(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
テレビのような大型ディスプレイや、携帯電話、パソコン、スマートフォンなどの小型ディスプレイをはじめ、各種のディスプレイ用途に使用される有機EL装置は、一般に支持基材であるガラス基板上に薄膜トランジスタ(以下、TFT)を形成し、さらにその上に電極、発光層及び電極を順次形成し、これらをガラス基板や多層薄膜等で気密封止して作られる。有機EL装置の構造には、支持基材であるガラス基板側から光を取り出すボトムエミッション構造と、支持基材であるガラス基板とは逆側から光を取り出すトップエミッション構造とが有り、用途により使い分けられている。また、構造上、外光がそのまま通過する構造も取れるため、TFTなどの電子素子が外部から透けて見える透明構造も提案されている。いずれも透明性のある電極や基板材料の選定により実現できる。
【0003】
加えて、このような有機EL装置の支持基材を従来のガラス基板から樹脂へと置き換えることにより、薄型・軽量・フレキシブル化でき、有機EL装置の用途を更に広げることができる。しかしながら、樹脂は一般にガラスと比較して寸法安定性、透明性、耐熱性、耐湿性、フィルムの強さ等に劣るため、種々の検討がなされている。
【0004】
例えば、特許文献1は、フレキシブルディスプレー用プラスチック基板として有用なポリイミド、及びその前駆体に係る発明に関し、特定構造のポリイミド前駆体溶液を無機基板上に流延し、乾燥およびイミド化して得られるポリイミドフィルムと無機基板とからなる積層体を開示しており、光透過率が高いことと、アウトガスが少ないことを報告している。しかしながら、ここで得られるポリイミドの熱膨張係数(CTE)は、いずれも40ppm/Kを超えるため、ガラス基板の熱膨張係数との差が大きいため、有機EL基板が反りが発生し、デバイス形成後、剥離やクラックが発生するなど、形状安定性に優れた有機EL装置を得るのが難しくなる。
【0005】
また、特許文献2は、キャリア基板から剥離して製造する表示デバイス、受光デバイスなどのフレキシブルデバイス基板形成用のポリイミド前駆体樹脂組成物に係る発明に関し、300℃以上のガラス転移温度と20ppm/K以下の熱膨張係数を示すことが記載されている。しかしながら、熱処理時間が1時間以上と長くかかり、生産性が低い問題がある。
【0006】
更に、特許文献3は、厚さ20−200μmのガラスフィルムとポリイミド樹脂層を有し、前記ポリイミド樹脂層は、熱膨張係数が10ppm/K以下であって、波長500nmにおける光透過率が80%以上の透明可撓性積層体を提供することが記載されている。この透明可撓性積層体は、耐熱性やガスバリア性にも優れ、ディスプレイ装置におけるフレキシブル基板や太陽電池における透明基板へ好適に使用できるものである。しかしながら、有機ELフレキシブルディスプレー表示装置、有機EL照明表示装置のような、支持体基板上に樹脂基板を形成し、更に樹脂基板上に表示素子を搭載したうえで、樹脂基板を表示素子ごと剥離する製造工程を有するものでは、特に樹脂基板の強度が必要になるため、これらの用途へ適用するためには、更なる改善が必要と考えられる。
【0007】
上記以外にも支持基材にフレキシブルな樹脂を用いて、軽量化を図る試みがなされており、例えば、特許文献4では、透明性の高い、低熱膨張係数に優れたポリイミドを支持基材に適用した有機EL装置が提案されている。しかしながら、これらに記載されているポリイミドフィルムは、熱膨張係数が依然大きく、また、アウトガスが多く、工程上ではデバイス汚染などが懸念される。
【0008】
ところで、有機EL装置は、水分に対する耐性が弱く、水分により発光層であるEL素子の特性が低下する。そこで、支持基材として樹脂を用いる場合には、有機EL装置内への水分や酸素の侵入を防ぐため、吸湿率が低い樹脂が好まれる。一般に、有機EL基板としては、酸化珪素や窒化珪素に代表される無機系材料が使用されており、これらの熱膨張係数(CTE)は、通常、0〜10ppm/Kである。これに対して、一般に透明ポリイミドは、60ppm/K程度のCTEであるため、単に透明ポリイミドを有機EL装置の支持基材に適用しようとすると、熱応力によって反りやクラックが生じたり、剥離したりするなどの問題が発生してしまうことがある。
【0009】
また、ディスプレイ用途に必要となるTFTの形成には、一般に400℃程度に達するアニール工程が必要である。支持基材としてガラス基板を用いる場合には特に問題にならなかったが、支持基材として樹脂を用いる場合には、TFTの熱処理温度に対する耐熱性と寸法安定性とを備えていることが必要になる。因みに、照明用の有機EL装置ではTFTを必要としない場合があるが、支持基材と隣接する透明電極の成膜温度を上げることによって透明電極の抵抗値を下げ、有機EL装置の消費電力を減らすことが可能になるため、照明用途の場合にも支持基材に耐熱性が求められることは同様である。そして、このような透明電極として、一般にはITOなどの金属酸化物が用いられており、これらのCTEは0〜10ppm/Kであることから、クラックや剥離の問題を回避するためには同程度のCTEを有する樹脂が必要になる。
【0010】
また、有機EL表示装置でカラー表示を行うためには、赤(R)緑(G)青(B)の三原色を発光できる材料を、それぞれシャドウマスクを用いて色毎に蒸着することにより行われているが、この方法では、シャドウマスクの製作が非常に難しく、高価であるという課題が存在する。また、シャドウマスクの製作上、高精細化や大型化が困難である。これらの課題に対し、白色発光の有機ELにカラーフィルターを組み合わせることでカラー表示する有機EL表示装置が提案されているが、カラーフィルターの形成のためには、230℃以上に達するレジストの熱処理が一般に必要であり、特に、レジストからのアウトガスを低減するためには、300℃以上の熱処理が好ましいとされている。このような高温の熱処理が行われる場合には、TFT基板とカラーフィルター基板との熱膨張係数、湿度膨張係数が不整合であると、温度、湿度の変化により、それぞれの基板の寸法変化に差が生じ、表示装置のそりや基板間での剥離の原因となるといった問題が発生する。このため、カラーフィルターの支持基材として樹脂を用いる場合には、レジストの熱処理温度における耐熱性とTFT基板と同等の寸法安定性を備えていることが必要になる。TFTの支持基材とカラーフィルターの支持基材を同一の材料とすることにより、これらの問題を解決することができる。
【0011】
また、ポリイミドフィルムは一般的には黄褐色に着色しているため、ポリイミドフィルム中に微小な異物が混入していた場合、肉眼あるいは外観検査装置での発見が困難であるといった問題がある。特にポリイミドと色が近い金属の錆などの異物の発見は極めて困難である。ポリイミドフィルム中に異物が存在すると、その表面に形成されるガスバリア層の欠陥や電極間のショートなどが発生し、不良の原因となる。この点、透明性を備えたポリイミドフィルムを用いることにより、異物の発見が容易になり、歩留りの低下防止に寄与できることから、表示装置の機能としては支持基材に透明性が必要とされない電子ペーパー等の表示装置においても、透明性を備えたポリイミドフィルムを支持基材として用いることは有用である。因みに、ガラスの可視光領域での透過率は一般に90%程度であり、樹脂を支持基材にする場合には、これにできるだけ近づける必要がある。有機ELの発光層から出る光の波長が主に440nmから780nmであることから、有機EL装置に用いられる支持基材としてはこの波長領域での平均の透過率が少なくとも80%以上であることが求められる。加えて、支持基材を形成する樹脂自体についても耐湿性を備えているのが望ましい。
【0012】
また、フィルムを無機基板から引き剥がすときには、一定以上のフィルムの機械強度・伸度などの力学特性が必要であり、特に、引き裂き伝播抵抗が小さいと、剥離するときに、フィルムが破断してしまう問題がある。そのため、支持基材として用いられるフィルムには高い引き裂き伝播抵抗が求められている。
【0013】
この点、フィルムを無機基板から引き剥がす方法がいろいろ提案されているが(特許文献5及び6)、工程が煩雑で、コストがかかるものが多いばかりか、フィルムの破断を抑制するという点は着目されていない。また、特許文献7では、ポリイミドフィルムからなる支持基材上にガスバリア層を備えた表示装置であって、ポリイミドフィルムは、440nmから780nmの波長領域での透過率が80%以上、及び熱膨張係数が15ppm/K以下であり、かつ、ガスバリア層との熱膨張係数の差が10ppm/K以下であることを特徴とする表示装置を開示している。これは、薄型・軽量・フレキシブル化が可能であって、熱応力によるクラックや剥離の問題がなく、寸法安定性に優れ、しかも、製造工程での不具合を防止して、長寿命で良好な素子特性を示すことができるものである。しかしながら、表示装置の製造工程において、例えば、上記ポリイミドフィルムを無機基板から引き剥がす際に、上記ポリイミドフィルムの破断を抑制するという点では着目されておらず、製造工程の歩留まり改善という点では、更なる改善が望まれる。
【0014】
以上の点を考慮すると、表示装置用の支持基材を、ガラス基板から樹脂基板に置き換えるにあたっては、少なくとも低CTE、耐熱性、透明性、及び高い引き裂き伝播抵抗を同時に満足できる必要があるが、これらを全て満たすことができる樹脂基板は存在していなかった。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を更に説明する。
本発明の表示装置は、ポリイミド前駆体またはポリイミドの溶液を無機基板上に流延し、熱処理を行うことでポリイミドフィルムを形成し、さらに前記ポリイミドフィルムの上に表示素子を搭載し、前記無機基板から前記ポリイミドフィルムを表示素子ごと剥離することにより得られる表示装置であって、前記ポリイミドフィルムのガラス転移温度が300℃以上、5%熱分解温度が530℃以上、30μm以下の膜厚における全光線透過率が80%以上、熱膨張係数が40ppm/K以下、引き裂き伝播抵抗が2.0mN/μm以上である。
【0033】
ポリイミドフィルムは、原料のジアミンと酸無水物とを溶媒の存在下で重合し、ポリイミド前駆体の溶液とした後、これを無機基板上に流延し、熱処理によりイミド化することによって製造することができる。または、ポリイミドの溶液を無機基板上に流延し、熱処理によりイミド化することによって製造することができる。
ポリイミドフィルムの分子量は、原料のジアミンと酸無水物のモル比を変化させることで主に制御可能であるが、通常、そのモル比は1:1である。必要に応じて、0.985〜1.025まで調整することができる。分子量Mw(重量平均分子量)の範囲としては、80,000以上が好ましい。また、80,000から400,000の範囲に調整することがより好ましい。さらに好ましくは、100,000を超え400,000以下、さらに一層好ましくは、120,000から400,000以下の範囲に調整する。ここで、分子量Mwは、GPC(Gel Permeation Chromatography)により測定及び算出したポリスチレン換算の分子量である。
【0034】
前記ポリイミド前駆体の溶液は、先ず、ジアミンを有機溶媒に溶解させた後、その溶液に酸二無水物を加え、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸を製造する。有機溶媒としては、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、n-メチルピロリジノン、2−ブタノン、ジグライム、キシレン、ブチロラクトン、トリエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられ、これらを1種若しくは2種以上併用して使用することもできる。
【0035】
得られたポリイミド前駆体の溶液を無機基板に流延する際、ポリイミド前駆体の濃度や分子量の調整により、当該溶液の粘度は500〜70000cpsの範囲とすることが好ましい。より好ましくは2000〜20000cpsである。
【0036】
また、樹脂溶液の塗布面となる基体や基材の表面に対して適宜表面処理を施した後に、流延を行ってもよい。上記において、乾燥条件は150℃以下で2〜10分、また、イミド化のための熱処理は130〜360℃程度の温度で2〜60分程度行うことが適当である。流延の方法は、公知の方法を用いることができるが、好ましくはスピンコート法、コータ法である。
【0037】
続く熱処理によるイミド化の工程は、加熱脱水による熱イミド化の他、ポリイミド前駆体に脱水剤と触媒を加えて反応させることによる化学イミド化を用いて行うこともできる。熱イミド化の場合、加熱温度は90〜360℃であることが好ましい。一方、化学イミド化の場合、加熱温度は50〜250℃であることが好ましい。なお、ポリイミドの溶液を無機基板上に流延し、熱処理によりポリイミドフィルムを形成する際は、溶液中の溶剤を揮発させる程度の温度で良く、100〜250℃であることが好ましい。
【0038】
無機基板は、公知の基板を制限なく使用できるが、平滑、高耐熱及び寸法変化率が少ないという理由から、ガラス、SUS、アルミが好ましく、より好ましくはガラスである。
【0039】
上記熱処理によって、無機基板上に30μm以下の膜厚における全光線透過率(本発明では、380nmから780nmの波長領域での透過率を意味する。)が、80%以上のポリイミドフィルムが得られるが、特に上記熱処理における昇温時の最高加熱温度(最高到達温度)より20℃低い温度から最高到達温度までの高温加熱温度域での加熱時間(以下、高温保持時間という。)を60分以内とすることが好ましい。この高温保持時間が60分を超えると、工程の生産効率が悪くなることと、着色等によってポリイミドフィルムの透明性が低下する可能性がある。透明性を維持するためには高温保持時間は短い方が良いが、時間が短すぎると熱処理の効果が十分に得られない可能性がある。最適な高温保持時間は、加熱方式、基材の熱容量、ポリイミドフィルムの厚み等によって異なるが、0.5分以上120分以下とすることが好ましい。より好ましくは、0.5分以上60分以内である。
【0040】
また、上記熱処理によって得られるポリイミドフィルムは、30μm以下の膜厚における全光線透過率が80%以上であり、かつ、ガラス転移温度が300℃以上、5%熱分解温度が530℃以上、熱膨張係数が40ppm/K以下及び引き裂き伝播抵抗が1.3mN/μm以上である。
全光線透過率が80%未満である場合は、表示素子として有機EL素子を用いた場合、有機ELの発光層から出る光(波長が主に380nmから780nmである。)がポリイミドフィルムを十分透過しない。そのため、例えば、ボトムエミッション構造の場合、前記発光層からの発光を十分取出すことができない。より好ましくは、全光線透過率は85%以上である。また、表示素子としてタッチパネル用の透明導電膜を用いた場合、十分な視認性を担保するという理由から、全光線透過率は85%以上である。
また、前記ポリイミドフィルムは、30μm以下の膜厚における全光線透過率が80%以上であれば、その膜厚は制限されないが、好ましくは5〜30μm、より好ましくは10〜20μmである。
【0041】
また、前記ポリイミドフィルムのガラス転移温度は300℃以上である。好ましくは330℃以上であり、より好ましくは350℃以上である。カラス転移温度が300℃未満であると、表示素子の搭載時の熱により、ポリイミドフィルムが変形する恐れがある。
【0042】
また、前記ポリイミドフィルムの5%熱分解温度(Td5%)は530℃以上である。530℃未満であると、TFT、透明導電膜等の表示素子の搭載時の熱により、ポリイミドフィルムが一部分解してしまう恐れがある。より好ましくは、530℃における重量減少率が3%以下である。
【0043】
また、前記の通り、ポリイミドフィルムの熱膨張係数は40ppm/K以下であるが、好ましくは-10ppm/K〜40ppm/Kの間である。-10ppm/K未満であると、または、40ppm/Kを超えると、表示素子の搭載時の熱応力により、表示装置に反りやクラックが生じたり、剥離したりするなどの問題が発生してしまうことがある。より好ましくは0ppm/K〜30ppm/Kである。
【0044】
また、前記ポリイミドフィルムの引き裂き伝播抵抗は、1.3mN/μm以上である。1.3mN/μm未満であると、例えば、ポリイミドフィルム上に表示素子を搭載し、無機基板からポリイミドフィルムを引きはがす工程等において、ポリイミドフィルムが破断する恐れがある。より好ましい範囲は1.5mN/μm以上である。さらに好ましい範囲は2.0mN/μm以上である。
【0045】
また、有機EL装置及びタッチパネル装置では、前記装置内への水分の吸着を防ぐため、支持基材の低吸湿性が好まれる。そのため、前記ポリイミドフィルムは、吸湿率が0.8wt%以下であることが好ましい。より好ましくは、0.6wt%以下である。また、吸湿率が0.8wt%以下であると、TFT搭載時、又は透明導電膜の積層時に膨れ、発泡などが起こらずに、表示装置としての信頼性が向上する。
【0046】
また、上記のような性能を満たすポリイミドフィルムは、該ポリイミドフィルムを構成するポリイミド成分が、上記式(1)及び(2)で表される構造単位からなることが好ましい。
【0047】
上記式(2)において、Xは単結合または−C−もしくは−O−を含む置換基である。ただし、m/(m+n)=0.11〜0.40 である。より好ましくは0.12〜0.40であり、さらに好ましくは0.15〜0.40である。
ここで、−C−を含む置換基とは、例えば、−CO−、−C(CF
3)
2−、−C(CH
3)
2−が挙げられる。より好ましくは、上記式(3)または(5)で表わされる置換基である。
また、−O−を含む置換基は、例えば、−O−Ph−O−、−O−Ph−Ph−O−、−O−、−O−Ph−C(CF
3)
2−Ph−O−が挙げられる。ここで、Phはフェニレン基のことである。より好ましくは、上記式(3)または(4)で表わされる置換基である。
【0048】
ここで、上記式(1)の構造単位は主に低熱膨張性と高耐熱性等の性質を向上させ、また、上記式(2)の構造単位は高透明性、引き裂き伝播抵抗を向上させるのに有効である。そのため、m/(m+n)が0.11より小さいと、熱膨張係数が大きく、ガラス転移温度が低くなり、TFTを搭載する工程に耐えられなくなる傾向にある。より好ましいのは0.20以上である。一方、0.40を超えると、引き裂き伝播が低くなり、例えば、ポリイミドフィルム上に表示素子を搭載し、無機基板からポリイミドフィルムを引きはがす工程等において、ポリイミドフィルムが破断しやすくなる傾向にある。また、透明性が低下する傾向にある。
【0049】
高分子量の樹脂を得るために、本発明では、酸無水物とジアミンのモル比は0.985〜1.025の範囲で調整することが好ましく、より好ましくは1.000〜1.020の範囲である。さらに好ましいのは1.002〜1.015である。それ以外のモル比では、分子量が低くなり、引き裂き伝播抵抗が小さくなる。
【0050】
また、上記ポリイミドフィルムは、滑り性の向上、熱伝導性の向上などの目的で、例えばシリカ、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウムなどの無機微粒子を添加しても良い。
【0051】
また、上記ポリイミドフィルムは、複数層のポリイミドからなるようにしてもよい。単層の場合には、3μm〜50μmの厚みを有するようにするのがよい。一方、複数層の場合においては、主たるポリイミド層が上記の厚みを有するポリイミドフィルムであれば良い。ここで主たるポリイミド層とは、複数層のポリイミドの中で、厚みが最も大きな比率を占めるポリイミド層を指し、好適にはその厚みを3μm〜50μmにするのがよく、さらに好ましくは4μm〜30μmである。
【0052】
上記熱処理が完了した後に、前記ポリイミドフィルム上に表示素子を搭載する。ここで、表示素子の種類は特に制限しないが、液晶表示装置、有機EL表示装置、電子ペーパーをはじめとする表示装置、及び、カラーフィルター等の表示装置の構成部品も含んでいる。また、有機EL照明装置、タッチパネル装置、ITO等が積層された導電性フィルム、水分や酸素等の浸透を防止するガスバリアフィルム、フレキシブル回路基板の構成部品などを含めた、前記表示装置に付随して使用される各種機能装置も包含される。すなわち、本発明で言う表示素子とは、液晶表示装置、有機EL表示装置、及びカラーフィルター等の構成部品のみならず、有機EL照明装置、タッチパネル装置、有機EL表示装置の電極層もしくは発光層、ガスバリアフィルム、接着フィルム、薄膜トランジスタ(TFT)、液晶表示装置の配線層もしくは透明導電層等の、1種又は2種以上を組み合わせたものも含めている。
【0053】
また、表示素子の形成方法は、表示素子(例えば、有機EL表示装置の場合は、バリア層、TFT、ITO、有機EL発光層、カラーフィルター層が挙げられ、また、タッチパネルの場合は、透明導電膜、メタルメッシュ等の電極層が挙げられる。)に応じて、適宜、形成条件が設定されるが、一般的には金属等をポリイミドフィルム上に成膜した後、必要に応じて所定の形状にパターニングしたり、熱処理したりするなど、公知の方法を用いて得ることができる。すなわち、これら表示素子を形成するための手段については特に制限されず、例えば、スパッタリング、蒸着、CVD、印刷、露光、浸漬など、適宜選択されたものであり、必要な場合には真空チャンバー内などでこれらのプロセス処理を行うようにしてもよい。そして、無機基板とポリイミドフィルムとを分離するのは、各種プロセス処理を経て表示素子を形成した直後であってもよく、ある程度の期間で無機基板と一体にしておき、例えば表示装置として利用する直前に分離して取り除くようにしてもよい。
【0054】
上記表示素子を搭載した後に、無機基板からポリイミドフィルムを表示素子ごと剥離する。無機基板からポリイミドフィルムを剥離する際に、ポリイミドフィルムが延伸されると、リタデーションが大きくなる。このため、剥離の際にポリイミドフィルムにかかる応力が小さくなるように剥離する方法が好ましい。
【0055】
ポリイミドフィルムの延伸を防止するためには、無機基板に他の層を形成し、その上にそれからポリイミドを形成させ、その上に表示素子を搭載した後に、ポリイミドフィルムを当該他の層及び表示素子ごと剥離し、剥離に必要な応力を当該他の層に分散する方法が好ましい。特にポリイミドフィルムが薄い場合に効果的である。この場合、当該他の層を含めて、本発明のポリイミドフィルムとみなす。他の層を形成する方法の例としては、粘着剤による樹脂フィルムや金属箔の張り合わせ、塗布、蒸着等が挙げられる。
【0056】
さらに、基材からのポリイミドフィルムの剥離を容易にし、延伸を防止する方法として、公知の他の方法も適用できる。例えば、特表2007−512568公報では、ガラス上にポリイミド等の黄色フィルムを形成、次いでこの黄色フィルム上に薄膜電子素子を形成した後、ガラスを通して黄色フィルムの底面にUVレーザー光を照射することにより、ガラスと黄色フィルムを剥離することが可能であることを開示している。この方法によれば、UVレーザー光によりポリイミドフィルムがガラスから分離されるため、剥離の際に応力が全く発生せず、本発明の剥離プロセスとして好ましい方法の一つである。しかしながら、黄色フィルムと異なり、透明プラスチックはUVレーザー光を吸収しないため、アモルファスシリコンのような吸収/剥離層をあらかじめフィルムの下に設ける必要があることも開示されている。
【0057】
また、特表2012―511173公報では、UVレーザー光の照射によりガラスとポリイミドフィルムの剥離を行なうためには、300〜410nmのスペクトルの範囲内のレーザーを用いることが開示されている。因みに、剥離方法としては、ガラス側からレーザーを照射して、表示部を備えた樹脂基材をガラスから分離する方法、剥離層をガラス基板に塗布して形成した後、剥離層の上にポリイミド樹脂を塗布し、有機EL表示装置の製造工程が完了した後に剥離層からポリイミドフィルム層を剥離する方法、無機層の表面のカップリング剤処理を行なった後、UV照射等によりこのカプリング剤のパターン化処理を行ない、剥離強度が異なる良好接着部分と易剥離部分をもつ積層体を形成し、それから剥離する方法などが挙げられる。
【0058】
有機EL装置の発光層から出る光の波長が主に440nmから780nmであることから、有機EL装置に用いられる支持基材としては、この波長領域での平均透過率が少なくとも80%以上であることが求められる。一方、上記で述べたUVレーザー光の照射により、ガラスとポリイミドフィルムの剥離を行なう場合、UVレーザー光の波長での透過率が高いと、吸収/剥離層をフィルムの下に設ける必要があり、このことにより生産性が低下する。吸収/剥離層を設けることなく、剥離を行なうためには、ポリイミドフィルム自体がレーザー光を十分に吸収する必要があり、ポリイミドフィルムの400nmでの透過率は、好ましくは60%以下であり、さらに好ましくは40%以下である。
【0059】
また、有機EL装置内やタッチパネル装置内への水分や酸素の侵入を防ぐため、前記ポリイミドフィルムにガスバリア層を形成しても良い。この場合、ガスバリア層を含めて、本発明のポリイミドフィルムとみなす。単体のポリイミドフィルムに形成しても良く、ガラス、金属箔などの基材とポリイミドフィルムの積層体に形成しても良い。ガスバリア層は公知のものを使用できるが、酸素や水蒸気等に対するバリア性を備えたガスバリア層として、酸化珪素、酸化アルミニウム、炭化珪素、酸化炭化珪素、炭化窒化珪素、窒化珪素、窒化酸化珪素等の無機酸化物膜が好適に例示され、1種類の組成のみで構成されてもよいし、2種類以上の組成を混同させた膜を選択してもよい。
【実施例】
【0060】
以下、実施例等に基づいて本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の範囲に限定されるものではない。
【0061】
先ず、ポリイミドを合成する際のモノマーや溶媒の略語、及び、実施例中の各種物性の測定方法とその条件について以下に示す。
【0062】
TFMB:2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル
PMDA:ピロメリット酸二無水物
DMAc:N,N-ジメチルアセトアミド
6FDA:2,2'−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物
ODPA:4,4'-オキシジフタル酸2無水物
BPADA:2,2’-ビス(4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)プロパン酸二無水物)
BPDA:3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
m−TB:2,2’-ジメチルベンジジン
TPE−R:1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン
支持体基板:ガラス基板(コーニング社製、0.7mm厚)
溶媒:ジメチルアセトアミド(DMAc)
【0063】
[熱膨張係数(CTE)]
3mm×15mmのサイズのポリイミドフィルムを、SEIKO製の熱機械分析(TMA)装置TMA100にて5.0gの荷重を加えながら一定の昇温速度(20℃/min)で30℃から280℃までに昇温して、それから30℃までに降温して、この温度範囲で引張り試験を行い、250℃から100℃への温度変化に対するポリイミドフィルムの伸び量から熱膨張係数(ppm/K)を測定した。
【0064】
[引き裂き伝播抵抗]
ポリイミドフィルム(63.5mm×50mm)の試験片を準備し、試験片に長さ12.7mmの切り込みを入れ、東洋精機製の軽荷重引裂き試験機を用いて室温で測定した。測定した引き裂き伝播抵抗値は、単位厚み当たりの抵抗値(mN/μm)として表した。
【0065】
[ガラス転移温度Tg]
ポリイミドフィルム(10mm×22.6 mm)をティーエイ・インスツリメント・ジャパン製の動的粘弾性測定(DMA)装置RSA3にて20℃から500℃まで5℃/分で昇温させたときの動的粘弾性を測定し、ガラス転移温度Tg(tanδ極大値)を求めた。
【0066】
[光透過率]
ポリイミドフィルム(50mm×50mm)をU4000形分光光度計にて、440nmから780nmにおける光透過率の平均値を求めた。
【0067】
[全光線透過率]
ポリイミドフィルム(5cm角)を、日本電色工業製のHAZE METER NDH−5000を用いて、全光線透過率の測定を行った。
【0068】
[熱分解温度(Td5%)]
窒素雰囲気下で10〜20mgの重さのポリイミドフィルムを、SEIKO製の熱重量分析(TG)装置TG/DTA6200にて一定の速度で30℃から550℃まで昇温させたときの重量変化を測定し、重量減少率が5%の時の温度を熱分解温度とした。また、上記温度範囲において重量減少率が5%に達しなかった場合は、530℃以上の任意の温度及び当該温度における重量減少率を記載した。
【0069】
[吸湿率]
ポリイミドフィルム(4cm×20cm)を、120℃で2時間乾燥した後、23℃/50%RHの恒温恒湿機で24時間静置し、その前後の重量変化から次式により求めた。
吸湿率(%)=[(吸湿後重量−乾燥後重量)/乾燥後重量]×100
【0070】
[剥離性]
ポリイミドフィルムを破断・破れがなく支持体基板から剥離できる場合は○と判断した。また、剥離する過程で、破断・破れが発生し、剥離できなくなる場合は×と判断した。
【0071】
[湿度膨張係数(CHE)]
ポリアミド酸の溶液を、塗工する前に、DMAcを加えて粘度を約10000cPに調整した。それから、18μmの厚さの銅箔上にアプリケーターを用いて乾燥後の膜厚が約10μmとなるように塗布し、50〜130℃で2〜60分間乾燥した後、更に130℃から360℃までに30分をかけて熱処理を行い、銅箔上にポリイミド層を形成して、積層体を得た。この積層体を25cm×25cmのサイズに切り出し、銅箔側にエッチングレジスト層を設けて、これを一辺が30cmの正方形の四辺に10cm間隔で直径1mmの点が16箇所配置するパターンに形成した。エッチングレジスト開孔部の露出部分をエッチングし、16箇所の銅箔残存点を有するCHE測定用ポリイミドフィルムを得た。このフィルムを120℃で2時間乾燥した後、23℃/30%RH、23℃/50%RH及び23℃/70%の環境下でそれぞれ24時間静置し、各環境下における銅箔点間の寸法変化からCHE(ppm/%RH)を求めた。なお、寸法変化は二次元測長機により測定した。
【0072】
[反り]
銅箔とポリイミドフィルムの積層体を10cm×10cmのサイズに切り出し、フラットな場所に置き、積層体の反りの状況を判断した。反りが1mm未満のものは○とし、1mm以上3mm未満のものは△とし、5mm以上のものは×とした。
【0073】
[重量平均分子量Mw]
重量平均分子量MwはGPC装置(東ソー社製TOSOHHLC-8220GPC)にて測定及び算出した。カラムは東ソー社製Tskgel GMHHR-M ×2連を使用した。標準サンプルはポリスチレンであり、検出器の種類はRIである。溶媒はDMAc系展開溶媒を用いた。
【0074】
[合成例1]
(ポリアミド酸A)
窒素気流下で、500mlのセパラブルフラスコの中で攪拌しながらTFMB25.907を溶剤200gのDMAcに溶解させた。次いで、この溶液にPMDA14.0gとODPA5.019gを加えた。酸無水物とジアミンのモル比を1.005とした。その後、固形分が15wt%になるように、55gのDMAcを追加した。その後、溶液を室温で5時間攪拌を続けて重合反応を行い、一昼夜保持した。粘稠な無色のポリアミド酸溶液が得られ、高重合度のポリアミド酸Aが生成されていることが確認された。ポリアミド酸Aにおけるモノマーの重量組成を表1に示す。
【0075】
[合成例2〜16]
(ポリアミド酸B〜P)
表1〜表3に示した組成とした以外は、合成例1と同じ方法で合成例2〜16に係るポリアミド酸B〜Pを得た。ポリアミド酸EのMwは、211,596であった。また、ポリアミド酸NのMwは、195,170であった。
【0076】
[実施例1]
上記で得られたポリアミド酸A溶液に、DMAcを加えて、粘度が5000cPになるように希釈した。厚み0.5mm、10mm角のガラス基板上にアプリケーターを用いて熱処理後の膜厚が約25μmとなるように塗布し、30分をかけて90℃から360℃まで昇温させ、ガラス基板上にポリイミドを形成し、積層体Aを得た。次に、ポリイミドフィルムをガラス基板から剥離し、無色のポリイミドフィルムAを得た。得られたポリイミドフィルムAと積層体Aとについて、各種評価を行った結果を表4に示す。
なお、湿度膨張係数(CHE)及び反りの評価については、それぞれ上述の[湿度膨張係数(CHE)]及び[反り]に記載の手順に従って行った。評価結果を表4に示す。
【0077】
[実施
例4、6及び7、並びに参考例
2、3及び5]
ポリアミド酸Aの代わりに、ポリアミド酸B〜Gを用いたこと以外は、実施例1と同じ方法で実施
例4、6及び7、並びに参考例
2、3及び5に係る積層体B〜G及びポリイミドフィルムB〜Gを作製した。評価結果を同様に表4に示す。
【0078】
[
参考例8、9、11]
ポリアミド酸Aの代わりに、ポリアミド酸C、E又はNをそれぞれ用い、且つ熱処理後の膜厚が約10μmとなるように塗布した以外は、実施例1と同じ方法で、
参考例8に係る積層体C−2及びポリイミドフィルムC−2、
参考例9に係る積層体E−2及びポリイミドE−2、並びに
参考例11に係る積層体N及びポリイミドフィルムNを作製した。評価結果を同様に表4及び6にそれぞれ示す。
【0079】
[
参考例12]
ポリアミド酸Aの代わりにポリアミド酸Oを用い、且つ熱処理後の膜厚が約8μmとなるように塗布した以外は、実施例1と同じ方法で、
参考例12に係る積層体O及びポリイミドフィルムOを作製した。評価結果を同様に表6に示す。
【0080】
[実施例10]
上記実施例1と同様にして、積層体Aを得て、更に前記積層体Aのポリイミド面にカラーフィルター層を形成した。続いて、前記カラーフィルター層が形成されたポリイミドをガラスから剥離し、ポリイミドフィルムAをフレキシブル基板に用いたカラーフィルター基板を得た。カラーフィルター基板の製造工程において、積層体の反りは1mm未満であった。また、ポリイミドはガラスからきれいに剥離できた。また、得られたカラーフィルター基板においてフレキシブル基板の破損は見られなかった。
【0081】
[比較例1〜6]
ポリアミド酸Aの代わりに、ポリアミド酸H〜Mを用いた以外は、実施例1と同じ方法で比較例1〜6に係る積層体H〜M及びポリイミドフィルムH〜Mを作製した。評価結果を表5に示す。
【0082】
[比較例7〜8]
ポリアミド酸Aの代わりに、ポリアミド酸P又はIを用い、且つ熱処理後の膜厚が約10μmとなるように塗布した以外は、実施例1と同じ方法で、比較例7に係る積層体P及びポリイミドフィルムP並びに比較例8に係る積層体I−2及びポリイミドフィルムI−2を作製した。評価結果を表6に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
【表3】
【0086】
【表4】
【0087】
【表5】
※重量減少率が5%に達しなかった。なお、カッコ内の数値は、表に記載の温度における重量減少率を表す。
【0088】
【表6】
【0089】
表4及び6に示したとおり、本発明の条件を満たした実施例1
、4、6及び7、並びに参考例
2、3、5、8、9、11及び12に係るポリイミドフィルムは、耐熱性を保持したままで、透明性に優れ、反りも小さく、フィルムが丈夫で、きれいに支持体基板から剥離できるものであった。従って、このようなポリイミドフィルムは、有機ELディスプレイ、有機EL照明、電子ペーパー等の表示装置を形成する支持基材として、好適に使用できる。
一方、表5及び6に示したとおり、本発明の条件を満たさない比較例1〜8に係るポリイミドフィルムからなるものは、熱膨張係数が大きくガラスとの積層体は反りが大きく、フィルムが脆くて、きれいにガラス基板から剥離することができずに、表示装置を形成するポリイミドフィルムとして適さないものであった。