(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記式(3)で表される化合物が、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロプロピレン、1−クロロ−1−フルオロエチレン及び1,2−ジクロロ−1,2−ジフルオロエチレンからなる群から選ばれる1種以上である、請求項1に記載のポリマーの製造方法。
前記式(1)で表される化合物と前記式(2)で表される化合物の合計1molに対して、前記アゾ系重合開始剤を0.01〜100mol使用する、請求項6に記載のポリマーの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、有機テルル化合物の存在下、ハロオレフィンをラジカル重合することで、高分子設計等に有用なハロオレフィン重合体が製造できることはこれまで知られていなかった。
【0008】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、ハロオレフィンをラジカル重合し、有用なハロオレフィン重合体又は共重合体を製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、特定のテルル化合物の存在下で特定のハロオレフィンを重合することで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は下記<1>〜<11>に関するものである。
<1>下記式(1)で表される化合物及び下記式(2)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物の存在下、下記式(3)で表される化合物を重合するか、下記式(3)で表される化合物と、反応性炭素−炭素二重結合を有し下記式(3)で表される化合物とは異なる化合物(6)とを共重合する、ポリマーの製造方法。
【0011】
【化1】
【0012】
(式中、R
1は、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8の置換アルキル基、炭素数3〜12のアリール基又は炭素数3〜16の置換アリール基を表す。R
2及びR
3は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。R
4は、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8の置換アルキル基、炭素数3〜12のアリール基、炭素数3〜16の置換アリール基、炭素数2〜8のアシル基、炭素数2〜8のアミド基、オキシカルボニル基又はシアノ基を表す。)
【0013】
【化2】
【0014】
(式中、R
5は、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8の置換アルキル基、炭素数3〜12のアリール基又は炭素数3〜16の置換アリール基を表す。)
【0015】
【化3】
【0016】
(式中、X
1は、フッ素原子又は塩素原子を表す。X
2、X
3及びX
4は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、塩素原子又は−CX
5X
6X
7を表す。X
5、X
6及びX
7は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表す。)
<2>前記式(3)で表される化合物が、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロプロピレン、塩化ビニリデン、塩化ビニル、1−クロロ−1−フルオロエチレン及び1,2−ジクロロ−1,2−ジフルオロエチレンからなる群から選ばれる1種以上である、前記<1>に記載のポリマーの製造方法。
<3>前記式(1)で表される化合物が、R
1が炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基、R
2及びR
3が、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、R
4が炭素数5〜12のアリール基又はオキシカルボニル基で示される化合物である、前記<1>又は<2>に記載のポリマーの製造方法。
<4>前記式(2)で表される化合物が、R
5が炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基で示される化合物である、前記<1>〜<3>のいずれか1つに記載のポリマーの製造方法。
<5>得られるポリマーの分子量分布が2.0以下である、前記<1>〜<4>のいずれか1つに記載のポリマーの製造方法。
<6>アゾ系重合開始剤を併用する、前記<1>〜<5>のいずれか1つに記載のポリマーの製造方法。
<7>前記式(1)で表される化合物と前記式(2)で表される化合物の合計1molに対して、前記アゾ系重合開始剤を0.01〜100mol使用する、前記<6>に記載のポリマーの製造方法。
<8>前記式(3)で表される化合物と、前記化合物(6)とをブロック共重合する、前記<1>〜<7>のいずれか1つに記載のポリマーの製造方法。
<9>前記化合物(6)がスチレンである、前記<8>に記載のポリマーの製造方法。
<10>前記式(3)で表される化合物と、前記化合物(6)とをランダム共重合する、前記<1>〜<7>のいずれか1つに記載のポリマーの製造方法。
<11>前記化合物(6)がスチレン又は酢酸ビニルである、前記<10>に記載のポリマーの製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、特定のテルル化合物の存在下で特定のハロオレフィンをラジカル重合する方法を提供することができる。
【0018】
ハロオレフィンを原料として用いることにより、得られるポリマーに難燃性、耐薬品性を付与することができる。また、一般にはハロオレフィンを原料として用いる場合は、分子量分布が狭くなりにくいとされているが、本発明によれば分子量分布の狭いポリマーが得やすい。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
なお、本明細書において、「式(n)で表される化合物」のことを、単に「化合物(n)」と称する場合がある。
【0020】
炭素数とは、ある基全体に含まれる炭素原子の総数を意味し、該基が置換基を有さない場合は当該基の骨格を形成する炭素原子の数を表し、該基が置換基を有する場合は当該基の骨格を形成する炭素原子の数に置換基中の炭素原子の数を加えた総数を表す。
アリール基とは、芳香族化合物において芳香環を形成する炭素原子の内いずれか1つの炭素原子に結合した1つの水素原子を取り去った残基に相当する一価の基を意味し、炭素環化合物から誘導されるホモアリール基と、ヘテロ環化合物から誘導されるヘテロアリール基とを合わせた総称で用いる。
反応性炭素−炭素二重結合とは、オレフィンとして各種反応しうる炭素−炭素二重結合を意味し、芳香族性の二重結合は含まない。
【0021】
本発明の第一実施形態は、特定の有機テルル化合物の存在下、上記式(3)で表される化合物をラジカル重合することにより、ポリマーを製造する方法に関する。
また、本発明の第二実施形態は、特定の有機テルル化合物の存在下、上記式(3)で表される化合物と、反応性炭素−炭素二重結合を有し上記式(3)で表される化合物とは異なる化合物(以下、化合物(6)と称することがある。)とをラジカル重合することにより、ポリマーを製造する方法に関する。
【0022】
[有機テルル化合物]
本発明において、特定の有機テルル化合物としては、上記式(1)で表される有機テルル化合物、上記式(2)で表される有機ジテルル化合物、又はこれらの両方を用いることができる。
なお、本明細書では、上記式(1)で表される有機テルル化合物、上記式(2)で表される有機ジテルル化合物、又はこれらの両方を、まとめて単に有機テルル化合物ということがある。
【0023】
(化合物(1))
化合物(1)において、R
1〜R
4は前記定義の通りである。
R
1で示される基は、具体的には次の通りである。
炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等の炭素数1〜8の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基を挙げることができる。
これらの中でも、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基又はn−ブチル基がより好ましい。
【0024】
炭素数1〜8の置換アルキル基としては、任意の位置にフッ素原子、塩素原子、アルコキシ基、フルオロアルコキシ基等の置換基を有するアルキル基を挙げることができる。
これらの中でも、フッ素原子を2〜13個有するアルキル基が好ましく、(ペルフルオロアルキル)エチル基(炭素数3〜8)が、ラジカルによる水素原子引き抜き反応の抑制の観点からより好ましい。
【0025】
炭素数3〜12のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等のホモアリール基、ピリジル基、ピロール基、フリル基、チエニル基等のヘテロアリール基を挙げることができ、好ましくはホモアリール基であり、より好ましくはフェニル基である。
【0026】
炭素数3〜16の置換アリール基としては、任意の位置にハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、−COR
aで示されるカルボニル含有基[R
a=炭素数1〜8のアルキル基(好ましくは、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基)、炭素数1〜8のアルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基)、アリール基、又はアリーロキシ基]、スルホニル基、トリフルオロメチル基等の置換基を1〜4個(好ましくは1〜3個、より好ましくは1個、好ましくはパラ位又はオルト位)有するアリール基を挙げることができる。
【0027】
R
2及びR
3で示される各基は、具体的には次の通りである。
炭素数1〜8のアルキル基としては、上記R
1で示した炭素数1〜8のアルキル基と同様のものを挙げることができる。
R
2及びR
3としては、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。
【0028】
R
4で示される各基は、具体的には次の通りである。
炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8の置換アルキル基、炭素数3〜12のアリール基、炭素数3〜16の置換アリール基としては、上記R
1で示した基とそれぞれ同様のものを挙げることができる。
【0029】
炭素数2〜8のアシル基としては、アセチル基、ベンゾイル基を挙げることができる。
【0030】
炭素数2〜8のアミド基としては、カルバモイルメチル基、ジカルバモイルメチル基、4−カルバモイルフェニル基等のカルバモイル基含有基、チオカルバモイルメチル基、4−チオカルバモイルフェニル基等のチオカルバモイル基含有基、ジメチルカルバモイルメチル基等のN−置換カルバモイル基含有基を挙げることができる。
【0031】
オキシカルボニル基としては、−COOR
b[R
b=H、炭素数1〜8のアルキル基(好ましくは、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基)、炭素数2〜8のアルケニル基(好ましくは、炭素数2〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルケニル基)、炭素数2〜8のアルキニル基(好ましくは、炭素数2〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキニル基)又は炭素数3〜12のアリール基]で示される基を挙げることができる。
【0032】
R
bで示される炭素数1〜8のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜8のアルキニル基、炭素数3〜12のアリール基は、任意の位置にハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、トリアルキルシリルエーテル基、トリアルキルシリル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、スルホニル基、トリフルオロメチル基等の置換基を1〜4個(好ましくは1〜3個、より好ましくは1個)有していてもよい。
【0033】
オキシカルボニル基としては、カルボキシ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、n−ペントキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基を挙げることができ、好ましくは、メトキシカルボニル基又はエトキシカルボニル基である。
【0034】
これらの中でも、R
4は、炭素数5〜12のアリール基、オキシカルボニル基又はシアノ基が好ましい。
【0035】
好ましい化合物(1)としては、R
1が炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基、R
2及びR
3がそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、R
4が炭素数5〜12のアリール基又はオキシカルボニル基で示される化合物である。
【0036】
特に好ましくは、R
1が炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基、R
2及びR
3がそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、R
4がフェニル基、メトキシカルボニル基又はエトキシカルボニル基で示される化合物である。
【0037】
化合物(1)としては、具体的には、(メチルテラニルメチル)ベンゼン、(メチルテラニルメチル)ナフタレン、エチル−2−メチル−2−メチルテラニル−プロピオネート、エチル−2−メチル−2−n−ブチルテラニル−プロピオネート、(2−トリメチルシロキシエチル)−2−メチル−2−メチルテラニル−プロピネート、(2−ヒドロキシエチル)−2−メチル−2−メチルテラニル−プロピネート、(3−トリメチルシリルプロパルギル)−2−メチル−2−メチルテラニル−プロピネート等、国際公開第2004/014848号及び国際公開第2004/014962号に記載された化合物を挙げることができる。さらに、Polymer Preprints,Japan Vol.65,No.1(2016)の発表番号2D03に記載された、エチル−2−メチル−2−1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルテラニル−プロピオネート、メチル−2−メチル−2−1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルテラニル−プロピオネート、N,N−ジエチル−2−メチル−2−1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルテラニル−プロピオンアミド等の化合物を挙げることができる。
【0038】
化合物(1)の製造方法は、特に限定されず、上記した国際公開第2004/014848号及び国際公開第2004/014962号に記載された公知の方法により製造することができる。
【0039】
例えば、化合物(1)は、下記一般式(4)で表される化合物、下記一般式(5)で表される化合物及び金属テルルを反応させることにより製造することができる。
【0041】
式中、R
2、R
3及びR
4は、上記式(1)に示した通りである。
Xはハロゲン原子であり、好ましくは、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子である。
【0043】
式中、R
1は、上記式(1)に示した通りである。Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属又は銅原子を示す。Mがアルカリ金属のとき、mは1、Mがアルカリ土類金属のとき、mは2、Mが銅原子のとき、mは1又は2を示す。mが2の場合、複数存在するR
1は同一でも異なっていてもよい。
【0044】
Mで示されるものとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属、銅を挙げることができる。これらの中でも、好ましくは、リチウムである。
【0045】
なお、Mがマグネシウムのとき、一般式(5)の化合物として例えばMg(R
1)
2で表される化合物が挙げられるが、Mg(R
1)
2と同時に、又はMg(R
1)
2に代えてR
1MgX(Xは、ハロゲン原子)で表される化合物(グリニャール試薬)を用いることも可能である。Xは、好ましくは、塩素原子又は臭素原子である。
【0046】
(化合物(2))
化合物(2)においてR
5は、上記式(1)に示したR
1と同じである。
好ましい化合物(2)としては、R
5が炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基で示される化合物である。
【0047】
化合物(2)としては、具体的には、ジメチルジテルリド、ジエチルジテルリド、ジ−n−プロピルジテルリド、ジイソプロピルジテルリド、ジシクロプロピルジテルリド、ジ−n−ブチルジテルリド、ジ−sec−ブチルジテルリド、ジ−tert−ブチルジテルリド、ジシクロブチルジテルリド、ジフェニルジテルリド、ビス−(p−メトキシフェニル)ジテルリド、ビス−(p−アミノフェニル)ジテルリド、ビス−(p−ニトロフェニル)ジテルリド、ビス−(p−シアノフェニル)ジテルリド、ビス−(p−スルホニルフェニル)ジテルリド、ジナフチルジテルリド、ジピリジルジテルリド等を挙げることができる。
【0048】
これらの中でも、好ましくは、ジメチルジテルリド、ジエチルジテルリド、ジ−n−プロピルジテルリド、ジ−n−ブチルジテルリド又はジフェニルジテルリドである。
【0049】
なお、化合物(1)は、日本国特開2004−323437号公報等に記載された公知の方法である、化合物(2)とアゾ系重合開始剤との反応により、製造することもできる。この反応はラジカル重合する前に予め行ってもよいし、モノマー存在下にラジカル重合と同時に行ってもよい。
【0050】
[モノマー]
(化合物(3))
本発明の第一実施形態及び第二実施形態では、ラジカル重合に供するモノマーとして、化合物(3)を使用する。化合物(3)においてX
1〜X
4は前記定義の通りである。
X
1としては、フッ素原子が好ましい。
X
2、X
3及びX
4としては、水素原子又はフッ素原子が好ましい。
また、X
2、X
3及びX
4のうち1つのみが−CX
5X
6X
7である場合、化合物(3)はプロピレン構造となる。X
3又はX
4が−CX
5X
6X
7であることが好ましく、X
3が−CX
5X
6X
7であることが重合反応性の観点からより好ましい。
【0051】
好ましい化合物(3)としては、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロプロピレン、塩化ビニリデン、塩化ビニル、1−クロロ−1−フルオロエチレン、1,2−ジクロロ−1,2−ジフルオロエチレン等が挙げられる。
これらのうち化合物(3)としては、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロプロピレン、1,2−ジクロロ−1,2−ジフルオロエチレンがより好ましい。
【0052】
化合物(3)は1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。化合物(3)を2種以上用いる場合には、混合して用いても(ランダム共重合等の場合)、順次用いても(ブロック共重合等の場合)よい。
【0053】
(化合物(6))
また、本発明の第二実施形態では、ラジカル重合に供するモノマーとして、化合物(3)とともに、反応性炭素−炭素二重結合を有する化合物(6)も使用する。なお化合物(6)とは、化合物(3)とは異なる化合物である。
【0054】
化合物(6)としては、ラジカル重合可能なものであれば特に制限はないが、例えば、エチレン、イソブチレン、ブタジエン、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル等の(メタ)アクリル酸エステルモノマー、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸シクロドデシル等のシクロアルキル基含有不飽和モノマー、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等のカルボキシル基含有不飽和モノマー、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、2−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等の3級アミン含有不飽和モノマー、N−2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド、N−メタクリロイルアミノエチル−N,N,N−ジメチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩基含有不飽和モノマー、(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有不飽和モノマー、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メトキシスチレン、2−ヒドロキシメチルスチレン、2−クロロスチレン、4−クロロスチレン、2,4−ジクロロスチレン、1−ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、4−(クロロメチル)スチレン、2−(クロロメチル)スチレン、3−(クロロメチル)スチレン、4−スチレンスルホン酸又はそのアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)等のスチレン系モノマー、2−ビニルチオフェン、N−メチル−2−ビニルピロール等のヘテロ環含有不飽和モノマー、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のビニルアミド、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等のα−オレフィン、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル等のビニルエーテル、メチルイソプロペニルエーテル、酢酸ビニル、酢酸イソプロペニル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリロニトリル、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドを挙げることができる。
【0055】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の総称である。「(メタ)アクリルアミド」とは、「アクリルアミド」及び「メタクリルアミド」の総称である。「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の総称である。
【0056】
これらの中でも、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステルモノマー、3級アミン含有不飽和モノマー、スチレン系モノマー、酢酸ビニル、アクリルアミド又はN,N−ジメチルアクリルアミドである。
【0057】
好ましい(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル又は(メタ)アクリル酸ブチルが挙げられる。特に好ましくは、(メタ)アクリル酸メチル又は(メタ)アクリル酸ブチルである。
好ましい3級アミン含有不飽和モノマーとしては、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド又は2−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレートである。
【0058】
好ましいスチレン系モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−メトキシスチレン、4−クロロスチレン、4−(クロロメチル)スチレン、ジビニルベンゼン、4−スチレンスルホン酸又はそのアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩)である。
これらの中でも、特に好ましくは、スチレン、4−メトキシスチレン、4−クロロスチレン又は4−(クロロメチル)スチレンである。
【0059】
[ラジカル重合]
(化合物(3)のラジカル重合)
本発明の第一実施形態では、有機テルル化合物の存在下、化合物(3)をラジカル重合する。
【0060】
上記ラジカル重合方法としては、具体的には次の通りである。
不活性ガスで置換した容器又は真空減圧した容器で、化合物(3)、並びに化合物(1)及び化合物(2)からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を混合する。
不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウムを挙げることができる。これらの中でも、窒素又はアルゴンが好ましく、窒素がより好ましい。
【0061】
また、本発明では、重合速度の促進を目的にアゾ系重合開始剤を併用してもよい。アゾ系重合開始剤は、通常のラジカル重合で使用するアゾ系重合開始剤であれば特に制限なく使用することができる。
【0062】
アゾ系重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(AMBN)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(ADVN)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)(ACHN)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(MAIB)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリアン酸)(ACVA)、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチルアミド)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルアミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−シアノ−2−プロピルアゾホルムアミド、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)が挙げられる。
【0063】
これらのアゾ系開始剤は、反応条件に応じて適宜選択するのが好ましい。例えば、低温重合(40℃以下)の場合は、ADVN、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、中温重合(40〜80℃)の場合は、AIBN、AMBN、MAIB、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、ACVA、2,2’−アゾビス(2−メチルブチルアミド)、2,2’−アゾビス(2−メチルアミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、高温重合(80℃以上)の場合は、ACHN、2−シアノ−2−プロピルアゾホルムアミド、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]を用いるのが好ましい。
【0064】
化合物(1)又は化合物(2)の使用量としては、通常、化合物(3)1molに対し化合物(1)又は化合物(2)(化合物(1)と化合物(2)とを併用するときはこれらの合計量)を0.0001〜0.01mol、好ましくは、0.001〜0.01mol使用する。
【0065】
化合物(1)又は化合物(2)とアゾ系重合開始剤の使用割合としては、通常、化合物(1)又は化合物(2)(化合物(1)と化合物(2)とを併用するときはこれらの合計量)1molに対して、アゾ系重合開始剤を0.01〜100mol、好ましくは、0.1〜10mol、特に好ましくは、0.1〜5molである。
【0066】
化合物(1)と化合物(2)を併用する場合、その使用量としては、通常、化合物(1)1molに対して、化合物(2)を0.01〜100mol、好ましくは、0.05〜10mol、特に好ましくは、0.1〜5mol使用する。
【0067】
上記ラジカル重合は、無溶媒でも行うことができるが、ラジカル重合で一般に使用される有機溶媒又は水性溶媒を使用して行うことができる。
【0068】
有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、ピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、アセトニトリル、2−ブタノン(メチルエチルケトン)、ジオキサン、ヘキサフルオロイソプロパオール、クロロホルム、四塩化炭素、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸メチル、酢酸エチル、炭酸ジメチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、トリフルオロメチルベンゼン、1H−トリデカフルオロヘキサン、1H,1H,1H,2H,2H−トリデカフルオロオクタン、1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,2−トリフルオロエチルエーテルや、N−メチル−N−メトキシメチルピロリジウムテトラフルオロボレート、N−メチル−N−エトキシメチルテトラフルオロボレート1−メチル3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−メチル3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェート、1−メチル3−メチルイミダゾリウムクロライド等のイオン液体が挙げられる。
【0069】
また、水性溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、1−メトキシ−2−プロパノール、ジアセトンアルコールが挙げられる。
【0070】
溶媒の使用量としては、適宜調節すればよいが、例えば、得られるポリマー1000gに対して、溶媒を0.01〜50L、好ましくは、0.05〜10L、特に好ましくは、0.1〜5L使用することができる。
【0071】
次に、上記得られた混合物を撹拌する。反応温度、反応時間は、得られるポリマーの分子量又は分子量分布により適宜調節すればよいが、通常、60〜150℃で、5〜100時間撹拌する。好ましくは、80〜120℃で、10〜30時間撹拌する。このとき、通常は常圧で行われるが、加圧又は減圧してもよい。
【0072】
反応終了後、常法により使用溶媒や残存モノマーを減圧下除去して目的ポリマーを取り出したり、目的ポリマー不溶溶媒を使用して再沈澱処理したりすることにより目的物を単離する。反応処理については、目的物に支障がなければどのような処理方法でも行うことができる。
【0073】
本発明の製造方法は、優れた分子量制御及び分子量分布制御を非常に温和な条件下で行うことができる。
【0074】
本発明の第一実施形態で得られるポリマーの分子量は、反応時間及び有機テルル化合物の量により調整可能であるが、例えば、数平均分子量500〜1,000,000のポリマーを得ることができる。特に、数平均分子量1,000〜50,000のポリマーを得るのに好適である。
【0075】
本発明の第一実施形態で得られるポリマーの分子量分布{PD=Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)}は、例えば、2.0以下で制御される。さらには、分子量分布1.5以下、さらには1.4以下といったより狭い分子量分布を有するポリマーを得ることができる。分子量分布の下限値は、その定義から1.0である。
【0076】
なお、本明細書におけるポリマーの数平均分子量及び重量平均分子量は、SEC(Size Exclusion Chromatography;サイズ排除クロマトグラフィー)測定により求めたものであり、分子量換算用の標準物質としてポリスチレンを用いた。
【0077】
本発明の第一実施形態で得られるポリマーの末端基は、有機テルル化合物由来の、反応性の高いテルルを含む官能基であることが確認されている。
【0078】
従って、有機テルル化合物をラジカル重合に用いることにより従来のラジカル重合で得られるポリマーよりも末端基を他の官能基へ変換することが容易である。これらにより、本発明で得られるポリマーは、マクロラジカル重合開始剤(マクロイニシエーター)又はマクロラジカル連鎖移動剤として用いることができる。
【0079】
(化合物(3)と化合物(6)のラジカル共重合)
本発明の第二実施形態では、有機テルル化合物の存在下、化合物(3)と化合物(6)をラジカル共重合する。
【0080】
a.ブロック共重合
本発明の第二実施形態では、有機テルル化合物を用いて、例えば、トリフルオロエチレン−アクリル酸ブチル等のA−Bジブロック共重合体や、トリフルオロエチレン−アクリル酸ブチル−トリフルオロエチレン等のA−B−Aトリブロック共重合体を得ることができる。
【0081】
これは、有機テルル化合物で、種々の異なったタイプのモノマーをコントロールできること、また、化合物(1)、化合物(2)、又はこれらの混合物により得られるポリマーの末端に反応性の高いテルルを含む官能基が存在していることによるものである。
ブロック共重合体を得るには、化合物(6)としては、スチレンが好ましい。
【0082】
ブロック共重合体の製造方法としては、具体的には次の通りである。
A−Bジブロック共重合体の場合、例えば、トリフルオロエチレン−スチレン共重合体の場合は、上記のラジカルポリマーの製造方法と同様に、まず、トリフルオロエチレンと化合物(1)及び化合物(2)からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を混合し、ポリトリフルオロエチレンを製造後、続いてスチレンを混合して、トリフルオロエチレン−スチレン共重合体を得る方法が挙げられる。
【0083】
A−B−Aトリブロック共重合体の場合も、上記の方法でA−Bジブロック共重合体を製造した後、モノマー(A)を混合し、A−B−Aトリブロック共重合体を得る方法が挙げられる。
その他の重合に係る条件としては、上記した第一実施形態と同様である。
【0084】
上記で、各ブロックを製造後、そのまま次のブロックの反応を開始してもよいし、一度反応を終了後、精製してから次のブロックの反応を開始してもよい。ブロック共重合体の単離は通常の方法により行うことができる。
【0085】
本発明の第二実施形態(ブロック共重合)で得られるポリマーの分子量は、反応時間及び有機テルル化合物の量により調整可能であるが、例えば、数平均分子量1,000〜2,000,000のポリマーを得ることができる。特に、数平均分子量2,000〜100,000のポリマーを得るのに好適である。
【0086】
本発明の第二実施形態(ブロック共重合)で得られるポリマーの分子量分布{PD=Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)}は、例えば、2.0以下で制御される。さらには、分子量分布1.5以下、さらには1.4以下といったより狭い分子量分布を有するポリマーを得ることができる。分子量分布の下限値は、その定義から1.0である。
【0087】
b.ランダム共重合
また、本発明の第二実施形態では、有機テルル化合物を用いて、化合物(3)と化合物(6)を同時に反応させるとランダム共重合体又は交互共重合体を得ることができる。交互共重合体は、共重合モノマー同士の二重結合部位の電子密度の差が大きい場合に生じることが知られている。
【0088】
ランダム共重合体を得るには、化合物(6)としては、スチレン又は酢酸ビニルが好ましい。
【0089】
ランダム共重合体の場合も、その他の重合に係る条件としては、上記した第一実施形態と同様である。
【0090】
本発明の第二実施形態(ランダム共重合)で得られるポリマーの分子量は、反応時間及び有機テルル化合物の量により調整可能であるが、例えば、数平均分子量500〜1,000,000のポリマーを得ることができる。特に、数平均分子量1,000〜50,000のポリマーを得るのに好適である。
【0091】
本発明の第二実施形態(ランダム共重合)で得られるポリマーの分子量分布{PD=Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)}は、例えば、2.0以下で制御される。さらには、分子量分布1.5以下、さらには1.4以下といったより狭い分子量分布を有するポリマーを得ることができる。分子量分布の下限値は、その定義から1.0である。
【実施例】
【0092】
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
【0093】
(実施例1)
内容積が30mLの撹拌機付きステンレス製オートクレーブに、0.423g(1.84mmol)のアゾ重合開始剤「V−601」(和光純薬工業社製)、0.221g(0.540mmol)のジフェニルジテルリド、及び14.3gのアセトニトリルを仕込み、凍結脱気した。
15.0gのトリフルオロエチレンを圧入したのち、内温を80℃まで昇温させながら撹拌を開始した。内温を保持したまま400rpmで撹拌を4時間行ったところ、内圧は2.38MPaGから2.31MPaGまで減少した。
オートクレーブを氷水浴で冷却した後、未反応のトリフルオロエチレンをパージした。
【0094】
得られた重合体溶液をフッ素系溶剤「アサヒクリン AC−2000」(旭硝子社製)に投入し、析出した重合体を遠心分離器により沈殿させて上澄み液と分離し、重合体を40℃の真空オーブンで12時間乾燥させ、1.84gの含フッ素重合体を得た。
含フッ素重合体の数平均分子量Mnは3,350であり、Mw/Mnは1.33であった。分子量分布(Mw/Mn)が1.5以下であり、このラジカル重合はリビングラジカル重合の特徴を示す。
また、
1H−NMR測定の結果、用いたフェニルテルル基の81.5%が含フッ素重合体中に含まれていた。
【0095】
(実施例2)
アゾ重合開始剤「V−601」(和光純薬工業社製)を0.154g(0.669mmol)、ジフェニルジテルリドを0.0818g(0.200mmol)、アセトニトリルを14.76g用いた以外、実施例1と同様に行ったところ、内圧は2.25MPaGから1.91MPaGまで減少した。
【0096】
得られた重合体溶液を真空乾燥させたところ、4.06gの固体を得た。固体をアセトニトリルへ溶解させ、フッ素系溶剤「アサヒクリン AC−2000」(旭硝子社製)に投入し、重合体を析出させた。ポリテトラフルオロエチレンフィルター(0.5μm孔)で重合体を濾別し、40℃の真空オーブンで12時間乾燥させた。
含フッ素重合体の数平均分子量Mnは11,400であり、Mw/Mnは1.40であった。
また、
1H−NMR測定の結果、用いたフェニルテルル基の72.8%が含フッ素重合体中に含まれていた。
【0097】
(実施例3)
脱気用管とバルブが付いた内容積が30mLのガラス製反応器に、1.72gの実施例2で得られた含フッ素重合体、0.0168g(0.0730mmol)のアゾ重合開始剤「V−601」(和光純薬工業社製)、5.23gのピリジン、2.73gのスチレン及び撹拌子を仕込み、凍結脱気を2回繰り返した。
水浴の温度を70℃まで昇温させながら撹拌を開始した。温度を保持したまま400rpmで撹拌を4時間行った。反応器を冷却した後、内容物を40℃の真空オーブンで12時間乾燥させ、2.32gの固体を得た。
得られた固体の数平均分子量Mnは38,300であり、Mw/Mnは1.24であった。
【0098】
(実施例4)
内容積が30mLの撹拌機付きステンレス製オートクレーブに、0.532g(2.31mmol)のアゾ重合開始剤「V−601」(和光純薬工業社製)、0.208g(0.508mmol)のジフェニルジテルリド、及び14.3gのアセトニトリルを仕込み、凍結脱気した。オートクレーブを80℃の湯浴で2時間加熱した後、−60℃の冷凍庫で一晩静置した。
つづいて、15.0gのトリフルオロエチレンを圧入したのち、内温を80℃まで昇温させながら撹拌を開始した。内温を保持したまま400rpmで撹拌を4時間行ったところ、内圧は2.4MPaGまで上昇した。
【0099】
オートクレーブを氷水浴で冷却した後、未反応のトリフルオロエチレンをパージした。得られた重合体溶液を40℃の真空オーブンで12時間乾燥させ、0.68gの固体を得た。
得られた固体の数平均分子量Mnは32,700であり、Mw/Mnは1.82であった。
【0100】
(実施例5)
内容積が30mLの撹拌機付きステンレス製オートクレーブに、0.5gの2,2−アゾビス(イソブチロニトリル)、0.2gのエチル−2−メチル−2−n−ブチルテラニル−プロピオネート(国際公開第2004/014848号に記載の合成例10に従い合成)、7gの酢酸ビニル、14gのアセトニトリルを仕込み、凍結脱気した。8gのテトラフルオロエチレンを圧入したのち、内温を60℃まで昇温させながら攪拌を開始した。内温を保持したまま400rpmで攪拌を4時間行った。
オートクレーブを氷水浴で冷却した後、未反応のテトラフルオロエチレンをパージした。得られた重合体溶液を40℃の真空オーブンで12時間乾燥させ、固体を得た。
【0101】
(
参考例6)
内容積が1Lのステンレス製オートクレーブを真空減圧し、420gの脱イオン水、0.13gのポリビニルアルコール部分ケン化物(ケン化度80モル%で平均重合度2600)、0.05gのヒドロキシプロピルメチルセルロースを仕込み、窒素置換を3回行った。つづいて、0.5gの2,2−アゾビス(イソブチロニトリル)、0.2gのジフェニルジテルリド0.2gをエタノール40mLに溶解・分散させて仕込み、さらに、130gの塩化ビニルモノマーを圧入したのち、内温を60℃まで昇温させながら攪拌を開始した。内温を保持したまま攪拌を5時間行った。
オートクレーブを氷水浴で冷却した後、未反応の塩化ビニルをパージし、懸濁重合スラリーのろ過を行った後、2Lの脱イオン水で洗浄した。その後、35℃で3時間減圧乾燥を行い、さらに65℃で3時間減圧乾燥することにより塩化ビニル重合体を得た。
【0102】
本発明を詳細に、また特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は2017年3月9日出願の日本特許出願(特願2017−045408)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。