(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
さらに、難燃剤(D)を含有する、請求項1〜5の何れかに記載されたエポキシ樹脂組成物;但し、前記難燃剤(D)は、無機難燃剤、芳香族臭素化合物、及び、含リン化合物(C)を除く含リン難燃剤からなる群の中から選択される、少なくとも1種の難燃剤である。
無機繊維及び有機繊維から選択された少なくとも1種の繊維からなるシート状基材と、請求項1〜7の何れかに記載されたエポキシ樹脂組成物とからなることを特徴とするプリプレグ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明のエポキシ樹脂組成物に用いる、エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、及び含リン化合物(C)の各構成要件について説明するが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、これらの記載に基づいて当業者が容易に変更することができる発明もまた本発明に包含される。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物の用途は特に限定されるものではなく、例えば、電子回路基板に用いられる積層板、電子部品に用いられる封止剤、注型材、フィルム材、接着剤、電気絶縁塗料、難燃性の必要な複合材、及び粉体塗料等に使用することができる。本発明においては、特に電子回路基板に用いられる積層板、電子部品に用いられる封止剤、及び注型材に使用することが好ましく、積層板に使用することが最も好ましい。
【0011】
本発明で使用するエポキシ樹脂(A)は、分子中にエポキシ基を少なくとも2個有する限り、分子構造、分子量等に特に制限はなく、公知のエポキシ樹脂の中から適宜選択することができるが、使用する用途によって使い分けることが好ましい。
【0012】
上記エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂等のビフェニル型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;ナフタレン型エポキシ樹脂;シクロヘキサンジメタノールや水添ビスフェノールA等から得られる脂環式エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物であるエポキシ化物、及びビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、等のノボラック型エポキシ樹脂;トリフェニルメタン型エポキシ樹脂;テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂;及びフェノールアラルキル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0013】
上記したエポキシ樹脂は、単独で用いても2種以上を併用しても良いが、積層版に用いられるエポキシ樹脂組成物に対しては、ノボラック型エポキシ樹脂及び/又はビスフェノール型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0014】
また、封止剤に用いられるエポキシ樹脂組成物に対しては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、及び、ナフタレン型エポキシ樹脂の中から選択される少なくとも1種のエポキシ樹脂を用いることが好ましく、注型材に用いられるエポキシ樹脂組成物に対しては、ビスフェノール型エポキシ樹脂及び/又は脂環式エポキシ樹脂類を用いることが好ましい。
【0015】
本発明においては、使用するエポキシ樹脂(A)を所望の粘度に調整して使用するために、反応性希釈剤を併用することができる。このような反応性希釈剤としては、本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化させた時に、硬化物の耐熱性やガラス転移温度の低下を抑制する観点から、エポキシ基を少なくとも1つ有する希釈剤を使用することが好ましい。
【0016】
上記好ましい反応性希釈剤に含まれるエポキシ基の数は、1個でも、2個以上のいずれでもよく、特に限定されるものではない。
エポキシ基の数が1個の反応性希釈剤としては、例えばn−ブチルグリシジルエーテル、C
12〜C
14のアルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、スチレンオキシド、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、p−sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、及び3級カルボン酸グリシジルエステル等が挙げられる。
エポキシ基の数が2個の反応性希釈剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、及びネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル等が挙げられる。
エポキシ基の数が3個の反応性希釈剤としては、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、及びグリセリントリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0017】
上記反応性希釈剤の、エポキシ樹脂(A)に対する配合量は特に限定されるものではないが、使用する用途によって使い分けることが好ましい。
積層板に用いられるエポキシ樹脂組成物の場合には、製品のガラス転移温度の低下を避ける観点から、反応性希釈剤を使用しないことが好ましい。
封止剤又は注型材に用いられるエポキシ樹脂組成物の場合には、エポキシ樹脂(A)100質量部に対して反応性希釈剤を3〜50質量部配合することが好ましく、5〜30質量部配合することがより好ましい。
【0018】
本発明に用いられる硬化剤(B)としては、フェノール樹脂類、脂肪族アミン類、芳香族アミン類、潜在性硬化剤、及び酸無水物類等が挙げられる。本発明においては、これらの硬化剤を、用途によって使い分けることが好ましい。
具体的には、積層板の用途に関しては、フェノール樹脂類又は潜在性硬化剤を使用することが好ましく、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、又はジシアンジアミド型潜在性硬化剤を使用することがより好ましい。
封止剤の用途に関しては、潜在性硬化剤又は酸無水物類を使用することが好ましく、注型材の用途に関しては、脂肪族アミン、芳香族アミン、又は酸無水物類を使用することが好ましい。これらの硬化剤は単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0019】
前記フェノール樹脂類としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ザイロック樹脂)、ナフトールアラルキル樹脂、トリスフェニロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮合ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮合ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(フェノール骨格、トリアジン環及び1級アミノ基を分子構造中に有する化合物)、及び、アルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核及びアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール化合物)等の多価フェノール化合物が挙げられる。
【0020】
前記フェノール樹脂類からなる硬化剤(B)の、エポキシ樹脂(A)に対する配合量は特に限定されるものではないが、エポキシ基を有する全化合物中のエポキシ基1個に対し、フェノール樹脂類中の水酸基が0.3〜1.5個になるように配合することが好ましく、0.8〜1.2個になるように配合することがより好ましい。
【0021】
前記脂肪族アミン類としては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロへキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロへキサン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルプロパン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)スルホン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルエーテル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキサン、4,4’−ジアミノジシクロヘキサン、イソホロンジアミン、ノルボルネンジアミン、及びメタキシレンジアミン等が挙げられる。これらは、単独で使用しても、適宜混合した混合物として用いることもできる。
【0022】
前記芳香族アミン類としては、ジエチルトルエンジアミン、1−メチル−3,5−ジエチル−2,4−ジアミノベンゼン、1−メチル−3,5−ジエチル−2,6−ジアミノベンゼン、1,3,5−トリエチル−2,6−ジアミノベンゼン、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、及び、3,5,3’,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。これらは単独で、又は、任意の割合で混合した混合物として用いることができる。
【0023】
前記脂肪族アミン類、又は芳香族アミン類からなる硬化剤(B)の、エポキシ樹脂(A)に対する配合量は特に限定されるものではないが、エポキシ基を有する全化合物中のエポキシ基1個に対し、上記アミン中の活性水素が0.6〜1.5個になるように配合することが好ましく、0.8〜1.2個になるように配合することがより好ましい。
【0024】
前記潜在性硬化剤としては、ジシアンジアミド型、イミダゾール型、ポリアミン型化合物等の、室温でエポキシ樹脂と混合した時に、混合物の粘度変化や物性変化が小さい潜在性硬化剤が挙げられる。これらの中で特に好ましいものは、市販品である、アデカハードナー EH−3636AS(株式会社ADEKA製、ジシアンジアミド型潜在性硬化剤)、アデカハードナー EH−4351S(株式会社ADEKA製、ジシアンジアミド型潜在性硬化剤)、アデカハードナー EH−5011S(株式会社ADEKA製、イミダゾール型潜在性硬化剤)、アデカハードナー EH−5046S(株式会社ADEKA製、イミダゾール型潜在性硬化剤)、アデカハードナー EH−4357S(株式会社ADEKA製、ポリアミン型潜在性硬化剤)、アデカハードナー EH−5057P(株式会社ADEKA製、ポリアミン型潜在性硬化剤)、及びアデカハードナー EH−5057PK(株式会社ADEKA製、ポリアミン型潜在性硬化剤)等が挙げられる。本発明においては、これらを単独で、又は適宜混合した混合物として用いることができる。
【0025】
前記潜在性硬化剤からなる硬化剤(B)の、エポキシ樹脂(A)に対する配合量は特に限定されるものではないが、エポキシ基を有する全化合物100質量部に対して1〜70質量部であることが好ましく、3〜60質量部であることがより好ましい。
【0026】
前記酸無水物類としては、無水ハイミック酸、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水メチルハイミック酸、無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸−無水マレイン酸付加物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、及び水素化メチルナジック酸無水物等が挙げられる。
【0027】
前記酸無水物類からなる硬化剤(B)の、エポキシ樹脂(A)に対する配合量は特に限定されるものではないが、エポキシ基を有する全化合物中のエポキシ基1個に対し、酸無水物中の酸無水物基の数が0.7〜1.6個であることが好ましく、0.9〜1.2個であることがより好ましい。
【0028】
本発明においては、前記硬化剤(B)と共に、必要に応じて公知の硬化促進剤を併用することができる。これらの硬化促進剤の具体例としては、トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物;テトラフェニルホスフォニウムブロマイド等のホスホニウム塩;2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類;前記イミダゾール類と、トリメリット酸、イソシアヌル酸、硼素等との塩であるイミダゾール塩類;ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等のアミン類;トリメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩類;及び、三フッ化硼素と、アミン類やエーテル化合物等との錯化合物等を例示することができる。これらの硬化促進剤は、単独で使用しても、2種類以上を併用しても良い。
【0029】
前記硬化促進剤の使用量は特に限定されるものではないが、使用するエポキシ樹脂(A)100質量部に対し、0.1〜10質量部であることが好ましく、0.5〜5質量部であることがより好ましい。
【0030】
次に、本発明で使用する、下記一般式(1)で表される(C)成分の含リン化合物について説明する。
但し、上記式(1)中のmは2〜10の整数を表し、R
1〜R
4は
、R1及びR2の何れか一方が水素原子であり、他方がアルキル基又はアリール基であると共に、R3及びR4の何れか一方が水素原子であり、他方がアルキル基又はアリール基であり、R
5は、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子を含んでも良い、炭化水素基を表し、Xは、酸素原子又は硫黄原子を表し、Yは、酸素原子、硫黄原子、又は―NR
6―を表し、R
6は、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。
【0031】
本発明で用いられる(C)成分の含リン化合物は、下記一般式(3)に示す反応式に従ってエポキシ基と反応する化合物である。
但し、上記式(3)中のmは2〜10の整数を表し、R
1〜R
4は
、R1及びR2の何れか一方が水素原子であり、他方がアルキル基又はアリール基であると共に、R3及びR4の何れか一方が水素原子であり、他方がアルキル基又はアリール基であり、R
5は、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子を含んでもよい、炭化水素基を表し、R
17はアルキル基又はアリール基を表し、Xは、酸素原子又は硫黄原子を表し、Yは、酸素原子、硫黄原子、又は―NR
6―を表し、R
6は、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。
【0032】
前記式(1)中のmは2〜7の整数であることが好ましく、2〜5の整数であることがより好ましい。mが1であると、エポキシ基と反応する官能基が1つとなり、エポキシ樹脂を硬化させた硬化物の、Tgや強度が著しく低下するので好ましくない。mが10より大きい数である場合には、含リン化合物を製造する際の粘度が高くなって製造が困難となるので好ましくない。
【0033】
前記式(1)中のX及びYは、共に酸素原子であることが、原料を安価に入手しやすいので好ましい。
【0034】
前記式(1)中のR
1〜R
4で表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第三ブチル基、アミル基、イソアミル基、第三アミル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、第三オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。また、上記R
1〜R
4で表されるアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0035】
本発明においては、これらの中でも、R
1〜R
4は、R1、R2の何れかが水素原子
で、何れかが炭素数1〜6のアルキル基であることが好ましく
、且つ、R
3、R
4の何れかが水素原子で、何れかが
炭素数1〜6のアルキル基であ
ることが好ましいが、特に、該炭素数1〜6のアルキル基は、メチル基又はエチル基であることが、より好ましい。
【0036】
前記式(1)中のR
5で表される炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第三ブチル基、アミル基、イソアミル基、第三アミル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、第三オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;メチレン基、エチレン基、プロピレン基、エタンジイル基、オクタンジイル基等のアルカンジイル基;メチレントリイル、1,1,3−エチレントリイル基等のアルカントリイル基;1,1,2,2−エチレントリイル等のアルカンテトライル基;及び、ハイドロキノン、レゾルシン、ピロカテコール、フロログルシノール等の単核多価フェノール化合物;ジヒドロキシナフタレン、ビフェノール、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、メチレンビス(オルトクレゾール)、エチリデンビスフェノール、イソプロピリデンビスフェノール(ビスフェノールA)、イソプロピリデンビス(オルトクレゾール)、テトラブロモビスフェノールA、1,3−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)、1,4−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)、1,1,3−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,2,2−テトラ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、チオビスフェノール、スルホニルビスフェノール、オキシビスフェノール、フェノールノボラック、オルソクレゾールノボラック、エチルフェノールノボラック、ブチルフェノールノボラック、オクチルフェノールノボラック、レゾルシンノボラック、テルペンフェノール等の、多核多価フェノール化合物の芳香族基が挙げられる。
【0037】
本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化させた硬化物の物性の観点から、本発明で用いられる(C)成分の含リン化合物は、骨格に芳香環を1個、又は2個以上含む化合物であることが好ましく、前記式(1)のR
5が、下記一般式(2−1)、(2−2)、(2−4)、(2−5)、又は(2−6)で表される官能基であることがより好ましい。
但し、上記式(2−1)中の、pは0〜3の整数を表し、R
7は、水素原子又は炭素数が1〜4のアルキル基を表し、R
8は単結合、メチレン基、又は−C(CH
3)
2−を表し、R
9〜R
10は、独立して、水素原子、又は炭素数が1〜6のアルキル基を表す。
【0038】
但し、上記式(2−2)中のnは0〜3の整数、oは0〜50の整数を表し、R
11は、水素原子、又は炭素数が1〜4のアルキル基を表し、R
12は、酸素原子又は硫黄原子を含んでもよい炭化水素基を表し、Zは水酸基、又は下記一般式(2−3)で表される官能基である。
【0039】
但し、上記式(2−3)中のR
13〜R
16は、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
【0040】
本発明においては、上記した化合物の内、更に、R
5が前記式(2−1)で表される官能基でありR
7が水素原子である化合物が好ましく、R
8がメチレン基、又は−C(CH
3)
2−であることが、原料が安価であり、製造を容易に行えるという観点から特に好ましい。
しかしながら難燃性の観点からは、R
8はメチレン基、又は単結合であることが特に好ましい。
【0041】
本発明で使用する前記式(2−1)で表される全化合物中のpの平均値は、製造を容易に行うことができるという点で0〜2であることが好ましく、0〜0.5であることがより好ましい。pの数が3よりも大きくなると、含リン化合物の製造が困難になる傾向になるからである。
【0042】
本発明で用いられる含リン化合物(C)を難燃剤(D)と併用することにより、エポキシ樹脂組成物の難燃性を向上させることができるので、難燃剤(D)の使用量を低減させることができる。これにより、本発明の樹脂組成物を難燃性にする場合における硬化樹脂物性の低下を防止することができる。
【0043】
本発明のエポキシ樹脂組成物中における含リン化合物(C)の配合量は、例えば、エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、含リン化合物(C)、及び難燃剤(D)(但し、(D)成分を使用しない場合には0となる。)の総量に対して、前記含リン化合物(C)に起因するリン含有量が0.1〜20.0質量%であり、0.2〜5.0質量%となる量であることが好ましい。リン含有量が0.1質量%となる量より少ない場合には、エポキシ樹脂組成物の難燃性が著しく低下する場合がある。一方、リン含有量が20.0質量%となる量より多い場合には、エポキシ樹脂組成物の耐水性が著しく低下する場合がある。
【0044】
(C)成分の含リン化合物の製造方法は特に制限されるものではないが、例えば、下記一般式(4)に示された方法等により、溶媒中で、塩基を併用することによって製造することができる。
但し、上記式(4)中、m
、R1〜R5、X及びYは、前記一般式(3)に記載されたものと同じである。
【0045】
前記式(4)で表される方法で使用する塩基としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等の3級アミン;ピリジン、N,N−ジメチルアミノピリジン等のピリジン類;1−メチルイミダゾール等のイミダゾール類;トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等のホスフィン類が挙げられる。本発明においては、これらの塩基の中でも3級アミンを使用することが好ましく、トリエチルアミンを使用することが最も好ましい。
【0046】
前記式(4)で表される方法で使用する溶媒としては、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、ジエチルケトン、アセトン、メチルイソプロピルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;四塩化炭素、クロロホルム、トリクロロエチレン、塩化メチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素;クロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素が挙げられる。これらの溶媒の中では、エーテル類又はハロゲン化脂肪族炭化水素が好ましく、エーテル類が特に好ましい。
【0047】
前記式(4)で表される反応は、−80〜100℃、好ましくは−50〜50℃の温度で、0.5時間〜72時間、好ましくは1時間〜24時間行わせることが好ましく、これにより、(C)成分である含リン化合物を容易に製造することができる。
【0048】
本発明で用いる難燃剤(D)は、特に制限されるものではないが、例えば、酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛などの無機難燃剤、ヘキサブロモベンゼン、デカブロモジフェニルエタン、4,4−ジブロモフェニル、エチレンビステトラブロモフタルイミドなどの芳香族臭素化合物、及び含リン化合物(C)以外の、分子骨格にリン原子を有する含リン化合物(以下、「含リン難燃剤」とする。)などが挙げられる。これらの中では、環境負荷の観点から、分子骨格にリン原子を有する含リン難燃剤を使用することが好ましい。このような含リン難燃剤としては、例えば、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(2,3−ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(2−クロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3−ブロモプロピル)ホスフェート、トリス(ブロモクロロプロピル)ホスフェート、2,3−ジブロモプロピル−2,3−クロロプロピルホスフェート、トリス(トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス(ジブロモフェニル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェートなどの含ハロゲン系リン酸エステル;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート等のノンハロゲン系脂肪族リン酸エステル;トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェート、ジイソプロピルフェニルフェニルホスフェート、トリス(トリメチルフェニル)ホスフェート、トリス(t−ブチルフェニル)ホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート等のノンハロゲン系芳香族リン酸エステル;レゾルシノールポリフェニルホスフェート、1,3−フェニレンビス(2,6−ジメチルフェニルホスフェート)、レゾルシノールポリ(ジ−2,6−キシリル)ホスフェート、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート、ビスフェノールAポリフェニルホスフェート、ハイドロキノンポリ(2,6−キシリル)ホスフェート並びにこれらの縮合物等の縮合リン酸エステル;リン酸アンモニウム、リン酸メラミン等のリン酸塩;ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸メラミン等の縮合リン酸塩;トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスメチルエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスジフェニルホスフィン酸アルミニウム、トリホスフィン酸アルミニウム、ビスジエチルホスフィン酸亜鉛、ビスメチルエチルホスフィン酸亜鉛、ビスジフェニルホスフィン酸亜鉛、トリホスフィン酸亜鉛、ビスジエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスジエチルホスフィン酸チタン、ビスメチルエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスメチルエチルホスフィン酸チタン、ビスジフェニルホスフィン酸チタニル、テトラキスジフェニルホスフィン酸チタン、テトラホスフィン酸チタニル等のホスフィン酸の金属塩、ジフェニルホスフィン酸フェニル、ジフェニルホスフィン酸メチル、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド(以下、HCAと表記する)等のジアルキルホスフィン酸エステル;HCAとアクリル酸エステルの付加反応生成物、HCAとエポキシ樹脂の付加反応生成物、HCAとハイドロキノンの付加反応生成物等のHCA変性型化合物、ジフェニルビニルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリアルキルホスフィンオキサイド、トリス(ヒドロキシアルキル)ホスフィンオキサイドなどのホスフィンオキサイド系化合物等が挙げられる。
【0049】
本発明においては、環境負荷をより抑えるという観点から、上記含リン難燃剤の中でもハロゲンを含有しない含リン難燃剤を使用することが好ましい。
上記ハロゲンを含有しない含リン難燃剤としては、リン含有フェノキシ樹脂(例えば、新日鐵化学(株)製のフェノトートERF−001M30、及びTX−0924K30等)、水酸基含有リン酸エステル(例えば、大八化学工業(株)製のDAIGUARD−580、及びDAIGUARD−610等)、HCA誘導体(例えば、三光(株)製のHCA−HQ、M−Ester、及びME−P8等)等が既に上市されている。
【0050】
上記ハロゲンを含有しない含リン難燃剤の中でも、本発明においては、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸メラミン、トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキシド(HCA)、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−9, 10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキシド(三光(株)製のHCA−HQ)、ヘキサフェニルシクロトリフォスファゼン、又は、下記一般式(5−1)〜(5−9)の何れかに示される難燃剤であることが更に好ましい。
【0052】
上記一般式(5−1)におけるqは1〜50の整数;一般式(5−2)におけるrは1〜20の整数;一般式(5−3)〜(5−5)におけるa、b、cは、それぞれ独立して、1〜5の整数;一般式(5−6)及び(5−7)におけるd、eは、それぞれ独立して、1〜10の整数;一般式(5−8)におけるfは、1〜50の整数を表す。
上記含リン難燃剤の中では、難燃性の効果が非常に優れているという点で、トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、及び、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−9, 10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキシドが特に好ましい。
【0053】
上記含リン難燃剤は、単独で使用しても2種類以上を併用してもよい。本発明で用いられる難燃剤(D)の配合量は、例えば、エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、含リン化合物(C)、及び難燃剤(D)の総量に対して、難燃剤(D)由来のリン含有量が、0.1〜20.0質量%となる量であり、難燃性とエポキシ樹脂組成物の硬化物の物性とのバランスの観点から、0.3〜10.0質量%であることが好ましく、0.5〜5.0質量%であることがより好ましい。
【0054】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて、粘度調整剤として有機溶剤を用いることができる。この場合の有機溶剤としては、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール等のアルコール類、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類等が挙げられる。本発明においては、これらの溶剤の中から選択される少なくとも一つの溶剤を、本発明のエポキシ樹脂組成物(エポキシ樹脂+反応性希釈剤+硬化剤+リン化合物(C成分及びD成分)+溶剤)の総質量に対して、30〜80質量%の範囲となるように配合することができる。
【0055】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて、無機充填剤を添加してもよい。このような無機充填剤としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ等のシリカ、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硼酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、炭酸カルシウム、窒化珪素、炭化珪素、窒化ホウ素、珪酸カルシウム、チタン酸カリウム、窒化アルミ、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア等の粉体、又はこれらを球形化したビーズ、及びガラス繊維等が挙げられる。これらの無機充填剤は、単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0056】
本発明においては、使用する用途によって上記した無機充填剤を使い分けることが好ましい。積層板の用途に関しては、溶融シリカ、水酸化アルミニウム等を使用することが好ましい。封止剤の用途に関しては、溶融シリカ、結晶シリカ等を使用することが好ましく、溶融シリカを使用することが特に好ましい。注型材の用途に関しては、溶融シリカ、結晶シリカ、又は水酸化アルミニウム等を使用することが好ましく、溶融シリカを使用することが特に好ましい。
【0057】
前記無機充填剤の配合量は、エポキシ樹脂組成物の全固形分に対して、20〜90質量%となるようにすることが好ましく、25〜80質量%となるようにすることがより好ましい。無機充填剤の配合量が20質量%未満では、硬化物の熱膨張係数の低減効果が低くなる傾向があり、90質量%を超えるとエポキシ樹脂組成物の粘度が上昇し、作業性が著しく低下する傾向となる。
【0058】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて、前記無機充填剤以外の添加剤を併用してもよい。上記添加剤としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ベンジルアルコール、コールタール等の非反応性の希釈剤(可塑剤);ガラス繊維、パルプ繊維、合成繊維、セラミック繊維等の繊維質充填材;ガラスクロス・アラミドクロス、カーボンファイバー等の補強材;顔料;γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−N’−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤;キャンデリラワックス、カルナウバワックス、木ろう、イボタロウ、みつろう、ラノリン、鯨ろう、モンタンワックス、石油ワックス、脂肪族ワックス、脂肪族エステル、脂肪族エーテル、芳香族エステル、芳香族エーテル等の潤滑剤;増粘剤;チキソトロピック剤;酸化防止剤;光安定剤;紫外線吸収剤;消泡剤;防錆剤;コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ等の常用の添加物をあげる事ができる。本発明においては、更に、キシレン樹脂、石油樹脂等の粘着性の樹脂類を併用することもできる。
通常、本発明のエポキシ樹脂組成物における「全固形分」中に占める上記添加剤の量は、5質量%以下とわずかである。
【0059】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、電子回路基板に用いられる積層板、電子部品に用いられる封止剤、注型材、フィルム材、接着剤、電気絶縁塗料、難燃性の必要な複合材、及び粉体塗料等に使用することができ、特に、電子回路基板に用いられる積層板、電子部品に用いられる封止剤、あるいは注型材に使用するのに好適である。
【0060】
本発明の積層板は、本発明のエポキシ樹脂組成物を用いた本発明のプリプレグを、1枚又は所定の枚数、例えば2〜20枚重ね合わせ、その片面又は両面に銅やアルミニウム等の金属箔を配置して積層した後、多段プレス機、多段真空プレス機等を用いて、所定の温度、例えば100〜250℃で熱圧着して製造することができる。
【0061】
上記、本発明のエポキシ樹脂組成物を用いたプリプレグは、本発明のエポキシ樹脂組成物を基材に含浸させ又は塗布し、加熱等により半硬化(Bステージ化)させて製造することができる。
上記プリプレグの基材としては、例えば、ガラス繊維、ポリイミド、ポリエステル及びテトラフルオロエチレン等の有機繊維、並びにそれらの混合物等の、公知のものを使用することができる。
【0062】
これらの基材の形状としては、例えば、織布、不織布、ロービンク、チョップドストランドマット及びサーフェシングマット等が挙げられる。これら基材の材質及び形状は、目的とする成形物の用途や性能により選択される。必要により、単独で又は2種類以上の材質及び形状を組み合わせて使用することができる。
【0063】
電子部品に用いられる本発明の封止剤は、本発明のエポキシ樹脂組成物を、必要により加熱処理しながら、撹拌、溶融、混合、分散させることにより製造することができる。この場合の、撹拌、溶融、混合、分散に使用する装置は特に限定されるものではなく、本発明においては、撹拌器、加熱装置を備えたライカイ機、3本ロールミル、ボールミル、プラネタリーミキサー、ビーズミル等を使用することができる。また、これらの装置を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0064】
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いた注型材は、例えば、ミキサー等を用いて本発明のエポキシ樹脂組成物を混合し、真空脱泡した後、金型を用いて製造することができる。
【0065】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
尚、以下の実施例等における%は、特に記載がない限り質量基準である。また、プリプレグの外観は、目視観察した場合に、均一な外観のものを良好と評価し、外観が不均一な物を不良とした。同様に、プリプレグを用いて加圧硬化させ、両面銅張積層板を作製した後の外観を目視で観察し、評価した。均一に硬化して、プリプレグが成形されているものを成型性が良好とし、不均一に硬化したプリプレグを、成型性が不良であると評価した。
【0066】
難燃性については、両面銅張積層板の銅箔をエッチングによって除去し、長さ127mm、幅12.7mmに加工した試験片について、UL(アンダーライターズ ラボラトリース)の「プラスチック材料の燃焼性テストUL 94」に準じて試験をし、下記の様にして判定した。
<判定方法>
試験片を垂直に保ち、下端にバーナーの火を10秒間接炎させた後バーナーの火を取り除き、試験片に着火した火が消える迄の時間を測定した。次に、火が消えると同時に2回目の接炎を10秒間行ない、1回目と同様にして、着火した火が消える迄の時間を測定した。その操作を5回行った後の、1回目の火が消える迄の時間の平均値(以下、T1とする)、2回目の火が消える迄の時間の平均値(以下、T2とする)を計算した。同時に、5回操作分の合計燃焼時間を計算した。また、落下する火種により、試験片の下に置いた綿が着火するか否かについても同時に評価した。
合計燃焼時間、綿着火の有無等の結果から、UL−94V規格にしたがって燃焼ランクを評価した。燃焼ランクはV−0が最高であり、V−1、V−2となるにしたがって難燃性は低下する。但し、V−0〜V−2のランクの何れにも該当しないものはNRとした。
【0067】
硬化物のガラス転位温度は、TMA(熱機械分析装置、株式会社日立ハイテクサイエンス製、EXSTAR TMA/SS-6100)を用いて測定した。また、銅箔の剥離強さはJIS C 6481 5.7に準じて測定した。
【0068】
製造例1:含リン化合物(C−1)
<含リン塩化物P−1の合成>
回転子、還流管、温度計及び窒素導入口を備えた300mLの丸底フラスコに、ビスフェノールAを22.8g(0.1mol)、塩化ホスホリルを306.7g(2.0mol)、及び無水塩化マグネシウムを0.3g(3.0mmol)入れて、反応溶液が還流するまで加熱し、24時間撹拌した。その際、反応で発生する塩化水素ガスを、還流管上部から水酸化ナトリウム水溶液に導入してトラップした。反応終了後、エバポレーターを用いて過剰の塩化ホスホリルを除去し、含リン塩化物P−1を得た。得られたP−1をTHF100mLに溶解させ、P−1のTHF溶液を得た。
【0069】
<塩化物とアミンの反応>
撹拌羽、還流管、滴下漏斗及び温度計を備えた500mLの丸底フラスコに、メチルアミンのTHF溶液を210mL(2.0mol/L、メチルアミン:0.42mol)及びトリエチルアミン42.5g(0.42mol)を入れた。窒素雰囲気下で、反応溶液を撹拌・冷却しながら、上記P−1のTHF溶液を反応温度が0℃を超えないように滴下し、滴下終了後、25℃で24時間撹拌した。反応終了後、エバポレーターで溶媒及び過剰の原料を除去し、残渣をクロロホルム300mLで溶解して分液漏斗に移した。蒸留水100mLで2回洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、エバポレーターで溶媒を除去して含リン化合物(C−1)を18.8g(収率85.3%)得た。含リン化合物(C−1)の理論リン含有量は14.1質量%である。
【0070】
製造例2:含リン化合物(C−2)
<含リン塩化物P−2の合成>
回転子、還流管、温度計及び窒素導入口を備えた300mLの丸底フラスコに、4,4‘−ビフェノールを14.9g(80mmol)、塩化ホスホリルを245.3g(1600mmol)、及び無水塩化マグネシウム0.2g(2.4mmol)を入れて、反応溶液が還流するまで加熱し、24時間撹拌した。その際、反応に伴って発生する塩化水素ガスを、還流管上部から水酸化ナトリウム水溶液に導入してトラップした。反応終了後、エバポレーターで過剰の塩化ホスホリルを除去し、含リン塩化物P−2を得た。得られたP−2をTHF80mLに溶解させ、P−2のTHF溶液を得た。
【0071】
<塩化物とアミンの反応>
撹拌羽、還流管、滴下漏斗及び温度計を備えた500mLの丸底フラスコに、メチルアミンのTHF溶液を170mL(2.0mol/L、メチルアミン:0.34mol)、及びトリエチルアミン34.4g(0.34mol)を入れた。窒素雰囲気下で、反応溶液を撹拌・冷却しながら、上記P−2のTHF溶液を、反応温度が0℃を超えないように滴下し、滴下終了後、24時間撹拌した。反応終了後、エバポレーターで溶媒及び過剰の原料を除去し、残渣をクロロホルム300mLで溶解して分液漏斗に移した。蒸留水100mLで2回洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、エバポレーターで溶媒を除去して含リン化合物(C−2)を5.4g(収率16.9%)得た。含リン化合物(C−2)の理論リン含有量は15.5重量%である。
【0072】
製造例3:含リン難燃剤(D−1)
撹拌羽、還流管、温度計、滴下漏斗、セプタムを備えた500mL五口フラスコを十分に乾燥、窒素置換し、4,4’−ビフェノールを29.8g(0.16mol)、トリエチルアミン34.4g(0.34mol)、超脱水テトラヒドロフラン300mLを仕込んだ。滴下漏斗にジエチルホスフィン酸クロリド47.8g(0.34mol)を仕込み、反応温度が50℃を超えないように滴下した。滴下終了後、一晩攪拌した。反応溶液を分液漏斗に移し、クロロホルム500mL、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液300mLを加えて良く撹拌し、油水分離後、水層を除去した。有機層を蒸留水200mLで二回水洗し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、エバポレーターで溶媒を除去し含リン難燃剤(D−1)60.6g(収率96.1%)を得た。含リン難燃剤(D−1)の理論リン含有量は15.7重量%である。
【0073】
製造例4:含リン化合物(C−3)
<含リン塩化物P−4の合成>
回転子、還流管、温度計及び窒素導入口を備えた300mLの丸底フラスコに、レゾルシノールを14.3g(0.13mol)、塩化ホスホリルを398.7g(2.6mol)、及び無水塩化マグネシウムを0.4g(3.9mmol)入れて、反応溶液が還流するまで加熱し、24時間撹拌した。その際、反応に伴って発生する塩化水素ガスを、還流管上部から水酸化ナトリウム水溶液中に導入してトラップした。反応終了後、エバポレーターを用いて過剰の塩化ホスホリルを除去し、含リン塩化物P−4を得た。得られたP−4をTHF100mLに溶解させ、P−4のTHF溶液を得た。
【0074】
<塩化物とアミンの反応>
撹拌羽、還流管、滴下漏斗及び温度計を備えた500mLの丸底フラスコに、メチルアミンのTHF溶液を224mL(2.0mol/L、メチルアミン:0.52mol)及びトリエチルアミン52.6g(0.52mol)を入れた。窒素雰囲気下で、反応溶液を撹拌・冷却しながら、上記P−4のTHF溶液を反応温度が0℃を超えないように滴下し、滴下終了後、25℃で24時間撹拌した。反応終了後、エバポレーターで溶媒及び過剰の原料を除去し、残渣をクロロホルム300mLで溶解して分液漏斗に移した。蒸留水100mLで2回洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後エバポレーターで溶媒を除去して、含リン化合物(C−3)を26.0g(収率62,1%)得た。含リン化合物(C−3)の理論リン含有量は19.2重量%である。
【0075】
製造例5:含リン難燃剤(D−2)
撹拌羽、還流管、滴下漏斗及び温度計を備えた500mLの丸底フラスコに、メチルアミンのTHF溶液を245mL(2.0mol/L、メチルアミン:0.57mol)及びトリエチルアミン57.7g(0.57mol)を入れた。窒素雰囲気下で、反応溶液を撹拌・冷却しながら、ジクロロリン酸フェニル57.0g(0.27mol)を反応温度が0℃を超えないように滴下し、滴下終了後、25℃で24時間撹拌した。反応終了後、エバポレーターで溶媒及び過剰の原料を除去し、残渣をクロロホルム300mLで溶解して分液漏斗に移した。蒸留水100mLで2回洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、エバポレーターで溶媒を除去して、含リン難燃剤(D−2)を15.1g(収率27.9%)得た。含リン難燃剤(D−2)の理論リン含有量は15.5重量%である。
【0076】
製造例6:含リン化合物(C−4)
<含リン塩化物P−6の合成>
回転子、還流管、温度計及び窒素導入口を備えた300mLの丸底フラスコに、ビスフェノールFを16.0g(80mmol)、塩化ホスホリルを245.3g(1600mmol)、及び無水塩化マグネシウムを0.2g(2.4mmol)入れて、反応溶液が還流するまで加熱し、24時間撹拌した。その際、反応に伴って発生する塩化水素ガスを、還流管上部から水酸化ナトリウム水溶液中に導入してトラップした。反応終了後、エバポレーターで過剰の塩化ホスホリルを除去し、含リン塩化物P−6を得た。得られたP−6をTHF80mLに溶解させ、P−6のTHF溶液を得た。
【0077】
<塩化物とアミンの反応>
撹拌羽、還流管、滴下漏斗及び温度計を備えた500mLの丸底フラスコに、メチルアミンのTHF溶液を170mL(2.0mol/L、メチルアミン:0.34mol)、及びトリエチルアミンを34.4g(0.34mol)入れた。窒素雰囲気下で、反応溶液を撹拌・冷却しながら、上記P−6のTHF溶液を、反応温度が0℃を超えないように滴下し、滴下終了後、24時間撹拌した。反応終了後、エバポレーターで溶媒及び過剰の原料を除去し、残渣をクロロホルム300mLで溶解して分液漏斗に移した。蒸留水100mLで2回洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、エバポレーターで溶媒を除去して含リン化合物(C−4)を25.2g(収率76.4%)得た。含リン化合物(C−4)の理論リン含有量は14.8重量%である。
【0078】
[実施例1]
EOCN−104S(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、日本化薬株式会社製)49.1g、HP−350(水酸化アルミニウム、昭和電工株式会社製)61.5g及びSFP−130MC(球状シリカ、電気化学工業株式会社製)61.5gをメチルエチルケトン100gに加え、三本ロールで分散させた。次いで、製造例1で得られたI−1を18g、メタノール20gに溶解して加えた。更に、EOCN−104S 50.9g、アデカハードナー EH−3636AS(ジシアンジアミド型潜在性硬化剤、株式会社ADEKA製)5g(5phr:エポキシ樹脂100質量部に対して5質量部)、及びメチルエチルケトン100gを追加してディスパーで分散し、樹脂ワニスを作製した。
【0079】
得られた樹脂ワニスをガラスクロス(日東紡績株式会社製、#7628)に含浸させ、120℃の熱風循環炉で10分間加熱乾燥してプリプレグを作製した。このときのプリプレグ中の樹脂量は、プリプレグ全体の40〜50質量%であった。更に、作製したプリプレグを4枚重ね、その両側に厚さ35μmの銅箔(福田金属箔粉工業株式会社製)を配置し、190℃で、圧力10kg/cm
2の条件で120分間熱圧着して、両面銅張積層板を得た。上記のようにして得られた両面銅張積層板の物性を表1に示した。
【0080】
[実施例2〜4及び比較例1〜5]
表1に記載した組成で配合したこと以外は実施例1と同様にして、両面銅張積層板を作製して各種の評価を行った。結果は表1に示した通りである。
【表1】
*1 HCA−HQ:下記一般式(5)で表される難燃剤、三光株式会社製
*2 FP−600:下記一般式(6)で表される難燃剤、株式会社ADEKA製
【0081】
表1の結果から明らかなように、本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化させた硬化物は、Tgが大きく向上していること、及び、これらの組成物を用いたプリプレグや、該プリプレグを用いた積層板を製造する際の作業性及び成型性が良好であることが確認された。また、本実施例では難燃剤を併用していないにもかかわらず、特に実施例2及び4の場合には、難燃性の評価も良好であることが確認された。
これに対して、比較例1の場合には、難燃性についてはある程度の効果が認められるものの、Tgに関しては満足できるものではないことが確認された。また、比較例2の場合には、プリプレグの作製時に用いた含リン難燃剤(HCA−HQ)が結晶化したので、均一なプリプレグを得ることができず、その後の評価もできなかった。
比較例3の場合には、両面銅張積層板作製時の加圧硬化の時に、含リン難燃剤(FP−600)と思われる成分が一部分離して、均一な積層板を得ることができなかったため、その後の評価をすることができなかった。また、比較例4及び5の場合には、難燃性及びTgの何れにおいても、良い評価を得られないことが確認された。
【0082】
[実施例5〜9]
<難燃剤を併用した場合の事例>
表2に示されるように、難燃剤を併用したこと以外は、実施例1と同様にして両面銅張積層板を作製し、各種の評価を行った。結果は表2に示した通りである。
【表2】
*3 トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム(クラリアント社製)
表2の結果から明らかなように、難燃剤を併用した本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物を用いたプリプレグ、及び該プリプレグを用いた積層板は、作業性及び成型性が良好であるだけでなく、難燃性も著しく向上すること、また、実施例6、7のように、実施例5より使用する難燃剤の量を減らした場合でも、良好な難燃性を示すことが確認された。