【実施例】
【0083】
以下の実施例は、開示のCo錯体を作成する方法、及び開示のCo錯体をCo前駆体として使用してCo含有膜を堆積する方法を示している。
【0084】
堆積プロセスにおいて、Co前駆体は、Co前駆体で充填されたステンレス鋼容器に50sccmのアルゴンを通過させることによって、反応炉チャンバーに送られる。容器の温度を、30℃〜60℃で変化させて、前駆体の十分な蒸気圧を達成した。ウェハ温度は、125℃〜200℃の間で変化した。反応炉チャンバーの圧力は、5〜20トル内で変化した。堆積試験を、500〜1000sccmの水素又はアルゴン流の存在化で行った。異なる厚さを有するCo膜を得るために、堆積時間を、20秒〜20分で変化させた。
【0085】
コバルト膜を、CN−1シャワーヘッド式反応炉を用いて、ケイ素、酸化ケイ素、PVD TaN、及び銅基材上に、成長させた。
【0086】
Co膜の厚さを、蛍光X線(XRF)及び走査型電子顕微鏡(SEM)によって計測した。
【0087】
[例1(比較例)]
[(メチルn−プロピルアセチレン)ジコバルトヘキサカルボニル(CCMPA)/(
nPr)CC(Me)(Co)
2(CO)
6の合成及び熱特性]
換気式フード内で、2−ヘキシン(4.34g、53mmol)のヘキサン溶液(50mL)を、30分にわたって、Co
2(CO)
8(17g、48mmol)のヘキサン溶液(100mL)に、添加した。2−ヘキシン溶液の各分割量の添加の際に、COの発生が観察された。結果として得られた暗赤/茶色の溶液を、室温において、4時間の間、撹拌した。揮発物を、室温において真空下で除去して、暗赤色のオイルを得た。オイルを、Celite545のパッドでろ過し、かつ真空下で蒸留した。40℃及びおよそ200mTorrの圧力において、生成物の蒸留が始まった。温度を、50℃(圧力140mTorr)にまでゆっくりと上昇させた。温度を、55℃(圧力120mTorr)にまでゆっくりと上昇させた。蒸留の終了まで、温度は55℃に保たれた。揮発性のCCMPAのすべてが蒸発した後に、非常に少量の黒色固体によって、リボイラーが被覆された。結果として得られた暗赤色のオイルを、IR,NMR,TGA,及びDSCによって解析した。
【0088】
何も混ぜていない(neat)CCMPAの溶液IRでは、およそ0.07%のテトラコバルトドデカカルボニル(1860cm−1)が見られた。他の金属カルボニルのピークは、実質的に見られなかった。
【0089】
CCMPAの
1HNMRスペクトルは、分子構造と一致する、期待される2/3/2/3の強度を有する四セットの共鳴を示した[2.5ppm(m)、2H;2.3ppm(s)、3H;1.5ppm(m)、2H;0.8ppm(m)、3H]。
【0090】
CCMPAのダイナミック熱重量分析(TGA)を、流動窒素下で行った。
【0091】
およそ155℃において、蒸発速度の変化が起こっていたようであり、このことが可能的に示すのは、揮発性がより低い分解産物の形成である。最終的な非揮発性残留物の重量は、当初重量の3.1%であった。
【0092】
[例2(比較例)]
[CCMPAからのCo膜の堆積]
比較例1において記載されるように、Co前駆体であるCCMPAの合成及び精製を行った。コバルト膜堆積の実験条件は、以下である:前駆体容器温度35℃、ウェハ温度150℃、チャンバー圧力10トル、及び、水素流速500sccm。
【0093】
同一条件を用いてただし前駆体としてCCTBAを用いて堆積された膜との比較における、コバルト膜の厚さ及び膜特性を、表3に示す。両前駆体に関して、堆積時間は、10分である。
【0094】
【表3】
【0095】
堆積温度を175℃にまで上げると、両前駆体において、不純物がより多くなった。従って、この比較例によって明らかにされたことは、R
1及びR
2が三級アルキル基でないCo
2(CO)
6(nPrC≡Me)前駆体は、CCTBA前駆体を用いたコバルト膜と比較して、相当に高い量の炭素(28.2at%)を有するコバルト膜を提供したことである。
【0096】
[例3]
[(tert−ブチルメチルアセチレン)ジコバルトヘキサカルボニル(CCTMA)/(tBu)CC(Me)(Co)
2(CO)
6の合成及び熱特性]
換気式フード内で、4,4−ジメチル−2−ペンチン(5g、52mmol)のヘキサン溶液(50mL)を、30分にわたって、Co
2(CO)
8(17.0g、48mmol)のヘキサン溶液(150mL)に、添加した。4,4−ジメチル−2−ペンチン溶液の各分割量の添加の際に、COの発生が観察された。結果として得られた暗赤/茶色の溶液を、室温において、4時間の間、撹拌した。揮発物を、室温にて真空下で除去して、暗茶色の固体を得た。固体を、〜25mLのヘキサンに溶解し、かつ、Celite545のパッドでろ過した。真空下でヘキサンを除去したところ、暗赤〜茶色の固体が得られた。この固体を、真空下で、35℃(0.6mTorr)にて、昇華によって精製した。
【0097】
溶液IR分析(10%ヘキサン溶液)によって見られたのは、カルボニル配位子に対応する一つのピークであり、出発原料であるジコバルトオクタカルボニルに対応するピークは見られなかった。
【0098】
CCTMAの
1HNMRスペクトルは、分子構造と一致する、期待される1:3の強度を有する2セットの共鳴を示した[2.3ppm(s)、1H;1.1ppm(s)、3H]。
【0099】
CCTMAのダイナミック熱質量分析(TGA)を、流動窒素下で行った。そしてこれを、本発明における他のコバルト錯体のデータと共に、
図1において示した。
【0100】
およそ160℃において、蒸発速度の増加が見られ、これは、可能的には融点を示す。
【0101】
最終的な非揮発性残留物の重量は、当初重量の0.6%であった。CCTMA試料の示差走査熱量測定によって、融点が〜160℃であることが確認された。
【0102】
[例4]
[(2,2−ジメチル−3−ヘプチン)ジコバルトヘキサカルボニル(コバルトカルボニルtert−ブチルプロピルアセチレン、CCTPA)の調製]
十分に換気されたフードにおいて、2,2−ジメチル−3−ヘプチン(5g、40mmol)のヘキサン溶液(25mL)を、30分にわたって、Co
2(CO)
8(12.3g、36mmol)のヘキサン溶液(75mL)に添加した。2,2−ジメチル−3−ヘプチン溶液の各分割量の添加の際に、COの発生が見られた。結果として得られた暗赤色〜茶色の溶液を、室温で、16時間の間、撹拌した。揮発物を、室温にて真空下で除去して、暗茶色の、固体と液体の混合物を得た。固体/液体混合物を、〜50mLのヘキサンに溶解させ、かつ、Celite545のパッドによってろ過した。真空下でヘキサンを除去したところ、固体及び液体の暗茶色の混合物が得られた。この原料を、10mLのヘキサンに溶解させた。純粋ヘキサンを溶出液として用いて、クロマトグラフィーカラム(直径〜3cm)に、8インチの中性の活性アルミナを充填した。原料溶液を、カラム上に載せ、ヘキサンを用いて溶出した。暗茶色のバンドがカラムの上部に残り、一方で、鮮紅色のバンドが、ヘキサンと共に、カラムを素早く下った。この紅色バンドを回収し、減圧乾燥させて、粘着性の暗赤色の固体を得た。
【0103】
この固体を
1HNMR及び
13CNMR分析したところ、期待される生成物と整合する共鳴が示された。
【0104】
ヘキサン溶液におけるIR分析では、2050及び2087cm
−1において、金属に結合したCO配位子に対応する二つの強いバンドが見られた。
【0105】
[例5]
[2,2−ジメチル−3−デシン(tert−ブチルn−ヘキシルアセチレン)の合成]
窒素グローブボックス内における、tert−ブチルアセチレン(3,3−ジメチル−1−ブチン)溶液の調製は、tert−ブチルアセチレン(5.0g、61mmol)を、100mLの無水THFと共に、500mLのシュレンク管に入れることによって、行った。60mLの滴下漏斗(addition funnel)に、2.5Mのn−ブチルリチウムのヘキサン溶液(60mmol)24mLを添加した。シュレンク管及び滴下漏斗を、グローブボックスから取り出して、換気式フードにおいて組み立てた。tert−ブチルアセチレン溶液を、0℃にまで冷却した。n−ブチルリチウム溶液を、tert−ブチルアセチレン溶液に、撹拌しつつ、20分にわたり、滴下によって、添加した。添加が終了した後に、無色の溶液を、2時間にわたって、撹拌しつつ、室温にまで戻した。結果として得られた溶液を、0℃まで冷却した。60mLの滴下漏斗に、1−ヨードヘキサン(11.4g、54mmol)及び40mLの無水THFを添加した。この溶液を、冷却したリチウムtert−ブチルアセチリド溶液に、撹拌しつつ、30分にわたり、滴下によって、添加した。溶液を、室温に戻し、室温で2.5日間にわたって、撹拌した。結果として得られた無色の溶液を、GC−MSによってサンプリングした結果、所望の生成物の収率が〜95%であったことが示された。窒素下で、脱イオン水(100mL)を、溶液に添加し、二相混合物を形成させた。そして次に、追加のヘキサン100mLを、二相混合物に添加して、相分離を促進させた。10分間の撹拌の後に、二つの相を分離した。分離する前に、第二の100mL分割量の脱イオン水を加えて、有機層の抽出を行った。二つの洗浄水を合わせて、そして、50mLのヘキサンで抽出を行った。有機画分を合わせて、そして、無水硫酸マグネシウムを用いて、30分間、撹拌することによって、乾燥させた。硫酸マグネシウムを、ガラスフリットでろ過することによって、取り除いた。結果として得られる、澄んだ、無色の溶液を、静的真空下で、蒸留して、溶媒を除いた。リボイラーの温度を20℃に、凝縮器を‐10℃に、かつ、回収フラスコを‐78℃(ドライアイス)に保ちつつ、蒸留装置を〜10トルにまで減圧し、そして、バルブを閉めることによって、吸引ラインから隔離した。溶媒の除去を、〜1.5時間にわたって行い、〜10ccの無色の液体がリボイラー内に残った。回収フラスコを取り出し、そして、別の、より小さい回収フラスコを取り付けた。このフラスコを、−78℃にまで冷却して、かつ、凝縮器の温度を−2℃に設定した。動的真空下(〜1トル)において、残っていた液体のおよそ半分が、この回収フラスコに移った。
【0106】
GC−MS分析によって、2,2−ジメチル3−デシンが、>99%の純度で単離されたことが示された。
【0107】
[例6]
[(2,2−ジメチル−3−デシン)ジコバルトヘキサカルボニル(コバルトカルボニルtert−ブチルn−ヘキシルアセチレン、CCTHA)の合成]
換気式フードにおいて、2,2−ジメチル−3−デシン(4.15g、25mmol)のヘキサン溶液(25mL)を、Co
2(CO)
8(7.85g、23mmol)のヘキサン溶液(75mL)に、30分間にわたって添加した。2,2−ジメチル−3−デシン溶液の各分割量の添加の際に、COの発生がわずかに観察された。結果として得られた暗赤色−茶色の溶液を、室温で四時間の間、撹拌した。揮発物を、室温にて真空下で除去して、いくらかの浮遊固体を有する、暗赤色の液体を得た。クロマトグラフィーカラム(直径〜3cm)を、純粋なヘキサンを溶出剤として用いて、10インチの中性の活性アルミナで充填した。5mLの、何も混ぜていない(neat)原料を、カラム上に載せ、ヘキサンを用いて溶出した。赤茶色のバンドが、ヘキサンとともに、素早くカラムを下った。少量の黒色の材料が、カラム上部に残った。赤茶色のバンドを回収し、〜500mTorrに減圧して、暗赤色の液体を得た。
【0108】
精製されたCCTHA試料の
1HNMR分析(d
8−トルエン):2.66(m)、1.61(m)、1.23(m)、1.17(s)、0.86(t)。
【0109】
[例7]
[2,2,6−トリメチル−3−ヘプチン(tert−ブチルイソブチルアセチレン)の合成]
tert−ブチルアセチレン(3,3−ジメチル−1−ブチン)溶液の調製は、窒素グローブボックス内で、tert−ブチルアセチレン(5.0g、61mmol)を、100mLの無水THFと共に、250mLのシュレック管に入れることによって行った。60mLの滴下漏斗に、2.5Mのn−ブチルリチウムのヘキサン溶液(60mmol)24mLを添加した。シュレンク管及び滴下漏斗を、グローブボックスから取り出して、そして、換気式フードにおいて組み立てた。tert−ブチルアセチレン溶液を、0℃にまで冷却した。n−ブチルリチウム溶液を、tert−ブチルアセチレン溶液に、撹拌しつつ、20分にわたり、滴下によって、添加した。添加が終了した後に、淡黄色溶液を、2時間にわたって、撹拌しつつ、室温にまで戻した。結果として得られた溶液を、0℃まで冷却した。60mLの滴下漏斗に、1−ヨード−2−メチルプロパン(9.9g、54mmol)及び20mLの無水THFを添加した。この溶液を、冷却したリチウムtert−ブチルアセチリド溶液に、撹拌しつつ、30分にわたり、滴下によって、添加した。添加の間に、色が、淡黄色から、無色に変化した。溶液を、室温に戻して、室温で2日間にわたって、撹拌した。GC−MS分析によって、期待される生成物への変換がほぼ完全に起こったことが示された。脱イオン水(2x100mL)を用いて、溶液の抽出処理を行った。50mLのヘキサンを用いて、洗浄水の抽出処理を行った。有機画分を合わせて、そして、無水硫酸マグネシウムを用いて、30分間、乾燥させた。減圧(〜10トル)下で、蒸留することによって、溶媒を除去した。残った無色の液体を、真空(〜500mTorr)下で、−78℃にまで冷却した受器内に、蒸留した。
【0110】
生成物のGC−MS分析によって、生成物は、>98%の純度で回収されたことが示された。
【0111】
[例8]
[(2,2,6−トリメチル−3−ヘプチン)ジコバルトヘキサカルボニル(コバルトカルボニルTert−ブチルイソブチルアセチレン、CCTIBA)の合成]
換気式フード内で、2,2,6−トリメチル−3−ヘプチン(0.95g、6.6mmol)のヘキサン溶液(15mL)を、20分にわたって、撹拌されたCo
2(CO)
8(2.1g、6.2mmol)のヘキサン溶液(45mL)に添加した。2,2,6−トリメチル−3−ヘプチン溶液の添加の際に、わずかにCOの発生が観察された。結果として得られた暗茶色の溶液の色は、室温において四時間にわたり撹拌する間に、暗赤色に変化した。揮発物を除去して、暗茶色の固体を得た。5mLのヘキサンを添加して、いくらかの浮遊固体を有する、暗赤〜茶色の液体を得た。純粋なヘキサンを溶出液として用いて、クロマトグラフィーカラム(直径〜3cm)に、8インチの中性の活性アルミナを充填した。原材料を、カラム上に載せて、ヘキサンを用いて溶出した。茶色のバンドが、ヘキサンと共に、素早くカラムを下った。少量の暗紫色の材料が、カラムの上部1”に保持された。赤茶色のバンドを回収し、そして、シュレンクラインでベース真空にまで減圧して(〜500mTorr)、暗い粘着性の赤茶色の固体を得た。
【0112】
流動窒素下での、室温から400℃までの加熱による、CCTIBAのTGA分析によって、1.3%の非揮発性残留物が見られた。
【0113】
CCTIBAの
1HNMR分析は、生成物が、高純度(>99%)を有することを示す。化学シフト(d
8−トルエン):2.55(2H、d)、1.80(1H,m)、1.15(9H,s)、0.97(6H,d)。
【0114】
CCTIBAの
13CNMR分析によって、以下の化学シフト(d
8−トルエン)が得られる:199.8、111.6、98.2、41.1、35.4、31.0、30.0、22.2。
【0115】
[例9]
[2,2−ジメチル−3−オクチン(tert−ブチルn−ブチルアセチレン)の合成]
tert−ブチルアセチレン(3,3−ジメチル−1−ブチン)溶液の調製は、窒素グローブボックス内で、tert−ブチルアセチレン(32.8g、0.4mol)を、500mLの無水THFと共に、1000mLの丸底フラスコに入れることによって、行った。500mLの滴下漏斗に、150mLの、2.5Mのn−ブチルリチウムのヘキサン溶液(0.375mol)を添加した。フラスコ及び滴下漏斗を、グローブボックスから取り出して、そして、フードにおいて組み立てた。tert−ブチルアセチレン溶液を、0℃まで冷却した。n−ブチルリチウム溶液を、撹拌しつつ、30分間にわたって、tert−ブチルアセチレン溶液に、滴下によって、添加した。添加が完了した後に、無色の溶液を、撹拌しつつ、二時間にわたって、室温に戻した。500mLの滴下漏斗に、1−ヨードブタン(64.4g、0.35mol)及び100mLの無水TFHを添加した。この溶液を、撹拌しつつ、30分間にわたって、滴下によって、リチウムtert−ブチルアセチリド溶液に添加した。溶液を、3日間の間、室温で撹拌した。少量の試料のGC−MS分析によって、生成物への完全な変換が示された。溶液を、100mLの脱イオン水を用いて、二回、抽出処理した。洗浄液を、200mLのヘキサンで、抽出処理し、そして、この抽出物を、THF/ヘキサン溶液と合わせた。有機溶液を、30分間、硫酸マグネシウムで、乾燥させた。この時間の間に、無色の溶液は、浅黄色になった。合わされた有機溶液を、リボイラーを20℃に、凝縮器を0℃に、かつ回収フラスコを−78℃に保持しつつ、減圧(〜10Torr)で蒸留した。溶媒の除去後に、別の回収フラスコを取り付け、そして、リボイラーを25℃に、凝縮器を0℃に、かつ、回収フラスコを−78℃に保持しつつ、残りの揮発性物質を蒸留した。第二の蒸留の間の圧力は、〜2トルであった。すべての揮発性物質が移った時に、回収フラスコを、室温に戻した。無色の液体を、GC−MSを用いて分析し、高純度の生成物(>99%純度、42.2g、87%の収率)の存在を確認した。
【0116】
2,2−ジメチル−3−オクチンの
1HNMR分析によって、以下の化学シフトが得られる:2.03(t、2H);1.33(m、4H);1.19(s、9H);0.80(t、3H)。
【0117】
[例10]
[(2,2−ジメチル−3−オクチン)ジコバルトヘキサカルボニル(コバルトカルボニルtert−ブチルn−ブチルアセチレン(CCTNBA)の合成]
換気式フード内で、2,2−ジメチル−3−オクチン(21.5g、0.15mol)のヘキサン溶液(100mL)を、30分間にわたって、Co
2(CO)
8(47.5g、0.14mol)のヘキサン溶液(700mL)に添加した。2,2−ジメチル−3−オクチン溶液の添加の際に、COの発生が明らかに観察された。結果として得られた暗茶色の溶液は、四時間にわたる室温での撹拌の間に、暗赤茶色に変化した。リボイラーを25℃(凝縮器の温度−5℃;回収フラスコの温度−78℃)に保持しつつ、ヘキサンを、真空蒸留を用いて除去して、暗色の固体を有する暗赤色の液体を得た。クロマトグラフィーカラム(直径〜3インチ)を、純粋ヘキサンを溶出液として用いて、8インチの中性の活性アルミナで充填した。原料を、カラムの上に載せ、そして、ヘキサンを用いて溶出した。茶色のバンドが、ヘキサンと共に、カラムを素早く下った。暗紫色の材料が、カラムの上部2〜3”に保持された。赤茶色のバンドを回収し、そして、シュレンクラインで減圧して(〜700mTorr)、40.0gの暗赤色の液体を得た。
【0118】
CCTNBAの
1HNMR分析によって、高純度(NMRアッセイ99.6%)であることが示された。化学シフト(d
8−トルエン):2.66(t、2H)、1.60(m、2H)、1.29(m、2H),1.17(s、9H)、0.86(t、3H)。
【0119】
(2,2−ジメチル−3−オクチン)ジコバルトヘキサカルボニル(コバルトカルボニルtert−ブチルn−ブチルアセチレン、CCTNBA)の等温TGAデータを、流動窒素下で75℃にて計測し、
図2に示した。この錯体は、〜200分のうちに蒸発し、非揮発性残留物は、0.55%と低く、CCTNBA前駆体の、良好な熱安定性が確認された。
【0120】
図3は、密閉されたSS316DSCパン内で計測された、(3,3−ジメチル−1−ブチン)ジコバルトヘキサカルボニル(CCTBA)及び(2,2−ジメチル−3−オクチン)ジコバルトヘキサカルボニル(CCTNBA)についての、示差走査熱量測定(DSC)データの比較を示す。
【0121】
[例11]
[CCTMAを用いた、Co膜の堆積]
堆積プロセスにおいて、反応炉チャンバーへのCCTMAの配送は、CCTMAで充填されたステンレス鋼容器内に、50sccmのアルゴンを通過させることにより行った。容器の温度を、30℃〜60℃で変化させて、CCTMA前駆体の十分な蒸気圧を得た。基材温度は、125℃〜200℃の間で変化させた。反応炉チャンバーの圧力は、5〜20トルの範囲で変化させた。堆積試験を、500〜1000sccmの水素又はアルゴン気流の存在下で行った。異なる厚さ(2〜70nm)のCo膜を得るために、堆積時間を、20秒〜20分で変化させた。
【0122】
図4は、(3,3−ジメチル−1−ブチン)ジコバルトヘキサカルボニル(CCTBA)及び(4,4−ジメチル−2−ペンチン)ジコバルトヘキサカルボニル(CCTMA)に関しての、膜厚に対するCo膜の抵抗率を重ね合わせたものを示す。CCTMA及びCCTBAを用いて、150℃の基材温度で、Co膜を堆積した。
【0123】
基材の温度を175℃、そして200℃に上げたときに、CCTMAを用いて堆積されたCo膜の抵抗率は、低減されて、200℃の基材温度でCCTMAを用いて堆積されたCo膜の抵抗率が、150℃の基材温度でCCTBAを用いて堆積された膜よりも、同じ膜厚において、約50%低くなる点にまで低減する、ということが
図4によって示される。すべての場合において、膜の抵抗率が低いほど、高い抵抗率を有する膜と比較して、炭素含有量がより低かった。従って、本発明で記載の膜の抵抗率は、堆積された膜の残留炭素含有量の関数である。
【0124】
図4では、CCTMAは、CCTBAから堆積されるコバルト膜と比較して、はるかに低い抵抗率を有するCo膜を提供したことが、示される。
【0125】
図5は、Co膜前駆体として4,4−ジメチル−2−ペンチンジコバルトヘキサカルボニル(CCTMA)を用いてSiO
2上に堆積されたコバルト膜の、透過電子顕微鏡(TEM)画像を示す。
【0126】
図5は、Co金属の連続的な膜が、〜2nmほどの低い薄さで、SiO
2上に形成され得ることを明示する。
【0127】
膜を、CCTMA及びCCTBAから堆積し、かつ、X線光電子分光(XPS)によって分析して、金属膜にわたる元素濃度を決定した。CCTMAの堆積条件は、前駆体の供給温度=50℃、ウェハ温度=200℃、堆積時間=10分であった。CCTBAの堆積条件は、前駆体の供給温度=35℃、ウェハ温度=175℃、堆積時間=3分であった。150℃においてCCTBAから堆積されたコバルト膜は、より低い炭素量、6.2%を含んでいたが、膜内の炭素量は、同一の温度でCCTMAから堆積されたコバルト膜内の炭素量(3.7at%)と比較して、依然として相当に高かった。
【0128】
図6は、Co膜前駆体として、(3,3−ジメチル−1−ブチン)ジコバルトヘキサカルボニル(CCTBA)及び4,4−ジメチル−2−ペンチンジコバルトヘキサカルボニル(CCTMA)を用いてSiO
2上に堆積させたコバルト膜の、XPSデータを示す。
【0129】
図6が示すのは、Co膜前駆体としてCCTMAを用いてSiO
2上に堆積されたCo膜の炭素レベルは、Co膜前駆体としてCCTBAを用いて堆積された膜(11.1at%)よりも、有意に低い、0.4at%である、ということである。
【0130】
CCTMAを用いてCo膜を堆積させる条件は、容器温度50℃、ウェハ温度200℃、堆積時間10分、であった。CCTBAを用いてCo膜を堆積させる条件は、容器温度35℃、ウェハ温度175℃、堆積時間3分、であった。
【0131】
[例12]
[CCTNBAを用いた低抵抗率Co膜の堆積]
堆積プロセスにおいて、CCTNBAの反応炉チャンバーへの配送は、CCTNBAで充填されたステンレス鋼容器に、50sccmのアルゴンを通過させることによって、行った。プロセスの条件は、容器温度50℃、水素気流50sccm、圧力10トルであった。基材温度は、150−200℃の範囲であった。基材は、SiO
2であった。
【0132】
表4は、堆積時間及び基材温度への、膜厚の依存性を示す。
【0133】
【表4】
【0134】
表4のデータは、基材温度が高いほど、Co膜前駆体としてCCTNBAを用いたときのCo膜厚が、より厚くなることを示す。
【0135】
[例13]
[CCTMA溶液の調製]
CCTMAのヘキサン溶液は、マグネット撹拌子を用いて撹拌しつつ、ヘキサンにCCTMAを溶解させることによって、調製した。CCTMAの70wt%ヘキサン溶液の調製は、固体を、ヘキサン中で20℃において10分間撹拌することによって、行った。
【0136】
[例14]
[CCTPA溶液の調製]
CCTPAのヘキサン溶液は、マグネット撹拌子を用いて撹拌しつつ、ヘキサンにCCTPAを溶解させることによって、調製した。CCTPAの>50wt%溶液の調製は、固体を、ヘキサン中で20℃において5分間撹拌することによって、行った。
【0137】
本発明の原理を、好ましい実施態様との関連において上述したが、明確に理解される通り、この記載は、単に例示としてなされたものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
本開示の実施態様として、下記の実施態様を挙げることができる。
〈付記1〉
化学式がCo2(CO)6(R1C≡CR2)であり、R1は、三級アルキル基であり、かつ、R2は、少なくとも2個の炭素原子を有している直鎖アルキル基、イソプロピル、及びイソブチルからなる群より選ばれる、二置換アルキンジコバルトヘキサカルボニル化合物。
〈付記2〉
前記三級アルキル基が、tert−ブチル及びtert−アミルからなる群より選ばれる、付記1に記載の二置換アルキンジコバルトヘキサカルボニル化合物。
〈付記3〉
前記直鎖アルキル基が、n−エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、及びn−ヘキシルからなる群より選ばれる、付記1に記載の二置換アルキンジコバルトヘキサカルボニル化合物。
〈付記4〉
前記二置換アルキンジコバルトヘキサカルボニル化合物が、(2,2−ジメチル−3−ヘプチン)ジコバルトヘキサカルボニル(CCTPA)、(2,2,6−トリメチル−3−ヘプチン)ジコバルトヘキサカルボニル(CCTIBA)、(2,2−ジメチル−3−オクチン)ジコバルトヘキサカルボニル(CCTNBA)、及び(2,2−ジメチル−3−デシン)ジコバルトヘキサカルボニル(CCTHA)からなる群より選ばれる、付記1に記載の二置換アルキンジコバルトヘキサカルボニル化合物。
〈付記5〉
30℃以下の温度において、液体の化合物である、付記1に記載の二置換アルキンジコバルトカルボニルヘキサカルボニル化合物。
〈付記6〉
前記二置換アルキンジコバルトヘキサカルボニル化合物が、(2,2−ジメチル−3−オクチン)ジコバルトヘキサカルボニル(CCTNBA)である、付記5に記載の二置換アルキンジコバルトヘキサカルボニル化合物。
〈付記7〉
R1C≡CR2の構造を有しており、R1が、三級アルキル基であり、かつ、R2が、少なくとも2個の炭素原子を有している直鎖アルキル基、イソプロピル、及びイソブチルからなる群より選ばれる、二置換アルキン錯体を、溶媒中でジコバルトオクタカルボニルに添加する工程;並びに
前記二置換アルキン錯体が、前記溶媒中で前記ジコバルトオクタカルボニルと反応して、二置換アルキンジコバルトヘキサカルボニル化合物を形成する工程;
を含んでいる、二置換アルキンジコバルトヘキサカルボニル化合物を合成するための方法。
〈付記8〉
前記三級アルキル基が、tert−ブチル及びtert−アミルからなる群より選ばれ、並びに、前記直鎖アルキル基が、n−エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、及びn−ヘキシルからなる群より選ばれる、付記7に記載の方法。
〈付記9〉
前記二置換アルキンが、2,2,6−トリメチル−3−ヘプチン、2,2−ジメチル−3−オクチン、2,2−ジメチル−3−デシン、及び2,2−ジメチル−3−ヘプチンからなる群より選ばれ、
並びに、
前記溶媒が、ヘキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、トルエン、及びこれらの組合せからなる群より選ばれる、付記7に記載の方法。
〈付記10〉
前記二置換アルキンジコバルトヘキサカルボニル化合物が、(2,2,6−トリメチル−3−ヘプチン)ジコバルトヘキサカルボニル(CCTIBA)、(2,2−ジメチル−3−オクチン)ジコバルトヘキサカルボニル(CCTNBA)、(2,2−ジメチル−3−デシン)ジコバルトヘキサカルボニル(CCTHA)、及び(2,2−ジメチル−3−ヘプチン)ジコバルトヘキサカルボニル(CCTPA)からなる群より選ばれ、並びに、前記溶媒が、ヘキサンである、付記7に記載の方法。
〈付記11〉
前記二置換アルキンジコバルトカルボニルヘキサカルボニル化合物が、30℃以下の温度において、液体の化合物である、付記7に記載の方法。
〈付記12〉
前記二置換アルキンヘキサカルボニル化合物が、(2,2−ジメチル−3−オクチン)ジコバルトヘキサカルボニル(CCTNBA)である、付記11に記載の方法。
〈付記13〉
反応炉内において、基材上にCo膜を堆積する方法であって、
前記基材を、前記反応炉に提供すること;
Co前駆体を、前記反応炉に提供すること;
前記基材を、前記Co前駆体に接触させること;及び
前記基材上に、前記Co膜を形成させること;
を含み、
ここで、前記Co前駆体が、化学式がCo2(CO)6(R1C≡CR2)の二置換アルキンジコバルトカルボニルヘキサカルボニル化合物であり、R1が、三級アルキル基であり、かつR2が、直鎖アルキル基、イソプロピル、及びイソブチルであり、
並びに
前記基材が、金属、金属酸化物、金属窒化物、ケイ素、酸化ケイ素、窒化ケイ素、TaN,及びこれらの組合せからなる群より選ばれる、方法。
〈付記14〉
前記三級アルキル基が、tert−ブチル及びtert−アミルからなる群より選ばれ、並びに、前記直鎖アルキル基が、n−エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、及びn−ヘキシルからなる群より選ばれる、付記13に記載の方法。
〈付記15〉
前記二置換アルキンジコバルトカルボニルヘキサカルボニル化合物が、(2,2,6−トリメチル−3−ヘプチン)ジコバルトヘキサカルボニル(CCTIBA)、(2,2−ジメチル−3−オクチン)ジコバルトヘキサカルボニル(CCTNBA)、(2,2−ジメチル−3−デシン)ジコバルトヘキサカルボニル(CCTHA)、(2,2−ジメチル−3−ヘプチン)ジコバルトヘキサカルボニル(CCTPA)、(tert−ブチルメチルアセチレン)ジコバルトヘキサカルボニル(CCTMA)、及び(tert−ブチルメチルアセチレン)ジコバルトヘキサカルボニル(CCTMA)からなる群より選ばれる、付記13に記載の方法。
〈付記16〉
前記二置換アルキンジコバルトカルボニルヘキサカルボニル化合物が、30℃以下の温度において、液体の化合物である、付記13に記載の方法。
〈付記17〉
前記二置換アルキンジコバルトカルボニルヘキサカルボニル化合物が、(2,2−ジメチル−3−オクチン)ジコバルトヘキサカルボニル(CCTNBA)である、付記16に記載の方法。
〈付記18〉
前記Co膜が、コバルト膜、酸化コバルト膜、コバルトシリサイド膜、窒化コバルト膜、及びこれらの組合せからなる群より選ばれる、付記13に記載の方法。
〈付記19〉
前記Co膜が、熱CVD,熱ALD,プラズマ強化型ALD(PEALD)、プラズマ強化型化学気相成長(PECVD)、及びプラズマ強化型サイクリック化学気相成長(PECCVD)からなる群より選ばれる方法によって堆積される、付記13に記載の方法。
〈付記20〉
化学式がCo2(CO)6(R1C≡CR2)であり、ここで、R1が、三級アルキル基であり、かつR2が、直鎖アルキル基、イソプロピル、及びイソブチルである、二置換アルキンジコバルトカルボニルヘキサカルボニル化合物を用いて堆積した、コバルト含有膜。
〈付記21〉
前記三級アルキル基が、tert−ブチル及びtert−アミルからなる群より選ばれ、並びに、前記直鎖アルキル基が、n−エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、及びn−ヘキシルからなる群より選ばれる、付記20に記載のコバルト含有膜。
〈付記22〉
前記二置換アルキンジコバルトカルボニルヘキサカルボニル化合物が、(2,2,6−トリメチル−3−ヘプチン)ジコバルトヘキサカルボニル(CCTIBA)、(2,2−ジメチル−3−オクチン)ジコバルトヘキサカルボニル(CCTNBA)、(2,2−ジメチル−3−デシン)ジコバルトヘキサカルボニル(CCTHA)、(2,2−ジメチル−3−ヘプチン)ジコバルトヘキサカルボニル(CCTPA)、及び(tert−ブチルメチルアセチレン)ジコバルトヘキサカルボニル(CCTMA)からなる群より選ばれる、付記20に記載のコバルト含有膜。
〈付記23〉
前記二置換アルキンジコバルトカルボニルヘキサカルボニル化合物が、30℃以下の温度において、液体の化合物である、付記20に記載のコバルト含有膜。
〈付記24〉
前記二置換アルキンジコバルトカルボニルヘキサカルボニル化合物が、(2,2−ジメチル−3−オクチン)ジコバルトヘキサカルボニル(CCTNBA)である、付記23に記載のコバルト含有膜。
〈付記25〉
前記コバルト含有膜が、コバルト膜、酸化コバルト膜、コバルトシリサイド膜、及び窒化コバルト膜からなる群より選ばれる、付記20に記載のコバルト含有膜。
〈付記26〉
前記コバルト含有膜が、熱CVD,熱ALD,プラズマ強化型ALD(PEALD)、プラズマ強化型化学気相成長(PECVD)、及びプラズマ強化型サイクリック化学気相成長(PECCVD)からなる群より選ばれる方法を用いて堆積される、付記20に記載のコバルト含有膜。
〈付記27〉
前記コバルト含有膜が、2.5at%よりも少ない炭素を含有している、付記20に記載のコバルト含有膜。
〈付記28〉
前記コバルト含有膜が、0.5at%よりも少ない炭素を含有している、付記20に記載のコバルト含有膜。