(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、例えば、本発明の塩化ビニル樹脂成形体を形成する際に用いることができる。また、本発明の塩化ビニル樹脂組成物を用いて形成した塩化ビニル樹脂成形体は、例えば、当該塩化ビニル樹脂成形体を有する本発明の積層体の製造に用いることができる。そして、本発明の塩化ビニル樹脂成形体は、例えば、自動車インスツルメントパネルの表皮用など、自動車内装材用として好適に用いることができる。
【0019】
(塩化ビニル樹脂組成物)
本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、(a)塩化ビニル樹脂と、(b)可塑剤と、(c)有機マイクロバルーンと、を含むことを特徴とする。また、本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、上記成分に加え、任意に、添加剤などを更に含有しても良い。そして、本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、上記所定の成分を含むため、得られる塩化ビニル樹脂成形体の引張強さを確保しつつ、塩化ビニル樹脂成形体を軽量化することができる。その結果、例えば当該塩化ビニル樹脂成形体を自動車のインスツルメントパネルの表皮として採用した際に、当該表皮の物理的強度を確保しつつ、当該自動車を軽量化することができる。
【0020】
<(a)塩化ビニル樹脂>
ここで、塩化ビニル樹脂組成物に用いられる(a)塩化ビニル樹脂としては、例えば、1種類又は2種類以上の塩化ビニル樹脂粒子を含有することができ、任意に、1種類又は2種類以上の塩化ビニル樹脂微粒子を更に含有することができる。中でも、(a)塩化ビニル樹脂は、少なくとも塩化ビニル樹脂粒子を含有することが好ましく、塩化ビニル樹脂粒子および塩化ビニル樹脂微粒子を含有することがより好ましく、1種類の塩化ビニル樹脂粒子および2種類の塩化ビニル樹脂微粒子を含有することが更に好ましい。
なお、本明細書において、「樹脂粒子」とは、粒子径が30μm以上の粒子を指し、「樹脂微粒子」とは、粒子径が30μm未満の粒子を指す。
また、(a)塩化ビニル樹脂は、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法、塊状重合法など、従来から知られているいずれの製造法によっても製造され得る。
【0021】
<<組成>>
(a)塩化ビニル樹脂としては、塩化ビニル単量体単位からなる単独重合体の他、塩化ビニル単量体単位を好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上含有する塩化ビニル系共重合体が挙げられる。塩化ビニル系共重合体を構成し得る、塩化ビニル単量体と共重合可能な単量体(共単量体)の具体例としては、エチレン、プロピレンなどのオレフィン類;塩化アリル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、三フッ化塩化エチレンなどのハロゲン化オレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル類;イソブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アリル−3−クロロ−2−オキシプロピルエーテル、アリルグリシジルエーテルなどのアリルエーテル類;アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジエチル、無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸、そのエステルまたはその酸無水物類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル類;アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライドなどのアクリルアミド類;アリルアミン安息香酸塩、ジアリルジメチルアンモニウムクロライドなどのアリルアミンおよびその誘導体類;などが挙げられる。以上に例示される単量体は、共単量体の一部に過ぎず、共単量体としては、近畿化学協会ビニル部会編「ポリ塩化ビニル」日刊工業新聞社(1988年)第75〜104頁に例示されている各種単量体が使用され得る。これらの共単量体は、1種のみを用いても良く、2種以上を用いても良い。なお、上記(a)塩化ビニル樹脂には、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、塩素化ポリエチレンなどの樹脂に、(1)塩化ビニルまたは(2)塩化ビニルと前記共単量体とがグラフト重合された樹脂も含まれる。
ここで、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味する。
【0022】
<<塩化ビニル樹脂粒子>>
塩化ビニル樹脂組成物において、塩化ビニル樹脂粒子は、通常、マトリックス樹脂(基剤)として機能する。なお、塩化ビニル樹脂粒子は、懸濁重合法により製造することが好ましい。
【0023】
[平均重合度]
ここで、塩化ビニル樹脂粒子の平均重合度は、500以上が好ましく、1000以上がより好ましく、1500以上が更に好ましく、5000以下が好ましく、3000以下がより好ましく、2500以下が一層好ましい。塩化ビニル樹脂粒子の平均重合度が上記下限以上であれば、塩化ビニル樹脂組成物を用いて形成した塩化ビニル樹脂成形体の物理的強度を十分確保できるからである。また、塩化ビニル樹脂粒子の平均重合度が上記上限以下であれば、塩化ビニル樹脂成形体の溶融性を向上させ、表面平滑性を向上することもできるからである。
なお、本発明において「平均重合度」は、JIS K6720−2に準拠して測定することができる。
【0024】
[平均粒子径]
また、塩化ビニル樹脂粒子の平均粒子径は、30μm以上であれば、特に限定されなることなく、50μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましく、500μm以下が好ましく、250μm以下がより好ましく、200μm以下が更に好ましい。塩化ビニル樹脂粒子の平均粒子径が上記下限以上であれば、塩化ビニル樹脂組成物の粉体流動性がより向上するからである。また、塩化ビニル樹脂粒子の平均粒子径が上記上限以下であれば、塩化ビニル樹脂組成物の溶融性がより向上すると共に、当該組成物を用いて形成した塩化ビニル樹脂成形体の平滑性をより向上させることができるからである。
なお、本発明において、「平均粒子径」は、JIS Z8825に準拠し、レーザー回折法により体積平均粒子径として測定することができる。
【0025】
[含有割合]
そして、(a)塩化ビニル樹脂中の塩化ビニル樹脂粒子の含有割合は、(a)塩化ビニル樹脂100質量%に対して通常、70質量%以上であり、70質量%超であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましく、100質量%とすることができ、100質量%未満であり、99質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましく、92質量%以下であることが更に好ましい。
(a)塩化ビニル樹脂中の塩化ビニル樹脂粒子の含有割合が上記下限以上であれば、塩化ビニル樹脂組成物を用いて形成した塩化ビニル樹脂成形体の物理的強度を十分確保することができるからである。また、(a)塩化ビニル樹脂中の塩化ビニル樹脂粒子の含有割合が上記上限以下であれば、塩化ビニル樹脂組成物の粉体流動性が更に向上するからである。
【0026】
<<塩化ビニル樹脂微粒子>>
塩化ビニル樹脂組成物において、塩化ビニル樹脂微粒子は、通常、ダスティング剤(粉体流動性改良剤)として機能する。なお、塩化ビニル樹脂微粒子は、乳化重合法により製造することが好ましい。
【0027】
[平均重合度]
ここで、塩化ビニル樹脂微粒子の平均重合度は、500以上が好ましく、700以上がより好ましく、900以上が更に好ましく、5000以下が好ましく、3000以下がより好ましく、2500以下が更に好ましく、1500以下が一層好ましい。そして、例えば、ダスティング剤として異なる平均重合度を有する2種類の塩化ビニル樹脂微粒子を併用する場合は、一方の塩化ビニル樹脂微粒子の平均重合度を500以上1000以下とし;他方の塩化ビニル樹脂微粒子の平均重合度を1400以上2200以下とする:等、適宜選択することができる。ダスティング剤としての塩化ビニル樹脂微粒子の平均重合度が上記下限以上であれば、当該組成物を用いて得られる成形体の柔軟性及び耐熱老化性(引張特性)がより良好になるからである。
【0028】
[平均粒子径]
また、塩化ビニル樹脂微粒子の平均粒子径は、通常30μm未満であり、10μm以下であることが好ましく、0.1μm以上であることが好ましい。塩化ビニル樹脂微粒子の平均粒子径が上記下限以上であれば、例えばダスティング剤としてのサイズを過度に小さくすることなく、塩化ビニル樹脂組成物の粉体流動性を更に良好に発揮できるからである。また、塩化ビニル樹脂微粒子の平均粒子径が上記上限以下であれば、塩化ビニル樹脂組成物の溶融性がより高まり、形成される塩化ビニル樹脂成形体の平滑性を更に向上させることができるからである。
【0029】
[含有割合]
そして、(a)塩化ビニル樹脂中の塩化ビニル樹脂微粒子の含有割合は、(a)塩化ビニル樹脂100質量%に対して1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、0質量%であっても良い。(a)塩化ビニル樹脂中の塩化ビニル樹脂微粒子の含有割合が上記下限以上であれば、塩化ビニル樹脂組成物の粉体流動性が更に向上するからである。また、(a)塩化ビニル樹脂中の塩化ビニル樹脂微粒子の含有割合が上記上限以下であれば、塩化ビニル樹脂組成物を用いて形成した塩化ビニル樹脂成形体の物理的強度をより高めることができるからである。
【0030】
<(b)可塑剤>
本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、(a)塩化ビニル樹脂の含有量に対して(b)可塑剤を更に含むことを特徴とする。
【0031】
<<含有量>>
ここで、(b)可塑剤の含有量は、(a)塩化ビニル樹脂100質量部に対して80質量部以上であることが好ましく、90質量部以上であることがより好ましく、100質量部以上であることが更に好ましく、200質量部以下であることが好ましく、180質量部以下であることがより好ましく、150質量部以下であることが更に好ましい。(b)可塑剤の含有量が上記範囲内にあれば、塩化ビニル樹脂組成物を用いて形成した塩化ビニル樹脂成形体の良好な引張伸びを確保することができる。
【0032】
<<種類>>
ここで、(b)可塑剤の具体例としては、以下の一次可塑剤及び二次可塑剤などが挙げられる。
いわゆる一次可塑剤としては、トリメリット酸トリメチル、トリメリット酸トリエチル、トリメリット酸トリ−n−プロピル、トリメリット酸トリ−n−ブチル、トリメリット酸トリ−n−ペンチル、トリメリット酸トリ−n−ヘキシル、トリメリット酸トリ−n−ヘプチル、トリメリット酸トリ−n−オクチル、トリメリット酸トリ−n−ノニル、トリメリット酸トリ−n−デシル、トリメリット酸トリ−n−ウンデシル、トリメリット酸トリ−n−ドデシル、トリメリット酸トリ−n−トリデシル、トリメリット酸トリ−n−テトラデシル、トリメリット酸トリ−n−ペンタデシル、トリメリット酸トリ−n−ヘキサデシル、トリメリット酸トリ−n−ヘプタデシル、トリメリット酸トリ−n−ステアリル、トリメリット酸トリ−n−アルキルエステル(ここで、トリメリット酸トリ−n−アルキルエステルが有するアルキル基の炭素数は一分子中で互いに異なっていても良い。)などの、エステルを構成するアルキル基が直鎖状である直鎖状トリメリット酸エステル〔なお、これらのトリメリット酸エステルは、単一化合物からなるものであっても、混合物であってもよい。〕;
トリメリット酸トリ−i−プロピル、トリメリット酸トリ−i−ブチル、トリメリット酸トリ−i−ペンチル、トリメリット酸トリ−i−ヘキシル、トリメリット酸トリ−i−ヘプチル、トリメリット酸トリ−i−オクチル、トリメリット酸トリ−(2−エチルヘキシル)、トリメリット酸トリ−i−ノニル、トリメリット酸トリ−i−デシル、トリメリット酸トリ−i−ウンデシル、トリメリット酸トリ−i−ドデシル、トリメリット酸トリ−i−トリデシル、トリメリット酸トリ−i−テトラデシル、トリメリット酸トリ−i−ペンタデシル、トリメリット酸トリ−i−ヘキサデシル、トリメリット酸トリ−i−ヘプタデシル、トリメリット酸トリ−i−オクタデシル、トリメリット酸トリアルキルエステル(ここで、トリメリット酸トリアルキルエステルが有するアルキル基の炭素数は一分子中で互いに異なっていても良い。)などの、エステルを構成するアルキル基が分岐状である分岐状トリメリット酸エステル〔なお、これらのトリメリット酸エステルは、単一化合物からなるものであっても、混合物であってもよい。〕;
ピロメリット酸テトラメチル、ピロメリット酸テトラエチル、ピロメリット酸テトラ−n−プロピル、ピロメリット酸テトラ−n−ブチル、ピロメリット酸テトラ−n−ペンチル、ピロメリット酸テトラ−n−ヘキシル、ピロメリット酸テトラ−n−ヘプチル、ピロメリット酸テトラ−n−オクチル、ピロメリット酸テトラ−n−ノニル、ピロメリット酸テトラ−n−デシル、ピロメリット酸テトラ−n−ウンデシル、ピロメリット酸テトラ−n−ドデシル、ピロメリット酸テトラ−n−トリデシル、ピロメリット酸テトラ−n−テトラデシル、ピロメリット酸テトラ−n−ペンタデシル、ピロメリット酸テトラ−n−ヘキサデシル、ピロメリット酸テトラ−n−ヘプタデシル、ピロメリット酸テトラ−n−ステアリル、ピロメリット酸テトラ−n−アルキルエステル(ここで、ピロメリット酸テトラ−n−アルキルエステルが有するアルキル基の炭素数は一分子中で互いに異なっていても良い。)などの、エステルを構成するアルキル基が直鎖状である直鎖状ピロメリット酸エステル〔なお、これらのピロメリット酸エステルは、単一化合物からなるものであっても、混合物であってもよい。〕;
ピロメリット酸テトラ−i−プロピル、ピロメリット酸テトラ−i−ブチル、ピロメリット酸テトラ−i−ペンチル、ピロメリット酸テトラ−i−ヘキシル、ピロメリット酸テトラ−i−ヘプチル、ピロメリット酸テトラ−i−オクチル、ピロメリット酸テトラ−(2−エチルヘキシル)、ピロメリット酸テトラ−i−ノニル、ピロメリット酸テトラ−i−デシル、ピロメリット酸テトラ−i−ウンデシル、ピロメリット酸テトラ−i−ドデシル、ピロメリット酸テトラ−i−トリデシル、ピロメリット酸テトラ−i−テトラデシル、ピロメリット酸テトラ−i−ペンタデシル、ピロメリット酸テトラ−i−ヘキサデシル、ピロメリット酸テトラ−i−ヘプタデシル、ピロメリット酸テトラ−i−オクタデシル、ピロメリット酸テトラアルキルエステル(ここで、ピロメリット酸テトラアルキルエステルが有するアルキル基の炭素数は一分子中で互いに異なっていても良い。)などの、エステルを構成するアルキル基が分岐状である分岐状ピロメリット酸エステル〔なお、これらのピロメリット酸エステルは、単一化合物からなるものであっても、混合物であってもよい。〕;
ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−(2−エチルヘキシル)フタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジフェニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジトリデシルフタレート、ジウンデシルフタレート、ジベンジルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジノニルフタレート、ジシクロヘキシルフタレートなどのフタル酸誘導体;
ジメチルイソフタレート、ジ−(2−エチルヘキシル)イソフタレート、ジイソオクチルイソフタレートなどのイソフタル酸誘導体;
ジ−(2−エチルヘキシル)テトラヒドロフタレート、ジ−n−オクチルテトラヒドロフタレート、ジイソデシルテトラヒドロフタレートなどのテトラヒドロフタル酸誘導体;
ジ−n−ブチルアジペート、ジ(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソデシルアジペート、ジイソノニルアジペートなどのアジピン酸誘導体;
ジ−(2−エチルヘキシル)アゼレート、ジイソオクチルアゼレート、ジ−n−ヘキシルアゼレートなどのアゼライン酸誘導体;
ジ−n−ブチルセバケート、ジ−(2−エチルヘキシル)セバケート、ジイソデシルセバケート、ジ−(2−ブチルオクチル)セバケートなどのセバシン酸誘導体;
ジ−n−ブチルマレエート、ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、ジ−(2−エチルヘキシル)マレエートなどのマレイン酸誘導体;
ジ−n−ブチルフマレート、ジ−(2−エチルヘキシル)フマレートなどのフマル酸誘導体;
トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ−(2−エチルヘキシル)シトレートなどのクエン酸誘導体;
モノメチルイタコネート、モノブチルイタコネート、ジメチルイタコネート、ジエチルイタコネート、ジブチルイタコネート、ジ−(2−エチルヘキシル)イタコネートなどのイタコン酸誘導体;
ブチルオレエート、グリセリルモノオレエート、ジエチレングリコールモノオレエートなどのオレイン酸誘導体;
メチルアセチルリシノレート、ブチルアセチルリシノレート、グリセリルモノリシノレート、ジエチレングリコールモノリシノレートなどのリシノール酸誘導体;
n−ブチルステアレート、ジエチレングリコールジステアレートなどのステアリン酸誘導体(但し、12−ヒドロキシステアリン酸エステルを除く);
ジエチレングリコールモノラウレート、ジエチレングリコールジペラルゴネート、ペンタエリスリトール脂肪酸エステルなどのその他の脂肪酸誘導体;
トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ−(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(クロロエチル)ホスフェートなどのリン酸誘導体;
ジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ−(2−エチルブチレート)、トリエチレングリコールジ−(2−エチルヘキソエート)、ジブチルメチレンビスチオグリコレートなどのグリコール誘導体;
グリセロールモノアセテート、グリセロールトリアセテート、グリセロールトリブチレートなどのグリセリン誘導体;
エポキシヘキサヒドロフタル酸ジイソデシル、エポキシトリグリセライド、エポキシ化オレイン酸オクチル、エポキシ化オレイン酸デシルなどのエポキシ誘導体;
アジピン酸系ポリエステル、セバシン酸系ポリエステル、フタル酸系ポリエステルなどのポリエステル系可塑剤;
などが挙げられる。
【0033】
また、いわゆる二次可塑剤としては、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等のエポキシ化植物油;塩素化パラフィン、トリエチレングリコールジカプリレートなどのグリコールの脂肪酸エステル、ブチルエポキシステアレート、フェニルオレエート、ジヒドロアビエチン酸メチルなどが挙げられる。
【0034】
なお、これらの可塑剤は、1種のみを用いても良く、例えば、一次可塑剤、二次可塑剤などの2種以上を併用しても良い。また、二次可塑剤を用いる場合は、当該二次可塑剤と等質量以上の一次可塑剤を併用することが好ましい。
そして、上述した可塑剤の中でも、良好な引張伸びを得る観点からは、トリメリット酸エステル及び/又はピロメリット酸エステルを用いることが好ましく、トリメリット酸エステルを用いることがより好ましく、直鎖状トリメリット酸エステルを用いることが更に好ましく、炭素数が異なるアルキル基を分子内に2つ以上有する直鎖状トリメリット酸エステルを用いることが一層好ましい。また、当該アルキル基の炭素数は8〜10であることが好ましく、当該アルキル基がn−オクチル基、n−デシル基であることがより好ましい。そして、上記トリメリット酸エステルと共にエポキシ化大豆油を更に用いることが好ましい。
【0035】
ここで、(b)可塑剤の形態は特に限定されないが、(a)塩化ビニル樹脂との混合容易性の観点から、また、形成された塩化ビニル樹脂成形体表面でのブルーミング発生(成形体表面に配合成分が折出し、表面が白くなる現象)を抑制する観点からは、常温で液体であることが好ましい。
【0036】
<(c)有機マイクロバルーン>
本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、上述した(a)塩化ビニル樹脂および(b)可塑剤に加え、(c)有機マイクロバルーンを含むことを特徴とする。
【0037】
ここで、上記(c)有機マイクロバルーンとは、外殻部が有機物からなる中空粒子を指す。なお、中空粒子内部には、潰れ防止の観点から、炭化水素系の有機溶媒を含有することが好ましい。また、外殻部は、有機高分子を含むものからなることが好ましく、耐熱性に優れた有機高分子を含むものからなることがより好ましいが、塩化ビニル樹脂組成物の成形時の加熱で(c)有機マイクロバルーンがほとんど熱膨張しない有機高分子からなるものであることが更に好ましい。中空粒子内部に有機溶媒が含まれる場合に、有機マイクロバルーンが加熱されると、有機溶媒がガス化して有機マイクロバルーン内部の圧力が上昇し潰れるのを防止することができるからである。
【0038】
<<種類>>
有機マイクロバルーンは、既膨張型と、未膨張型に分類され、使用にあたっては特に制限されることなく、既膨張型の有機マイクロバルーンであっても良く、未膨張型の有機マイクロバルーンであっても良く、これらの混合物であっても良いが、熱成形時に膨張しない有機マイクロバルーンのみを用いることが好ましく、既膨張型の有機マイクロバルーンのみを用いることがより好ましい。
【0039】
有機マイクロバルーンの外殻部を構成する有機高分子としては、限定を意図しないが、メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル−アクリル酸エステル共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル−メタクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−メタクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体、メタクリロニトリル−メタクリル酸エステル共重合体、メタクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル−アクリル酸エステル−アクリロニトリル共重合体、メタクリル酸エステル−アクリル酸エステル−メタクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−メタクリロニトリル−メタクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−メタクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、メラミン樹脂;などが挙げられる。これらの中でも、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル−メタクリル酸メチル共重合体、メタクリロニトリル−メタクリル酸メチル共重合体、アクリロニトリル−メタクリロニトリル−メタクリル酸メチル共重合体などの、ガラス転移温度が100℃以上の有機高分子が好ましい。ガラス転移温度が100℃以上であると、有機高分子の軟化点が高くなり、本発明の塩化ビニル樹脂組成物をパウダースラッシュ成形する場合に、成形時の加熱による(c)有機マイクロバルーンの膨張を抑制することができる。
さらに、(c)有機マイクロバルーンの割れにくさの観点から、アクリロニトリル−メタクリル酸メチル共重合体、メタクリロニトリル−メタクリル酸メチル共重合体、アクリロニトリル−メタクリロニトリル−メタクリル酸メチル共重合体がより好ましく、アクリロニトリル−メタクリロニトリル−メタクリル酸メチル共重合体が更に好ましい。アクリロニトリルやメタクリロニトリルにメタクリル酸メチルを共重合させることにより、成形時の加熱による(c)有機マイクロバルーンの膨張を抑制しながら、さらに、(c)有機マイクロバルーンに割れにくさを付与させることができる。
また、有機溶媒としては、限定を意図しないが、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、イソペンタン、イソヘキサン類、イソペンタン類、イソオクタン類、2,2−ジメチルブタンなどが挙げられる。
なお、有機マイクロバルーンには、水酸化マグネシウム、石灰石などの無機フィラーや、老化防止剤などの各種添加剤が含まれていても良い。
【0040】
<<含有量>>
ここで、得られる塩化ビニル樹脂成形体をより確実に軽量化するため、塩化ビニル樹脂組成物は(c)有機マイクロバルーンを0.1質量%以上含むことが好ましく、0.4質量%以上含むことがより好ましく、1.0質量%以上含むことが含むことが更に好ましく、1.5質量%以上含むことが含むことが一層好ましい。
【0041】
また、(c)有機マイクロバルーンの含有量が、(b)可塑剤100質量部に対して5質量部以下であることが好ましく、4.5質量部以下であることがより好ましく、4質量部以下であることが更に好ましい。本発明者の検討によると、可塑剤の配合量に対して、有機マイクロバルーンの配合量が過剰となると、「ピンホール」と呼ばれる穴状の模様が形成されてしまうことが判明した。ここで、「ピンホール」とは、肉眼で観察される直径50μm以上の穴状の模様であり、可塑剤に有機マイクロバルーンが十分に混ざり合わない場合に発生すると考えられる。ピンホールが多量に発生すると、美観を損ねてしまう。本発明者の検討により、有機マイクロバルーンの含有量を上記上限以下とすることで、ピンホールの発生がより確実に抑制できることが確認された。
【0042】
<<平均粒子径>>
(c)有機マイクロバルーンの平均粒子径は、特に制限されることなく、例えば20μm以上200μm以下とすることができ、30μm以上60μm以下としてもよいし、80〜140μmとしてもよい。
なお、本発明において、「平均粒子径」は、JIS Z8825に準拠し、レーザー回折法により体積平均粒子径として測定することができる。
【0043】
<<真比重>>
(c)有機マイクロバルーンの真比重(真密度)は、特に制限されることなく、例えば0.01以上0.2以下(0.01g/cm
3以上0.2g/cm
3以下)とすることができる。
なお、本発明において、「真比重」は、JIS K 0061及びJIS Z 8807に準拠し、ピクノメータ法を用いて測定することができる。
【0044】
<添加剤>
本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、上述した成分以外に、各種添加剤を更に含有してもよい。添加剤としては、特に限定されることなく、過塩素酸処理ハイドロタルサイト、ゼオライト、β−ジケトン、脂肪酸金属塩などの安定剤;離型剤;上記塩化ビニル樹脂微粒子以外のダスティング剤;及びその他の添加剤;などが挙げられる。
【0045】
<<過塩素酸処理ハイドロタルサイト>>
塩化ビニル樹脂組成物が含有し得る、過塩素酸処理ハイドロタルサイトは、例えば、ハイドロタルサイトを過塩素酸の希薄水溶液中に加えて撹拌し、その後必要に応じて、ろ過、脱水または乾燥することによって、ハイドロタルサイト中の炭酸アニオン(CO
32-)の少なくとも一部を過塩素酸アニオン(ClO
4-)で置換(炭酸アニオン1モルにつき過塩素酸アニオン2モルが置換)することにより、過塩素酸一部導入型ハイドロタルサイトとして容易に製造することができる。上記ハイドロタルサイトと上記過塩素酸とのモル比は任意に設定できるが、一般には、ハイドロタルサイト1モルに対し、過塩素酸0.1モル以上2モル以下が好ましい。
【0046】
ここで、未処理(過塩素酸アニオンを一部導入していない未置換)のハイドロタルサイト中の炭酸アニオンの過塩素酸アニオンへの置換率は、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは85モル%以上である。また、未処理(過塩素酸アニオンを一部導入していない未置換)のハイドロタルサイト中の炭酸アニオンの過塩素酸アニオンへの置換率は、好ましくは95モル%以下である。未処理(過塩素酸アニオンを一部導入していない未置換)のハイドロタルサイト中の炭酸アニオンの過塩素酸アニオンへの置換率が上記の範囲内にあることにより、塩化ビニル樹脂成形体をより容易に製造することができるからである。
【0047】
なお、ハイドロタルサイトは、一般式:[Mg
1-xAl
x(OH)
2]
x+[(CO
3)
x/2・mH
2O]
x-で表される不定比化合物で、プラスに荷電した基本層[Mg
1-xAl
x(OH)
2]
x+と、マイナスに荷電した中間層[(CO
3)
x/2・mH
2O]
x-とからなる層状の結晶構造を有する無機物質である。ここで、上記一般式中、xは0より大きく0.33以下の範囲の数である。天然のハイドロタルサイトは、Mg
6Al
2(OH)
16CO
3・4H
2Oである。合成されたハイドロタルサイトとしては、Mg
4.5Al
2(OH)
13CO
3・3.5H
2Oが市販されている。合成ハイドロタルサイトの合成方法は、例えば特公昭61−174270号公報に記載されている。
【0048】
ここで、過塩素酸処理ハイドロタルサイトの含有量は、特に制限されることなく、上記(a)塩化ビニル樹脂100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、7質量部以下が好ましく、6質量部以下がより好ましい。過塩素酸処理ハイドロタルサイトの含有量が上記範囲であれば、塩化ビニル樹脂組成物を成形してなる塩化ビニル樹脂成形体に、成形体の引張伸びをより良好に維持することができるからである。
【0049】
<<ゼオライト>>
塩化ビニル樹脂組成物は、ゼオライトを安定剤として含有し得る。ゼオライトは、一般式:M
x/n・[(AlO
2)
x・(SiO
2)
y]・zH
2O(一般式中、Mは原子価nの金属イオン、x+yは単子格子当たりの四面体数、zは水のモル数である)で表される化合物である。当該一般式中のMの種類としては、Na、Li、Ca、Mg、Znなどの一価又は二価の金属及びこれらの混合型が挙げられる。
【0050】
ここで、ゼオライトの含有量は、特に制限されることなく、(a)塩化ビニル樹脂100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、5質量部以下が好ましい。
【0051】
<<β−ジケトン>>
β−ジケトンは、塩化ビニル樹脂組成物を粉体成形して得られる塩化ビニル樹脂成形体の初期色調の変動をより効果的に抑えるために用いられる。β−ジケトンの具体例としては、ジベンゾイルメタン、ステアロイルベンゾイルメタン、パルミトイルベンゾイルメタンなどが挙げられる。これらのβ−ジケトンは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
なお、β−ジケトンの含有量は、特に制限されることなく、(a)塩化ビニル樹脂100質量部に対して0.01質量部以上が好ましく、5質量部以下が好ましい。
【0053】
<<脂肪酸金属塩>>
塩化ビニル樹脂組成物が含有し得る脂肪酸金属塩は、特に制限されることなく、任意の脂肪酸金属塩とすることができる。中でも、一価脂肪酸金属塩が好ましく、炭素数12〜24の一価脂肪酸金属塩がより好ましく、炭素数15〜21の一価脂肪酸金属塩が更に好ましい。脂肪酸金属塩の具体例としては、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ストロンチウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウム、ラウリン酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸バリウム、2−エチルヘキサン酸亜鉛、リシノール酸バリウム、リシノール酸亜鉛等である。脂肪酸金属塩を構成する金属としては、多価陽イオンを生成しうる金属が好ましく、2価陽イオンを生成しうる金属がより好ましく、周期表第3周期〜第6周期の、2価陽イオンを生成しうる金属が更に好ましく、周期表第4周期の、2価陽イオンを生成しうる金属が特に好ましい。最も好ましい脂肪酸金属塩はステアリン酸亜鉛である。
【0054】
ここで、脂肪酸金属塩の含有量は、特に制限されることなく、上記(a)塩化ビニル樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、0.03質量部以上がより好ましく、5質量部以下が好ましく、1質量部以下がより好ましく、0.5質量部以下が更に好ましい。脂肪酸金属塩の含有量が上記範囲であれば、塩化ビニル樹脂組成物を成形してなる塩化ビニル樹脂成形体の色差の値を小さくできるからである。
【0055】
<<離型剤>>
離型剤としては、特に制限されることなく、例えば、12−ヒドロキシステアリン酸エステルおよび12−ヒドロキシステアリン酸オリゴマーなどの12−ヒドロキシステアリン酸系潤滑剤が挙げられる。ここで、離型剤の含有量は、特に制限されることなく、上記(a)塩化ビニル樹脂100質量部に対して0.01質量部以上5質量部以下とすることができる。
【0056】
<<その他のダスティング剤>>
塩化ビニル樹脂組成物が含有し得る、上記塩化ビニル樹脂微粒子以外の、その他のダスティング剤としては、炭酸カルシウム、タルク、酸化アルミニウムなどの無機微粒子;ポリアクリロニトリル樹脂微粒子、ポリ(メタ)アクリレート樹脂微粒子、ポリスチレン樹脂微粒子、ポリエチレン樹脂微粒子、ポリプロピレン樹脂微粒子、ポリエステル樹脂微粒子、ポリアミド樹脂微粒子などの有機微粒子;が挙げられる。中でも、平均粒径が10nm以上100nm以下の無機微粒子が好ましい。
【0057】
ここで、その他のダスティング剤の含有量は、特に制限されることなく、(a)塩化ビニル樹脂100質量部に対して30質量部以下が好ましく、25質量部以下がより好ましく、10質量部以上とすることができる。その他のダスティング剤は、1種類を単独で、又は2種類以上を併用しても良く、また、上述した塩化ビニル樹脂微粒子と併用してもよい。
【0058】
<<その他の添加剤>>
塩化ビニル樹脂組成物が含有し得るその他の添加剤としては、特に制限されることなく、例えば、着色剤(顔料)、耐衝撃性改良剤、過塩素酸処理ハイドロタルサイト以外の過塩素酸化合物(過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム等)、酸化防止剤、防カビ剤、難燃剤、帯電防止剤、充填剤、光安定剤、発泡剤等が挙げられる。
【0059】
着色剤(顔料)の具体例は、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ポリアゾ縮合顔料、イソインドリノン系顔料、銅フタロシアニン系顔料、チタンホワイト、カーボンブラックである。1種又は2種以上の顔料が使用される。
キナクリドン系顔料は、p−フェニレンジアントラニル酸類が濃硫酸で処理されて得られ、黄みの赤から赤みの紫の色相を示す。キナクリドン系顔料の具体例は、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ、キナクリドンバイオレットである。
ペリレン系顔料は、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸無水物と芳香族第一級アミンとの縮合反応により得られ、赤から赤紫、茶色の色相を示す。ペリレン系顔料の具体例は、ペリレンレッド、ペリレンオレンジ、ペリレンマルーン、ペリレンバーミリオン、ペリレンボルドーである。
ポリアゾ縮合顔料は、アゾ色素が溶剤中で縮合されて高分子量化されて得られ、黄、赤系顔料の色相を示す。ポリアゾ縮合顔料の具体例は、ポリアゾレッド、ポリアゾイエロー、クロモフタルオレンジ、クロモフタルレッド、クロモフタルスカーレットである。
イソインドリノン系顔料は、4,5,6,7−テトラクロロイソインドリノンと芳香族第一級ジアミンとの縮合反応により得られ、緑みの黄色から、赤、褐色の色相を示す。イソインドリノン系顔料の具体例は、イソインドリノンイエローである。
銅フタロシアニン系顔料は、フタロシアニン類に銅を配位した顔料で、黄みの緑から鮮やかな青の色相を示す。銅フタロシアニン系顔料の具体例は、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルーである。
チタンホワイトは、二酸化チタンからなる白色顔料で、隠蔽力が大きく、アナタース型とルチル型がある。
カーボンブラックは、炭素を主成分とし、酸素、水素、窒素を含む黒色顔料である。カーボンブラックの具体例は、サーマルブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、ボーンブラックである。
【0060】
耐衝撃性改良剤の具体例は、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体、塩素化ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、クロロスルホン化ポリエチレンなどである。塩化ビニル樹脂組成物では、1種又は2種以上の耐衝撃性改良剤が使用できる。なお、耐衝撃性改良剤は、塩化ビニル樹脂組成物中で微細な弾性粒子の不均一相となって分散する。塩化ビニル樹脂組成物では、当該弾性粒子にグラフト重合した鎖及び極性基が(a)塩化ビニル樹脂と相溶し、塩化ビニル樹脂組成物の耐衝撃性が向上する。
【0061】
酸化防止剤の具体例は、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、亜リン酸塩などのリン系酸化防止剤などである。
【0062】
防カビ剤の具体例は、脂肪族エステル系防カビ剤、炭化水素系防カビ剤、有機窒素系防カビ剤、有機窒素硫黄系防カビ剤などである。
【0063】
難燃剤の具体例は、塩素化パラフィン等のハロゲン系難燃剤;リン酸エステル等のリン系難燃剤;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の無機水酸化物;などである。
【0064】
帯電防止剤の具体例は、脂肪酸塩類、高級アルコール硫酸エステル類、スルホン酸塩類等のアニオン系帯電防止剤;脂肪族アミン塩類、第四級アンモニウム塩類等のカチオン系帯電防止剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル類等のノニオン系帯電防止剤;などである。
【0065】
充填剤の具体例は、シリカ、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、クレーなどである。
【0066】
光安定剤の具体例は、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ニッケルキレート系等の紫外線吸収剤、ヒンダートアミン系光安定剤などである。
【0067】
発泡剤の具体例は、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物、p−トルエンスルホニルヒドラジド、p,p−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)等のスルホニルヒドラジド化合物などの有機発泡剤;フロンガス、炭酸ガス、水、ペンタン等の揮発性炭化水素化合物、これらを内包したマイクロカプセルなどの、ガス系の発泡剤;などである。
【0068】
<塩化ビニル樹脂組成物の調製方法>
本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、上述した成分を混合して調製することができる。
ここで、上記(a)塩化ビニル樹脂と、(b)可塑剤と、(c)有機マイクロバルーンと、必要に応じて更に併用される塩化ビニル樹脂微粒子および各種添加剤との混合方法としては、特に限定されることなく、例えば、上記塩化ビニル樹脂微粒子を含むダスティング剤を除く成分をドライブレンドにより混合し、その後、ダスティング剤を添加、混合する方法が挙げられる。ここで、ドライブレンドには、ヘンシェルミキサーの使用が好ましい。また、ドライブレンド時の温度は、特に制限されることなく、50℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、200℃以下が好ましい。また、上記(c)有機マイクロバルーンは、ドライアップさせた混合物が温度150℃以下に冷却された時点で添加することが好ましく、130℃以下に冷却された時点で添加することがより好ましく、110℃以下に冷却された時点で添加することが更に好ましく、100℃以下に冷却された時点で添加することが一層好ましい。有機マイクロバルーンの種類にも依るが、上記温度以下で添加することで、有機マイクロバルーンの膨張状態の変化をより確実に抑制することができる。
なお、ドライアップとは、可塑剤が、塩化ビニル樹脂である塩化ビニル樹脂粒子に吸収されて、上記混合物がさらさらになった状態のことをいう。
【0069】
<塩化ビニル樹脂組成物の用途>
そして、得られた塩化ビニル樹脂組成物は、粉体成形に好適に用いることができ、パウダースラッシュ成形により好適に用いることができる。
【0070】
(塩化ビニル樹脂成形体)
上述した塩化ビニル樹脂組成物を、任意の方法で成形することにより塩化ビニル樹脂成形体を得ることができる。そして、この塩化ビニル樹脂成形体は、本発明の塩化ビニル樹脂組成物を用いて形成されているため、表面べた付き性を抑制することができる。従って、この塩化ビニル樹脂成形体は、自動車内装材、例えば自動車インスツルメントパネルおよびドアトリム等の表皮として好適に用いられ、特に、自動車インスツルメントパネルの表皮として好適に用いられる。
【0071】
<<塩化ビニル樹脂成形体の成形方法>>
ここで、パウダースラッシュ成形時の金型温度は、特に制限されることなく、200℃以上とすることが好ましく、220℃以上とすることがより好ましく、300℃以下とすることが好ましく、280℃以下とすることがより好ましい。
【0072】
そして、塩化ビニル樹脂成形体を製造する際には、特に限定されることなく、例えば、以下の方法を用いることができる。即ち、上記温度範囲の金型に本発明の塩化ビニル樹脂組成物を振りかけて、5秒以上30秒以下の間放置した後、余剰の塩化ビニル樹脂組成物を振り落とし、さらに、任意の温度下、30秒以上3分以下の間放置する。その後、金型を10℃以上60℃以下に冷却し、得られた本発明の塩化ビニル樹脂成形体を金型から脱型する。そして、脱型された塩化ビニル樹脂成形体は、例えば、金型の形状をかたどったシート状の成形体として得られる。
【0073】
(積層体)
本発明の積層体は、発泡ポリウレタン成形体と、上述した塩化ビニル樹脂成形体とを有する。そして、本発明の積層体は、本発明の塩化ビニル樹脂組成物を用いて形成された塩化ビニル樹脂成形体を有しているため、表面べた付き性を抑制することができる。従って、本発明の積層体は、例えば、自動車インスツルメントパネルおよびドアトリム等といった自動車内装材として好適に用いられ、特に、自動車インスツルメントパネル用に好適に用いられる。
【0074】
ここで、積層方法は、特に限定されることなく、例えば、以下の方法を用いることができる。即ち、(1)発泡ポリウレタン成形体と、塩化ビニル樹脂成形体とを別途準備した後に、熱融着、熱接着、又は公知の接着剤などを用いることにより貼り合わせる方法;(2)塩化ビニル樹脂成形体上で発泡ポリウレタン成形体の原料となるイソシアネート類とポリオール類などとを反応させて重合を行うと共に、公知の方法によりポリウレタンの発泡を行うことにより、塩化ビニル樹脂成形体上に発泡ポリウレタン成形体を直接形成する方法;などが挙げられる。中でも、工程が簡素である点、および、種々の形状の積層体を得る場合においても塩化ビニル樹脂成形体と発泡ポリウレタン成形体とを強固に接着し易い点から、後者の方法(2)の方が好適である。
【実施例】
【0075】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」および「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
そして、塩化ビニル樹脂粒子および塩化ビニル樹脂微粒子の平均重合度、平均粒子径;塩化ビニル樹脂成形体の引張強さ(最大の引張応力);塩化ビニル樹脂成形体の比重および減量率;塩化ビニル樹脂成形体の外観評価;は、下記の方法で測定および評価した。
【0076】
<平均重合度>
塩化ビニル樹脂粒子及び塩化ビニル樹脂微粒子の平均重合度は、JIS K6720−2に準拠し、塩化ビニル樹脂粒子及び塩化ビニル樹脂微粒子のそれぞれを、シクロヘキサノンに溶解させて粘度を測定することにより、算出した。
【0077】
<平均粒子径>
塩化ビニル樹脂粒子及び塩化ビニル樹脂微粒子の平均粒子径(体積平均粒子径(μm))は、JIS Z8825に準拠して測定した。具体的には、塩化ビニル樹脂粒子及び塩化ビニル樹脂微粒子を、それぞれ水槽内に分散させ、以下に示す装置を用いて、光の回折・散乱強度分布を測定・解析し、粒子径及び体積基準の粒子径分布を測定することにより、算出した。
・装置:レーザー回折式粒度分布測定機(島津製作所製、SALD−2300)
・測定方式:レーザー回折及び散乱
・測定範囲:0.017μm〜2500μm
・光源:半導体レーザー(波長680nm、出力3mW)
【0078】
<引張強さ>
得られた塩化ビニル樹脂成形シートを、JIS K6251に記載の1号ダンベルで打ち抜き、JIS K7113に準拠して、引張速度200mm/分で、−35℃における最大引張応力(MPa)を測定し、塩化ビニル樹脂成形シートの引張強さを測定した。
【0079】
<比重>
得られた塩化ビニル樹脂成形シートの比重を、JIS K 7112に規定されるA法(水中置換法法)に準拠して測定した。併せて、後述の実施例1を基準として、各塩化ビニル樹脂成形シートの比重の減量率を算出した。
【0080】
<外観評価>
下記の評価基準に従い、得られた塩化ビニル樹脂成形シート(150mm×100mm×1mm)におけるピンホールの個数を目視で観察し、評価した。
○:ピンホールの個数が2個以下である。
×:ピンホールの個数が3個以上である。
【0081】
(実施例1)
<塩化ビニル樹脂組成物の調製>
表1に示す配合成分のうち、マイクロバルーンと、可塑剤(トリメリット酸エステル可塑剤及びエポキシ化大豆油)と、ダスティング剤である乳化重合塩化ビニル樹脂微粒子とを除く成分をヘンシェルミキサーに入れて混合した。そして、混合物の温度が80℃に上昇した時点で上記可塑剤を全て添加し、更に昇温することにより、ドライアップ(既述のとおり、可塑剤が、塩化ビニル樹脂である塩化ビニル樹脂粒子に吸収されて、上記混合物がさらさらになった状態をいう。)させた。その後、ドライアップさせた混合物が温度100℃以下に冷却された時点でマイクロバルーン及びダスティング剤である塩化ビニル樹脂微粒子を添加し、塩化ビニル樹脂組成物を調製した。
【0082】
<塩化ビニル樹脂成形体の形成>
上述で得られた塩化ビニル樹脂組成物を、温度250℃に加熱したシボ付き金型に振りかけ、10秒〜20秒程度の任意の時間放置して溶融させた後、余剰の塩化ビニル樹脂組成物を振り落とした。その後、当該塩化ビニル樹脂組成物を振りかけたシボ付き金型を、温度200℃に設定したオーブン内に静置し、静置から60秒経過した時点で当該シボ付き金型を冷却水で冷却した。金型温度が40℃まで冷却された時点で、塩化ビニル樹脂成形体として、145mm×175mm×1mmの塩化ビニル樹脂成形シートを金型から脱型した。
そして、得られた塩化ビニル樹脂成形シートについて、上述の方法に従って、比重(及び減量率)、低温下における引張応力から引張強さ、を測定、算出した。さらに、上述の方法に従って、得られた塩化ビニル樹脂成形シートの外観評価を行った。結果を表1に示す。
【0083】
(実施例2)
塩化ビニル樹脂組成物の調製において、表1に示す通りに配合成分を変更した以外は実施例1と同様にして、塩化ビニル樹脂組成物および塩化ビニル樹脂成形シートを製造した。
そして、実施例1と同様の方法により測定、算出、評価を行った。結果を表1に示す。
【0084】
(実施例3)
塩化ビニル樹脂組成物の調製において、表1に示す通りに配合成分を変更した以外は実施例1と同様にして、塩化ビニル樹脂組成物および塩化ビニル樹脂成形シートを製造した。
そして、実施例1と同様の方法により測定、算出、評価を行った。結果を表1に示す。
【0085】
(比較例1)
塩化ビニル樹脂組成物の調製において、有機マイクロバルーンを用いず、表1に示す通りに配合成分を変更した以外は実施例1と同様にして、塩化ビニル樹脂組成物および塩化ビニル樹脂成形シートを製造した。
そして、実施例1と同様の方法により測定、算出、評価を行った。結果を表1に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
1)新第一塩ビ社製、製品名「ZEST(登録商標) 2500Z」平均重合度:2500、平均粒子径:155μm)
2)新第一塩ビ社製、ZEST(登録商標) 1700Z(平均重合度1700、平均粒子径130μm)
3)花王社製、製品名「トリメックスN−08」
4)ADEKA社製、製品名「アデカサイザー O−130S」
5)協和化学工業社製、製品名「アルカマイザー5」
6)水澤化学工業社製、製品名「MIZUKALIZER DS」
7)昭和電工社製、製品名「カレンズDK−1」
8)堺化学工業社、製品名「SAKAI SZ2000」
9)ADEKA社製、製品名「アデカスタブ LS−12」
10)新第一塩ビ社製、製品名「ZEST PQLTX」(平均重合度:800、平均粒子径:1.8μm)
11)東ソー社製、製品名「リューロンペースト(登録商標)860」(平均重合度:1600、平均粒子径:1.6μm)
12)松本油脂社製「マツモトマイクロスフェアー(登録商標) F−80DE」(既膨張型、外殻部:アクリロニトリル系共重合物、有機溶媒:ペンタン、平均粒子径:90〜130μm、真比重;0.020±0.005)
13)日本フィライト社製「EMC 40(B)」(既膨張型、外殻部:アクリロニトリル・メタクリロニトリル・メチル=メタクリラート共重合物、有機溶媒:イソペンタン、石灰石、平均粒子径:35〜55μm、真比重;0.16±0.02)
14)大日精化社製、製品名「DA PX 1720(A)ブラック」
【0088】
表1より、(a)塩化ビニル樹脂、(b)可塑剤、および(c)有機マイクロバルーンを用いて配合した実施例1〜3の塩化ビニル樹脂組成物を用いて得られた塩化ビニル樹脂成形体はいずれも、比較例1に比べて比重が小さく、比較例1よりも軽量化できたことが分かった。
一方、実施例1〜3および比較例1から、有機マイクロバルーンを配合することで、引張強さは若干低下するものの、これは許容範囲であり、実施例1〜3のいずれも、引張強さは十分に確保できていることが確認できた。
また、実施例1〜3から、有機マイクロバルーンの含有量が、可塑剤100質量部に対して4質量部以下とすれば、ピンホールの個数が少なく、塩化ビニル樹脂成形シートの外観に影響を与えないことが分かった。一方、実施例2,3に見られるように、有機マイクロバルーンの含有量が、可塑剤100質量部に対して4質量部超となった場合、実施例1よりも更に減量できるものの、ピンホールの個数が比較的多くなる場合があった。