローパスフィルタされたデジタルオフセット補償信号を、第2の遮断周波数を有し差分増幅器に入力される対応するアナログローパスフィルタされたオフセット補償信号に変換するように構成されている。
【0015】
様々な実施形態では、オフセット補償制御部は、更に、トリガ信号決定処理回路がワークピースに接触しているスタイラスに応答するタッチトリガ信号を出力している間、差分増幅器に入力されるローパスフィルタされたオフセット補償信号を実質的に一定に保持するように構成される。このようないくつかの実施形態では、オフセット補償制御部は、トリガ信号決定処理回路がワークピースに接触しているスタイラスに応答するタッチトリガ信号を出力したときに提供される割込み信号を受信するように構成され、差分増幅器に入力されるローパスフィルタされたオフセット補償信号を実質的に一定に保持するように、割込み信号に応答する。
【0016】
様々な実施形態では、タッチプローブ回路はタッチプローブのハウジング内に組み込まれ、トリガ信号決定処理回路の少なくとも一部はタッチプローブのハウジングの外側に配置される。他の実施形態では、複数の変位センサに対応する複数のタッチプローブ回路は、タッチプローブのハウジング内に組み込まれ、トリガ信号決定処理回路がタッチプローブのハウジング内に配置される。タッチプローブは、ワークピースに接触するスタイラスに応答するタッチトリガ信号を出力するように構成される。様々な実施形態では、変位センサは、タッチプローブ内のスタイラス懸架構成体で使用される屈曲要素に取り付けられたシリコン歪みゲージを備えることができる。しかしながら、本明細書に開示されるタッチプローブ回路及び関連する概念及び方法は、タッチプローブ回路の使用に適した他の広範なタイプの変位センサに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本明細書で開示される様々なタッチプローブ回路構成体と組み合わせて使用され得るスタイラス懸架部及びセンサ構成体の一実施形態を有するタッチプローブの断面を示す部分概略図。
図2図1に示されるタッチプローブにおいて使用可能な変位センサ構成体の一実施形態を示す部分概略図。
図3】本明細書で開示される原理に従って構成されたタッチプローブ回路の一実施形態を含む、座標測定システムに接続されたタッチプローブ電子システムの一実施形態の様々な要素を示すブロック図。
図4図3に示されるタッチプローブ回路の一実施形態の特定の態様をより詳細に示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、変位センサ構成体110及びスタイラス懸架構成体180を備えるスタイラス懸架部及びセンシングアセンブリの1つの例示的な実施形態を示すタッチプローブ100の断面を示す部分概略図である。タッチプローブ100の様々な機械的特徴は、一般に、タッチプローブ設計の当業者に知られている原理に従って提供されるので、本明細書で開示される様々なタッチプローブ回路構成体の使用のための例示的な状況(context)を提供するために、ここでは簡単に説明するのみとする。
【0019】
スタイラス懸架構成体180は、移動アセンブリ111を支持する。移動アセンブリ111は、概略的に図1に例示され、以下でより詳細に説明されるように、交換可能なスタイラスモジュール190を順に支持することができる。変位センサ構成体110は、以下でより詳細に説明されるように、(例えば、図1に表されるようなタッチプローブ回路200によって)本明細書に開示される様々なタッチプローブ回路構成体に接続され得る。
【0020】
図1に示される実施形態では、スタイラス懸架構成体180は、(例えば、図1で概略的に示されたような様々な締付け又は組立てファスナを使用することによって、又は既知の接続技術等によって)下部支持要素181とスペーシング要素184との間に接続及び/又は固定されている下部屈曲要素121を備える。スタイラス懸架構成体180は、更に、上部支持要素183とスペーシング要素184との間に同様に接続及び/又は固定されている上部屈曲要素121'を備える。スタイラス懸架構成体180は、図1で概略的に示される典型的なファスナ104のようなファスナ等によってタッチプローブのハウジング102の部分に固定される。
【0021】
図1に示される例で、移動アセンブリ111は、上部屈曲要素121'及び下部屈曲要素121から懸架されている。図示された特定の実施形態では、移動アセンブリ111は、上部固定リング113、スペーシング要素114、下部固定リング116、及び固定・捕捉要素117を含む要素の積み重ね(stack)を備える。ねじ付き固定ピン112は、上部固定リング113とスペーシング要素114との間に固定された上部屈曲要素121'と、下部固定リング116とスペーシング要素114との間に固定された下部屈曲要素121と、を持つ要素の積み重ねを軸方向に沿ってともに調整及び固定するのに使用される。下部の固定・捕捉要素117は、交換可能なスタイラスモジュール190と嵌合して支持するために、既知のタイプのキネマテック装着構成体192の磁石及び他の特徴を更に備えることができる。移動アセンブリ111の移動は、既知の手法に従って、移動アセンブリ111とタッチプローブの様々な固定面(例えば、スタイラス懸架構成体180の固定面及び/又はハウジング端部プレート102E)との間の限られた隙間によって制限される。移動アセンブリ111の移動を制限することにより、上部屈曲要素121'及び下部屈曲要素121、及び歪みゲージ120の非弾性的な撓み及び損傷が防止される。
【0022】
概略的に図示されている交換可能なスタイラスモジュール190は、オーバートラベル機構193に取り付けられたスタイラス106を備える既知のタイプとされ、予期しない力によってスタイラスの損傷を防止するために、タッチプローブ設計の既知の原理に従って、それ自体を撓ませて繰り返し再装着することができる。交換可能なスタイラスモジュール190は、移動アセンブリ111の下部の固定・捕捉要素117の対応する特徴部と嵌合するために、既知のタイプのキネマテック装着構成体192の磁石及び他の特徴部を更に備えることができる。
【0023】
スタイラス懸架構成体180の要素が(例えば、図2において下部屈曲要素121上の屈曲部分FPによって最もよく示されているように)上部屈曲要素121'及び下部屈曲要素121の屈曲部分が図1で示された屈曲空隙領域FGの近傍で支持されずに自由に曲がるように構成されていることがわかる。スタイラスは、移動アセンブリ111を介して上部屈曲要素121'及び下部屈曲要素121及び/又は屈曲部分の中央領域に接続されているので、屈曲部分は、スタイラスの接触部108がワークピースに接触したときに、スタイラス106を偏向させるように作用する力によって歪み及び/又は変位する。適切な変位センサ120(例えば、図2に最もよく示された1つの歪みゲージ120のような歪みゲージ型の変位センサ)は、歪み及び/又は変位を検出し、ワークピースに接触しているスタイラスを示す変位センサ信号(センサ信号)を提供しうる。図1に示される実施形態では、変位センサ信号が、接続122(例えば、図2に最もよく示されているフレックスプリントコネクタ)を介して変位センサ120からタッチプローブ回路200の他の要素に送信される。タッチプローブ回路200は、以下にさらに開示される様々なタッチプローブ回路の原理で構成することができる。いくつかの実施形態では、1つ以上の変位センサ120は、タッチプローブ回路200の不可欠な部分であると考えられてもよい。
【0024】
一実施形態では、タッチプローブ回路200がタッチプローブのハウジング内に組み込まれ、トリガ信号決定処理回路の少なくとも一部がタッチプローブのハウジングの外側に配置される。タッチプローブ回路200と外部トリガ信号決定処理回路との間の信号は、タッチプローブのコネクタ部103に組み込まれた電気的接続を介して、又は様々な市販のタッチプローブで既に使用されているような任意の既知の無線手段によって交換することができる。
【0025】
別の実施形態では、複数の変位センサに対応する複数のタッチプローブ回路は、(例えば、本明細書のいくつかの図面に示されるように)タッチプローブのハウジング内に組み込まれ、トリガ信号決定処理回路は、また、タッチプローブのハウジングの内部に配置され、タッチプローブはワークピースに接触しているスタイラスに応答するタッチトリガ信号を出力するように構成されている。このようなトリガ信号決定処理回路と外部のCMMホストシステム等との間の信号は、タッチプローブのコネクタ部103に組み込まれた電気的接続を介して、又は様々な市販のタッチプローブで既に使用されているような任意の既知の無線手段によって交換することができる。
【0026】
図2は、変位センサ構成体110を含む、図1に示される様々な要素の一実施形態をより詳細に示す部分概略図である。図2の特定の番号付けされた要素1XXは、図1の同様の番号付けされた対応する要素1XXと同様の動作又は機能と規定されることが理解され、類推によって、そうでなければ後述によってさらに理解される。特に、図1を参照して先に示したように、下部屈曲要素121は、薄く且つ平坦な下部屈曲要素121の歪みを防止するために、下部支持要素181に接続及び/又は固定されてもよい。しかしながら、下部支持要素181はまた、下部屈曲要素121の屈曲部分FPが(例えば、図1に最もよく見られる屈曲空隙領域FGの近傍で)支持されず、自由に曲がるように構成されている。スタイラス106は、移動アセンブリ111を介して下部屈曲要素121及び/又は屈曲部分FPの中央領域CRに接続されているので、屈曲部分FPは、スタイラス106の接触部108がワークピースに接触すると、スタイラス106を偏向させるように作用する力によって歪み及び/又は変位する。図2に示されている実施形態では、歪みゲージ型の変位センサ120−1〜120−4は、歪み及び/又は変位を検出し、ワークピースに接触するスタイラスの接触部108を示す変位センサ信号を提供する様々な屈曲部分FPに接続されている。図2に示されている実施形態では、変位センサ信号S1〜S4が、フレックスプリントコネクタ122を介して変位センサ120からタッチプローブ100内のタッチプローブ回路200の他の要素に送信される。
【0027】
図3は、ここに開示される原理に従って構成されたタッチプローブ回路200の一実施形態を含み、座標測定システム(例えば、CMMホストシステム)に接続されたタッチプローブ電子システム300の一実施形態の様々な要素を示すブロック図である。タッチプローブ電子システム300は、さらに、トリガ信号決定処理回路350の一実施形態を含む。図3の特定の番号付けされた要素2XXは、図1及び/又は図2の同様の番号付けされた対応する要素1XX又は2XXと同様の動作又は機能と規定されることが理解され、類推によって、そうでなければ後述によってさらに理解される。類似の設計及び/又は機能を有する要素を示すためのこの番号付け方法は、以下の図4に関して適用される。
【0028】
図3に示す実施形態では、タッチプローブ回路200は、複数の変位センサ220−1〜220−4と、複数の個別のオフセット補償制御部230−1〜230−4を備えるオフセット補償コントローラ230と、複数の差分増幅器DA−1〜DA−4と、を備える。同様の「X」又は「−X」指定(例えば、X=1など)を有する様々な要素が、下記の「チャネルX=1」について説明したのと同様の方法でそれぞれ動作する個々のタッチプローブ回路の「チャネル」を形成するように、図に示される接続によって示唆されるように共に作用することが理解される。
【0029】
動作中、変位センサ220−1は、タッチプローブ(例えば、タッチプローブ100)に取り付けられたスタイラス(例えば、スタイラス106)の変位に応答するセンサ信号S1を出力するように構成される。オフセット補償制御部230−1は、(例えば、いくつかの実施形態では、オフセット補償コントローラ230及び/又はオフセット補償制御部230−1の一部とみなされるD/A変換器235を介して)可変のオフセット補償信号OC1を出力するように構成されている。オフセット補償制御部230−1からの可変のオフセット補償信号OC1は、以下により詳細に説明するように、変位センサ220−1によって出力される静止状態の信号の成分の変化を補償するために使用される。差分増幅器DA1は、オフセット補償制御部230−1からのオフセット補償信号OC1と変位センサ信号S1とを入力し、入力信号の間の差を増幅するように接続されている。増幅された差は、差分増幅器DA1から(例えば、A/D変換器245を介して)オフセット補償された変位信号OCDS1として出力される。オフセット補償された変位信号OCDS1は、詳細は下記に記載されているように、タッチプローブのタッチトリガ信号(例えば、信号375T)の決定に寄与するように、A/D変換器245を介してトリガ信号決定処理回路350に出力される。オフセット補償された変位信号OCDS1は、また、出力するオフセット補償信号の調整に使用するためにオフセット補償制御部230−1に入力されるように、A/D変換器245を介して出力される。具体的には、オフセット補償制御部230−1は、オフセット補償された変位信号OCDS1を入力し、その入力に応答し、静止状態の信号の成分による変位センサ信号S1のオフセットを補償する(例えば、D/A変換器235を介して)差分増幅器DA1に入力されるローパスフィルタされたオフセット補償信号OC1を生成するフィードバックループを提供するように構成される。差分増幅器DA1でローパスフィルタされたオフセット補償信号OC1を生成し適用するこのタイプのフィードバックループを使用する利点は、変位センサ信号内でより急速に変化するワークピース接触信号の成分を分離するために変位センサ信号内でよりゆっくり変化する静止状態の信号のドリフトの成分を補償する様々な既知の従来技術の欠点と比較して、本開示の[課題を解決するための手段]のセクションで既に概説されている。
【0030】
本明細書に開示されている様々なタッチプローブ回路の動作原理の前後の説明に基づいて、タッチプローブ回路200は、電子回路設計の当業者によって、アナログ回路又はデジタル回路のいずれか、又はその組み合わせで、実現されてもよいことは言うまでもない。様々な部分的な又は完全なアナログ回路の実施形態では、D/A変換器235及び/又はA/D変換器245が省略されてもよい。しかしながら、様々な実施形態では、オフセット補償コントローラ230及び/又はオフセット補償制御部230−1のデジタル回路の実施形態は、様々な利点を有することができる。そのような実施形態では、タッチプローブ回路200は、好都合に、A/D変換器245及び/又はD/A変換器235を備えることができる。様々な実施形態では、A/D変換器245及び/又はD/A変換器235は、並列変換器チャネルを介して並列に複数のチャネルを変換することができ、又は他の実施形態では、A/D変換器245及び/又はD/A変換器235は、関連する処理時間が特定の実施形態において許容される場合、順次変換のために様々なチャネルを多重化することができる。
【0031】
様々な実施形態では、A/D変換器245は、公称Mビット分解能で動作することができる。差分増幅器DA1は、オフセット補償された変位信号OCDS1をA/D変換器245に出力するように構成されたアナログ増幅器を備える。なお、A/D変換器245は、オフセット補償された変位信号OCDS1を、トリガ信号決定処理回路350に出力されるとともに、オフセット補償信号OC1の調整に使用されるオフセット補償制御部230−1に入力される対応するデジタルオフセット補償された変位信号OCDS1に変換するように構成されている。様々な実施形態では、オフセット補償制御部230−1は、公称Nビット分解能で動作するD/A変換器235を備え、オフセット補償制御部230−1は、デジタルオフセット補償された変位信号OCDS1を入力し、D/A変換器235に入力されるローパスフィルタされたデジタルオフセット補償信号OC1の値を決定するように構成されたデジタル回路を備え、D/A変換器235は、ローパスフィルタされたデジタルオフセット補償信号OC1を、アナログ差分増幅器DA1に入力される対応するローパスフィルタされたアナログオフセット補償信号OC1に変換するように構成されている。様々な実施形態では、NがMよりも少なくとも2ビット大きいと好都合である。これは、先に示したように、タッチプローブにおける様々なタイプの変位センサ及び/又はそれらの実施形態に対して、変位センサによって出力される静止状態の信号の成分の変化(例えば、様々な種類のセンサ信号の「ドリフト」)が、スタイラスの偏向の許容量により変位センサ信号の変化をしばしば超える可能性があることから好都合である。これは、ローパスフィルタされたアナログオフセット補償信号OC1が、変位センサによって出力される大きな静止状態の信号の成分を補償するために大きな値になり得ることを意味する。対照的に、差分増幅器DA1によって提供される処理は、ローパスフィルタされたアナログオフセット補償信号OC1の大きな値をその出力から除去し、スタイラスの偏向の許容量に起因する変位センサ信号の変化に対応して相対的に小さな値の信号オフセット補償された(アナログ)変位信号OCDS1のみを出力する。その結果、D/A変換器235及びA/D変換器245から出力される信号において対等な信号分解能を提供する、及び/又はローパスフィルタ処理されたアナログオフセット補償信号OC1の分解能が不十分であることによってA/D変換器245の出力において望ましくないジャンプ又は「ディザリング(dithering)」を防止するために、NがMよりも少なくとも2ビット大きい場合に、様々な実施形態において最も経済的で且つ好都合となる。
【0032】
さらに、オフセット補償されたデジタル変位信号OCDS1において望ましいレベルの分解能を提供するために、多くの用途でMが少なくとも12であると好都合である。これは、処理効率及び経済性を犠牲にして許容可能な性能をも提供し得る択一的な実施形態を示唆している。様々な実施形態では、Mが少なくとも14であり、Nが少なくともMと同じである場合、結果として得られるオフセット補償されたデジタル変位信号OCDS1の最下位ビットは、(例えば、トリガ信号決定処理回路350で)切り捨てられるか無視される。
【0033】
トリガ信号決定処理回路350は、タッチプローブ設計の当業者に知られている原理に従って実現することができる。したがって、本明細書に開示された様々なタッチプローブ回路構成体の使用のための状況を提供するために、ここでは一実施形態で簡単に説明する。前述したように、また、図3に示されるように、タッチトリガ信号の切替閾値と比較される合成信号を提供するために、複数の変位センサ信号を組み合わせることが、様々なタッチプローブ実施形態では望ましいかもしれない。そのような実施形態は、例えば、ある経済的な懸架構成体をうまく補完することができる。したがって、図3に示すように、トリガ信号決定処理回路350は、4つの個別のオフセット補償されたデジタル変位信号OCDS1〜OSDS4を入力し、トリガ閾値処理回路352に提供される合成された変位信号を決定する信号合成処理部351を備える。トリガ閾値処理回路352は、合成された変位信号と比較される切替閾値を規定する。合成された変位信号が切替閾値を超えると、トリガ閾値処理回路352は、スタイラスがワークピースに接触したことを示すタッチトリガ信号375Tを出力する。タッチトリガ信号375Tは、例えば、I/O回路370を介してCMMホストシステムなどと通信する。そして、ホストシステム内の現在の測定値は、スタイラスの現在座標及び接触しているワークピースの表面の測定座標を示すために記録される。また、様々な実施形態では、I/O回路370はまた、ホストシステムとトリガ信号決定処理回路350及び/又はタッチプローブ回路200の様々な要素との間で他の制御信号及び/又はパラメータ375を渡すことができる。
【0034】
トリガ閾値処理回路352は、既知のタイプのヒステリシス回路353を備えることができる。ヒステリシス回路353は、合成された変位信号が切替閾値から所定量下回るまで、タッチトリガ信号375Tが除去されない、又は無効にされないように、定義された切替閾値に関してヒステリシスを実施する。これにより、スタイラスがワークピースの表面にわずかに接触/非接触しているときに、タッチトリガ信号375Tがディザリングオン/オフすることを防止される。
【0035】
トリガ信号決定処理回路350は、さらに、オフセット補償制御割込み信号生成回路354を備える。オフセット補償制御割込み信号生成回路354は、以下により詳細に説明するように、トリガ閾値処理回路352からのタッチトリガ信号375T又は関連信号を受信し、その影響を中断又はフリーズするように、割込み信号354Sをオフセット補償コントローラ230に送信する。これにより、オフセット補償コントローラ230が、変位センサ信号内の持続的なワークピース接触信号の成分による変位センサ信号の変化を補償するようには動作しないことを確実にする。なお、この変位センサ信号の変化は、不適切で望ましくないタイプの動作とされている。
【0036】
トリガ信号決定処理回路350の例示的な動作の前述の概要は、タッチプローブ設計の分野で現在利用可能な様々な関連する材料の研究及び応用に基づいてさらに理解及び実現されうる。例えば、切替閾値の定義と同様に、信号の合成処理の方法を含む一例示的なトリガ信号決定処理回路及び方法は、米国特許第7,792,654号('654特許)に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0037】
図4は、図3を参照して先に説明したタッチプローブ回路200として使用可能なタッチプローブ回路200'の一実施形態の特定の態様をより詳細に示すブロック図である。図4の特定の番号付けされた要素2XX又は2XX'は、図1図2、及び/又は図3の同様の番号付された対応する要素1XX又は2XXと同様の動作又は機能と規定されることが理解され、類推によって、そうでなければ後述によってさらに理解される。図4に示される様々な要素は、個々のタッチプローブ回路の「チャネル」を形成するための図示された接続によって示されるように共に作用することが理解される。図3を参照して先に説明したように、追加のタッチプローブ回路のチャネルは、図4に示され、以下に説明されるチャネルについて説明されたのと同様の方法でそれぞれ動作するタッチプローブに組み込むことができる。
【0038】
図4に示す実施形態では、タッチプローブ回路200'は、変位センサ220iと、オフセット補償コントローラ230'と、差分増幅器DAiと、を備える。動作中、変位センサ220iは、タッチプローブに取り付けられたスタイラス(例えばスタイラス106)の変位に応答するセンサ信号Siを出力するように構成される。オフセット補償制御部230iは、D/A変換器235'を介して可変のオフセット補償信号OCiを出力するように構成される。いくつかの実施形態では、D/A変換器235'は、以下に更に説明するように、オフセット補償制御部230i及び/又はそこに含まれるデジタル補正フィードバックコントローラ(補正フィードバックコントローラ)434の一部であるとみなされる。オフセット補償制御部230iからの可変のオフセット補償信号OCiは、変位センサ220iによって出力される静止状態の信号の成分の変化を補償するために使用される。差分増幅器DAiは、D/A変換器235'からのアナログオフセット補償信号OCiと変位センサ信号Siとを入力し、その入力信号の間の差を増幅するように接続されている。増幅された差は、(例えば、図3を参照して先に説明したように)トリガ信号処理に使用されるように、差分増幅器DAiからA/D変換器245を介してオフセット補償された変位信号OCDSiとして出力される。オフセット補償された変位信号OCDSiは、出力するオフセット補償信号OCiの調整の使用のために、オフセット補償制御部230iにも入力される。この説明によれば、オフセット補償制御部230iは、オフセット補償された変位信号OCDSiを入力し、その入力に応答して、静止状態の信号の成分による変位センサ信号Siのオフセットを補償する差分増幅器DAiに入力されるローパスフィルタされたオフセット補償信号OCiを生成するフィードバックループを提供するように構成されている。
【0039】
この特定の実施形態では、オフセット補償制御部230iは、オフセット補償されたデジタル変位信号OCDSiを入力し、ローパスフィルタデジタル出力信号LPSiを出力するように構成されたデジタルローパスフィルタ構成体431を備える。オフセット補償制御部230iは、ローパスフィルタデジタル出力信号LPSiを入力し、D/A変換器235'に入力されるローパスフィルタされたデジタルオフセット補償信号OCiの値を決定し、差分増幅器DAiに入力されるローパスフィルタされたアナログオフセット補償信号OCiとしてD/A変換器235'から出力するように構成されたデジタル補正フィードバックコントローラ434をさらに備える。図4に示す特定の実施形態では、デジタル補正フィードバックコントローラ434は、ローパスフィルタデジタル出力信号LPSiの変化に応答して比例積分コントローラとして動作するように構成される。図示のように、ローパスフィルタデジタル出力信号LPSiは、デジタル補正フィードバックコントローラ434に入力され、ローパス差分信号LPDSiは、規定された基準レベル436に対して決定される。ローパス差分信号LPDSiは、既知のタイプのデジタル比例積分コントローラ(PIコントローラ)437(例えば、既知の方法に従ってアナログPIコントローラ上でモデル化されたIIR型PIコントローラ)に入力される。PIパラメータは、オフセット補償信号のループ安定性と、十分に速い設定時間と、良好な精度との間の所望のトレードオフを提供するための試行錯誤と分析によって選定することができる。図示された実施形態では、PIコントローラ437は、ローパスフィルタされたデジタルオフセット補償信号OCiの値を決定する。なお、ローパスフィルタされたデジタルオフセット補償信号OCiは、シリアライザ438を介してD/A変換器235'に伝送される。デジタル補正フィードバックコントローラ434のこの構成体は例示的なものに過ぎず、限定するものではないことは言うまでもない。
【0040】
デジタルローパスフィルタ構成体431の動作に関して、まず、差分増幅器DAiが第1の遮断周波数を有する相対的に高い帯域幅を提供するように構成され、オフセット補償コントローラ230'が第2の遮断周波数を有する相対的に低い帯域幅に対応するローパスフィルタされたオフセット補償信号OCiを生成するように構成されることが、様々な実施形態において利点を有することを特に言及する。例えば、いくつかの実施形態では、変位センサ信号におけるよりゆっくり変化する静止状態の信号のドリフトの成分を補償し、変位センサ信号におけるより急速に変化するワークピース接触信号の成分を分離し増幅するために、第2の遮断周波数は、第1の遮断周波数よりも少なくとも1000倍低くすることができる。例えば(差分増幅器DAiの)第1の遮断周波数は少なくとも5000Hz、(オフセット補償コントローラ230'の)第2の遮断周波数は最大で5Hzであってもよい。他の実施形態では、第2の遮断周波数が第1の遮断周波数よりも少なくとも5000倍、又はそれ以上低いと好都合である。例えば、(差分増幅器DAiの)第1の遮断周波数は少なくとも10000Hz、(オフセット補償コントローラ230'の)第2の遮断周波数は最大で2Hzであってもよい。様々な実施形態では、第2の遮断周波数は、様々な望ましくない「よりゆっくりと変化する」静止状態の信号のドリフトの成分が補償されることを保証するために、少なくとも0.1Hzであってもよい。
【0041】
図4に示されている実施形態では、デジタルローパスフィルタ構成体431の動作は、上で概説した有利な特徴を提供することができる。様々な実施形態では、デジタルローパスフィルタ構成体431は、信号オフセット補償されたデジタル変位信号OCDSiのエイリアシング(aliasing:折り返し雑音)を防止するのに十分である第1の 「高」サンプルレート(例えば50KHz、又は100KHzのサンプルレートは、容易に実現できる)でデジタルオフセット補償された変位信号を入力するように構成される。デジタルローパスフィルタ構成体431は、カウンタ432B及び所望のサンプルレートで可能とされた既知のタイプのデジタルローパスフィルタ432A(例えば、3次バターワースIIRフィルタ)を備えるデシメータ432を含む「第1段」を有することができる。デシメータ432は、「第2段」のローパスフィルタ433に「中間」のローパス出力(例えば、100Hzという中間的に有効な遮断周波数を有する)を提供するように構成することができる。ローパスフィルタ433は、「中間」のローパス出力(例えば600Hz)のエイリアシングを防止するのに十分である低減された「低」サンプルレートで「中間」のローパス出力を入力するように構成されている。これは、カウンタ432Bから供給される低減された「低」サンプルレートのイネーブル信号によって確立される。いくつかの実施形態では、デジタルローパスフィルタ433は、前述のデジタルローパスフィルタ432Aと同様の既知のタイプとすることができる。デジタルローパスフィルタ433は、所望のローパス遮断周波数(例えば、少なくとも0.5Hzで、最大5Hz、又は2Hz、又は1Hzなど)を有する「最終」のローパス出力を提供することができる。デジタルローパスフィルタ構成体431は、オフセット補償信号OCiに他の望ましくない影響を及ぼす可能性のあるより低い周波数への、より高い周波数の信号(例えば、振動による)のエイリアシングを防止する。
【0042】
デジタルローパスフィルタ構成体431は、第1のサンプルレート(低サンプルレート)よりも少なくとも10倍、又はさらに100倍又はそれ以上遅い第2のサンプルレート(低サンプルレート)でローパスフィルタデジタル出力信号LPSiを出力することが、上の説明から明らかである。デジタル補正フィードバックコントローラ434及びD/A変換器235'は、同じ低サンプルレートで動作することもできる。なお、同じ低サンプルレートであることで、デジタル補正フィードバックコントローラ434及び/又はオフセット補償コントローラ230'の設計を単純化することができる。
【0043】
様々な実施形態では、図3を参照して先に概説した原理及び関係に従って、A/D変換器245'は公称Mビット分解能で動作し、D/A変換器235'は公称Nビット分解能で動作する。
【0044】
様々な実施形態では、オフセット補償コントローラ230'は、さらに、オフセット補償割込み回路439を備えるように構成される。なお、オフセット補償割込み回路439は、前に概説した割込み信号354Sなどを受信し、トリガ信号決定処理回路がワークピースに接触しているスタイラスに応答するタッチトリガ信号を出力している間に、差分増幅器に入力されるローパスフィルタされたオフセット補償信号OCiを実質的に一定に保持するオフセット補償コントローラ230'を制御するように構成されている。いくつかのこのような実施形態では、オフセット補償割込み回路439は、ローパスフィルタ433に供給される低サンプルレートのイネーブル信号を遮断することによって、割込み信号354Sなどに応答するように構成される。ローパスフィルタ433は、ローパスフィルタ433が効果的にローパスフィルタデジタル出力信号LPSiを一定値に保持するように構成され、その際に、デジタル補正フィードバックコントローラ434は、ローパスフィルタされたオフセット補償信号OCiを所望の一定値で保持することによって応答する。割込み信号354S等が終了すると、オフセット補償割込み回路439は、ローパスフィルタ433に供給される低サンプルレートのイネーブル信号の遮断解除をし、先に概説されたオフセット補償コントローラ230'の可変の補償動作が再開される。
【0045】
様々な実施形態では、変位センサは、タッチプローブ内のスタイラス懸架構成体で使用される屈曲要素に取り付けられたシリコン歪みゲージを備えることができる。しかしながら、本明細書に開示されるタッチプローブ回路と関連する概念と方法とは、タッチプローブ回路での使用に適した広範な他のタイプの変位センサに適用可能である。
【0046】
本開示の好ましい実施形態を図示し記載してきたが、図示され記載された特徴の構成及び動作シーケンスの多くの変形は本開示に基づいて当業者には明らかである。例えば、様々な実施形態では、変位センサは、本明細書に示すタッチプローブ内のスタイラス懸架構成体で使用される屈曲要素に取り付けられたシリコン歪みゲージを備えることができる。しかしながら、本明細書で開示されるタッチプローブ回路と関連する概念と方法とは、それに限定されず、むしろ、タッチプローブ回路での使用に適した広範な他のタイプの変位センサに適用可能である。その変位センサとしては、歪みゲージ、圧電要素、又は光学的、静電容量式、磁気式又は誘導式の変位センサの他のタイプを含むが限定されない。
【0047】
様々な代替形態が、本明細書に開示された原理を実施するために使用されてもよい。加えて、上記の様々な実施形態は、さらなる実施形態を提供するように組み合わせることができる。本明細書で参照される全ての米国特許及び米国特許出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。必要に応じて、さらなる実施形態を提供するために様々な特許及び出願の概念を採用するために、実施形態の態様を変更することができる。
【0048】
2015年12月22日に出願された米国特許出願第62/271,082号の開示は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0049】
これらの変更及び他の変更は、上記の詳細な説明に照らして実施形態に対して行うことができる。一般に、以下の特許請求の範囲において、使用される用語は特許請求の範囲を明細書及び特許請求の範囲に開示された特定の実施形態に限定するものと解釈されるべきではなく、このような特許請求の範囲が権利を与えるような均等物の全範囲と共にすべての可能な実施形態を含むように解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4