特許第6733661号(P6733661)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6733661
(24)【登録日】2020年7月13日
(45)【発行日】2020年8月5日
(54)【発明の名称】重合体、成形材料及び樹脂成形体
(51)【国際特許分類】
   C08F 16/22 20060101AFI20200728BHJP
   C08F 10/14 20060101ALI20200728BHJP
【FI】
   C08F16/22
   C08F10/14
【請求項の数】4
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2017-507591(P2017-507591)
(86)(22)【出願日】2016年2月12日
(86)【国際出願番号】JP2016054203
(87)【国際公開番号】WO2016152310
(87)【国際公開日】20160929
【審査請求日】2018年10月15日
(31)【優先権主張番号】特願2015-62052(P2015-62052)
(32)【優先日】2015年3月25日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108419
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 治仁
(72)【発明者】
【氏名】寶川 卓士
(72)【発明者】
【氏名】小松原 拓也
(72)【発明者】
【氏名】藤井 健作
(72)【発明者】
【氏名】清水 康寛
(72)【発明者】
【氏名】浪越 毅
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 眞次
(72)【発明者】
【氏名】村田 美樹
【審査官】 阪▲崎▼ 裕美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−113049(JP,A)
【文献】 特開2005−187703(JP,A)
【文献】 特開2010−032627(JP,A)
【文献】 特開2010−174128(JP,A)
【文献】 特開平06−107729(JP,A)
【文献】 特開2010−077331(JP,A)
【文献】 特開2005−023049(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 16/
C08F 10/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示される繰り返し単位のみを有する重合体、又は、下記式(1)で示される繰り返し単位と、下記式(1)で示される繰り返し単位以外の繰り返し単位を有する重合体であって、下記式(1)で示される繰り返し単位以外の繰り返し単位の含有量が、全繰り返し単位の1〜20モル%である重合体。
【化1】
〔Xは酸素原子又は化学的な単結合を表し、Xは化学的な単結合を表し、r〜rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。Yは、下記式(4)、(6)、(7)、(16)、(17)、(18)及び(21)で示される基のいずれかを表す。
【化2】


(式(4)中、R〜R10のいずれか一つが結合手であり、その他のR〜R10は、それぞれ独立に、水素原子、炭化水素基、又は酸素原子を有する炭化水素基を表す。R〜R10は、互いに結合して、環を形成してもよい。vは0〜2の整数、wは0又は1、xは0又は1であり、wとxの少なくとも一方は1である。式(6)、(7)、(16)、(17)、(18)及び(21)中、*は結合手を表し、n、nは、それぞれ独立に、1〜4の整数を表す。)〕
【請求項2】
前記式(1)で示される繰り返し単位の含有量が、全繰り返し単位中、50重量%以上である請求項1に記載の重合体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の重合体を含有する成形材料。
【請求項4】
請求項3に記載の成形材料を成形して得られる樹脂成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学用成形体の樹脂成分として有用な新規重合体、この重合体を含有する成形材料、及び、この成形材料を成形して得られる樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズ等の光学用成形体の樹脂成分には、透明性に優れることが求められる。このような観点から、従来、光学用成形体の樹脂成分としては、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、ポリシクロヘキシルメタクリレート、ポリ4−メチルペンテン、非晶性脂環式ポリオレフィン、多環ノルボルネンポリマー、ビニル脂環式炭化水素重合体等が用いられてきた。
例えば、特許文献1には、特定の繰り返し単位を有するビニル脂環式炭化水素重合体を含有する成形材料を用いて得られた光学用成形体が記載されている。
【0003】
また、近年、携帯電話用カメラ等のレンズにおいては、さらなる薄肉化や高解像度化が求められている。このため、透明性に優れることに加えて、高屈折率かつ低複屈折性の樹脂が求められてきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−197139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らの検討によれば、重合体を構成する炭素原子と水素原子の比の値(炭素原子数/水素原子数)を高めることで、高アッベ数の重合体の屈折率が高くなる傾向があり、また、重合体中の芳香族環を有する繰り返し単位の割合を高めることで、低アッベ数の重合体の屈折率が高くなる傾向があることが分かった。また、これらの方法により重合体の屈折率を高くすると、重合体のガラス転移温度も同様に高くなる傾向があることも分かった。
高いガラス転移温度を有する重合体は、耐熱性の観点からは好ましい。しかしながら、成形性に優れる成形材料が必要な場合や、成形体の残留応力の低減化を図る場合等には、重合体のガラス転移温度は適度に低いことが好ましい。
したがって、成形体の用途等によっては、高屈折率かつ低複屈折性の重合体であって、ガラス転移温度が適度に低いものも望まれていた。
【0006】
本発明は、上記した従来技術に鑑みてなされたものであり、光学用成形体の樹脂成分として有用な新規重合体、この重合体を含有する成形材料、及びこの成形材料を成形して得られる樹脂成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく、高屈折率かつ低複屈折性の重合体について鋭意検討した。その結果、重合体の側鎖に、ガラス転移温度を低くする効果を有する部分構造と、屈折率を高くする効果を有する部分構造を、それぞれ導入することで、高屈折率かつ低複屈折性であって、比較的低いガラス転移温度を有する重合体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
かくして本発明によれば、下記〔1〕〜〔7〕の重合体、〔8〕の成形材料、及び〔9〕の樹脂成形体が提供される。
〔1〕下記式(1)で示される繰り返し単位を有することを特徴とする重合体。
【0009】
【化1】
【0010】
〔X、Xは、それぞれ独立に、酸素原子又は化学的な単結合を表し、r〜rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。Yは、下記式(2)
【0011】
【化2】
【0012】
(pは8〜21の整数、qは7〜40の整数を表し、(p/q)の値は0.5超である。rは0〜3の整数を表す)
で示される組成を有する1価の基を表す。
、nは、それぞれ独立に、1〜4の整数を表す。〕
〔2〕Yが下記式(3)で示される基である、〔1〕に記載の重合体。
【0013】
【化3】
【0014】
(A〜A18のいずれか一つが結合手であり、その他のA〜A18は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、又は酸素原子を有する炭化水素基を表す。A〜A18は、互いに結合して環を形成してもよい。sは0〜2の整数、tは0〜2の整数、uは0又は1以上の整数を表す。)
【0015】
〔3〕Yが下記式(5)〜(7)のいずれかで示される基である、〔2〕に記載の重合体。
【0016】
【化4】
(A19、A20は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、又は酸素原子を有する炭化水素基を表す。A19、A20は、互いに結合して環を形成してもよい。*は結合手を表す。)
【0017】
〔4〕前記式(1)で示される繰り返し単位の含有量が、全繰り返し単位中、50重量%以上である〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の重合体。
〔5〕前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の重合体を含有する成形材料。
〔6〕前記〔5〕に記載の成形材料を成形して得られる樹脂成形体。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、光学用成形体の樹脂成分として有用な新規重合体、この重合体を含有する成形材料、及びこの成形材料を成形して得られる樹脂成形体が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を、1)重合体、2)成形材料、及び、3)樹脂成形体に項分けして詳細に説明する。
【0020】
1)重合体
本発明の重合体は、下記式(1)で示される繰り返し単位を有することを特徴とする。
【0021】
【化5】
【0022】
式(1)中、X、Xは、それぞれ独立に、酸素原子又は化学的な単結合を表す。
〜rは、それぞれ独立に、水素原子、又はメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜6のアルキル基を表す。r〜rは、全て水素原子が好ましい。
Yは、下記式(2)で示される組成を有する1価の基を表す。
【0023】
【化6】
【0024】
式(2)中、pは8〜21、好ましくは11〜21の整数、qは7〜40、好ましくは12〜40の整数を表し、(p/q)の値は0.5超、好ましくは0.7〜2.0である。rは0〜3、好ましくは0〜1の整数を表す。
Yは、重合体の屈折率に影響する部分である。(p/q)の値が0.5以下のときは、重合体の屈折率が低くなる傾向がある。
【0025】
Yは、脂環式構造や芳香族環構造等の環構造を有する基が好ましい。Yが環構造を有する基であることで、高屈折率の重合体が得られ易くなる。Yが環構造を有する基であるとき、その結合手は、通常、環構造を構成する炭素から伸びている。
環構造を有する基としては、例えば、下記式(3)又は(4)で示される基が挙げられる。
〔式(3)で示される基〕
【0026】
【化7】
【0027】
式(3)中、A〜A18のいずれか一つが結合手であり、その他のA〜A18は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、又は酸素原子を有する炭化水素基を表す。A〜A18は、互いに結合して環を形成してもよい。
sは0〜2、好ましくは0〜1の整数、tは0〜2、好ましくは0〜1の整数、uは0又は1以上、好ましくは1〜3の整数を表す。
【0028】
〜A18のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が挙げられる。
〜A18の炭化水素基の炭素数は、通常、1〜20、好ましくは1〜10である。
〜A18の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等の炭素数1〜20のアルキル基;ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、クロチル基等の炭素数2〜20のアルケニル基;エチニル基、プロパルギル基等の炭素数2〜20のアルキニル基;フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等の炭素数6〜20のアリール基;等が挙げられる。
【0029】
〜A18の酸素原子を有する炭化水素基(前記炭化水素基に酸素原子が導入されてなるもの)としては、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜20のアルコキシ基;フェノキシ基等のアリールオキシ基;メトキシメチル基等のエーテル結合含有基;等が挙げられる。
〜A18が、互いに結合して形成された環は、単環であってもよいし、多環であってもよい。また、環内に二重結合を有していてもよい。
【0030】
式(3)で示される基の具体例としては、下記式(5)〜(7)で示される基が挙げられる。
【0031】
【化8】
(A19、A20は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、又は酸素原子を有する炭化水素基を表す。A19、A20は、互いに結合して環を形成してもよい。*は結合手を表す。)
【0032】
式(5)中、A19、A20は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、又は酸素原子を有する炭化水素基を表す。A19、A20は、互いに結合して環を形成してもよい。
これらの基の具体例としては、A〜A18として示したものと同様のものが挙げられる。*は結合手を表す。
【0033】
前記式(5)で示される基の具体例としては、下記式(16)〜(21)で示される基が挙げられる。
【0034】
【化9】
【0035】
〔式(4)で示される基〕
【0036】
【化10】
【0037】
式(4)中、R〜R10のいずれか一つが結合手であり、その他のR〜R10は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、又は酸素原子を有する炭化水素基を表す。R〜R10は、互いに結合して、環を形成してもよい。
vは0〜2、好ましくは1〜2の整数、wは0又は1、xは0又は1であり、wとxの少なくとも一方は1である。
【0038】
〜R10の、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素原子を有する炭化水素基の具体例としては、それぞれ、A〜A18として示したものと同様のものが挙げられる。
〜R10が、互いに結合して形成された環は、単環であってもよいし、多環であってもよい。また、環内に二重結合を有していてもよい。
【0039】
式(4)で示される基の具体例としては、下記式(11)〜(15)で示される基が挙げられる。
【0040】
【化11】
【0041】
式(1)中、n、nは、それぞれ独立に、1〜4の整数、好ましくは1または2を表す。
−X−{〔C(r)(r)〕n1−Xn2−で表される基は、重合体のガラス転移温度に影響する部分である。この基が長くなると、重合体のガラス転移温度が低くなる傾向がある。
【0042】
本発明の重合体は、前記式(1)で示される繰り返し単位を1種有していてもよいし、2種以上有していてもよい。
また、後述するように、本発明の重合体は、前記式(1)で示される繰り返し単位以外の繰り返し単位を有していてもよい。
本発明の重合体に含まれる、式(1)で示される繰り返し単位の含有量は、全繰り返し単位中、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上である。
【0043】
本発明の重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは10,000〜300,000、より好ましくは20,000〜200,000、特に好ましくは30,000〜150,000である。重合体の重量平均分子量(Mw)が小さ過ぎると、樹脂成形体の強度が低下するおそれがある。一方、重合体の重量平均分子量(Mw)が大き過ぎると、成形材料の成形性が低下するおそれがある。
【0044】
重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、特に限定されないが、好ましくは1〜8、より好ましくは1〜6である。
重合体の分子量分布が上記範囲内にあることで、十分な機械的強度を有する樹脂成形体を得ることができる。
重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、シクロヘキサンを溶離液とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)による標準ポリイソプレン換算値である。
【0045】
本発明の重合体の製造方法は特に限定されない。例えば、式(1)で示される繰り返し単位に対応する、下記式(22)
【0046】
【化12】
【0047】
(式中、X、X、Y、r〜r、n、nは前記と同じ意味を表す。)
で示される単量体を用いて、付加重合反応を行うことにより、本発明の重合体を製造することができる。
また、脂環式構造を有する重合体は、芳香族環構造を有する単量体を用いて付加重合反応を行った後、反応生成物を水素添加反応に供することにより得ることもできる。
【0048】
付加重合反応としては、ラジカル重合反応、アニオン重合反応、カチオン重合反応、配位重合反応等が挙げられる。これらは用いる単量体の反応性等を考慮して適宜決定することができる。
例えば、式(22)中のXが化学的な単結合である単量体を用いる場合には、配位重合反応により重合反応を行うのが好ましく、Xが酸素原子である単量体を用いる場合には、カチオン重合反応により重合反応を行うのが好ましい。
【0049】
配位重合反応における反応条件の詳細は特に限定されず、従来公知の方法を適宜利用することができる。
配位重合反応に用いる重合触媒としては、バナジウム化合物及び有機アルミニウム化合物から形成されるバナジウム系触媒;チタン化合物及び有機アルミニウム化合物から形成されるチタン系触媒;ジルコニウム錯体及びアルミノオキサンから形成されるジルコニウム系触媒;等が挙げられる。
これらの重合触媒は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
重合触媒の使用量は、重合条件等により適宜選択すればよいが、単量体1モルに対して、通常0.000001〜0.1モル、好ましくは、0.00001〜0.01モルである。
【0050】
配位重合反応は、通常、有機溶媒中で行われる。有機溶媒としては、重合反応に不活性なものであれば格別な制限はない。
用いる有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン、ビシクロノナン等の脂環族炭化水素系溶媒;ジクロルエタン、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン、トリクロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;等が挙げられる。
【0051】
重合温度は、通常−50〜+250℃、好ましくは−30〜+200℃、より好ましくは−20〜+150℃である。
重合時間は、重合条件により適宜選択されるが、通常30分から20時間、好ましくは1〜10時間である。
【0052】
カチオン重合反応における反応条件の詳細は特に限定されず、従来公知の方法を適宜利用することができる。
カチオン重合反応に用いるカチオン重合触媒としては、ホウ素化合物、シラン化合物、イオン性化合物、ブレンステッド酸、金属化合物等が挙げられる。
【0053】
ホウ素化合物としては、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体等が挙げられる。
シラン化合物としては、(クロロメチル)ジメチルクロロシラン、クロロジメチルビニルシラン、(トリフルオロアセトキシ)トリメチルシラン、クロロジメチルアリルシラン、ジメチル(n−プロピル)クロロシラン、ジメチルイソプロピルクロロシラン、(3−シアノプロピル)ジメチルクロロシラン、トリエチルブロモシラン、トリエチルクロロシラン、t−ブチルジメチルクロロシラン、ジメチルフェニルクロロシラン、トリブチルクロロシラン、ジフェニルメチルクロロシラン、トリフェニルクロロシラン、トリベンジルクロロシラン等が挙げられる。
【0054】
イオン性化合物としては、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等のスルホニウム塩;ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ヨードニウム[4−(4−メチルフェニル−2−メチルプロピル)フェニル]ヘキサフルオロホスフェート等のヨードニウム塩;テトラフルオロホスホニウムヘキサフルオロホスフェート等のホスホニウム塩が挙げられる。
ブレンステッド酸としては、硫酸、硝酸、塩酸、メタンスルホン酸、ヘキサフルオロリン酸、ヘキサフルオロアンチモン酸、p−トルエンスルホン酸、フッ化水素酸等が挙げられる。
【0055】
金属化合物としては、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、四塩化チタン、塩化鉄(III)、塩化鉄(II)、二塩化亜鉛、四塩化錫等の金属ハロゲン化物;トリエチルアルミニウム、ジエチル亜鉛等の金属アルキル化物;等が挙げられる。
【0056】
カチオン重合触媒の使用量は、重合条件等により適宜選択すればよいが、単量体1モルに対して、通常0.000001〜0.1モル、好ましくは、0.00001〜0.01モルである。
【0057】
カチオン重合反応は、通常、有機溶媒中で行われる。有機溶媒としては、配位重合反応における溶媒として示したものと同様のものが挙げられる。
【0058】
重合温度は、通常−50〜+250℃、好ましくは−30〜+200℃、より好ましくは−20〜+150℃である。
重合時間は、重合条件により適宜選択されるが、通常30分から20時間、好ましくは1〜10時間である。
【0059】
本発明の重合体を製造する際は、前記式(22)で示される単量体と共重合可能なその他の単量体を用いることもできる。
その他の単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン等の炭素数2〜20のα−オレフィン;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン等の非共役ジエン;等が挙げられる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンがより好ましい。
その他の単量体は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。その他の単量体を用いる場合、その使用量は、前記式(22)で示される単量体とその他の単量体の合計量に対し、通常、1〜20モル%、好ましくは1〜10モル%である。
【0060】
式(22)で示される単量体を2種以上用いる場合や、式(22)で示される単量体とその他の単量体を用いる場合は、本発明の重合体は、ブロック共重合体であってもよいし、ランダム共重合体であってもよい。
【0061】
式(22)で示される化合物の多くは公知物質であり、公知の方法により製造し、入手することができる。
例えば、式(22)中、Xが酸素原子である化合物(22a)は、以下のようにして製造することができる。
【0062】
【化13】
【0063】
すなわち、式(35)で示されるアルコール化合物と、式(36)で表される酢酸ビニル化合物とを、クロロ(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)二量体と炭酸ナトリウムの存在下に反応させることにより、式(22a)で示される化合物を得ることができる(Organic Syntheses,Vol.82,P55−48,2005年等)。
また、金属アルコラート触媒の存在下に、アセチレンとアルコール化合物を反応させることによっても、式(22a)で示される化合物を得ることができる(特開平4−198144号公報等)。
【0064】
また、式(22)中、Xが化学的単結合である化合物(22b)は、以下のようにして製造することができる。
【0065】
【化14】
【0066】
すなわち、式(37)で示されるアルコール化合物と三臭化ホウ素(BBr)とを反応させた後、t-ブトキシカリウム等の強塩基で処理することにより、式(22b)で示される化合物を得ることができる(Organic syntheses collective volume3 P370等)。
【0067】
上記のように、本発明の重合体は、重合体の屈折率を高める効果を有する、Yで表される基と、重合体のガラス転移温度を低くする効果を有する「−X−{〔C(r)(r)〕n1−Xn2−」で表される基を有する。
このため、これらを適切に組み合わせることにより、従来の方法では得られ難かった、屈折率が高く、ガラス転移温度が低い重合体を得ることができる。
例えば、本発明の重合体においては、ガラス転移温度と屈折率(n)の関係が、下記式を満たすことが好ましい。
【0068】
【数1】
【0069】
〔式中、xは、重合体のガラス転移温度(℃)を表し、yは25℃における屈折率(n)を表す。〕
また、本発明の重合体のガラス転移温度は、好ましくは50〜200℃、より好ましくは100〜170℃である。
本発明の重合体の25℃における屈折率(n)は、好ましくは、1.53〜1.80、より好ましくは1.54〜1.70である。
【0070】
本発明の重合体は、そのアッベ数は50以上又は35以下が好ましく、54以上又は30以下がより好ましく、55以上又は25以下が特に好ましい。
アッベ数とは、光の波長ごとの屈折率の度合い(屈折率の波長分散)を示す数値である。フラウンホーファー線のF線(波長:486.1nm)、d線(波長:587.6nm)、C線(波長:656.3nm)の光に対するその材料の屈折率を、それぞれn、n、nとしたとき、アッベ数(ν)は、下記式(1)で定義される。
【0071】
【数2】
【0072】
アッベ数(ν)は、その値が大きい材料ほど、その屈折率の波長分散が小さく、波長ごとの光の出射角度のばらつきが小さくなり、その値が小さい材料ほど、その屈折率の波長分散が大きく、波長ごとの光の出射角度のばらつきが大きくなる。
アッベ数(ν)が50以上の重合体は、低分散光学部材の製造原料として好ましく用いられる。
また、アッベ数(ν)が、35以下の重合体は、高分散光学部材の製造原料として好ましく用いられる。
通常、低分散光学部材と高分散光学部材は組み合わせて使用され、低分散光学部材で生じた光の出射角度の分散を、高分散光学部材で補正される。
【0073】
本発明の重合体のアッベ数が50以上のとき、本発明の重合体の屈折率(n)とアッベ数(ν)の関係は、好ましくは屈折率(n)≧1.53かつアッベ数(ν)≧50、より好ましくは屈折率(n)≧1.54かつアッベ数(ν)≧54、さらに好ましくは屈折率(n)≧1.55かつアッベ数(ν)≧55である。これらの関係を満たす重合体は、低分散光学部材の製造原料として好ましく用いられる。
【0074】
本発明の重合体のアッベ数が35以下のとき、本発明の重合体の屈折率(n)とアッベ数(ν)の関係は、好ましくは屈折率(n)≧1.60かつアッベ数(ν)≦35、より好ましくは屈折率(n)≧1.62かつアッベ数(ν)≦30、さらに好ましくは屈折率(n)≧1.64かつアッベ数(ν)≦25である。これらの関係を満たす重合体は、高分散光学部材の製造原料として好ましく用いられる。
【0075】
本発明の重合体は、低複屈折性を有する。本発明の重合体の単位厚さあたりの複屈折量(δn)の絶対値は、0〜80が好ましく、0〜50がより好ましい。δn値は、例えば、実施例に記載の方法により求めることができる。
【0076】
従来、重合体の低複屈折性を発現させるために、正の複屈折を有する繰り返し単位と、負の複屈折を有する繰り返し単位とを組み合わせることが行われてきた。例えば、エチレンノルボルネン類付加共重合体においては、正の複屈折を有するエチレン由来の繰り返し単位と、負の複屈折を有するノルボルネン系モノマー由来の繰り返し単位を組み合わせることにより、低複屈折性が発現する。
このように、従来の低複屈折性の重合体は、二種以上の繰り返し単位を含み、かつ、その少なくとも一種は剛直な構造を有するものが多く、その主鎖には、必然的に剛直な構造が組み込まれていた。この結果、従来の低複屈折性の重合体は、ガラス転移温度が高くなる傾向があった。
【0077】
一方、本発明の重合体は、従来のものとは異なる方法により低複屈折性を発現させたものであり、式(1)で示される繰り返し単位のみであっても、低複屈折性を有する。
このように、本発明の重合体は、主鎖中に剛直構造を有しなくても、高屈折率かつ低複屈折性を有するものであるため、高屈折率化や低複屈折化に伴って、ガラス転移温度が高くなるという現象が生じにくいものである。
【0078】
2)成形材料
本発明の成形材料は、本発明の重合体を含有する。
成形材料は、本発明の効果を阻害しない範囲で、本発明の重合体以外の樹脂成分や、添加剤等のその他の成分を含有してもよい。
【0079】
本発明の重合体以外の樹脂成分(以下、「その他の樹脂成分」ということがある。)としては、スチレン・ブタジエンブロック共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレン・ブロック共重合体、スチレン・イソプレン・ブロック共重合体、スチレン・イソプレン・スチレン・ブロック共重合体、及びこれらの水素添加物、スチレン・ブタジエン・ランダム共重合体等のスチレン系重合体が挙げられる。
本発明に用いる成形材料が、その他の樹脂成分を含有する場合、その含有量は、本発明の重合体100重量部に対して、通常、0.1〜100重量部、好ましくは1〜50重量部である。
【0080】
添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、近赤外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、酸補足剤等が挙げられる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられる。
【0081】
フェノール系酸化防止剤としては、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン、ジブチルヒドロキシトルエン、2,2’−メチレンビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−t−ブチル−3−メチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、α−トコフェノール、2,2,4−トリメチル−6−ヒドロキシ−7−t−ブチルクロマン、テトラキス〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、〔ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]〕等が挙げられる。
リン系酸化防止剤としては、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジターシャリーブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジターシャリーブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジターシャリーブチルフェニル)4,4’−ビフェニルジホスファイト、トリノニルフェニルホスファイト等が挙げられる。
硫黄系酸化防止剤としては、ジステアリルチオジプロピオネート、ジラウリルチオジプロピオネート等が挙げられる。
【0082】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベゾエート系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、アクリレート系紫外線吸収剤、金属錯体系紫外線吸収剤等が挙げられる。
光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤が挙げられる。
近赤外線吸収剤は、シアニン系近赤外線吸収剤;ピリリウム系赤外線吸収剤;スクワリリウム系近赤外線吸収剤;クロコニウム系赤外線吸収剤;アズレニウム系近赤外線吸収剤;フタロシアニン系近赤外線吸収剤;ジチオール金属錯体系近赤外線吸収剤;ナフトキノン系近赤外線吸収剤;アントラキノン系近赤外線吸収剤;インドフェノール系近赤外線吸収剤;アジ系近赤外線吸収剤;等が挙げられる。
可塑剤としては、燐酸トリエステル系可塑剤、脂肪酸一塩基酸エステル系可塑剤、二価アルコールエステル系可塑剤、オキシ酸エステル系可塑剤等が挙げられる。
帯電防止剤としては、多価アルコールの脂肪酸エステル等が挙げられる。
酸補足剤としては、酸化マグネシウム、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0083】
これらの添加剤の含有量は、目的に合わせて適宜決定することができる。
その含有量は、本発明の重合体100重量部に対して、通常0.001〜5重量部、好ましくは0.01〜1重量部の範囲である。
【0084】
成形材料は、常法に従って、各成分を混合することにより得ることができる。混合方法としては、各成分を適当な溶媒中で混合する方法や、溶融状態で混錬する方法が挙げられる。
混練は、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、フィーダールーダー等の溶融混練機を用いて行うことができる。
混練温度は、好ましくは200〜400℃、より好ましくは240〜350℃の範囲である。混練に際し、各成分を一括添加して混練してもよいし、数回に分けて添加しながら混練してもよい。
混錬後は、常法に従って、棒状に押出し、ストランドカッターで適当な長さに切ることで、ペレット化することができる。
【0085】
本発明の成形材料は、本発明の重合体を含有するものであり、成形性に優れる。また、本発明の成形材料を用いることで、高屈折率かつ低複屈折性の樹脂成形体を得ることができる。このため、本発明の成形材料は、レンズ等の光学用成形体の成形材料として好適に用いられる。
【0086】
3)樹脂成形体
本発明の樹脂成形体は、本発明の成形材料を成形して得られるものである。
成形方法は特に限定されず、射出成形法、プレス成形法、押出成形法等が挙げられる。これらの中でも、成形体が光学部材等である場合には、精度よく目的の成形体を得ることができることから、射出成形が好ましい。
【0087】
成形時の溶融温度は、用いる成形材料によっても異なるが、通常200〜400℃、好ましくは210〜350℃である。金型を使用する場合の金型温度は、成形材料のガラス転移温度をTgとすると、通常、20℃から(Tg+15)℃、好ましくは(Tg−30)℃から(Tg+10)℃、より好ましくは(Tg−20)℃から(Tg+5)℃の温度である。
【0088】
本発明の樹脂成形体は、本発明の成形材料を成形して得られるものであるため、高屈折率かつ低複屈折性を有する。
本発明の樹脂成形体は、光学レンズ、プリズム、導光体等の光学部材として、好適に用いられる。
【実施例】
【0089】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例に何ら限定されるものではない。以下において、「部」及び「%」は特に断りのない限り、重量基準であり、圧力はゲージ圧力である。
また、目的物の構造は、H−NMRスペクトルを測定することにより、同定した。
【0090】
各種の物性の測定は、下記の方法に従って行った。
(1)重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)
重合体の重量平均分子量(Mw)は、シクロヘキサンを溶離液とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定し、標準ポリイソプレン換算値として求めた。
標準ポリイソプレンとしては、東ソー社製、標準ポリイソプレン(Mw=602、1390、3920、8050、13800、22700、58800、71300、109000、280000)を用いた。
測定は、カラム(東ソー社製、TSKgelG5000HXL、TSKgelG4000HXL及びTSKgel G2000HXL)を3本直列に繋いで用い、流速1.0mL/分、サンプル注入量100μL、カラム温度40℃の条件で行った。
【0091】
(2)ガラス転移温度
重合体のガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量分析計(ナノテクノロジー社製、製品名:DSC6220SII)を用いて、JIS K 6911に基づき、昇温速度10℃/分の条件で測定した。
【0092】
(3)屈折率
重合体を、厚さ5mmのシート状に成形し、〔重合体のガラス転移温度(Tg)−15〕℃の雰囲気下に20時間放置したものを測定試料とした。
得られた測定試料について、精密屈折計(島津製作所社製、製品名:KPR−200、光源=Heランプ(587.6nm)、H2ランプ(656.3nm、486.1nm)を用いて、25℃における屈折率(n、n、n)を測定した。
第1、2表中には、波長が587.6nmの光における屈折率を示す。
【0093】
(4)アッベ数(ν
屈折率測定により得られた、25℃における屈折率(n、n、n)を用いて、下記式(1)に従ってアッベ数(ν)を算出した。
【0094】
【数3】
【0095】
式(1)中、n、n、nはそれぞれ、波長587.6nm、656.3nm、486.1nmにおける屈折率を表す。
【0096】
(5)単位厚さあたりの複屈折量(δn)
得られた重合体を35mm×10mm×1mmの形状に成形した。このシートの両端をクリップで固定した後に、片方のクリップに160gの重りを固定した。次いで、〔重合体のガラス転移温度(Tg)−15〕℃のオーブン内に、重りを固定していない方のクリップを起点にして、10分間シートを吊るして延伸処理を行い、これを測定試料とした。
得られた測定試料について、複屈折計(王子計測器製、製品名:KOBRA−CCD/X)を用いて波長が650nmの光における、測定試料中心部のレタデーション値を測定した(この測定値をaとする。)。また、測定試料中心部の厚みを測定し(この測定値をb(mm)とする。)、式:δn=a×(1/b)、により、δn値を求めた。
δn値が0に近いものほど複屈折が小さい。また、延伸方向に複屈折が発生したものは正の値を示し、延伸方向と直交する方向に複屈折が発生したものは負の値を示す。
【0097】
[製造例1]アルコール化合物1の合成
【0098】
【化15】
【0099】
内部を窒素置換した反応器に、テトラシクロドデセン(200g)を入れ、100℃に昇温した。次いで、全容を攪拌しながら、ギ酸(172g)を1時間かけて滴下した。滴下終了後さらに8時間攪拌を継続した。得られた反応液にトルエン(400g)を加え、これを飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(300mL)で3回洗浄した後、分液処理により有機層を取り出した。
ロータリーエバポレーターを用いて、有機層中のトルエンを留去し、残留物をリフラックスコンデンサー付の反応器に移し、次いで、この反応器に、メタノール(100mL)、蒸留水(10mL)、水酸化カリウム(55g)を加え、全容を65℃に昇温し、8時間攪拌を継続して加水分解反応を行った。
反応液にトルエン(500mL)を加え、これを2規定塩化水素水溶液(300mL)で3回洗浄した後、分液処理により有機層を取り出した。
ロータリーエバポレーターを用いて、有機層のトルエンを留去し、残留物を減圧蒸留(87〜90℃、0.013kPa)することにより、アルコール化合物1を180g得た。
【0100】
[製造例2]アルコール化合物2の合成
【0101】
【化16】
【0102】
ステンレス製オートクレーブに、ジシクロペンタジエン(100g)、3−ブテン−1−オール(500g)を加え、系内を窒素置換し密閉した後、全容を攪拌しながら、220℃に加熱し、1時間反応を行った。次いで、反応液に、さらにジシクロペンタジエン(100g)を加え、系内を窒素置換し密閉した後、同様に反応を行う作業を2回繰り返した。
反応液を、攪拌器付きオートクレーブに移し、シクロヘキサン100部、珪藻土担持ニッケル触媒(クラリアント社製、製品名:T8400RL、ニッケル担持率58%)(0.5g)を加えた。オートクレーブ内を水素で置換した後、160℃、2.0MPaの水素圧力下で2時間、水素化反応を行った。
水素化反応終了後、珪藻土(昭和化学工業社製、製品名:ラヂオライト(登録商標)♯500)を濾過床として、加圧濾過器(石川島播磨重工社製、製品名:フンダフィルタ−)を使用し、圧力0.25MPaで加圧濾過して、無色透明な溶液を得た。得られた溶液中のシクロヘキサンを、ロータリーエバポレーターを用いて留去し、残留物を減圧蒸留(113〜116℃、0.013kPa)することにより、アルコール化合物2を71g得た。
【0103】
[製造例3]単量体1の合成
【0104】
【化17】
【0105】
三方コックとジムロートを付けた二口フラスコに、クロロ(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)二量体(1.1g)と炭酸ナトリウム(15.7g)を加え、真空ポンプで系内を脱気し、窒素置換を行った後、全容を攪拌しながら、トルエン(164mL)、アルコール化合物1(29.2g)、酢酸ビニル(68.0mL)をこの順で加えた。次いで、内容物を100℃で3時間加熱して反応を行った後、25℃まで放冷した。反応混合物を、セライトを使用して濾過し、濾液を水で洗浄した後、分液処理により有機層を取り出した。
次いで、エバポレーターによる濃縮と減圧乾燥を行い、有機層中の溶媒と未反応の酢酸ビニルを留去し、残留物を減圧蒸留(80℃、0.20kPa)することにより、単量体1を19.7g得た。
【0106】
[製造例4]単量体2の合成
【0107】
【化18】
【0108】
製造例3において、アルコール化合物1の代わりに、アルコール化合物2を用いたこと以外は製造例3と同様にして、単量体2を得た。
【0109】
[製造例5]単量体3の合成
【0110】
【化19】
【0111】
内部を窒素置換した反応器に、アルコール化合物2(60g)、ジエチルエーテル(200g)を加え、全容を攪拌しながら、3臭化リン(30g)を室温(25℃、以下にて同じ。)で1時間かけて滴下した。滴下終了後さらに23時間攪拌を継続し反応液を得た。反応液にトルエン(400g)を加え、これを飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(300mL)で3回洗浄した後、分液処理により有機層を取り出した。
次いで、この有機層の溶液を攪拌しながら、この溶液に室温でt−ブトキシカリウム(50g)を加え、さらに5時間攪拌を継続し反応液を得た。この反応液にトルエン(500mL)を加え、これを2規定塩化水素水溶液(300mL)で3回洗浄した後、分液処理により有機層を取り出した。
ロータリーエバポレーターを用いて、有機層のトルエンを留去し、残留物を減圧蒸留(80〜83℃、0.13kPa)することにより、単量体3を25g得た。
【0112】
[製造例6]単量体4の合成
【0113】
【化20】
【0114】
製造例3において、アルコール化合物1の代わりに、2−アダマンタノールを用いたこと以外は製造例3と同様にして、単量体4を得た。
【0115】
[製造例7]アルコール化合物3の合成
【0116】
【化21】
【0117】
ステンレス製オートクレーブに、ジシクロペンタジエン(100g)、酢酸アリル(500g)を加え、系内を窒素置換し密閉した後、全容を攪拌しながら、220℃に加熱し、1時間反応を行った。次いで、反応液に、さらにジシクロペンタジエン(100g)を加え、系内を窒素置換し密閉した後、同様に反応を行う作業を2回繰り返した。
反応液を、攪拌器付きオートクレーブに移し、シクロヘキサン100部、珪藻土担持ニッケル触媒(クラリアント社製、製品名:T8400RL、ニッケル担持率58%)0.5gを加えた。オートクレーブ内を水素で置換した後、160℃、2.0MPaの水素圧力下で、2時間水素化反応を行った。
水素化反応終了後、珪藻土(昭和化学工業社製、製品名:ラヂオライト(登録商標)♯500)を濾過床として、加圧濾過器(石川島播磨重工社製、製品名:フンダフィルタ−)を使用し、圧力0.25MPaで加圧濾過して、無色透明な溶液を得た。
得られた溶液中のシクロヘキサンを、ロータリーエバポレーターを用いて留去した後に、残留物をメタノールに溶解させた。得られた溶液に水酸化ナトリウム100gを加え、室温で24時間全容を攪拌した。得られた溶液中のメタノールを、ロータリーエバポレーターを用いて留去した後に、濾紙で濾過を行い、微黄色の液体を得た。
微黄色の液体を減圧蒸留(89℃、0.04kPa)することにより、アルコール化合物3を71g得た。
【0118】
[製造例8]アルコール化合物4の合成
【0119】
【化22】
【0120】
製造例2において、3−ブテン−1−オールの代わりに、4−ペンテン−1−オールを用いたこと以外は製造例2と同様にして、減圧蒸留(113℃、0.05kPa)することによりアルコール化合物4を得た。
【0121】
[製造例9]アルコール化合物5の合成
【0122】
【化23】
【0123】
製造例2において、3−ブテン−1−オールの代わりに、5−ヘキセン−1−オールを用いたこと以外は製造例2と同様にして、減圧蒸留(126℃、0.05kPa)することによりアルコール化合物5を得た。
【0124】
[製造例10]単量体5の合成
【0125】
【化24】
【0126】
三方コックとジムロートを付けた二口フラスコに、クロロ(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)二量体(1.2g、1.75mmol)と炭酸ナトリウム16.8gを加え、真空ポンプで系内を脱気し、窒素置換を行った後、トルエン176mL、アルコール化合物3(33.61g、0.175mol)、及び、酢酸ビニル(40.37mL、0.438mol)をこの順で撹拌しながら加えた。得られた混合後を100℃で3時間加熱撹拌した後、室温まで空冷した。反応混合物を、セライトを使用して濾過し、濾液に水を加えて分液を行い、有機層を分取した。エバポレーターにより、有機層から溶媒と未反応の酢酸ビニルを留去した後、得られた残留物を減圧蒸留した。減圧蒸留による精製をさらに2回繰り返すことにより、単量体5を得た(66.5℃、0.2kPa)。収量19.41g、収率50.9%。
【0127】
[製造例11]単量体6の合成
【0128】
【化25】
【0129】
三方コックとジムロートを付けた二口フラスコに、クロロ(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)二量体(0.58g、0.863mmol)と炭酸ナトリウム8.26gを加え、真空ポンプで系内を脱気し、窒素置換を行った後、トルエン86mL、アルコール化合物4(19.01g、0.0863mol)、及び、酢酸ビニル(19.9mL、0.216mol)をこの順で撹拌しながら加えた。得られた混合液を100℃で3時間加熱撹拌した後、室温まで空冷し、反応混合物を、セライトを使用して濾過した。濾液に水を加えて分液を行い、有機層を分取した。エバポレーターにより、有機層から溶媒と未反応の酢酸ビニルを留去した後、得られた残留物を減圧蒸留した。減圧蒸留による精製をさらに繰り返すことにより、単量体6を得た(95℃、0.2kPa)。収量12.58g、収率59.2%。
【0130】
[製造例11]単量体7の合成
【0131】
【化26】
【0132】
三方コックとジムロートを付けた二口フラスコに、クロロ(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)二量体(0.77g、1.16mmol)と炭酸ナトリウム11.1gを加え、真空ポンプで系内を脱気し、窒素置換を行った後、トルエン116mL、アルコール化合物5(27.14g、0.116mol)、及び、酢酸ビニル(27.6mL、0.300mol)をこの順で撹拌しながら加えた。得られた混合後を100℃で3時間加熱撹拌した後、室温まで空冷し、反応混合物を、セライトを使用して濾過した。濾液に水を加えて分液を行い、有機層を分取した。エバポレーターにより、有機層から溶媒と未反応の酢酸ビニルを留去した後、得られた残留物を減圧蒸留した。減圧蒸留による精製をさらに2回繰り返すことにより、単量体7を得た(125℃、0.2kPa)。収量16.20g、収率53.4%。
【0133】
[製造例12]単量体8の合成
【0134】
【化27】
【0135】
三方コックとジムロートを付けた二口フラスコに、クロロ(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)二量体(1.05g、1.50mmol)と炭酸ナトリウム14.4gを加え、真空ポンプで系内を脱気し、窒素置換を行った後、トルエン164mL、1−アダマンタンメタノール(東京化成社製、25.0g、0.150mol)、及び、酢酸ビニル(68.0mL、0.675mol)をこの順で撹拌しながら加えた。得られた混合物を100℃で3時間加熱撹拌した後、室温まで空冷し、反応混合物を、セライトを使用して濾過した。濾液に水を加えて分液を行い、有機層を分取した。エバポレーターにより、有機層から溶媒と未反応の酢酸ビニルを留去して粗生成物を得た。組成生物をメタノールにより再結晶することにより、単量体8を得た。収量11.74g、収率40.7%。
【0136】
[製造例13]単量体9の合成
【0137】
【化28】
【0138】
三方コックとジムロートを付けた二口フラスコに、クロロ(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)二量体(0.934g、139mmol)と炭酸ナトリウム13.3gを加え、真空ポンプで系内を脱気し、窒素置換を行った後、トルエン164mL、1−アダマンタンエタノール(東京化成社製、25.0g、0.139mol)、及び、酢酸ビニル(57.7mL、0.626mol)をこの順で撹拌しながら加えた。得られた混合物を100℃で3時間加熱撹拌した後、室温まで空冷し、反応混合物を、セライトを使用して濾過した。濾液に水を加えて分液を行い、有機層を分取した。エバポレーターにより、有機層から溶媒と未反応の酢酸ビニルを留去した。得られた残留物を減圧蒸留した。減圧蒸留による精製をさらに2回繰り返すことにより、単量体9を得た(79℃、0.3kPa)。収量12.61g、収率44.0%
【0139】
[製造例14]単量体10の合成
【0140】
【化29】
【0141】
製造例5において、アルコール化合物2の代わりに、アルコール化合物4を用いたこと以外は製造例5と同様の操作を行い、減圧蒸留(61℃、0.04kPa)することにより、単量体10を得た。
【0142】
[製造例15]単量体11の合成
【0143】
【化30】
【0144】
製造例5において、アルコール化合物2の代わりに、アルコール化合物5を用いたこと以外は製造例5と同様の操作を行い、減圧蒸留(81℃、0.06kPa)することにより単量体11を得た。
【0145】
[実施例1]
内部を乾燥させた、三方コックを付けたナス型フラスコに、窒素雰囲気下で、単量体2 17.2mL、トルエン50.3mLを加えた後、このナス型フラスコを−30℃に冷却した。次いで、重合開始剤溶液(BF3・C4H10O 0.3mL、トルエン14.7mL)7.5mLを加えて、内容物を同温度で1時間撹拌した。重合反応終了後、反応停止剤(10体積%アンモニア水/メタノール混合溶媒(1/9))30mLを加えて、重合反応を停止させた。析出したポリマーを濾取し、これをトルエンに完全に溶解させて溶液を得た。この溶液を、イオン交換水で洗浄した後、この溶液に含まれる溶媒を、エバポレーターを用いて留去した。残留物をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させて得られた溶液を、大量のメタノール中に注ぎ、ポリマーを再沈殿させた。
得られたポリマーを濾取し、これを減圧乾燥して、下記式(23)で示される繰り返し単位を有するポリマー1を16.5g得た。
ポリマー1を用いて各種測定を行った。結果を第1表に示す。
【0146】
[実施例2]
三方コックを付けたナス型フラスコに、窒素を流しながら10分間ヒーティングガンを用いて加熱して乾燥させたフラスコに、窒素雰囲気下で、単量体5 15.84mL、トルエン51.61mLを、シリンジで加えたナス型フラスコを−30℃に冷却し、開始剤溶液(BF3OEt2 0.3mL、トルエン14.7mL)7.5mLを加えて、全容を同温度で1.5時間撹拌した。重合反応終了後、停止剤(10vol%アンモニア水/メタノー=1/9)30mLを加えて重合を停止させた。その後、析出したポリマーをトルエンに完全に溶解させ、得られた溶液をイオン交換水で洗浄した後、エバポレーターを用いて溶媒を留去した。ポリマーをTHFに溶解させ、得られた溶液を大量のメタノール中に注ぎ、再沈殿を行ない、沈殿したポリマーを減圧乾燥して、下記式(28)で示される繰り返し単位を有するポリマー2を14.54g得た。収率88.8%
ポリマー2を用いて各種測定を行った。結果を第1表に示す。
【0147】
[実施例3]
三方コックを付けたナス型フラスコに、窒素を流しながら10分間ヒーティングガンを用いて加熱し乾燥させたフラスコに、窒素雰囲気下で、単量体6 11.27mL、トルエン29.23mLをシリンジで加え、ナス型フラスコを−30℃に冷却した。そこへ、開始剤溶液(BF3OEt2 0.3mL、トルエン14.7mL)4.5mLを加えて全容を同温度で1時間撹拌した。重合反応終了後、停止剤(10vol%アンモニア水/メタノー=1/9)30mLを加えて、重合を停止させた。その後、析出したポリマーをトルエンに完全に溶解し、得られた溶液をイオン交換水で洗浄した後、エバポレーターを用いて溶媒を留去した。ポリマーをTHFに溶かして得られた溶液を大量のメタノール中に注ぎ、再沈殿を行ない、沈殿したポリマーを減圧乾燥して下記式(29)で示される繰り返し単位を有するポリマー3を7.85g得た。収率70.7%
ポリマー3を用いて各種測定を行った。結果を第1表に示す。
【0148】
[実施例4]
内部を窒素置換した100mLのオートクレーブに、攪拌子、トルエン30mL、メチルアルミノキサン174mg、単量体10 2gを入れ、全容を25℃で攪拌しながら、触媒溶液〔CpTi(N=C(t−Bu))Clを0.25μmol含有するトルエン溶液1mL〕を添加した。触媒溶液の添加後、さらに24時間付加重合反応を行った。反応終了後、脱圧し、オートクレーブ中の内容物を、大量の塩酸酸性2−プロパノール中に移し、ポリマーを沈殿させた。沈殿したポリマーを減圧乾燥して、下記式(30)で示される繰り返し単位を有するポリマー4を得た。
ポリマー4を用いて各種測定を行った。結果を第1表に示す。
【0149】
[実施例5]
実施例4において、単量体10の変わりに単量体11を用いた以外は実施例4と同様にして下記式(31)で示される繰り返し単位を有するポリマー5を得た。
ポリマー5を用いて各種測定を行った。結果を第1表に示す。
【0150】
[比較例1]
三方コックを付けたナス型フラスコに、窒素を流しながら10分間ヒーティングガンを用いて加熱し乾燥させたフラスコに、窒素雰囲気下で、単量体3 10.0mL、トルエン10.0mLをシリンジで加えた。ナス型フラスコを−30℃に冷却し、開始剤溶液(HCl 0.25mL、トルエン99.75mL)2.5mL、活性化剤溶液(ZnCl 0.1mL、トルエン19.9mL)2.5mLを加えて、全容を同温度で96時間撹拌した。反応終了後、反応液に停止剤(10vol%アンモニア水/メタノー=1/9)30mLを加えて、重合を停止させた。その後、析出したポリマーをトルエンに完全に溶解し、得られた溶液をイオン交換水で洗浄した後、エバポレーターを用いて溶媒を留去した。ポリマーをTHFに溶かして得られた溶液を大量のメタノール中に注ぎ、再沈殿を行ない、沈殿したポリマーを減圧乾燥して、下記式(24)で示される繰り返し単位を有するポリマー6を9.86g得た。収率97.0%
ポリマー6を用いて各種測定を行った。結果を第2表に示す。
【0151】
[比較例2]
実施例1において、単量体2の代わりに単量体4を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、下記式(25)で示される繰り返し単位を有するポリマー7を得、各種測定を行った。結果を第2表に示す。
【0152】
[比較例3]
特開2005−113049号公報に記載の方法により、下記式(26)で示される繰り返し単位を有するポリマー8を得、各種測定を行った。結果を第2表に示す。
【0153】
[比較例4]
内部を窒素置換した15mLのスクリュー管瓶に、白色個体MAO(メチルアルミノキサン)174mg、トルエン8g、単量体3 2gを仕込んだ。そこに、金属錯体(CpTi(N=C(t−Bu))Cl)のトルエン溶液(5mmol/L)1mLを添加し、全容を25℃で120時間攪拌して、重合反応を行った。次いで、スクリュー管瓶の内容物を、大量の塩酸酸性2−プロパノール中に移し、ポリマーを析出させた。得られたポリマーを濾取し、これを減圧乾燥して、下記式(27)で示される繰り返し単位を有するポリマー9を得、各種測定を行った。結果を第2表に示す。
【0154】
[比較例5]
三方コックを付けたナス型フラスコに、窒素を流しながら10分間ヒーティングガンを用いて加熱し乾燥させたフラスコに、窒素雰囲気下で、単量体7 12.23mL、トルエン32.77mLをシリンジで加えた。ナス型フラスコを−30℃に冷却し、開始剤溶液(BFOEt 0.3mL、トルエン14.7mL)5.0mLを加えて、全容を同温度で0.5時間撹拌した。反応終了後、反応液停止剤(10vol%アンモニア水/メタノー=1/9)30mLを加えて、重合を停止させた。その後、析出したポリマーをトルエンに完全に溶解し、イオン交換水で分液精製した後、エバポレーターを用いて溶媒を留去した。ポリマーをTHFに溶かして大量のメタノール中に注ぎ、再沈殿を行ない、沈殿したポリマーを減圧乾燥して下記式(32)で示される繰り返し単位を有するポリマー10を10.2g得た。収率78.6%
ポリマー10を用いて各種測定を行った。結果を第2表に示す。
【0155】
[比較例6]
三方コックを付けたナス型フラスコに、窒素を流しながら10分間ヒーティングガンを用いて加熱し乾燥させたフラスコに、窒素雰囲気下で、単量体8 9.61g、トルエン35.4mLをシリンジで加えた。ナス型フラスコを−30℃に冷却し、開始剤溶液(BFOEt 0.3mL、トルエン14.7mL)5.0mLを加えて、全容を同温度で4時間撹拌した。反応終了後、反応液に停止剤(10vol%アンモニア水/メタノー=1/9)30mLを加えて重合を停止させた。その後、析出したポリマーをトルエンに完全に溶解し、得られた溶液をイオン交換水で洗浄した後、エバポレーターを用いて溶媒を留去した。ポリマーをTHFに溶かして得られた溶液を大量のメタノール中に注ぎ、再沈殿を行ない、沈殿したポリマーを減圧乾燥して下記式(33)で示される繰り返し単位を有するポリマー11を9.04g得た。収率94.1%
ポリマー11を用いて各種測定を行った。結果を第2表に示す。
【0156】
[比較例7]
三方コックを付けたナス型フラスコに、窒素を流しながら10分間ヒーティングガンを用いて加熱し乾燥させたフラスコに、窒素雰囲気下で、単量体9 10.5mL、トルエン34.5mLをシリンジで加えた。ナス型フラスコを−30℃に冷却し、開始剤溶液(BFOEt 0.3mL、トルエン14.7mL)5.0mLを加えて、全容を同温度で4時間撹拌した。反応終了後、反応液に停止剤(10vol%アンモニア水/メタノー=1/9)30mLを加えて重合を停止させた。その後、析出したポリマーをトルエンに完全に溶解し、得られた溶液をイオン交換水で洗浄した後、エバポレーターを用いて溶媒を留去した。ポリマーをTHFに溶かして得られた溶液を大量のメタノール中に注ぎ、再沈殿を行ない、沈殿したポリマーを減圧乾燥して下記式(34)で示される繰り返し単位を有するポリマー12を9.57g得た。収率92.8%
ポリマー12を用いて各種測定を行った。結果を第2表に示す。
【0157】
【化31】
【0158】
【化32】
【0159】
【表1】
【0160】
【表2】
【0161】
第1、2表から以下のことが分かる。
実施例1〜5で得られた重合体は、高屈折率かつ低複屈折性であって、比較的低いガラス転移温度を有する。
一方、比較例1の重合体は、低複屈折性を有していない。
比較例2の重合体は、ガラス転移温度が高い。
比較例3の重合体は、低複屈折性を有していない。また、屈折率が低い。
比較例4の重合体は、低複屈折性を有していない。