特許第6734667号(P6734667)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6734667
(24)【登録日】2020年7月14日
(45)【発行日】2020年8月5日
(54)【発明の名称】研削装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 47/25 20060101AFI20200728BHJP
   B24B 49/18 20060101ALI20200728BHJP
   B24B 49/10 20060101ALI20200728BHJP
   B24B 53/12 20060101ALI20200728BHJP
   B24B 53/02 20120101ALI20200728BHJP
   B24B 53/00 20060101ALI20200728BHJP
   B24B 7/04 20060101ALI20200728BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20200728BHJP
【FI】
   B24B47/25
   B24B49/18
   B24B49/10
   B24B53/12 A
   B24B53/02
   B24B53/00 A
   B24B7/04 A
   H01L21/304 631
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-41985(P2016-41985)
(22)【出願日】2016年3月4日
(65)【公開番号】特開2017-154238(P2017-154238A)
(43)【公開日】2017年9月7日
【審査請求日】2019年1月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】特許業務法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】邱 暁明
(72)【発明者】
【氏名】青木 昌史
【審査官】 山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−175356(JP,U)
【文献】 特開2008−302466(JP,A)
【文献】 特開2013−031910(JP,A)
【文献】 特開2007−175815(JP,A)
【文献】 特開2002−018712(JP,A)
【文献】 特開昭63−028563(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0067321(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 47/25
B24B 7/04
B24B 49/10
B24B 49/18
B24B 53/00
B24B 53/02
B24B 53/12
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハを環状に配置した研削砥石の平坦な底面である研削面で研削する研削手段と、該研削手段を該チャックテーブルに対して離間又は接近する上下方向に研削送りする研削送り手段と、該研削面をドレッシングするドレッサボードを備えたドレッシング手段と、該研削砥石の消耗量を算出する算出手段とを備えた研削装置であって、
該ドレッシング手段は、
該ドレッサボードを保持する保持テーブルと、該保持テーブルに配設され該ドレッサボードの上面と該研削面とが接触した瞬間を検出するAEセンサと、平坦な該研削面に平行な方向に該保持テーブルを移動させる移動手段とを備え、
該ドレッサボードの上面には、該移動手段により該保持テーブルを移動させることでドレッシングによる該ドレッサボードの研削が行われない基準面を備え、
該研削送り手段は、該研削手段を研削送りした研削送り位置を認識する位置認識部を備え、
該算出手段は、
ドレッシング前に該研削手段を該ドレッシング手段に接近する方向に研削送りしAEセンサにより検出する該研削砥石の該研削面と該ドレッサボードの該基準面とが接触した研削送り位置から、ドレッシング後に該研削手段を該ドレッシング手段に接近する方向に研削送りしAEセンサにより検出する該研削面と該基準面とが接触した研削送り位置を差し引いて該研削砥石の消耗量を算出する研削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハに対して研削砥石を当接させ研削を行う研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエーハ等は、研削装置によって研削されて所定の厚みに形成された後に、切削装置等により分割されて個々のデバイス等となり、各種電子機器等に利用されている。かかる研削に使用される研削装置は、ウエーハに対して回転する研削砥石の研削面を当接させることにより、ウエーハの研削を行うことができる。ここで、かかる研削を行うと、研削砥石の研削面に、研削屑等による目詰まりや目つぶれが生じることで研削砥石の研削力が低下する場合がある。そこで、研削装置の中には、目詰まり等による研削砥石の研削力の低下を防ぐために、研削砥石の研削面をドレスするドレッシング手段を備える研削装置がある(例えば、特許文献1参照)。このような研削装置においては、例えば、ウエーハの研削中に研削砥石の研削面にドレッサボードを押し当てることで、研削と同時に研削面をドレスすることも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−189456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来においては、ドレッシング後の研削砥石の研削面の高さは、研削手段を研削送りする研削送り手段が認識する研削手段の高さ位置で認識していた。しかし、ドレッシングにより研削面が削られることで研削砥石が消耗するため、研削送り手段が認識する研削手段の高さ位置からでは、ドレッシング後の研削面の正確な高さを認識するのは困難であった。そして、研削砥石の研削面とウエーハとの間には消耗した研削砥石分の隙間が生じるため、研削砥石のドレッシング後にウエーハの研削を行う場合には、ウエーハに研削砥石の研削面を接触させるために、生じた隙間分だけ、研削砥石を備える研削手段を研削送りする等の必要があり、研削加工における無駄な時間が発生していた。
【0005】
したがって、ドレッシング手段を備える研削装置においては、ドレッシングを行った直後に、研削砥石の消耗量を認識することにより、ドレッシング後の研削動作時に、研削砥石の消耗量を研削送り量にすぐに反映させ研削砥石の研削面をウエーハに接触させることを可能とし、研削加工における無駄な動作及び時間が生じないようにするという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明は、ウエーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハを環状に配置した研削砥石の平坦な底面である研削面で研削する研削手段と、該研削手段を該チャックテーブルに対して離間又は接近する上下方向に研削送りする研削送り手段と、該研削面をドレッシングするドレッサボードを備えたドレッシング手段と、該研削砥石の消耗量を算出する算出手段とを備えた研削装置であって、該ドレッシング手段は、該ドレッサボードを保持する保持テーブルと、該保持テーブルに配設され該ドレッサボードの上面と該研削砥石の該研削面とが接触した瞬間を検出するAEセンサと、平坦な該研削面に平行な方向に該保持テーブルを移動させる移動手段とを備え、該ドレッサボードの上面には、該移動手段により該保持テーブルを移動させることでドレッシングによる該ドレッサボードの研削が行われない基準面を備え、該研削送り手段は、該研削手段を研削送りした研削送り位置を認識する位置認識部を備え、該算出手段は、ドレッシング前に該研削手段を該ドレッシング手段に接近する方向に研削送りしAEセンサにより検出する該研削砥石の研削面と該ドレッサボードの基準面とが接触した研削送り位置から、ドレッシング後に該研削手段を該ドレッシング手段に接近する方向に研削送りしAEセンサにより検出する該研削面と該基準面とが接触した研削送り位置を差し引いて該研削砥石の消耗量を算出する研削装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る研削装置は、ウエーハを保持するチャックテーブルと、チャックテーブルに保持されたウエーハを環状に配置した研削砥石の平坦な底面である研削面で研削する研削手段と、研削手段をチャックテーブルに対して離間又は接近する上下方向に研削送りする研削送り手段と、該研削面をドレッシングするドレッサボードを備えたドレッシング手段と、研削砥石の消耗量を算出する算出手段とを備えた研削装置であって、ドレッシング手段は、ドレッサボードを保持する保持テーブルと、保持テーブルに配設されドレッサボードの上面と該研削面とが接触した瞬間を検出するAEセンサと、平坦な該研削面に平行な方向に保持テーブルを移動させる移動手段とを備え、ドレッサボードの上面には、移動手段により保持テーブルを移動させることでドレッシングによるドレッサボードの研削が行われない基準面を備え、研削送り手段は、研削手段を研削送りした研削送り位置を認識する位置認識部を備え、算出手段により、ドレッシング前に研削手段をドレッシング手段に接近する方向に研削送りしAEセンサにより検出する該研削面と該基準面とが接触した研削送り位置から、ドレッシング後に研削手段をドレッシング手段に接近する方向に研削送りしAEセンサにより検出する研削砥石の研削面とドレッサボードの基準面とが接触した研削送り位置を差し引いて研削砥石の消耗量を算出することにより、ドレッシング後の研削動作時に、研削砥石の消耗量を研削送り量にすぐに反映させ研削砥石の研削面をウエーハに接触させることで、研削加工における無駄な動作及び時間が生じないようにすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】研削装置の一例を示す斜視図である。
図2】研削手段、チャックテーブル、及びドレッシング手段の位置関係を側面からみた場合の断面図である。
図3】ドレッシング前に、研削砥石がドレッサボードの上面に当接した状態を側面からみた場合の断面図である。
図4】研削砥石をドレッシングしている状態を側面からみた場合の断面図である。
図5】研削手段及びドレッシング後のドレッサボードを示す斜視図である。
図6】研削砥石がドレッサボードの基準面に当接した状態を側面からみた場合の断面図である。
図7】研削手段及びドレッシング前のドレッサボードの一例を示す斜視図である。
図8】研削手段及びドレッシング後のドレッサボードの一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に示す研削装置1は、チャックテーブル30上に保持されたウエーハWを、研削手段7によって研削する装置である。研削装置1のベース10上の前方(−Y方向側)は、図示しない搬送手段によってチャックテーブル30に対してウエーハWの着脱が行われる領域である着脱領域Aとなっており、ベース10上の後方(+Y方向側)は、研削手段7によってチャックテーブル30上に保持されたウエーハWの研削が行われる領域である研削領域Bとなっている。
【0010】
研削装置1のベース10上に配設されウエーハWを保持するチャックテーブル30は、例えば、その外形が円形状であり、ポーラス部材等からなりウエーハWを吸着する吸着部300と、吸着部300を支持する枠体301とを備える。吸着部300は図示しない吸引源に連通し、吸引源が吸引することで生み出された吸引力が、吸着部300の露出面である保持面300aに伝達されることで、チャックテーブル30は保持面300a上でウエーハWを吸引保持する。また、チャックテーブル30は、カバー31によって周囲から囲まれつつ回転可能であり、カバー31下に配設された図示しないY軸方向送り手段によって、ベース10上をY軸方向に往復移動可能となっている。
【0011】
研削領域Bには、コラム11が立設されており、コラム11の−Y方向側の側面には研削手段7をチャックテーブル30に対して離間又は接近する上下方向に研削送りする研削送り手段5が配設されている。研削送り手段5は、鉛直方向(Z軸方向)の軸心を有するボールネジ50と、ボールネジ50と平行に配設された一対のガイドレール51と、ボールネジ50の上端に連結しボールネジ50を回動させるモータ52と、内部のナットがボールネジ50に螺合し側部がガイドレール51に摺接する昇降板53と、昇降板53に連結され研削手段7を保持するホルダ54と、研削手段7を研削送りした研削送り位置を認識する位置認識部55とから構成され、モータ52がボールネジ50を回動させると、これに伴い昇降板53がガイドレール51にガイドされてZ軸方向に往復移動し、ホルダ54に保持された研削手段7がZ軸方向に研削送りされる。本実施形態においては、モータ52は、例えば、パルスモータであり、モータ52を制御する制御部2から所定量のパルス信号がモータ52に送られることで、研削送り手段5は研削手段7を所定の研削送り位置まで研削送りすることができる。
【0012】
位置認識部55は、例えば、一方のガイドレール51上に固定され研削手段7の移動方向(Z軸方向)に沿って延びるスケール550と、スケール550の表面に表示されている位置情報(目盛り)を読み取る読み取り部551とを備えた構成となっている。読み取り部551は、昇降板53の+X方向側の側面に固定され、昇降板53とともに昇降する。読み取り部551は、例えば、スケール550に形成された目盛りの反射光を読み取る光学式のものであり、読み取り部551には、読み取った情報を送信するためのケーブル552の一端が接続されており、ケーブル552のもう一端は、例えば、少なくともCPUとメモリ等の記憶素子とを有する算出手段9に接続されている。
【0013】
チャックテーブル30に保持されたウエーハWを研削砥石740で研削する研削手段7は、軸方向が鉛直方向(Z軸方向)であるスピンドル70と、スピンドル70を回転可能に支持するスピンドルハウジング71と、スピンドル70を回転駆動するスピンドルモータ72と、スピンドル70の下端に接続された円環状のマウント73と、マウント73の下面に着脱可能に接続された研削ホイール74とを備える。
【0014】
研削ホイール74は、環状のホイール基台741と、ホイール基台741の底面に環状に配設された略直方体形状の複数の研削砥石740とを備える。研削砥石740は、例えば、レジンボンドやメタルボンド等でダイヤモンド砥粒等が固着されて成形されている。各研削砥石740においては、その底面(−Z方向側の面)が研削面740aとなっており、チャックテーブル30が研削手段7の直下にある場合に、研削面740aとチャックテーブル30の保持面300aが対向した状態となる。なお、研削砥石740の形状は、環状に一体に形成されているものでもよい。研削手段7の内部には、研削水の通り道となる図示しない流路が形成されており、この流路はホイール基台741の底面において研削砥石740に向かって研削水を噴出できるように開口している。
【0015】
研削装置1は、研削砥石740の平坦な底面である研削面740aをドレッシングするドレッサボード80を備えたドレッシング手段8を備えている。ドレッシング手段8は、図1に示す例においては、研削領域B内にあるチャックテーブル30に隣接し、チャックテーブル30よりも+Y方向側にある位置に配設されている。ドレッシング手段8は、ドレッサボード80を保持する保持テーブル81と、保持テーブル81に配設されドレッサボード80の上面800と研削砥石740の研削面740aとが接触した瞬間を検出するAEセンサ82と、研削砥石740の平坦な研削面740aに平行な方向(以下、面方向とし、図示の例においては、Y軸方向)に保持テーブル81を移動させる移動手段83とを少なくとも備えている。
【0016】
図2に示す移動手段83は、例えば、Y軸方向の軸心を有するボールネジ830と、ボールネジ830と平行に配設された一対のガイドレール831と、ボールネジ830を回動させるモータ832と、内部のナットがボールネジ830に螺合し底部がガイドレール831に摺接する可動板833とから構成される。そして、モータ832がボールネジ830を回動させると、これに伴い可動板833がガイドレール831にガイドされてY軸方向に移動し、可動板833上に配設された保持テーブル81が可動板833の移動に伴いY軸方向に移動する。なお、移動手段83の代わりに、チャックテーブル30を移動させる図示しないY軸方向送り手段が、保持テーブル81をチャックテーブル30と共に移動させるものとしてもよい。
【0017】
保持テーブル81は、例えば、昇降手段84によって、Z軸方向に昇降可能となっているが、昇降手段84は、例えばエアシリンダであり、内部に図示しないピストンを備え基端側(−Z方向側)に底のある有底円筒状のシリンダチューブ840と、シリンダチューブ840に挿入され一端がピストンに取り付けられたピストンロッド841とを備える。ピストンロッド841のもう一端は、保持テーブル81の底面に接続されている。また、ピストンチューブ840の基端側は、可動板833の上面に固定されている。昇降手段84は、エアシリンダに限定されるものではなく、モータ等によって動作するボールネジ機構から構成されるものであってもよい。なお、保持テーブル81は、可動板833上に、支持柱等により、保持テーブル81の保持面の高さ位置が固定された状態で配設されていてもよい。
【0018】
保持テーブル81は、例えば、略正方形の平板状に形成されドレッサボード80が載置される平坦な載置面を有するドレッサボード載置部810と、ドレッサボード載置部810から水平方向に延出して形成されその上面にAEセンサ82が配設されるAEセンサ配置部811とを備えている。
【0019】
ドレッサボード80は、例えば、適宜のボンド材でダイヤモンド砥粒が固められて、略正方形の平板状に形成されている。ドレッサボード80は、ドレッサボード載置部810の載置面に、適宜の接着剤によって貼着されることで、保持テーブル81に保持される。保持テーブル81に保持されたドレッサボード80は、図示の例においては、ドレッサボード載置部810の載置面の大半を覆っており、ドレッサボード80の上面800は、Z軸に対し直交する水平面となっている。なお、ドレッサボード80に含まれる砥粒は、研削砥石740の種類により適宜適切なものを選択でき、ダイヤモンド砥粒以外にも、例えばWA砥粒(ホワイトアランダム)やGC砥粒(グリーンカーボン)を用いてもよい。また、適宜のボンド材としては、例えばレジンボンドやビトリファイドボンドが用いられる。なお、保持テーブル81は、保持テーブル81の載置面をポーラス部材等によって形成するとともに保持テーブル81に吸引源等を接続し、吸引源による吸引力によりドレッサボード80を吸引保持できるものとしてもよい。
【0020】
AE(Acoustic Emission)センサ82は、例えば、数10kHz〜数百MHzの超音波領域を対象とし圧電素子等で構成され、研削砥石740の研削面740aがドレッサボード80の上面800に接触した際に発生する音を弾性波として検出する。図1に示すように、AEセンサ82には、ケーブル820を介して、プリアンプ821が接続されており、プリアンプ821には、増幅器やフィルタ等から成るAE信号処理部822が接続されている。そして、AE信号処理部822は、算出手段9に接続されている。
【0021】
以下に、図1〜6を用いて、研削装置1において、ウエーハWを研削し研削砥石740の消耗量を算出する場合の研削装置1の動作について説明する。なお、図2図6においては、研削手段7及び研削送り手段5等の構成を簡略化して示している。
【0022】
図1に示すウエーハWは、例えば、外形が円形状の半導体ウエーハであり、ウエーハWの表面Waには、図示しない保護テープが貼着されている。ウエーハWの研削においては、まず、図1に示す着脱領域A内において、ウエーハWが、裏面Wbが上側になるように保持面300a上に載置される。そして、チャックテーブル30に接続された図示しない吸引源により生み出される吸引力が保持面300aに伝達されることにより、チャックテーブル30が保持面300a上でウエーハWを吸引保持する。
【0023】
次いで、ウエーハWを保持したチャックテーブル30が、着脱領域Aから研削領域B内の研削手段7の下まで+Y方向へ移動する。
【0024】
また、スピンドルモータ72がスピンドル70を回転駆動し、これに伴って研削ホイール74も回転する。そして、研削手段7が研削送り手段5により−Z方向へと送られ、研削ホイール74が−Z方向へと降下していき、研削砥石740がウエーハWの裏面Wbに当接することで研削が行われる。ここで、モータ52を制御する制御部2には、例えば、研削手段7が、図2に示す最も上方の待機位置Z0に位置する状態から研削砥石740の研削面740aがウエーハWの裏面Wbに当接するまでにモータ52に送ったパルス信号の数が記憶される。研削中は、チャックテーブル30が回転するのに伴って、保持面300a上に保持されたウエーハWも回転するので、研削砥石740がウエーハWの裏面Wbの全面の研削加工を行う。
【0025】
ウエーハWを所定の厚みになるまで研削した後、研削送り手段5により研削手段7を+Z方向へと移動させて研削加工済みのウエーハWから離間させ、さらにチャックテーブル30を−Y方向に移動させて着脱領域Aの元の位置に戻す。次いで、研削加工前の別の新しい一枚のウエーハWをチャックテーブル30上に保持し、上記と同様に研削加工を施していく。
【0026】
ウエーハWを研削すると、研削砥石740の研削面740aに目つぶれや目詰まりが発生するため、研削装置1では、先のウエーハWを研削した後、次のウエーハWを研削する前に、研削砥石740によってドレッサボード80を研削し、研削砥石740の研削面740aのドレッシングを行う。
【0027】
ここで、研削装置1においては、研削砥石740のドレッシングを行う前に、研削手段7をドレッシング手段8に接近する方向に研削送りし、研削砥石740の研削面740aとドレッサボード80の上面800とが接触する研削送り位置を、AEセンサ82により検出する。具体的には、まず、移動手段83が、ドレッサボード80を保持した保持テーブル81を研削手段7の下まで移動させ、研削手段7に備える研削ホイール74とドレッサボード80との位置合わせがなされる。この位置合わせは、例えば、図2に示すように、研削砥石740の回転軌道がドレッサボード80の上面800の+Y側の端部の上方を通るように行われる。
【0028】
次いで、例えば、保持テーブル81が、昇降手段84によって+Z方向に上昇し、チャックテーブル30の保持面300a上に保持されたウエーハWの裏面Wbよりも、保持テーブル81上のドレッサボード80の上面800がZ軸方向においてより高い位置になるように、保持テーブル81が位置付けられる。
【0029】
そして、研削手段7が研削送り手段5により−Z方向へと送られ、図3に示すように、回転する研削ホイール74が−Z方向へと降下していき、研削砥石740の研削面740aが、ドレッサボード80の上面800に当接する。このドレッサボード80の上面800のうち研削面740aが接触した部分の面が、ドレッサボード80の研削が行われない基準面800aとなる。
【0030】
AEセンサ82は、研削砥石740の研削面740aがドレッサボード80の基準面800aに接触した際に発生する音を弾性波として検出する。AEセンサ82は、音源となるドレッサボード80の上面800に近い位置にあるため、その検出精度が高くなる。AEセンサ82で検出された弾性波は、AEセンサ82からAE信号として図1に示すプリアンプ821に送られる。プリアンプ821は、AE信号の増幅を行い、AE信号処理部822のAE信号処理を容易にする。AE信号処理部822は、相対的に大きいエネルギーを含む機械振動などの低周波の信号や、接触判定に無関係な周波数の信号等をフィルタで除去し、その後増幅器により増幅する。AE信号処理部822は、増幅した信号を算出手段9に出力する。算出手段9は、送られてきた信号についての演算処理等を行い、研削砥石740の研削面740aのドレッサボード80の上面800に対する接触を判定する。
【0031】
さらに、算出手段9は、研削砥石740の研削面740aがドレッサボード80の基準面800aに接触した時に、読み取り部551がスケール550から読み取った位置情報を、図3に示す研削手段7の研削送り位置Z1としてメモリ等に記憶する。このように、ドレッシング前に、AEセンサ82により、研削砥石740の研削面740aとドレッサボード80の基準面800aとが接触した研削送り位置Z1が検出される。
【0032】
研削送り手段5が研削手段7を+Z方向に上昇させた後、移動手段83が保持テーブル81を+Y方向に移動させ、研削砥石740の回転軌道がドレッサボード80の上面800の中心付近の上方に位置するように位置合わせを行う。そしてその後、図4に示すように、研削手段7が研削送り手段5により−Z方向へと送られ、研削ホイール74が−Z方向へと降下していき、研削砥石740がドレッサボード80の上面800に押し付けられていく。そして、ドレッサボード80に接触しながら回転する研削砥石740の研削面740aがドレッシングされ、研削砥石740が消耗する。研削面740aがドレッシングされると、ドレッサボード80の上面800のうち研削砥石740が当接している領域も研削される。
【0033】
研削砥石740の研削面740aのドレッシングが完了した後、研削送り手段5が研削手段7を+Z方向へと上昇させてドレッサボード80の上面800から離間させる。また、スピンドル70の回転駆動を止め、研削ホイール74の回転を停止させる。研削面740aのドレッシングによって、図5に示すように、ドレッサボード80の上面800には研削痕Mが形成される。
【0034】
次いで、研削砥石740のドレッシング後に、研削手段7をドレッシング手段8に接近する方向に研削送りし、研削砥石740の研削面740aとドレッサボード80の基準面800aとを接触させ、その時の研削送り位置を、AEセンサ82により検出する。すなわち、図5に示すように、移動手段83が、ドレッサボード80を保持した保持テーブル81を−Y方向に移動させ、研削砥石740がドレッサボード80の研削が行われない基準面800a上に位置するように位置付けられる。そして、図6に示すように、研削手段7が研削送り手段5により−Z方向へと送られ、回転が停止されている研削ホイール74が−Z方向へと降下していき、研削砥石740がドレッサボード80の基準面800aに当接する。
【0035】
AEセンサ82は、研削砥石740の研削面740aがドレッサボード80の基準面800aに接触した際に発生する音を弾性波として検出する。AEセンサ82で検出された弾性波に基づく信号は、算出手段9へ送られ、算出手段9が、研削砥石740の研削面740aのドレッサボード80の基準面800aに対する接触を判定する。
【0036】
さらに、算出手段9は、研削砥石740の研削面740aがドレッサボード80の基準面800aに接触した時に、読み取り部551がスケール550から読み取った位置情報を、図6に示す研削手段7の研削送り位置Z2としてメモリ等に記憶する。このように、ドレッシング後に、AEセンサ82により、研削砥石740の研削面740aとドレッサボード80の基準面800aとが接触した研削送り位置Z2が検出される。
【0037】
次いで、算出手段9は、ドレッシング前に研削砥石740の研削面740aとドレッサボード80の基準面800aとが接触した時の研削送り位置Z1から、ドレッシング後に研削砥石740の研削面740aとドレッサボード80の基準面800aとが接触した時の研削送り位置Z2を差し引き、以下の式(1)から、研削砥石の消耗量L1を算出する。
Z1−Z2=L1・・・・・・・・・(式1)
【0038】
なお、ドレッシング後においては、チャックテーブル30の保持面300aよりも、保持テーブル81上のドレッサボード80の上面800がより低い位置になるように、昇降手段84が保持テーブル81を−Z方向に下降させて、保持テーブル81を退避させる。
【0039】
算出手段9は、研削砥石740の消耗量L1についての情報を、図1に示す制御部2に送信する。ウエーハWの研削が再度開始されるに際し、例えば、研削送り手段5が研削手段7を+Z方向へと移動させて待機位置Z0に位置付ける。制御部2は、先のウエーハWの研削時において記憶したパルス信号の数、すなわち、研削手段7が最も上方の待機位置Z0に位置する状態から研削砥石740の研削面740aがウエーハWの裏面Wbに当接するまでにモータ52に送ったパルス信号の数に加えて、研削手段7が研削砥石740の消耗量L1分の距離だけ−Z方向に移動するのに必要な数のパルス信号をモータ52に対して供給することで、研削砥石740の研削面740aを、ウエーハWの裏面Wbにすぐに接触させて研削を開始することができる。
【0040】
上記のように、研削装置1は、ウエーハWを保持するチャックテーブル30と、チャックテーブル30に保持されたウエーハWを研削砥石740で研削する研削手段7と、研削手段7をチャックテーブル30に対して離間又は接近する上下方向に研削送りする研削送り手段5と、研削砥石740の研削面740aをドレッシングするドレッサボード80を備えたドレッシング手段8と、研削砥石の消耗量を算出する算出手段9とを備えており、ドレッシング手段8は、ドレッサボード80を保持する保持テーブル81と、保持テーブル81に配設されドレッサボード80の上面800と研削砥石740の研削面740aとが接触した瞬間を検出するAEセンサ82と、研削砥石740の研削面740aの面方向に保持テーブル81を移動させる移動手段83とを備え、ドレッサボード80の上面800には、移動手段83により保持テーブル81を移動させることでドレッシングによるドレッサボード80の研削が行われない基準面800aを備え、研削送り手段5は、研削手段7を研削送りした研削送り位置を認識する位置認識部55を備え、算出手段9により、ドレッシング前に研削手段7をドレッシング手段8に接近する方向に研削送りしAEセンサ82により検出する研削砥石740の研削面740aとドレッサボード80の基準面800aとが接触した研削送り位置Z1から、ドレッシング後に研削手段7をドレッシング手段8に接近する方向に研削送りしAEセンサ82により検出する研削砥石740の研削面740aとドレッサボード80の基準面800aとが接触した研削送り位置Z2を差し引いて研削砥石740の消耗量を算出することにより、ドレッシング後の研削動作時に研削砥石740の消耗量を研削送り量にすぐに反映させ、研削砥石740の研削面740aをウエーハWに接触させることで、研削加工における無駄な動作及び時間が生じないようにすることが可能となる。
つまり、ドレッシング前とドレッシング後においてドレッサボードの上面800の同じ部分に研削砥石740の研削面740aを接触させ、研削送り位置Z1,Z2の差をドレッシングによる砥石の消耗量としている。よって、基準面800aは、全く研削されない面ではなくてもよく、以前研削された上面を基準面とすることもできる。このように、ドレッシング前とドレッシング後とでドレッサボードの上面800の同じ部分に研削砥石740の研削面740aを接触させるため、移動手段83のY方向の位置を記憶する。
【0041】
なお、本発明に係る研削装置1は上記実施形態に限定されるものではなく、また、添付図面に図示されている各構成の大きさや形状等についても、これに限定されず、本発明の効果を発揮できる範囲内で適宜変更可能である。
【0042】
例えば、ドレッシング手段8は、以下のように形成されていてもよい。図7に示すドレッシング手段8は、ドレッサボード85を保持する保持テーブル86と、保持テーブル86に配設されドレッサボード85の上面850と研削砥石740の研削面740aとが接触した瞬間を検出するAEセンサ82と、研削砥石740の研削面740aの面方向に保持テーブル81を移動させる移動手段83とを少なくとも備えている。
【0043】
保持テーブル86は、例えば、Z軸方向に昇降可能であるとともに、回転手段87により駆動されてZ軸を回転軸として回転可能である。
【0044】
保持テーブル86は、例えば、外形が円柱状のドレッサボード85が載置される平坦な載置面を有するドレッサボード載置部860と、ドレッサボード載置部860から水平方向に延出して形成されその上面にAEセンサ82が配設されるAEセンサ配置部861とを備えている。
【0045】
ドレッサボード85は、例えば、適宜のボンド材でダイヤモンド砥粒が固められて、円柱状に形成されている。ドレッサボード85は、ドレッサボード載置部860の載置面に、適宜の接着剤によって貼着されることで、保持テーブル86に保持される。保持テーブル86に保持されたドレッサボード85は、図示の例においては、ドレッサボード載置部860の載置面の大半を覆っており、ドレッサボード85の上面850は、Z軸に対し直交する水平面となっている。
【0046】
ドレッシングによるドレッサボード85の研削が行われない基準面850aの決定について以下に説明していく。なお、図7,8においては、研削手段7とドレッシング手段8以外の構成は省略して示している。
【0047】
研削砥石740のドレッシングを行う前に、まず、移動手段83が、ドレッサボード85を保持した保持テーブル86を研削手段7の下まで+Y方向へ移動させて、研削手段7に備える研削ホイール74とドレッサボード85との位置合わせがなされる。
【0048】
この位置合わせは、例えば研削砥石740の回転軌道が保持テーブル86の回転中心に一致するように行われる。そして、研削手段7を−Z方向に降下させていき、ドレッサボード85の上面850のうち研削砥石740の研削面740aが接触した領域が、ドレッシングによるドレッサボード85の研削が行われない基準面850aとして決定される。図示の例においては、ドレッサボード85の上面850中、その略中央領域が、ドレッサボード85の研削が行われない基準面850aとなる。そして、研削砥石740の研削面740aと基準面740aとが接触した時の研削手段7の研削送り位置Z1が算出手段9に記憶される。
【0049】
ドレッシング中は、保持テーブル86を例えば+Y方向に移動させて研削砥石740の回転軌道が基準面850aの上方からずれた状態とする。そして、回転手段87が保持テーブル86を回転させるとともに、研削送り手段5が研削ホイール74を−Z方向へと降下させていき、研削砥石740がドレッサボード85の上面850に押し付けられていく。そして、ドレッサボード85に接触しながら回転する研削砥石740の研削面740aがドレッシングされ、研削砥石740が消耗する。保持テーブル86が回転するのに伴って、保持テーブル86上に保持されたドレッサボード85も回転するので、ドレッサボード85の上面850も研削され、図8に示すように、その略中央領域がドレッサボード85の研削が行われない基準面850aとして円形状に残った状態となる。そして、研削砥石740の研削面740aと研削された上面850とが接触した時の研削手段7の研削送り位置Z2が算出手段9に記憶される。そして、こうして求めたZ1及びZ2の値を用いて、上記式(1)により研削砥石740の消耗量を算出することができる。
【符号の説明】
【0050】
1:研削装置 10:ベース 11:コラム
2:制御手段
30:チャックテーブル 300:吸着部 300a:保持面 301:枠体
31:カバー
5:研削送り手段 50:ボールネジ 51:ガイドレール 52:モータ
53:昇降板 54:ホルダ
55:位置認識部 550:スケール 551:読み取り部 552:ケーブル
7:研削手段 70:スピンドル 71:スピンドルハウジング
72:スピンドルモータ 73:マウント 74:研削ホイール 740:研削砥石
740a:研削面 741:ホイール基台
8:ドレッシング手段 80:ドレッサボード 800:ドレッサボードの上面
800a:ドレッサボードの基準面
81:保持テーブル 810:ドレッサボード載置部 811:AEセンサ配置部
82:AEセンサ 820:ケーブル 821:プリアンプ 822:AE信号処理部
83:移動手段 830:ボールネジ 831:ガイドレール 832:モータ
84:昇降手段 840:シリンダチューブ 841:ピストンロッド
85:ドレッサボード
850:ドレッサボードの上面 850a:ドレッサボードの基準面
86:保持テーブル 87:回転手段
9:算出手段
W:ウエーハ Wa:ウエーハの表面 Wb:ウエーハの裏面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8