特許第6731415号(P6731415)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6731415EUV多層ミラー、多層ミラーを含む光学系及び多層ミラーを製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6731415
(24)【登録日】2020年7月8日
(45)【発行日】2020年7月29日
(54)【発明の名称】EUV多層ミラー、多層ミラーを含む光学系及び多層ミラーを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20200716BHJP
   G21K 1/06 20060101ALI20200716BHJP
   G21K 3/00 20060101ALI20200716BHJP
   G02B 1/118 20150101ALI20200716BHJP
【FI】
   G03F7/20 503
   G21K1/06 B
   G21K3/00 S
   G21K3/00 M
   G21K1/06 D
   G02B1/118
【請求項の数】25
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2017-541954(P2017-541954)
(86)(22)【出願日】2015年2月10日
(65)【公表番号】特表2018-511818(P2018-511818A)
(43)【公表日】2018年4月26日
(86)【国際出願番号】EP2015052767
(87)【国際公開番号】WO2016128029
(87)【国際公開日】20160818
【審査請求日】2018年2月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100147692
【弁理士】
【氏名又は名称】下地 健一
(72)【発明者】
【氏名】ヒュアン キューシ
(72)【発明者】
【氏名】エリック ルイス
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック ビーカーク
(72)【発明者】
【氏名】メイント ジェレ デ ブール
(72)【発明者】
【氏名】ジゼラ フォン ブランケンハーゲン
【審査官】 冨士 健太
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−536456(JP,A)
【文献】 特開2015−018918(JP,A)
【文献】 特開2008−288299(JP,A)
【文献】 特開2010−272801(JP,A)
【文献】 特表2011−530823(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/132586(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/109986(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0248917(US,A1)
【文献】 特表2014−508414(JP,A)
【文献】 特開2005−331868(JP,A)
【文献】 特開2011−103392(JP,A)
【文献】 特開2014−221554(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00− 1/92
7/20− 7/24
9/00− 9/02
G02B 1/118
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
EUVスペクトル領域の第1波長域からの極紫外(EUV)放射を反射する多層ミラー(M)であって、
基板(SUB)と、
該基板上の層スタック(SL)と、を備え、
該層スタックは、低屈折率材料及び高屈折率材料を含む層を備え、前記低屈折率材料は、第1波長域の所与の作動波長λで前記高屈折率材料よりも屈折率実部が低く、
前記層スタックは、該層スタックの頂部にスペクトル純度フィルタを備え、該スペクトル純度フィルタは、前記多層ミラーのEUV‐UV反射率比を増加させるために、UVスペクトル領域の第2波長域からの紫外(UV)放射に対する反射防止層として有効である多層ミラー(M)において、
前記スペクトル純度フィルタ(SPF)は、第2波長域の反射率を低減するために有効な非回折性の屈折率分布型反射防止層(GI−AR)を備え、
前記非回折性の屈折率分布型反射防止層(GI−AR)はサブ波長構造(SWS)を備え、該サブ波長構造(SWS)は、第2波長域のUV波長よりも小さい横方向の寸法を有する構造素子(SE)を備え、前記サブ波長構造(SWS)は、屈折率分布を有して前記層スタックの放射入射表面で光学的コントラストを低減可能であり及び少なくとも部分的に紫外放射の反射を抑制可能な有効媒体として、第2波長域の紫外放射に対して有効であるように構成される、多層ミラー(M)。
【請求項2】
サブ波長構造(SWS)は、構造素子(SE)のアレイを備える構造であって、前記構造素子(SE)は、有効屈折率が第2波長域において基板側から放射入射側へ単調に変化する、請求項に記載の多層ミラー。
【請求項3】
サブ波長構造(SWS)は周期構造であり、該周期構造は、周期的表面レリーフ構造を形成するテーパ形構造素子(SE)のアレイを備える、請求項1又は2に記載の多層ミラー。
【請求項4】
サブ波長構造は、テーパ形構造素子のアレイを供える周期構造であり、該周期構造は周期的表面レリーフ構造を形成し、該周期的表面レリーフ構造は単一の周期性を全反射表面に亘って備えるか、又はサブ波長構造は、2つ以上の異なるプロファイルのテーパ形構造が全反射表面上で組み合わされた結合型周期構造である、請求項1〜3の何れか一項に記載の多層ミラー。
【請求項5】
サブ波長構造(SWS)は、ピラミッド形アレイ表面レリーフ構造を備える、請求項1〜4の何れか一項に記載の多層ミラー。
【請求項6】
周期的なサブ波長構造(SWS)の周期長(PSWS)は、第1波長域の波長よりも大きく、及び第2波長域の波長よりも小さい、請求項3〜5の何れか一項に記載の多層ミラー。
【請求項7】
周期的なサブ波長構造(SWS)の周期長(PSWS)は、25nmから100nmまでの範囲にある、請求項3〜6の何れか一項に記載の多層ミラー。
【請求項8】
サブ波長構造(SWS)の構造的深さ(SDSWS)は、第2波長域の波長よりも小さい、請求項1〜7の何れか一項に記載の多層ミラー。
【請求項9】
EUVスペクトル領域の第1波長域からの極紫外(EUV)放射を反射する多層ミラー(M)であって、
基板(SUB)と、
該基板上の層スタック(SL)と、を備え、
該層スタックは、低屈折率材料及び高屈折率材料を含む層を備え、前記低屈折率材料は、第1波長域の所与の作動波長λで前記高屈折率材料よりも屈折率実部が低く、
前記層スタックは、該層スタックの頂部にスペクトル純度フィルタを備え、該スペクトル純度フィルタは、前記多層ミラーのEUV‐UV反射率比を増加させるために、UVスペクトル領域の第2波長域からの紫外(UV)放射に対する反射防止層として有効である多層ミラー(M)において、
前記スペクトル純度フィルタ(SPF)は、第2波長域の反射率を低減するために有効な非回折性の屈折率分布型反射防止層(GI−AR)を備え、
非回折性の屈折率分布型反射防止層は、第1波長域のEUV放射に対して0.007未満の吸光係数を有する吸収の低い単一材料から形成される、多層ミラー。
【請求項10】
前記単一材料は、アモルファスシリコン(Si)、水素化シリコン(α‐Si:H)及び炭素(C)からなる群から選択される、請求項に記載の多層ミラー。
【請求項11】
EUVスペクトル領域の第1波長域からの極紫外(EUV)放射を反射する多層ミラー(M)であって、
基板(SUB)と、
該基板上の層スタック(SL)と、を備え、
該層スタックは、低屈折率材料及び高屈折率材料を含む層を備え、前記低屈折率材料は、第1波長域の所与の作動波長λで前記高屈折率材料よりも屈折率実部が低く、
前記層スタックは、該層スタックの頂部にスペクトル純度フィルタを備え、該スペクトル純度フィルタは、前記多層ミラーのEUV‐UV反射率比を増加させるために、UVスペクトル領域の第2波長域からの紫外(UV)放射に対する反射防止層として有効である多層ミラー(M)において、
前記スペクトル純度フィルタ(SPF)は、第2波長域の反射率を低減するために有効な非回折性の屈折率分布型反射防止層(GI−AR)を備え、
非回折性の屈折率分布型反射防止層は、層スタックの多層構造と同様の多層構造を備える、多層ミラー。
【請求項12】
保護キャッピング層が、非回折性の屈折率分布型反射防止層上に形成される、請求項1〜11の何れか一項に記載の多層ミラー。
【請求項13】
EUVスペクトル領域の第1波長域からの極紫外(EUV)放射を反射する多層ミラー(M)であって、
基板(SUB)と、
該基板上の層スタック(SL)と、を備え、
該層スタックは、低屈折率材料及び高屈折率材料を含む層を備え、前記低屈折率材料は、第1波長域の所与の作動波長λで前記高屈折率材料よりも屈折率実部が低く、
前記層スタックは、該層スタックの頂部にスペクトル純度フィルタを備え、該スペクトル純度フィルタは、前記多層ミラーのEUV‐UV反射率比を増加させるために、UVスペクトル領域の第2波長域からの紫外(UV)放射に対する反射防止層として有効である多層ミラー(M)において、
前記スペクトル純度フィルタ(SPF)は、第2波長域の反射率を低減するために有効な非回折性の屈折率分布型反射防止層(GI−AR)を備え、
非回折性の屈折率分布型反射防止層が、第2波長よりも大きい波長を有する第3波長域からの放射を回折するような寸法の回折格子構造上に配置される、多層ミラー。
【請求項14】
EUVスペクトル領域の第1波長域からの極紫外(EUV)放射を反射する多層ミラー(M)であって、
基板(SUB)と、
該基板上の層スタック(SL)と、を備え、
該層スタックは、低屈折率材料及び高屈折率材料を含む層を備え、前記低屈折率材料は、第1波長域の所与の作動波長λで前記高屈折率材料よりも屈折率実部が低く、
前記層スタックは、該層スタックの頂部にスペクトル純度フィルタを備え、該スペクトル純度フィルタは、前記多層ミラーのEUV‐UV反射率比を増加させるために、UVスペクトル領域の第2波長域からの紫外(UV)放射に対する反射防止層として有効である多層ミラー(M)において、
前記スペクトル純度フィルタ(SPF)は、第2波長域の反射率を低減するために有効な非回折性の屈折率分布型反射防止層(GI−AR)を備え、
多層ミラーは、EUV放射源から放射されるEUV放射を集光するコレクタミラー(COL)である、多層ミラー。
【請求項15】
EUVスペクトル領域の第1波長域からの極紫外(EUV)放射を反射する多層ミラー(M)を製造する方法であって、
基板(SUB)を提供するステップと、
該基板上に層スタック(SL)を形成するステップと、を含み、
該層スタックは、低屈折率材料及び高屈折率材料を含む層を備え、前記低屈折率材料は、第1波長域の所与の作動波長λで前記高屈折率材料よりも屈折率実部が低く、
前記層スタックの頂部にスペクトル純度フィルタを形成するステップを含み、該スペクトル純度フィルタは、前記多層ミラーのEUV‐UV反射率比を第1波長域において増加させるために、UVスペクトル領域の第2波長域からの紫外(UV)放射に対する反射防止層として有効である方法において、
前記スペクトル純度フィルタを形成するステップは、第2波長域の反射率を低減するために有効な非回折性の屈折率分布型反射防止層(GI−AR)を形成するステップを含み、
前記スペクトル純度フィルタを形成するステップは、規定のエネルギ範囲のエネルギを有する希ガスイオンから本質的になるイオンビームを、前記多層ミラーの自由表面上の目標部分上へと導くことで、前記多層ミラーの前記自由表面から材料を除去するステップを含む、方法。
【請求項16】
前記希ガスイオンを、アルゴン(Ar)イオン、ネオン(Ne)イオン、クリプトン(Kr)イオン及びキセノン(Xe)イオンからなる群から選択する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
材料を自由表面から、100eVから500eVまでの範囲のイオンエネルギで除去するステップを含む、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
除去するステップを、材料の除去後の自由表面の表面粗度が0.5nm rms未満となるよう制御する、請求項15〜17の何れか一項に記載の方法。
【請求項19】
イオンビームを発生させるステップが、イオン流束の独立制御及びイオンエネルギの独立制御を含む、請求項15〜18の何れか一項に記載の方法。
【請求項20】
希ガスイオンを、誘導結合プラズマ源(ICP)により発生させ、及び容量結合プラズマ(CCP)を、発生させたイオンをイオンビームとして目標部分に向けるために使用する、請求項15〜19の何れか一項に記載の方法。
【請求項21】
ミラーを基板ホルダ上に支承させ、及び基板ホルダを0℃未満の温度にまで冷却する、請求項15〜20の何れか一項に記載の方法。
【請求項22】
イオンを、実質的に垂直入射で目標部分に向ける、請求項15〜21の何れか一項に記載の方法。
【請求項23】
請求項1〜14の何れか一項に記載の、少なくとも1つの多層ミラーを含むEUV光学系。
【請求項24】
光学系がマイクロリソグラフィ投影露光装置の照明系である、請求項23に記載のEUV光学系。
【請求項25】
コレクタミラー(COL)を含む放射源を更に備える、請求項23又は24に記載のEUV光学系であって、前記コレクタミラーが、請求項1〜14の何れか一項に記載の多層ミラーであるEUV光学系。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極紫外(EUV)放射を反射する多層ミラー、及び少なくとも1つのそうしたミラーを含む光学系に関する。本発明は更に、多層ミラーを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
EUVリソグラフィ装置の照明系及び投影系等の、EUVリソグラフィの分野で用いられる光学系は、極紫外(EUV)波長域からの電磁放射に対する反射率が比較的高い反射光学素子を必要とする。EUV波長域は、例えば約5nm乃至20nmの間の波長を含む。この波長域の下限は、beyond EUV(BEUV)又は軟X線域と称する場合もある。EUVリソグラフィ系で用いられる光学素子は、曲面又は平面ミラー、反射フォトマスク、及びEUV放射の誘導又は構造化が可能な他の反射素子を含む。また反射光学素子は、EUV放射を用いるフォトマスク又は他のパターニング手段の検査に用いられる光学検査系において、又はEUV顕微鏡において、必要とされる。
【0003】
EUV又は軟X線域の放射の反射に用いられるいかなる材料も、屈折率実部が1に近いので、入射放射の数パーセントしか反射しない。材料の複素屈折率はn=(1−δ)+iβに従って、屈折率の実部(1−δ)及び虚部iβの和として記述できる。この表記では、無次元パラメータδは、屈折率nの実部の値1からの偏差を表し、「屈折率減少分」と称することができる。無次元パラメータβは、吸光係数kを表す。隣接する材料間の界面における屈折率実部の差は、界面の反射率への寄与を左右する。これらの差(Δδ)を「屈折率コントラスト」と称する場合がある。吸光係数の大きさは、材料におけるEUV放射の吸収量を示し、及び原子レベルでの散乱特性を含む。
【0004】
EUV域又は軟X線域では、屈折率実部に小さな差しかないという事実のために、EUV放射の垂直入射又は近垂直入射で作動する反射光学素子は、適性に高い反射率でEUV放射を反射可能であるように、多層ミラーとして設計しなければならない。本願において、用語「多層ミラー」は、概して、EUV又は軟X線放射を反射するために有効な複数の材料層を有する任意の反射光学素子を指す。
【0005】
多層ミラーは、基板と基板上に形成された層スタックとを備え、層スタックが「低屈折率材料」及び「高屈折率材料」を含む層を備え、低屈折率材料が、EUV域の所与の作動波長λで、高屈折率材料よりも低い屈折率実部を有するものとして記載することができる。作動波長における屈折率実部が相対的により低い材料(すなわち、低屈折率材料)を、大文字「L」で一般に示す。一方、作動波長における屈折率実部が相対的により高い材料(すなわち、高屈折率材料)を、大文字「H」で一般に示す。
【0006】
多層ミラーは通常、反復配列で相互に積層された複数の反復単位を含む。単一の低屈折率材料層及び単一の隣接する高屈折材料層を含む反復単位を、「二重層」又は2層反復単位、と称することができる。反復単位は、1つ又は複数の追加層、例えば低屈折率材料層と高屈折材料層との間に挟まれて界面における隣接材料の混合を減らす拡散障壁中間層を含むことができる。多層ミラーにおける一連の反復単位は、隣接層間の界面で入射放射を部分的に反射する水晶の格子面を、本質的に模倣する層スタックを形成する。個々の層の厚さ及び反復単位の全厚は、多層系全体に亘って一定とすることが可能であり、又はどの反射プロファイルを達成すべきかに応じて、横方向に及び/又は深さを変えることが可能である。反復単位の最適な厚さは、ブラッグの法則を用い、上記で説明した水晶格子面モデルに従って、所与の波長及び所与の入射角範囲に対して計算できる。
【0007】
EUV光源は、高容量EUVリソグラフィにとり、最大の挑戦のうちの1つである。レーザ生成プラズマ(LPP)及び放電生成プラズマ(DPP)の両方を含む、プラズマベース光源が使用されてきた。これらの光源に対する重要な要求は、露光のために可及的にクリーンなEUVパワーを生成することである。両プラズマ光源は、露光に望ましい帯域内の13.5nm光を放射する。しかしながら両プラズマ光源は、特にUV域のいわゆる帯域外(out-of-band: OoB)放射も、著しい量で生成する。UV域は通常、100nmから400nmまでの範囲である。更にEUV光学系用の多層ミラーは、UV光に対して高反射性を有する可能性である。それにより、ウエハのUV露光という結果になる可能性があり、及び像のコントラスト損を引き起こすこともある。
【0008】
UV光をフィルタで取り除くために、複数のスペクトル純化方法が開発されている。それらは、ブレーズド格子(例えば、特許文献1参照)、位相シフト格子(phase shift grating: PSG)(例えば、特許文献2参照)、反射防止層(anti-reflection layer: AR層)(例えば、特許文献3参照)、及び独立型の薄膜(例えば、特許文献4参照)を含む。しかしながら、ブレーズド格子は、直入射で高いEUV効率をまだ達成していない。PSG及びAR層は、抑圧帯域が限定される。そして、UV域の長波長部分に対するAR層を開発することは、より困難である。薄膜は、適用する場合に壊れ易く、及び依然として、著しい量のEUVパワーを吸収することがある。
【0009】
特許文献5は、格子スペクトル純度フィルタとして設計されたスペクトル純度フィルタを開示する。スペクトル純度フィルタは、交互層の多層スタックと、多層スタックの頂面における複数の凹所を備える。多層スタックは、多層スタックに対して第1方向に第1波長の放射を反射するように構成される。多層スタックの頂面における複数の凹所は、第2波長の放射が、第1方向とは異なる、多層スタックに対して第2方向に反射するよう配置された格子を形成する。
【0010】
特許文献6は、EUV放射を使用する光学素子を開示する。光学素子は、5乃至20nmの波長域のEUV放射を透過する頂上層を備える。頂上層の構造は、EUV放射の10倍以上のrms粗さの値を、EUV放射の波長の半分以下の空間的周期に対して有する。そうした構造により、頂上層を通るEUVの透過が、光学素子に対して促進される。
【0011】
特許文献7は、極紫外波長域の電磁放射を反射するよう設計された多層構造を備える光学素子を開示する。光学素子は、可視から赤外波長域の電磁放射を偏向し、及び紫外波長域からの放射の関連する強度及び/又は伝播方向を変更するために有効であるよう設計された、格子構造を備える。
【0012】
特許文献3は、多層ミラーの頂部にスペクトル純度増強層を含み、例えばEUVリソグラフィ装置に適用する多層ミラーを開示する。このスペクトル純度増強層は、第1スペクトル純度増強層を含むが、多層ミラーと第1スペクトル純度増強層の間に、任意選択で、中間層又は第2スペクトル純度増強層及び中間層を設けることもできる。DUV放射がEUV放射よりも相対的により大きく減少するように、垂直入射放射のスペクトル純度を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002097385号明細書
【特許文献2】米国特許第6522465号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2006245057号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2012147350号明細書
【特許文献5】国際公開第2012/119672号明細書
【特許文献6】欧州公開第1 530 222号明細書
【特許文献7】独国特許出願公開第10 2009 044 462号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、UV域の不所望な放射を効果的に抑制可能な手段を含み、一方同時に当該手段により、EUV放射の損失が発生しない、又はごく僅かな損失のみが発生する、EUV多層ミラーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、これらの目的及び他の目的に対する解決手段として、一形態により、請求項1に記載の多層ミラー、請求項16に記載の方法、及び請求項25に記載のEUV光学系を提供する。好適な実施形態は、従属請求項において与えられる。全ての請求項の文言を、参照により本明細書に援用する。
【0016】
この形態による多層ミラーは、層スタックの頂部、すなわち層スタックにおいて基板と反対の放射入側に、スペクトル純度フィルタを含む。スペクトル純度フィルタは、UVスペクトル領域の第2波長域からの紫外(UV)放射に対する反射防止層として有効であるよう設計される。そのため、多層ミラーのEUV‐UV反射率比が、そうしたスペクトル純度フィルタを備えない多層ミラーに対して増加する。好適な状況において、UV放射に対する反射率が著しく低減される。一方(第1波長域からの)EUVに対する反射率は、低減されない、又はより小さな範囲でのみ低減される。場合により、UV反射率がEUV反射率よりも強く低減されるため、EUV‐UV反射率比が効果的に増加される。スペクトル純度フィルタは、第2波長域の反射率を低減するために有効な、非回折性の屈折率分布型反射防止層を備える。同時に屈折率分布型反射防止層は、EUV放射(すなわち第1波長域からの放射)に対しては、低い吸収を有するべきである。
【0017】
この用途のために、屈折率分布型反射防止層は、単一材料から、又は2つ以上の異なる材料の組み合わせから形成された層とする。有効屈折率は、放射入射側の第1媒体(入射媒体)から出射側の第2媒体(基板側媒体)へ、第1媒体の屈折率近傍の屈折率値から、第2媒体の屈折率近傍の屈折率値又は第2媒体の屈折率値へと、連続的又は単調な移行部を提供する。これにより、有効屈折率勾配が得られる。有効屈折率の移行部が漸進的であり、及び移行部の深さが目標波長(反射率において抑制されることを意図される波長)の著しい部分に亘って延在する場合、目標波長の反射を効率的に抑制できる。
【0018】
第2波長域の放射に対する反射低減効果を得られるよう、構造は制御された方法で製造される。第2波長域の波長は、第1波長域の波長より著しく大きい。第1波長域のより短い波長に対して反射低減効果を得ることは、望ましくない。好適には、第1波長域の波長に対して反射低減効果が生じないように、構造を製造する。第1波長域の波長に対する反射増強効果を可能とし、それによりミラー効果を増補できる。
【0019】
屈折率分布型反射防止層は非回折性である。これは屈折率分布型層が、不所望な帯域外波長域(第2波長域)からの放射の関連する強度を、実質的には、回折現象でリダイレクトしないよう構成されることを意味する。例えば、第2波長域の回折強度が少しでも存在する場合には、屈折率分布型反射防止層で潜在的に回折された残留強度は、(例えば100nmから400nmまでの)第2波長域の入射強度の10%未満、又は5%未満とすることが可能であろう。むしろ、帯域外波長の透過を増強可能とし、不所望な放射を多層ミラー内部で吸収可能である。従って、回折によりミラーからリダイレクトされた不所望な放射をとらえ、及び吸収するために、追加の手段を装備する必要がない。
【0020】
屈折率分布型反射防止層は、基盤及び層スタックで支承されており、多層ミラーの一体部分である。特許請求された発明は、好適にはEUV反射率を可及的に高く維持することを前提としてUV反射の全帯域を抑制するために、多層ミラーの表面側のUV反射を抑制する効率的手段を一体化する。
【0021】
第2波長域の下限は、第1波長域の上限の倍数とすることができる。第1波長域は、5nmから20nmまでとしてよいため、作動波長λは、例えば13.5nmとすることができる。一方、第2波長域は100nmから400nmまで延在できる。そのため第2波長域は、例えば深紫外(deep ultraviolet: DUV)域(約300nm未満の波長)、及び約200nm未満の波長を有する真空紫外(vacuum ultraviolet: VUV)域からの波長を含むことができる。
【0022】
一実施形態によれば、屈折率分布型反射防止層はサブ波長構造(SWS)を備える。サブ波長構造(SWS)は、第2波長域のUV波長よりも小さい横方向の寸法を有する空間的(横方向)スケールの構造素子を備える。サブ波長構造(SWS)は、屈折率分布を有して層スタックの放射入射表面で光学的コントラストを低減可能であり及び少なくとも部分的に紫外放射の反射を抑制可能な有効媒体として、第2波長域の紫外放射に対して有効であるように構成される。サブ波長構造に起因する有効屈折率勾配は、不所望なUV域全体をカバーする極めて広い反射防止帯域を有することが可能であるため、EUV系のスペクトル純度を、高度に改良可能である。
【0023】
構造素子の横方向のスケール(寸法)は、実質的に、抑制されるべき(第2波長域の)放射の波長よりも小さい。スケールは、不所望な波長の半分よりも小さくしてよい。従って第2波長域からの放射は、サブ波長構造を分解不能であるが、構造を複合材料として有効と「見なす」。一方スケールは、第1波長域の上限とほぼ等しいか、又はそれより大きくしてもよい。
【0024】
サブ波長構造は、構造素子のアレイを備える構造とすることができる。構造素子は、有効屈折率が、第2波長域の任意の特定波長に対して、基板側から放射入射側(放射入側)へ単調に変化する。換言するとサブ波長構造の有効屈折率は、第2波長域からの波長に対して、放射入側から、(層スタックが位置する)基板側へ単調に増加可能である。これにより、漸進的な屈折率整合が得られる。
【0025】
実施形態により、サブ波長構造(SWS)は周期構造である。周期構造は、周期的表面レリーフ構造を形成するテーパ形構造素子のアレイを備える。テーパ形構造素子は通常、放射入側に細い先端部を、及びより広い基部を備える。先端部と基部の間の移行部の幅は、連続的又はステップ状とすることができる。複数の構造素子に提供された充填率(構造素子の材料に充填された部分と、そうした材料の無い部分の、層スタック法線に対する垂直面における比)は、先端部レベル(放射入側)では低く、及び基部レベルでは著しくより高い。例えば有効光学定数であるサブ波長構造の光学特性は、空気又は真空の(入射側媒体の)光学定数と、光学素子を形成するために使用された材料の光学定数の間にあり、構造の充填率を変えることで制御可能である。
【0026】
いくつかの実施形態において、サブ波長構造は、ピラミッド形アレイ表面レリーフ構造を備える。代替案として、円錐形構造素子、又はクロッフェンシュタインテーパ形構造素子を発生させることもできる。
【0027】
異なるタイプの構造素子(形状及び/又は寸法の差異)が組み合わされてもよい(例えば、横方法に異なってオフセットした表面部分上、及び/又は交互型表面部分上の、異なる形状及び/又は寸法を有する領域等)。例えば、表面上のサブ波長構造全体が、同一の周期構造を備える必要はない。異なるUV波長に対しては、多層(基板)の屈折率が異なる。このため、屈折率分布プロファイルを異なって最適化して与えること、特に異なるテーパ形構造を与えることが要求されるかもしれない。2つ又は3つ又はそれ以上の異なるプロファイルのテーパ形構造を備えるサブ波長構造が、第2波長域のある波長を、更に良好に抑制することさえある。
【0028】
表面上のサブ波長構造の設計は、2つ又は3つの異なるプロファイルを有してもよい。例えば、表面の半分が第1プロファイルを有し、及び表面の別の半分が、異なる(第2)プロファイルを有することができる。換言すると、サブ波長構造はテーパ形構造素子のアレイを備える周期構造とすることができる。テーパ形構造素子は、周期的表面レリーフ構造を形成する。周期的表面レリーフ構造は、単一の周期性(唯一の種類のテーパ形構造)を全反射表面に亘って備えるか、又は2つ又は3つ以上の異なるプロファイルのテーパ形構造が組み合わされた結合型周期構造を備える。例えば製造的観点からは、全反射表面に亘る単一種類のテーパ形構造が好適である。
【0029】
EUV‐UV反射率比を効率的に改良するために、ある実施形態において、周期構造の周期長は、第1波長域の波長よりも大きく、及び第2波長域の波長よりも小さい。周期長は、層が延在する表面において画定された、隣接する構造素子の対応する部分の間で決定される。
【0030】
好適には、サブ波長構造の周期長は、0次を除く他の回折次数が第2波長域に対して存在しないよう小さくすべきである。周期長は、より高い抑制を得るために、対象の(帯域外)第2波長λの下限よりも小さく、及び好適にはλ/N(N≒2)とすべきである。「N」の値は、(例えばEUVスペクトル領域を反射する層スタックの有効屈折率に定義される)「基板」の指数、及び例えば入射角に依存する。いくつかの実施形態において、周期構造の周期長は25nmから100nmまでの範囲にある。
【0031】
抑制効果はまた、構造の高さにも依存する。構造の高さは、適宜調整してよい。いくつかの実施形態において、サブ波長構造の構造的深さは、第2波長域の最小波長よりも小さく、及び第1波長域の波長よりも大きくすることが可能である。一般に構造的深さは、好適には少なくともλ/4で、好適にはλ/2を超えて、抑制されるべき波長の著しい部分にまで延在すべきである。ここでλは第2波長域の下限を表す。構造的深さがこれらの値から著しく逸脱する場合には、エバネッセント回折モードが0次に干渉することがある。例えば、構造的深さは80nm以下のオーダー、又は50nm以下のオーダーとすることができる。一般に下限は、要求される抑制の大きさに関連させるべきである。例えば、50nmの周期、ピラミッド形、60nmの深さを有する場合、100nmから400nmまでの全帯域反射率は、22%を下回って抑制される。一方、EUV吸収に対して与えられる場合には100nmより大きい深さの値が可能であるが、現在ではそれほど好適でないと見なされる。
【0032】
有効フィルタ域には、周期長と構造的深さを適切に組み合わせることで影響可能である。あるサブ波長構造の最大フィルタ域において、(純粋に屈折率整合に関する観点から考察すると)より長い波長側が主として構造的深さの影響を受け、及びより短い波長側が主として構造周期の影響を受ける。
【0033】
周期構造を備えるサブ波長構造の1つの利点は、例えばeビームリソグラフィ、ナノインプリント又は干渉リソグラフィ等のリソグラフィック構造化技術である確立された表面構造化方法を使用して、周期構造物を目標通りに製造可能なことである。更にランダム構造と比較すると、ある構造周期が波長より長く、回折を引き起こす場合に、ランダムな空間周波数の分布が抑制を低下させる可能性があるため、周期構造が利点を有することが可能である。一般に周期構造を装備することで、ランダム構造を使用するより精密に、抑制効果を制御可能である。
【0034】
一方で周期構造は、一般的には必要でない。サブ波長構造は、周期構造に関して述べた寸法に対応する、横方向及び深さ方向の平均寸法を有するランダムな粗さを備えた構造により形成してよい。ランダム構造を使用する場合、ランダム構造の平均寸法は、第1波長域の上限よりも大きくすべきである。
【0035】
サブ波長構造は、表面上の二次元(2D)構造とすることができる。二次元構造は、例えば二次元アレイで配置されたピラミッド形構造素子を備える。適切な格子定数の一次元の非回折性格子のような一次元のサブ波長構造も、抑制効果を提供できる。しかしながらこの抑制効果は、1つの偏光に対してのみ作動する。それにもかかわらず、放射源が偏光され、及び放射が固定角度から入射する場合、一次元(1D)のサブ波長構造も有用とすることができる。
【0036】
いくつかの実施形態において、特にサブ波長構造(SWS)の形状である屈折率分布型反射防止層は、第1波長域のEUV放射に対して吸収の低い単一材料から形成される。例えば材料は、第1波長に対して0.007未満、好適には0.005以下の吸光係数kを有する吸収の低い材料の群より選択可能である。
【0037】
単一材料は、層スタックの層の形成に使用されていない材料から選択できる。しかしながら、層スタックの構成に使用された材料も使用できる。
【0038】
いくつかの実施形態において、単一材料は、アモルファスシリコン(Si)、水素化シリコン(α‐Si:H)及び炭素(C)からなる群から選択される。適切な材料を選択する際に、Siの吸収端はλ=12.4nm、又は炭素の吸収端はλ=4.4と考慮されるべきである。単一材料は、層スタックが基板上に形成された後に、層スタック上に形成できる。
【0039】
他の実施形態において、屈折率分布型反射防止層は、層スタックの多層構造に対応する多層構造を備える。サブ波長構造が屈折率分布型反射防止層を形成するために使用される場合、構造素子は対応する多層構造を備えることが可能である。これらの実施形態において、(層スタックの層を形成する材料に加える)追加材料は、屈折率分布型反射防止層を提供するために不要である。
【0040】
屈折率分布型反射防止層は、層スタックを含む多層構造が形成された後に、目標とされた材料を表面から除去することで形成可能である。これらの実施形態において、(例えばピラミッド形を有する)サブ波長構造の構造素子は、その多層構造のために、EUV放射の反射に寄与できる。従ってより高いEUV‐UV反射率比が得られる。この場合、サブ波長ピラミッド形構造自体がEUV放射に対して反射性を有するため、サブ波長多層ピラミッド形構造(又は他の形状の構造)が、より高いEUV効率を提供できる。
【0041】
いくつかの実施形態において、屈折率分布型反射防止層上に、保護キャッピング層を形成できる。例えば、多層ミラーをEUVプラズマエッチング及び/又はクリーニング方法から保護するために、キャッピング層を最適化可能であり、及び(サブ波長構造のような)屈折率分布型反射防止層上に被覆可能である。キャッピング層は、BN、BC、B、C(例えばダイヤモンド状炭素膜)、TiN、Pd、Rh、Ru、Au、C、Si、SiC、MgF及びLiFからなる群より選択された材料を含んでよく、適切な層厚を備えてよい。キャッピング層の層厚は、例えば0.5nmと5.0nmの間とすることができる。
【0042】
屈折率分布型反射防止層を、多層構造の平滑な表面上に形成可能である。代替的に、屈折率分布型反射防止層は、構造化表面、つまり非平滑なレリーフ構造を有する表面上に形成できる。いくつかの実施形態において、屈折率分布型反射防止層は、第2波長よりも大きい波長を有する第3波長域からの放射を回折するような寸法の回折格子構造上に配置され、及び形成される。
【0043】
特許請求された発明の実施形態を、IR(赤外)抑制方法と一体化する可能性がある。例えばサブ波長構造は、周期≦100nmのスケールサイズ、及び50nmから100nmまでの範囲の高さを有することができる。位相シフト格子(PsG)のように、(UV放射に対して有効な)反射防止表面を、IR抑制に対して使用される回折光学素子上に施すことが可能である。従って、SWS+PsG+ML系は、UV光及びIR光の両方をフィルタで取り除くことが可能であり、及び最終的にクリーンなEUVスペクトルを達成可能である。単一材料及び多層サブ波長構造の両方を、適用可能である。
【0044】
多層ミラーを製造する方法において、屈折率分布型反射防止層の所望の構造を堆積可能な堆積技術を使用して、スペクトル純度フィルタを形成可能である。そのため、堆積後には、更なるプロセスステップが不要である。しかしながら多くの実施形態において、後に屈折率分布型反射防止層を形成することを意図された1つ又は複数の材料が、最初に層スタック上に堆積される。その後材料は、多層ミラーの自由表面から、(横方向及び深さ方向で)構造化された様式で部分的に除去され、所望の構造が得られる。
【0045】
この目的のためには、多層ミラーを、多層格子、ゾーンプレート、ホログラム等の構造化多層に構造化するための従来から既知の方法(又は方法の組み合わせ)を、使用できる。湿式エッチング、又はフッ素又は塩素ベースの反応性イオンエッチング(RIE)などの化学的方法が、これらの目的を達成すべく提案されてきた。
【0046】
発明者らは、従来の方法が、処理後に多量のEUV損失に悩む構造化多層ミラーを発生させることがあることを、観察により認めていた。残余の構造に損傷を引き起こさない、又は僅かな損傷しか引き起こさない、多層ミラーの構造プロセスを提供することが望ましい、との見解を持った。この方法は、多層ミラーを磨き直すためにも使用可能であろう。そうした方法は、本発明の実施形態における屈折率分布型反射防止層を形成するプロセスステップにおいて使用可能であろう。また方法は、現在特許請求された発明と無関係の、他の適用事例においても有用であろう。
【0047】
方法は、規定のエネルギ範囲のエネルギを有する希ガスイオンから本質的になるイオンビームを、多層の自由表面上の目標部分上へと導くことで、多層ミラーの自由表面から材料を除去するステップを含む。
【0048】
比較的低いイオンエネルギを有するネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)又はキセノン(Xe)のような希ガス種を使用するイオン研磨は、広く研究されてきた。こうしたイオン研磨は、(例えばイオンビームアシスト堆積法(ion beam assisted deposition: IBAD又はIAD)である)堆積法において、層の成長を助けるために適用されてきた。しかしながら現在では、希ガスイオンから本質的になるイオンビームの使用が提案されている。イオンビームは通常、IBAD技術に使用されるよりも著しく高いイオンエネルギを有する。このイオンエネルギは、多層ミラーの表面を構造化する、及び/又は光学素子、特に多層構造を備える光学素子を、自由(上部)表面から汚染を除去することで磨き直しする、という目的のためには少なくとも十分に高い。
【0049】
希ガスから本質的になるイオンビームが、多層ミラーの自由表面上で実行される材料除去ステップにおいて使用される場合、化学的反応性ガス種を含むイオンビームを使用する場合のいくつかの欠点を回避可能である。反射性多層ミラー構造組成は、相互に積層された異なる材料の層を含む。そうした層構造が反応性イオンエッチングを使用して処理される場合、エッチングプロセスにより、穴、及びより大きな粗さが発生されることがある。フッ素又は塩素ベースの基又はイオンは通常、例えばモリブデン(Mo)及びシリコン(Si)等、層スタックの層を形成する異なる材料に対して、又は原子番号において大きな差異を有する材料からなる他の多成分系に対して、非常に異なるエッチング速度を有する。この事実が、こうした穴、及びより大きな粗さが発生する部分的な原因であるとされる。イオンビームから、フッ素又は塩素ベースの基又はイオンのような化学的反応性ガス種を除くと、異なる層材料の選択性エッチングに関連する問題を、少なくとも部分的に回避可能である。本質的に希ガスイオンからなるイオンビームは、本質的に純粋な物理的スパッタリング(又はエッチング)を実行する。こうしたスパッタリングは、化学的反応性ガス種が存在するスパッタリングよりも、異なる材料間のエッチング速度の差が遥かに小さい。従って、粗度が低く、むしろ均一なエッチングプロセスが可能である。従って方法は特に、異なる材料又は材料の組み合わせを有する層からなる多層ミラーの自由表面から材料を除去するために適合している。
【0050】
以下のプロセス状態のうちの1つ又は複数のプロセス状態は、結果として生じた表面構造の特性を、特定の目的に向けて最適化するために使用できる。
【0051】
いくつかの実施形態において、希ガスイオンは、アルゴンイオン、ネオンイオン、クリプトンイオン及びキセノンイオンからなる群から選択される。
【0052】
比較的低いイオンエネルギで、材料が自由表面から除去されることを、好適とすることができる。例えばイオンエネルギは、100eVから500eVまでのエネルギ範囲とできる。粗さに関しては、イオンエネルギ及びイオンの入射角の両方が、結果に影響することがある。近垂直入射による作動を、好適とすることができる。イオンエネルギ状態を観察すると、表面層と小さな粗さの混合が殆ど促進されていないように見える。材料の除去を制御し、材料の除去後の自由表面の表面粗度を1nm rms未満とすることができる。0.5nm rms未満の範囲である、より小さい値を得ることもできる。
【0053】
材料除去ステップの性能を改良するために、イオン密度/流束、及びイオンエネルギの分離(独立)制御がいくつかの実施形態において使用される。従って、イオンビームを発生させるステップは、イオン流束の制御及びイオンエネルギの独立制御を含む。これらのパラメータを独立制御することで、大きなイオン流束が低いイオンエネルギと結合可能となり、一定のエッチング速度/マスク選択性、及び低いサブ表面損傷が得られる。用語「エッチング速度/マスク選択性」は、マスク材料と(構造化されるべき)機能性材料の間のエッチング速度を指す。
【0054】
装置の実施形態において、希ガスイオンが、誘導結合プラズマ源(ICP)により発生される。及び容量結合プラズマ(CCP)は、発生されたイオンをイオンビームとして目標部分に向けるために使用される。イオン密度/流束は、ICPパワーを適切に設定することにより制御できる。イオンエネルギは、CCPパワーを適切に設定することにより、分離して制御できる。
【0055】
装置は例えば、(i)構造化表面を備えた多層ミラーを製造するため、及び(ii)多層ミラーを磨き直しするため、及び(iii)多層表面から汚染を除去するため、に使用可能である。これに関連して、用語「磨き直し」は、例えば多層の複数の二重層の表面が、酸化又は汚染された際に、これら表面からの除去又は多層の全スタックの除去を含む。
【0056】
処理される多層ミラーを、機械加工(イオンボンバードメント)の間に能動的に冷却することが、結果を改良することがある。一実施形態において、多層ミラーは基板ホルダ上に支承される。及び基板ホルダは0℃未満の温度にまで冷却される。例えば、−10℃未満、及び/又は−15℃未満の温度、及び/又は−20℃近傍のオーダーの温度又は−20℃の温度を、有用とすることができる。例えば+10℃までのような、より高い温度は、他の場合において有用となり得る。
【0057】
更に結果として生じたプロファイルを可及的に精密に画定可能とするために、いくつかの実施形態において、イオンは実質的に垂直入射で目標部分に向けられる。用語「実質的に垂直入射で」は、入射イオンビームの平均イオン方向が、(表面に垂直な)垂直入射から20°未満、又は10°未満で逸脱すると意味することを意図する。
【0058】
サブ波長構造の形状である屈折率分布型反射防止層を、材料除去により製造するために、多様な技術を使用してもよく、多層構造を準備する。例えば一実施形態において、紫外干渉リソグラフィが使用され、多層構造上に被覆されたレジスト層を、イオンボンバードに先立って露光する。そうした技術は、例えば格子パターン用の100nmサイズの特徴を標準的に製造するために既知である。2つの相互に垂直な方向(x‐及びy‐方向)への干渉を、ピラミッド形パターン、又はテーパ形構造素子を備えた別の二元パターンを製造するために使用可能である。この技術は、100nmの典型的な周期長を有する構造を可能とするが、更により小さな特徴を得るためには、ダブルパターニング技術を使用できる。例えば、追加的な紫外干渉リソグラフィによるステップを、ダブルパターニングで使用してもよく、50nm特徴を製造できる。この特徴は、紫外放射及び/又は赤外放射を抑制する際により効果的である。
【0059】
代替案として、EUV又はX線干渉リソグラフィを使用してもよく、更により小さな特徴サイズを有するサブ波長構造の製造に使用可能なマスクを製造できる。
【0060】
代替的に、ナノインプリントリソグラフィ(nano-imprint lithography: NIL)の変更形態を使用できる。典型的な場合、スタンプ又はレチクルを、スタンプ領域からスタンプ領域に完全に整列させる必要はない。なぜなら、プリントプロセスにおける僅かな瑕疵又はズレが、許容可能なためである。従来のNIL特徴は、30乃至50nmの範囲に至るまでルーチン的に実行可能である。この特徴は、本発明における典型的な適用事例に完全に適合する。
【0061】
本発明はまた、上記及び下記に詳述する種類の、少なくとも1つのEUVミラーを備える光学系に関する。
【0062】
光学系は、例えばEUV放射で作動するマイクロリソグラフィ投影露光装置用の、投影光学系又は照明系とすることが可能である。EUVミラーは、平面状のミラー表面、又は凸型もしくは凹型にカーブしたミラー表面を備えることが可能である。照明系及び/又は投影光学系において、1つ又は複数又は全てのEUVミラーを、本明細書で記載したように構成できる。EUVミラーはまた、例えば顕微鏡の領域である他の光学系においても使用可能である。
【0063】
これらの特徴及び更なる特徴は、請求項のみでなく明細書中の記載及び図面から明らかである。個々の特徴は各ケースにおいて、個々の特徴により又は複数の特徴を部分的に組み合わせた形状で、本発明の実施形態及び他の分野において実現可能である。個々の特徴は、有利な実施形態及び本質的に保護可能な実施形態を構成可能である。本発明の例示的な実施形態は、図面に示され、及び以下に詳述される。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1A】第1実施形態による多層配置の層構造の概略垂直断面図である。
図1B】環境と多層ミラーの間の移行域における、UV放射に対する屈折率の深さのプロファイルを示すグラフである。
図2】EUV放射に対して吸収の低い単一材料からなるピラミッド形構造素子を有する、サブ波長構造を備える実施形態を示す図である。
図3】層スタックの層と類似する一連の高低屈折率層からなるピラミッド形構造素子を基板側に有する、サブ波長構造を備える実施形態を示す図である。
図4】多様な実施形態に関する、第2波長域の紫外放射に対する反射率を、屈折率分布型反射防止層を有さない参照用多層ミラーの同一の反射率と共に示すグラフである。
図5】2つの実施形態と屈折率分布型反射防止を備えない参照用多層ミラーとの対比の視点で、EUV波長域における多層ミラーの反射率を示すグラフである。
図6】UV放射の反射を抑制する構造及びIR放射をリダイレクトする構造の両方を備える実施形態の概略図である。
図7】UV放射の反射を抑制する構造及びIR放射をリダイレクトする構造の両方を備える実施形態の概略図である。
図8】一実施形態によるEUVマイクロリソグラフィ投影露光装置の光学部品を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
本発明の実施形態の態様は、EUVミラーの複数の実施形態を使用した実施例を参照し、以下に詳説される。EUVミラーは、λ=13.5nmのEUV作動波長、及び0°乃至40°の範囲の入射角(angles of incidence: AOI)、すなわち垂直入射又は近垂直入射のために設計されている。入射角(AOI)は、ミラー表面上に衝突する光線により、入射点のミラー表面に対する法線Nに対して形成される角度を示す。例えば高開口数で作動するEUVマイクロリソグラフィ用の光学系においては、この範囲内で、入射角間隔が発生することがある。
【0066】
図1Aは、第1実施形態によるEUVミラーの多層構造の概略垂直断面を示す。ミラーMは、基板SUBと、基板上に形成された層スタックSLと、を備える。層スタックは、「積層体(layer stack)」SLとも称することがある。層スタックSLの最外層は、放射入射側で多層ミラーの自由表面FSとして終端する。作動の際、EUV放射の主要部分を含む電磁放射が、真空からミラーに入射する。有限開口数で作動する光学系では、放射光線は多様な入射角からミラーに入る。
【0067】
層スタックは、基板SUBの表面上に形成される。基板SUBの表面は、光学的品質を得て平面又は曲面でありうる所望の表面形状を示すように機械加工される。層スタックSLの個々の層が、続いて物理又は化学蒸着法(Physical or Chemical Vapor Deposition: PVD又はCVD)等の適切な堆積技法を用いて基板上に堆積される。1つ又は複数の追加層を基板の表面上に形成した後に、積層体の層を堆積させ、例えば層スタックの基板側の機械的応力特性を改善してもよい。
【0068】
層スタックは、交互に重ねて堆積させた、「低屈折率材料」(文字「L」)からなる層、及び「高屈折率材料」(文字「H」)からなる隣接層を備える。一対の隣接層において、低屈折率材料は、隣接する高屈折率材料よりも所与の作動波長で屈折率実部が低い材料である。屈折率実部がより高い層材料は、「スペーサ」とも称される。そして、この層材料に対して屈折率実部のより低い層材料は、「アブソーバ」とも称される。層の対は、例えばモリブデン/シリコン(Mo/Si)及び/又はルテニウム/シリコン(Ru/Si)の層材料の組み合わせにより構成可能である。この場合、シリコンはスペーサ材料を形成する。一方一方Mo及び/又はRuは、アブソーバ材料として機能する。
【0069】
層スタックSLは、多数の2層反復単位を含む。各2層反復単位は、低屈折率材料層及び隣接する高屈折率材料層を含む。そうした反復単位は、「二重層」とも称することができる。二重層は、少なくとも1つの更なる層、特に挿入バリア層を含むことが可能である。挿入バリア層は、例えばC、BC、Si、SiC、又はこれらの材料の1つを有する組成からなることが可能であり、及び界面における相互拡散の防止が意図されている。
【0070】
多層ミラーMの層構造は、層スタックにおいて、基板SUBと反対の放射入側に、スペクトル純度フィルタSPFを含む。スペクトル純度フィルタの自由表面FSは、環境に結合する多層ミラーの自由表面を形成する。環境は通常、作動の際に真空である。スペクトル純度フィルタは、多層ミラー上に入射する放射に含まれる紫外放射UVに対する反射防止層(AR層)として有効であるように構成される。多層ミラーは、EUV放射に対して高い反射率を有することが望ましい。それに対し、(通常100nmから400nmまで)UV域の入射放射部分の反射率は、可及的に小さくすべきであり、ミラーの光学的下流、すなわちミラー上での反射後の反射された放射におけるUV放射が、著しい量となるのを防止する。スペクトル純度フィルタSPFは、層スタックが同一の層構造であるがスペクトル純度フィルタを有さない多層ミラーと比較して、多層ミラーのEUV‐UV反射率比を増加させるために有効である。
【0071】
この実施形態のスペクトル純度フィルタSPFは、非回折性の屈折率分布型反射防止層GI‐ARを備える。スペクトル純度フィルタは、専ら屈折率分布型反射防止層によって形成してよいが、1つ又は複数の追加層を含むこともできる。屈折率分布型反射防止層GI‐ARは、多層ミラーの自由表面FSとして終端する。
【0072】
図1Bは、(通常は真空の)環境と多層ミラーの層構造の間の移行域における、屈折率の深さプロファイルを、深さの方向(表面法線Nに平行なz‐方向)で概略的に示すグラフである。グラフの屈折率軸は、第2波長域の放射(UV放射)、特にDUV放射に対する有効屈折率nEFFを参照する。放射入射側の有効屈折率は、通常(真空の屈折率)1であるか、又は1に極めて近似する。自由表面FSにおいて、すなわち材料の存在しない環境から固体層材料を含む層への移行部において、(1を上回る)比較的より高い屈折率値に向かい、僅かなステップが存在することがある。この実施例において、僅かな屈折率ステップは、屈折率分布型反射防止層GI‐ARと層スタックの第1連続層L1の間に存在する。屈折率分布型反射防止層GI‐ARは、(第2波長域の)DUV放射に対する有効屈折率勾配が結果的に生じるような材料分布を有する。有効屈折率勾配は、(自由表面FSの)入射側における屈折率nから、屈折率分布型反射防止層の基板側の反復単位の最外層L1の屈折率(例えば、Si製とすることができる層L1の、300nmに対する屈折率nSi=2.56)へと、平滑で連続的な移行部を形成する。この例において屈折率は、約1から2を超える値にまで直線的に増加する。層スタックの二重層構造内では、屈折率が、高屈折率材料H(この例においてSiに対応)の値nと、低屈折率材料L(この例においては、300nmに対してnMo=2.77を有するMoに対応)の値nの間で、ステップ状に交替する。(屈折率の相対的な大きさは、DUV域において反対の関係を有することができることに注意されたい。例えばMo/Siの組み合わせにおいて、Siは、DUV域で相対的により低い屈折率を有する材料である。)
【0073】
このような一般的特性を有する有効屈折率勾配層は、特にUV域の不所望な帯域外(out-of-band:OoB)放射を抑制するために、極めて広い反射防止帯域(反射低減特性)を提供可能である。UV域は通常、例えば少なくとも100nmから400nmまでの範囲である。
【0074】
更に屈折率分布型反射防止層GI−ARの構造は、実際には不所望なUV放射の回折が発生されないよう構成される。それとは全く反対に、屈折率分布型反射防止層GILは、移行域においてUV放射の透過を効果的に高めるため、不所望なUV放射の大部分を多層ミラーの層構造の深さの内部で吸収可能である。サブ波長構造において吸収される部分があってもよい。
【0075】
発明者らは、屈折率分布型反射防止層が、サブ波長構造を含むか又はサブ波長構造により形成された場合に、極めて効率的な屈折率分布型反射防止層を製造可能であることを発見した。本願において、サブ波長構造は、更に「SWS」と略称される。用語「サブ波長構造(SWS)は、本明細書において、(不所望な)目標波長、すなわち第2波長域からの波長よりも、実質的に小さい空間的(横方向)スケールの構造素子を有する構造を表す。典型的な寸法が、横方向で十分に小さい場合、UV放射は、微細構造を分解不能であるが、「SWS」を入射側と基板側の間で有効屈折率の勾配を有する複合材料と「見なす」。サブ波長構造の光学的特性、例えばサブ波長構造の光学定数は、通常、一方の側の気体又は真空の光学定数と、サブ波長構造を製造するために使用された材料の光学定数の間である。光学特性は、構造の充填率を変更することにより制御可能である。充填率については、以下に詳述する。
【0076】
周期的なサブ波長構造は、不所望な放射を極めて効率的に抑制する、それ自体の潜在性のために、好適とすることができる。好適には、有効な屈折率を有する連続媒質に近似するサブ波長構造として、周期構造が効果的に作動できるよう、三つの状態を満たすべきである。第一状態により、周期対波長比は、状態Psws/λ<1/(max(n,n)+n sinθ)を満たすべきである。この場合、Pswsは横方向の周期的長さ、nは放射入射側の屈折率、nはサブ波長構造の基板側の屈折率、及びλは目標波長(第2波長)、及びθは多層構造の表面の法線に対する角度である。第二に、構造は1つのノン‐エバネッセントモードのみが構造内を伝搬可能であるよう設計されることが好適である。第三に、サブ波長構造の構造的深さは、第2波長域の不所望なUV放射の波長の、著しい部分よりも大きくすべきである。
【0077】
本発明のいくつかの実施形態は、屈折率分布型反射防止層として有効なサブ波長構造が、EUV多層ミラーの光入射表面側に一体化される事実を特徴とする。それにより、EUV反射率を高いレベルで維持することを前提として、不所望なUV反射を大きな部分で、又は全帯域で、抑制可能である。
【0078】
いくつかの実施形態において、サブ波長構造SWSは、EUV損失を低減するために、EUV放射に対して吸収の低い単一材料からなる。一実施形態が、図2に関連して説明される。他の実施形態は、サブ波長構造の構造素子が、基本的に、サブ波長構造の基板側の層スタックと同一の高低屈折率層の配列から構成される、という事実を特徴とする。その場合サブ波長構造は、二重の効果を有することができる。理由は以下の通りである。(i)EUV放射は、サブ波長構造の構造素子に反射されることができる。及び(ii)構造素子は不所望なUV放射の反射率を低減するために有効である。一実施形態が、図3に関連して記載される。
【0079】
図4は、本発明の多様な実施形態に関して、100nmから400nmまでの波長域の紫外放射に対する反射率(R(UV))を、参照用多層ミラーREFの同一の反射率と共に示すグラフである。参照例の多層ミラーREFは、Mo/Si多層を有する層スタックを備え、屈折率分布型反射防止層を備えない。図5は、本発明の2つの実施形態と屈折率分布型反射防止層を備えない参照用Mo/Si多層ミラーREFとの対比の視点で、12.5nmから15.5nmまでのEUV波長域における多層ミラーの反射率R(EUV)を示すグラフである。
【0080】
図2の実施形態において、層スタックSLの放射入射側に形成されたサブ波長構造SWSは、EUV放射に対して吸収の低い単一材料からなる。EUV低吸収材料は、例えばSiの吸収端λ=12.4nmを理由として、アモルファスシリコンとすることが可能である。水素化Si、α‐Si:Hは、さらに低い吸収を得るための代替として使用可能である。
【0081】
代替的に単一材料は、アモルファスカーボンとすることが可能である。アモルファスカーボンは、作動中にEUV反射多層の自由表面の汚染層として頻繁に存在するか又は形成されうる材料に相当する。炭素汚染層は、続いて形成されるサブ波長構造SWS用に十分な材料を供給するために、作動周期の合間に汚染を故意に強制する、例えば炭素を含む汚染源を供給し同時に炭素製のサブ波長構造SWSに覆われるべき表面の近傍にEUV光を照射することで、更に厚くできる。その後、例えば水素イオンを有する集束イオンビームを、炭素層に対してパターニングの様式で向けることができる。それにより、所望のサブ波長構造が炭素層に形成される。この方法により、サブ波長構造SWSのジオメトリを、インシトゥ(in situ)、すなわちサブ波長構造SWSを支承する光学素子を光学系から取り外すことなく変更可能である。
【0082】
サブ波長構造SWSは、構造素子SEの規則的な2Dアレイを備える。構造素子SEは、基板側の広い基部及び放射入射側の先端部を備える一般的なテーパ形を有する。この実施形態における構造素子SEは、二次基部を備えるピラミッド形をとる。テーパ形により、充填率が放射入射側から基板側まで連続的に増加する。ここで使用されるように、用語「充填率」は、サブ波長構造SWSを通ったあるレベル(深さ)で、横方向に延在する所与の断面において考慮される、(固体)材料で充填された面積の部分と全面積との比を指す。明らかに、充填率は先端部レベルでは小さく及びピラミッド形サブ波長構造の基部レベルでより大きい。材料の固体層において、充填率は1に等しい。
【0083】
サブ波長構造SWSは、隣接する対応部分間の横方向の間隔、例えばピラミッド間で直に隣接する溝間の横方向の間隔である周期長PSWSが、100nm乃至50nmの範囲、すなわち(不所望な)第2波長より小さいが、(所望の)EUV放射より著しく大きいことを特徴とすることができる。構造的深さSDSWSは、多層ミラーの法線方向で、サブ波長構造の基板側(ピラミッドの基部)と光入射側(ピラミッド形先端部のレベル)の間で計測される。この実施形態において、構造的高さは約80nmである。この構造的高さにより、EUV域の全帯域において、高い抑制を既に達成可能である。しかしながら、例えば50nmと100nmの間にあるような、他の値もまた可能であろう。
【0084】
周期長PSWS=50nm、及び構造的深さSDSWS=80nm(図4及び図5における曲線I)に対して、ピラミッド形‐on‐多層系は、サブ波長ピラミッド形構造を備えないMo/Si参照用系と比較すると、約19倍の平均UV抑制を示す。EUV反射率は、(「完全な」Mo/Si参照用系に対する約75%と比較すると)約68.5%である。更に構造は、91.3%までの相対反射率を示す。この相対反射率は、独立型の薄膜の相対反射率より、遥かに高い。
【0085】
曲線IIは、PSWS=80nm及びSDSWS=80nmであるSiピラミッド形SWSの反射率を示す。
【0086】
サブ波長構造の頂部に保護キャッピング層を追加可能であることに、注意を払うことには価値がある。この場合、キャッピング層の材料及び構造形状に関して、更なる最適化が必要なことがある。例として、図4のカーブIIIは、Psws=80nm、SDSWS=80nm、及びサブ波長構造の表面上のSiOキャッピング層が2nmの厚さを有するサブ波長構造のUV反射率を示す。
【0087】
基本的に図3によるサブ波長多層ピラミッド形構造は、更に高いEUV効率を提供することができる。これは、(この場合、二次ピラミッドとして形成される)サブ波長構造の構造素子SEも、それ自体が多層構造であるために、EUV放射に対して反射性を有するという事実に起因する。それにも関わらず、UV抑制のために要求されるサブ波長構造の横方向の周期長PSWSは、抑制されるべきUV波長よりも小さく、しかしながらEUV波長よりも依然として大きくすべきである。
【0088】
約100nmからより小さい周期に向かう周期を有する多層ピラミッド形には、EUV回折が顕著である。しかしながら、より高次の回折角はサブ‐100nm周期に対しては大きすぎる。そのため、より高次の回折は収集不可能である。シュミュレーションは、周期が80nmから30nmまでに低減される場合、ゼロ次の効率/反射率が増加するため、回折効率が減少することを示す。周期が更に低減されると、高次の回折のために、反射率損失の低減が助けられる。
【0089】
例えば、30nmの周期長及び84nmの構造的深さ(12二重層に対応、図4及び図5の曲線IVを参照)を有する多層サブ波長構造は、71.1%という(ゼロ次の)、高いEUV反射率を依然として有することが可能である。71.1%とは、94.8%の相対効率を意味する。この値は、Si製の構造素子に対して上記で論じた値よりも、更により高い。UV抑制に関する多層ピラミッド形構造の効率は、図4に示す単一材料Siピラミッド形サブ波長構造の効率と比較可能である。
【0090】
ここで論じる反射率値は、計測よりもむしろ計算に基づく。全ての計算は、厳密結合波理論(rigorous coupled wave theory: RCWT)に基づいて実行された。テーパ形構造と同様に、線状、立方体上、五次の屈折率プロファイルを製造可能な構造素子、又はクロッフェンシュタインテーパ形構造の、代替形状を使用可能である。これらの構造素子を更に最適化すると、より改良された抑制効果を供給することができる。こうした抑制効果は、SWSの構造的深さがより少なくとも、ピラミッド形構造と同一の抑制結果を達成するために十分に効率的となりうる。この場合のピラミッド形構造は、幾何学的プロファイルであり、屈折率プロファイルではない。多層サブ波長構造においてEUV放射に対する不所望な回折効果を更に低減するために、異なる溝形状も最適化することができる。
【0091】
UV放射に対する屈折率分布型反射防止層として有効なサブ波長構造は、赤外(IR)放射が多層ミラーの表面から0次で反射されることを抑制可能な構造と一体化されてもよい。UV放射の反射を抑制する構造及びIR放射をリダイレクトする構造の両方を備える多層ミラーの例示的実施形態が、図6及び図7に示される。基本的に図2の実施形態に従う単一材料サブ波長構造(図6参照)、及び基本的に図3の実施形態に従う多層サブ波長構造(図7参照)の両方とも、適用することができる。次に特徴は、図6の実施形態に関連して説明される。
【0092】
図6の多層ミラーMは、基板SUB及び層スタックSLを備える。交互の低屈折率材料及び高屈折率材料層を備える層スタックSLは、基板上に形成される。スペクトル純度フィルタSPFは、シリコン(Si)からなる2Dの周期的なピラミッド形構造を備える。周期的なピラミッド形構造は、層スタックの各部分上に形成される。サブ波長構造の典型的な寸法は、従前の実施形態と同一としてよい。例えば周期長は、100nmを下回り、例えば典型的な構造的深さは、80nmのオーダーとしてよい。
【0093】
UV放射の反射を抑制するために有効な、この反射防止構造は、回折構造上に施される。回折構造は、赤外放射の鏡面反射を効果的に抑制する寸法とされる。具体的には、2D位相シフト格子構造PSGが、多層構造の入射側に形成される。EUV放射のために使用される光路から外れるよう入射IR放射を効率的に回折するために、周期的格子構造が形成される。周期的格子構造は、横方向の周期長PIRが例えば約1mmのオーダー(通常100μmから1000μmまでの範囲)、及び構造的深さSDIRが赤外放射の波長の4分の1のオーダーである。
【0094】
一体化構造の、極紫外放射(EUV)、紫外放射(UV)及び赤外放射(IR)部分を含む入射放射に対する効果は、図6及び図7において概略的に矢印で示される。入射EUV放射は、赤外放射を抑制する粗い格子構造にも、又はUV放射に対する反射防止層を備える微細なサブ波長構造にも強く影響されることなく、層スタックの多層構造により、高い反射率で反射される。従って、反射強度はEUV放射の入射強度の実質的部分である。UV放射の反射は、構造化された多層ミラーの入射側のピラミッド様サブ波長構造により効率的に抑制され、実質的にはいかなるUV放射も0次反射方向以外の方向に反射しない。更にIR域からの入射放射の部分は、赤外放射の波長のオーダーである典型的な周期長を有する位相シフト格子構造PSGにより効果的に回折される。0次(OR)回折に相当する方向の赤外放射の強度は、主として回折により実質的に低減される。一方、入射IR放射の相対的より大きな部分は、1次、2次及び3次回折等へと回折される。位相シフト格子の横方向の構造は、回折されたIR放射が、EUV放射に使用されるよう意図された光路から方向を転じられるような寸法とされる。0次方向に残されたIR強度は、位相シフト格子の垂直方向の構造的深さが、IR波長の4分の1のオーダーの光路差に相当することに起因して、IR光の弱め合い干渉により更に抑制される。
【0095】
サブ波長構造の構造素子が、4つのファセットを有するピラミッド形に類似の異なる形状、又は円錐形を有するピラミッド形を有してもよいと記載することには価値がある。時には、円錐形がより良好にUVを抑制可能である。
【0096】
理論的及び実験的結果に基づいて、この種の一体化構造は、そうしたスペクトル純度フィルタ層を備えない対応する多層ミラーと比較すると、81%以上のオーダーの総EUV相対反射率を提供することができる。
【0097】
UVスペクトル領域の反射率を低減するために有効なサブ波長屈折率分布型反射防止層を含む本発明の実施形態は、導入部で述べた現在のスペクトル純化方法と比較すると、以下の利点を含む。
【0098】
第一に、約100nmから400nmまでの波長域を含む全体域において、UVを抑制可能である。これは、弱め合い干渉又は位相シフト格子に基づく反射防止層による方法と比較した場合に、改良点と見なされる。
【0099】
更に、EUVパワー損失がほんの僅かである。そうした表面構造を施した後のEUV相対反射率は、そうした構造を備えない標準的なMo/Si多層ミラーに対して正規化すると、91.3%乃至94.8%のオーダーが期待されると判明した。従って、そうしたサブ波長構造を含む理想的多層ミラーが、そうした屈折率分布型反射防止層を備えない従来の多層ミラーと交換して使用されると、EUVパワー損失は9%乃至5%未満となり、一方同時にUV放射強度のレベルが著しく低減される、と期待される。
【0100】
更に、本発明の実施形態による多層ミラーは、独立型の薄膜と比較すると、より高い機械的安定性を提供する。
【0101】
更に、薄いフィルム又は薄膜と比較すると、特に熱負荷が高い場合に、より良好な熱的安定性を期待可能である。
【0102】
多層構造をEUVプラズマエッチング又はクリーニング方法から保護するために、キャッピング層を最適化可能であり、及びSiサブ波長構造上に被覆可能である。
【0103】
多層ミラーは、一次放射源からのEUV放射を集光するコレクタミラーとすることができる。UV反射強度を効率的に低減する非回折性屈折率分布型反射防止層を備えるスペクトル純度フィルタは、コレクタミラーの光学的下流における不所望な波長を抑制するためにEUV露光装置に使用される、いかなる多層ミラーに対しても適用可能である。
【0104】
本発明の実施形態による多層ミラーを製造する方法の実施形態は、新たな物理的パターニングプロセスを含み、規定のエネルギ範囲のエネルギを有する希ガスイオンから本質的になるイオンビームを、多層ミラーの自由表面上の目標部分上へと導くことで、多層ミラーの自由表面から材料を除去する。アルゴン(Ar)イオンを使用する実施形態が、詳説される。
【0105】
第1ステップにおいて、交互型高低屈折率層を有する層スタックを含む、反射性多層構造(多層組成)を、従来の方法で製造する。単一材料サブ波長構造が所望される場合(例えば、図2及び対応する記載を参照)、単一材料の厚層(例えばシリコンの80nm層)を、構造化プロセスに先立って、最終堆積ステップにおいて形成する。目標とされた材料の除去を含む構造化プロセスは、堆積終了の後に適用する。
【0106】
アルゴンの誘導結合プラズマ源(inductively coupled plasma source: ICP)が、高イオン密度を生成させるために使用される。更なる源、つまり容量結合プラズマ(capacitive coupled plasma: CCP)はパルスモードで使用され、イオンを結合プラズマ源領域から、低エネルギで構造化されるべき試料に対して向ける。容量結合プラズマは、層材料を目標通りに除去すること、及びそれにより本発明の実施形態による構造を作り出すことに適している。試料は、試料ホルダ上の固定位置に位置される。サンプルホルダを、プロセスの間に−20℃のオーダーの温度にまで冷却するために、冷却装置が装備される。(<10mTorrの)低作動圧が、衝突を防止し、及びイオン流束の方向性を保つために適用される。好適には、このプロセスのためにイオンが垂直入射で入射される。
【0107】
プロセスの実行に基本的に適する二源系は、自体公知である。従って、二源系は本明細書中では詳述されない。例えば、二源系は深反応性イオンエッチング領域において既知であり、通常ICP源及びCCP源を含む。そうした系は、材料をスパッタするイオンのみを使用する非反応モードでも作動可能である。そうしたモードは、本明細書中でも使用可能である。二源系に関しては、例えば以下の文献で詳述されている。H. V. Jansen、M. J. de Boer等、「Black silicon method X: a review on high speed and selective plasma etching of silicon with profile control: an in-depth comparison between Bosch and cryostat DRIE processes as a roadmap to next generation equipment」、Journal of Micromechanics and Microengineering, Volume 19 (2009) 033001。
【0108】
二源系は、イオン密度/流束(ICPパワー設定による制御)、及びイオンエネルギ(CCPパワー設定による制御)の大規模な分離制御に対して備える。イオン密度/流束及びイオンエネルギを独立制御することで、低いイオンエネルギを有する大きなイオン流束の発生が見込まれ、所望されるエッチング速度及び/又はマスク選択性を得て、及び同時にサブ表面の損傷レベルを低減する。
【0109】
このプロセスは、純粋に物理的なスパッタリングである。物理的なスパッタリングは、反応性イオンエッチング(RIE)のような従来の方法よりも、異なる材料間でエッチング速度の差がより小さい。反応性イオンエッチングは、フッ素又は塩素のような化学的反応性ガス種を、エッチングプロセスを補助するために使用する。希ガスイオンを使用するプロセスにより、低粗度で比較的均一にエッチング可能である。プロセスは、異なる多層化構造及び/又は材料の組み合わせに対して適用可能である。
【0110】
プロセスは、多層構造のパターニング、及び/又は多層構造の磨き直し、及び/又は汚染をミラー表面から除去、のプロセスとして特に有用とすることができる。実験において、15の二重層のパターニングの後に、94%を超える反射率が比較的維持されており、及び表面粗度は依然として約0.2nm rmsの低さであった。
【0111】
表面層がエッチング除去されて磨き直された多層ミラーの反射率は、トップ周期におけるエッチング終点位置を定在波場に合致させることにより、更に改良可能である。プロセスは、純粋なイオンスパッタリングである。そのため、流束及びエネルギの均一性は、主として試料上のバイアス場(容量結合プラズマ)により決定される。従って、プロセスは基を有する化学プラズマを含むプロセスと比較すると、より良好なエッチング均一性を広い範囲に亘って達成できる。エッチング速度もまた、イオン流束を増加させることにより増加可能である。
【0112】
プロセスは、Arイオンの使用に限られるわけでなく、ネオン(Ne)、クリプトン(Kr)又はキセノン(Xe)等である他の希ガスイオンを使用してもよい。プロセスは、異なる多層又は1つを超える材料組成を有する多成分系に対しても適用可能である。
【0113】
通常、多層の磨き直しは、例えばスズ、Gd、Tb、炭素、酸化物又はそれらの組み合わせにより表面が汚染された後に実施される。非平坦なトポグラフィにより、物理的スパッタに対して複製が粗くなるという問題が発生することがある。磨き直しの出来栄えを向上させるために、この物理的エッチングプロセスの前に、他の化学的クリーニングプロセスを組み合わせ可能、又は適用可能である。
【0114】
本明細書中で記載されたこのタイプのEUVミラーは、例えばEUVマイクロリソグラフィの分野等の、多様な光学系において使用可能である。
【0115】
図8は、本発明の一実施形態によるEUVマイクロリソグラフィ投影露光装置WSCの光学部品を例示する図である。EUVマイクロリソグラフィ投影露光装置は、放射感受性基板Wを露光する。放射感受性基板Wは、投影レンズPOの像面ISの領域に配置され、反射性パターニング装置又はマスクMのパターンの、少なくとも1つの像を備える。このパターンは、投影レンズの物体面OSの領域に配置される。
【0116】
記載を容易にするため、デカルトのxyz座標システムが示される。その座標から、図示された部品の各位置関係が明らかとなる。投影露光装置WSCはスキャナ型である。マスクM及び基板は、投影露光装置の作動の間にy‐方向に同期的に移動し、それによってスキャンされる。
【0117】
装置は、主放射源RSからの放射により作動される。照明系ILLは、主放射源からの放射を受け、パターン上へ向けられた照明放射を形成する。投影レンズPOは、パターンの構造を感光性基板上へ結像する。
【0118】
主放射源RSは、特にレーザプラズマ源又はガス放電源又はシンクロトロンベースの放射源とすることが可能である。そうした放射源は、特に5nmと15nmとの間の波長を有するEUV域において放射RADを生成する。照明系及び投影レンズがこの波長域で作動可能であるように、照明系及び投影レンズは、EUV放射を反射する部品と共に構成される。
【0119】
放射源から発する放射は、通常、所望されるEUV放射以外の波長を有する放射、特にUV放射及び赤外(IR)放射の部分を含む。
【0120】
放射源RSから発する放射RADは、コレクタCOLにより集光され、及び照明系ILLへと向けられる。照明系は混合ユニットMIX、望遠光学ユニットTEL及び視野形成ミラーFFMを備える。照明系は放射を形成し、及びそれにより投影レンズPOの物体面OS内、又はその近傍に位置する照明視野を照明する。この場合、照明視野の形状及びサイズは、物体面OSにおいて効果的に使用される物体視野OFの形状及びサイズを決定する。
【0121】
反射レチクル又はいくつかの他の反射パターニング装置は、装置の作動の間、物体面OSに配置される。
【0122】
混合ユニットMIXは、実質的に2つのファセットミラーFAC1、FAC2からなる。第1ファセットミラーFAC1は、照明系の面内に配置される。この面は物体面OSに対して光学的に共役関係にある。従って、第1ファセットミラーFAC1は視野ファセットミラーとしても設計される。第2ファセットミラーFAC2は、投影レンズの瞳面に対して光学的に共役関係にある照明系の瞳面内に配置される。従って、第2ファセットミラーFAC2は瞳ファセットミラーとしても設計される。
【0123】
瞳ファセットミラーFAC2、及びビーム路内で下流に配置され望遠光学ユニットTELを備える結像光学アセンブリ、及び斜入射により作動される視野形成ミラーFFMにより、第1ファセットミラーFAC1の個々のミラーリングファセット(個々のミラー)が物体視野内に結像される。
【0124】
視野ファセットミラーFAC1における空間的(局所的)な照明強度分布は、物体視野における局所的な照明強度分布を決定する。瞳ファセットミラーFAC2での空間的(局所的)な照明強度分布は、物体視野における照明角度強度分布を決定する。
【0125】
投影レンズPOは、投影レンズの物体面OS内に配置されたパターンの、物体面に対して光学的に共役関係にあって物体面に平行する像面IS内への結像を低減する。結像は、おおよそ作動波長λである極紫外域(EUV)からの電磁放射による影響を受ける。作動波長λは、この場合例えば13.5nmである。
【0126】
投影レンズは6つのミラーM1乃至M6を備える。ミラーM1乃至M6は投影ビーム路PR内で物体面OSと像面ISとの間に、物体面又は物体視野OF内に配置されたパターンが、ミラーM1乃至M6により像面又は像視野IF内に結像可能であるように配置される。
【0127】
EUV域からの放射に対して反射効果を有するミラーM1乃至M6(EUVミラー)は、各々が基板を備える。基板上には多層配置が施される。多層配置は、極紫外域からの放射に対する反射効果及び多数の層の対を備える。層の対は、相対的な低屈折率層材料及び相対的な高屈折率層材料を交互に備える。
【0128】
このような構造又は類似の構造を備える投影露光装置及び投影レンズは、例えば米国特許第7,977,651号明細書により開示される。この特許の開示を、参照により本明細書の内容に援用する。
【0129】
照明系ILLにおいて、斜入射により作動される視野形成ミラーFFMを除き、全てのミラーは、本明細書中で提案された種類の多層ミラー構造から恩恵を受けることが可能である。代替的又は追加的に、コレクタミラーCOLの反射面は、UV放射の反射強度を低減する構造を、場合によりIR放射をEUV放射の光路から外れるよう回折する構造に加えて、備えることができる。
図1A-1B】
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8