特許第6727902号(P6727902)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本放送協会の特許一覧

特許6727902参照フレーム生成装置、動き推定装置、及びプログラム
<>
  • 特許6727902-参照フレーム生成装置、動き推定装置、及びプログラム 図000003
  • 特許6727902-参照フレーム生成装置、動き推定装置、及びプログラム 図000004
  • 特許6727902-参照フレーム生成装置、動き推定装置、及びプログラム 図000005
  • 特許6727902-参照フレーム生成装置、動き推定装置、及びプログラム 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6727902
(24)【登録日】2020年7月3日
(45)【発行日】2020年7月22日
(54)【発明の名称】参照フレーム生成装置、動き推定装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 19/117 20140101AFI20200713BHJP
   H04N 19/137 20140101ALI20200713BHJP
   H04N 19/17 20140101ALI20200713BHJP
   H04N 19/59 20140101ALI20200713BHJP
   H04N 19/82 20140101ALI20200713BHJP
【FI】
   H04N19/117
   H04N19/137
   H04N19/17
   H04N19/59
   H04N19/82
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-86441(P2016-86441)
(22)【出願日】2016年4月22日
(65)【公開番号】特開2017-195579(P2017-195579A)
(43)【公開日】2017年10月26日
【審査請求日】2019年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(72)【発明者】
【氏名】松尾 康孝
(72)【発明者】
【氏名】根本 慎平
(72)【発明者】
【氏名】境田 慎一
(72)【発明者】
【氏名】神田 菊文
【審査官】 坂東 大五郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−535901(JP,A)
【文献】 国際公開第03/047270(WO,A1)
【文献】 特開2011−223293(JP,A)
【文献】 特開2015−180040(JP,A)
【文献】 特開2005−151131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 19/00−19/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原画像列から1の参照フレームを入力し、複数の新参照フレームを出力する参照フレーム生成装置であって、
前記参照フレーム及び前記原画像列の基準フレームの深度、及びカメラの画角から、前記参照フレームに対する前記基準フレームのオブジェクトの変倍率を求めるとともに、前記深度、及びカメラの被写界深度から、前記参照フレームから前記基準フレームへのオブジェクトの被写界深度に対する奥行方向の動きを推定する奥行方向動き推定部と、
前記参照フレームに対して、前記変倍率での変倍処理を伴う1回以上の幾何変換処理を行い、1以上の幾何変換画像を生成する幾何変換処理部と、
前記幾何変換処理に対して、カットオフ周波数を変えてそれぞれ1回以上の低域通過型のフィルタ処理を行い、1以上のフィルタ処理画像を生成して新参照フレームとして出力するフィルタ処理部と、
前記幾何変換処理に対して、付加する高周波帯域を変えてそれぞれ1回以上の超解像処理を行い、1以上の超解像処理画像を生成して新参照フレームとして出力する超解像処理部と、を備え
前記フィルタ処理部は、前記奥行方向動き推定部によりオブジェクトが被写界深度の内から外に動いたと判定された場合には、前記基準フレームのオブジェクトが被写界深度から外れた距離が大きいほど前記カットオフ周波数を低く設定し、
前記超解像処理部は、前記奥行方向動き推定部によりオブジェクトが被写界深度の外から内に動いたと判定された場合には、前記参照フレームのオブジェクトが被写界深度から外れた距離が大きいほど前記付加する高周波帯域を高く設定することを特徴とする参照フレーム生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の参照フレーム生成装置と、
前記1以上のフィルタ処理画像及び前記1以上の超解像処理画像を参照フレームとして、前記原画像列の基準フレームとの間の動きベクトルを検出する動き推定部と、
を備えることを特徴とする動き推定装置。
【請求項3】
コンピュータを、請求項1に記載の参照フレーム生成装置として機能させるためのプログラム。
【請求項4】
コンピュータを、請求項に記載の動き推定装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新たな参照フレームを生成する参照フレーム生成装置、動き推定装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
映像符号化におけるインター符号化では、符号化効率を高めるために、フレーム間の動き推定(動き検出)の結果を用いた動き補償を行う。この動き推定では、ハードウェア化の容易さなどの理由により、一般にブロックマッチング法が用いられる。ただし、ブロックマッチング法は、回転や奥行方向の動き推定の確度が低い。そのため、幾何変換を伴う動き推定法が提案されている(例えば、非特許文献1及び2参照)。
【0003】
また、超解像処理を利用して符号化を行う手法が知られている。例えば、特許文献1には、超解像処理を利用して分散映像符号化(Distributed Video Coding)を行う手法が記載されている。具体的には、原画像列を数フレームおきにJPEGなどの従来のイントラ符号化方式で符号化してこれをKeyフレームとし、それ以外のフレームをWyner-Zivフレームとし、これらは量子化後にSlepian-Wolf符号化によりパリティシンドロームビットを生成して伝送する。さらに符号化側では、まずKeyフレームを局部復号し、Wyner-Zivフレームの予測信号を生成してサイドインフォメーションとする。復号側ではサイドインフォメーションにパリティシンドロームを用いて誤り訂正を行う。また、復号化されたキーフレームとWyner-Zivフレームとを利用して、並進領域に超解像処理を適用することにより予測効率を向上させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5484378号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】R. Takada, S. Orihashi, Y. Matsuo, and J. Katto, "Improvement of 8K UHDTV Picture Quality for H.265/HEVC by Global Zoom Estimation using Motion Vectors", Proceedings of IEEE ICCE, pp. 64-65, 2015
【非特許文献2】VCEG C1016, Huawei technologies Co. Ltd., "Affine transform prediction for next generation video coding", Video Coding Experts Group - C1016
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の幾何変換を伴う動き推定では、オブジェクトの奥行方向の動きにおいて、被写界深度の内から外への動きを伴う場合に発生するぼやけや、被写界深度の外から内への動きを伴う場合に発生する先鋭化により、動き推定の確度が低くなる。仮に、確度が高い検出ができたとしても、動き補償時の差分情報量が大きくなりがちである。
【0007】
また、特許文献1の手法では、超解像処理により予測効率を向上させることができるが、被写界深度を考慮していないため、奥行方向の動きに対する動き推定の確度を向上させるものではない。
【0008】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、奥行方向の動きに対する動き推定の確度を向上させるための参照フレームを生成する参照フレーム生成装置、該参照フレームを用いて動き推定を行う動き推定装置、及びそれらのプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る参照フレーム生成装置は、原画像列から1の参照フレームを入力し、複数の新参照フレームを出力する参照フレーム生成装置であって、前記参照フレーム及び前記原画像列の基準フレームの深度、及びカメラの画角から、前記参照フレームに対する前記基準フレームのオブジェクトの変倍率を求めるとともに、前記深度、及びカメラの被写界深度から、前記参照フレームから前記基準フレームへのオブジェクトの被写界深度に対する奥行方向の動きを推定する奥行方向動き推定部と、前記参照フレームに対して、前記変倍率での変倍処理を伴う1回以上の幾何変換処理を行い、1以上の幾何変換画像を生成する幾何変換処理部と、前記幾何変換処理に対して、カットオフ周波数を変えてそれぞれ1回以上の低域通過型のフィルタ処理を行い、1以上のフィルタ処理画像を生成して新参照フレームとして出力するフィルタ処理部と、前記幾何変換処理に対して、付加する高周波帯域を変えてそれぞれ1回以上の超解像処理を行い、1以上の超解像処理画像を生成して新参照フレームとして出力する超解像処理部と、を備え、前記フィルタ処理部は、前記奥行方向動き推定部によりオブジェクトが被写界深度の内から外に動いたと判定された場合には、前記基準フレームのオブジェクトが被写界深度から外れた距離が大きいほど前記カットオフ周波数を低く設定し、前記超解像処理部は、前記奥行方向動き推定部によりオブジェクトが被写界深度の外から内に動いたと判定された場合には、前記参照フレームのオブジェクトが被写界深度から外れた距離が大きいほど前記付加する高周波帯域を高く設定することを特徴とする。
【0014】
また、上記課題を解決するため、本発明に係る動き推定装置は、上記参照フレーム生成装置と、前記1以上のフィルタ処理画像及び前記1以上の超解像処理画像を参照フレームとして、前記基準フレームとの間の動きベクトルを検出する動き推定部と、を備えることを特徴とする。
【0015】
また、上記課題を解決するため、本発明に係るプログラムは、コンピュータを、上記参照フレーム生成装置として機能させることを特徴とする。
【0016】
また、上記課題を解決するため、本発明に係るプログラムは、コンピュータを、上記動き推定装置として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、奥行方向の動きに対する動き推定の確度を向上させるための参照フレームを生成することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1の実施形態に係る参照フレーム生成装置の構成例を示すブロック図である。
図2】本発明の第2の実施形態に係る参照フレーム生成装置の構成例を示すブロック図である。
図3】本発明の第3の実施形態に係る参照フレーム生成装置の構成例を示すブロック図である。
図4】本発明の第4の実施形態に係る動き推定装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態に係る参照フレーム生成装置について説明する。図1に、本発明の第1の実施形態に係る参照フレーム生成装置の構成例を示す。図1に示す例では、参照フレーム生成装置10は、幾何変換処理部101と、フィルタ処理部102と、超解像処理部103とを備える。
【0021】
参照フレーム生成装置10は、基準フレーム及び複数の参照フレームからなる原画像列から1の参照フレームを入力し、複数の新たな参照フレーム(新参照フレーム)を生成して出力する。
【0022】
幾何変換処理部101は、入力された参照フレームに対して、変倍率を含む幾何変換パラメータを変えて1回以上(n回)の幾何変換処理を行い、1以上(n枚)の幾何変換画像(幾何変換画像群)を生成する。そして、幾何変換画像群をフィルタ処理部102及び超解像処理部103に出力する。例えば、幾何変換処理部101は、アフィン変換により回転、変倍(拡大縮小)、及びスキューを行う。式(1)にアフィン変換の式を示す。ここで、(u,v)は変換前の水平・垂直座標であり、(u’,v’)は変換後の水平・垂直座標である。また、回転角θ、水平・垂直方向の変倍率(sx,sy)、スキュー角δを幾何変換パラメータとする。幾何変換画像群は、参照フレーム生成装置10に入力される参照フレームに対して、奥方向の動きを模擬して縮小された画像、及び手前方向の動きを模擬して拡大された画像を含む。
【0023】
【数1】
【0024】
フィルタ処理部102は、幾何変換処理部101により生成された幾何変換画像に対して、カットオフ周波数を変えてそれぞれ1回以上(j回)の低域通過型のフィルタ処理を行い、1以上(n×j枚)のフィルタ処理画像(フィルタ処理画像群)を生成する。そして、フィルタ処理画像群を新参照フレームとして外部に出力する。フィルタ処理画像群は、参照フレーム生成装置10に入力される参照フレームに対して、高周波成分が除去されたぼやけた画像となる。
【0025】
超解像処理部103は、幾何変換処理部101により生成された幾何変換画像に対して、付加する高周波帯域を変えてそれぞれ1回以上(k回)の超解像処理を行い、1以上(n×k枚)の超解像処理画像(超解像処理画像群)を生成する。そして、超解像処理画像群を新参照フレームとして外部に出力する。超解像処理には既知の任意の処理を用いることができ、例えば、特許第5417290号公報に記載の超解像処理を用いることができる。超解像処理画像群は、参照フレーム生成装置10に入力される参照フレームに対して、ナイキスト周波数を超える高周波成分が付加された先鋭化した画像となる。
【0026】
参照フレーム生成装置10から出力されるフィルタ処理画像群及び超解像処理画像群は、インター符号化の参照フレームとして用いることができる。一例として、HEVC(High Efficiency Video Coding)/H.265方式のインター符号化で用いる場合には、基準フレームと参照フレームとの距離は、Low-delayモードで1フレーム、Random accessモードで8フレーム程度(ただし、設定値による)である。そのため、幾何変換処理部101における幾何変換処理では、それほど大きな値の回転、変倍、スキュー処理を行う必要はない。例えば、回転角θを{−π/8,0,π/8}とし、変倍率sx,syを{0.75,1.0,1.25}とし、スキュー角δを{−π/8,0,π/8}とする。
【0027】
また、フィルタ処理部102におけるフィルタ処理も、カットオフ周波数をそれほど小さくする必要はない。例えば、カットオフ周波数を、原画像列のナイキスト周波数の{1,0.8,0.6}倍とする。また、超解像処理部103における超解像処理も、それほど幾何変換画像のナイキスト周波数を超える高周波成分を付加する必要はない。
【0028】
なお、上述した参照フレーム生成装置10として機能させるためにコンピュータを好適に用いることができ、そのようなコンピュータは、参照フレーム生成装置10の各機能を実現する処理内容を記述したプログラムを該コンピュータの記憶部に格納しておき、該コンピュータのCPUによってこのプログラムを読み出して実行させることで実現することができる。なお、このプログラムは、コンピュータ読取り可能な記録媒体に記録可能である。
【0029】
このように、参照フレーム生成装置10及びそのプログラムは、元の参照フレームに対して変倍処理及び低域通過型のフィルタ処理を行ったフィルタ処理画像群と、元の参照フレームに対して変倍処理及び超解像処理を行った超解像処理画像群とを生成する。そのため、被写界深度の内から外への奥行方向への動き、及び被写界深度の外から内への奥行方向への動きを考慮した参照フレームの候補を増やすことができ、すなわち奥行方向の動きに対する動き推定の確度を向上させるための参照フレームを生成することができる。
【0030】
(第2の実施形態)
つぎに、本発明の第2の実施形態に係る参照フレーム生成装置について説明する。図2に、本発明の第2の実施形態に係る参照フレーム生成装置の構成例を示す。図2に示す例では、参照フレーム生成装置11は、幾何変換処理部101と、フィルタ処理部102と、超解像処理部103と、奥行方向動き推定部104とを備える。第2の実施形態の参照フレーム生成装置11は第1の実施形態の参照フレーム生成装置10と比較して、奥行方向動き推定部104を更に備える点が相違する。
【0031】
奥行方向動き推定部104は、基準フレーム及び参照フレームを入力し、基準フレームと参照フレームとの間で奥行方向の動き推定を行い、参照フレームから基準フレームへのオブジェクトの奥行方向の動きを示す奥行方向動き推定情報を生成する。そして、奥行方向動き推定情報を幾何変換処理部101に出力する。なお、手前方向に動くオブジェクトと奥方向に動くオブジェクトとが混在している場合には、総合的にどちらの方向に動くオブジェクトが多いか判断する。また、オブジェクトの奥行方向への動きが閾値以下である場合には、オブジェクトの奥行方向の動きがないことを示す情報を奥行方向動き推定情報として出力してもよい。
【0032】
奥行方向の動き推定は、パーティクルフィルタを用いる手法などの、奥行方向の動きに頑健な手法を用いるのが好適である。パーティクルフィルタは、重み付き確率分布による時系列データの1フレームごとの遷移を予測するものである。パーティクルフィルタではオブジェクトの大域的な追跡を行い、オブジェクトの大域的な大きさの変化(オブジェクトの周りを四角で囲う形で表現される)を推定することが可能である。この大きさが大きくなれば手前方向、小さくなれば奥方向への動きが発生したと推定する。なお、パーティクルフィルタの詳細については、例えば、Artech House Publishers, "Beyond the Kalman Filter: Particle Filters for Tracking Applications" (ISBN 978-1-58083-631-8)を参照されたい。
【0033】
また、奥行方向の動き推定として、奥行方向の動きに頑健なSURF(Speeded-Up Robust Features)特徴量のマッチングを行う手法や、SIFT(Scale-Invariant Feature Transform)特徴量のマッチングを行う手法を用いてもよい。なお、SURFの詳細については、例えば、H. Bay, A. Ess, T. Tuytelaars, and L. V. Gool, "Speeded-Up Robust Features (SURF)", Elsevier, vol. 110, Issue 3, p. 346-359, Jun. 2008を参照されたい。
【0034】
また、原画像列を撮像したカメラがRGB−Dセンサを搭載しており、該カメラがRGB−Dセンサから被写体までの深度(Depth)、すなわち撮影距離を画素単位で数画素おきに検出している場合がある。この場合には、奥行方向動き推定部104は、カメラから参照フレーム及び基準フレームの深度を取得して、該深度を用いてオブジェクトの奥行方向の動きを推定してもよい。
【0035】
幾何変換処理部101は、奥行方向動き推定部104により生成された奥行方向動き推定情報が、オブジェクトが奥方向に動いていることを示している場合には、縮小を伴う幾何変換処理を行う。また、奥行方向動き推定情報が、オブジェクトが手前方向に動いていることを示す場合には、拡大を伴う幾何変換処理を行う。
【0036】
フィルタ処理部102及び超解像処理部103の処理は、第1の実施形態と同じである。なお、奥行方向動き推定情報が、オブジェクトの奥行方向の動きがないことを示している場合には、フィルタ処理部102によるフィルタ処理、及び超解像処理部103による超解像処理を行わず、幾何変換処理部101により生成された幾何変換画像をそのまま出力する。
【0037】
なお、上述した参照フレーム生成装置11として機能させるためにコンピュータを好適に用いることができ、そのようなコンピュータは、参照フレーム生成装置11の各機能を実現する処理内容を記述したプログラムを該コンピュータの記憶部に格納しておき、該コンピュータのCPUによってこのプログラムを読み出して実行させることで実現することができる。なお、このプログラムは、コンピュータ読取り可能な記録媒体に記録可能である。
【0038】
このように、参照フレーム生成装置11及びそのプログラムは、原画像列の奥行方向の動き推定を行い、その結果に基づいて幾何変換処理を行う。そのため、生成した新参照フレームは、より基準フレームとの差分が少ない画像となるため、より奥行方向の動きに対する動き推定の確度を向上させるための参照フレームを生成することができる。
【0039】
(第3の実施形態)
つぎに、本発明の第3の実施形態に係る参照フレーム生成装置について説明する。図3に、本発明の第3の実施形態に係る参照フレーム生成装置の構成例を示す。図3に示す例では、参照フレーム生成装置12は、幾何変換処理部101と、フィルタ処理部102と、超解像処理部103と、奥行方向動き推定部104とを備える。第3の実施形態の参照フレーム生成装置12は第2の実施形態の参照フレーム生成装置11と比較して、備える構成ブロックは同じであるが、カメラパラメータを用いた処理を行う点が相違する。
【0040】
参照フレーム生成装置12は、参照フレーム、基準フレーム、及びカメラパラメータを入力する。カメラパラメータは、参照フレーム及び基準フレームの深度に加え、カメラの画角及び被写界深度を含む。
【0041】
奥行方向動き推定部104は、参照フレーム及び基準フレームの深度、及びカメラの画角から、参照フレームに対する基準フレームのオブジェクトの変倍率を求め、幾何変換処理部101に出力する。なお、奥行方向動き推定部104は、カメラの被写界深度を、レンズの焦点距離、絞り値、及びセンサーサイズから算出してもよい。
【0042】
また、奥行方向動き推定部104は、参照フレーム及び基準フレームの深度、及びカメラの被写界深度から、参照フレームから基準フレームへのオブジェクトの被写界深度に対する奥行方向の動きを推定する。すなわち、参照フレームから基準フレームに対してオブジェクトがカメラの被写界深度の内から外に動いたか、あるいは被写界深度の外から内に動いたかを判定する。そして、判定結果をフィルタ処理部102及び超解像処理部103に出力する。
【0043】
幾何変換処理部101は、入力された参照フレームに対して、奥行方向動き推定部104により求められた変倍率の変倍処理を伴う1回以上の幾何変換処理を行って幾何変換画像群を生成し、フィルタ処理部102及び超解像処理部103に出力する。上述した式(1)を用いて幾何変換処理を行う場合には、奥行方向動き推定部104により求められた変倍率を、水平・垂直方向の変倍率(sx,sy)に設定する。
【0044】
フィルタ処理部102は、奥行方向動き推定部104によりオブジェクトがカメラの被写界深度の内から外に動いたと判定された場合には、基準フレームのオブジェクトが被写界深度から外れた距離が大きいほどカットオフ周波数を低く設定し、幾何変換処理部101により生成された幾何変換画像に対して1回以上の低域通過型のフィルタ処理を行い、フィルタ処理画像群を生成する。そして、フィルタ処理画像群を新参照フレームとして外部に出力する。なお、奥行方向動き推定部104によりオブジェクトが被写界深度の内から外に動いていないと判定された場合には、フィルタ処理は行わない。
【0045】
超解像処理部103は、奥行方向動き推定部104によりオブジェクトがカメラの被写界深度の外から内に動いたと判定された場合には、参照フレームのオブジェクトが被写界深度から外れた距離が大きいほど付加する高周波成分を高く設定し、幾何変換処理部101により生成された幾何変換画像に対して1回以上の超解像処理を行い、超解像処理画像群を生成する。なお、奥行方向動き推定部104によりオブジェクトが被写界深度の外から内に動いていないと判定された場合には、超解像処理は行わない。
【0046】
なお、上述した参照フレーム生成装置12として機能させるためにコンピュータを好適に用いることができ、そのようなコンピュータは、参照フレーム生成装置12の各機能を実現する処理内容を記述したプログラムを該コンピュータの記憶部に格納しておき、該コンピュータのCPUによってこのプログラムを読み出して実行させることで実現することができる。なお、このプログラムは、コンピュータ読取り可能な記録媒体に記録可能である。
【0047】
このように、参照フレーム生成装置12及びそのプログラムは、カメラパラメータを用いて変倍率を求めるとともにオブジェクトが被写界深度の内から外に動いたか否かを判定する。そして、その結果に従って変倍処理、フィルタ処理、及び超解像処理を行うため、より奥行方向の動きに対する動き推定の確度を向上させるための参照フレームを生成することができる。
【0048】
(第4の実施形態)
つぎに、本発明の第4の実施形態に係る動き推定装置について説明する。図4に、本発明の第4の実施形態に係る動き推定装置の構成例を示す。図4に示す例では、動き推定装置1は、参照フレーム生成装置10,11,又は12と、動き推定部20とを備える。
【0049】
参照フレーム生成装置10,11,又は12は、上述したようにフィルタ処理画像群及び超解像処理画像群(新参照フレーム)を生成する。そして、新参照フレームを動き推定部20に出力する。
【0050】
動き推定部20は、参照フレーム生成装置10,11,又は12により生成されたフィルタ処理画像群及び超解像処理画像群(新参照フレーム)を参照フレームとして、基準フレームとの間で動き推定を行って動きベクトルを検出し、外部に出力する。動き推定は、ブロックマッチング法などの従来の任意の手法を用いて行うことができる。
【0051】
なお、上述した動き推定装置1として機能させるためにコンピュータを好適に用いることができ、そのようなコンピュータは、動き推定装置1の各機能を実現する処理内容を記述したプログラムを該コンピュータの記憶部に格納しておき、該コンピュータのCPUによってこのプログラムを読み出して実行させることで実現することができる。なお、このプログラムは、コンピュータ読取り可能な記録媒体に記録可能である。
【0052】
このように、動き推定装置1及びそのプログラムは、奥行方向への動きを考慮した新参照フレームを用いて動き推定を行う。そのため、奥行方向の動きに対する動き推定の確度を向上させることができる。
【0053】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。例えば、実施形態に記載の複数の構成ブロックを1つに組み合わせたり、あるいは1つの構成ブロックを分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 動き推定装置
10,11,12 参照フレーム生成装置
20 動き推定部
101 幾何変換処理部
102 フィルタ処理部
103 超解像処理部
104 奥行方向動き推定部
図1
図2
図3
図4