【文献】
MASUYAMA, Y. et al.,Tetrahedron Letters,1991年,Vol. 32, No. 2,pp. 225-228
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
<式(3)で表される化合物>
式(1)で表される化合物であるアセタール又はケタール化合物と、式(2)で表される化合物であるヒドロキシメタクリル酸エステルとを、金属錫又は錫含有化合物及びパラジウム触媒の存在下に反応させることにより、式(3)で表される化合物であるα−メチレン−γ−ブチロラクトン化合物)を製造することができる。
【0014】
上記式中、nは1〜10の整数であり、Rは炭素原子数1〜6のアルキル基であり、PGは炭素原子数が1〜2のジアルキルアセタール基、1,3−ジオキサン−2−イル基又は1,3−ジオキソラン−2−イル基であり、Ar
1は下記式(4)、(5)又は(6)で表される2価の基である。
【0015】
nとしては、1〜4が好ましく、3〜4がより好ましい。nは、左右で、同一でも、異なっていてもよいが、合成上の観点から、左右同一が好ましい。
PGとしては、ジメチルアセタール基、又は1,3−ジオキソラン−2−イル基が好ましく、左右で同一でも、異なっていてもよいが、合成上の観点から、左右同一が好ましい。
Rは、炭素原子数が1〜5のアルキル基が好ましく、直鎖状でも分岐状でもよいが、直鎖状が好ましい。特に、メチル基又はエチル基が好ましく、
【0017】
式(4)、(5)及び(6)中、Xは、各々独立に、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数1〜6のハロアルキル基、炭素原子数1〜6のハロアルコキシ基及びシアノ基から選ばれる置換基を表し、m
1〜m
6は、各々独立に、0〜4の整数であり、m
7及びm
8は、各々独立に、0〜3の整数であり、Xの数が2以上となる場合は、X同士は同一でも異なっていてもよい。
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素等が挙げられる。
Xとしては、メトキシ基、トリフルオロメチル基、トリフロオロメトキシ基等が好ましい。特に好ましくはメトキシ基である。
m
1〜m
6は、各々独立に、0〜1の整数が好ましい。
m
7及びm
8は、各々独立に、0〜1の整数が好ましい。
【0018】
金属錫又は錫含有化合物の例としては、錫粉末、無水塩化錫、塩化錫二水和物、塩化錫五水和物などの錫系化合物が使用できる。なかでも、好ましくは無水塩化錫又は塩化錫二水和物である。
【0019】
金属錫又は錫含有化合物の使用量としては、式(1)で表される化合物の1当量に対し、2〜4当量が好ましく、目的物の収率をより向上させたい場合は、3〜4当量が好ましい。
【0020】
反応は酸性条件にて行われるが、酸性条件は、pHが1〜3が好ましく、1〜2であるのがより好ましい。酸性条件にするために使用される酸としては、塩酸、硫酸、リン酸、塩化アンモニウムなどの無機酸水溶液、Amberlyst 15などの酸性樹脂、p-トルエンスルホン酸、酢酸、蟻酸などの有機酸が使用できる。なかでも、塩酸、硫酸又は酢酸が好ましい。
【0021】
パラジウム触媒としては、パラジウム(0)の個体触媒、担持触媒若しくは錯体触媒や、反応液中でパラジウム(0)触媒に変化する化合物を挙げることができる。具体的には、例えば、ラネーパラジウム、シリカ担持パラジウム触媒、アルミナ担持パラジウム触媒、炭素担持パラジウム触媒、硫酸バリウム担持パラジウム触媒、ゼオライト担持パラジウム触媒、シリカ・アルミナ担持パラジウム触媒又はの固体若しくは担持触媒;ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリメチルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリブチルホスフィン)パラジウム、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム、テトラキス(トリエチルホスファイト)パラジウム、ビス(シクロオクタ−1、5−ジエン)パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジカルボニルビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、カルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム、ジクロロ(1、5−シクロオクタジエン)パラジウム等の錯体触媒;塩化パラジウム、酢酸パラジウム、酸化パラジウム等の均一若しくは不均一触媒;などが挙げられる。
【0022】
パラジウム触媒は単独でも、二種以上を組み合せても使用することができる。
パラジウム触媒の使用量は、式(1)で表される化合物に対して、通常、0.0001〜20モル%であり、好ましくは0.001〜10モル%である。
【0023】
上記パラジウム触媒には、必要に応じ、配位子を添加することもできる。配位子としては、例えば、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(パラトリル)ホスフィン、トリス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフィン、ジフェニルホスフィノベンゼン−3−スルホン酸ナトリウム、ビス(3−スルホナートフェニル)ホスフィノベンゼンナトリウム塩、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、トリス(3−スルホナートフェニル)ホスフィンナトリウム塩等の単座若しくは多座の3級ホスフィン類;トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2,6−ジメチルフェニル)ホスファイト等の亜リン酸エステル類;トリフェニルメチルホスホニウムヨージド、トリフェニルメチルホスホニウムブロミド、トリフェニルメチルホスホニウムクロライド、トリフェニルアリルホスホニウムヨージド、トリフェニルアリルホスホニウムブロミド、トリフェニルアリルホスホニウムクロライド、テトラフェニルホスホニウムヨージド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムクロライド等のホスホニウム塩類;リン酸トリフェニル、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリアリル等のリン酸エステル類;ベンゾニトリル、アセトニトリル等のニトリル類;アセチルアセトン等のケトン類;シクロペンタジエン、ペンタメチルシクロペンタジエン、1,5−シクロオクタジエン等のジエン類;ピリジン、2−ピコリン、3−ピコリン、4−ピコリン、2,2−ビピリジル、ターピリジン、1,10−フェナントロリン、8−ヒドロキシキノリン、ビスオキサゾリニルピリジン(Pybox)、1,4−ジメチルピラゾール、1,3,5−トリメチルピラゾール、ピリミジン、ピラジン等の含窒素複素環系配位子;反応雰囲気ガスの一酸化炭素;等が挙げられる。
【0024】
上記配位子の使用量は、パラジウム触媒に対して、通常、0.1〜10000モル%であり、好ましくは1〜5000モル%である。
【0025】
式(2)で表される化合物であるヒドロキシメタクリル酸エステル化合物としては、具体的には、ヒドロキシメタクリル酸メチルエステル、ヒドロキシメタクリル酸エチルエステル、ヒドロキシメタクリル酸イソプロピルエステル、ヒドロキシメタクリル酸ターシャーリーブチルエステルなどが挙げられる。好ましくは、ヒドロキシメタクリル酸メチルエステル又はヒドロキシメタクリル酸エチルエステルである。
式(2)で表される化合物の使用量は、特に限定されないが、式(1)で表される化合物(1)の1当量に対して、2.0〜2.5当量使用することが好ましく、2.2〜2.5当量がより好ましい。
【0026】
上記反応においては、溶媒の使用が好ましく、安定で、不活性な、反応を妨げない溶媒が用いられる。例えば、水、エーテル類(Et
2O, i−Pr
2O, TBME(メチルtert-ブチルエーテル), CPME(シクロペンチルメチルエーテル), テトラヒドロフラン, ジオキサンなど)等が使用できる。これらの溶媒は、反応の起こり易さなどを考慮して適宜選択することができ、1種単独でも、2種以上混合しても用いることができる。好ましくは、テトラヒドロフラン又は水である。
【0027】
反応温度は、特に限定されないが、通常、0〜100℃、好ましくは20〜70℃である。
反応時間は、通常、1〜100時間、好ましくは1〜12時間である。
【0028】
上記のようにして得られた、式(3)で表される化合物は、反応後に、反応液に塩基を加えて過剰の酸を除去した後、水洗し、再結晶などして精製することにより、高純度化することができる。
【0029】
再結晶に用いる溶媒としては、式(3)で表される化合物が加熱時に溶解し、冷却時に析出すれば特に限定されない。例えば、ヘキサン、ヘプタン、トルエンなどの炭化水素類;クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン系炭化水素類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル類;酢酸エチルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;メタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール類;これらの混合物;などが挙げられる。好ましくは、テトラヒドロフラン、トルエン、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ヘキサン、ヘプタン、又はこれらの混合物である。
【0030】
<式(1)で表される化合物>
化合物(1)は、下記に示すように、フェノール性水酸基を有する芳香族化合物(A)と、式(B)で表されるハロゲン置換アセタール又はケタール化合物とを、塩基の存在下で反応させることにより得ることができる。
【0031】
【化7】
上記式中、n、PG及びAr
1は前記の意味を表し、J
1はハロゲン原子である。J
1としては、Cl、Br又はIが好ましい。
【0032】
上記反応に用いる塩基としては、水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、燐酸ナトリウム、燐酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウムなどの無機塩基などが使用できる。好ましくは、炭酸ナトリウム又は炭酸カリウムである。
【0033】
反応速度を促進する目的で、さらに添加剤を使用することができる。添加剤としては、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、第4級アンモニウム塩、クラウンエーテルなどが使用できる。
【0034】
上記反応においては、溶媒の使用が好ましく、安定で、不活性な、反応を妨げない溶媒が用いられる。例えば、水、アルコール類、アミン類、アセトン又はメチルエチルケトンなどのケトン類;非プロトン性極性有機溶媒(DMF, DMSO, DMAc, NMPなど);芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、テトラリンなど);ハロゲン系炭化水素類(クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタンなど);ニトリル類(アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル等);などが使用できる。これらの溶媒は、反応の起こり易さなどを考慮して、適宜選択することができるが、1種単独でも、2種以上混合しても用いることができる。好ましくは、非プロトン性極性有機溶媒(DMF, DMSO, DMAc, NMPなど)である。
【0035】
反応温度は、特に限定されないが、通常、40〜200℃、好ましくは40〜150℃である。反応時間は、通常、20〜100時間、好ましくは20〜60時間である。
【0036】
上記のようにして得られた、式(1)で表される化合物は、反応後に、水洗し、再結晶などして精製することにより、高純度化することができる。
【0037】
再結晶に用いる溶媒としては、式(1)で表される化合物が加熱時に溶解し、冷却時に析出すれば特に限定されない。例えば、ヘキサン、ヘプタン又はトルエンなどの炭化水素類;クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン系炭化水素類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル類;酢酸エチルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類;メタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール類;これらの混合物;などが挙げられる。好ましくは、トルエン、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ヘキサン、ヘプタン、又はこれらの混合物である。
【0038】
<式(A)で表される化合物>
式(A)で表される化合物は、市販品の入手も可能であるが、下記に示すように、ハロゲン化アリール[2−A]と有機金属試薬[3−A]とを、塩基の存在下に、金属触媒を用いるクロスカップリング反応(鈴木-宮浦反応)させることにより得ることができる。
【0040】
上記式中、X、m
1及びm
2は前記の意味を表し、HalはBr、I又はOTf(Tfはパラトルエンスルホニル基)を表し、MはB(OH)
2又は4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イルを表す。
【0041】
上記クロスカップリング反応に用いるハロゲン化アリール[2−A]とボロン酸誘導体[3−A]の使用割合(当量比)は特に限定されないが、ハロゲン化アリール[2−A]1当量に対して、ボロン酸誘導体[3−A]を1.0〜1.5当量使用することが好ましい。また、ボロン酸誘導体[3−A]1当量に対して、ハロゲン化アリール[2−A]を1.0〜1.5当量使用してもよい。
【0042】
上記カップリング反応で用いられる金属触媒としては、金属錯体と配位子とを使用することが好ましいが、配位子なしでも反応が進行する場合は、配位子を用いなくてもよい。金属錯体としては、種々の構造のものを用いることができるが、パラジウム錯体やニッケル錯体が好ましく使用される。金属錯体としては、低原子価のパラジウム錯体又はニッケル錯体を用いることが好ましく、特に3級ホスフィンや3級ホスファイトを配位子とするゼロ価錯体が好ましい。また、反応系中で容易にゼロ価錯体に変換される適当な前駆体を用いることもできる。
【0043】
さらに、反応系中で、3級ホスフィンや3級ホスファイトを配位子として含まない錯体と、3級ホスフィンや3級ホスファイトとを混合し、3級ホスフィンや3級ホスファイトを配位子とする低原子価錯体を発生させることもできる。3級ホスフィン又は3級ホスファイトとしては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリ-o-トリルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン、フェニルジメチルホスフィン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリフェニルホスファイト等が挙げられる。これらの2種以上を混合して配位子として含む錯体も好適に用いられる。
【0044】
金属触媒としては、3級ホスフィンや3級ホスファイトを含まないパラジウム錯体やニッケル錯体、及び3級ホスフィンや3級ホスファイトを含む錯体と、前記した配位子とを、組み合わせて用いることも好ましい態様である。組み合わせて用いられる、上記3級ホスフィンや3級ホスファイトを含まないパラジウム錯体やニッケル錯体としては、ビス(ベンジリデンアセトン)パラジウム、トリス(ベンジリデンアセトン)ジパラジウム、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム、ビス(ベンゾニトリル)ジクロロパラジウム、酢酸パラジウム、塩化パラジウム、塩化パラジウム-アセトニトリル錯体、パラジウム−活性炭、塩化ニッケル、ヨウ化ニッケル等が挙げられる。また、上記3級ホスフィンや3級ホスファイトを含む錯体としては、ジメチルビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジメチルビス(ジフェニルメチルホスフィン)パラジウム、(エチレン)ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ビス(トリフェニルホスフィン)ジクロロパラジウム、[1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)ジクロリド、[1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ニッケル(II)ジクロリド等が挙げられる。これらは、上記したものに限定されるものではない。
これらパラジウム錯体及びニッケル錯体の使用量は、いわゆる触媒量で良く、一般的には、基質に対して20モル%以下で十分であり、通常10モル%以下である。
【0045】
塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、燐酸ナトリウム、燐酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウムなどの無機塩基;メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、イミダゾール、キノリン、コリジンなどのアミン類;酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム;なども使用できる。
【0046】
上記反応においては、溶媒の使用が好ましく、安定で、不活性な、反応を妨げない溶媒が用いられる。例えば、水、アルコール類、アミン類、非プロトン性極性有機溶媒(DMF, DMSO, DMAc, NMPなど)、エーテル類(Et
2O, i−Pr
2O, TBME, CPME, テトラヒドロフラン, ジオキサンなど)、脂肪族炭化水素類(ペンタン、へキサン、ヘプタン、石油エーテルなど)、芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、テトラリンなど)、ハロゲン系炭化水素類(クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタンなど)、低級脂肪酸エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等)、ニトリル類(アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル等)などが使用できる。これらの溶媒は、反応の起こり易さなどを考慮して適宜選択することができるが、1種単独でも2種以上混合しても用いることができる。
【0047】
反応温度は、特に限定されないが、通常、−90〜200℃、好ましくは−50〜150℃、より好ましくは40〜120℃である。
反応時間は、通常、0.05〜100時間、好ましくは0.5〜40時間、より好ましくは0.5〜24時間である。
【0048】
上記のようにして得られたビフェニル化合物[4−A]は、反応後に、スラリー洗浄、再結晶、シリカゲルカラムクロマトグラフィーなどで精製することにより、高純度化することができる。
【0049】
スラリー洗浄に用いる溶媒としては、特に限定されないが、例えば、ヘキサン、ヘプタン、トルエンなどの炭化水素類;クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン系炭化水素類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル類;酢酸エチルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類;メタノール、エタノール、2−プロパノールなどのアルコール類;これらの混合物;などが挙げられる。
【0050】
再結晶に用いる溶媒としては、ビフェニル化合物[4−A]が加熱時に溶解し、冷却時に析出すれば特に限定されない。例えば、ヘキサン、ヘプタン、トルエンなどの炭化水素類;クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン系炭化水素類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル類;酢酸エチルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類;メタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール類;これらの混合物;などが挙げられる。好ましくは、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、トルエン又はヘキサンである。
【0051】
このような方法により、各種の化合物(A)を製造することができる。
【実施例】
【0052】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、これらの実施例によって本発明の解釈が限定されるものではない。
【0053】
実施例1;
【化9】
【0054】
THF(テトラヒドロフラン)(100.0g)、4,4‘−ビス(4−(1、3−ジオキソラン−2−イル)ブトキシ)1,1’−ビフェニル(10.0g、23mmol)、ヒドロキシメタクリル酸メチルエステル(5.8g、50mmol)及び5%Pd−C(50%wet;エボニック社製)(2.0g)の混合溶液に、塩化第一スズ二水和物(15.3g、68mmol)を溶解した後、0.1N塩酸水溶液(35.7g)を、64℃で30分かけて滴下した。その後、24時間撹拌し、4,4‘−ビス(4−(3−メチレンテトラヒドロフラン−2(3H)−オン−5−イル)ブトキシ)ビフェニルを含む反応混合物を得た。
次に、50℃にてろ過を行い、Pd−Cを除去した後、トルエン(60.0g)を反応混合物に加え、50℃にて攪拌後、塩酸層を廃棄した。続いて、得られた有機層を、15.5wt%水酸化カリウム水溶液(75.0g)中へ、50℃で30分かけて滴下した。その後、さらにトルエン(50.0g)を加え、50℃にて10分間撹拌した後、水層を廃棄した。続いて、水(525.0g)を加え、50℃にて撹拌後、水層を廃棄する操作を4回繰り返し、有機層を得た。
【0055】
さらに、得られた反応混合物中に活性炭(1g)(特製白鷺;日本エンバイロケミカル社製)を加え、50℃にて30分間撹拌した。その後、活性炭をろ過で除き、ろ液を5℃まで冷却して、結晶を析出させた。次いで、結晶をろ過し、乾燥することで、4,4‘−ビス(4−(3−メチレンテトラヒドロフラン−2(3H)−オン−5−イル)ブトキシ)ビフェニルを得た(白色固体、収量:7.7g、収率:70%)。MW/ICP-OES法で確認したところ、Sn及びPdの含量は1ppm未満であった。
【0056】
なお、実施例1で得られた化合物の分析装置及び分析条件は、下記のとおりである。
HPLC分析
装置:LC−2010システム(島津製作所社製)
カラム:Inertsil ODS−3(4.6mmΦ×250mm、ジーエルサイエンス社製)
検出器:UV検出(波長265nm)
溶離液:アセトニトリル/0.2wt%酢酸アンモニウム水溶液(70/30(0−5min)→85/15(10−30min))[v/v]
【0057】
実施例2;
【化10】
【0058】
THF(100.0g)、4,4‘−ビス(4,4−ジメトキシブトキシ)−3−フルオロ−1,1’−ビフェニル(20.0g、46mmol)、ヒドロキシメタクリル酸メチルエステル(11.7g、101mmol)、5%Pd−C(50%wet;エボニック社製)(4.0g)及びジブチルヒドロキシトルエン(0.05g、0.23mmol)の混合溶液に、塩化第一スズ二水和物(28.9g、128mmol)を溶解した後、0.1N塩酸水溶液(35.0g)を、64℃で30分かけて滴下した。その後、24時間撹拌し、4,4‘−ビス(3−(3−メチレンテトラヒドロフラン−2(3H)−オン−5−イル)プロパノキシ)−3−フルオロビフェニルを含む反応混合物を得た。
【0059】
次に、トルエン(80.0g)及びTHF(20.0g)を反応混合物に加え、50℃にてろ過を行い、Pd−Cを除去した。その後、50℃にて攪拌した後、塩酸層を廃棄した。次いで、得られた有機層を15.5wt%水酸化カリウム水溶液(150.0g)中へ、50℃で30分かけて滴下した。その後、50℃にて10分間撹拌し、水層を廃棄した。次いで、水(750.0g)を加え、50℃にて撹拌した後、水層を廃棄する操作を4回繰り返し、有機層を得た。
【0060】
さらに、得られた反応混合中に活性炭(2g)(特製白鷺;日本エンバイロケミカル社製)を加え、50℃にて30分間撹拌した。その後、活性炭をろ過で除き、5℃まで冷却して、結晶を析出させた。次いで、結晶をろ過し、乾燥することで、4,4‘−ビス(3−(3−メチレンテトラヒドロフラン−2(3H)−オン−5−イル)プロパノキシ)−3−フルオロビフェニルを得た(白色固体、収量:14.1g、収率:65%)。MW/ICP-OES法で確認したところ、Sn及びPdの含量は1ppm未満であった。
実施例2で得られた化合物の分析装置及び分析条件は、溶離液をセトニトリル/0.2wt%酢酸アンモニウム水溶液(70/30)[v/v]に変更した以外は、実施例1と同様である。
【0061】
実施例3;
【化11】
【0062】
THF(100.0g)、4,4‘−ビス(4−(1、3−ジオキソラン−2−イル)ブトキシ)−3−フルオロ−1,1’−ビフェニル(10.0g、22mmol)、ヒドロキシメタクリル酸エチルエステル(6.2g、48mmol)、及び5%Pd−C(50%wet;エボニック社製)(2.0g)の混合溶液に、塩化第一スズ二水和物(15.7g、69mmol)を溶解した後、0.1N塩酸水溶液(35.7g)を、64℃で30分かけて滴下した。その後、24時間撹拌し、4,4‘−ビス(4−(3−メチレンテトラヒドロフラン−2(3H)−オン−5−イル)ブトキシ)−3−フルオロ−ビフェニルを含む反応混合物を得た。HPLC分析による反応転化率は99.3%であった。
【0063】
実施例3で得られた化合物の分析装置及び分析条件は、溶離液をアセトニトリル/0.2wt%酢酸アンモニウム水溶液(70/30(0−5min)→85/15(10−30min))[v/v]に変更した以外は、実施例1と同様である。
【0064】
比較例1;
【化12】
触媒としての5%Pd−C(50%wet;エボニック社製)の非存在下で実施した以外は、各成分は実施例3と同様の比率にして反応を行ったが、未反応で、目的物は得られなかった。
【0065】
比較例2;
【化13】
【0066】
触媒である5%Pd−C(50%wet;エボニック社製)の代わりに、Pd(II)−Hydrotalcite(和光純薬社製)を用いた以外は、各成分は実施例3と同様の比率にして反応を行ったが、未反応で、目的物は得られなかった。