【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、これらの目的及び他の目的に対する解決手段として、一形態により、請求項1に記載の多層ミラー、請求項16に記載の方法、及び請求項25に記載のEUV光学系を提供する。好適な実施形態は、従属請求項において与えられる。全ての請求項の文言を、参照により本明細書に援用する。
【0016】
この形態による多層ミラーは、層スタックの頂部、すなわち層スタックにおいて基板と反対の放射入側に、スペクトル純度フィルタを含む。スペクトル純度フィルタは、UVスペクトル領域の第2波長域からの紫外(UV)放射に対する反射防止層として有効であるよう設計される。そのため、多層ミラーのEUV‐UV反射率比が、そうしたスペクトル純度フィルタを備えない多層ミラーに対して増加する。好適な状況において、UV放射に対する反射率が著しく低減される。一方(第1波長域からの)EUVに対する反射率は、低減されない、又はより小さな範囲でのみ低減される。場合により、UV反射率がEUV反射率よりも強く低減されるため、EUV‐UV反射率比が効果的に増加される。スペクトル純度フィルタは、第2波長域の反射率を低減するために有効な、非回折性の屈折率分布型反射防止層を備える。同時に屈折率分布型反射防止層は、EUV放射(すなわち第1波長域からの放射)に対しては、低い吸収を有するべきである。
【0017】
この用途のために、屈折率分布型反射防止層は、単一材料から、又は2つ以上の異なる材料の組み合わせから形成された層とする。有効屈折率は、放射入射側の第1媒体(入射媒体)から出射側の第2媒体(基板側媒体)へ、第1媒体の屈折率近傍の屈折率値から、第2媒体の屈折率近傍の屈折率値又は第2媒体の屈折率値へと、連続的又は単調な移行部を提供する。これにより、有効屈折率勾配が得られる。有効屈折率の移行部が漸進的であり、及び移行部の深さが目標波長(反射率において抑制されることを意図される波長)の著しい部分に亘って延在する場合、目標波長の反射を効率的に抑制できる。
【0018】
第2波長域の放射に対する反射低減効果を得られるよう、構造は制御された方法で製造される。第2波長域の波長は、第1波長域の波長より著しく大きい。第1波長域のより短い波長に対して反射低減効果を得ることは、望ましくない。好適には、第1波長域の波長に対して反射低減効果が生じないように、構造を製造する。第1波長域の波長に対する反射増強効果を可能とし、それによりミラー効果を増補できる。
【0019】
屈折率分布型反射防止層は非回折性である。これは屈折率分布型層が、不所望な帯域外波長域(第2波長域)からの放射の関連する強度を、実質的には、回折現象でリダイレクトしないよう構成されることを意味する。例えば、第2波長域の回折強度が少しでも存在する場合には、屈折率分布型反射防止層で潜在的に回折された残留強度は、(例えば100nmから400nmまでの)第2波長域の入射強度の10%未満、又は5%未満とすることが可能であろう。むしろ、帯域外波長の透過を増強可能とし、不所望な放射を多層ミラー内部で吸収可能である。従って、回折によりミラーからリダイレクトされた不所望な放射をとらえ、及び吸収するために、追加の手段を装備する必要がない。
【0020】
屈折率分布型反射防止層は、基盤及び層スタックで支承されており、多層ミラーの一体部分である。特許請求された発明は、好適にはEUV反射率を可及的に高く維持することを前提としてUV反射の全帯域を抑制するために、多層ミラーの表面側のUV反射を抑制する効率的手段を一体化する。
【0021】
第2波長域の下限は、第1波長域の上限の倍数とすることができる。第1波長域は、5nmから20nmまでとしてよいため、作動波長λは、例えば13.5nmとすることができる。一方、第2波長域は100nmから400nmまで延在できる。そのため第2波長域は、例えば深紫外(deep ultraviolet: DUV)域(約300nm未満の波長)、及び約200nm未満の波長を有する真空紫外(vacuum ultraviolet: VUV)域からの波長を含むことができる。
【0022】
一実施形態によれば、屈折率分布型反射防止層はサブ波長構造(SWS)を備える。サブ波長構造(SWS)は、第2波長域のUV波長よりも小さい横方向の寸法を有する空間的(横方向)スケールの構造素子を備える。サブ波長構造(SWS)は、屈折率分布を有して層スタックの放射入射表面で光学的コントラストを低減可能であり及び少なくとも部分的に紫外放射の反射を抑制可能な有効媒体として、第2波長域の紫外放射に対して有効であるように構成される。サブ波長構造に起因する有効屈折率勾配は、不所望なUV域全体をカバーする極めて広い反射防止帯域を有することが可能であるため、EUV系のスペクトル純度を、高度に改良可能である。
【0023】
構造素子の横方向のスケール(寸法)は、実質的に、抑制されるべき(第2波長域の)放射の波長よりも小さい。スケールは、不所望な波長の半分よりも小さくしてよい。従って第2波長域からの放射は、サブ波長構造を分解不能であるが、構造を複合材料として有効と「見なす」。一方スケールは、第1波長域の上限とほぼ等しいか、又はそれより大きくしてもよい。
【0024】
サブ波長構造は、構造素子のアレイを備える構造とすることができる。構造素子は、有効屈折率が、第2波長域の任意の特定波長に対して、基板側から放射入射側(放射入側)へ単調に変化する。換言するとサブ波長構造の有効屈折率は、第2波長域からの波長に対して、放射入側から、(層スタックが位置する)基板側へ単調に増加可能である。これにより、漸進的な屈折率整合が得られる。
【0025】
実施形態により、サブ波長構造(SWS)は周期構造である。周期構造は、周期的表面レリーフ構造を形成するテーパ形構造素子のアレイを備える。テーパ形構造素子は通常、放射入側に細い先端部を、及びより広い基部を備える。先端部と基部の間の移行部の幅は、連続的又はステップ状とすることができる。複数の構造素子に提供された充填率(構造素子の材料に充填された部分と、そうした材料の無い部分の、層スタック法線に対する垂直面における比)は、先端部レベル(放射入側)では低く、及び基部レベルでは著しくより高い。例えば有効光学定数であるサブ波長構造の光学特性は、空気又は真空の(入射側媒体の)光学定数と、光学素子を形成するために使用された材料の光学定数の間にあり、構造の充填率を変えることで制御可能である。
【0026】
いくつかの実施形態において、サブ波長構造は、ピラミッド形アレイ表面レリーフ構造を備える。代替案として、円錐形構造素子、又はクロッフェンシュタインテーパ形構造素子を発生させることもできる。
【0027】
異なるタイプの構造素子(形状及び/又は寸法の差異)が組み合わされてもよい(例えば、横方法に異なってオフセットした表面部分上、及び/又は交互型表面部分上の、異なる形状及び/又は寸法を有する領域等)。例えば、表面上のサブ波長構造全体が、同一の周期構造を備える必要はない。異なるUV波長に対しては、多層(基板)の屈折率が異なる。このため、屈折率分布プロファイルを異なって最適化して与えること、特に異なるテーパ形構造を与えることが要求されるかもしれない。2つ又は3つ又はそれ以上の異なるプロファイルのテーパ形構造を備えるサブ波長構造が、第2波長域のある波長を、更に良好に抑制することさえある。
【0028】
表面上のサブ波長構造の設計は、2つ又は3つの異なるプロファイルを有してもよい。例えば、表面の半分が第1プロファイルを有し、及び表面の別の半分が、異なる(第2)プロファイルを有することができる。換言すると、サブ波長構造はテーパ形構造素子のアレイを備える周期構造とすることができる。テーパ形構造素子は、周期的表面レリーフ構造を形成する。周期的表面レリーフ構造は、単一の周期性(唯一の種類のテーパ形構造)を全反射表面に亘って備えるか、又は2つ又は3つ以上の異なるプロファイルのテーパ形構造が組み合わされた結合型周期構造を備える。例えば製造的観点からは、全反射表面に亘る単一種類のテーパ形構造が好適である。
【0029】
EUV‐UV反射率比を効率的に改良するために、ある実施形態において、周期構造の周期長は、第1波長域の波長よりも大きく、及び第2波長域の波長よりも小さい。周期長は、層が延在する表面において画定された、隣接する構造素子の対応する部分の間で決定される。
【0030】
好適には、サブ波長構造の周期長は、0次を除く他の回折次数が第2波長域に対して存在しないよう小さくすべきである。周期長は、より高い抑制を得るために、対象の(帯域外)第2波長λ
2の下限よりも小さく、及び好適にはλ
2/N(N≒2)とすべきである。「N」の値は、(例えばEUVスペクトル領域を反射する層スタックの有効屈折率に定義される)「基板」の指数、及び例えば入射角に依存する。いくつかの実施形態において、周期構造の周期長は25nmから100nmまでの範囲にある。
【0031】
抑制効果はまた、構造の高さにも依存する。構造の高さは、適宜調整してよい。いくつかの実施形態において、サブ波長構造の構造的深さは、第2波長域の最小波長よりも小さく、及び第1波長域の波長よりも大きくすることが可能である。一般に構造的深さは、好適には少なくともλ
2/4で、好適にはλ
2/2を超えて、抑制されるべき波長の著しい部分にまで延在すべきである。ここでλ
2は第2波長域の下限を表す。構造的深さがこれらの値から著しく逸脱する場合には、エバネッセント回折モードが0次に干渉することがある。例えば、構造的深さは80nm以下のオーダー、又は50nm以下のオーダーとすることができる。一般に下限は、要求される抑制の大きさに関連させるべきである。例えば、50nmの周期、ピラミッド形、60nmの深さを有する場合、100nmから400nmまでの全帯域反射率は、22%を下回って抑制される。一方、EUV吸収に対して与えられる場合には100nmより大きい深さの値が可能であるが、現在ではそれほど好適でないと見なされる。
【0032】
有効フィルタ域には、周期長と構造的深さを適切に組み合わせることで影響可能である。あるサブ波長構造の最大フィルタ域において、(純粋に屈折率整合に関する観点から考察すると)より長い波長側が主として構造的深さの影響を受け、及びより短い波長側が主として構造周期の影響を受ける。
【0033】
周期構造を備えるサブ波長構造の1つの利点は、例えばeビームリソグラフィ、ナノインプリント又は干渉リソグラフィ等のリソグラフィック構造化技術である確立された表面構造化方法を使用して、周期構造物を目標通りに製造可能なことである。更にランダム構造と比較すると、ある構造周期が波長より長く、回折を引き起こす場合に、ランダムな空間周波数の分布が抑制を低下させる可能性があるため、周期構造が利点を有することが可能である。一般に周期構造を装備することで、ランダム構造を使用するより精密に、抑制効果を制御可能である。
【0034】
一方で周期構造は、一般的には必要でない。サブ波長構造は、周期構造に関して述べた寸法に対応する、横方向及び深さ方向の平均寸法を有するランダムな粗さを備えた構造により形成してよい。ランダム構造を使用する場合、ランダム構造の平均寸法は、第1波長域の上限よりも大きくすべきである。
【0035】
サブ波長構造は、表面上の二次元(2D)構造とすることができる。二次元構造は、例えば二次元アレイで配置されたピラミッド形構造素子を備える。適切な格子定数の一次元の非回折性格子のような一次元のサブ波長構造も、抑制効果を提供できる。しかしながらこの抑制効果は、1つの偏光に対してのみ作動する。それにもかかわらず、放射源が偏光され、及び放射が固定角度から入射する場合、一次元(1D)のサブ波長構造も有用とすることができる。
【0036】
いくつかの実施形態において、特にサブ波長構造(SWS)の形状である屈折率分布型反射防止層は、第1波長域のEUV放射に対して吸収の低い単一材料から形成される。例えば材料は、第1波長に対して0.007未満、好適には0.005以下の吸光係数kを有する吸収の低い材料の群より選択可能である。
【0037】
単一材料は、層スタックの層の形成に使用されていない材料から選択できる。しかしながら、層スタックの構成に使用された材料も使用できる。
【0038】
いくつかの実施形態において、単一材料は、アモルファスシリコン(Si)、水素化シリコン(α‐Si:H)及び炭素(C)からなる群から選択される。適切な材料を選択する際に、Siの吸収端はλ=12.4nm、又は炭素の吸収端はλ=4.4と考慮されるべきである。単一材料は、層スタックが基板上に形成された後に、層スタック上に形成できる。
【0039】
他の実施形態において、屈折率分布型反射防止層は、層スタックの多層構造に対応する多層構造を備える。サブ波長構造が屈折率分布型反射防止層を形成するために使用される場合、構造素子は対応する多層構造を備えることが可能である。これらの実施形態において、(層スタックの層を形成する材料に加える)追加材料は、屈折率分布型反射防止層を提供するために不要である。
【0040】
屈折率分布型反射防止層は、層スタックを含む多層構造が形成された後に、目標とされた材料を表面から除去することで形成可能である。これらの実施形態において、(例えばピラミッド形を有する)サブ波長構造の構造素子は、その多層構造のために、EUV放射の反射に寄与できる。従ってより高いEUV‐UV反射率比が得られる。この場合、サブ波長ピラミッド形構造自体がEUV放射に対して反射性を有するため、サブ波長多層ピラミッド形構造(又は他の形状の構造)が、より高いEUV効率を提供できる。
【0041】
いくつかの実施形態において、屈折率分布型反射防止層上に、保護キャッピング層を形成できる。例えば、多層ミラーをEUVプラズマエッチング及び/又はクリーニング方法から保護するために、キャッピング層を最適化可能であり、及び(サブ波長構造のような)屈折率分布型反射防止層上に被覆可能である。キャッピング層は、BN、B
4C、B、C(例えばダイヤモンド状炭素膜)、TiN、Pd、Rh、Ru、Au、C
2F
4、Si
3N
4、SiC、MgF
2及びLiFからなる群より選択された材料を含んでよく、適切な層厚を備えてよい。キャッピング層の層厚は、例えば0.5nmと5.0nmの間とすることができる。
【0042】
屈折率分布型反射防止層を、多層構造の平滑な表面上に形成可能である。代替的に、屈折率分布型反射防止層は、構造化表面、つまり非平滑なレリーフ構造を有する表面上に形成できる。いくつかの実施形態において、屈折率分布型反射防止層は、第2波長よりも大きい波長を有する第3波長域からの放射を回折するような寸法の回折格子構造上に配置され、及び形成される。
【0043】
特許請求された発明の実施形態を、IR(赤外)抑制方法と一体化する可能性がある。例えばサブ波長構造は、周期≦100nmのスケールサイズ、及び50nmから100nmまでの範囲の高さを有することができる。位相シフト格子(PsG)のように、(UV放射に対して有効な)反射防止表面を、IR抑制に対して使用される回折光学素子上に施すことが可能である。従って、SWS+PsG+ML系は、UV光及びIR光の両方をフィルタで取り除くことが可能であり、及び最終的にクリーンなEUVスペクトルを達成可能である。単一材料及び多層サブ波長構造の両方を、適用可能である。
【0044】
多層ミラーを製造する方法において、屈折率分布型反射防止層の所望の構造を堆積可能な堆積技術を使用して、スペクトル純度フィルタを形成可能である。そのため、堆積後には、更なるプロセスステップが不要である。しかしながら多くの実施形態において、後に屈折率分布型反射防止層を形成することを意図された1つ又は複数の材料が、最初に層スタック上に堆積される。その後材料は、多層ミラーの自由表面から、(横方向及び深さ方向で)構造化された様式で部分的に除去され、所望の構造が得られる。
【0045】
この目的のためには、多層ミラーを、多層格子、ゾーンプレート、ホログラム等の構造化多層に構造化するための従来から既知の方法(又は方法の組み合わせ)を、使用できる。湿式エッチング、又はフッ素又は塩素ベースの反応性イオンエッチング(RIE)などの化学的方法が、これらの目的を達成すべく提案されてきた。
【0046】
発明者らは、従来の方法が、処理後に多量のEUV損失に悩む構造化多層ミラーを発生させることがあることを、観察により認めていた。残余の構造に損傷を引き起こさない、又は僅かな損傷しか引き起こさない、多層ミラーの構造プロセスを提供することが望ましい、との見解を持った。この方法は、多層ミラーを磨き直すためにも使用可能であろう。そうした方法は、本発明の実施形態における屈折率分布型反射防止層を形成するプロセスステップにおいて使用可能であろう。また方法は、現在特許請求された発明と無関係の、他の適用事例においても有用であろう。
【0047】
方法は、規定のエネルギ範囲のエネルギを有する希ガスイオンから本質的になるイオンビームを、多層の自由表面上の目標部分上へと導くことで、多層ミラーの自由表面から材料を除去するステップを含む。
【0048】
比較的低いイオンエネルギを有するネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)又はキセノン(Xe)のような希ガス種を使用するイオン研磨は、広く研究されてきた。こうしたイオン研磨は、(例えばイオンビームアシスト堆積法(ion beam assisted deposition: IBAD又はIAD)である)堆積法において、層の成長を助けるために適用されてきた。しかしながら現在では、希ガスイオンから本質的になるイオンビームの使用が提案されている。イオンビームは通常、IBAD技術に使用されるよりも著しく高いイオンエネルギを有する。このイオンエネルギは、多層ミラーの表面を構造化する、及び/又は光学素子、特に多層構造を備える光学素子を、自由(上部)表面から汚染を除去することで磨き直しする、という目的のためには少なくとも十分に高い。
【0049】
希ガスから本質的になるイオンビームが、多層ミラーの自由表面上で実行される材料除去ステップにおいて使用される場合、化学的反応性ガス種を含むイオンビームを使用する場合のいくつかの欠点を回避可能である。反射性多層ミラー構造組成は、相互に積層された異なる材料の層を含む。そうした層構造が反応性イオンエッチングを使用して処理される場合、エッチングプロセスにより、穴、及びより大きな粗さが発生されることがある。フッ素又は塩素ベースの基又はイオンは通常、例えばモリブデン(Mo)及びシリコン(Si)等、層スタックの層を形成する異なる材料に対して、又は原子番号において大きな差異を有する材料からなる他の多成分系に対して、非常に異なるエッチング速度を有する。この事実が、こうした穴、及びより大きな粗さが発生する部分的な原因であるとされる。イオンビームから、フッ素又は塩素ベースの基又はイオンのような化学的反応性ガス種を除くと、異なる層材料の選択性エッチングに関連する問題を、少なくとも部分的に回避可能である。本質的に希ガスイオンからなるイオンビームは、本質的に純粋な物理的スパッタリング(又はエッチング)を実行する。こうしたスパッタリングは、化学的反応性ガス種が存在するスパッタリングよりも、異なる材料間のエッチング速度の差が遥かに小さい。従って、粗度が低く、むしろ均一なエッチングプロセスが可能である。従って方法は特に、異なる材料又は材料の組み合わせを有する層からなる多層ミラーの自由表面から材料を除去するために適合している。
【0050】
以下のプロセス状態のうちの1つ又は複数のプロセス状態は、結果として生じた表面構造の特性を、特定の目的に向けて最適化するために使用できる。
【0051】
いくつかの実施形態において、希ガスイオンは、アルゴンイオン、ネオンイオン、クリプトンイオン及びキセノンイオンからなる群から選択される。
【0052】
比較的低いイオンエネルギで、材料が自由表面から除去されることを、好適とすることができる。例えばイオンエネルギは、100eVから500eVまでのエネルギ範囲とできる。粗さに関しては、イオンエネルギ及びイオンの入射角の両方が、結果に影響することがある。近垂直入射による作動を、好適とすることができる。イオンエネルギ状態を観察すると、表面層と小さな粗さの混合が殆ど促進されていないように見える。材料の除去を制御し、材料の除去後の自由表面の表面粗度を1nm rms未満とすることができる。0.5nm rms未満の範囲である、より小さい値を得ることもできる。
【0053】
材料除去ステップの性能を改良するために、イオン密度/流束、及びイオンエネルギの分離(独立)制御がいくつかの実施形態において使用される。従って、イオンビームを発生させるステップは、イオン流束の制御及びイオンエネルギの独立制御を含む。これらのパラメータを独立制御することで、大きなイオン流束が低いイオンエネルギと結合可能となり、一定のエッチング速度/マスク選択性、及び低いサブ表面損傷が得られる。用語「エッチング速度/マスク選択性」は、マスク材料と(構造化されるべき)機能性材料の間のエッチング速度を指す。
【0054】
装置の実施形態において、希ガスイオンが、誘導結合プラズマ源(ICP)により発生される。及び容量結合プラズマ(CCP)は、発生されたイオンをイオンビームとして目標部分に向けるために使用される。イオン密度/流束は、ICPパワーを適切に設定することにより制御できる。イオンエネルギは、CCPパワーを適切に設定することにより、分離して制御できる。
【0055】
装置は例えば、(i)構造化表面を備えた多層ミラーを製造するため、及び(ii)多層ミラーを磨き直しするため、及び(iii)多層表面から汚染を除去するため、に使用可能である。これに関連して、用語「磨き直し」は、例えば多層の複数の二重層の表面が、酸化又は汚染された際に、これら表面からの除去又は多層の全スタックの除去を含む。
【0056】
処理される多層ミラーを、機械加工(イオンボンバードメント)の間に能動的に冷却することが、結果を改良することがある。一実施形態において、多層ミラーは基板ホルダ上に支承される。及び基板ホルダは0℃未満の温度にまで冷却される。例えば、−10℃未満、及び/又は−15℃未満の温度、及び/又は−20℃近傍のオーダーの温度又は−20℃の温度を、有用とすることができる。例えば+10℃までのような、より高い温度は、他の場合において有用となり得る。
【0057】
更に結果として生じたプロファイルを可及的に精密に画定可能とするために、いくつかの実施形態において、イオンは実質的に垂直入射で目標部分に向けられる。用語「実質的に垂直入射で」は、入射イオンビームの平均イオン方向が、(表面に垂直な)垂直入射から20°未満、又は10°未満で逸脱すると意味することを意図する。
【0058】
サブ波長構造の形状である屈折率分布型反射防止層を、材料除去により製造するために、多様な技術を使用してもよく、多層構造を準備する。例えば一実施形態において、紫外干渉リソグラフィが使用され、多層構造上に被覆されたレジスト層を、イオンボンバードに先立って露光する。そうした技術は、例えば格子パターン用の100nmサイズの特徴を標準的に製造するために既知である。2つの相互に垂直な方向(x‐及びy‐方向)への干渉を、ピラミッド形パターン、又はテーパ形構造素子を備えた別の二元パターンを製造するために使用可能である。この技術は、100nmの典型的な周期長を有する構造を可能とするが、更により小さな特徴を得るためには、ダブルパターニング技術を使用できる。例えば、追加的な紫外干渉リソグラフィによるステップを、ダブルパターニングで使用してもよく、50nm特徴を製造できる。この特徴は、紫外放射及び/又は赤外放射を抑制する際により効果的である。
【0059】
代替案として、EUV又はX線干渉リソグラフィを使用してもよく、更により小さな特徴サイズを有するサブ波長構造の製造に使用可能なマスクを製造できる。
【0060】
代替的に、ナノインプリントリソグラフィ(nano-imprint lithography: NIL)の変更形態を使用できる。典型的な場合、スタンプ又はレチクルを、スタンプ領域からスタンプ領域に完全に整列させる必要はない。なぜなら、プリントプロセスにおける僅かな瑕疵又はズレが、許容可能なためである。従来のNIL特徴は、30乃至50nmの範囲に至るまでルーチン的に実行可能である。この特徴は、本発明における典型的な適用事例に完全に適合する。
【0061】
本発明はまた、上記及び下記に詳述する種類の、少なくとも1つのEUVミラーを備える光学系に関する。
【0062】
光学系は、例えばEUV放射で作動するマイクロリソグラフィ投影露光装置用の、投影光学系又は照明系とすることが可能である。EUVミラーは、平面状のミラー表面、又は凸型もしくは凹型にカーブしたミラー表面を備えることが可能である。照明系及び/又は投影光学系において、1つ又は複数又は全てのEUVミラーを、本明細書で記載したように構成できる。EUVミラーはまた、例えば顕微鏡の領域である他の光学系においても使用可能である。
【0063】
これらの特徴及び更なる特徴は、請求項のみでなく明細書中の記載及び図面から明らかである。個々の特徴は各ケースにおいて、個々の特徴により又は複数の特徴を部分的に組み合わせた形状で、本発明の実施形態及び他の分野において実現可能である。個々の特徴は、有利な実施形態及び本質的に保護可能な実施形態を構成可能である。本発明の例示的な実施形態は、図面に示され、及び以下に詳述される。