(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両の内燃機関の排気通路に設けられ、前記内燃機関からの排気により回転駆動されるタービンホイールを有するタービンと、前記内燃機関の吸気通路に設けられ、前記タービンホイールの回転により回転駆動されるコンプレッサホイールを有するコンプレッサと、少なくとも前記コンプレッサホイールを収容する収容空間が形成されたハウジングと、前記コンプレッサホイールの回転速度を検出するターボ用回転センサとを備えた回転センサ付きターボチャージャであって、
前記ハウジングには、前記ハウジングの内外面間を貫通し、前記収容空間側の開口が前記コンプレッサホイールに設けられたコンプレッサ羽根に対向する位置に形成された貫通孔が穿設されており、
前記ターボ用回転センサは、コアの周囲に絶縁電線を巻回しコイルを形成して構成される検出部を有し、前記検出部が前記貫通孔に収容され、
前記コアは、前記コイルが形成された部分を含む本体部と、前記本体部から前記貫通孔の軸方向に沿って前記開口に向かって延在する2つの延在部と、を一体に有し、
前記開口は、樹脂で形成された栓部材により閉塞されており、
前記ハウジングには、前記栓部材が前記収容空間側に抜け出すことを規制する規制部が形成され、
前記規制部は、前記貫通孔の前記収容空間側の端部に設けられ、前記貫通孔の中心側に突出して前記栓部材を係止する内方突起である、
回転センサ付きターボチャージャ。
前記検出部は、その前記両延在部の先端部が、前記コンプレッサホイールの回転軸の軸方向における同じ位置に配置され、かつ、前記回転軸との距離が等しい位置に配置されている、
請求項1乃至3の何れか一項に記載の回転センサ付きターボチャージャ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0013】
[第1の実施の形態]
図1は、本実施の第1の実施の形態に係る回転センサ付きターボチャージャの概略構成図である。
図2は、コンプレッサホイールの斜視図である。
図3(a)は、ターボ用回転センサに用いる検出部の概略構成を示す断面図、
図3(b)は、検出部のコアの概略を示す斜視図である。
図4は、検出部とコンプレッサ羽根16との位置関係を説明する要部拡大図である。
【0014】
(ターボチャージャの説明)
図1に示すように、回転センサ付きターボチャージャ10は、車両の内燃機関(不図示)の吸気通路13に設けられるコンプレッサ11と、内燃機関の排気通路14に設けられるタービン12と、これらを収容するハウジング30と、ターボ用回転センサ1とを備えている。
【0015】
コンプレッサ11は、複数のコンプレッサ羽根16を有するコンプレッサホイール17を備えている。また、タービン12は、複数のタービン羽根19を有するタービンホイール20を備えている。タービン12は、内燃機関からの排気をタービン羽根19で受け、タービンホイール20を回転駆動させるように構成されている。
【0016】
コンプレッサホイール17とタービンホイール20とは、ターボシャフト21により連結されており、コンプレッサホイール17が、タービンホイール20の回転により回転駆動されるように構成されている。これにより、ターボチャージャ10では、内燃機関からの排気により回転駆動させたタービンホイール20の回転に伴ってコンプレッサホイール17が回転駆動され、これにより吸気を圧縮して内燃機関へと送り込むように構成されている。
【0017】
ハウジング30は、コンプレッサホイール17を収容する収容空間15dが形成されたコンプレッサ側ハウジング15と、タービンホイール20を収容する別の収容空間が形成されたタービン側ハウジング18と、コンプレッサ側ハウジング15とタービン側ハウジング18とを連結する軸受ハウジング22とを備えている。コンプレッサ11は、コンプレッサ側ハウジング15内に、コンプレッサホイール17を収容して構成されている。タービン12は、タービン側ハウジング18内に、タービンホイール20を収容して構成されている。換言すれば、ハウジング30には、少なくともコンプレッサホイール17を収容する収容空間15dが形成されている。
【0018】
ターボシャフト21は、軸受ハウジング22に回転可能に支持されている。軸受ハウジング22には、ターボシャフト21の潤滑用および冷却用の潤滑油が供給される油路23が形成されており、油路23に供給される潤滑油による冷却効果により、タービン12側の熱がコンプレッサ11側に伝わることを抑制している。
【0019】
本実施の形態では、コンプレッサ側ハウジング15、および、コンプレッサ羽根16を含むコンプレッサホイール17が、アルミニウム(またはアルミニウム合金)により構成されている。
【0020】
図2に示すように、コンプレッサホイール17は、先端側(吸気の流入側、図示上側)から基端側(タービン側、図示下側)にかけて徐々に径が大きくなるように湾曲した側面を有する基体17aの側面に、軸方向に対して傾斜するように複数のコンプレッサ羽根16を一体に形成して構成されている。基体17aの中心部には、ターボシャフト21が挿入され連結される貫通孔17bが形成されている。基体17aは、コンプレッサ羽根16よりも基端側(タービン側)に延出された略円板状の基端部17cを有している。コンプレッサ羽根16は、全体として基端側ほど径が大きくなるように湾曲して形成されており、その外周側の端面に湾曲した凹部16aが形成されている。
【0021】
コンプレッサ側ハウジング15には貫通孔15aが穿設されている。貫通孔15aは、コンプレッサ側ハウジング15の外面と内面との間、すなわち、ハウジング30の内外面間を貫通している。貫通孔15aの収容空間15d側の開口15bは、コンプレッサ羽根16の凹部16aに対向する位置に形成されている。
【0022】
(ターボ用回転センサの説明)
図1、
図3、および
図4に示すように、回転センサ付きターボチャージャ10には、ターボチャージャの回転速度、すなわちコンプレッサホイール17の回転速度を検出するターボ用回転センサ1が搭載されている。
【0023】
本実施の形態に係るターボ用回転センサ1は、コア4の周囲に絶縁電線5aを巻回しコイル5を形成して構成される検出部3と、検出部3の出力を基にコンプレッサホイール17の回転速度を検出する図示しない検出回路と、を備えている。検出部3は、
図3(a)に示すように、貫通孔15aに収容されている。
【0024】
熱膨張による絶縁電線5aの断線を抑制するために、コア4としては、コイル5を構成する絶縁電線5aよりも熱膨張係数が低いものを用いることが望ましい。本実施の形態では、コア4としてフェライトからなるものを用い、絶縁電線5aとして銅線の周囲にエナメル塗料を塗布・焼き付けしたエナメル線(マグネットワイヤ)を用いた。
【0025】
検出部3は、PPS(ポリフェニレンサルファイド)等の絶縁性樹脂からなる樹脂モールド6により覆われており、その先端部をコンプレッサ羽根16の回転表面に臨ませた状態で、コンプレッサ側ハウジング15に形成された貫通孔15aに収容されている。図示していないが、検出部3(樹脂モールド6)からはコイル5(絶縁電線5a)と電気的に接続された信号線が延出されており、この信号線が検出部3の外部に設けられた検出回路に接続されている。なお、検出回路は樹脂モールド6内に設けられていてもよい。
【0026】
図3(a)及び
図4に示すように、樹脂モールド6の外周面には、径方向に突出する矩形状の凸部7が樹脂モールド6と一体に形成されている。凸部7と、貫通孔15aを形成するコンプレッサ側ハウジング15の内面15c(以下、単に「貫通孔15aの内面15c」と記載する。)との接触により、貫通孔15a内での樹脂モールド6の位置が固定される。
【0027】
検出回路の構成は特に限定するものではないが、検出回路は、例えば、コイル5に交流電流を供給しコイル5に磁界を発生させる電源部と、コンプレッサ羽根16の検出部3への近接・離間に伴うコイル5のインダクタンスの変化を検出することで、コンプレッサ羽根16が検出部3に近接した回数を測定し、コンプレッサホイール17の回転速度を測定する測定部と、を備えて構成される。
【0028】
さて、本実施の形態では、コア4は、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、絶縁電線5aが巻回されコイル5が形成された部分を含む本体部4aと、本体部4aから貫通孔15aの軸方向に沿って開口15bに向かって延在する2つの延在部4bと、を一体に有する。より具体的に、本実施の形態では、本体部4aは直線状の形状を有し、2つの延在部4bは共に本体部4bの両端部から垂直方向に延在している。換言すれば、コア4は略U字状の形状を有している。検出部3は、延在部4bの先端部(本体部4aと反対側の端部)を、コンプレッサホイール17に設けられたコンプレッサ羽根16の回転表面に臨ませて配置されている。
【0029】
両延在部4bは同じ長さに形成され、互いに平行に形成される。ここでは、延在部4bと本体部4aとを接続する角部は丸みを帯びた形状に形成されており、延在部4bの先端部も丸みを帯びた形状に形成されている。本実施の形態では、延在部4bの先端面は、樹脂モールド6から露出され、樹脂モールド6の先端面と略一致するように構成されている。
【0030】
検出部3は、その両延在部4bの先端部が、コンプレッサホイール17の回転軸(ターボシャフト21の中心軸)の軸方向における同じ位置に配置され、かつ、回転軸と両延在部4bの先端部との距離が等しい位置に配置されている。つまり、検出部3は、コンプレッサホイール17の回転軸を中心とする円の接線方向に沿うように両延在部4bの先端部を配置して構成されている。
【0031】
両延在部4bは、その先端部が、コイル5よりも検出部3の先端側に突出するように設けられている。これは、コイル5が両延在部4bの先端部よりも先端側に突出していると、コイル5とコンプレッサ羽根16との干渉を避けるために両延在部4bの先端部とコンプレッサ羽根16との間隔が広くなってしまい、検出感度が低下するおそれがあるためである。両延在部4bの長さは、コイル5の巻き数(コイル5全体の外径)に応じて設定されるが、両延在部4bが長過ぎると発生する磁界が小さくなるため、両延在部4bの長さはできるだけ短いことが望ましいといえる。両延在部4bの長さと、コイル5の巻き数(コイル5全体の外径)は、両延在部4bの先端部をコイル5よりも検出部3の先端側に突出させることができ、かつ、発生する磁界の強度が最も強くなるように、適宜調整される。
【0032】
本実施の形態では、検出部3の先端部、すなわち両延在部4bの先端部を、コンプレッサ羽根16の湾曲した凹部16aの回転表面に臨ませるように検出部3を配置した。検出部3は、その先端部が対向する位置の凹部16aにおける法線方向と、両延在部4bの延在方向とが略一致するように角度を調整して配置される。
【0033】
検出部3、および検出部3を収容する貫通孔15aは、コンプレッサホイール17のタービン12側の端部(基端部17c)よりもタービン12から離れた位置に設けられている。これにより、排気により高温となるタービン12から離れた位置に検出部3が配置されることになり、検出部3がタービン12の熱の影響を受けにくくなる。
【0034】
コア4を略U字状に形成することで、両延在部4bの先端部の間に磁束を集中させることが可能となり、貫通孔15aの周囲のアルミニウムからなるコンプレッサ側ハウジング15の影響を抑制して、検出感度を向上させることが可能になる。なお、
図3(a)では、検出部3で発生する磁束を破線にて模式的に示している。
【0035】
また、
図4に示すように、検出部3の先端部をコンプレッサ羽根16の湾曲した凹部16aの回転表面に臨ませるように配置することにより、検出部3をよりコンプレッサ羽根16に近づけて配置することが可能になり、検出感度を向上させることが可能になる。
【0036】
本実施の形態では、コア4が、コイル5を形成した部分を含む本体部4aから先端側に延在部4bを延在させた構成となっているため、検出部3の先端部の幅Wを延在部4bの幅と略同じにすることができる。ここでは、コア4として、断面形状が1辺1mmの略正方形状(角部を丸めた正方形状)のものを用いたため、検出部3の先端部の幅Wを約1mmにすることができる。
【0037】
なお、ここでは、
図3(b)に示すように、コア4として断面形状が略正方形状のものを用いたが、これに限定されず、コア4としては、断面形状が長方形状のものや円形状のものも用いることができる。ただし、コア4は金型を用いた鋳造により成形されるため、コア4の断面形状を円形状(すなわち円柱状)とした場合には、特に本体部4aと延在部4bの接続部分のエア抜きが困難となり金型から離型させにくくなってしまうおそれがある。よって、製造の容易さの観点から、コア4としては、断面形状が矩形状のものを用いることが望ましいといえる。
【0038】
また、本実施の形態では、本体部4aに対して垂直方向に延在部4bを延在させたが、本体部4aと延在部4bとのなす角度が90度から多少ずれても許容される。ただし、本体部4aと延在部4bとのなす角度が90度を大きく下回ると、絶縁電線5aを巻回させにくくなりコイル5の形成が困難となり、本体部4aと延在部4bとのなす角度が90度を大きく上回ると、両延在部4bの先端部同士の間隔が広くなり過ぎ、検出感度が低下してしまうおそれがある。そのため、本体部4aと延在部4bとのなす角度は、90度±10度(80度以上100度以下)とすることが望ましい。
【0039】
また、本実施の形態では、本体部4aは直線状の形状を有するものとしたが、これに限定されるものではなく、任意の形状を取り得る。例えば、コア4の形状が、全体として略半円状や略M字状等となるように、本体部4aの形状を円弧状や略V字状等に構成することができる。ただし、本体部4aの形状が複雑になると、絶縁電線5aを巻回させにくくなりコイル5の形成が困難となり、上述した不都合が生じるおそれがある。そのため、本体部4aの形状は直線状とすることが望ましい。
【0040】
(貫通孔の説明)
図1及び
図3(a)に示すように、貫通孔15aの収容空間15d側の開口15bは、栓部材24により閉塞されている。本実施の形態では、栓部材24は、樹脂で形成されている。ここでいう樹脂とは、プラスチック等の合成樹脂に加え、ゴム素材、接着剤を含むものとする。
【0041】
具体的に、栓部材24は、収容空間15d側の先端面が、貫通孔15aの収容空間15d側の先端面と略一致するよう配置されている。より具体的に、
図3(a)に示すように、栓部材24の収容空間15d側の先端面と、貫通孔15aの収容空間15d側の先端面とは、貫通孔15aの軸方向に平行な断面視において、コンプレッサホイール17の回転軸を中心とする円周方向に沿うように湾曲した形状を有する。
【0042】
本実施の形態では、栓部材24を、コンプレッサ側ハウジング15の外面側から貫通孔15aに挿入して、開口15bを閉塞する。ターボ用回転センサ1の検出部3は、貫通孔15a内において、栓部材24よりもコンプレッサ側ハウジング15の外面側に配置される。このようにして、検出部3は、先端部が吸気通路13に吸入される吸気に曝されない状態で、コンプレッサホイール17の回転速度の検出を行うことができる。なお、上述した栓部材24は樹脂モールド6とは別体のものであるが、必ずしもこれに限定されるものではなく、樹脂モールド6と同一の素材を用いて樹脂モールド6と一体に形成されたものであってもよい。
【0043】
栓部材24が、収容空間15d側に抜け出してしまうと、特許文献1に記載の検出部と同様に、コンプレッサホイール17の高速回転によってコンプレッサ側ハウジング15内に乱流が発生し、コンプレッサホイールの回転に悪影響を及ぼすおそれがある。そこで、コンプレッサ側ハウジング15、すなわち、ハウジング30には、栓部材24が収容空間15d側に抜け出すことを規制する規制部150が形成されている。具体的に、
図3(a)及び
図4に示すように、本実施の形態では、規制部150は、貫通孔15aの収容空間15b側の端部に設けられ、貫通孔15aの中心側に突出して栓部材24を係止する内方突起151である。より具体的に、貫通孔15aの内面15cは、収容空間15b側に向かって縮径するテーパ形状を有する先端部を備えている。
【0044】
栓部材24の外周面は、かかるテーパ形状に対応する形状を有する。具体的に、栓部材24の外周面は、収容空間15b側に向かって縮径するテーパ形状を有する。このような構成により、栓部材24の位置が収容空間15d側に変位することが規制され、栓部材24が収容空間15d側に抜け出すことを抑制することができる。
【0045】
ここで、上述したように、検出部3のコア4の両延在部4bの先端部とコンプレッサ羽根16との間隔は、検出感度を低下させない観点から、できるだけ小さいことが望ましく、そのためには、栓部材24の厚みが小さい、すなわち、テーパ形状の貫通孔15aの軸方向における高さが小さいことが望ましいといえる。また、栓部材24が収容空間15d側により抜け出しにくいようするためには、テーパ角が大きいことが望ましいといえる。これらの事項を踏まえ、テーパ形状の寸法、すなわち、テーパ形状の貫通孔15aの軸方向における高さ及びテーパ角は、栓部材24の抜け出しを確実に防止でき、かつ、検出感度を低下させないよう、適宜調整される。
【0046】
また、好ましくは、ターボ用回転センサ1を、検出部3の収容空間15d側の先端面が、栓部材24の収容空間15dと反対側の先端面に接触する位置に配置する。このような配置より、栓部材24の位置が検出部3側に変位することを規制することができる。このようにして、栓部材24と規制部150とにより、栓部材24の位置が、収容空間15d側に変位することと、検出部3側に変位することとを共に規制することができる。換言すれば、規制部150は、検出部3と共に栓部材24の位置を固定するストッパの役割を果たすことができる。
【0047】
なお、栓部材24を貫通孔15aに挿入するだけでもよいが、栓部材24の径方向の寸法を、貫通孔15aの栓部材24が配置される領域における径方向の寸法よりも僅かに大きいものとし、貫通孔15aに圧入して、貫通孔15aの内面15cとの間の摩擦力で保持されるように固定してもよく、あるいは、貫通孔15aの内面15cに接着する方法で固定してもよい。
【0048】
(変形例1)
また、本実施の形態では、貫通孔15aの収容空間15b側の端部に設けられ、貫通孔15aの中心側に突出する内方突起151としての規制部150を、貫通孔15aの内面15cが収容空間15b側に向かって縮径するテーパ形状を有するように形成したが、
図5に示すように、貫通孔15aの内面15cが、本体部4aの貫通孔15aの軸方向における位置に対応する内径よりも小さい内径を有する、貫通孔15aの中心側に突出する円環状の形状を有するように形成してもよい。言い換えれば、貫通孔15aの軸方向に平行な断面視において、貫通孔15aの収容空間15d側の端部に、貫通孔15aの中心側に突出する矩形状の形状を有する突起151を設けるように構成してもよい。
【0049】
このように構成することにより、栓部材24を、栓部材24の収容空間15d側の先端面が矩形状の突起151の収容空間15dと反対側の先端面に面接触するように配置できるため、栓部材24の位置決めが容易となる。
【0050】
なお、図示しないが、規制部150は、上述したテーパ形状と上述した円環形状との両方を備える形状であってもよい。例えば、貫通孔15aが、収容空間15d側に向かって所定の位置まで縮径したのち、かかる所定の位置から先端まで同一の内径を有するような形状であってもよく、その逆でもよい。
【0051】
(比較例)
ここで、本発明との比較のため、直線状の円柱状のコア52を用い、コアの一端をコンプレッサ羽根16に臨ませるように構成した、従来の回転センサ付きターボチャージャに搭載されているターボ用回転センサ(以下、単に「従来のターボ用回転センサ」と記載する。)を
図6(a),(b)に示す。上述した第1の実施の形態の回転センサ付きターボチャージャ10と同一の構成要素には同一の参照符号を付し、詳細な説明は省略する。
図6に示す比較例としての従来のターボ用回転センサ51では、上述のように、コイル53が形成されたコア52が直線状の円柱状の形状を有していることの他に、栓部材524の抜け出しを規制する規制部を有していないという点で、第1の実施の形態と異なる。より具体的に、コア52は、コア52の中心軸が貫通孔15aの軸方向に沿うように配置され、コイル53は貫通孔15aの軸方向に延在するように配置されている。検出部54は貫通孔15aに収容され、貫通孔15aの収容空間側の開口15b、すなわち、コンプレッサ羽根16と対向する開口15bは、円柱状の形状を有する栓部材524で閉塞されている。
【0052】
図6(a),(b)に示すように、円柱状のコア52を用いた従来のターボ用回転センサ51では、コア52の両端部の間に磁束が生じるため、磁束の一部が貫通孔15aの周囲のアルミニウムからなるコンプレッサ側ハウジング15を通ることとなり、コンプレッサ側ハウジング15で発生する渦電流の影響により、検出感度が低下してしまう。
【0053】
また、従来のターボ用回転センサ51では、栓部材524が所定の厚さを有しているために、検出部54とコンプレッサ羽根16との間の距離が大きくなり、検出感度が低下してしまう。
【0054】
(第1の実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係る回転センサ付きターボチャージャ10では、ハウジング30には、ハウジング30の内外面間を貫通し、収容空間15d側の開口15bがコンプレッサホイール17に設けられたコンプレッサ羽根16に対向する位置に形成された貫通孔15aが穿設されており、ターボ用回転センサ1は、コア4の周囲に絶縁電線5aを巻回しコイル5を形成して構成される検出部3を有し、検出部3が貫通孔15aに収容され、コア4は、コイル5が形成された部分を含む本体部4aと、本体部4aから貫通孔15aの軸方向に沿って開口15bに延在する2つの延在部4bと、を一体に有し、開口15bは、樹脂で形成された栓部材24により閉塞されており、ハウジング30には、栓部材24が収容空間15d側に抜け出すことを規制する規制部150が形成されている。
【0055】
このように構成することで、磁束が、貫通孔15aの軸方向、すなわち、コンプレッサ羽根16に向かって延在するため、両延在部4bの先端部の間に磁束を集中させて検出部3の周囲のコンプレッサ側ハウジング15の影響を抑制することが可能になる。これに加えて、栓部材24は樹脂で形成されているため磁界に影響を与えないため、栓部材24を通り抜けコンプレッサ羽根16と交差することができ、その結果、検出感度を大きく向上させることが可能になる。つまり、ターボ用回転センサ1によれば、精度良くコンプレッサホイール17の回転速度を検出することが可能になる。
【0056】
また、本実施の形態では、両延在部4bの先端部の間に磁束を集中させることができるため、コンプレッサ羽根16で生じる渦電流を大きくし、渦電流によるコイル5のインダクタンスの変化も大きくすることが可能になる。そのため、ターボ用回転センサ1によれば、検知距離を長くすることが可能であり、ターボチャージャの構造上の理由等なんらかの理由により検出部3の先端部をコンプレッサ羽根16に近接させることができず、検出部3の先端部とコンプレッサ羽根16との距離が大きくなってしまうような場合であっても、精度良くコンプレッサホイール17の回転速度を検出することが可能になる。
【0057】
さらに、貫通孔15aの開口15bが栓部材24によって閉塞されていることにより、検出部3は吸気通路13に吸入される吸気に曝されないため、吸気の影響を受けずに、コンプレッサホイール17の回転速度の検出を行うことができる。その結果、検出部3の先端部の振動が抑制され、振動による検出部3の性能特性の変動を抑制することができる。また、規制部150により栓部材24が貫通孔15aから収容空間15d側に抜け出すことが抑制されるため、栓部材24がコンプレッサ側ハウジング15の内側に突出することによって生じ得るコンプレッサ側ハウジング15内の乱流の発生を抑制することができる。
【0058】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について、
図7を参照して説明する。上述した第1の実施の形態の回転センサ付きターボチャージャ10と同一の構成要素には同一の参照符号を付し、詳細な説明は省略する。第2の実施の形態は、栓部材24の貫通孔15aからの抜け出しを規制する規制部150が貫通孔15aの収容空間15d側の端部に設けられ、貫通孔15aの中心側に突出する内方突起151でないという点で、第1の実施の形態と異なる。
【0059】
本実施の形態では、規制部150は、貫通孔15aの内面15cに設けられた粗面部152である。具体的に、
図7に示すように、貫通孔15aの内面15cの所定の領域に、粗面部152が設けられている。具体的に、粗面部152は、少なくとも栓部材24が取り付けられる位置、すなわち栓部材24を取り付けた状態において、貫通孔15aの内面15cのうち栓部材24の外周面に対応する領域に設けられている。粗面部152は、例えば、20〜300nmの高さdを有する凹凸状の形状を有する微細構造で構成されるものであり、例えばNMT(Nano Modling Technology)等の方法で内面15cを粗すことにより形成することができる。粗面部152上に、射出等の公知の方法により栓部材24を取り付ける。このようにすることで、粗面部152の微細構造に栓部材24の成分である樹脂が入り込み、樹脂がコンプレッサ側ハウジング15を構成する素材であるアルミニウムに接合される。このようにして、栓部材24をコンプレッサ側ハウジング15に強固に固定することができる。
【0060】
なお、説明の便宜上、
図7では、粗面部152の粗さ、すなわち、凹凸形状の凹凸の高さを、コンプレッサ側ハウジング15の厚みに対して大きく描いているが、実際はより小さいものである点に留意されたい。
【0061】
(変形例2)
規制部150は、栓部材24の外周面に対向する貫通孔15aの内面15cに設けられた突起153とすることもできる。具体的に、
図8に示すように、貫通孔15aの内面15cの所定の領域に、貫通孔15aの軸方向に沿って、径方向に凹凸するアンダーカット構造が設けられている。栓部材24がアンダーカット構造とアンダーカット係合することにより、栓部材24が貫通孔15aから収容空間15d側に抜け出しにくいようにすることができる。なお、アンダーカット構造は、栓部材24の貫通孔15aからの抜け出しを抑えることが可能な形状であればよく、凹凸の度合い、すなわち、凹状形状の深さ又は凸状形状の高さ、及び凹凸の数は適宜調整される。
【0062】
なお、図示しないが、上述の第1の実施の形態における規制部150、すなわち貫通孔15aの収容空間15d側の端部に設けられ、貫通孔15aの中心側に突出する内方突起151としての規制部150において、上述した粗面部152や貫通孔15aの軸方向に沿って径方向に凹凸する突起153が設けられたものであってもよい。
【0063】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0064】
[1]車両の内燃機関の排気通路(14)に設けられ、前記内燃機関からの排気により回転駆動されるタービンホイール(20)を有するタービン(12)と、前記内燃機関の吸気通路(13)に設けられ、前記タービンホイール(20)の回転により回転駆動されるコンプレッサホイール(17)を有するコンプレッサ(11)と、少なくとも前記コンプレッサホイール(17)を収容する収容空間(15d)が形成されたハウジング(30)と、前記コンプレッサホイール(17)の回転速度を検出するターボ用回転センサ(1)とを備えた回転センサ付きターボチャージャ(10)であって、前記ハウジング(30)には、前記ハウジング(30)の内外面間を貫通し、前記収容空間(15d)側の開口(15b)が前記コンプレッサホイール(17)に設けられたコンプレッサ羽根(16)に対向する位置に形成された貫通孔(15a)が穿設されており、前記ターボ用回転センサ(1)は、コア(4)の周囲に絶縁電線(5a)を巻回しコイルを形成して構成される検出部(3)を有し、前記検出部(3)は前記貫通孔(15a)に収容され、前記コア(4)は、前記コイル(5)が形成された部分を含む本体部(4a)と、前記本体部(4a)から前記貫通孔(15a)の軸方向に沿って前記開口(15b)に向かって延在する2つの延在部(4b)と、を一体に有し、前記開口(15b)は、樹脂で形成された栓部材(24)により閉塞されており、前記ハウジング(30)には、前記栓部材(24)が前記収容空間(15d)側に抜け出すことを規制する規制部(150)が形成されている、回転センサ付きターボチャージャ(10)。
【0065】
[2]前記規制部(150)は、前記貫通孔(15a)の前記収容空間(15d)側の端部に設けられ、前記貫通孔(15a)の中心側に突出して前記栓部材(24)を係止する内方突起(151)である、[1]に記載の回転センサ付きターボチャージャ(10)。
【0066】
[3]前記規制部(150)は、前記貫通孔(15a)の内面(15c)に設けられた粗面部(152)である、[1]又は[2]に記載の回転センサ付きターボチャージャ(10)。
【0067】
[4]前記規制部(150)は、前記栓部材(24)の外周面に対向する前記貫通孔(15a)の内面(15c)に設けられた突起(153)である、[1]又は[2]に記載の回転センサ付きターボチャージャ(10)。
【0068】
[5]前記検出部(3)は、その前記両延在部(4b)の先端部が、前記コンプレッサホイール(17)の回転軸の軸方向における同じ位置に配置され、かつ、前記回転軸との距離が等しい位置に配置されている、[1]乃至[4]の何れか1項に記載の回転センサ付きターボチャージャ(10)。
【0069】
[6]前記検出部(3)は、その前記両延在部(4b)の先端部を、前記コンプレッサ羽根(16)の湾曲した凹部(16a)の回転表面に臨ませて配置されている、[1]乃至[5]の何れか1項に記載の回転センサ付きターボチャージャ(10)。
【0070】
[7]前記コア(4)は、その断面形状が矩形状である、[1]乃至[6]の何れか1項に記載の回転センサ付きターボチャージャ(10)。
【0071】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0072】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。