特許第6734841号(P6734841)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6734841
(24)【登録日】2020年7月14日
(45)【発行日】2020年8月5日
(54)【発明の名称】無機薄膜の生成方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/18 20060101AFI20200728BHJP
【FI】
   C23C16/18
【請求項の数】13
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2017-506692(P2017-506692)
(86)(22)【出願日】2015年7月24日
(65)【公表番号】特表2017-524072(P2017-524072A)
(43)【公表日】2017年8月24日
(86)【国際出願番号】EP2015066981
(87)【国際公開番号】WO2016020208
(87)【国際公開日】20160211
【審査請求日】2018年7月23日
(31)【優先権主張番号】14179724.1
(32)【優先日】2014年8月4日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】シュトラウトマン,ユリア
(72)【発明者】
【氏名】パシエロ,ロッコ
(72)【発明者】
【氏名】シャオプ,トマス
(72)【発明者】
【氏名】シールレ−アルント,ケルシュティン
(72)【発明者】
【氏名】レッフラー,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルマー,ハーゲン
(72)【発明者】
【氏名】アイッケマイアー,フェリクス
(72)【発明者】
【氏名】ブラスベルク,フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】リムブルク,カロリン
【審査官】 山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−542687(JP,A)
【文献】 特開2012−162804(JP,A)
【文献】 特表2010−527316(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】
(式中、
11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18は、互いに独立して、水素、アルキル基、アリール基またはトリアルキルシリル基であり、
21、R22、R23、R24は、互いに独立して、アルキル基、アリール基またはトリアルキルシリル基であり、
nは、1または2であり、
Mは、NiまたはCoであり、
Xは、Mを配位結合させるリガンドであり、
mは、1または2の整数である)
で表され、分子量が最大1000g/molの化合物を気体状態またはエーロゾル状態にする工程と、
一般式(I)の化合物を気体状態またはエーロゾル状態から固体基材上に堆積させる工程と、
を含む無機薄膜の製造方法。
【請求項2】
Xが、一酸化炭素、シアン化物、メチル、エチレン、シクロオクテンまたは2−ブチンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
一般式(I)の化合物が、固体基材の表面に化学吸着される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
一般式(I)の堆積した化合物が、全てのリガンドLおよびXを除去することにより分解される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
一般式(I)の堆積した化合物が、還元剤に曝露される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
一般式(I)の化合物を固体基材上に堆積させ、一般式(I)の堆積した化合物を分解する手順が、少なくとも2回実施される、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
1回の手順が、0.1秒から1分までかかる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
固形基材の温度が、100℃から300℃までである、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
一般式(I)の化合物を不活性気体と混合した後、固体基材上に堆積させる、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
堆積時の圧力が、1mbarから0.01mbarまでである、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
11、R12、R13、R14、R15、R16、R17およびR18が水素である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
21、R22、R23およびR24が互いに独立して、アルキル基である、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
固体基材上での成膜プロセスに、
一般式(I)
(式中、
11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18は、互いに独立して、水素、アルキル基、アリール基またはトリアルキルシリル基であり、
21、R22、R23、R24は、互いに独立して、アルキル基、アリール基またはトリアルキルシリル基であり、
nは、1または2であり、
Mは、NiまたはCoであり、
Xは、Mを配位結合させるリガンドであり、
mは、1または2の整数である)
で表され、分子量が最大1000g/molの化合物を使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上に無機薄膜を生成する方法、特に原子層堆積法の分野に含まれる。
【背景技術】
【0002】
進行する小型化とともに、例えば半導体産業において、基材上の無機薄膜への必要性が高まるものの、かかる膜の品質にかかわる要件はより厳しくなってきている。無機薄膜は、バリア層、誘電体、微細構造のセパレータまたは電気接点などの、様々な目的にかなっている。無機薄膜の生成についていくつかの方法が公知である。それらのうちの1つは、成膜化合物を気体状態から基材上へ堆積させることである。金属または半金属原子を中温で気体状態にするために、例えば金属または半金属と適切なリガンドとの錯体形成により、揮発性前駆物質を用意することが必要である。このようなリガンドは、錯化金属または半金属を基材上へ堆積させた後、除去する必要がある。
【0003】
WO2012/057884A1には、遷移金属用の窒素含有リガンドおよび原子層堆積法におけるこれらの使用が開示されている。
【0004】
WO2008/141439A1には、リン含有リガンドを有する遷移金属錯体および水素生成における触媒としてのこれらの使用が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2012/057884A1
【特許文献2】WO2008/141439A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、高品質で再現性の良い無機薄膜を経済的に妥当な条件下で固体基材上に生成する方法を提供することであった。この方法は、金属を含む前駆物質を固体基材と接触させる前に、前駆物質の分解が可能な限り少ない状態で実施可能であることが望まれた。固体基材上に堆積した後、前駆物質は容易に分解される方法を提供することも同時に望まれた。本発明は、前駆物質の特性を特定の必要性に適合させるために容易に改質することができ、依然として安定なままであり得る、金属前駆物質を使用する方法を提供することをさらに目的としていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これらの目的は、一般式(I)
【化1】
(式中、
11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18は、互いに独立して、水素、アルキル基、アリール基またはトリアルキルシリル基であり、
21、R22、R23、R24は、互いに独立して、アルキル基、アリール基またはトリアルキルシリル基であり、
nは、1または2であり、
Mは、金属または半金属であり、
Xは、Mを配位結合させるリガンドであり、
mは、0から3の整数である)
の化合物を気体状態またはエーロゾル状態にする工程と、
一般式(I)の化合物を気体状態またはエーロゾル状態から固体基材上に堆積させる工程と
を含む方法によって達成された。
【0008】
本発明は、固体基材上での成膜プロセスに、一般式(I)
(式中、
11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18は、互いに独立して、水素、アルキル基、アリール基またはトリアルキルシリル基であり、
21、R22、R23、R24は、互いに独立して、アルキル基、アリール基またはトリアルキルシリル基であり、
nは、1または2であり、
Mは、金属または半金属であり、
Xは、Mを配位結合させるリガンドであり、
mは、0から3の整数である)
の化合物を使用する方法にさらに関する。
【0009】
本発明の好ましい実施形態は、本明細書および本請求項に記載されている。様々な実施形態の組合せが本発明の範囲に包含される。
【0010】
本発明による方法では、一般式(I)の化合物を気体状態またはエーロゾル状態にする。リガンドLは、リン原子および窒素原子の双方を介して金属Mに結合していることが多く、したがって、リガンドLは、金属Mの3つの配位部位を占有することが多く、すなわち、リガンドLは、三座配位子であることが多い。窒素原子は、水素原子を有することができ、または脱プロトン化されていてもよい。
【0011】
11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18は、互いに独立して、水素、アルキル基、アリール基またはトリアルキルシリル基である。R21、R22、R23、R24は、互いに独立して、アルキル基、アリール基またはトリアルキルシリル基である。
【0012】
アルキル基は直鎖状または分枝鎖状とすることができる。直鎖状アルキル基の例は、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシルである。分枝鎖状アルキル基の例としては、イソプロピル、イソ−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、2−メチル−ペンチル、2−エチル−ヘキシル、シクロプロピル、シクロヘキシル、インダニル、ノルボルニルである。アルキル基は、C〜Cアルキル基であるのが好ましく、C〜Cアルキル基であるのがより好ましく、特にC〜Cアルキル基である。アルキル基は例えば、ハロゲン、例えばフッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物;擬ハロゲン、例えばシアン化物、シアネート、チオシアネート;アルコール;メトキシ基もしくはエトキシ基などのアルコキシ基;またはトリメチルシリル基またはジメチル−tert−ブチルシリル基などのトリアルキルシリル基により置換されていてもよい。トリアルキルシリル置換アルキル基の好ましい例は、トリメチルシリルメチルである。
【0013】
アリール基には、フェニル基、ナフタリル基、アントラセニル基、フェナントレニル基などの芳香族炭化水素およびピリル基、フラニル基、チエニル基、ピリジニル基、キノイル基、ベンゾフリル基、ベンゾチオフェニル基、チエノチエニル基などの複素環式芳香族基が含まれる。これらの基のいくつかまたはこれらの基の組合せも可能であり、例えばビフェニル、チエノフェニルまたはフラニルチエニルも可能である。アリール基は例えば、ハロゲン、例えばフッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物;擬ハロゲン、例えばシアン化物、シアネート、チオシアネート;アルコール;アルキル鎖;アルコキシ鎖;またはトリアルキルシリル基によって置換されていてもよい。芳香族炭化水素が好ましく、フェニルがより好ましい。
【0014】
トリアルキルシリル基は、同一のまたは異なるアルキル基を有することができる。トリアルキルシリル基は、C〜Cアルキル基を有するのが好ましく、C〜Cアルキル基を有するのがより好ましい。同一のアルキル基を有するトリアルキルシリル基の例は、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリ−n−プロピルシリル、トリ−イソ−プロピルシリル、トリシクロヘキシルシリルである。異なるアルキル基を有するトリアルキルシリル基の例は、ジメチル−tert−ブチルシリル、ジメチルシクロヘキシルシリル、メチル−ジ−イソ−プロピルシリルである。
【0015】
好ましくは、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18は、互いに独立して、水素またはメチルである。より好ましくは、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18の少なくとも4つは水素であり、残りの置換基はメチルであり、例えばR11、R13、R16およびR18は水素であり、R12、R14、R15およびR17はメチルであり、またはR14、R15およびR17はメチルであり、残りの置換基は水素であり;さらに好ましくは、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18の少なくとも6つは水素であり、残りの置換基はメチルであり、例えばR14およびR15はメチルであり、残りの置換基は水素であり、またはR17およびR15はメチルであり、残りの置換基は水素であり、またはR17およびR12はメチルであり、残りの置換基は水素であり、またはR14はメチルであり、残りの置換基は水素であり、またはR17はメチルであり、残りの置換基は水素である。R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18は、水素であるのが特に好ましい。
【0016】
好ましくは、R21、R22、R23、R24は、互いに独立して、アルキル基である。R21、R22、R23、R24は同一であるのが好ましく、R21、R22、R23、R24は同一のアルキル基であるのがより好ましい。
【0017】
全てのR11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R21、R22、R23、R24が分かれていることも可能であるし、またはこれらの2つ以上が環を形成することも可能である。例えば、R21およびR22は、リン原子を含む環を形成することができ、またはR23およびR24は、リン原子を含む環を形成することができる。さらに、R13およびR15は、窒素原子を含む環を形成することができる。この場合、Lは、L’形態
【化2】
であると想定するのが好ましい。
【0018】
31、R32およびR33は、互いに独立して、R11〜R18に関して前述したような水素、アルキル基、アリール基またはトリアルキルシリル基である。
【0019】
さらに、R11およびR12が環を形成することおよび/またはR17およびR18が環を形成することが可能であり、例えばシクロプロピル環、シクロブチル環、シクロペンチル環またはシクロヘキシル環を形成することが可能である。さらに、R11およびR13が環を形成することおよび/またはR15およびR17が環を形成することが可能である。
【0020】
一般式(I)の化合物の分子量が最大1000g/mol、より好ましくは最大800g/mol、特に最大600g/molであることが好ましい。
【0021】
本発明による一般式(I)の化合物は、1つまたは2つのリガンドLを含むことができ、すなわち、nは1または2である。nは1であるのが好ましい。nが2である場合、2つのリガンドLは、同一かまたは互いに異なるとすることができるが、同一であるのが好ましい。
【0022】
本発明によれば、一般式(I)の化合物のMは、任意の金属または半金属とすることができる。金属には、Be、Mg、Ca、Sr、Baなどのアルカリ土類金属;Al、Ga、In、Sn、Tl、Pb、Biなどの典型元素金属;Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、PbまたはBiなどの遷移金属;La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luなどのランタノイドが含まれる。半金属には、B、Si、Ge、As、Sbが含まれる。遷移金属が好ましく、特にNiまたはCoが好ましい。



【0023】
金属または半金属Mは、任意の酸化状態にあることができる。Mは、それが固体基材上の最終膜にあることになる酸化状態に近いことが好ましい。例えば、酸化状態0の金属または半金属膜が所望の場合、一般式(I)の化合物の金属または半金属Mは、酸化状態0または−1もしくは+1であることが好ましい。金属が酸化状態4を有する金属酸化物膜の例もある。この場合、一般式(I)の化合物のMは、酸化状態+4または+3もしくは+5であることが好ましい。一般式(I)の化合物のMは、固体基材上の最終膜にあることになるのと同一の酸化状態を有することが、より好ましい。この場合、酸化または還元は必要としない。
【0024】
本発明によれば、一般式(I)の化合物のリガンドXは、Mを配位結合させる任意のリガンドとすることができる。Xが電荷を有する場合、一般式(I)の化合物が中性に荷電しているように、mが通常には選択される。2以上のかかるリガンドが一般式(I)の化合物に存在する場合、すなわちm>1である場合、これらのリガンドは、同一かまたは互いに異なるとすることができる。mが3の場合、2つのリガンドXは同一であり、かつ残りのXはこれら2つのリガンドXと異なることが可能である。Xは、金属または半金属Mの任意のリガンド圏に、例えば、リガンド内圏に、リガンド外圏にあることができ、またはMにただ穏やかに会合していることができる。2以上のリガンドXが一般式(I)の化合物に存在する場合、リガンドXが異なるリガンド圏にあることもさらに可能である。Xは、Mのリガンド内圏にあることが好ましい。
【0025】
本発明による一般式(I)の化合物のリガンドXは、ハロゲンのアニオン、例えばフッ化物、塩化物、臭化物またはヨウ化物、および擬ハロゲン、例えばシアニド、イソシアニド、シアナート、イソシアナート、チオシアナート、イソチオシアナート、またはアジドなどが挙げられる。さらに、Xは任意のアミンリガンドとすることができ、ここで、配位結合窒素原子は、ジアルキルアミン、ピペリジン、モルフォリン、ヘキサメチルジシラザン;アミノイミドであるような脂肪族;またはピロール、インドール、ピリジン、もしくはピラジンであるような芳香族、のいずれかである。アミンリガンドの窒素原子は、Mに配位結合する前に脱プロトン化することが多い。さらに、Xは、フォルムアミドまたはアセトアミドなどのアミドリガンド;アセトアミジンなどのアミジナートリガンド;またはグアニジンなどのグアニジナートリガンドとすることができる。Xは、酸素原子が金属または半金属に配位結合しているリガンドであることも可能である。例としては、アルカノレート、テトラヒドロフラン、アセチルアセトネート、アセチルアセトンまたは1,1,1,5,5,5−ペンタフルオロアセチルアセトンである。Xの他の適切な例として、ジメチルアミノ−イソ−プロパノールを含めて、その双方ともMに配位結合している窒素原子および酸素原子の両方が挙げられる。また、Xに適切なものは、リン原子を介してMに配位結合しているリガンドである。このようなものには、トリメチルホスフィン、トリ−tert−ブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、などのトリアルキルホスフィン、またはトリフェニルホスフィン、もしくはトリトリルホスフィンなどの芳香族ホスフィンが含まれる。
【0026】
さらに、適切なリガンドXは、メチルアニオン、エチルアニオンまたはブチルアニオンなどのアルキルアニオンである。可能な別のリガンドXは、水素化物である。Xは、π結合でMに配位結合している不飽和炭化水素とすることもできる。不飽和炭化水素には、オレフィン、例えばエチレン、プロピレン、イソブチレン、シクロヘキセン、シクロオクテン、シクロオクタジエン、スチレン;およびアルキン、例えばエチン、プロピン、2−ブチンが含まれる。Xは、アニオンおよびアリルまたは2−メチルアリルなどの不飽和結合の双方を介して配位結合することができる不飽和アニオン性炭化水素とすることもできる。シクロペンタジエンアニオンおよび置換されたシクロペンタジエンアニオンもXに適している。Xの適切な別の例は、一酸化炭素COまたは一酸化窒素NOである。1つのXがNOであり、他のXがCOであることが特に好ましい。Mに配位結合している複数の原子を含む分子を使用することも可能である。例としては、ビピリジン、o−テルピリジン、エチレンジアミン、エチレンジ(ビスフェニルホスフィン)である。
【0027】
気化温度の低い小分子リガンドがXにとって好ましい。特に好ましいリガンドXは、一酸化炭素、シアン化物、臭化物、メチル、エチレン、シクロオクテンまたは2−ブチンである。プロトン化に際して、例えば表面結合プロトンにより、揮発性中性化合物に容易に転換することができる低分子アニオン性リガンドが、Xにとって好ましい。例としては、メチル、エチル、プロピル、ジメチルアミド、ジエチルアミド、アリル、2−メチル−アリルが挙げられる。
【0028】
本発明による方法において使用される一般式(I)の化合物を高純度で使用することで、最良の結果が達成される。高純度とは、使用される物質が、一般式(I)の化合物の少なくとも90wt.%を、好ましくは一般式(I)の化合物の少なくとも95wt.%を、より好ましくは一般式(I)の化合物の少なくとも98wt.%を、特に一般式(I)の化合物の少なくとも99wt.%を含有することを意味する。純度は、DIN51721(Pruefung fester Brennstoffe−Bestimmung des Gehaltes an Kohlenstoff und Wasserstoff−Verfahren nach Radmacher−Hoverath、2001年8月)による元素分析により決定することができる。
【0029】
本発明による方法では、一般式(I)の化合物を気体状態またはエーロゾル状態にする。これは、一般式(I)の化合物を高温に加熱することにより可能である。いずれにせよ、一般式(I)の化合物の分解温度より低い温度を選択する必要がある。加熱温度は、室温より少し高温から300℃の範囲であることが好ましく、30℃から250℃の範囲がより好ましく、40℃から200℃の範囲がさらに好ましく、特に50℃から150℃の範囲である。
【0030】
一般式(I)の化合物を気体状態またはエーロゾル状態にする別の方法は、例えば米国特許出願公開第2009/0226612(A1)号に記載のようにダイレクトリキッドインジェクション(DLI)である。この方法では、典型的には、一般式(I)の化合物を溶媒に溶解させ、キャリアガスでまたは真空で噴霧する。一般式(I)の化合物の蒸気圧、温度および圧力にしたがって、一般式(I)の化合物が気体状態またはエーロゾル状態のいずれかに至る。一般式(I)の化合物が、その溶媒に、少なくとも1g/l、好ましくは少なくとも10g/l、より好ましくは少なくとも100g/lなどで、十分な溶解度を示すことを条件として、様々な溶媒を使用することができる。このような溶媒の例は、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエトキシエタン、ピリジンなどの配位結合性溶媒またはヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、もしくはキシレンなどの非配位結合性溶媒である。溶媒混合物も適切である。一般式(I)の化合物を含むエーロゾルは、微細液滴または微細固体粒子を含有することになる。液滴または固体粒子の質量平均径は500nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましい。液滴または固体粒子の質量平均径は、ISO22412:2008に記載のように動的光散乱法により決定することができる。例えば、一般式(I)の化合物の限定された蒸気圧がエーロゾル状態にある一般式(I)の化合物の部分的蒸発を起こすので、一般式(I)の化合物の一部が気体状態であり、かつ残部がエーロゾル状態であることも可能である。
【0031】
減圧下で、一般式(I)の化合物を気体状態またはエーロゾル状態にすることが好ましい。この方法では、一般式(I)の化合物の分解を低下させる低い加熱温度で、当該プロセスを通常には実施することができる。上昇した圧力を使用して、気体状態またはエーロゾル状態の一般式(I)の化合物を固体基材に向けることも可能である。窒素またはアルゴンなどの不活性気体は、この目的のためにキャリアガスとして使用されることが多い。好ましくは、圧力は10bar〜10−7mbarであり、より好ましくは1bar〜10−3mbarであり、特に0.1mbarなどの1〜0.01mbarである。
【0032】
本発明による方法では、一般式(I)の化合物は、気体状態またはエーロゾル状態から固体基材上に堆積する。固体基材は任意の個体材料とすることができる。これらには、例えば金属、半金属、酸化物、窒化物、およびポリマーが含まれる。基材は様々な材料の混合物であることも可能である。金属の例は、アルミニウム、スティール、亜鉛、および銅である。半金属の例は、ケイ素、ゲルマニウム、およびガリウムヒ素である。酸化物の例は、二酸化ケイ素、二酸化チタン、および酸化亜鉛である。窒化物の例は、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、および窒化ガリウムである。ポリマーの例は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレン−ジカルボン酸(PEN)、およびポリアミドである。
【0033】
固体基材は任意の形状を有することができる。これには、シートプレート、膜、繊維、種々のサイズの粒子、および溝または他のギザギザを備える基材が含まれる。固体基材は任意のサイズとすることができる。固体基材が粒子形状である場合、粒度は100nm未満から数センチメーターまでの範囲であることができ、1μmから1mmまでであることが好ましい。一般式(I)の化合物を固体基材上に堆積させる間、粒子または繊維が互いにくっつくことを回避するために、粒子または繊維を動いている状態に保つことが好ましい。これは、例えば、撹拌により、ドラム回転により、または流動層技術により可能である。
【0034】
基材が一般式(I)の化合物と接触する場合、堆積が起こる。概して、堆積プロセスは、基材を一般式(I)の化合物の分解温度より高温に加熱するかまたは低温に加熱するか、いずれかの2つの異なる方法で実施することができる。基材を一般式(I)の化合物の分解温度より高く加熱する場合、一般式(I)の化合物は、気体状態またはエーロゾル状態にある一般式(I)の化合物のより多くが固体基材の表面に到達する限り、固体基材の表面で連続的に分解する。この方法は典型的には、化学蒸着法(CVD)と呼ばれる。通常は、有機材料が金属または半金属Mから離脱するので、均一組成物の無機層が、例えば金属酸化物もしくは半金属酸化物または金属窒化物もしくは半金属窒化物が、固体基材の上に形成される。典型的には、固体基材を、300〜1000℃の範囲の、好ましくは350〜600℃の範囲の温度に加熱する。
【0035】
あるいは、基材を一般式(I)の化合物の分解温度より低温にする。典型的には、固体基材を、一般式(I)の化合物が気体状態またはエーロゾル状態に至る環境の温度以下の温度とするが、室温とするかまたは室温よりごくわずか高温とすることが多い。好ましくは、基材の温度は、一般式(I)の化合物が気体状態またはエーロゾル状態に至る環境の温度より少なくとも30℃低温である。好ましくは、基材の温度は、室温から400℃までであり、より好ましくは100から300℃まで、例えば150から220℃までである。
【0036】
固体基材上への一般式(I)の化合物の堆積は、物理吸着プロセスまたは化学吸着プロセスのいずれかである。一般式(I)の化合物が固体基材上に化学吸着させるのが好ましい。水晶に問題の基材の表面が設けられている状態で、水晶マイクロバランスを、気体状態またはエーロゾル状態にある一般式(I)の化合物に対して曝露することにより、一般式(I)の化合物が固体基材へ化学吸着するかどうか、判定することができる。水晶の固有振動数により質量増加が記録される。水晶が設置されているチャンバーを真空排気すると、化学吸着が起こった場合、質量は当初の質量へと低下しないが、一般式(I)の残留性化合物のほぼ単一層が残る。一般式(I)の化合物の固体基材への化学吸着が生じるほとんどの場合、基材への結合が形成されるので、MのX線光電子分光(XPS)シグナル(ISO13424 EN−Surface chemical analysis−X−ray photoelectron spectroscopy−Reporting of results of thin−film analysis;2013年10月)が、変化する。
【0037】
本発明による方法において基材の温度が一般式(I)の化合物の分解温度より低く保持される場合、典型的には固体基材上に単一層が堆積する。一般式(I)の分子が固体基材上に堆積すると、それの上面へのさらなる堆積は、通常には可能性が低くなる。したがって、固体基材上への一般式(I)の化合物の堆積は、自己制御製造工程であることが好ましい。自己制御堆積製造工程による典型的な層厚は、0.01から1nmであり、0.02から0.5nmであるのが好ましく、0.03から0.4nmであるのがより好ましく、特に0.05から0.2nmである。層厚は典型的には、PAS1022DE(Referenzverfahren zur Bestimmung von optischen und dielektrischen Materialeigenschaften sowie der Schichtdicke duenner Schichten mittels Ellipsometrie;2004年2月)に記載のように偏光解析法により測定する。
【0038】
上記のものより厚い層を構築することが望まれることが多い。本発明による方法でこのことを達成するために、全てのLおよびXを除去することにより、一般式(I)の堆積した化合物を分解させることが好ましい。この後、さらなる一般式(I)の化合物を堆積させることが好ましい。この手順は、好ましくは少なくとも2回、より好ましくは少なくとも10回、特に少なくとも50回実施される。本発明に関して全てのLおよびXを除去するということは、一般式(I)の堆積した化合物のLおよびXの総質量の少なくとも95wt.%を、好ましくは少なくとも98wt.%を、特に少なくとも99wt.%を除去することを意味する。分解は種々の方法で引き起こすことができる。固体基材の温度は分解温度より高温に高めることができる。
【0039】
さらに、一般式(I)の堆積した化合物をプラズマ、例えば酸素プラズマまたは水素プラズマ;酸化剤、例えば酸素、酸素ラジカル、オゾン、亜酸化窒素(NO)、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO)もしくは過酸化水素;還元剤、例えば水素、アルコール、ヒドラジンもしくはヒドロキシルアミン、または溶媒、例えば水に曝露することが可能である。酸化剤、プラズマまたは水を使用して、金属酸化物または半金属酸化物の層を得ることが好ましい。水、酸素プラズマまたはオゾンへの曝露が好ましい。水への曝露が特に好ましい。元素金属または半金属の層が所望の場合、還元剤を使用することが好ましい。好ましい例としては、水素、水素ラジカル、水素プラズマ、アンモニア、アンモニアラジカル、アンモニアプラズマ、ヒドラジン、N,N−ジメチルヒドラジン、シラン、ジシラン、トリシラン、シクロペンタシラン、シクロヘキサシラン、ジメチルシラン、ジエチルシランまたはトリシリルアミンであり;より好ましくは水素、水素ラジカル、水素プラズマ、アンモニア、アンモニアラジカル、アンモニアプラズマ、ヒドラジン、N,N−ジメチルヒドラジン、シランであり;特に水素である。還元剤が、一般式(I)の堆積した化合物の分解を直接起こすことも可能であるし、または還元剤が、一般式(I)の堆積した化合物の分解後に異なる作用物質、例えば水によって施用されることも可能である。還元剤への曝露が好ましい。金属窒化物の層については、アンモニアまたはヒドラジンを使用するのが好ましい。リガンドLの芳香族部分の平面性のために、低分子が金属または半金属Mに容易にアクセスすると考えられるが、この平面性は、2つのイミノメチル基がリガンドLにおけるピロール単位へコンジュゲートする結果である。典型的には、生成した膜に関して分解時間が短いことおよび純度が高いことが観察される。
【0040】
自己制御製造工程および継続する自己制御反応を含む堆積プロセスは原子層堆積(ALD)と呼ばれることが多い。同等の表現は、分子層堆積(MLD)または原子層エピタキシー(ALE)である。したがって、本発明による方法は、ALD法であるのが好ましい。ALD法は、George(Chemical Reviews 110(2010年)、111〜131頁)により詳細に記載されている。
【0041】
本発明による方法の特定の利点は、一般式(I)の化合物は汎用性が高く、そこで製造パラメーターを幅広い範囲で変えることができる。したがって、本発明による方法には、CVD法ならびにALD法の両方が含まれる。
【0042】
ALD法として実施される本発明による方法の手順の数に応じて、種々の厚さの膜が生成される。一般式(I)の化合物を固体基材上に堆積させる工程および一般式(I)の堆積した化合物を分解させる工程の手順を少なくとも2回実施するのが好ましい。この手順は何回も、例えば10回から500回、例えば50回または100回、繰り返すことができる。通常、この手順は、大抵の場合、1000回を超えて繰り返すことはない。理想的には、膜の厚さは、実施された手順の回数に比例する。しかし、実際には、最初の30〜50の手順の間、比例性からのある偏差が観察される。固体基材の表面構造の不規則性がこの非比例性を生じると想定される。
【0043】
本発明による方法の一手順に、ミリ秒から数分までを要してもよく、0.1秒から1分までが好ましく、特に1から10秒までである。固体基材が、一般式(I)の化合物の分解温度より低温で、一般式(I)の化合物に曝露されるのが長ければ長いほど、欠陥がより少ないさらに規則的な膜が形成される。
【0044】
本発明による方法は、膜を生成する。膜は、一般式(I)の堆積した化合物の1つの単一層のみ、一般式(I)の化合物の連続して堆積および分解したいくつかの層、または、膜中の少なくとも1つの層は一般式(I)の化合物を使用することにより生成された、いくつかの様々な層とすることができる。膜は、ホールのような欠陥を含むこともある。しかし、このような欠陥は、膜により被覆されている表面領域の半分未満を一般には占める。当該膜は無機膜であることが好ましい。無機膜を生成するために、前述のように、全ての有機リガンドLおよびXを膜から除去する必要がある。当該膜は、元素金属膜であるのがより好ましい。膜の厚さは、前述のように、成膜プロセスに応じて0.1nm〜1μm以上とすることができる。膜の厚さは、0.5〜50nmであることが好ましい。膜は極めて均一な膜厚を有することが好ましく、極めて均一な膜厚とは、基材上の様々な場所での膜厚がほとんど変動せず、通常10%未満、好ましくは5%未満である。さらに、当該膜は、基材の表面上の共形膜であることが好ましい。膜厚および均一性を決定するのに適した方法は、XPSまたは偏光解析法である。
【0045】
膜を、電子素子において使用することができる。電子素子は、例えば100nmから100μmの種々のサイズの構造的特徴を備えることができる。電子素子用の膜を形成する方法は、極細構造に特に適している。したがって、1μmより小さいサイズの電子素子が好ましい。電子素子の例は、電界効果形トランジスタ(FET)、太陽電池、発光ダイオード、センサ、またはコンデンサーである。発光ダイオードまたは光センサなどの光学デバイスにおいて、本発明による膜は、光を反射する層の反射率を高める働きをする。センサの例は、酸素センサであり、例えば、金属酸化物膜を製造する場合、本発明による膜は酸素伝導体として働くことができる。金属酸化物半導体からの電界効果形トランジスタ(MOS−FET)において、膜は、誘電体層としてまたは拡散隔膜として働くことができる。元素ニッケル−ケイ素が固体基材上に堆積している膜から半導体層を製造することも可能である。
【0046】
好ましい電子素子は、トランジスタである。膜は、トランジスタ内で誘電体、微細構造のセパレータまたは電気接点として働くことができ、好ましくは電気接点として働くことができる。トランジスタがケイ素から製造されている場合、ニッケルまたはコバルトを堆積させ、加熱した後、一部のケイ素がニッケル中に拡散して、例えばNiSiまたはCoSiを形成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】化合物C−1、C−6、C−7、C−8、C−9、C−10、C−11およびC−12の赤外(IR)スペクトルをそれぞれ示す図である。
図2】化合物C−2、C−6、C−7、C−8、C−10、C−11、C−12およびC−13の熱重量分析(TGA)をそれぞれ示す図である。
図3】化合物C−2の示差走査熱量測定法(DSC)による分析を示す図である。
図4】化合物C−1、C−6、C−7、C−8、C−9、C−10、C−11およびC−12の赤外(IR)スペクトルをそれぞれ示す図である。
図5】化合物C−2、C−6、C−7、C−8、C−10、C−11、C−12およびC−13の熱重量分析(TGA)をそれぞれ示す図である。
図6】化合物C−6およびC−8の結晶構造をそれぞれ示す図である。
図7】化合物C−1、C−6、C−7、C−8、C−9、C−10、C−11およびC−12の赤外(IR)スペクトルをそれぞれ示す図である。
図8】化合物C−2、C−6、C−7、C−8、C−10、C−11、C−12およびC−13の熱重量分析(TGA)をそれぞれ示す図である。
図9】化合物C−1、C−6、C−7、C−8、C−9、C−10、C−11およびC−12の赤外(IR)スペクトルをそれぞれ示す図である。
図10】化合物C−2、C−6、C−7、C−8、C−10、C−11、C−12およびC−13の熱重量分析(TGA)をそれぞれ示す図である。
図11】化合物C−6およびC−8の結晶構造をそれぞれ示す図である。
図12】化合物C−1、C−6、C−7、C−8、C−9、C−10、C−11およびC−12の赤外(IR)スペクトルをそれぞれ示す図である。
図13】化合物C−1、C−6、C−7、C−8、C−9、C−10、C−11およびC−12の赤外(IR)スペクトルをそれぞれ示す図である。
図14】化合物C−2、C−6、C−7、C−8、C−10、C−11、C−12およびC−13の熱重量分析(TGA)をそれぞれ示す図である。
図15】化合物C−1、C−6、C−7、C−8、C−9、C−10、C−11およびC−12の赤外(IR)スペクトルをそれぞれ示す図である。
図16】化合物C−2、C−6、C−7、C−8、C−10、C−11、C−12およびC−13の熱重量分析(TGA)をそれぞれ示す図である。
図17】化合物C−1、C−6、C−7、C−8、C−9、C−10、C−11およびC−12の赤外(IR)スペクトルをそれぞれ示す図である。
図18】化合物C−2、C−6、C−7、C−8、C−10、C−11、C−12およびC−13の熱重量分析(TGA)をそれぞれ示す図である。
図19】化合物C−2、C−6、C−7、C−8、C−10、C−11、C−12およびC−13の熱重量分析(TGA)をそれぞれ示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
[実施例]
一般手順
約20mgの試料を用いて熱重量分析を実施した。試料をアルゴン気流中5℃/分の速度で加熱した。
【0049】
示差走査熱量測定法(DSC)による測定のために、20mgの試料を気体導入口付きのるつぼに入れ、Mettler TA8000を使用して測定した。温度を2.5K/分の速度で30℃から500℃まで上昇させた。
【0050】
全ての実験および操作は、標準的なSchlenk法を使用してアルゴン雰囲気下で実施した。使用前に全ての装置を空にし、アルゴンで3回パージした。全ての出発物質の秤量は、窒素パージしておいたグローブボックス内で実施した。空気と水を含まない溶媒のみを使用した。
【0051】
核磁気共鳴(NMR)スペクトルにおける略字は、慣用的な意味を有する:一重線についてはs、二重線についてはd、三重線についてはt、四重線についてはq、二重線の二重線の二重線についてはddd、多重線についてはm、広幅についてはbrである。
【実施例1】
【0052】
【化3】
【0053】
フラスコにNiBr・DME3.3g(10.372mmol)(純度97%)を装入し、THF50mlに懸濁させた。懸濁液の色は、スミレ色から青色を経て青灰色に変化した。ビス(ジイソプロピルホスフィノエチル)アミン30.9g(10.117mmol)のTHF中10%溶液を添加漏斗に移し、24〜28℃で8分以内にNiBr・DME懸濁液に加えた(わずかに発熱のある反応)。添加したとき、反応混合物の色が緑色からオレンジ色〜赤色に変化した。混合物を室温で65時間撹拌した。得られたオレンジ色懸濁液を蒸発乾固し、残留物をジクロロメタン60mlに溶解させ、セライトに通してろ過した。セライトパッドをジクロロメタン5mlで3回洗浄し、ジクロロメタン10mlで1回洗浄した。このようにして得られた清澄なオレンジ色ろ過液にジエチルエーテル200mlを加えるとすぐに、オレンジ色固体が結晶化した。固体をろ過によって収集し、ジエチルエーテル5mlで4回洗浄し、乾燥させた。C−1 4.78g(90.3%)を得た。
【0054】
H−NMR(CDCl,500MHz,RT)δ ppm:7.1(s(br),1H,NH)、3.1(br,2H,NCH)、2.4(m,2H,PCH(CH)、2.2(m,6H,PCH(2),NCH(2),PCH(CH(2))、1.7(m,2H,PCH)、1.6、1.5、1.4および1.3(td,24H,PCH(CH)。
【0055】
13C−NMR(CDCl,125MHz,RT)δ ppm:53.61(t,NCH)、24.06(t,PCH(CH)、23.29(t,PCH(CH)、20.4(t,PCH)、18.51、18.26、17.24および16.89(s,PCH(CH)。
【0056】
31P−NMR(CDCl,202MHz,RT)δ ppm:56.89(s)。
【0057】
LIFDI−MS、CDCl溶液から:m/z=521、M=[C1637BrNNiP]の計算値:521.012146、
m/z=442、M=[C1637BrNNiPの計算値:442.093260。
【0058】
C−1の赤外スペクトルを図1に示す。
【実施例2】
【0059】
【化4】
【0060】
反応前に装置を空にし、アルゴンによって3回パージした。反応は、アルゴン雰囲気下で進行させ、空気と水を含まない溶媒を使用した。
【0061】
続いて、NiBr・DMEおよびビス(ジイソプロピルホスフィノエチル)アミンをそれぞれ9.9mmol用いて、実施例1に記載の反応を行った。収集した生成物C−1をメタノール40mlに溶解させ、フラスコに移した。メタノールを蒸発によって除去した。固体残留物をTHF150mlに懸濁させ、0℃に冷却し、THF50mlとメチルリチウム15.5ml(ジエチルエーテル中1.6M;24.8mmol)との混合物を10分にわたってゆっくり加えた。添加したとき、気体が発生するとともに、反応混合物が暗色に染色されるのが観察された。清澄な暗赤色溶液を得た。この溶液を19時間撹拌した。次いで溶媒を蒸発によって除去し、残留物をペンタン500mlに懸濁させた。不溶性部分をろ過によって除去した。溶液をしばらくの間静置した後、多量の白色沈殿物が形成されたら、この白色沈殿物をろ過によって除去した。ろ過液を18時間室温に保持した後、新たに形成された沈殿物をろ過によって除去した。ろ過液を蒸発乾固するとすぐに、オレンジ色固体が形成された。
【0062】
H−NMR(C,360MHz,RT)δ ppm:3.09(4H)、1.90(4H)、1.70(4H)、1.20(12H)、1.09(12H)、−0.73(3H)。
【0063】
13C−NMR(C,90MHz,RT)δ ppm:58.89、25.25、23.67、19.20、17.82、−26.52。
【0064】
31P−NMR(C,146MHz,RT)δ ppm:67.62。
【0065】
C−2の熱重量分析を図2に示す。熱重量分析から導出すると、試料は、550℃における質量の85.68%を喪失していた。
【0066】
C−2の示差走査熱量測定法(DSC)を図3に示すが、2本の発熱ピークが140℃および365℃において示されている。
【実施例3】
【0067】
【化5】
【0068】
NiBr・DME1.31g(4.117mmol)(純度97%)を、THF25mlに懸濁した。懸濁液の色は、スミレ色から青色を経て青灰色〜スミレ色に変化した。ビス(ジシクロヘキシルホスフィノエチル)アミン1.98g(4.124mmol)(純度97%)のTHF40ml中溶液を、NiBr・DME懸濁液に室温で滴加した。懸濁液の色は、青色を経てオレンジ色〜赤色に変化した。混合物を室温で66時間撹拌した。得られたオレンジ色懸濁液を蒸発乾固し、残留物をジクロロメタン80mlに溶解させ、セライトに通してろ過した。セライトパッドをジクロロメタン10mlで4回洗浄した。このようにして得られた清澄なオレンジ色ろ過液にジエチルエーテル250mlを加えるとすぐに、オレンジ色固体が結晶化した。固体をろ過によって収集し、ジエチルエーテル10mlで2回洗浄し、乾燥させた。C−3 1.78g(63.2%)を得た。
【0069】
H−NMR(CDCl,500MHz,RT)δ ppm:6.77(s)、3.35(q)、3.25(s)、2.35(m)、2.30(m)、2.15(m)、1.95(m)、1.80(m)、1.65(m)、1.28(m)、1.05(t)。
【0070】
13C{H}−NMR(CDCl,125MHz,RT)δ ppm:53.55(t)、33.40(t)、32.62(t)、28.65(s)、28.53(s)、28.26(s)、27.57(s)、26.42(t)、26.30(t)、26.13(t)、25.94(t)、25.32(s)、25.25(s)21.24(t)。
【0071】
31P{H}−NMR(CDCl,202MHz,RT)δ ppm:48.23(s)。
【0072】
LIFDI−MS、CDCl溶液から:m/z=602、M=[C2853BrNNiP2]の計算値:602.2185;
m/z=681、M=[C2853BrNNiP2]の計算値:681.1373。
【実施例4】
【0073】
【化6】
【0074】
生成物C−3 1.07g(1.564mmol)およびナトリウムメチラート169mg(3.128mmol)をフラスコに移し、THF50mlに懸濁させた。反応混合物を室温で15分撹拌した後、50℃に10分加熱した。加熱したとき、オレンジ色から緑色への変色が観察された。反応混合物を室温にゆっくり冷却し、さらに16時間撹拌した。得られた緑色懸濁液を蒸発乾固し、残留物をn−ペンタン25mlに懸濁させた。固体をろ過によって分離し、n−ペンタン5mlで3回洗浄した。緑色ろ過液を蒸発乾固して、C−4を緑色固体として得た。
【0075】
H−NMR(C,500MHz,RT)δ ppm:2.65(t)、2.1(s)、1.9〜1.5(m)、1.3〜1.0(m)。
【0076】
13C{H}−NMR(C,125MHz,RT)δ ppm:61.6(t)、34.0(t)、29.6(s)、28.8(s)、27.8(t)、27.6(t)、27.0(s)、23.7(s)。
【0077】
31P{H}−NMR(C,202MHz,RT)δ ppm:58.24(s)。
【0078】
LIFDI−MS、C溶液から:m/z=601、M=[C2852BrNNiP]の計算値:601.211184。
【実施例5】
【0079】
【化7】
【0080】
メチルリチウム0.37ml(ジエチルエーテル中1.6M;0.592mmol)を、THF40mlに溶解させた生成物C−4 326.7mg(0.5415mmol)の溶液に室温でゆっくり加えた。反応混合物を90時間撹拌した後、24時間還流した。メチルリチウム0.74ml(ジエチルエーテル中1.6M;1.184mmol)をさらに添加した後、反応混合物を室温で4時間撹拌すると、オレンジ色〜褐色への変色が観察された。反応混合物を蒸発乾固して、C−5をオレンジ色固体残留物として得た。
【0081】
31P−NMR(THF、202MHz、RT)δ(ppm):60.15(s)。
【実施例6】
【0082】
【化8】
【0083】
Co(CO)1.975g(5.198mmol)(純度90%)を、0〜5℃でTHF50mlに溶解させた。THF50mlに溶解させたビス(ジイソプロピルホスフィノエチル)アミン3.72g(11.55mmol)(純度94.9%)の溶液を、15分にわたって−25℃でゆっくり加えた。反応混合物を室温に温め、18時間撹拌した。得られたオレンジ色溶液を蒸発乾固し、赤色残留物をメタノール15mlに溶解させた。n−ペンタン60mlをゆっくり加えた後、オレンジ色懸濁液が形成された。固体をろ過によって分離し、n−ペンタン15mlで2回洗浄し、乾燥させて、C−6 2.32g(67.9%)をオレンジ色固体として得た。
【0084】
H−NMR(C,500MHz,RT)δ ppm:3.65(s(br),1H)、3.2(m(br),2H)、1.8(m(br),2H)、1.55(m(br),4H)、1.45(m,4H)、0.85(m,6H)、0.6(m,12H)、0.5(m,6H)。
【0085】
13C{H}−NMR(C,125MHz,RT)δ ppm:199.66、196.53、53.28、25.63、24.91、23.87、16.83、15.97。
【0086】
31P{H}−NMR(C,202MHz,RT)δ ppm:95.35(s)。
【0087】
LIFDI−MS、C溶液から:m/z=420、M=[C1837CoNOの計算値:420.1626。
【0088】
ESI、アセトニトリル溶液からの負イオンモード:m/z=171、Mの計算値=[CCo]:170.97。
【0089】
C−6の赤外スペクトルを図4に示す。
【0090】
C−6の熱重量分析を図5に示す。熱重量分析から導出すると、試料は、500℃における質量の76.52%を喪失していた。
【0091】
0.4℃でろ過液を貯蔵することにより、X線回折に適した結晶を得た。結晶構造を標準的な技法によって測定しており、図6に示す。
【実施例7】
【0092】
【化9】
【0093】
60〜100℃において1.1.10−2mbarで生成物C−6 1.99g(3.37mmol)を熱開裂して、中性化合物C−7 0.63g(1.5mmol)をオレンジ色固体(44.5%)として得た。C−7は、2.7.10−2mbarにおいて90℃で昇華によってさらに精製することもできる。
【0094】
H−NMR(C,500MHz,RT)δ ppm:2.95(m,2H)、1.8(m,2H)、1.5(m,2H)、1.05(q,6H)、0.75(q,6H)。
【0095】
13C{H}−NMR(C,125MHz,RT)δ ppm:206.55、59.43、24.32、23.28、17.97、16.62。
31P{H}−NMR(C,202MHz,RT)δ ppm:102.22(s(br))。
【0096】
C−7の赤外スペクトルを図7に示す。
【0097】
C−7の熱重量分析を図8に示す。熱重量分析から導出すると、試料は、500℃における質量の93.98%を喪失していた。
【実施例8】
【0098】
【化10】
【0099】
室温でTHF25mlに溶解させたビス(ジシクロヘキシルホスフィノエチル)アミン1.993g(4.152mmol)(純度97%)の溶液を、THF25mlに溶解させたCo(CO)0.79g(2.076mmol)(純度90%)の溶液に5分にわたって滴加した。THF20mlをさらに添加して、反応混合物を希釈し、室温で16時間撹拌した。得られたオレンジ色溶液を蒸発乾固し、オレンジ色残留物をメタノール50mlに溶解させて、オレンジ色懸濁液を得た。固体をろ過によって分離し、n−ペンタン10mlで2回洗浄し、乾燥させて、C−8をオレンジ色固体として得た。
【0100】
H−NMR(CDCl,500MHz,RT)δ ppm:3.75(s(br),1H)、3.40(s(br),2H)、2.1(m(br))、1.84(m(br))、1.70(m(br))、1.28(s(br))。
【0101】
13C{H}−NMR(CDCl,125MHz,RT)δ ppm:55.07、37.41、36.86、29.16、28.41、28.26、27.37、27.21、26.40、26.36、25.29。
【0102】
31P{H}−NMR(CDCl,202MHz,RT)δ ppm:85.62(s)。
【0103】
LIFDI−MS、THF溶液から:m/z=580、M=[C3053CoNOの計算値:580.288353。
【0104】
C−8の赤外スペクトルを図9に示す。
【0105】
C−8の熱重量分析を図10に示す。熱重量分析から導出すると、試料は、500℃における質量の78.04%を喪失していた。
【0106】
0.4℃でろ過液を貯蔵することにより、X線回折に適した結晶を得た。結晶構造を標準的な技法によって測定しており、図11に示す。
【実施例9】
【0107】
【化11】
【0108】
THF20mlに溶解させたビス(ジシクロヘキシルホスフィノエチル)アミン0.99g(2.05mmol)(純度97%)の溶液を、THF15mlに溶解させたCo(CO)(NO)355mg(2.05mmol)の溶液に5分にわたって室温で滴加した。反応混合物を室温で18時間撹拌した後、得られたオレンジ色溶液を蒸発乾固した。オレンジ色残留物をメタノール24mlに懸濁させた。固体をろ過によって分離し、乾燥させて、C−9をベージュ色固体として得た。
【0109】
H−NMR(C,500MHz,RT)δ ppm:3.28(t)、2.24(m(br))、2.05(m(br))、1.88(d(br))、1.68(d(br))、1.6〜1.05(m(br))、1.05〜0.85(m(br))。
【0110】
13C{H}−NMR(C,125MHz,RT)δ ppm:41.92、36.92、28.30、27.89、27.08、26.99、26.69、26.66、26.61、26.59、26.40、26.31、25.38、20.79。
【0111】
31P{H}−NMR(C,202MHz,RT)δ ppm:49.56(s)。
【0112】
C−9の赤外スペクトルを図12に示す。
【実施例10】
【0113】
【化12】
【0114】
THF25mlに溶解させた2,6−ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノメチル)ピリジン2.22g(5.56mmol)(純度99%)の溶液を、THF25mlに溶解させたCo(CO)1.06g(2.78mmol)(純度90%)の溶液に5分にわたって−30℃で滴加した。反応混合物を室温にゆっくり加温し、22時間撹拌した。反応混合物を蒸発乾固させて、暗赤色残留物を得たら、この暗赤色残留物をメタノール50mlに懸濁させた。固体をろ過によって分離し、乾燥させて、C−10を暗赤色固体として得た。
【0115】
H−NMR(CDCl,500MHz,RT)δ ppm:7.8(s,1H,CH)、7.45(s,2H,CH)、3.65(s,4H,PCH)、1.35(s,36H,C(CH)。
【0116】
13C{H}−NMR(CDCl,125MHz,RT)δ ppm:164.65、140.57、121.06、35.3、33.99、28.38。
【0117】
31P{H}−NMR(CDCl,202MHz,RT)δ ppm:85.57(s)。
【0118】
C−10の赤外スペクトルを図13に示す。
【0119】
C−10の熱重量分析を図14に示す。熱重量分析から導出すると、試料は、500℃における質量の76.15%を喪失していた。
【実施例11】
【0120】
【化13】
【0121】
フラスコに、Ni(CO) 0.28g(1.64mmol)を0℃で装入した。トルエン10mlを0℃で溶媒として加えた後、ビス(ジイソプロピルホスフィノエチル)アミン0.5g(1.64mmol)(純度94.9%)を反応混合物にゆっくり加えた。反応混合物を0℃で1時間撹拌し、室温にゆっくり温めた。室温で18時間撹拌すると、無色反応混合物が緑色に変わった。反応混合物を蒸発乾固した後、緑色固体を得たら、この固体をペンタン10mlに再溶解させ、3回蒸発乾固した。C−11 0.47g(72.7%)を緑色固体として得た。
【0122】
H−NMR(C,500MHz,RT)δ ppm:2.95(s(br),1H,NH)、2.54(m,2H,NCH)、1.74(m,2H,PCH)、1.32(q,2H,PCH)、1.08(ddd,12H,PCH(CH)。
【0123】
13C{H}−NMR(C,125MHz,RT)δ ppm:202.41(s,CO)、43.13(s,NCH)、25.91(m,PCH)、22.86(m,PCH)、15.58(t,PCH(CH))、18.11(t,PCH(CH))。
【0124】
31P{H}−NMR(C,202MHz,RT)δ ppm:34.81(s)。
【0125】
LIFDI−MS、C溶液から:m/z=391、M=[C1737NNiOPの計算値:391.17038。
【0126】
C−11の赤外スペクトルを図15に示す。
【0127】
C−11の熱重量分析を図16に示す。熱重量分析から導出すると、試料は、500℃における質量の84.3%を喪失していた。
【実施例12】
【0128】
【化14】
【0129】
THF20mlに溶解させたビス(ジメチルホスフィノエチル)アミン0.91g(4.49mmol)(純度95%)の溶液を、THF50mlに溶解させたCo(CO) 1.7g(4.47mmol)(純度90%)の溶液に5分にわたって室温でゆっくり加えた。反応混合物を室温で18時間撹拌した後、5日加熱還流した。得られたオレンジ色溶液を蒸発乾固して、C−12を暗緑色固体として得た。
【0130】
H−NMR(CDCl,500MHz,RT)δ ppm:3.5、3.0、2.4、1.9、1.5(全て非常に広幅)。
【0131】
13C{H}−NMR(CDCl,125MHz,RT)δ ppm:74.92、70.53、35.20、25.20、17.75。
【0132】
31P{H}−NMR(CDCl,202MHz,RT)δ ppm:48.75(s)。
【0133】
C−12の赤外スペクトルを図17に示す。
【0134】
C−12の熱重量分析を図18に示す。熱重量分析から導出すると、試料は、500℃における質量の58.85%を喪失していた。
【実施例13】
【0135】
【化15】
【0136】
C−13をSigma Aldrichから購入した。
【0137】
31P{H}−NMR(THF−d,202MHz,RT)δ ppm:52.92(d)。
【0138】
C−13の熱重量分析を図19に示す。熱重量分析から導出すると、試料は、500℃における質量の43.76%を喪失していた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
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図13
図14
図15
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図19