特許第6731908号(P6731908)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6731908-有機電界発光素子 図000033
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6731908
(24)【登録日】2020年7月9日
(45)【発行日】2020年7月29日
(54)【発明の名称】有機電界発光素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20200716BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20200716BHJP
   C07D 487/04 20060101ALN20200716BHJP
   C07D 519/00 20060101ALN20200716BHJP
【FI】
   H05B33/14 B
   C09K11/06 660
   C09K11/06 690
   !C07D487/04 137
   !C07D519/00 311
【請求項の数】12
【全頁数】43
(21)【出願番号】特願2017-509514(P2017-509514)
(86)(22)【出願日】2016年3月14日
(86)【国際出願番号】JP2016058051
(87)【国際公開番号】WO2016158363
(87)【国際公開日】20161006
【審査請求日】2019年2月20日
(31)【優先権主張番号】特願2015-70098(P2015-70098)
(32)【優先日】2015年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100082739
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 勝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100088203
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100100192
【弁理士】
【氏名又は名称】原 克己
(74)【代理人】
【識別番号】100198269
【弁理士】
【氏名又は名称】久本 秀治
(72)【発明者】
【氏名】池永 裕士
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 孝弘
(72)【発明者】
【氏名】堀田 正則
(72)【発明者】
【氏名】小川 淳也
(72)【発明者】
【氏名】坂井 満
(72)【発明者】
【氏名】多田 匡志
(72)【発明者】
【氏名】上田 季子
(72)【発明者】
【氏名】野口 勝秀
【審査官】 岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/146645(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/097813(WO,A1)
【文献】 特開2002−003833(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/136596(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/098246(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/014841(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/132683(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/070963(WO,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2014−0138393(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50
C09K 11/06
C07D 487/04
C07D 519/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する陽極と陰極の間に、1つ以上の発光層を含む有機電界発光素子において、少なくとも1つの発光層が少なくとも2種のホスト材料と少なくとも1種の発光性ドーパントを含有し、該ホスト材料のうち、少なくとも1種が下記一般式(1)〜(2)のいずれかで表される化合物から選ばれるホスト材料(H1)であり、少なくとも1種が下記一般式(3)で表される化合物から選ばれるホスト材料(H2)であることを特徴とする有機電界発光素子。
【化1】
ここで、環aは2つの隣接環の任意の位置で縮合する式(a1)で表される芳香環又は複素環を示し、XはC−R又はNを示す。環bは2つの隣接環の任意の位置で縮合する式(b1)で表される複素環を示し、Ar、Arは独立に、炭素数6〜24の芳香族炭化水素基、又は炭素数3〜16の芳香族複素環基を示し、Lは炭素数6〜24の芳香族炭化水素基、炭素数3〜16の芳香族複素環基、又はそれらが2〜10連結された連結芳香族基を示し、Ar、ArおよびLにおけるこれらの芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基又は連結芳香族基は、置換基を有してもよい。
pは0〜7の整数を示す。ここで、pが2以上の場合、Lはそれぞれ同一でも異なってもよい。
R、R〜Rは独立に、水素、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数7〜38のアラルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、炭素数12〜44のジアリールアミノ基、炭素数14〜76のジアラルキルアミノ基、炭素数2〜20のアシル基、炭素数2〜20のアシルオキシ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニルオキシ基、炭素数1〜20のアルキルスルホニル基、炭素数6〜24の芳香族炭化水素基、又は炭素数3〜16の芳香族複素環基を示し、それぞれ置換基を有してもよい。
【化2】
ここで、環c、環c’は隣接環の任意の位置で縮合する式(c1)で表される芳香環又は複素環を表し、環d、環d’は隣接環の任意の位置で縮合する式(d1)で表される複素環を表し、同一であっても異なっていても良い。
はC−R’又はNを示す。Zは炭素数6〜24の芳香族炭化水素基、炭素数3〜16の芳香族複素環基、又はそれらが2〜10連結してなる2価の連結芳香族基を表す。Arは炭素数6〜24の芳香族炭化水素基、又は炭素数3〜6の単環の芳香族複素環基を表し、Lは炭素数6〜24の芳香族炭化水素基、炭素数3〜18の芳香族複素環基、又はそれらが2〜10連結された連結芳香族基を示し、Z、ArおよびLにおけるこれらの芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基又は連結芳香族基は、置換基を有してもよい。
qは0〜7の整数を示す。ここで、qが2以上の場合、L2はそれぞれ同一でも異なってもよい。
R’、R〜Rは独立に、水素、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数7〜38のアラルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、炭素数12〜44のジアリールアミノ基、炭素数14〜76のジアラルキルアミノ基、炭素数2〜20のアシル基、炭素数2〜20のアシルオキシ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニルオキシ基、炭素数1〜20のアルキルスルホニル基、炭素数6〜24の芳香族炭化水素基、又は炭素数3〜16の芳香族複素環基を示し、それぞれ置換基を有してもよい。
【化3】
ここで、R〜R12は独立に、炭素数6〜18の芳香族炭化水素基、又は炭素数3〜9の芳香族複素環基を示し、それぞれ置換基を有してもよい。
Arは独立に、水素、又は炭素数6〜24の芳香族炭化水素基を示し、芳香族炭化水素基は、置換基を有してもよい。jは1又は3の整数を示し、少なくとも一つのArは水素ではない。
X3〜Xは独立に、N、C−R”又はC−を示し、R”は独立に、水素、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、又は炭素数12〜44のジアリールアミノ基を示す。
k、l、m、nは、0≦k+l+m+n≦16を満たす整数を示す。


【請求項2】
2つのホスト材料のうち1つが前記一般式(1)〜(2)のいずれかで表される化合物から選ばれるホスト材料であり、他の1つが前記一般式(3)で表される化合物から選ばれるホスト材料であって、2つのホスト材料の電子親和力の差(ΔEA)が0.1eVより大きいことを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項3】
一般式(1)中、XがC−Rであることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項4】
一般式(2)中、XがC−R’であることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項5】
一般式(1)中、Ar又はArの少なくとも一つが置換又は未置換の炭素数3〜9の芳香族複素環基であることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項6】
一般式(3)中、jが1の整数であることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項7】
一般式(3)中、X〜XがC−H、N又はC−であることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項8】
ホスト材料(H1)と、ホスト材料(H2)を予備混合し、一つの蒸着源から蒸着させることで製膜された発光層を有する請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項9】
前記発光層中のホスト材料(H1)とホスト材料(H2)の存在比率が、蒸着前の予備混合比率と比べて変化量が5%以内である請求項8に記載の有機電界発光素子。
【請求項10】
ホスト材料(H1)と、ホスト材料(H2)の気化温度の差が30℃以内である請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項11】
前記気化温度の差が10℃以内である請求項10に記載の有機電界発光素子。
【請求項12】
発光性ドーパントがルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金及び金から選ばれる少なくとも一つの金属を含む有機金属錯体からなる燐光発光ドーパントであることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の有機電界発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機電界発光素子(以下、有機EL素子という)に関するものであり、詳しくは、特定の構造を有する化合物を混合して用いることにより、低電圧でありながら高効率かつ、長寿命を達成できる有機EL素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、有機EL素子は、その最も簡単な構造としては発光層及び該層を挟んだ一対の対向電極から構成されている。すなわち、有機EL素子では、両電極間に電界が印加されると、陰極から電子が注入され、陽極から正孔が注入され、これらが発光層において再結合される際にエネルギーとして光を放出する現象を利用する。
【0003】
近年、有機薄膜を用いた有機EL素子の開発が行われるようになった。特に、発光効率を高めるため、電極からキャリアー注入の効率向上を目的として電極の種類の最適化を行い、芳香族ジアミンからなる正孔輸送層と8−ヒドロキシキノリンアルミニウム錯体(Alq3)からなる発光層兼電子輸送層とを電極間に薄膜として設けた素子の開発により、従来のアントラセン等の単結晶を用いた素子と比較して大幅な発光効率の改善がなされたことから、自発光・高速応答性といった特徴を持つ高性能フラットパネルへの実用を目指して進められてきた。
【0004】
素子の発光効率を上げる試みとして、蛍光発光材料ではなく燐光発光材料を用いることも検討されている。上記の芳香族ジアミンからなる正孔輸送層とAlq3からなる発光層とを設けた素子をはじめとした多くの素子が蛍光発光を利用したものであったが、燐光発光を用いる、すなわち、三重項励起状態からの発光を利用することにより、従来の蛍光(一重項)を用いた素子と比べて、3〜4倍程度の効率向上が期待される。この目的のためにクマリン誘導体やベンゾフェノン誘導体を発光層とすることが検討されてきたが、極めて低い輝度しか得られなかった。その後、三重項状態を利用する試みとして、ユーロピウム錯体を用いることが検討されてきたが、これも高効率の発光には至らなかった。この燐光発光を利用した研究は、燐光発光ドーパントとしては、特許文献1に挙げられるようなイリジウム錯体等の有機金属錯体を中心に研究が多数行われており、高効率に発光するものも見出されてきている。
【0005】
【特許文献1】特表2003-515897号公報
【特許文献2】特開2001-313178号公報
【特許文献3】特開平11-162650号公報
【特許文献4】特開平11-176578号公報
【特許文献5】WO2008-056746A
【特許文献6】WO2009-136596A
【特許文献7】WO2010-098246A
【特許文献8】WO2011-132684A
【特許文献9】特開2012-028634号公報
【0006】
有機EL素子の発光層に用いるホスト材料としては、特許文献1及び2で紹介されているカルバゾール系化合物や、オキサゾール系化合物、トリアゾール系化合物などが挙げられるが、いずれも効率、寿命共に実用に耐えうるものではなかった。
【0007】
また、特許文献3及び4でインドロカルバゾール化合物の開示がなされているが、正孔輸送材料としての使用が推奨されており、混合ホスト材料としての使用の開示はなく、インドロカルバゾール化合物の混合ホスト材料としての有用性を教えるものではない。
【0008】
また、特許文献5でインドロカルバゾール化合物について、ホスト材料としての使用を開示しているが、これが混合ホスト材料として有用性を有することを教えるものではない。
【0009】
また、特許文献6、7でインドロカルバゾール化合物の混合ホストとしての使用を開示しているが、特定のカルバゾール化合物との組み合わせで有用な効果が発現することを教えるものではない。
【0010】
また、特許文献8、9でインドロカルバゾール化合物とカルバゾール化合物の混合ホストとしての使用を開示しているが、特定のインドロカルバゾール化合物と特定のカルバゾール化合物との組み合わせの有用な効果を教えるものではない。
【発明の開示】
【0011】
有機EL素子をフラットパネルディスプレイ等の表示素子に応用するためには、素子の発光効率を改善すると同時に駆動時の安定性を十分に確保する必要がある。本発明は、上記現状に鑑み、低電圧でありながら高効率かつ高い駆動安定性を有した実用上有用な有機EL素子を提供することを目的とする。
【0012】
本発明は、対向する陽極と陰極の間に、1つ以上の発光層を含む有機電界発光素子において、少なくとも1つの発光層が少なくとも2種のホスト材料と少なくとも1種の発光性ドーパントを含有し、該ホスト材料のうち、少なくとも1つが下記一般式(1)〜(2)のいずれかで表される化合物から選ばれるホスト材料(H1)であり、他の少なくとも1つが下記一般式(3)で表される化合物から選ばれるホスト材料(H2)であることを特徴とする有機電界発光素子である。
【0013】
【化1】
【0014】
【化2】
【0015】
一般式(1)において、環aは2つの隣接環の任意の位置で縮合する式(a1)で表される芳香環又は複素環を示し、XはC−R又はNを示す。環bは2つの隣接環の任意の位置で縮合する式(b1)で表される複素環を示し、Ar、Ar2は独立に、炭素数6〜24の芳香族炭化水素基、又は炭素数3〜16の芳香族複素環基を示し、Lは炭素数6〜24の芳香族炭化水素基、炭素数3〜16の芳香族複素環基、又はそれらが2〜10連結された連結芳香族基を示し、Ar、ArおよびLにおけるこれらの芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基又は連結芳香族基は、置換基を有してもよい。pは0〜7の整数を示す。ここで、pが2以上の場合、L1はそれぞれ同一でも異なってもよい。
R、R〜Rは独立に、水素、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数7〜38のアラルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、炭素数12〜44のジアリールアミノ基、炭素数14〜76のジアラルキルアミノ基、炭素数2〜20のアシル基、炭素数2〜20のアシルオキシ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニルオキシ基、炭素数1〜20のアルキルスルホニル基、炭素数6〜24の芳香族炭化水素基、又は炭素数3〜16の芳香族複素環基を示し、それぞれ置換基を有してもよい。
【0016】
一般式(2)において、環c、環c’は隣接環の任意の位置で縮合する式(c1)で表される芳香環又は複素環を表し、環d、環d’は隣接環の任意の位置で縮合する式(d1)で表される複素環を表し、同一であっても異なっていても良い。XはC−R’又はNを示す。Zは炭素数6〜24の芳香族炭化水素基、炭素数3〜16の芳香族複素環基、又はそれらが2〜10連結してなる2価の連結芳香族基を表す。Arは炭素数6〜24の芳香族炭化水素基、又は炭素数3〜6の単環の芳香族複素環基を表し、Lは炭素数6〜24の芳香族炭化水素基、炭素数3〜16の芳香族複素環基、又はそれらが2〜10連結してなる連結芳香族基を示し、Z、ArおよびLにおけるこれらの芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基又は連結芳香族基は、置換基を有してもよい。qは0〜7の整数を示す。ここで、qが2以上の場合、Lはそれぞれ同一でも異なってもよい。
R’、R〜Rは独立に、水素、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数7〜38のアラルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、炭素数12〜44のジアリールアミノ基、炭素数14〜76のジアラルキルアミノ基、炭素数2〜20のアシル基、炭素数2〜20のアシルオキシ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニルオキシ基、炭素数1〜20のアルキルスルホニル基、炭素数6〜24の芳香族炭化水素基、又は炭素数3〜16の芳香族複素環基を示し、それぞれ置換基を有してもよい。
【0017】
【化3】
【0018】
ここで、R〜R12は独立に、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアシル基、炭素数2〜20のアルコキシ基、炭素数6〜24の芳香族炭化水素基、又は炭素数3〜16の芳香族複素環基を示し、それぞれ置換基を有してもよい。
Arは独立に、水素、炭素数6〜24の芳香族炭化水素基、又は炭素数3〜16の芳香族複素環基を示し、それぞれ置換基を有してもよい。jは1〜6の整数を示し、少なくとも一つのArは、水素ではない。
〜Xは独立に、N、C−R”又はC−を示し、R”は独立に、水素、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数12〜44のジアリールアミノ基を示す。k、l、m、nは、0≦k+l+m+n≦16を満たす整数を示す。
【0019】
また、本発明の別の態様は、上記ホスト材料(H1)とホスト材料(H2)の2つのホスト材料の電子親和力の差(ΔEA)が0.1eVより大きいことを特徴とする有機電界発光素子である。
【0020】
上記一般式(1)中、XはC−Rであることが好ましく、さらに、Ar又はArの少なくとも一つが置換又は未置換の炭素数3〜9の芳香族複素環基であることがより好ましい。
【0021】
上記一般式(2)中、XはC−R’であることが好ましい。また、上記一般式(3)中、jが3以下であることが好ましい。
【0022】
また、本発明の別の態様は、上記ホスト材料(H1)とホスト材料(H2)を予備混合し、一つの蒸着源から蒸着させることで製膜された発光層を有する有機電界発光素子である。この場合、発光層中のホスト材料(H1)と(H2)の混合比率が、蒸着前の予備混合比率と比べて変化量が5%以内であることがよい。
【0023】
また、上記ホスト材料(H1)とホスト材料(H2)の気化温度の差は30℃以内であることが好ましく、10℃以内であることがより好ましい。
【0024】
また本発明の別の態様は、発光性ドーパントがルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金及び金から選ばれる少なくとも一つの金属を含む有機金属錯体からなる燐光発光ドーパントである有機電界発光素子である。
【0025】
本発明の有機EL素子は、特定の化合物を混合ホストとして用いることで、低電圧でありながら、燐光発光分子の最低励起三重項エネルギーを閉じ込めるのに十分高い最低励起三重項エネルギーを有していることから、発光層内からのエネルギー流出が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】有機EL素子の一例を示した模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の有機電界発光素子は、対向する陽極と陰極の間に、1つ以上の発光層を含み、少なくとも1つの発光層が少なくとも2種のホスト材料と少なくとも1種の発光性ドーパントを含有し、該ホスト材料のうち、少なくとも1種が上記一般式(1)〜(2)のいずれかで表される化合物から選ばれるホスト材料(H1)であり、他の少なくとも1種が下記一般式(3)で表される化合物から選ばれるホスト材料(H2)である。以下、ホスト材料(H1)を第1ホスト材料(H1)と、ホスト材料(H2)を第2ホスト材料(H2)ともいう。第1ホスト材料(H1)、及び第2ホスト材料(H2)は、それぞれ1種のみでもよく、上記一般式(1)〜(2)、又は一般式(3)を満足する化合物であれば、それぞれ2種以上からなっていてもよい。
【0028】
以下、一般式(1)及び(2)について、説明する。
環a、環c、環c’は2つの隣接環の任意の位置で縮合する式(a1)、又は(c1)で表される芳香環又は複素環を示す。ここで、(a1)おいて、XはC−R又はNを示すが、C−Rであることが好ましい。また、(c1)において、XはC−R’又はNを示すが、C−R’であることが好ましい。
【0029】
環b、環d、環d’は2つの隣接環の任意の位置で縮合する式(b1)、又は(d1)で表される複素環を示す。ここで、環cと環c’、環dと環d’は同一であっても異なっていても良い。
【0030】
式(a1)又は(c1)で表される芳香族炭化水素環又は複素環は、2つの隣接環と任意の位置で縮合することができるが、構造的に縮合できない位置がある。これらの芳香族炭化水素環又は複素環は、6つの辺を有するが、隣接する2つの辺で2つの隣接環と縮合することはない。同様に、式(b1)又は(d1)で表される複素環は2つの隣接環と任意の位置で縮合することができるが、構造的に縮合できない位置がある。すなわち、これらの複素環は、5つの辺を有するが、隣接する2つの辺で2つの隣接環と縮合することはなく、また、窒素原子を含む辺で隣接環と縮合することはない。したがって、一般式(1)、(2)で表される化合物の異性体の骨格の種類は限られる。
【0031】
Ar〜Arは、炭素数6〜24の芳香族炭化水素基、又は炭素数3〜16の芳香族複素環基を示し、これらの芳香族炭化水素基、又は芳香族複素環基はそれぞれ置換基を有してもよい。
好ましくは、炭素数6〜24の芳香族炭化水素基、又は炭素数3〜16の芳香族複素環基であり、より好ましくは炭素数6〜18の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜9の芳香族複素環基である。Ar、Arはp+1価の基であり、Arはq+1価の基である。
【0032】
これらAr〜Arの具体例としては、ベンゼン、ペンタレン、インデン、ナフタレン、アズレン、ヘプタレン、オクタレン、インダセン、アセナフチレン、フェナレン、フェナンスレン、アントラセン、トリンデン、フルオランテン、アセフェナントリレン、アセアントリレン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、テトラフェン、テトラセン、プレイアデン、ピセン、ペリレン、ペンタフェン、ペンタセン、テトラフェニレン、コラントリレン、ヘリセン、ヘキサフェン、ルビセン、コロネン、トリナフチレン、ヘプタフェン、ピラントレン、フラン、チオフェン、ピロール、ピラゾール、テルラゾール、セレナゾール、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、フラザン、チアジアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、又はトリアジンからp+1個又はq+1個の水素を除いて生じる基が挙げられる。好ましくはベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、又はトリアジンからp+1個又はq+1個の水素を除いて生じる基が挙げられる。
【0033】
一般式(1)、式(b1)、式(d1)において、L、Lは、それぞれ炭素数6〜24の芳香族炭化水素基、炭素数3〜16の芳香族複素環基、又はそれらが2〜10連結してなる基を示し、これらの基は各々置換基を有してもよい。
【0034】
、Lは、炭素数6〜24の芳香族炭化水素基、炭素数3〜16の芳香族複素環基、又はそれらが2〜10連結してなる連結芳香族基であることが好ましく、より好ましくは炭素数6〜18の芳香族炭化水素基、炭素数3〜16の芳香族複素環基、又はそれらが2〜7連結してなる連結芳香族基である。
【0035】
、Lの具体例としては、ベンゼン、ペンタレン、インデン、ナフタレン、アズレン、ヘプタレン、オクタレン、インダセン、アセナフチレン、フェナレン、フェナンスレン、アントラセン、トリンデン、フルオランテン、アセフェナントリレン、アセアントリレン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、テトラフェン、テトラセン、プレイアデン、ピセン、ペリレン、ペンタフェン、ペンタセン、テトラフェニレン、コラントリレン、ヘリセン、ヘキサフェン、ルビセン、コロネン、トリナフチレン、ヘプタフェン、ピラントレン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、キサンテン、オキサトレン、ジベンゾフラン、ペリキサンテノキサンテン、チオフェン、チオキサンテン、チアントレン、フェノキサチイン、チオナフテン、イソチアナフテン、チオフテン、チオファントレン、ジベンゾチオフェン、ピロール、ピラゾール、テルラゾール、セレナゾール、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、フラザン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、インドリジン、インドール、イソインドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、カルバゾール、イミダゾール、ナフチリジン、フタラジン、キナゾリン、ベンゾジアゼピン、キノキサリン、シンノリン、キノリン、プテリジン、フェナントリジン、アクリジン、ペリミジン、フェナントロリン、フェナジン、カルボリン、フェノテルラジン、フェノセレナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、アンチリジン、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、又はベンゾイソチアゾール、又はこれら芳香族化合物の芳香環が複数連結された芳香族化合物から1個の水素を除いて生じる基が挙げられる。
【0036】
ここで、LおよびLが複数の芳香族化合物の芳香環が複数連結された連結芳香族基としては、例えば下記で示すような連結様式が挙げられる。
【0037】
【化4】
【0038】
式(4)〜(6)中、Ar11〜Ar16は置換又は未置換の芳香環を示す。芳香環は芳香族炭化水素化合物、又は芳香族複素環化合物の環を意味し、1価以上の基であることができる。芳香環が連結するとは、芳香環が直接結合で結合して連結することを意味する。芳香環が置換の芳香環である場合、置換基が芳香環であることはない。
【0039】
連結芳香族基の具体例としては、例えばビフェニル、ターフェニル、クアテルフェニル、ビピリジン、ビピリミジン、ビトリアジン、ターピリジン、フェニルターフェニル、ビナフタレン、フェニルピリジン、ジフェニルピリジン、フェニルピリミジン、ジフェニルピリミジン、フェニルトリアジン、ジフェニルトリアジン、フェニルナフタレン、ジフェニルナフタレン、カルバゾリルベンゼン、ビスカルバゾリルベンゼン、ビスカルバゾリルトリアジン、ジベンゾフラニルベンゼン、ビスジベンゾフラニルベンゼン、ジベンゾチオフェニルベンゼン、ビスジベンゾチオフェニルベンゼン等から水素を除いて生じる基が挙げられる。
【0040】
一般式(2)中、Zは、炭素数6〜24の芳香族炭化水素基、炭素数3〜16の芳香族複素環基、又はそれらが2〜10連結してなる2価の連結芳香族基を示すが、Nに直接連結する基は炭素数6〜24の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜16の芳香族複素環基である。好ましくは、炭素数6〜18の芳香族炭化水素基、炭素数3〜16の芳香族複素環基、又はそれらが2〜7連結してなる2価の連結芳香族基であり、単環の芳香族複素環基は6員環であることが好ましい。各々の芳香環は独立に置換基を有してもよい。
【0041】
Zの具体例としては、L、Lの具体例で例示した芳香族化合物、又はこれらが複数連結された芳香族化合物等から2個の水素を除いて生じる2価の基が挙げられるが、Nに連結する基は上記したとおりである。
【0042】
ここで、Zが連結芳香族基である場合、例えば下記で示すような連結様式が挙げられる。
【0043】
【化5】
【0044】
ここで、Ar21〜Ar26は置換又は未置換の芳香環を示す。なお、芳香環は芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を構成する芳香族環をいう。また、上記式で示された連結手を有する基に代わり、式(7)ではAr22、式(8)ではAr22、Ar24、式(9)ではAr24、Ar25、Ar26が連結手を有する基となることも可能である。これらの連結手はNに結合するものであるから、その連結手を有する基は、炭素数6〜24の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜16の芳香族複素環基である。
【0045】
pおよびqは0〜7の整数を示す。好ましくは0〜5であり、より好ましくは0〜3である。
【0046】
Ar〜Ar、Z、およびL、Lが、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基又は連結芳香族基である場合、これらの基は置換基を有することができる。この場合、置換基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数7〜38のアラルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、炭素数12〜44のジアリールアミノ基、炭素数14〜76のジアラルキルアミノ基、炭素数2〜20のアシル基、炭素数2〜20のアシルオキシ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニルオキシ基、又は炭素数1〜20のアルキルスルホニル基であるが、好ましくは、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数7〜24のアラルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、又は炭素数12〜36のジアリールアミノ基である。なお、置換基の数は0〜5、好ましくは0〜2が好ましい。
本明細書において、炭素数の計算には置換基の炭素数は含まないと理解されるが、置換基の炭素数は含んだ計算であっても上記炭素数を満足することが好ましい。
【0047】
上記置換基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、イコシル、フェニルメチル、フェニルエチル、フェニルイコシル、ナフチルメチル、アントラニルメチル、フェナンスレニルメチル、ピレニルメチル、ビニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、デセニル、イコセニル、エチニル、プロパルギル、ブチニル、ペンチニル、デシニル、イコシニル、ジメチルアミノ、エチルメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジブチルアミノ、ジペンチニルアミノ、ジデシルアミノ、ジイコシルアミノ、ジフェニルアミノ、ナフチルフェニルアミノ、ジナフチルアミノ、ジアントラニルアミノ、ジフェナンスレニルアミノ、ジピレニルアミノ、ジフェニルメチルアミノ、ジフェニルエチルアミノ、フェニルメチルフェニルエチルアミノ、ジナフチルメチルアミノ、ジアントラニルメチルアミノ、ジフェナンスレニルメチルアミノ、アセチル、プロピオニル、ブチリル、バレリル、ベンゾイル、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、バレリルオキシ、ベンゾイルオキシ、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシ、ヘプトキシ、オクトキシ、ノニロキシ、デシロキシ、ウンデシルオキシ、ドデシロキシ、トリデシロキシ、テトラデシロキシ、ペンタデシロキシ、ヘキサデシロキシ、ヘプタデシロキシ、オクタデシロキシ、ノナデシロキシ、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペントキシカルボニル、メトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、プロポキシカルボニルオキシ、ブトキシカルボニルオキシ、ペントキシカルボニルオキシ、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、ブチルスルホニル、ペンチルスルホニル等が挙げられる。好ましくは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル等のC1〜12のアルキル基、フェニルメチル、フェニルエチル、ナフチルメチル、アントラニルメチル、フェナンスレニルメチル、ピレニルメチル等のC7〜20のアラルキル基、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシ、ヘプトキシ、オクトキシ、ノニロキシ、デシロキシ等のC1〜10のアルコキシ基、ジフェニルアミノ、ナフチルフェニルアミノ、ジナフチルアミノ、ジアントラニルアミノ、ジフェナンスレニルアミノ等のC6〜15の芳香族炭化水素基を2つ有するジアリールアミノ基が挙げられる。
【0048】
R、R’、R〜Rは独立に、水素、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数7〜38のアラルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、炭素数12〜44のジアリールアミノ基、炭素数14〜76のジアラルキルアミノ基、炭素数2〜20のアシル基、炭素数2〜20のアシルオキシ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニルオキシ基、炭素数1〜20のアルキルスルホニル基、炭素数6〜24の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜16の芳香族複素環基であり、好ましくは、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数7〜24のアラルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数12〜36のジアリールアミノ基、炭素数6〜18の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜16の芳香族複素環基であり、より好ましくは、水素、炭素数6〜18の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜16の芳香族複素環基である。なお、水素以外の基である場合は、それぞれの基は置換基を有してもよい。
【0049】
炭素数1〜20のアルキル基、炭素数7〜38のアラルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、炭素数12〜44のジアリールアミノ基、炭素数14〜76のジアラルキルアミノ基、炭素数2〜20のアシル基、炭素数2〜20のアシルオキシ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニルオキシ基、炭素数1〜20のアルキルスルホニル基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、イコシル、フェニルメチル、フェニルエチル、フェニルイコシル、ナフチルメチル、アントラニルメチル、フェナンスレニルメチル、ピレニルメチル、ビニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、デセニル、イコセニル、エチニル、プロパルギル、ブチニル、ペンチニル、デシニル、イコシニル、ジメチルアミノ、エチルメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジブチルアミノ、ジペンチニルアミノ、ジデシルアミノ、ジイコシルアミノ、ジフェニルアミノ、ナフチルフェニルアミノ、ジナフチルアミノ、ジアントラニルアミノ、ジフェナンスレニルアミノ、ジピレニルアミノ、ジフェニルメチルアミノ、ジフェニルエチルアミノ、フェニルメチルフェニルエチルアミノ、ジナフチルメチルアミノ、ジアントラニルメチルアミノ、ジフェナンスレニルメチルアミノ、アセチル、プロピオニル、ブチリル、バレリル、ベンゾイル、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、バレリルオキシ、ベンゾイルオキシ、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシ、ヘプトキシ、オクトキシ、ノニロキシ、デシロキシ、ウンデシロオキシ、ドデシロキシ、トリデシロキシ、テトラデシロキシ、ペンタデシロキシ、ヘキサデシロキシ、ヘプタデシロキシ、オクタデシロキシ、ノナデシロキシ、イコシロキシ、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペントキシカルボニル、メトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、プロポキシカルボニルオキシ、ブトキシカルボニルオキシ、ペントキシカルボニルオキシ、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、ブチルスルホニル、ペンチルスルホニル等が挙げられる。好ましくは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル等の炭素数1〜10のアルキル基、フェニルメチル、フェニルエチル、ナフチルメチル、アントラニルメチル、フェナンスレニルメチル、ピレニルメチル等の炭素数7〜17のアラルキル基、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシ、ヘプトキシ、オクトキシ、ノニロキシ、デシロキシ等の炭素数1〜10のアルコキシ基、ジフェニルアミノ、ナフチルフェニルアミノ、ジナフチルアミノ、ジアントラニルアミノ、ジフェナンスレニルアミノ等の炭素数12〜28のジアリールアミノ基が挙げられる。
【0050】
炭素数6〜24の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜16の芳香族複素環基である場合の具体例としては、ベンゼン、ペンタレン、インデン、ナフタレン、アズレン、インダセン、アセナフチレン、フェナレン、フェナンスレン、アントラセン、トリンデン、フルオランテン、アセフェナントリレン、アセアントリレン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、テトラフェン、テトラセン、プレイアデン、ピセン、ペリレン、ペンタフェン、ペンタセン、テトラフェニレン、コラントリレン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、キサンテン、オキサトレン、ジベンゾフラン、ペリキサンテノキサンテン、チオフェン、チオキサンテン、チアントレン、フェノキサチイン、チオナフテン、イソチアナフテン、チオフテン、チオファントレン、ジベンゾチオフェン、ピロール、ピラゾール、テルラゾール、セレナゾール、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、フラザン、チアジアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、インドリジン、インドール、イソインドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、カルバゾール、イミダゾール、ナフチリジン、フタラジン、キナゾリン、ベンゾジアゼピン、キノキサリン、シンノリン、キノリン、プテリジン、フェナントリジン、アクリジン、ペリミジン、フェナントロリン、フェナジン、カルボリン、フェノテルラジン、フェノセレナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、アンチリジン、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、又はベンゾイソチアゾールから水素を除いて生じる基が挙げられる。好ましくはベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、イソインドール、インダゾール、プリン、イソキノリン、イミダゾール、ナフチリジン、フタラジン、キナゾリン、ベンゾジアゼピン、キノキサリン、シンノリン、キノリン、プテリジン、フェナントリジン、アクリジン、ペリミジン、フェナントロリン、フェナジン、カルボリン、インドール、カルバゾール、ジベンゾフラン、又はジベンゾチオフェンから水素を除いて生じる基が挙げられる。
【0051】
上記R、R’、R〜Rが水素以外の基であって、その基が置換基を有する場合の置換基は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数7〜38のアラルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、炭素数12〜44のジアリールアミノ基、炭素数14〜76のジアラルキルアミノ基、炭素数2〜20のアシル基、炭素数2〜20のアシルオキシ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニルオキシ基、炭素数1〜20のアルキルスルホニル基、炭素数6〜24の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜16の芳香族複素環基である。好ましくは、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数7〜24のアラルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数12〜36のジアリールアミノ基、炭素数6〜18の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜16の芳香族複素環基であり、より好ましくは、炭素数6〜18の芳香族炭化水素基ならびに炭素数3〜16の芳香族複素環基である。なお、置換基の数はR、R’、R〜Rの1つ当たり、0〜3が好ましく、0〜2がより好ましい。
【0052】
上記炭素数1〜20のアルキル基、炭素数7〜38のアラルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、炭素数12〜44のジアリールアミノ基、炭素数14〜76のジアラルキルアミノ基、炭素数2〜20のアシル基、炭素数2〜20のアシルオキシ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニルオキシ基、炭素数1〜20のアルキルスルホニル基、炭素数6〜24の芳香族炭化水素基ならびに炭素数3〜16の芳香族複素環基の具体例は、上記R、R’、R〜Rの具体例と同様である。
【0053】
前記一般式(1)及び(2)で表される化合物の好ましい具体例を以下に示すが、これらに限定するものではない。
【0054】
【化6】
【化7】
【化8】
【0055】
【化9】
【化10】
【化11】
【0056】
【化12】
【化13】
【化14】
【0057】
次に、一般式(3)について説明する。
jは1〜6の整数を示し、好ましくは1〜3である。
【0058】
〜R12は独立に、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアシル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜24の芳香族炭化水素基、又は炭素数3〜16の芳香族複素環基を示すが、好ましくは、炭素数6〜18の芳香族炭化水素基、又は炭素数3〜9の芳香族複素環基である。
上記アルキル基、アシル基、アルコキシ基、芳香族炭化水素基、及び芳香族複素環基の具体例としては、炭素数が上記範囲である他は、前記R、R’、R〜Rの具体例で説明したものと同様である。
【0059】
Arは、水素、炭素数6〜24の芳香族炭化水素基、又は炭素数3〜16の芳香族複素環基を示すが、好ましくは炭素数6〜18の芳香族炭化水素基、又は炭素数3〜9の芳香族複素環基である。そして、少なくとも1つのArは、水素以外の1価の芳香族炭化水素基、又は芳香族複素環基である。jが2以上の整数の場合、Arは独立して、変化してもよい。また、jが2以上の整数の場合、それぞれの6員芳香族環の連結位置はオルト位、メタ位であってもパラ位であっても良く、限定されない。
Arが、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基である場合の具体例としては、前記L、Lの具体例で説明したものと同様である。
【0060】
k、l、m、nは、0≦k+l+m+n≦16を満たす整数を示すが、好ましくは、0≦k+l+m+n≦4である。好ましくは、k、l、m、nは、いずれも0〜2、より好ましくは0〜1である。
【0061】
〜Xは独立に、N、C−R”又はC−を示す。R”は独立に、水素、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数12〜44のジアリールアミノ基であり、好ましくは、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数12〜36のジアリールアミノ基であり、より好ましくは、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基である。R”の具体例は、一般式(1)、(2)で説明したR、R’、R〜Rで説明した該当する具体例と同様である。
【0062】
前記一般式(3)で表される化合物の好ましい具体例を以下に示すが、これらに限定するものではない。
【0063】
【化15】
【化16】
【化17】
【0064】
次に、第1ホスト材料(H1)と第2ホスト材料(H2)について説明する。
上記第1ホスト材料(H1)と第2ホスト材料(H2)のEA差(ΔEA)が0.1eVより離れていると良い結果を与える。ΔEAが0.1eV以下のホスト同士の混合では電荷バランスがほとんど変わらないことから、本来の素子特性を損なうことなく、薄膜安定性を向上できるが、ΔEAが0.1eVより離れているホストを混合することで、逆に電子の流れる経路を混合する2つのホストのEAが大きい方に制限することができ、発光層内の電子の流れを抑制することが出来る。その結果、発光層内への電子の閉じ込めが容易になり、高効率でありながら長寿命な素子を提供することができる。好ましくは、ΔEAが0.2〜1.5eVの範囲にあることがよい。なお、EAの値は、ホスト材料薄膜での、光電子分光法により得られたイオン化ポテンシャルの値と、紫外−可視域の吸収スペクトルを測定し、その吸収端から求めたエネルギーギャップの値を用いて算出することができる。但し、測定方法はこれに限定されない。なお、第1ホスト材料(H1)、第2ホスト材料(H2)又は両者に2以上のホスト材料が含まれる場合は、第1ホスト材料(H1)又は第2ホスト材料(H2)中に、最も多く含まれるホスト材料でEA差を計算する。
【0065】
第1ホスト材料(H1)又は第2ホスト材料(H2)からなる2つのホスト材料は、素子を作成する前に混合して1つの蒸着源を用いて蒸着してもよいし、複数の蒸着源を用いた共蒸着等の操作により素子を作成する時点で混合してもよい。上記ホスト材料の混合比(重量比)について、特に制限はないが、95:5〜5:95の範囲が好ましく、より好ましくは90:10〜10:90の範囲である。なお、ホスト材料として、上記一般式(1)、(2)及び(3)のいずれにも該当しないホスト材料を本発明の効果を阻害しない範囲で使用することもできるが、30wt%以下、好ましくは10wt%以下にとどめることがよい。
【0066】
また、発光層中の第1ホスト材料(H1)と第2ホスト材料(H2)の存在比率が、蒸着前の予備混合比率と比べて変化量が5%以内とすることが望ましい。このためには、両者の気化速度をある範囲に揃えることが有利である。気化速度は、これらが蒸発又は昇華するときの蒸気圧に関係し、更には気化温度(蒸気圧が蒸着時の圧力と一致するときの温度)に関係するので、両者の気化温度差を30℃以内、好ましくは10℃以内とすることがよい。
【0067】
次に、本発明の有機EL素子の構造について、図面を参照しながら説明するが、本発明
の有機EL素子の構造は何ら図示のものに限定されるものではない。
【0068】
(1)有機EL素子の構成
図1は本発明に用いられる一般的な有機EL素子の構造例を模式的に示す断面図であり、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は電子輸送層、7は電子注入層、8は陰極を各々示す。本発明の有機EL素子では、陽極、発光層、電子輸送層及び陰極を必須の層として有するが、必要により他の層を設けてもよい。他の層とは、例えば正孔注入輸送層や電子阻止層及び正孔阻止層が挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、正孔注入輸送層は、正孔注入層と正孔輸送層のいずれか又は両者を意味する。
【0069】
(2)基板
基板1は有機電界発光素子の支持体となるものであり、石英やガラスの板、金属板や金属箔、プラスチックフィルムやシートなどが用いられる。特にガラス板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホンなどの平滑で透明な合成樹脂の板が好ましい。合成樹脂基板を使用する場合にはガスバリア性に留意する必要がある。基板のガスバリア性が小さすぎると、基板を通過した外気により有機電界発光素子が劣化することがあるので好ましくない。このため、合成樹脂基板の少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜等を設けてガスバリア性を確保する方法も好ましい方法の一つである。
【0070】
(3)陽極
基板1上には陽極2が設けられるが、陽極は正孔輸送層への正孔注入の役割を果たすものである。この陽極は、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、インジウム及び/又はスズの酸化物、インジウム及び/又は亜鉛の酸化物などの金属酸化物、ヨウ化銅などのハロゲン化金属、カーボンブラック、あるいは、ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子などにより構成される。陽極の形成は通常、スパッタリング法、真空蒸着法などにより行われることが多い。また、銀などの金属微粒子、ヨウ化銅などの微粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物微粒子、導電性高分子微粉末などの場合には、適当なバインダー樹脂溶液に分散し、基板上に塗布することにより陽極を形成することもできる。更に、導電性高分子の場合は電解重合により直接基板上に薄膜を形成したり、基板1上に導電性高分子を塗布して陽極を形成することもできる。陽極は異なる物質で積層して形成することも可能である。陽極の厚みは、必要とする透明性により異なる。透明性が必要とされる場合は、可視光の透過率を、通常、60%以上、好ましくは80%以上とすることが望ましく、この場合、厚みは、通常、5〜1000nm、好ましくは10〜500nm程度である。不透明でよい場合には、陽極は基板と同一でもよい。また、更には上記の陽極の上に異なる導電材料を積層することも可能である。
【0071】
(4)正孔輸送層
陽極2の上に正孔輸送層4が設けられる。両者の間には、正孔注入層3を設けることもできる。正孔輸送層の材料に要求される条件としては、陽極からの正孔注入効率が高く、かつ、注入された正孔を効率よく輸送することができる材料であることが必要である。そのためには、イオン化ポテンシャルが小さく、可視光の光に対して透明性が高く、しかも正孔移動度が大きく、更に安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時や使用時に発生しにくいことが要求される。また、発光層5に接するために発光層からの発光を消光したり、発光層との間でエキサイプレックスを形成して効率を低下させないことが求められる。上記の一般的要求以外に、車載表示用の応用を考えた場合、素子には更に耐熱性が要求される。従って、Tgとして85℃以上の値を有する材料が望ましい。
【0072】
本発明で使用できる正孔輸送材料としては、従来この層に用いられている公知の化合物を用いることができる。例えば、2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族ジアミン、4,4',4"-トリス(1-ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン等のスターバースト構造を有する芳香族アミン化合物、トリフェニルアミンの四量体からなる芳香族アミン化合物、2,2',7,7'-テトラキス-(ジフェニルアミノ)-9,9'-スピロビフルオレン等のスピロ化合物等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いてもよいし、必要に応じて、各々、混合して用いてもよい。
また、上記の化合物以外に、正孔輸送層の材料として、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルトリフェニルアミン、テトラフェニルベンジジンを含有するポリアリーレンエーテルサルホン等の高分子材料が挙げられる。
【0073】
正孔輸送層を塗布法で形成する場合は、正孔輸送材料を1種又は2種以上と、必要により正孔のトラップにならないバインダー樹脂や塗布性改良剤などの添加剤とを添加し、溶解して塗布溶液を調製し、スピンコート法などの方法により陽極上に塗布し、乾燥して正孔輸送層を形成する。バインダー樹脂としては、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル等が挙げられる。バインダー樹脂は添加量が多いと正孔移動度を低下させるので、少ない方が望ましく、通常、50重量%以下が好ましい。
【0074】
真空蒸着法で形成する場合は、正孔輸送材料を真空容器内に設置されたルツボに入れ、真空容器内を適当な真空ポンプで10-4Pa程度にまで排気した後、ルツボを加熱して、正孔輸送材料を蒸発させ、ルツボと向き合って置かれた、陽極が形成された基板上に正孔輸送層を形成させる。正孔輸送層の膜厚は、通常、1〜300nm、好ましくは 5〜100nmである。この様に薄い膜を一様に形成するためには、一般に真空蒸着法がよく用いられる。
【0075】
(5)正孔注入層
正孔注入の効率を更に向上させ、かつ、有機層全体の陽極への付着力を改善させる目的で、正孔輸送層4と陽極2との間に正孔注入層3を挿入することも行われている。正孔注入層を挿入することで、初期の素子の駆動電圧が下がると同時に、素子を定電流で連続駆動した時の電圧上昇も抑制される効果がある。正孔注入層に用いられる材料に要求される条件としては、陽極とのコンタクトがよく均一な薄膜が形成でき、熱的に安定、すなわち、ガラス転移温度が高く、ガラス転移温度としては100℃以上が要求される。更に、イオン化ポテンシャルが低く陽極からの正孔注入が容易なこと、正孔移動度が大きいことが挙げられる。
【0076】
この目的のために、これまでに銅フタロシアニン等のフタロシアニン化合物、ポリアニリン、ポリチオフェン等の有機化合物や、スパッタ・カーボン膜や、バナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、モリブデン酸化物等の金属酸化物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTCDA)やヘキサニトリルヘキサアザトリフェニレン(HAT)などのP型有機物が報告されている。これらの化合物は、単独で用いてもよいし、必要に応じて、混合して用いてもよい。正孔注入層の場合も、正孔輸送層と同様にして薄膜形成可能であるが、無機物の場合には、更に、スパッタ法や電子ビーム蒸着法、プラズマCVD法が用いられる。以上の様にして形成される正孔注入層の膜厚は、通常、1〜300nm、好ましくは 5〜100nmである。
【0077】
(6)発光層
正孔輸送層4の上に発光層5が設けられる。発光層は、単一の発光層から形成されていてもよいし、複数の発光層を直接接するように積層して構成されていてもよい。発光層は、第1ホスト材料(H1)と第2ホスト材料(H2)の2つのホスト材料と蛍光性発光材料又は燐光性発光材料とから構成され、2つのホスト材料は、一般式(1)又は(2)の化合物と一般式(1)〜(3)の化合物の組み合わせが良く、特に一般式(1)又は(2)の化合物と一般式(3)の組み合わせがよい。
【0078】
ホスト材料に添加する蛍光性発光材料としては、ペリレン、ルブレンなどの縮合環誘導体、キナクリドン誘導体、フェノキサゾン660、DCM1、ペリノン、クマリン誘導体、ピロメテン(ジアザインダセン)誘導体、シアニン色素などが使用できる。
【0079】
発光性ドーパント材料として蛍光発光ドーパントを使用する場合、蛍光発光ドーパントとしては、特に限定されないが例えばベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、スチリルベンゼン誘導体、ポリフェニル誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クマリン誘導体、縮合芳香族化合物、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサジン誘導体、アルダジン誘導体、ピラリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、キナクリドン誘導体、ピロロピリジン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、スチリルアミン誘導体、ジケトピロロピロール誘導体、芳香族ジメチリジン化合物、8−キノリノール誘導体の金属錯体やピロメテン誘導体の金属錯体、希土類錯体、遷移金属錯体に代表される各種金属錯体等、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン誘導体等が挙げられる。好ましくは縮合芳香族誘導体、スチリル誘導体、ジケトピロロピロール誘導体、オキサジン誘導体、ピロメテン金属錯体、遷移金属錯体、又はランタノイド錯体が挙げられ、より好ましくはナフタセン、ピレン、クリセン、トリフェニレン、ベンゾ[c]フェナントレン、ベンゾ[a]アントラセン、ペンタセン、ペリレン、フルオランテン、アセナフソフルオランテン、ジベンゾ[a,j]アントラセン、ジベンゾ[a,h]アントラセン、ベンゾ[a]ナフタセン、ヘキサセン、ナフト[2,1-f]イソキノリン、α‐ナフタフェナントリジン、フェナントロオキサゾール、キノリノ[6,5-f]キノリン、ベンゾチオファントレン等が挙げられる。これらは置換基としてアルキル基、アリール基、芳香族複素環基、又はジアリールアミノ基を有しても良い。
【0080】
蛍光発光ドーパント材料は、発光層中に1種類のみが含有されても良いし、2種類以上を含有しても良い。蛍光発光ドーパント材料を2種類以上含有する場合には、蛍光発光ドーパント材料の総重量がホスト材料に対して20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。
【0081】
有機発光性ドーパント材料として熱活性化遅延蛍光発光ドーパントを使用する場合、熱活性化遅延蛍光発光ドーパントとしては、特に限定されないがスズ錯体や銅錯体等の金属錯体や、WO2011/070963Aに記載のインドロカルバゾール誘導体、Nature 2012,492,234に記載のシアノベンゼン誘導体、カルバゾール誘導体、Nature Photonics 2014,8,326に記載のフェナジン誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、スルホン誘導体、フェノキサジン誘導体、アクリジン誘導体等が挙げられる。
【0082】
熱活性化遅延蛍光発光ドーパント材料は、特に限定されるものではないが、具体的には以下のような例が挙げられる。
【0083】
【化18】
【0084】
熱活性化遅延蛍光発光ドーパント材料は、発光層中に1種類のみが含有されてもよいし、2種類以上を含有してもよい。また、熱活性化遅延蛍光発光ドーパントは燐光発光ドーパントや蛍光発光ドーパントと混合して用いてもよい。熱活性化遅延蛍光発光ドーパント材料を含む2種類以上の発光ドーパントを含有する場合には、発光ドーパント材料の総重量がホスト材料に対して50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましい。
【0085】
ホスト材料に添加する燐光性発光材料としては、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金及び金などから選ばれる少なくとも一つの金属を含む有機金属錯体を含有するものがよい。具体的には以下の文献に記載されている化合物が挙げられるが、これらの化合物に限定されない。
【0086】
WO2009-073245A、WO2009-046266 A、WO2007-095118号A、WO2008-156879 A、WO2008-140657 A、US2008/261076 A、特表2008-542203号公報、WO2008-054584号公報、特表2008-505925号公報、特表2007-522126号公報、特表2004-506305号公報等。
【0087】
好ましい燐光発光ドーパントとしては、Ir等の貴金属元素を中心金属として有するIr(ppy)3等の錯体類、Ir(bt)2・acac3等の錯体類、PtOEt3等の錯体類が挙げられる。
これらの錯体類の具体例を以下に示すが、下記の化合物に限定されない。
【0088】
【化19】

【化20】
【0089】
前記燐光発光ドーパントが発光層中に含有される量は、2〜40重量%、好ましくは5〜30重量%の範囲にあることがよい。
【0090】
発光層の膜厚については特に制限はないが、通常、1〜300nm、好ましくは5〜100nmであり、正孔輸送層と同様の方法にて薄膜形成される。
【0091】
(7)電子輸送層
素子の発光効率を更に向上させることを目的として、発光層5と陰極8の間に、電子輸送層6が設けられる。電子輸送層としては、陰極からスムーズに電子を注入できる電子輸送性材料が好ましく、一般的に使用される任意の材料を用いることができる。このような条件を満たす電子輸送材料としては、Alq3などの金属錯体、10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルビフェニル誘導体、シロール誘導体、3−又は5−ヒドロキシフラボン金属錯体、ベンズオキサゾール金属錯体、ベンゾチアゾール金属錯体、トリスベンズイミダゾリルベンゼン、キノキサリン化合物、フェナントロリン誘導体、2−t−ブチル−9,10−N,N'−ジシアノアントラキノンジイミン、n型水素化非晶質炭化シリコン、n型硫化亜鉛、n型セレン化亜鉛などが挙げられる。
【0092】
電子輸送層の膜厚は、通常、1〜300nm、好ましくは5〜100 nmである。電子輸送層は、正孔輸送層と同様にして塗布法あるいは真空蒸着法により発光層上に積層することにより形成される。通常は、真空蒸着法が用いられる。
【0093】
(8)陰極
陰極8は、電子輸送層6に電子を注入する役割を果たす。陰極として用いられる材料は、前記陽極2に使用される材料を用いることが可能であるが、効率よく電子注入を行なうには、仕事関数の低い金属が好ましく、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の適当な金属又はそれらの合金が用いられる。具体例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム−リチウム合金等の低仕事関数合金電極が挙げられる。
陰極の膜厚は通常、陽極と同様である。低仕事関数金属からなる陰極を保護する目的で、この上に更に、仕事関数が高く大気に対して安定な金属層を積層することは素子の安定性を増す。この目的のために、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金等の金属が使われる。
更に、電子注入層7として、陰極8と電子輸送層6の間にLiF 、MgF2、Li2O等の極薄絶縁膜(0.1〜5nm)を挿入することも素子の効率を向上させる有効な方法である。
【0094】
なお、図1とは逆の構造、すなわち、基板1上に陰極8、電子注入層7、電子輸送層6、発光層5、正孔輸送層4、正孔注入層3、陽極2の順に積層することも可能であり、既述したように少なくとも一方が透明性の高い2枚の基板の間に有機EL素子を設けることも可能である。この場合も、必要により層を追加したり、省略したりすることが可能である。
【0095】
本発明の有機EL素子は、単一の素子、アレイ状に配置された構造からなる素子、陽極と陰極がX−Yマトリックス状に配置された構造のいずれでもあることができる。本発明の有機EL素子によれば、発光層に特定2種の化合物を含む混合ホストを使用することで、低い電圧であっても発光効率が高く、かつ駆動安定性においても大きく改善された素子が得られ、フルカラーあるいはマルチカラーのパネルへの応用において優れた性能を発揮できる。
【0096】
以下、本発明を実施例によって更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、その要旨を越えない限りにおいて、種々の形態で実施することが可能である。
【実施例】
【0097】
実施例1
膜厚150nmのITOからなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度4.0×10−4Paで積層させた。まず、ITO上に正孔注入層として銅フタロシアニン(CuPc)を20nmの厚さに形成し、次に正孔輸送層として4,4−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)を20nmの厚さに形成した。次に発光層として、第1ホスト(H1)として化合物1−21を、第2ホスト(H2)として化合物3−14を、発光層ゲストとしてトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)(Ir(PPy))をそれぞれ異なる蒸着源から共蒸着し、30nmの厚さに形成した。この時、第1ホストと第2ホストとIr(PPy)の蒸着速度比(気化物の体積速度比)は、47:47:6であった。次に、正孔阻止層としてアルミニウム(III)ビス(2−メチル−8−キノリナト)4−フェニルフェノラート(BAlq)を10nmの厚さに形成した。次に、電子輸送層としてトリス−(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(III)(Alq)を40nmの厚さに形成した。更に、電子輸送層上に、電子注入層としてフッ化リチウム(LiF)を0.5nmの厚さに形成した。最後に、電子注入層上に、陰極としてアルミニウム(Al)を100nmの厚さに形成し、有機EL素子を作製した。
得られた有機EL素子に外部電源を接続し直流電圧を印加したところ、極大波長517nmの発光スペクトルが観測され、Ir(PPy)からの発光が得られていることがわかった。表1に作製した有機EL素子の輝度、電流効率、電力効率及び輝度10%低下寿命を示す。
なお、表1に示した各化合物のEAは、光電子分光法(理研計器社製、AC−2)で 測定したIP(イオン化ポテンシャル)と、UV吸収スペクトルの吸収端から見積もったエネルギーギャップの差から求めた。特段の断りがない限り、表2、3、6も同様である。
【0098】
実施例2〜6
実施例1において、発光層第2ホストとして表1に記載した化合物を用いた以外は実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。得られた有機EL素子に外部電源を接続し直流電圧を印加したところ、いずれの有機EL素子からも極大波長517nmの発光スペクトルが観測され、Ir(PPy)からの発光が得られていることがわかった。表1に作製した有機EL素子の輝度、電流効率、電力効率及び輝度10%低下寿命を示す。
【0099】
比較例1〜4
実施例1において、発光層ホストとして表1に記載した化合物を単独で用いた以外は実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。なお、ホスト量は、実施例1における第1ホストと第2ホストの合計と同じ量とし、ゲスト量は同様とした。得られた有機EL素子に電源を接続し直流電圧を印加したところ、いずれの有機EL素子からも極大波長517nmの発光スペクトルが観測され、Ir(PPy)からの発光が得られていることがわかった。
【0100】
比較例5
膜厚150nmのITOからなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度4.0×10−4 Paで積層させた。まず、ITO上に正孔注入層としてCuPcを20nmの厚さに形成し、次に正孔輸送層としてNPBを20nmの厚さに形成した。次に発光層として、第1ホストとして化合物1−21を、第2ホストとして下記化合物Aを、発光層ゲストとしてIr(PPy)をそれぞれ異なる蒸着源から共蒸着し、30nmの厚さに形成した。この時、第1ホストと第2ホストとIr(PPy)の蒸着速度比は、47:47:6であった。次に、正孔阻止層としてBAlqを10nmの厚さに形成した。次に、電子輸送層としてAlqを40nmの厚さに形成した。更に、電子輸送層上に、電子注入層としてフッ化リチウム(LiF)を0.5nmの厚さに形成した。最後に、電子注入層上に、陰極としてアルミニウム(Al)を100nmの厚さに形成し、有機EL素子を作製した。
【0101】
【化21】
【0102】
比較例6
発光層ホストとして化合物Aを単独で用いた有機EL素子を比較例5と同様に作製した。
【0103】
得られた有機EL素子に外部電源を接続し直流電圧を印加したところ、いずれの有機EL素子から極大波長517nmの発光スペクトルが観測され、Ir(PPy)からの発光が得られていることがわかった。表2に作製した有機EL素子の輝度、電流効率、電力効率及び輝度10%低下寿命を示す。
【0104】
作製した有機EL素子の輝度、電流効率、電力効率及び輝度10%低下寿命を表1に示す。輝度、電流効率、電力効率は、駆動電流20mA/cm時の値であり、初期特性である。輝度10%低下時間は、駆動電流40mA/cm時の値を、加速係数1.8で初期輝度9000cd/mに換算したときの値であり、寿命特性である。第1ホスト(H1)及び第2ホスト(H2)に使用した化合物No.は上記化学式に付した番号である。特段の断りがない限り、表2〜6も同様である。
【0105】
【表1】
【0106】
表1において、実施例1〜6と比較例1〜4とを比較すると、特定骨格を有する2種類の化合物を発光層ホストとして用いることにより、輝度、電流効率、電力効率及び輝度10%低下寿命が著しく伸長することがわかる。これらの結果より、本発明によれば、高効率、かつ、良好な寿命特性を示す有機EL燐光素子を実現可能であることが明らかとなった。
【0107】
実施例7
膜厚150nmのITOからなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度4.0×10−4Paで積層させた。まず、ITO上に正孔注入層としてCuPcを20nmの厚さに形成し、次に正孔輸送層としてNPBを20nmの厚さに形成した。次に発光層として、第1ホストとして化合物1−18を、第2ホストとして化合物3−14を、発光層ゲストとしてIr(PPy)をそれぞれ異なる蒸着源から共蒸着し、30nmの厚さに形成した。この時、第1ホストと第2ホストとIr(PPy)の蒸着速度比は、47:47:6であった。次に、正孔阻止層としてBAlqを10nmの厚さに形成した。次に、電子輸送層としてAlqを40nmの厚さに形成した。更に、電子輸送層上に、電子注入層としてフッ化リチウム(LiF)を0.5nmの厚さに形成した。最後に、電子注入層上に、陰極としてアルミニウム(Al)を100nmの厚さに形成し、有機EL素子を作製した。
得られた有機EL素子に外部電源を接続し直流電圧を印加したところ、極大波長517nmの発光スペクトルが観測され、Ir(PPy)からの発光が得られていることがわかった。
【0108】
実施例8〜12
発光層第2ホストとして表2に記載した化合物を用いた以外は実施例7と同様にして有機EL素子を作製した。得られた有機EL素子に外部電源を接続し直流電圧を印加したところ、いずれの有機EL素子からも極大波長517nmの発光スペクトルが観測され、Ir(PPy)からの発光が得られていることがわかった。
【0109】
比較例7〜10
発光層ホストとして表2に記載した化合物を単独で用いた以外は実施例7と同様にして有機EL素子を作製した。なお、ホスト量は、実施例4における第1ホストと2ホストの合計と同じ量とした。得られた有機EL素子に外部電源を接続し直流電圧を印加したところ、いずれの有機EL素子からも極大波長517nmの発光スペクトルが観測され、Ir(PPy)からの発光が得られていることがわかった。
【0110】
作製した有機EL素子の輝度、電流効率、電力効率及び輝度10%低下寿命を表2に示す。
【0111】
【表2】
【0112】
表2において、実施例7〜12と比較例7〜10とを比較すると、特定骨格を有する2種類の化合物を発光層ホストとして用いることにより、輝度、電流効率、電力効率及び輝度10%低下寿命が著しく伸長することがわかる。
【0113】
実施例13
膜厚150nmのITOからなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度4.0×10−4Paで積層させた。まず、ITO上に正孔注入層としてCuPcを20nmの厚さに形成し、次に正孔輸送層としてNPBを20nmの厚さに形成した。次に発光層として、第1ホストとして化合物2−5を、第2ホストとして化合物3−14を、発光層ゲストとしてIr(PPy)をそれぞれ異なる蒸着源から共蒸着し、30nmの厚さに形成した。この時、第1ホストと第2ホストとIr(PPy)の蒸着速度比は、47:47:6であった。次に、正孔阻止層としてBAlqを10nmの厚さに形成した。次に、電子輸送層としてAlqを40nmの厚さに形成した。更に、電子輸送層上に、電子注入層としてフッ化リチウム(LiF)を0.5nmの厚さに形成した。最後に、電子注入層上に、陰極としてアルミニウム(Al)を100nmの厚さに形成し、有機EL素子を作製した。
得られた有機EL素子に外部電源を接続し直流電圧を印加したところ、極大波長517nmの発光スペクトルが観測され、Ir(PPy)からの発光が得られていることがわかった。
【0114】
実施例14〜18
発光層第2ホストとして表3に記載した化合物を用いた以外は実施例13と同様にして有機EL素子を作製した。得られた有機EL素子に外部電源を接続し直流電圧を印加したところ、いずれの有機EL素子からも極大波長517nmの発光スペクトルが観測され、Ir(PPy)からの発光が得られていることがわかった。
【0115】
比較例11〜14
発光層ホストとして表3に記載した化合物を単独で用いた以外は実施例13と同様にして有機EL素子を作製した。なお、ホスト量は、実施例7における第1ホストと第2ホストの合計と同じ量とした。得られた有機EL素子に外部電源を接続し直流電圧を印加したところ、いずれの有機EL素子からも極大波長517nmの発光スペクトルが観測され、Ir(PPy)からの発光が得られていることがわかった。
【0116】
作製した有機EL素子の輝度、電流効率、電力効率及び輝度10%低下寿命を表3に示す。
【0117】
【表3】
【0118】
表3から実施例13〜18は輝度、電流効率、電力効率及び輝度10%低下寿命が著しく優れることが分かる。
【0119】
参考例1
真空蒸着法にて、ガラス基板上に化合物1−21を、真空度4.0×10−4 Pa、蒸着速度2Å/秒で蒸着したところ、このときの温度(気化温度)は303℃であった。
同様にして表4に記載した化合物について、気化温度を測定した結果を表4に示す。
【0120】
【表4】
【0121】
参考例21
第1ホスト(H1)として化合物1−21を、第2ホスト(H2)として化合物3−14を、重量比1:1で予備混合した。その混合物をテトラヒドロフランに溶解し、液体クロマトグラフィーにて分離し、紫外可視分光検出器を用いて各成分のピークを検出した。検出したピーク面積値から、化合物1−21と3−14の混合比率(ピーク面積比)を求めたところ、それぞれ48.2%、51.8%(蒸着前の混合比率)であった。
上記混合物を真空蒸着法にて、一つの蒸着源からガラス基板上に、真空度4.0×10−4 Pa、蒸着速度2Å/秒で500nm製膜した。得られた蒸着膜を、テトラヒドロフランを用いてガラス基板から抽出し、上記と同様に液体クロマトグラフィーにて、化合物1−21と3−14の混合比率(ピーク面積比)を求めたところ、それぞれ49.3%、50.7%(蒸着膜の混合比率)であった。混合比率の変化量(ΔR)は、1.1%となる。なお、混合比率の変化量は、第1ホスト又は第2ホストの蒸着前の%と、蒸着後の%の差で求める。第1ホストで計算すると、48.2%-49.3%=-1.1%となり、この絶対値が変化量となる。
【0122】
参考例22〜28
同様にして、第1ホスト、第2ホストとして、それぞれ表5に示した化合物を用いて、混合比率変化量を算出した。表5に蒸着前の混合比率、蒸着膜の混合比率、混合比率の変化量(ΔR)、および表4より計算した第一化合物と第二化合物の気化温度の差(ΔT)を示す。
【0123】
【表5】
【0124】
表5にから気化温度差が30℃以内の2種類の化合物を予備混合し、一つの蒸着源から製膜することで、混合比率の変化量が5%以内で製膜可能であることが明らかである。
【0125】
実施例19
膜厚150nmのITOからなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度4.0×10−4Paで積層させた。まず、ITO上に正孔注入層としてCuPcを20nmの厚さに形成し、次に正孔輸送層としてNPBを20nmの厚さに形成した。次に発光層として、化合物1−21と化合物3−14を予備混合した混合ホストと、発光層ゲストとしてIr(PPy)をそれぞれ異なる蒸着源から共蒸着し、30nmの厚さに形成した。この時、混合ホストとIr(PPy)の蒸着速度比は、94:6であった。次に、正孔阻止層としてBAlqを10nmの厚さに形成した。次に、電子輸送層としてAlqを40nmの厚さに形成した。更に、電子輸送層上に、電子注入層としてフッ化リチウム(LiF)を0.5nmの厚さに形成した。最後に、電子注入層上に、陰極としてアルミニウム(Al)を100nmの厚さに形成し、有機EL素子を作製した。
得られた有機EL素子に外部電源を接続し直流電圧を印加したところ、極大波長517nmの発光スペクトルが観測され、Ir(PPy)からの発光が得られていることがわかった。
【0126】
実施例20〜22
混合ホストとして表6に記載の化合物を用いた以外は実施例19と同様にして有機EL素子を作製した。得られた有機EL素子に外部電源を接続し直流電圧を印加したところ、いずれの有機EL素子からも極大波長517nmの発光スペクトルが観測され、Ir(PPy)からの発光が得られていることがわかった。
【0127】
比較例17〜19
発光層ホストとして表6に記載の化合物を単独で用いた以外は実施例19と同様にして有機EL素子を作製した。なお、ホスト量は、実施例19における混合ホストと同じ量とした。得られた有機EL素子に外部電源を接続し直流電圧を印加したところ、いずれの有機EL素子からも極大波長517nmの発光スペクトルが観測され、Ir(PPy)からの発光が得られていることがわかった。
【0128】
表6に作製した有機EL素子の輝度、電流効率、電力効率及び輝度10%低下寿命を示す。
【0129】
【表6】
【0130】
表6から、特定骨格を有する2種類の化合物を予備混合し、混合ホストとして用いることにより、輝度、電流効率、電力効率及び輝度10%低下寿命が著しく伸長することがわかる。
【0131】
実施例及び比較例で使用した化合物の電子親和力(EA)を、表7に示す。
【0132】
【表7】

【産業上の利用の可能性】
【0133】
本発明の有機EL素子は、発光層内からのエネルギー流出が抑制され、高効率かつ長寿命を達成でき、フラットパネルディスプレイ(携帯電話表示素子、車載表示素子、OAコンピュータ表示素子やテレビ等)、面発光体としての特徴を生かした光源(照明、複写機の光源、液晶ディスプレイや計器類のバックライト光源)、表示板や標識灯等への応用において、その技術的価値は大きいものである。
【符号の説明】
【0134】
1 基板、 2 陽極、 3 正孔注入層、 4 正孔輸送層、
5 発光層、 6 電子輸送層、 7 電子注入層、 8 陰極
図1