(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載のミラー構成体(1)であって、前記第1電極(9a)と前記第2電極(9b)との間の前記間隙領域(11)における前記相互接続構成体(10)の電気抵抗(Ri)は、前記第1電極及び第2電極(9a,9b)の電気抵抗(Rw)よりも大きく、前記第1電極及び第2電極(9a,9b)を含む前記隣接する電極構成体(9a,9b,9c)の前記圧電層(8a,8b)の電気抵抗(Rl)よりも小さい、ミラー構成体(1)。
請求項1〜3の何れか一項に記載のミラー構成体(1)であって、前記第1電極(9a)と前記第2電極(9b)との間の前記間隙領域(11)における前記相互接続構成体(10)の電気抵抗(Ri)は、1キロオームから10メガオームの範囲である、ミラー構成体(1)。
請求項1〜5の何れか一項に記載のミラー構成体(1)であって、前記第1電極及び第2電極(9a,9b)の電気抵抗(Rw)は1キロオーム以下である、ミラー構成体(1)。
請求項1〜6の何れか一項に記載のミラー構成体(1)であって、前記第1電極及び第2電極(9a,9b)を含む前記隣接する電極構成体(9a,9b,9c)の前記圧電層(8a,8b)の電気抵抗(Rl)は、10メガオーム以上である、
ミラー構成体(1)。
請求項1〜7の何れか一項に記載のミラー構成体(1)であって、前記相互接続構成体は、複数の、又は全てのミラー素子(2a,2b)を相互接続する共通相互接続層(10)を備える、ミラー構成体(1)。
請求項1〜8の何れか一項に記載のミラー構成体(1)であって、複数の、又は全てのミラー素子(2)の前記圧電層(8a,8b)は共通圧電層(8)を形成する、ミラー構成体(1)。
請求項1〜9の何れか一項に記載のミラー構成体(1)であって、複数の、又は全てのミラー素子(2)の前記反射層系(6a,6b)は共通反射層系(6)を形成する、ミラー構成体(1)。
請求項1〜10の何れか一項に記載のミラー構成体(1)であって、前記反射層系(6a,6b)は300ナノメートル未満の波長範囲の電磁放射線を反射するように適合される、ミラー構成体(1)。
請求項1〜11の何れか一項に記載のミラー構成体(1)であって、前記反射層系(6a,6b)は、屈折率の高い材料の層と屈折率の低い材料の層との交互層(12,13)を有する複数のペア層(12,13)を備える、ミラー構成体(1)。
請求項1〜12の何れか一項に記載のミラー構成体(1)であって、前記相互接続構成体における相互接続層(10)の厚さ(ti)は50ナノメートルから500ナノメートルの範囲である、ミラー構成体(1)。
請求項1〜13の何れか一項に記載のミラー構成体(1)であって、前記第1電極及び第2電極(9a,9b)の最大電極直径(D)は0.5〜50ミリメートルの範囲である、ミラー構成体(1)。
請求項1〜14の何れか一項に記載のミラー構成体(1)であって、前記第1電極(9a)と前記第2電極(9b)との間の前記間隙領域(11)の幅(W)は10μm〜1ミリメートルの範囲である、ミラー構成体(1)。
請求項1〜15の何れか一項に記載のミラー構成体(1)であって、該ミラー構成体(1)における使用領域の直径に亘るミラー素子(2)の数は20〜200の範囲である、ミラー構成体(1)。
【背景技術】
【0003】
現今では、コンピュータチップ及びその他の微細構造部品などの半導体コンポーネントの製造において、リソグラフィ露光法が主に用いられている。この場合、例えば半導体コンポーネントの層のラインパターンなどの、結像される構造パターンを有する、あるいは形成するマスク(レチクル)又はその他のパターニング装置が使用される。パターンはリソグラフィ露光装置の照明系と投影対物系との間の、投影対物系の物体平面の領域に配置され、照明系によって提供される照明放射線で照明される。パターンによって変化した放射線は投影放射線として投影対物系を通り抜け、露光される基板上にパターンを結像する。基板面は物体平面と光学的に共役な投影対物系の結像面に位置する。一般に基板面は感放射性層(レジスト)で被覆されている。
【0004】
更に微細構造を製造することができるように種々の手法が追求されている。例えば、投影対物系の分解能は投影対物系の像側開口数を拡大することによって高めることができる。別の手法として、電磁放射線のより短い波長を用いることが挙げられる。例えば、特に5ナノメートル(nm)〜30nmの範囲の動作波長を有する極紫外線(EUV)の電磁放射線を使用する光学系が開発されている。
【0005】
短い波長はそれよりも長い波長で透過する既知の光学材料によって吸収されるので、EUV範囲の放射線は屈折光学素子を用いて集束又は誘導することはできない。従って、EUVリソグラフィにはミラー系が使用される。EUVリソグラフィに使用される光学系だけでなく、深紫外線範囲(DUV,動作波長300nm未満)又は真空紫外線範囲(VUV,動作波長200nm未満)の光を用いるリソグラフィの光学系において、ミラーは適用される。
【0006】
最高の品質のリソグラフィ結像を保証するには、一般に、照明系によって照明される照明視野内に明確に定められた強度分布を生成し、結像視野内にできる限り小さな収差でマスクパターンを結像させることが望ましい。光学系はこれらの要求事項を配達時のみに満たせばよいのではなく、光学系の寿命全体を通して大きな変化なく維持しなければならない。前者の場合、要求事項からの考えられる逸脱として、実質的に、旧い設計や製造上の欠陥によるものがあるが、寿命を通しての変化は、たいてい実質的に経年劣化によるものである。逸脱の一つの原因として鏡面の特定形状からの変化があり、このため、相対的な位相変化がミラーに反射する光に生じる可能性がある。
【0007】
多くの最新のリソグラフィプロセスでは、二重露光、多重露光又はスペーサの使用などの分解能強化技術が用いられる。これらの技術によって一連の連続する露光ステップによる微細構造の生成が可能になる。これらの技術において、その後のステップで生成される構造体は、連続する露光において高いオーバーレイ精度で重ね合わせなければならない。その結果、1つの露光技術の場合と比較して、像の横方向における正確な位置決めのため、要求事項が増える。
【0008】
更に、像側面の開口数NAが増えて波長が減少するにつれて、焦点面の正確な位置決めは一層困難になる。例えば、焦点深度範囲は波長に比例し、像側面開口数の二乗に反比例する。例えば、0.4よりも大きい開口数NAにおけるEUV波長又は1.1よりも大きい開口数における深紫外線範囲の波長は、焦点深度範囲を例えば70nm未満に減少させる。このため、焦点面の軸方向位置は大変正確に制御されなければならない。
【0009】
更にテレセントリック効果により、所望する像位置に対する正確な位置決めが影響を受ける可能性がある。テレセントリック効果により、像位置は放射線の伝播方向に対して傾斜する可能性がある。従って、露光領域の軸方向位置における変化により、実際の像の所望の像位置から横方向のずれが生じ、横方向の重ね合わせ精度にマイナスの影響が与えられる。
【0010】
つまり、軸方向及び横方向の焦点位置は非常に注意深く制御されなければならない。また、通常は感光性コーティングで被覆されている実基板面は必ずしも平面でなく、平面でない場合もある。このため露光のステップとステップの間、又は単一の走査露光動作中さえも焦点位置の調整が必要とされる場合がある。更に、焦点位置だけでなく、結像倍率や歪みなどの収差のような、像質に影響を与えるその他の要因も正確に制御できることが望ましい。
【0011】
収差の増加は光学素子の加熱によって引き起こされ、これによって屈折率の変化及び/又は光学面の変形が生じ得る。また重力は光学素子の光学効果に影響を与え、光学面は重力によって変形され得る。更に、収差に影響を与える経年劣化プロセスを排除することはできない。
【0012】
時間依存性リソグラフィプロセスの品質への影響を考慮するために、動的マニピュレータシステムがしばしば用いられる。
【0013】
特許文献1は、EUV照明系の照明視野における照明強度分布及び照明角度分布を補正するミラー構成体を開示している。ミラー構成体は鏡面を形成する複数のミラー素子を備え、各ミラー素子は基板を有し、基板上にはEUV範囲の放射線に対する反射効果を有する多層構成体が適用されている。各々の多層構成体は、関連する電極構成体によって生成される電界によって制御することのできる厚さを有する圧電層を含む。従って、ミラー素子の圧電層は相互に独立して制御可能であり、このため、それらの層の厚さを個々に調整することができる。そのため、ミラー構成体の反射特性は鏡面に亘って局所的に異なるように影響を受けることができるため、照明強度分布及び照明角度分布の補正が可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の課題は、リソグラフィ露光装置で使用することのできるミラー構成体及びミラー構成体を備えた光学系を提供することであり、ミラー構成体は従来技術に対して改善されており、例えば改善された波面補正のために改善された光学特性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本課題を解決するために、本発明は、請求項1に記載する特徴を備えるミラー構成体、請求項2に記載する特徴を備えるミラー構成体、及び請求項17に記載する特徴を備える光学系を提供する。有利な発展形態は従属請求項に記載されている。これら全ての請求項の文言は本明細書の内容に参照として援用される。
【0017】
ミラー構成体は、隣接して配置され、共にミラー構成体の鏡面を形成する複数のミラー素子を有する。ミラー素子は、特に横方向、例えば行と列に隣接して、鏡面の領域をほぼ埋める、あるいは完全に埋めるように配置される、又は相互に距離をあけて配置され得る。ミラー素子は、支持構造体上に相互に離して、適切であれば隙間によって離して設置されるものであってもよい。鏡面は完全に平らなもの(平面鏡)であってもよいし、曲面(例えば、凸面鏡、凹面鏡、円筒鏡又は一般的な非球面状)であってもよい。ミラー素子は、鏡面の所望の形状が得られるよう、支持構造体上に設置され得る。
【0018】
各ミラー素子は基板と該基板上の多層構成体とを備える。多層構成体は放射線入射面を有する反射層系を含み、放射線入射面は鏡面の一部を形成する。反射層系は電磁放射線に対する反射効果を生じる1つ又は複数の反射層を備える。更に、反射層系は1つ又は複数の反射層上に保護層を備えてもよい。反射層系の最上層の表面は放射線入射面を形成する。従って、各ミラー素子は放射線入射面と基本的に平行な層を含む層構造を有する。
【0019】
更に、各ミラー素子の多層構成体は、放射線入射面と基板との間に配置された圧電層を含む。各ミラー素子は電界を生成する圧電層と関連する電極構成体を備え、圧電層の層厚は、層に垂直な方向に、電界によって制御され得る。電界は電極構成体に電圧を印加することによって生成され得る。各電極構成体は必要に応じて他の電極構成体から独立して駆動させることができる。よってミラー素子の圧電層は相互に独立して制御することができ、それらの層厚に応じて調整することができる。その結果、ミラー構成体の反射特性は鏡面に亘って局所的に異なる影響を受け、鏡面の望ましくないずれ又は変化を補償することが可能となる。
【0020】
電極構成体の電極は圧電層と接触し得る。電界が材料で充たされた、又は材料のない隙間を浸透して圧電層に達することができる限り、1つ又は複数の電極は、影響を受ける圧電層から少し離して配置させることができる。その結果、多層構成体の1つ又は複数の層、特に反射層系の1つ又は複数の反射層は、電極と関連する圧電層との間に位置させてもよい。
【0021】
圧電層を反射層系の1つ又は複数の反射層に対して配置させる、種々の可能性がある。例えば、圧電層は反射層系と基板との間に配置させてもよい。この場合、反射層系は圧電層によって基板全体に対して上下させることができる。隣接して配置されるミラー素子における反射層系の相対高さを変化させることにより、鏡面の起こり得る不平坦さを補償することが可能であり、入射放射線の波面の空間分解能的な位相補正が可能である。この場合、補正の横方向における分解能(空間分解能)は、個々のミラー素子における放射線入射面の横方向の寸法に依存する。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、ミラー構成体は、隣接する電極構成体の隣接する第1電極及び第2電極を電気的に相互に接続する相互接続構成体を備える。第1電極は隣接する電極である第2電極から、圧電層の少なくとも片側において、間隙領域によって横方向に分離される。第1電極と第2電極との間の間隙のため、第1電極と第2電極との間に短絡はないので、隣接する電極構成体は相互に独立して駆動され得る。
【0023】
一実施形態によれば、相互接続構成体は第1電極と第2電極との間の間隙領域に相互接続電界を生成する。相互接続電界は第1電極の第1電界と第2電極の第2電界との間に連続遷移を生成する。
【0024】
他の実施形態によれば、第1電極と第2電極との間の間隙領域における相互接続構成体の電気抵抗は、第1電極と第2電極の電気抵抗よりも大きく、第1電極及び第2電極を含む隣接する電極構成体の圧電層における電気抵抗よりも小さい。
【0025】
第1電極及び第2電極の電気抵抗は、第1電極及び第2電極を対応する電圧源及び/又は電流源に接続させる引き込み接続線において生じ得る電気抵抗を含み得る。「相互接続抵抗」とも示される相互接続構成体の電気抵抗は、「電極抵抗」とも示される第1電極及び第2電極の電気抵抗よりも大きいので、第1電極と第2電極との間に短絡はない。第1電極構成体と第2電極構成体とは相互に独立して駆動させることができる。相互接続抵抗は、第1電極及び第2電極を含む隣接する電極構成体の「圧電抵抗」とも示される圧電層の電気抵抗よりも小さいので、第1電極及び第2電極による電荷は相互接続構成体に蓄積され、隣接する電極構成体の圧電層を通る漏れによってすぐに排出されない。電荷が蓄積されると、上述の相互接続電界が増大する。
【0026】
有利には、第1電極の境界で終わる第1電界から第2電極の境界で始まる第2電界までの間隙領域内における圧電材料の電界強度の連続的又は円滑な遷移により、ミラー素子のコンポーネント、特に圧電層の材料疲労及び亀裂のリスクが低減される。
【0027】
ミラー素子はミラー構成体の鏡面領域を完全に埋めるように配置させることができ、隣接するミラー素子の横方向の境界は相互に接触する。特に隣接する圧電層は相互に接触する。この場合、第1電極及び第2電極は対応する圧電層を横方向に完全に被覆せず、第1電極と第2電極との間に間隙が存在するよう、第1電極と第2電極とが相互に接触しないようにする。そうでなければそれらの間に短絡が生じ、第1電極構成体及び第2電極構成体の相互に独立した駆動が妨げられる。従来のミラーにおいては、圧電層の被覆されていない部分は変形せず、たいてい圧電層の被覆されていない部分の上の反射層系の一部に鋭いよじれ、段又は溝が生じる。反射層系のこのようなよじれ、段又は溝は、所望される波面補正に悪影響を与え得る。これとは対照的に、相互接続構成体は第1電極及び第2電極によって被覆されていない圧電層の少なくとも一部を被覆し、相互接続構成体によって生成される相互接続電界によって圧電層のこれらの部分に変形が生じる。従って、反射層系及び鏡面の鋭いよじれ、段又は溝などの、個々の第1電極及び第2電極によって生じる波面エラーの要因は減少する。
【0028】
相互接続構成体の更なる利点は、相互接続構成体が例えば相互接続構成体の上下の引き込み接続線によって生じる電界に対する圧電層のシールドとして機能することである。従って相互接続構成体はこのような電界から導入されるクロストークを除去する。
【0029】
本発明の一実施形態において、第1電極と第2電極との間の間隙領域における相互接続構成体の電気抵抗は1キロオーム(kΩ)〜10メガオーム(MΩ)、好適には10kΩ〜1MΩである。
【0030】
他の実施形態によれば、第1電極と第2電極との間の間隙領域における相互接続構成体の電気伝導率は200〜1s/mの範囲、特に100〜1s/mの範囲である。
【0031】
相互接続抵抗が高過ぎる(又は電気伝導率が低過ぎる)場合、相互接続構成体内に蓄積される電荷の時定数が高過ぎる可能性がある。一方で、相互接続抵抗が低過ぎる(又は電気伝導率が高過ぎる)場合、印加電圧を維持するために用いられる電流によって抵抗加熱の生じる可能性がある。本発明の一実施形態において、相互接続構成体は半導体材料を含む。典型的に、電極構成体は金属材料を含む。金属材料の比電気抵抗は半導体材料よりも低く、半導体材料の比電気抵抗は圧電材料よりも低い。従って、相互接続抵抗は電極抵抗よりも高く、圧電電気抵抗よりも低くなる可能性がある。半導体材料はシリコンベースであってもよい、又は基本的にシリコンのみで構成されてもよい。半導体材料はドーピングしてもよく、ドーピングによって相互接続構成体の抵抗率、又は抵抗の調整が可能になる。
【0032】
半導体材料はシリコン以外の材料をベースにしたものであってもよい。例えば、半導体材料は、LaNiO
3,SrRuO
3,SrVO
3,LaCoO
3,SrCoO
3,LaMnO
3,Sr
0.7Ce
0.3MnO
3,La
2Ce
2O
7,LaVO
3,LaCrO
3,LaFeO
3,LaTiO
3,LaCuO
3,La(Mn
0.5Co
0.5)O
3,LaCu
0.4(Mn
0.5Co
0.5)
0.6O
3,La
0.7Sr
0.3FeO
3,La
0.7Sr
0.3MnO
3,SrFeO
3,BaMnO
3,SrMnO
3,Ba
0.5Sr
0.5MnO
3,BaRuO
3,BaTiO
3,CaMnO
3,Ce
0.8Y
0.2O
1.9,MgO,NdNiO
3,Y安定化ZrO
2,ZnFeO
3,CaRuO
3,CaTiO
3,TiO
2,La
0.6Sr
0.4Fe
0.8Co
0.2O
3,La
0.85Sr
0.15MnO
3から構成される群から選択され得る。
【0033】
通常、半導体材料の抵抗は温度に大きく依存し、一方で金属材料の抵抗の温度への依存はそれほど大きくない。従って、半導体材料を含む相互接続構成体の抵抗測定は、ミラー構成体内における入射放射線の吸収によって生じ得る、ミラー構成体内の局所温度分布を測定するために用いることができる。温度分布の測定によって波面エラーの原因を推定することができるので、ミラー構成体のフィードバック信号、すなわち、対応する電極構成体に印加される特定の電圧の個々の調整として使用することができる。
【0034】
本発明の一実施形態において、第1電極及び第2電極の電気抵抗は1kΩ以下、好適には100Ω未満である。従って、第1電極及び第2電極、特にそれらの引き込み接続線に沿った著しい電圧効果はないはずである。
【0035】
本発明の一実施形態において、第1電極及び第2電極を含む隣接する電極構成体の圧電層における電気抵抗は、10MΩ以上、好適には100MΩよりも大きい。従って、相互接続構成体に蓄積される電荷を減少させる可能性のある、圧電層の漏れ電流を抑制することができる。
【0036】
相互接続構成体は、第1電極の境界から第2電極の境界へと延在して第1電極と第2電極とを相互接続する相互接続層を備え得る。本発明のいくつかの実施形態において、ミラー構成体の複数の部分をミラー素子のいくつかの、又は全ての部分に亘って延在させ、これによって、ミラー構成体、特にミラー素子の製造を単純化することができる。
【0037】
例えば、相互接続構成体は、いくつかの、又は全てのミラー素子を相互接続する共通相互接続層を含み得る。共通相互接続層は第1電極と第2電極とを相互接続させるだけでなく、第1電極及び第2電極の境界を越えて上下に延在し得る。好適には、共通相互接続層は、間隙のない、好適には鏡面と同じ大きさの領域を被覆する連続層である。従って共通相互接続層は、例えばリソグラフィ工程によって製造中に構造化する必要は全くない。
【0038】
いくつかの、又は全てのミラー素子の圧電層は共通圧電層を形成することができる、及び/又はいくつかの、又は全てのミラー素子は共通の反射層系を形成することができる。間隙のない共通圧電層は連続的に変形させることができ、よじれ、段又は溝などの不連続性を有する場合もあるし、有さない場合もある。同様に、間隙のない共通の反射層系は連続的に変形させることができ、特に共通圧電層によって変形される際には、よじれ、段又は溝などの不連続性を有する場合もあるし、有さない場合もある。
【0039】
いくつかの、又は全てのミラー素子の電極構成体における電極は、第1電極及び第2電極とは反対に共通電極を形成し得る。従って、全ての電極を個々の引き込み接続線によって対応する電圧源及び/又は電流源に接続させる必要はなく、1つの共通する引き込み接続線だけで十分である。更に、第1電極及び第2電極のみがそれらの間に間隙を設けて構成されなければならない。
【0040】
いくつかの、又は全てのミラー素子の基板は共通の基板を形成し得る。従って、ミラー構成体、特に上述の層は共通の基板上に製造され得る。そして共通の基板のみを支持構造体に取り付ければよい。
【0041】
本発明の一実施形態において、反射層系は、300nm未満、好適には200nm未満、特に20nm未満の波長範囲の電磁放射線を反射するように構成される。KrFエキシマレーザの248nm波長などの300nm未満の波長はDUV範囲内にある。ArFエキシマレーザの193nm波長などの200nm未満の波長はVUV範囲にある。例えばガス放電によって生成されたプラズマ又はレーザ生成プラズマの13.5nmなどの20nm未満の波長はEUV範囲にある。これらの短波範囲に適合させることによって、ミラー構成体を非常に微細な構造のリソグラフィ露光装置に適用させることができる。
【0042】
例えば誘電強化アルミミラー層は、DUV又はVUV領域の電磁放射線を反射することができる。
【0043】
本発明の一実施形態において、反射層系は高屈折率の層材料と(これに対して)低屈折率の層材料との交互の層を有する複数のペア層を含む。このようなペア層は「二重層」又は「二層」とも称される。多数のペア層を有する層構成体は、「分布ブラッグ反射器」のように作動する。この場合、例えばEUV放射に関して、反射層系は、そのブラッグ反射を生じさせる格子面が屈折率のより低い実数部を有する材料の層によって形成される結晶のように振る舞う。ペア層の最適な周期厚さは、所定の波長及び所定の入射角(範囲)のブラッグ方程式によって決定される。EUV放射に関しては、最適な周期厚さは一般に1nm〜10nmである。ペア層は、比較的高い屈折率と比較的低い屈折率の材料からなる2つの層に加え、隣接する層間の相互拡散を低減させるために1つ又は複数の更なる層、例えばバリア層を介在させることができる。
【0044】
この場合、圧電層は基板から離れたペア層の第1群と基板に近いペア層の第2群との間に設けることができる。圧電層を介在させることにより、外部電圧を印加することで層群間の(放射線入射面に対して垂直に測定した)距離を変えることができる。圧電層を介在させることにより、第1層群で反射された放射線部分と第2層群で反射された放射線部分との間に光路長の違いと位相シフトが生じる。外部電圧を印加することにより、位相シフトを連続可変的に変化させることができ、そうすることによって対応するミラー素子の反射率を変化させることができる。第1層群と第2層群との間に一体化された圧電層は、反射効果を有するそれらの界面間に電気的に調整可能な距離を有する、一体化ファブリベロー干渉計(エタロン)のように作動する。
【0045】
多層構成体は、複数のペア層を有する2つの隣接する層群の間に配置され、これら層群における放射線反射部分間の制御可能な位相シフトに使用される、2つ以上の圧電層を有し得る。例えば、2つ又は3つのこのような圧電層を設け、その間に複数のペア層を有する層群を配置することもできる。
【0046】
多層構成体は、反射層系内で周期厚さを変化させることができるように、複数の圧電層を有することができる。所定の動作波長及び所定の入射角に対して、特定の層周期のみが完全な建設的干渉、従って最大反射率をもたらすので、周期厚を変化させることにより、ミラー素子の反射層系における反射率は、動作波長で連続可変的に変化させることが可能である。更に、反射された放射線の位相は、空間分解能的な波面影響も可能なように影響される。
【0047】
多層構成体、具体的には反射層系及び圧電層の層構造に関する更なる可能性に関しては、国際公開第2012/126954 A1号を参照されたい。その開示を本明細書に参照として援用する。
【0048】
本発明の一実施形態において、相互接続構成体における相互接続層の厚さは、50nm〜200nm、更に〜500nmである。典型的には、圧電層は、相互接続層が連続せずに間隙を有するよう、厚さ50nm未満の相互接続層に影響を与え得る表面粗さを有する。この範囲の厚さであれば表面厚さに起因する問題が軽減され得る。
【0049】
本発明の一実施形態において、鏡面に対して平行に測定された第1電極及び第2電極の最大電極直径は0.5mm〜50mm、特に2mm〜20mmである。最大電極直径の定義は、鏡面に対して平行な平面における第1電極及び第2電極の形状に依存する。円形の電極の場合、直径は円の直径であり得る。多角形、特に四角形又は六角形の電極の場合、直径は多角形において最も長い対角線であり得る。
【0050】
これに代えて、又はこれに加えて、第1電極と第2電極との間の間隙領域の幅は10mm〜1mmとすることができる。間隙領域の幅は、第1電極の境界から対向する第2電極の境界までの最短距離として決定することができる。電極の最大直径及び間隙領域の幅に関しては、それぞれ、過剰な数の電極及び過剰な数のミラー素子を用いずに、鏡面の形状を所望する形状に近づけることができる。ミラー素子の数はおよそ200以下とすることができる。特に、ミラー構成体の有用な領域、例えば鏡面の直径に亘るミラー素子の数は50〜180、好適には例えば100〜150とすることができる。
【0051】
また、本発明は少なくとも1つのミラー構成体を備える光学系に関する。光学系はリソグラフィ露光装置の投影対物系であり得る。ミラー構成体は、投影対物系の瞳面領域、つまり物体面及び像面の平面に対してフーリエ変換されて置かれた平面領域に配置させることができる。ミラー構成体の他の配置可能な場所としては、物体面、像面、又は可能であれば中間像の実像が形成される場所などの、視野面の近くに配置させてもよい。好適には2つ以上のミラー構成体を光学的に異なる場所に配置させることができる。
【0052】
これらの、及び更なる特徴は、特許請求の範囲だけでなく明細書や図面からも明らかであり、本発明の一実施形態及び他の分野において、個々の特徴は個別に、又は複数の組み合わせとして実現させることができ、これらは有利で、かつ本質的に保護可能な実施形態を構成する。例示的実施形態を図面に示し、以下に詳述する。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図1は複数のミラー素子2a,2bを有するミラー構成体1の部分断面図である。
図2のミラー構成体の断面に示す様に、複数のミラー素子2a,2bは六角形状に隣接して配置させることができる。各ミラー素子2a,2bは個々のミラーとして表すことができ、六角形の断面を有する。
【0055】
図1のミラー構成体1は機械的支持体として共通基板4を備える。本明細書で使用する「共通基板」という用語は、単一の基板が複数のミラー素子全てに共通であり、よって複数のミラー素子は共通基板を共有することを意味する。
図1に示す様に、基板4は個々のミラー素子2a,2bの個々の基板4a,4bに、更に横方向に分割され得る。共通基板4は、共通基板4上に配置された層の応力による曲がりに対して剛性を提供する。ミラー構成体1の製造後、図示しない支持構造体上に共通基板4を取り付けさえすればよい。共通基板4は、例えば超低膨張率及び垂直z方向に約50mmの厚さを有するガラス状の非晶質材料からなる、超低膨張基板であってもよい。
【0056】
共通基板4の表面において、個々のミラー素子2a,2bの多層構成体5a,5bは適切なコーティング技術によって処理され、これにより、本例において、個々のミラー素子2a,2bにおける多層構成体のいくつかの層は、共通層、すなわち、隣接する複数のミラー素子に延在する層を形成する。いくつかの層又は全ての層の製造には、例えば、マグネトロンスパッタリング、電子ビームスパッタリング若しくはイオンビームスパッタリング、又はガスフロースパッタリングを用いることができる。結晶層構造が所望される場合、例えばパルスレーザ堆積法(PLD)によってコーティングを行うことができる。
【0057】
共通基板の表面には第1の共通接着層14が堆積される。第1の共通接着層14は共通基板4から上の結晶層への遷移を提供し、例えばTiO
2から成り、垂直z方向の厚さは約10nm(ナノメートル)〜20nmである。
【0058】
共通接着層14上において、共通電極9cは例えばPLDによって堆積される。共通電極9cは例えばPtより成り、垂直z方向の厚さは50nm〜100nmである。あるいは、例えば、Al又はCrなどのその他の導電材料を使用することができる。本例において、共通電極9cは図示しない調整可能なDC電圧源と電気的に接続されている、例えば接地されている。
【0059】
第2の共通接着層15は共通電極9cに堆積される。第2の共通接着層15は導電層を形成し、その上には結晶層も形成する典型的な圧電材料を成長させることができる。結晶層は、例えばLaNiO
3から成り、垂直z方向の厚さは20nm〜50nmである。
【0060】
第2の共通接着層15の表面には、例えばPLDによって共通圧電層8が成長する。本明細書で使用する「共通圧電層」という用語は、単一の圧電層が複数の全てのミラー素子に共通であり、よってミラー素子は共通圧電層を共有することを意味する。
図1に示す様に、圧電層8は、個々のミラー素子2a,2bの個々の圧電層8a,8bへ横方向に更に分割され得る。共通圧電層8は比較的強い圧電効果を呈するペロブスカイト構造を有する材料から構成され得る。具体的には、圧電層の材料は、Ba(Sr,Zr)TiO
3,Bi(Al,Fe)O
3,(Bi,Ga)O
3,(Bi,Sc)O
3,CdS,(Li,Na,K)(Nb,Ta)O
3,Pb(Cd,Co,Fe,In,Mg,Ni,Sc,Yb,Zn,Zr)(Nb,W,Ta,Ti)O
3,ZnO,ZnS,AlSCNから成る群から選択することができる、又はこの群の少なくとも1つの材料を少なくとも1つの他の材料と組み合わせて含むことができる。この場合、(A,B)という表記は、Aタイプの元素若しくはイオン又はBタイプの元素若しくはイオンが結晶構造体の特定の格子位置に存在し得ることを示す。例えば、PbZrTiO
3は圧電材料として選択され得る。共通圧電層8の垂直z方向の厚さは、例えば1μm〜4μmである。典型的な圧電層の材料として65〜250pm/Vの圧電定数(d
33)が知られている。
【0061】
共通相互接続層10の形態の相互接続構成体は、共通圧電層8の表面に直接堆積される。共通相互接続層10は、例えば、半導体材料で構成され得る。半導体材料はシリコンベースのものであってもいし、又は基本的にシリコンのみで構成されてもよい。半導体材料はドーピングしてもよく、ドーピングによって共通相互接続層10抵抗の導電率、それぞれの抵抗の調整が可能になる。共通相互接続層10の厚さ、tiは、例えば50nm〜200nmの範囲である。この範囲の厚さによって共通圧電層8の表面粗さによって生じる問題を軽減させることができる。
【0062】
構造化された第3接着層16は共通相互接続層10上に堆積される。第3接着層16は個々のミラー素子2a,2bのボンディングパッド16a,16bに、これらが意図する電極の下のみに配置されるように、リソグラフィプロセスを使って構成される。第3接着層16は例えばLaNiO
3で構成してもよく、垂直z方向の厚さは20nm〜50nmである。第3接着層は設けてもよいし設けなくてもよい。
【0063】
マスク又はレーザアブレーションなどの他の構造化技術を用いて構造化層を形成することができる。
【0064】
接着パッド16a,16b上において、各ミラー素子2a,2bは構造化電極9a,9bを備え、これらは本明細書において第1電極及び第2電極とも示される。第1電極9a及び第2電極9bにはPLDが適用され、リソグラフィプロセスを用いて構造化される。第1電極9a及び第2電極9bは、例えば、共通電極9cと同様の材料及び同様の厚さで構成することができる。第1電極9aと第1電極9aの下の共通電極9cの反対側の横断面とで第1電極構成体が構成される。これに対応して、第2電極9bと(圧電層8の向こうの)反対側に位置する共通電極9cとで第2電極構成体が構成される。第1電極9a及び第2電極9bは、
図2にも示す様に、対応する個々の圧電層8a,8bを横方向に完全に被覆しない。第1電極と第2電極とが相互に接触しないよう、第1電極と第2電極との間には間隙又は間隙領域11が存在する。そうでなければそれらの間に短絡が発生し、第1電極構成体と第2電極構成体とを相互に独立して駆動させることはできない。ミラー素子2a,2bの配置及び/又は形状に依存して、第1電極9a及び第2電極9bの断面は横平面に形成されてもよい。本例において、第1電極9a及び第2電極9bは
図2に示す様な六角形の断面を有する。本例において、六角形の最も長い対角線である第1電極9a及び第2電極9bの最大電極直径Dは5mmである。第1電極9aの境界と反対側の第2電極9bの境界との最短距離である、第1電極と第2電極との間隙領域11の幅Wは、本例の場合約20mmである。
【0065】
アイソレータ、スペーサ層17は接着パッド16a,16b及び第1,第2電極9a,9bの横に配置される。アイソレータ,スペーサ層17は第1,第2電極9a,9b及び接着パッド16a,16bをそれぞれ相互に絶縁する。アイソレータ,スペーサ層17は例えばSiO
2から構成することができ、接着パッド16a,16bと第1,第2電極9a,9bとを合わせたものと同じ高さである。
【0066】
第1,第2電極9a,9bはそれぞれ別途に構成された引き込み接続線18a,18bを介してDC電圧源のもう片方の極に接続される。接続線18a,18bは例えば共通電極9cと同様の材料又は同様の厚さで構成され得る。接続線18a,18bは共通相互接続層10及び共通圧電層8からそれぞれアイソレータ,スペーサ層17によって絶縁される。接続線18a,18bは第1電極及び第2電極のもう片方の方と交差し、これによってその間に余分な絶縁層が生じ、短絡が防止される。
【0067】
共通平滑層19は接続線18a,18b及びアイソレータ,スペーサ層17の上に配置される。共通平滑層19は次の層が適用される前にイオンビームによって滑らかに研磨され、サブナノメートルのRMS平坦度(二乗平均平方根)を得ることができる。共通平滑層19は例えばSiO
2から構成してもよく、垂直z方向の厚さは2μm〜10μnとすることができる。
【0068】
共通遮蔽層20は例えばPLDによって共通平滑層19上に配置される。共通遮蔽層20は、第1,第2電極9a,9b及び接続線18a,18bと共通平滑層19上に配置された層との間に電気的遮蔽を提供する。更に平滑層はEUV光子による攻撃から保護されるため、劣化が抑制される。場合によって共通遮蔽層20は省いてもよい。
【0069】
共通反射層系6は共通遮蔽層20上に配置される。本明細書で使用する「共通反射層系」という用語は、単一の反射層系が複数又は全てのミラー素子に共通であり、よってミラー素子は共通反射層系を共有することを意味する。
図1に示す様に、反射層系6は個々のミラー素子2a,2bの個々の反射層系6a,6bに横方向に更に分割され得る。共通反射層系6は、屈折率の高い層材料(「スペーサ」とも称される)と(これと比較して)屈折率の低い層材料(「アブソーバ」とも称される)とを交互に配置させた層12,13を有する複数のペア層を含む。このようなペア層は「二重層」又は「二層」とも称される。反射層系6は「分布ブラッグ反射器」の様に作動する。例示的実施形態において、共通反射層系6は5nm〜30nmのEUV放射を反射させるために用いられる。アブソーバ材料としてMoを含む薄層12は、スペーサ材料としてSiを含む比較的「より厚い」層13と交互に用いられる。ペア層は少なくとも1つの層、具体的に、例えばC,B
4C,Si
xN
y,SiC又はこれらの材料の内の1つを含む組成物から構成することができ、界面における相互拡散の防止を目的とする介在障壁層を更に含むことができる。このため、長時間の放射線被爆下であっても、明確に画定された界面を永続的に確保することができる。
【0070】
共通反射層系6は、例えば、周期的な積層体が共通反射層系6の共通放射線入射面7の放射線入射を反射するように、例えば全体の厚さが約350nmの50のペア層を含む。更に、ペア層の周期は、ブラッグ式に従って最大又はほぼ最大の反射が生じるように、発生する入射角範囲及び動作波長に依存して選択される。本明細書で使用する「共通放射線入射面」という用語は、単一の放射線入射面が複数又は全てのミラー素子に共通であり、よって複数のミラー素子は共通放射線入射面を共有することを意味する。放射線入射面7は、
図1に示す様に、個々のミラー素子2a,2bの個々の放射線入射面7a,7bに横方向に更に分割され得る。共通放射線入射面7及び個々の放射線入射面7a,7bはそれぞれ共にミラー構成体1の鏡面3を形成する。従って各ミラー素子2a,2bは放射線入射面7a,7bと基本的に平行な層を含む層構造体を備える。
【0071】
所定の電極直径D及び間隙領域の幅Wに関して、電極9a,9b及び従ってミラー素子2a,2bを過剰に用いることなく、鏡面3の形状を所望する形状に近づけることができる。具体的には、鏡面3の様なミラー構成体1の有効領域の直径に亘るミラー素子2a,2bの数は、例えば
図2のA−A’沿いに左右に亘って20〜200とすることができる。
【0072】
個々のミラー素子2a,2bにおける多層構成体5a,5bの層構造は、ミラー構成体1全体が空間分解能的に使用できる波面補正装置として使用可能なように構成される。
【0073】
第1及び第2電極9a,9bは、接続線18a及び18bを介して切り替え可能なDC電圧源に接続され、これによって必要に応じて、所定の値から数ボルトまでのDC電圧Va,Vbを第1電極9aと共通電極9cとの間、及び/又は第2電極9bと共通電極9cとの間に印加することができる。隣接する第1電極9aと第2電極9bとの間の電圧差Va−Vbは最大で数ボルトであり得る。一般に、第1電極9a及び第2電極9bのそれぞれに対して、別個の切り替え可能又は連続的に調整可能なDC電圧源が設けられる。このため、第1電極9a及び第2電極9bの各々は、他の電極から独立して、共通電極9cに対して適切な電位に設定することができる。それにより、個々の圧電層8a,8b又は層の一部には、第1電極9a及び/又は第2電極9bの下の個々の第1及び第2電界が局所的に浸透し、垂直z方向におけるそれらの層厚は印加電圧に応じて局所的に変化し、それらの層厚に対してミラー素子2a,2bの個々の圧電層8a,8bは個々に調整される。従って、x方向に延在する層厚プロファイルが生成され得る。
【0074】
この場合、共通圧電層8が局所的電界の作用によって可逆的かつ局所的に変形する逆圧電効果が利用される。この場合、例えばPb(Zr,Ti)O
3などの圧電層の結晶材料は相変態せず、圧電層材料の結晶構造内において正と負の電荷重心の可逆的変位のみが発生する。
【0075】
調整範囲(微調整範囲)は主に圧電層材料の弾性及び降伏応力によって決定される。降伏応力(σ
y)を上回ると、層材料の不可逆変形が始まる。降伏応力は、材料の弾性(ヤング率とも称される弾性率Eで示される)及び応力εが正規化された尺度として機能する材料の寸法的変化又は変形と関連する。材料の塑性変形なく可能な層厚の寸法変化(ひずみ)(ε
max=Δtp/tp)、降伏応力及び弾性率の関係は、ε
max=σ
y/Eによって表される。この場合、tpは初期層厚であり、Δtpは層厚の変化である。圧電材料の降伏応力は、典型的には1%〜5%、BaTiO
3に関しては約4.8%である(R.F.Cook,C.J. Fairbanks,B.R. Lawn及びY.-W. Mai著、「Crack Resistance by Interfacial Bridging: Its Role in Determining Strength Characteristics(界面架橋によるクラック抵抗:強度特性を決定する上でのその役割)」、材料研究ジャーナル(J. Mater Res.)、第2巻、P345〜356(1987年))。
【0076】
鏡面3全体に亘る、場所に依存した(空間分解能的)波面補正が意図される場合、個々のミラー素子2a,2bの圧電層8a,8bに異なる強さの電圧Va,Vbを印加し、個々のミラー素子2a,2b内において第1電極9a及び/又は第2電極9bの下に異なる層さの圧電層8a,8bが構成されるようにする。この場合、個々の反射層系6a,6bはそれらの放射線入射面7a,7bと共に、個々の基板4a,4b及び共通基板4に対して、圧電層8a,8bの補助により、第1電極9a及び第2電極9bから局所的にそれぞれ上下させることができる。隣接して配置されたミラー素子2a,2bに対する反射層系6a,6bの高さを変えることにより、鏡面3の起こり得る非平坦又はその他の望ましくないずれを補償することができ、入射放射線における波面の空間分解能的位相補正が可能となる。この場合、補正の横方向分解(空間分解能)は、個々のミラー素子2a,2bにおける放射線入射面7a,7bの横方向寸法に依存する。
【0077】
共通相互接続層10がなければ、動作中、間隙11の下の圧電層8a,8bの一部に電界は浸透せず、従って変形しない。
図3は相互接続構成体を有さないミラー構成体の第1及び第2電極9a,9bの上面における、
図2のA−A’線に沿った任意単位(a.u.)のz高さプロファイルを示している。圧電層8a,8bが変形しない間隙領域11において、アイソレータ,スペーサ層17のz高さは一定であり、本例においてはz=0である。間隙領域11に加え、第1及び第2電極9a,9bのz高さは、対応する圧電層8a,8bの外部で制御される変形によって変更される。従って高さプロファイル沿いには鋭いよじれ、段及び溝が形成される。このため、第1及び第2電極9a,9b上の共通反射層系6及び鏡面3、並びにアイソレータ,スペーサ層17はよじれ、段及び溝を呈し得る。共通反射層系6及び鏡面3におけるこのようなよじれ、段又は溝はそれぞれ反射光の波面に歪みを生じさせ得る。
【0078】
それとは対照的に、本実施形態に係るミラー構成体は、
図1の例の場合の様に、共通相互接続層10の形態の相互接続構成体を含む。これは間隙領域11において第1及び第2電極9a,9bによって被覆されない圧電層8a,8bの一部を被覆する。
【0079】
図4は上述の相互接続構成体を有する
図1のミラー構成体における電気部品の等価回路を示す。「相互接続抵抗」Riとも示される、
図1の第1電極9aと第2電極9bとの間の間隙領域11における相互接続構成体10の電気抵抗は、「電極抵抗」Rwとも示される、第1電極9aとその引き込み接続線18aの電気抵抗よりも大きく、また、第2電極9bとその引き込み接続線18bの電気抵抗Rwよりも大きい。更に、相互接続抵抗Riは、「圧電抵抗」Rlとも示される、第1及び第2電極9a,9bを含む隣接する電極構成体における圧電層8a,8bの電気抵抗よりも小さい。典型的に、電極9a,9b,9c及び引込み線18a,18bの金属材料は共通相互接続層10の半導体材料よりも低い比電気抵抗を有し、半導体材料は圧電層8a,8bの圧電材料よりも低い比電気抵抗を有する。よって、相互接続抵抗Riは要望に応じて電極抵抗Rwよりも高くしたり圧電電気抵抗Rlよりも低くすることができる。
【0080】
相互接続抵抗Riは電極抵抗Rwよりも大きいので、第1電極9aと第2電極9bとの間に短絡はない。しかし第1及び第2電極構成体は相互に独立して駆動させることができるため、適切な電位に保つことができる。相互接続抵抗Riは圧電電気抵抗Rlよりも小さいので、第1及び第2電極9a,9bによって提供される電荷は相互接続構成体10内に蓄積し、圧電層8a,8b内の漏れによって即座に流出することはない。
【0081】
本例の場合、電極抵抗Rwは100オーム(Ω)以下であり得る。従って、第1電極9a及び第2電極9b、特にこれらの引き込み接続線18a,18bに沿った大きな電圧降下はないはずである。
【0082】
本例の場合、相互接続抵抗Riは10キロオーム(kΩ)〜1メガオーム(MΩ)の範囲であり得る。相互接続抵抗が高過ぎると、間隙領域11の共通相互接続層10に電荷を蓄積する時定数τcが高くなり過ぎる可能性がある。時定数τcは、間隙領域11における圧電層8a,8bの静電容量Cg=0.5マイクロファラッドで、τc=CgXRi/2と見積もることができ、τcは2.5ミリ秒〜0.25秒となる。現在この時定数はミラー構成体1の波面補正装置としての所望される使用に関しては十分に低いと考えられるので、印加電圧Va,Vbの調整は、例えば、典型的には20秒毎のウエハ交換毎に行うことができる。Cpは、静電容量Cgに匹敵する値を有し得る第1及び第2電極9a,9bの下の圧電層8a,8bの静電容量である。一方で、相互接続抵抗Riが低過ぎると、第1及び第2電極9a,9bにおける印加圧力によって生じる第1電極9aと第2電極9bとの間の相互接続層10を流れる電流により、望ましくない抵抗加熱が生じ得る。第1電極9aと第2電極9bとの間の電圧差Va−Vbが2Vの場合、P=(Va−Vb)
2/Riで表される抵抗発熱Pは4〜400μW(マイクロワット)となり、これは現在のところミラー構成体1の所望の使用に関して十分に低いと考えられる。間隙領域11の寸法に対応する相互接続構成体の比電気抵抗はρi=Ri×ti×W/Dの範囲である、5×10
−4Ωm〜2×10
−1Ωmの値であり、これは半導体材料にとって一般的である。
【0083】
本例の場合、圧電電気抵抗Rlは100MΩ以上である。従って、相互接続構成体10内に蓄積される電荷の減少を生じさせ得る圧電層8a,8bの漏れ電流を抑制することができる。
【0084】
第1電極9a及び/又は第2電極9bに適切な電圧又は電位Va,Vbが印加されると、
図1の第1電極9aの右の境界におけるVaから第2電極9bの左の境界におけるVbまで、間隙領域11の共通相互接続層10において連続的又は円滑な電位又は電圧の遷移が存在する。共通相互接続層10に電荷が蓄積され、間隙領域11内において相互接続層10とその下の共通電極9cとの間に相互接続電界が垂直方向に形成される。相互接続電界により、第1電極9a又はその下の第1電界と第2電極9b又はその下の第2電界との間に横方向の連続的な遷移が生成される。
【0085】
図5は、一実施形態に係る相互接続構成体を有するミラー構成体の第1及び第2電極9a,9bの上面における、
図2のA−A’線に沿った任意単位(a.u.)のz高さプロファイルを示している。相互接続構成体によって生成される相互接続電界は間隙領域11の圧電層8a,8bを浸透する。このため間隙領域11における圧電層8a,8bの一部に連続的又は円滑な変形が生じる。共通圧電層8全体は隙間なく連続的に変形し、その厚さプロファイルは段や溝などの不連続性を有しない。従って、電極の上面及びアイソレータ,スペーサ層17のz高さは
図5において左から右へと増加するだけである。従って、共通反射層系6は隙間なく連続的に変形し、段や溝などの不連続性を有さず、左から右へとz高さ方向に増加するだけである。これにより、反射層系6a,6b及び鏡面3の鋭いよじれ、段又は溝などの、第1電極9a及び第2電極9bによって個別に生じる波面誤差の原因が軽減される。ミラー構成体1は従来技術に対して改善され、例えば改善された波面補正のための改善された光学特性を有する。更に、ミラー素子2a,2bのコンポーネントの材料疲労や亀裂などのリスクが低減される。
【0086】
共通相互接続層10の形態における相互接続構成体の更なる利点は、本例において、例えば引き込み接続線18a,18bによって上述の相互接続構成体から生じる電界に対して、共通相互接続層10は特に間隙領域11において圧電層8a,8bの遮蔽として機能することができることである。従って、そのような電界によって導入されるクロストークは除去される。
【0087】
通常、相互接続構成体10における半導体材料の抵抗は温度に大きく依存し、一方で電極9a,9bにおける金属材料の抵抗は温度にそれほど依存しない。従って、半導体材料を含む相互接続構成体の抵抗測定は、ミラー構成体1内での入射放射線の吸収によって生じ得る、ミラー構成体1内の局所的な温度分布の測定に使用することができる。抵抗測定は第1電極9aから相互接続構成体10を通って第2電極9bまで流れる電流Iiを測定することによって行うことができ、Ri=(Va−Vb)/Iiで計算することができる。温度分布の測定によって波面誤差の原因を推定することができるため、ミラー構成体1のフィードバック信号、すなわち対応する電極構成体9a,9b,9cに印加される特定の電圧Va,Vbの個々の調整として使用され得る。
【0088】
圧電層の補助によってミラー構成体の鏡面に亘る波面プロファイルの空間分解能的調整が可能になるミラー構成体は、例えば、光学系における種々のタスクに使用され得る。リソグラフィ露光装置の投影対物系という観点から可能となる使用を以下に示す。
【0089】
図6は、投影対物系POの像面ISの領域に配置された感放射線基板SUBを、投影対物系POの物体平面OSの領域に配置された反射パターニング装置又はマスクMのパターンの少なくとも1つの像で露光する、リソグラフィ露光装置WSCの光学部品を示す。
【0090】
露光装置WSCは一次放射源RSからの放射線で動作される。照明系ILLは一次放射源RSから放射線を受光し、パターン上に向けられる照明放射線を形成するために用いられる。投影対物系POはパターンの構造を感放射線基板SUB上に結像するために用いられる。
【0091】
EUVリソグラフィの適用分野において、一次放射源RSはとりわけレーザプラズマ源、ガス放電プラズマ源又はシンクロトロンベース放射源であり得る。このような放射源は、特に4nm〜30nmの波長を有するEUV範囲の放射線RADを生成する。この波長範囲で動作できるように、照明系ILL及び投影対物系POは、EUV放射線を反射するコンポーネントと共に構成される。
【0092】
放射源RSから放射される放射線RADはコレクタCOLによって集光され、照明系ILLに向けられる。この場合、放射線は望ましくない放射プロファイル部分を分離する装置を設けることのできる中間焦点面を通過する。照明系ILLは放射線RADを形成し、投影対物系POの物体平面OS又はその近傍に位置する照明視野を照明する。この場合、照明視野の形状及びサイズにより、物体平面IS内において効果的に使用される物体視野の形状及びサイズが決定される。
【0093】
露光装置WSCの動作中、反射レチクルM又はその他の反射パターニング装置は物体平面OSに配置される。
【0094】
投影対物系POは、湾曲した鏡面を有し、共通の光学軸AXに沿って配置された6つのミラーM1〜M6を備える。投影対物系は、被露光基板、例えば半導体ウエハの配置された像平面にマスクパターンを縮小して結像する。マスクMから基板を通過する投影放射線PRは、6つのミラー(第1ミラーM1から第6ミラーM6)で連続的に反射される。物体視野OFに対して光学的に共役な像視野IFは像平面に存在する。物体視野及び像視野に光学的に共役な中間像の実像IMIは、第6ミラーの端部に幾何学的に近い第4ミラーM4と第5ミラーM5との間に光学的に形成される。第1瞳面P1は、主光線が第2ミラーM2の近傍又は第2ミラーM2で光軸AXと交わるところに存在する。第2瞳面P2は、第5ミラーM5と第6ミラーM6との間の幾何学的なほぼ中間に存在する。
【0095】
全てのミラーはEUV放射線に対する反射効果を有し、例えばMo/Siのペア層(二層)を含み得る多層反射コーティングによって被覆される。
【0096】
マスクM(レチクル)を保持及び操作する装置(レチクルステージ)は、マスク上のパターンが、ここではレチクル平面とも称される投影対物系POの物体平面OSに置かれるように配置される。走査動作のために、マスクはこの平面において、走査ドライブの補助により、投影レンズの基準軸AX(z方向)に垂直な走査方向(y方向)に移動可能である。
【0097】
露光される基板SUBは、基板SUBがマスクMと同期して基準軸AXに垂直な走査方向(y方向)に移動するように、走査ドライブを含む装置(ウエハステージ)によって保持される。投影レンズPOの設計に依存して、マスク及び基板のこれらの移動は相互に平行又は逆平行に行うことができる。
【0098】
ウエハステージ及びレチクルステージは、本実施形態において、投影露光装置の中央制御装置に一体化される走査制御装置によって制御される走査装置の一部である。
【0099】
投影露光装置WSCの光学部品は全て排気可能なハウジング内に収容される。投影露光装置は真空下で動作される。
【0100】
同様の基本的な構造を有するEUV投影露光装置は、例えば国際公開第2009/100856 A1号によって周知である。同様の基本的な構造を有する投影対物系は欧州特許出願第1178356 A2号明細書(
図4)に開示されている。この点に関するこの文献の開示を本明細書の内容に参照として援用する。
【0101】
第1ミラーM1から第6ミラーM6の内の1つ又は複数のミラーは、本願に記載する実施形態に係るミラー構成体を含み得る。ミラー構成体は、ミラーのタイプ及び光学路沿いのミラーの位置に応じて、種々の有益な機能を提供し得る。
【0102】
例えば、第2ミラーM2は、照明系ILLの瞳面に光学的に共役な第1瞳面P1に非常に近接して配置された、又は第1瞳面P1に配置された凹面鏡である。従って、このミラー上における放射線の空間的強度分布は、照明系によって提供される照明設定のタイプによって決定される。例えば双極子設定が用いられる場合、第2ミラーM2に入射する放射線は照明設定の極に対応する2つの正反対の領域に集光され、このため第2ミラー上には不均一な放射線負荷が生じる。このためミラーの不均一な加熱が生じ、不均一な変形及び関連する収差が生じる。そしてミラー構成体の反射鏡面は、不均一な放射線負荷の影響が少なくとも部分的に補償され、補償されなければ系内に存在し得る結像誤差を低減するように制御され得る。
【0103】
第6ミラーM6は瞳面に正確に位置決めされないが、その位置は瞳面に比較的近いため、不均一な放射線負荷によって特定の照明設定がもたらされる可能性がある。第2ミラーと同様に、調整可能なミラー構成体は、補償されなければ生成され得る収差の少なくとも一部を補償することができる。更に、第6ミラーM6の大部分は動作において光学的に使用される。特に、第6ミラーは全ミラーの中で最大の光学使用領域を有するミラーである。大型のミラーはミラー形状に対する重力の影響に特に敏感であり得る。これらの影響はミラー構成体の全体的な表面形状を制御することによって補償することができる。
【0104】
別の例として、(幾何学的に像面に一番近い)第5ミラーM5は、EUV放射の入射角の広い範囲が鏡面に存在するように配置された凸鏡である。また、最大入射角はこのミラーで生じ得る。このような条件下において、このミラーの反射挙動は多層系の層構造の小さな欠陥に対して特に敏感である。第5ミラーが一実施形態に係るミラー構成体として設計されると、層構造体の小さな欠陥によって生じる問題の少なくとも一部を解消することが可能である。
【0105】
別の例として、光学的に使用される第4ミラーM4の凹反射面は、視野面、特に中間像IMIが形成される視野面の光学的近傍に配置される。視野面に近いミラーの表面形状の制御は、視野に依存する収差の補償に用いることができる。
【0106】
第3ミラーM3は、視野面に非常にそれほど近くなく、瞳面にもそれほど近くない中間範囲に光学的に配置された凸反射面を有する。このような中間的位置のミラーにも一実施形態に係るミラー構成体を設けることができる。
【0107】
波面補正の問題を考える場合、実際像形成に寄与する光学面の数が一般に比較的少なく、例えば、4、6又は8つである、典型的なEUV投影対物系が重視され得る。従って、波面補正操作によって波面に影響を与える自由度は限られる。よって本願の一実施形態に係るミラー構成体を有する、2つ以上の投影対物系のミラーを設けるのは有益であり得る。例えば、波面補正に対して複数の自由度が提供できるように、瞳面の近くに少なくとも1つのミラー、視野面の近くに少なくとも1つのミラー、そして中間位置に少なくとも1つのミラーを、本発明の一実施形態に係るミラー構成体として設計してもよい。
【0108】
上述の様に、本発明の実施形態に係るミラー構成体の使用はEUVリソグラフィの光学系に限られない。例えば、一実施形態に係るミラー構成体は、例えば、約248nm又は約193nmの深赤外線範囲の波長用に設計された、反射屈折投影対物系の曲面鏡として使用してもよい。例えば、ミラー構成体の円滑かつ連続的な鏡面は、凹鏡の表面形状を調整することのできる能動的な凹鏡を設けることができるよう、全体的に凹状とすることができる。
【0109】
例示的実施形態に基づいて、リソグラフィ露光装置の投影対物系におけるミラー構成体の可能な使用について説明した。これに加えて又はこれに代えて、照明系ILLの少なくとも1つのミラーをミラー構成体の一実施形態に従って製造することもできる。国際公開第2012/126954 A1号に記載されているミラーを本願の一実施形態に従って設計してもよい。
【0110】
ミラー構成体の全鏡面は平面鏡のように平らにすることができる。ミラー構成体は凹状又は凸状に湾曲した鏡面に構成することも可能である。例において、個々の放射線入射面は平面である。しかしながらこれは強制的なものではない。ミラー素子の個々の、又は全ての放射線入射面も凸状又は凹状に湾曲した鏡面とすることができる。更に、個々のミラー素子は、所望する鏡面形状が得られるよう、支持構造体に取り付けてもよい。
【0111】
個々のミラー素子の形状は、所望の用途に適合させることができる。
【0112】
連続するペア層の領域における多層構成体の層構造は、所望の用途に適合させることができる。例示的実施形態において、国際公開第2012/126954 A1号の
図9と同様に、圧電層は反射層系の複数のペア層と基板との間に配置される。個々のミラー素子における多層構成体の層構造は、種々の動作モードに対して異なる反射の空間的分布なく、ミラー構成体全体が空間分解能的に有効な波面補正装置として使用可能なように構成される。
【0113】
あるいは、国際公開第2012/126954 A1号の
図1の例と同様に、圧電層は基板から離れたペア層の第1群と基板に近いペア層の第2群との間に配置され得る。これによれば、相互接続構成体は、圧電層に相互接続電界を設けることができるように配置させることができる。圧電層の介在により、層群間の(放射線入射面に対して垂直に測定された)距離は、外部圧力を印加することによって変化させることができる。介在された圧電層は、第1層群で反射された放射線と第2層群で反射された放射線との間に光路長の差または位相シフトを導入する。外部電圧を印加することにより、位相シフトの大きさを連続可変的に変化させることができ、それによって対応するミラー素子の反射率が変化する。第1層群と第2層群との間に一体化された圧電層は、反射効果を有するそれらの界面間に電気的に調整可能な距離を有する、ファブリ・ペロー干渉計(エタロン)のように機能する。
【0114】
基板から離れたペア層の第1群と基板に近いペア層の第2群との間に位置する圧電層及び相互接続構成体を有する多層構成体において、相互接続構成体の材料が利用放射線よりも低い吸収率を確実に有するよう、特に考慮しなければならない。
【0115】
また多層構成体は複数のペア層を有する2つの隣接する層群の間に配置され、これらの層群の放射線の反射部分と反射部分との間の制御可能な位相シフトのために機能する、2つ以上の圧電層を有し得る。例えば、このような圧電層を2つ又は3つ設ける場合、国際公開第2012/126954 A1号の
図8の例の様に、それらの層の間に複数のペア層を有する層群を配置させてもよい。従って、多層構成体は、各圧電層に相互接続電界を設けることができるよう、2つ以上の相互接続構成体を有し得る。
【0116】
多層構成体は、反射層系内において周期厚さの変化が可能なように、複数の圧電層を有し得る。所定の動作波長や所定の入射角に対して、特定の層周期のみが完全に強め合う干渉、従って最大反射率をもたらすので、周期厚さを変化させることにより、動作波長においてミラー素子の反射層系における反射率を連続可変的に変化させることが可能である。更に、反射された放射線の位相は、空間分解能的波面干渉も同様に可能なように影響される。
【0117】
比較的小さな入射角に高い最大反射率が要求される場合、ペア層の完全に周期的な配列は有利であり得る。一方で、角度空間の広帯域構造及び/又はスペクトル広帯域構造が望ましい場合、異なる周期を持つペア層を組み合わせることもできる(例えば、独国特許出願公開第101 55 711 B4号明細書又は国際公開第2010/118928 A1号参照)。反射率の入射角への依存を減らすために、層構成体は原則として別の方法で構成してもよい。具体的には、多層構成体のペア層に異なる材料の組み合わせを使用してもよい。この構成では、圧電層に電界を印加することにより、多層構成体内に層周期の変化を適切であれば連続可変的に生成することが可能である。
【0118】
層周期の離調又は変更は、例えば、光源スペクトル又は光学系全体のスペクトル透過の補償を実行することができるように、所望の値から逸脱し得る中心波長に反射率を適合させるために使用することもできる。これに代えてまたはこれに加えて、所望的又は不所望的に変えられた入射角のミラーへの適合も可能である。
【0119】
多層構成体、特に反射層系及び圧電層の層構造に関する更なる可能性としては、国際公開第2012/126954 A1号を参照されたい。その開示を本明細書に参照として援用する。
【0120】
本発明の実施形態はリソグラフィの光学系だけでなく、例えば、X線顕微鏡、特にEUVマスク計測の分野において使用することができる。これらの実施形態は、例えば国際公開第2011/012267 A1号及び国際公開第2011/012266 A1に開示されているEUV空中像のモニタリングシステムで使用することができる。同様にEUVシステム計測学での用途も考えられる。更にEUV天文学及びシンクロトロンシステムにおける光学アセンブリの用途も考えられる。
【0121】
例示的実施形態において、反射層系はEUV放射を反射させるために使用される。これに代えて又はこれに加えて、反射層系はDUV又はVUV電磁放射線を反射させるために使用され得る。複数のペア層に代えて、この目的のために反射層系は誘電強化アルミニウムミラー層を含み得る。
【0122】
本例において、個々のミラー素子の多層構成体におけるいくつかの層又はコンポーネントは共通の層又はコンポーネントを形成する。具体的に、個々のミラー素子の基板は共通基板を形成する。更に、個々のミラー素子は第1電極及び第2電極に対する共通電極、共通圧電層及び共通反射層系を共有する。あるいは、ミラー素子は分離させてもよい、すなわち、分離された基板、圧電層の両側の別個の電極、分離された圧電層及び/又は分離された反射層系を有し得る。ミラー素子は、適切であれば支持構造体上に空間をあけ、それぞれ相互に離して取り付けることのできるミラー素子であってもよい。
【0123】
圧電層の両側に分離された電極の場合、両側には間隙領域が存在し得る。従って、相互接続構成体はそれらに相互接続電界が設けられるよう、圧電層の両側に相互接続層を含むことができる。それらの上の第1電極の境界及び第2電極の境界を越えて延在する、図示する共通相互接続層の代わりに、相互接続構成体は、第1電極の境界から始まって第2電極の境界で終わる、第1電極と第2電極とを相互接続する相互接続層を含み得る。