【文献】
Koen P.Vercruysse,et al.,”Dark− or Light−Colored Melanins: Generating Pigments Using Fe2+ and H2O2.”,ChemRxiv,Biological and Medicinal Chemistry,2017.12.01,p.1−14 URL:<https://chemrxiv.org/articles/Dark−_or_Light−Colored_Melanins_Generating_Pigments_Using_Fe2_and_H2O2/5645674>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、浸透速度法による水との接触角が30°〜75°の範囲にあり、かつ、1−ブロモナフタレンとの接触角が30°〜75°の範囲にあることを特徴とするジオキサジン顔料である。このような本発明のジオキサジン顔料によれば、印刷インキや塗料として使用した際にも優れた流動性を示す。
【0009】
<ジオキサジン顔料の説明>
本発明に用いるジオキサジン顔料は、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット37、C.I.ピグメントブルー80などが挙げられる。特に、工業的にはC.I.ピグメントバイオレット23が重要で、下記化学構造式(I)で表される。このようなC.I.ピグメントバイオレット23は、市販品(たとえば、FASTOGEN SUPER VIOLET シリーズ(DIC株式会社製、BET法による比表面積:50〜120m
2/g)などが挙げられる)を用いても良いし、公知慣用の方法で製造して用いても良い。もちろん製造後に適宜公知の処理を加えて用いても良い。C.I.ピグメントバイオレット23のBET法による比表面積は、透明性を保ちつつ過度に微細な粒子の凝集とそれに伴う増粘を防ぐ観点から、60〜80m
2/gの範囲にあるものが好ましい。
【0011】
<浸透速度法による接触角の説明>
本発明者らは、後述する浸透速度法による水との接触角が30°〜75°の範囲にあり、かつ、1−ブロモナフタレンとの接触角が30°〜75°の範囲にあるジオキサジン顔料を調製することにより、ニトロセルロース(以下、NCと表記する)系インキ、ポリウレタン(以下、PUと表記する)系インキにおいて、優れた流動性が得られること、すなわち初期粘度、貯蔵安定性のいずれにおいても顕著に優れた増粘抑制が得られることを見出した。
【0012】
上記構成の着想に際し、本発明者らは、各種印刷インキ調製時に顔料が分散する工程に着目した。
【0013】
ジオキサジン顔料の分散工程を詳しく見ると、ジオキサジン顔料粒子の凝集体を溶剤に濡らす過程と、続いて、凝集体を機械的に顔料粒子まで解砕する過程と、最後に、再凝集を防ぐため顔料粒子表面に樹脂などを吸着させる分散安定化の過程がある。よって、顔料の溶剤に対する濡れが速いほど、次の解砕の過程へ移行する時間が短縮されるため、分散は速く進行することになる。たとえばPUインキにおいては、溶剤への濡れが速く分散安定化まで進み易くなると、PUインキの初期粘度が低下し、貯蔵安定性も良好となる。また、顔料が充分に分散され顔料粒子の凝集体が減少するため、印刷物の光沢が増す。
【0014】
NCインキにおいても同様で、濡れ性の向上により分散が速く進み、貯蔵安定性が良好となる。ここで、NCインキを例に詳述するとすれば、NCインキの溶剤としては、NCをよく溶解し、かつ人体への安全性が比較的高いエタノールがよく用いられる。また、エタノールを含むNCインキを酢酸エチルで希釈し、溶剤分の沸点を下げることでインキの乾燥を速め、高速で印刷する手法が知られている。ジオキサジン顔料のNCインキを酢酸エチルで希釈するとき、通常、ジオキサジン顔料は、酢酸エチルとの濡れ性が低く親和性が低いため、顔料粒子の表面自由エネルギーが大きくなり不安定化する。よって、表面自由エネルギーを減少させるため、顔料粒子の表面積を減らそうとする力が働き、顔料粒子の凝集が生じると考えられる。このため、本発明者らは、酢酸エチルとエタノールに対するジオキサジン顔料の親和性を適切にすれば、エタノールを主溶剤とするNCインキの貯蔵安定性も、酢酸エチルで希釈後の流動性も両方保たれると考えた。そこで、それぞれの媒体に対する接触角を試行錯誤で検討したところ、接触角を上記範囲に調製したジオキサジン顔料が、上記推定メカニズムでいうところの「酢酸エチルとエタノールに対するジオキサジン顔料の親和性」が適切なところとなり、良好な流動性を維持できることを見出した。
【0015】
接触角の測定は、浸透速度法により、次のようにして行った。本明細書における接触角の数値は、ここに記載の方法により求められたものである。自動表面張力計 Processor Tensiometer K12(KRUSS社製)を使用した。ジオキサジン顔料1.5gを測定ホルダーに充填しホルダー下部より測定液を浸透させ、自動表面張力計の粉体ぬれ速度測定用オプションでぬれ速度を測定した。まず、n−ヘキサンのぬれ速度を測定し、浸透接触角を0°と仮定して充填定数を測定した。この測定した充填定数に基づき、各ジオキサジン顔料の充填状態が同等となるよう基準化した。続いて、水及び1−ブロモナフタレンそれぞれのぬれ速度の測定を行い、Washburn式によりジオキサジン顔料の水及び1−ブロモナフタレンとの接触角をそれぞれ算出した。
【0016】
ジオキサジン顔料など粉体の接触角を測定する他の方法として、液滴法がある。これは、粉体を錠剤成型器を用いて錠剤化し、平板となした試料の表面上に測定溶媒を滴下し、試料と溶媒のなす接触角を測定する方法である。しかし、錠剤とした試料の凹凸が接触角に影響を与えるため、液滴法による粉体の接触角測定は誤差が比較的大きい。また、多くの有機溶剤の粘度は小さいため、錠剤上の有機溶剤の液滴が扁平型となり接触角が小さいため、試料間の接触角の差が出にくい。このような中、上記浸透速度法による接触角測定であれば、液滴法のこれら欠点を解消することができる。なお、上記誤差の関係などから、浸透速度法による接触角と、液滴法による接触角は必ずしも一致しない。
【0017】
上記の物性(特定の接触角)を示すジオキサジン顔料は、具体的には、ジオキサジン顔料粒子の表面に親水性の官能基、疎水性の官能基を共に有していることが好ましい。前記官能基については、水及び1−ブロモナフタレンに対する接触角が上記特定範囲を満たす限り特に限定されないが、ジオキサジン顔料の表面に水酸基及びカルボニル基を少なくとも1つずつ有するジオキサジン顔料であれば、インキ調製に用いた際に、特に優れた流動性を示す。水酸基はエタノールなど親水溶剤との濡れ性を、カルボニル基は酢酸エチルなど疎水性溶媒との濡れ性を、それぞれ改善することに寄与すると推定する。また、前記官能基は、分散工程において顔料が溶媒に濡れることに寄与した後、分散安定化工程においてNCやPUなどバインダー樹脂と相互作用し、顔料粒子表面にバインダー樹脂を吸着させさせることで、分散安定化にも寄与する。
【0018】
一般的に有機顔料は色素分子が数万から百万以上結合した粒子であり、ジオキサジン顔料も同様である。顔料の溶剤への濡れ性を考えると、濡れ性に関わる顔料粒子の部位は、溶剤に直接触れる顔料粒子の最表面である。よって、顔料粒子表面にさえ前記官能基が存在すればよい。前記官能基は、ジオキサジン顔料粒子の最表面の色素分子に置換する。色素分子における官能基の置換位置を特定することは困難であるが、主に芳香環に置換すると推定する。このとき、一つの色素分子に親水性の官能基と疎水性の官能基が存在しても良いし、親水性官能基を有する色素分子と疎水性官能基を有する色素分子が、別々に顔料粒子表面に存在しても良い。
【0019】
ここで、親水性官能基の例としては、水酸基やアミノ基、スルホ基、チオール基、カルボキシル基、またはこれらの塩等が挙げられる。
また、疎水性官能基の例としては、ジオキサジン顔料粒子上の炭素原子が二重結合を介して酸素原子と結合したカルボニル基や、その他カルボニル基を有する官能基、具体的にはケトン基、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合等が挙げられる。
【0020】
<製造方法>
ここで、浸透速度法による水との接触角が30°〜75°の範囲にあり、かつ、1−ブロモナフタレンとの接触角が30°〜75°の範囲にあるジオキサジン顔料を調製する方法の一例を示す。ただし、本発明の思想は上述の通りであり、上記接触角の数値範囲に入るように調製することができる限りにおいては、いずれの方法を採用しても良い。
【0021】
本発明のジオキサジン顔料を簡便に得る方法の一例として以下に述べるが、本発明はこれらに限定して解釈されるべきものではない。本発明のジオキサジン顔料は、原料となるジオキサジン顔料を溶媒に添加、撹拌し顔料スラリーを得る顔料スラリー製造工程と、顔料スラリーに鉄塩と過酸化水素を添加、撹拌し顔料表面を処理する顔料表面処理工程と、反応液を濾過し、濾物を乾燥、粉砕させる工程を経て得られる。
【0022】
原料となるジオキサジン顔料としては、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット37、C.I.ピグメントブルー80などが挙げられる。特に、着色力が高く、耐候性の良好なC.I.ピグメントバイオレット23が工業的に好ましい。原料となるジオキサジン顔料は、市販もしくは公知慣用の方法で製造したジオキサジン顔料を使用することができ、公知慣用の方法としては、例えば、Wiley−VCH Verlag−GmbH出版(2002年)High Performance Pigments,186ページ記載の方法を用いることができる。原料となるジオキサジン顔料は無処理のジオキサジン顔料であっても良いし、ジオキサジン顔料スルホン酸誘導体、アミノ基含有ジオキサジン顔料誘導体、フタルイミドメチル基含有ジオキサジン顔料誘導体などの顔料誘導体、分散剤など高分子、界面活性剤、ロジンなどで顔料粒子表面を処理したジオキサジン顔料であっても良い。また、顔料表面処理工程の後に、ジオキサジン顔料スルホン酸誘導体、アミノ基含有ジオキサジン顔料誘導体、フタルイミドメチル基含有ジオキサジン顔料誘導体などの顔料誘導体、分散剤など高分子、界面活性剤、ロジンなど、他の顔料粒子表面処理を行っても良い。
【0023】
原料となるジオキサジン顔料として、顔料化工程を経て顔料粒子径および粒子形を整えたジオキサジン顔料を用いても良いし、顔料粒子径および粒子形の不揃いなジオキサジン顔料クルードを使用し、顔料表面処理工程後に顔料化工程を行い整えても良い。顔料化工程としては、例えば、アシッドペースト法、アシッドスラリー法、ドライミリング法、ソルベント法、ソルベントミリング法などの中から、一つもしくは複数組み合わせて選択することができる。
【0024】
溶媒としては、水および/または有機溶剤を使用することができ、有機溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノールなどを用いることができる。特に、経済性の点から水が好ましい。また、水としては、純水であっても工業用水であっても良く、さらに酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、クエン酸リン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、酒石酸緩衝液など緩衝液を使用しても良い。
【0025】
溶媒100質量部に対し、原料となるジオキサジン顔料の添加量は1〜30質量部が好ましく、添加量が少ないときは生産性が低く、添加量が多いときは顔料スラリーが高粘度となり撹拌に過大なエネルギーを要するので、2〜20質量部がより好ましく、3〜12質量部が特に好ましい。
【0026】
鉄塩としては、硫酸鉄、塩化鉄、フッ化鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄、硝酸鉄、リン酸鉄、ホウ酸鉄、炭酸鉄、酢酸鉄などを用いることができる。経済性の点から、硫酸鉄、塩化鉄、硝酸鉄が好ましい。鉄としては二価の鉄を用いることができる。また、鉄塩は無水物であっても、水和物であってもよい。
【0027】
顔料スラリー製造工程における温度としては、0℃〜100℃が好ましい。また、顔料表面処理工程における温度は、0℃〜100℃が好ましく、低温では顔料表面処理反応の反応速度が遅く、高温では過酸化水素の分解が促進されることから、10℃〜90℃がより好ましく、20℃〜80℃が特に好ましい。
【0028】
顔料表面処理工程の反応時間としては、10分間〜2時間が好ましい。
【0029】
顔料表面処理工程における処理液のpHは、アルカリ性で鉄イオンが沈殿するため、pH1〜7が好ましい。
【0030】
過酸化水素は、原料のジオキサジン顔料に対し、1〜100質量%添加することが好ましい。過酸化水素の添加量が少量のときジオキサジン顔料の表面処理が不充分となり、また、顔料粒子の表面は有限であり過剰な添加は経済的に不利であることから、3〜90質量%がより好ましく、6〜80質量%が特に好ましい。
【0031】
鉄塩は、原料のジオキサジン顔料に対し、1〜30質量%添加することが好ましい。鉄塩は顔料表面処理反応の触媒として働くことから、鉄塩の添加量が少量のとき表面処理反応の反応速度が遅く、過剰な添加は過酸化水素の分解を促し経済的に不利であることから、2〜15質量%が好ましい。
【0032】
鉄塩と過酸化水素は、顔料スラリーに同時に添加しても良いし、別々に添加しても良い。同時に添加する場合、予め過酸化水素と鉄塩を混合すると過酸化水素が分解するため、顔料スラリー中で混合する。別々に添加する場合、鉄塩を先に添加しても良いし、過酸化水素を先に添加しても良い。また、過酸化水素を滴下して加えても良いし、一括で添加しても良い。
【0033】
上記製法によれば、ジオキサジン顔料粒子表面に水酸基およびカルボニル基が生じ、本発明のもう一つの態様である、ジオキサジン顔料の表面に水酸基及びカルボニル基を少なくとも1つずつ有することを特徴とするジオキサジン顔料が得られる。
【0034】
たとえば、上記製法中、溶媒の種類、処理温度、鉄塩および過酸化水素の量などのジオキサジン顔料粒子表面の処理条件を調製することでより好適に、ジオキサジン顔料の表面に水酸基及びカルボニル基を少なくとも1つずつ有することを特徴とするジオキサジン顔料を得ることができる。
【0035】
本発明のもう一つの態様である、ジオキサジン顔料の表面に水酸基及びカルボニル基を少なくとも1つずつ有するジオキサジン顔料は、優れた流動性を示すとともに、次の点からも好ましい。
【0036】
従来の流動性改善方法では、使用する用途によっては流動性改善が十分でない点は前述のとおりである。加えて、使用される用途によっては、流動性改善を目的とする誘導体処理の望ましくない影響を大きく受けることにより、流動性以外の要求特性との両立が困難となる場合があった。たとえば、食品包装用グラビアインキに用いるジオキサジン顔料は、流動性に加えて耐レトルト性との両立が求められるが、顔料誘導体の併用による流動性改善を図った場合、染料の性質を有する顔料誘導体は基材(フィルム)にマイグレーションし易いため耐レトルト性は低下する傾向にある。
【0037】
このように、ジオキサジン顔料自体が表面改質された本発明によれば、従来から懸念されていた流動性改善を目的とする誘導体処理による望ましくない効果の発現を回避することもできる。
【0038】
<混色安定性>
本発明者らはさらに分散安定性能の向上を追求した結果、本発明のジオキサジン顔料は、銅フタロシアニンを含むブルーインキの混色時の増粘をも解決できることを見出した。
【0039】
本発明者らの検討によれば、このようなバイオレットインキとブルーインキの混色時の増粘は以下のような場合に起こる。すなわち、混色前においては、ジオキサジン顔料及び銅フタロシアニンに対し、それぞれインキ中のバインダー樹脂が吸着し分散安定化している。一方、混色後の場合、バインダー樹脂との親和性がより強い銅フタロシアニンに、ジオキサジン顔料に吸着していたバインダー樹脂が奪われ、ジオキサジン顔料の凝集が生じ、流動性が低下すると考えられる。ここで、本発明のジオキサジン顔料を含むバイオレットインキは、前述の通りジオキサジン顔料に対するバインダー樹脂の吸着が強く、分散安定性が高い。よって、ブルーインキと混合してもジオキサジン顔料と銅フタロシアニン顔料の分散が保たれ、流動性を維持すると推定する。
【0040】
ブルーインキの色材としては、色相、堅牢性、経済性などの点から銅フタロシアニンが好ましい。また、無処理の銅フタロシアニンであっても良いし、銅フタロシアニンスルホン酸誘導体、アミノ基含有銅フタロシアニン誘導体、フタロイミドメチル基含有銅フタロシアニン誘導体などの顔料誘導体、分散剤など高分子、界面活性剤、ロジンなどで顔料粒子表面を処理した銅フタロシアニンであっても良い。また、ブルーインキの赤味付け目的や、紫みの濃い青を再現するなどの目的で、本発明のジオキサジン顔料を含むバイオレットインキとブルーインキを幅広い比率で混合できる。
【0041】
なお、本発明のジオキサジン顔料は、本発明の効果に好ましくない影響を与えない限りにおいて、さらに添加剤や分散剤などを含有させ、各用途に適するように調整可能である。
【0042】
こうして得られた本発明のジオキサジン顔料は、着色機能を必要とするような用途であれば何れにも好適に使用できる。例えば、塗料、印刷インキ、着色成形品、静電荷像現像用トナー、液晶表示装置のカラーフィルタ、インクジェット記録用水性インク等の公知慣用の各種用途に使用することができる。
【0043】
本発明のジオキサジン顔料は、初期粘度、貯蔵安定性にも優れた印刷インキを提供できる。印刷インキは、本発明のジオキサジン顔料に対して、公知慣用の各種バインダー樹脂、各種溶媒、各種添加剤等を、従来の調製方法に従って混合することにより調製することができる。具体的には、顔料濃度の高いリキッドインキ用ベースインキを調整し、各種バインダー、各種溶媒、各種添加剤等を使用することにより、リキッドインキを調整することができる。
【0044】
本発明のジオキサジン顔料は、初期粘度、貯蔵安定性に優れたPUインキやNCインキの製造が可能であり、グラビア印刷インキやフレキソ印刷インキ用の有機顔料組成物として好適である。PUインキはPU樹脂、顔料、溶剤、各種添加剤よりなり、NCインキはNC樹脂、顔料、溶剤、各種添加剤よりなる。PU樹脂は、ウレタン構造を骨格内に有していれば、特に、限定されず、ポリウレタン、ポリウレタンポリウレア等も含む。それぞれ溶剤としては、トルエン、キシレンなどの芳香族有機溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノンなどのケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノールなどのアルコール系溶剤、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−i−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−i−プロピルエーテルなどの(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどの(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート系溶剤、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどの他のエーテル系溶剤などが挙げられる。なお、溶剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。各種添加剤としては、アニオン性、ノニオン性、カチオン性、両イオン性などの界面活性剤、ガムロジン、重合ロジン、不均化ロジン、水添ロジン、マレイン化ロジン、硬化ロジン、フタル酸アルキッド樹脂などロジン類、顔料誘導体、分散剤、湿潤剤、接着補助剤、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、トラッピング剤、ブロッキング防止剤、ワックス成分などを使用することができる。
【0045】
本発明のジオキサジン顔料を印刷インキとして用いる場合、上記のようにして調製された本発明のジオキサジン顔料を使用した印刷インキを酢酸エチルやポリウレタン系ワニス、ポリアミド系ワニスに希釈して用いることができる。印刷インキの調製は公知慣用の方法を採用することができる。
【0046】
本発明のジオキサジン顔料を着色剤としての塗料とする場合、塗料として使用される樹脂としては、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂など様々である。
【0047】
塗料に使用される溶媒としては、トルエンやキシレン、メトキシベンゼン等の芳香族系溶剤、酢酸エチルや酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル系溶剤、エトキシエチルプロピオネート等のプロピオネート系溶剤、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、イソブタノール等のアルコール系溶剤、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクタム、N−メチル−2−ピロリドン、アニリン、ピリジン等の窒素化合物系溶剤、γ−ブチロラクトン等のラクトン系溶剤、カルバミン酸メチルとカルバミン酸エチルの48:52の混合物のようなカルバミン酸エステル、水等がある。溶媒としては、特にプロピオネート系、アルコール系、エーテル系、ケトン系、窒素化合物系、ラクトン系、水等の極性溶媒で水可溶のものが適している。
【0048】
また、顔料添加剤及び/又は顔料組成物を、液状樹脂中で分散し又は混合し、塗料用樹脂組成物とする場合に、通常の添加剤類、例えば、分散剤類、充填剤類、塗料補助剤類、乾燥剤類、可塑剤類及び/又は補助顔料を用いることができる。これは、それぞれの成分を、単独又は幾つかを一緒にして、全ての成分を集め、又はそれらの全部を一度に加えることによって、分散又は混合して達成される。
【0049】
上記のように用途にあわせて調製されたジオキサジン顔料を含む組成物を分散する分散機としては、ディスパー、ホモミキサー、ペイントコンディショナー、スキャンデックス、ビーズミル、アトライター、ボールミル、二本ロール、三本ロール、加圧ニーダー等の公知の分散機が挙げられるが、これらに限定されるものではない。顔料組成物の分散は、これらの分散機にて分散が可能な粘度になるよう、樹脂、溶剤が添加され分散される。分散後の高濃度塗料ベースは固形分5〜20%であり、これにさらに樹脂、溶剤を混合し塗料として使用に供される。
【0050】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例及び比較例において特に断りの無い限り、「%」は「質量%」を表すものとする。
【0051】
本実施例において、C.I.ピグメントバイオレット23粒子の表面に水酸基およびカルボニル基を少なくとも1つずつ有するジオキサジン顔料の確認は、電界脱離イオン化質量分析法もしくはレーザー脱離イオン化質量分析法で行った。詳細は以下の通りである。
【0052】
[電界脱離イオン化質量分析法による方法]
日本電子株式会社製JMS−T100GCを用いて、電界脱離イオン化質量分析法でジオキサジン顔料の質量分析スペクトルを測定した。サンプル5mgをジブチルヒドロキシトルエン不含のテトラヒドロフラン(和光純薬工業株式会社製)1.0mLに加え、超音波にて懸濁させたものを測定に使用した。
[測定条件]
エミッタ電流:0mA〜40mA[25.6mA/分]
対向電極:−10000V
測定質量範囲:m/z=50〜200
測定時間:2分
本条件により得られた質量分析スペクトルにおいて、604の分子ピークは水酸基を1つ有するC.I.ピグメントバイオレット23、618の分子ピークはカルボニル基を2つ有するC.I.ピグメントバイオレット23を示す。
【0053】
[レーザー脱離イオン化質量分析法による方法]
日本電子株式会社製JMS−S3000を用いて、レーザー脱離イオン化質量分析法でジオキサジン顔料の質量分析スペクトルを測定した。サンプル20mgをエタノール(和光純薬工業株式会社製)10mLに加え、超音波にて懸濁させたものを測定溶液に使用した。またこれとは別に、ヨウ化ナトリウム(シグマアルドリッチ社製)20mgをメタノール(和光純薬工業株式会社製)10mLに加え、超音波にて懸濁させたものをカチオン化剤に使用した。
[測定条件1]
測定試料:HST社製の384スポット測定プレートに、測定溶液1μLをスポットし風乾させる
測定モード:スパイラルTOF・ポジティブモード
レーザー強度:45%
遅延引き出し時間(DelayTime):120ナノ秒
Detector:60%
トレース回数:200〜250ショット
本条件により得られた質量分析スペクトルにおいて、604の分子ピークは水酸基を1つ有するC.I.ピグメントバイオレット23を示す。
[測定条件2]
測定試料:HST社製の384スポット測定プレートに、測定溶液1μLとカチオン化剤1μLをスポットし、プレート上で混合し風乾させる
測定モード:スパイラルTOF・ポジティブモード
レーザー強度:45%
遅延引き出し時間(DelayTime):120ナノ秒
Detector:60%
トレース回数:200〜250ショット
本条件により得られた質量分析スペクトルにおいて、641の分子ピークは、カルボニル基を2つ有するC.I.ピグメントバイオレット23にカチオン化剤のナトリウムイオンが付加した分子を示す。
【0054】
また本実施例において、ジオキサジン顔料の水および1−ブロモナフタレンとの接触角は浸透速度法により測定した。詳細は以下の通りである。
測定は自動表面張力計 Processor Tensiometer K12(KRUSS社製)を使用した。ジオキサジン顔料1.5gを測定ホルダーに充填しホルダー下部より測定液を浸透させ、自動表面張力計の粉体ぬれ速度測定用オプションでぬれ速度を測定する。まず、n−ヘキサンのぬれ速度を測定し、浸透接触角を0°と仮定して充填定数を測定した。この測定した充填定数に基づき、各ジオキサジン顔料の充填状態が同等となるよう基準化した。続いて、水および1−ブロモナフタレンそれぞれのぬれ速度の測定を行い、Washburn式によりジオキサジン顔料の水および1−ブロモナフタレンとの接触角を算出した。
【0055】
(実施例1)[ジオキサジン顔料(A−1)の合成]
C.I.ピグメントバイオレット23(DIC株式会社製)のウェットケーキ171.9部(顔料分60部)とイオン交換水828.1部を2Lステンレス製カップに入れ、回転数500rpmのホモディスパー2.5型(プライミクス株式会社製)で30分間撹拌した。C.I.ピグメントバイオレット23のスラリーを5Lステンレス製カップに移し、回転数150rpmのステンレス製アンカー翼で撹拌しながら、硫酸鉄(II)七水和物(和光純薬工業株式会社製)2.75部を加え溶解させた。続いて、30%過酸化水素水(和光純薬工業株式会社製)12.5部を加え、30分間撹拌した。次にスラリーをヌッチェ濾過し、70℃の温水4Lで洗浄した後、濾物を送風定温乾燥器WFO−500(東京理化器械株式会社製)で送風乾燥(98℃、18時間)した。得られた顔料塊を粉砕し、ジオキサジン顔料(A−1)58部を得た。ジオキサジン顔料(A−1)をレーザー脱離イオン化質量分析法で質量分析し、測定条件1において604の分子ピークを、測定条件2において641の分子ピークを確認した。ジオキサジン顔料(A−1)の水との接触角は69.4°、1−ブロモナフタレンとの接触角は67.7°だった。
【0056】
(実施例2)[ジオキサジン顔料(A−2)の合成]
実施例1の30%過酸化水素水添加量を25部に変更した以外は同様の操作を行い、ジオキサジン顔料(A−2)58部を得た。ジオキサジン顔料(A−2)をレーザー脱離イオン化質量分析法で質量分析し、測定条件1において604の分子ピークを、測定条件2において641の分子ピークを確認した。ジオキサジン顔料(A−2)の水との接触角は57.2°、1−ブロモナフタレンとの接触角は40.3°だった。
【0057】
(実施例3)[ジオキサジン顔料(A−3)の合成]
実施例1の30%過酸化水素水添加量を50部に変更した以外は同様の操作を行い、ジオキサジン顔料(A−3)59部を得た。ジオキサジン顔料(A−3)の電界脱離イオン化質量分析を行い、604および618の分子ピークを確認した。さらに、ジオキサジン顔料(A−3)をレーザー脱離イオン化質量分析法で質量分析し、測定条件1において604の分子ピークを、測定条件2において641の分子ピークを確認した。ジオキサジン顔料(A−3)の水との接触角は46.9°、1−ブロモナフタレンとの接触角は45.3°だった。
【0058】
(実施例4)[ジオキサジン顔料(A−4)の合成]
実施例1の30%過酸化水素水添加量を100部に変更した以外は同様の操作を行い、ジオキサジン顔料(A−4)58部を得た。ジオキサジン顔料(A−4)をレーザー脱離イオン化質量分析法で質量分析し、測定条件1において604の分子ピークを、測定条件2において641の分子ピークを確認した。ジオキサジン顔料(A−4)の水との接触角は58.4°、1−ブロモナフタレンとの接触角は37.7°だった。
【0059】
(実施例5)[ジオキサジン顔料(A−5)の合成]
実施例1の硫酸鉄(II)七水和物添加量を11部、30%過酸化水素水添加量を200部に変更した以外は同様の操作を行い、ジオキサジン顔料(A−5)59部を得た。ジオキサジン顔料(A−5)を電界脱離イオン化質量分析法で質量分析し、604および618の分子ピークを確認した。さらに、ジオキサジン顔料(A−5)をレーザー脱離イオン化質量分析法で質量分析し、測定条件1において604の分子ピークを、測定条件2において641の分子ピークを確認した。ジオキサジン顔料(A−5)の水との接触角は57.5°、1−ブロモナフタレンとの接触角は32.9°だった。
【0060】
(実施例6)[ジオキサジン顔料(A−6)の合成]
C.I.ピグメントバイオレット23(DIC株式会社製)のウェットケーキ515.8部(顔料分180部)とイオン交換水2484.2部を10Lホーロー製タンクに入れ、回転数500rpmのホモディスパー2.5型(プライミクス株式会社製)で30分間撹拌した。次にステンレス製アンカー翼に撹拌翼を変え、回転数100rpmで撹拌しながら、硫酸鉄(II)七水和物(和光純薬工業株式会社製)8.25部を加え溶解させた。続いて、電磁ヒーターを用いてスラリーを60℃に昇温した後、30%過酸化水素水(和光純薬工業株式会社製)150部を1時間で滴下してさらに15分間撹拌し、スラリーをヌッチェ濾過し、70℃の温水12Lで洗浄した後、濾物を送風定温乾燥器WFO−500(東京理化器械株式会社製)で送風乾燥(98℃、18時間)した。得られた顔料塊を粉砕し、ジオキサジン顔料(A−6)171部を得た。ジオキサジン顔料(A−6)をレーザー脱離イオン化質量分析法で質量分析し、測定条件1において604の分子ピークを、測定条件2において641の分子ピークを確認した。ジオキサジン顔料(A−6)の水との接触角は71.1°、1−ブロモナフタレンとの接触角は49.4°だった。
【0061】
(比較例1)[ジオキサジン顔料(A’−1)の合成]
C.I.ピグメントバイオレット23(DIC株式会社製)のウェットケーキ171.9部(顔料分60部)とイオン交換水828.1部を2Lステンレス製カップに入れ、回転数500rpmのディスパーで30分間撹拌した。C.I.ピグメントバイオレット23のスラリーをヌッチェ濾過し、70℃の温水4Lで洗浄した後、濾物を送風定温乾燥器WFO−500(東京理化器械株式会社製)で送風乾燥(98℃、18時間)した。得られた顔料塊を粉砕し、比較ジオキサジン顔料(A’−1)59部を得た。ジオキサジン顔料(A’−1)の電界脱離イオン化質量分析を行ったが、604および618の分子ピークは観測されなかった。また、ジオキサジン顔料(A’−1)をレーザー脱離イオン化質量分析法で質量分析したが、測定条件1および測定条件2において、604および641の分子ピークは観測されなかった。ジオキサジン顔料(A’−1)の水との接触角は90.0°、1−ブロモナフタレンとの接触角は85.6°だった。
【0062】
(比較例2)[ジオキサジン顔料(A’−2)の合成]
C.I.ピグメントバイオレット23(DIC株式会社製)のウェットケーキ171.9部(顔料分60部)とイオン交換水828.1部を2Lガラスビーカーに入れ、回転数500rpmのホモディスパー2.5型(プライミクス株式会社製)で30分間撹拌した。次にガラス製アンカー翼に撹拌翼を変え、回転数150rpmで撹拌しながら70℃に昇温した。70℃の温水100部に溶解させたC.I.ピグメントバイオレット23スルホン酸誘導体(DIC株式会社製)4部を、C.I.ピグメントバイオレット23のスラリーに添加し30分間撹拌した。続いて、70℃の温水100部に溶解させた硫酸アルミニウム(和光純薬工業株式会社製)6部を添加し、2時間撹拌した。このスラリーをヌッチェ濾過し、濾物を送風定温乾燥器WFO−500(東京理化器械株式会社製)で送風乾燥(98℃、18時間)した。得られた顔料塊を粉砕し、ジオキサジン顔料(A’−2)59部を得た。ジオキサジン顔料(A’−2)をレーザー脱離イオン化質量分析法で質量分析したが、測定条件1および測定条件2において、604および641の分子ピークは観測されなかった。ジオキサジン顔料(A’−2)の水との接触角は89.9°、1−ブロモナフタレンとの接触角は48.5°だった。
【0063】
[各種インキの作製]
ポリウレタンインキにおける評価を次に示す。
(ポリウレタンインキの作製)
前記実施例1〜6で得られたジオキサジン顔料、比較例1、2で得られた比較ジオキサジン顔料それぞれについて、ジオキサジン顔料5部、ポリウレタン樹脂サンプレンIB−501(三洋化成工業株式会社製)25部、酢酸エチル(和光純薬工業株式会社製)13部、イソプロピルアルコール(和光純薬工業株式会社製)7部、1/8インチスチールビーズ(持木鋼球軸受株式会社製)180部を250mLポリエチレン製広口瓶に入れ、ペイントシェーカー(株式会社東洋精機製作所製)で30分間分散した。その後、ポリウレタン樹脂サンプレンIB−501(三洋化成工業株式会社製)35部、酢酸エチル(和光純薬工業株式会社製)9.75部、イソプロピルアルコール(和光純薬工業株式会社製)5.25部を追加で広口瓶に加え、ペイントシェーカー(株式会社東洋精機製作所製)で5分間分散し、ポリウレタンインキそれぞれ得た。
【0064】
(ポリウレタンインキの初期粘度測定)
得られたポリウレタンインキを20℃恒温槽で1時間以上静置し、R85形粘度計RB85L(東機産業株式会社製)で回転速度30rpmでの初期粘度を測定した。初期粘度は低いほど優れる。表1中では、以下のように評価した。
・ポリウレタンインキの初期粘度評価(30rpmでの粘度(単位:mPa・s))
A:100未満
B:100以上〜1000未満
C:1000以上
【0065】
(ポリウレタンインキの安定性試験後粘度測定)
得られたポリウレタンインキを多重安全式乾燥器MSO−45TPH(株式会社二葉化学製)中に50℃で7日間静置し、その後20℃恒温槽で1時間以上静置してR85形粘度計RB85L(東機産業株式会社製)で回転速度30rpmでの安定性試験後粘度を測定した。安定性試験後粘度は低いほど優れる。表1中では、以下のように評価した。
・ポリウレタンインキの安定性試験後粘度評価(30rpmでの粘度(単位:mPa・s))
A:100未満
B:100以上〜1000未満
C:1000以上
【0066】
(光沢の測定)
得られたポリウレタンインキをPETフィルム ルミラー50T−60(パナック工業株式会社製)にNo.6のバーコーターで展色し、光沢計GM−268Plus(コニカミノルタジャパン株式会社製)で展色フィルムの60°の光沢を測定した。光沢は大きいほど優れる。表1中では、以下のように評価した。
・展色フィルムの60°光沢評価
A:85以上
B:80以上〜85未満
C:80未満
【0067】
得られた各ポリウレタンインキの初期粘度、安定性試験後の粘度、及び展色フィルムの60°光沢評価を表1に示す。
【0069】
実施例1〜6及び比較例1〜2との対比から分かる通り、本発明のジオキサジン顔料を用いて得られるポリウレタンインキは、無処理のジオキサジン顔料やC.I.ピグメントバイオレット23スルホン酸誘導体で処理されたジオキサジン顔料よりも、初期粘度及び安定性試験後粘度が低い。また、展色フィルムの60°光沢も格別高いという優れた性能を有する。
【0070】
[NCインキにおける評価]
(NCワニスの作製)
NC樹脂(窒素分:10.7〜12.2)250部、エタノール(和光純薬工業株式会社製)436.5部、酢酸エチル(和光純薬工業株式会社製)13.5部を1Lポリエチレン製広口瓶に入れペイントシェーカー(株式会社東洋精機製作所製)で2時間分散し、NCワニスを得た。
【0071】
(NCベースインキの作製)
前記実施例3で得られたジオキサジン顔料A−3、比較例1で得られたジオキサジン顔料A’−1それぞれについて、ジオキサジン顔料22部、NCワニス40部、エタノール(和光純薬工業株式会社製)36.9部、酢酸エチル(和光純薬工業株式会社製)1.1部、SAZビーズ(東京硝子器械株式会社製ジルコニアYTZボール1.25φ)150部を200mLガラス瓶に入れ、Shaker Skandex SK550(Fast & Fluid Management B.V.Company製)にて2時間分散し、NCベースインキを得た。
【0072】
(酢酸エチル希釈インキの作製)
得られたNCベースインキ38.5部、酢酸エチル(和光純薬工業株式会社製)16.5部を100mLポリエチレン製広口瓶に入れ、ペイントシェーカー(株式会社東洋精機製作所製)にて10秒分散し、酢酸エチル希釈インキを得た。
【0073】
(NCベースインキの安定性試験後粘度測定)
得られたNCベースンインキを室温で24時間静置し、その後20℃恒温槽で1時間以上静置してR85形粘度計RB85L(東機産業株式会社製)で30rpmでの安定性試験後の粘度を測定した。安定性試験後の粘度は低いほど優れる。
【0074】
(酢酸エチル希釈インキの粘度測定)
得られた酢酸エチル希釈インキを20℃恒温槽で1時間以上静置し、R85形粘度計 RB85L(東機産業株式会社製)で粘度を測定した。酢酸エチル希釈粘度は低いほど優れる。
【0075】
NCインキにおける評価結果を表2にまとめた。ジオキサジン顔料としてジオキサジン顔料(A−3)を用いたものを実施例7、ジオキサジン顔料としてジオキサジン顔料(A’−1)を用いたものを比較例3とした。なお、表2中の各種粘度の単位はmPa・sである。
【0077】
実施例7と比較例3との対比から分かる通り、本発明のジオキサジン顔料を用いて得られるNCインキは、無処理のジオキサジン顔料よりも安定性試験後粘度が低く、酢酸エチルで希釈した後の粘度も低い。